結論
GEエアロスペースは、世界の狭胴機の約 3 分の 2 に載るエンジン LEAP(CFM インターナショナルとの合弁)、ワイドボディ機向け GE90・GEnx・GE9X、軍用エンジン(F-35・F-16・F-15EX・ヘリ用 T700)を作る、航空エンジンの純粋な専業会社である。2025 年は売上 459 億ドル、営業利益 83 億ドル(営業利益率 18%)、純利益 87 億ドル。2026 年 4〜6 月期も売上 +21%、受注残は 2,100 億ドルを超え、通年の営業利益見通しは 105.5〜107.5 億ドルへ引き上げられた。
エンジンは新品を赤字に近い値で売り、20〜30 年にわたり部品と整備で稼ぐ構造で、利益の大半は稼働中のエンジンの整備から出る。稼働する LEAP は 2030 年にかけて約 3 倍になるため、整備需要は今後 10 年、右肩上がりになる。堀は規制認証と数十年の設計蓄積で、世界でも最上級に属する。
バリュー投資の観点では、事業の質に疑いはない。問題は値段で、時価総額 3,352 億ドルは純利益の 39 倍、自己資本の 18 倍、2026 年の FCF 見通し(約 90 億ドル)の 37 倍にあたる。市場 × シェア × 価格で積み上げ、資本コスト 7.75% で割り引くと、10 年後の中立の筋書きでは利益は今の 2.2 倍になる。倍率は利益ベースの正当化 PER(g 4%・堀は strong で RONIC 約 47%・事業の ROE 約 66%)の上限 24.4 倍に対して 21.2 倍(上限の 8.7 割)に置いた。10 年後の中立の時価総額は 4,134 億ドルで今の 1.2 倍、還元を加えて資本コスト 7.75% で割り引くと今の値段の約 8 割の価値で、計算上はやや割高になる。今の値段を正当化できるのは、整備の山が 2030 年代へ厚く続く楽観側の筋書きがそろった場合に限られる。優良な会社と、よい投資対象は別だという結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず「10 年後もあるか」を問う。答えは、ある。民間機は 20〜30 年飛び続け、その間エンジンを整備する権利は GE が握る。航空需要は景気に揺れるが、長期では世界の座席が増え続ける。堀は広がる方向にあり、これは疑いにくい。
次にオーナー利益を見る。純利益 87 億ドルに対し、株式報酬の影響は小さく、設備投資も売上の 3 〜 4% と軽いため、オーナー利益は純利益に近く、2026 年の FCF は約 90 億ドル、時価総額の 2.7% にあたる。この利回りは、5% の無リスク金利を下回る。高い成長が 10 年続いても、払う値段が高ければリターンは事業の質を超えない。
安全域の議論では、楽観の筋書きで 10 年後の時価総額と還元の合計が今の 2.4 倍、中立で 1.6 倍、悲観で 0.4 倍で、確率で加重した年率の期待は 4% 台後半と資本コスト 7.75% に届かない。わかりやすい事業という点では最上位だが、整備需要の山が 2027〜2028 年に来るか、新型エンジンの耐久問題が起きるかという「読みにくい部分」が残る。事業の確信度は高いが、値段への確信は持てない。わかりやすい事業という点では最上位だが、整備需要の山が 2027〜2028 年に来るか、新型エンジンの耐久問題が起きるかという「読みにくい部分」が残る。事業の確信度は高いが、値段への確信は持てない。
何で稼ぐ会社か
売上の 4 分の 3 を占める「民間エンジン・サービス(CES)」は、LEAP(エアバス A320neo とボーイング 737 MAX の唯一または主力の搭載エンジン。フランスのサフラン(Safran)との折半合弁 CFM が製造)、GEnx、GE9X(777X 用)、CF6 などの新品エンジンと、整備・部品・修理の長期契約から成る。新品は売上の比較的小さな部分だが、損益では整備が大半を占め、2026 年 4〜6 月期のサービスの伸びは +26% に達した。整備のうち工場に入れる大がかりな「ショップビジット」が約 6 割を占め、LEAP の入庫は前年の 5 割増で伸びている。
「防衛・推進技術(DPT)」は、F-35 の F110・F404 系エンジン、F-15EX・F-16・B-1・B-2 のエンジン、ブラックホークなど T700 系ヘリエンジンと、海軍の推進装置、次世代戦闘機用エンジンの開発を担う。米国防予算の増加と中東情勢による軍用機の稼働増が追い風で、整備需要も付く。
2023 年 1 月に GE ヘルスケア、2024 年 4 月に GE ベルノバ(電力)を分離し、純粋な航空エンジン会社になった。残る課題は、GE9X の量産初期の損失(2026 年に倍増し 2028 年ごろにピーク)、部品の供給不足による納期遅れ、新品エンジンの納入が整備需要を呼ぶまでの時間差である。
優良さと弱いところ
堀は 4 層ある。第 1 は設計・認証で、エンジンは数十年の開発と FAA の型式証明が必要で、新規参入は事実上ない。第 2 は搭載機の独占で、LEAP はエアバスとボーイングの狭胴機の大半に載り、その後 30 年の整備を一社が決める。第 3 は価格を決める力で、部品と修理の単価は物価以上に毎年上げられ、2026 年も値上げと稼働増の両方が効いている。第 4 は規模で、稼働する数万基の保有が整備ノウハウと部品の供給網を支える。
資本効率は極めて高いが、見かけほどではない。ROE 46.5% は長年の自社株買いで自己資本が 187 億ドルまで縮んだ結果で、事業の資本利益率が 46% あるわけではない。純負債は 92 億ドルと軽い。経営はローレンス・カルプ氏が 2018 年から再建を主導し、事業の分離、LEAP の整備能力増強、価格の規律を成功させ、資本配分も高く評価できる。
弱点は、部品の供給網(鋳造品・単結晶ブレード)が制約で成長の天井になっていること、LEAP の耐久(高温部の劣化)を改良キットで抑える必要があること、航空会社が価格の上昇に反発し中古再生部品(PMA)や独立系整備に流れる可能性、そして整備の山が 2027〜2028 年ごろに来て伸びが鈍る見方である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
民間航空は、受注残が世界で約 18,100 機と稼働機の約 6 割に達し、納入の枠は 2033 年ごろまで埋まる。制約は需要でなく供給(エンジン・部品・整備士)で、IATA は不均衡が 2031〜34 年まで続くと見る。2026 年の納入は約 1,690 機で 2018 年の 1,753 機にまだ届かず、10 年の中立の見通しは年 +4.5% を使う。エンジンのアフターマーケットは 600〜700 億ドルで、10 年で名目約 2.2 倍になる。
競争は、エンジンでは GE・CFM(GE とサフラン)、RTX(プラット・アンド・ホイットニー)、ロールス・ロイスの寡占で、新型機にどのエンジンが載るかが 30 年の部品収益を決める。RTX の GTF は粉末金属の欠陥で数千基の点検が必要になり、GE の LEAP は相対的に有利な位置を得た。部品では TDG(トランスダイム)、HWM(ハウメット)、ハネウェル エアロスペース(HONA)が別の層を担う。
循環では、2026 年に入り中東の戦闘(2 月 28 日〜)で航空会社の燃料費が上がり、IATA の純利益見通しが 410 億ドルから 230 億ドルへ下方修正された。世界の出発の見通しは横ばい〜低い 1 桁へ下がったが、CFM56 の退役が 1% 未満にとどまり(想定は約 2%)、古いエンジンが長く飛ぶため整備の需要はむしろ強い。分かれ目は、航空会社の収益悪化が整備の先送りと機体退役の増加につながるかである。防衛側は、2027 年度の米国防費要求が 1.5 兆ドルと大きく、軍用エンジンの需要は堅い。
資本政策と M&A
還元は積極的で、2025 年は配当 15 億ドルと自社株買い 76 億ドル、2026 年上半期は自社株買い 42 億ドルと配当 8.7 億ドル、2025 年 12 月に 200 億ドルの買い枠、2026 年 2 月に配当を約 31% 増配した。株数は 2025 年に 2.2% 減った。FCF は 2026 年に 89〜92 億ドルの見通しで、ほぼ全額が還元される。ただし、時価総額が純利益の 39 倍の水準での自社株買いは、収益率(利益利回り 2.6%)が 5% の無リスク金利を下回り、バリュー投資の観点では価値を毀損する資本配分に近い。
M&A は小さく、GE ヘルスケア・ベルノバの分離(2023〜2024 年)で純粋化した。今後は LEAP・GE9X の整備能力と部品供給網の強化への投資が中心で、大型 M&A を行う意図は薄い。買われる側になる可能性は時価総額 3,352 億ドルでは現実的でない。
純負債は 92 億ドルで財務は軽く、借り換えで金利が上がっても利払いの変化は 3 年で約 1 億ドル、10 年で約 2 億ドルと小さい。鍵は、割高な局面で自社株買いを続けないか、GE9X の損失の山を越えた後に還元が増えるかである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
エンジンは売った後に稼ぐ事業で、その入口が今、史上最大の規模で積み上がっている。LEAP の納入は 2025 年に大きく伸び、2026 年も高い十%台で伸び、稼働する LEAP は 2030 年にかけて約 3 倍になる。整備に入る LEAP は今は若く、本格的な整備の山は 2030 年代に来る。受注残は 2,100 億ドルを超え、部品の売上の 95% 以上が受注残に入っている。値上げも通り、整備単価は物価以上に毎年上がる。
さらに、供給が追いつかない限り、航空会社に代替の整備先はなく、GE の価格交渉力は強い。防衛は 2027 年度の米国防費要求 1.5 兆ドルで需要が上向き、F-35 や次世代戦闘機のエンジンで長期の収益が積まれる。GE9X の損失が 2028 年に山を越えれば、利益率は 2028 年以降に拡大する。FCF は 2028 年に 110 億ドルを超え、自社株買いで 1 株の利益はさらに伸びる。10 年後の純利益は 2.5 倍以上になりうる。
慎重な見方
株価は、成長・利益率・倍率のすべてが続くことを前提にしている。PER 39 倍は、高い成長が 10 年続いても倍率が縮めば資本コスト 7.75% を回収できない水準で、整備需要の山は 2027〜2028 年に来るという見方もある。2026 年 4〜6 月期の営業利益率は 21.7% と前年から 1.3 ポイント下がり、GE9X の損失は 2026 年に倍増する。部品の納期遅れは前期比 +20% と悪化している。
LEAP は高温部の耐久が課題で、改良キットで補うが、整備の頻度が下がると想定した整備収益は縮む。航空会社は燃料高で収益が下方修正され、整備単価の上昇に反発して中古再生部品(PMA)や独立系整備へ流れる。ボーイングの 777X の遅れは GE9X の損失を長引かせる。ロールス・ロイスや RTX が新型エンジン(ULTRAFAN・GTF の改良)で追い、LEAP の次の世代で GE が主導権を保てる保証もない。自社株買いは割高な株価で行われ、1 株あたりの価値を下げている。
どちらに重みを置いたか
事業の質と整備の成長は強気の見方が強く、確率は楽観側に寄せた(楽観とやや楽観で 4 割)。一方、値段では慎重な見方が強い。資本コスト 7.75% で割り引くと中立でも今の値段に届かず、確率で加重した年率の期待は 4% 台後半にとどまる。中立を最大にしつつ、悲観は 10%(耐久・価格反発・不況の重なり)に置いた。結論は「世界で最も優れた事業の 1 つだが、やや割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 384.15 ドル4,103 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 113.88 ドル1,216 億ドル)。 今の値に割り戻すと 260.51 ドル2,782 億ドル、今との差 −11.3%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 14% | 598.23 ドル6,389 億ドル | 149.81 ドル1,600 億ドル | +154.8% | +9.8% | 104.73 ドル1,118 億ドル |
| やや楽観 | 26% | 479.72 ドル5,123 億ドル | 132.96 ドル1,420 億ドル | +108.7% | +7.6% | 159.30 ドル1,701 億ドル |
| 中立 | 32% | 387.08 ドル4,134 億ドル | 117.04 ドル1,250 億ドル | +71.7% | +5.6% | 161.32 ドル1,723 億ドル |
| やや悲観 | 18% | 241.02 ドル2,574 億ドル | 88.95 ドル950 億ドル | +12.4% | +1.2% | 59.39 ドル634 億ドル |
| 悲観 | 10% | 84.18 ドル899 億ドル | 48.69 ドル520 億ドル | −54.7% | −7.6% | 13.29 ドル142 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 384.15 ドル4,103 億ドル | 113.88 ドル1,216 億ドル | +69.7% | +5.4% | 498.02 ドル5,319 億ドル |
今の株価時価総額 293.54 ドル3,135 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 14% 楽観:LEAP の整備が 2030 年代に厚く積み上がり、防衛も広がって利益が 3 倍に 利益 265 億ドル · PER 24.1 倍 · 株価時価総額 598.23 ドル6,389 億ドル
2035 年、民間機の納入は年 +6% の約 3,000 機に届き、稼働機も年 3.5% 以上で増える。民間エンジン(新品+整備)の世界市場は名目 2,700 億ドル(年 +10%)、GE のシェアは LEAP の成熟と GE9X の採用で 38% に上がる。価格は物価並み(10 年で 1.41 倍)、整備単価はそれ以上。CES の利益率は GE9X の損失が終わり、整備の比率が上がって 30.5%。防衛は市場が名目 1,700 億ドルに広がり、次世代戦闘機のエンジンを取って DPT のシェアは 16%、利益率は 19%。
- 民間エンジン・サービス:数量 1,915(民間エンジン(新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 53.6%(GE(CFM を含む)のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 1,026 億ドル・営業利益 313 億ドル。市場 1,915 億ドル × シェア 38.0% × 価格 1.41 倍
- 防衛・推進技術:数量 1,206(軍用エンジン・推進装置の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 22.6%(GE のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 272 億ドル・営業利益 52 億ドル。市場 1,206 億ドル × シェア 16.0% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 84.4%(この筋書きの純利益 265.0 ÷ 自己資本 314 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 7.8%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 残る割合 0.67 ×(ROE − k)= 58.8%(堀は強:据え付け基盤の整備権・FAA の型式証明・LEAP の寡占(残る割合 2/3)。ROE は帳簿が 40% を超えるが、のれん込みの ROIC 式で出した値も同水準で、小さい方を使った)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=民間航空の座席・飛行時間の実質伸び 3〜4% + 整備・部品単価の物価 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=24.9 倍に対し、97% の 24.1 倍に置いた(整備の山が後ろへずれて供給制約も解け、据え付け基盤の収入が最も厚くなる筋書きなので上限の近く)。時価総額=純利益 265.0 億ドル × 24.1 倍=6389 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:稼働する LEAP が 3 倍に増え、整備単価が物価以上に上がり続け、防衛エンジンも世代交代で取る展開。大型の事業で 10 年これが続く確率は 1〜2 割。
やや楽観 26% やや楽観:整備は堅調に伸び、利益は年 10% 台で積み上がる 利益 226 億ドル · PER 22.7 倍 · 株価時価総額 479.72 ドル5,123 億ドル
2035 年、民間エンジン市場は名目 2,500 億ドル(年 +9.6%)、GE のシェアは 37%。LEAP の整備は厚く積み上がるが、GE9X の損失の後始末と航空会社の価格の反発で、CES の利益率は 29.5% にとどまる。防衛は市場 1,500 億ドル・シェア 15.5%・利益率 18% で、F-35 と次世代戦闘機の整備が支える。純利益は 226 億ドルで 2025 年の 2.6 倍、株数は年 1.5% ずつ減る。LEAP の整備は据え付け基盤の増加とともに厚く積み上がり、株数が減る分だけ 1 株の利益は純利益より速く伸びる。
- 民間エンジン・サービス:数量 1,773(民間エンジン(新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 52.2%(GE(CFM を含む)のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 925 億ドル・営業利益 273 億ドル。市場 1,773 億ドル × シェア 37.0% × 価格 1.41 倍
- 防衛・推進技術:数量 1,064(軍用エンジン・推進装置の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 21.9%(GE のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 232 億ドル・営業利益 42 億ドル。市場 1,064 億ドル × シェア 15.5% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 75.3%(この筋書きの純利益 226.0 ÷ 自己資本 300 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 7.8%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 残る割合 0.67 ×(ROE − k)= 52.8%(堀は強:据え付け基盤の整備権・FAA の型式証明・LEAP の寡占(残る割合 2/3)。ROE は帳簿が 40% を超えるが、のれん込みの ROIC 式で出した値も同水準で、小さい方を使った)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=民間航空の座席・飛行時間の実質伸び 3〜4% + 整備・部品単価の物価 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=24.6 倍に対し、92% の 22.7 倍に置いた(整備は伸びるが GE9X の損失と部品不足で利益率が抑えられる筋書き)。時価総額=純利益 226.0 億ドル × 22.7 倍=5123 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:整備と部品の質は保たれ、寡占の構造が続き、価格の上昇もほぼ物価以上。ただし航空会社の反発で上昇率が少し落ちる。
中立 32% 中立:優良な成熟企業として年 8% 台の成長、倍率は平常化 利益 195 億ドル · PER 21.2 倍 · 株価時価総額 387.08 ドル4,134 億ドル
2035 年、民間エンジン市場は名目 2,300 億ドル(年 +8.7%)、GE のシェアは 36%。CES の売上は 828 億ドル、GE9X の損失が終わって利益率は 29%。防衛は市場 1,400 億ドル・シェア 15%・利益率 17.5%。全社の営業利益は 237 億ドル、純利益は 195 億ドル(FY2025 の 2.2 倍、年 +8.4%)。10 年間の借り換えで利払いは 2 億ドル減る程度。整備の価格は物価並みに上がり、稼働する LEAP が増えて整備の入庫が積み上がる。純利益の約 9 割は自社株買いと配当で株主に返る。
- 民間エンジン・サービス:数量 1,631(民間エンジン(新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 50.8%(GE(CFM を含む)のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 828 億ドル・営業利益 240 億ドル。市場 1,631 億ドル × シェア 36.0% × 価格 1.41 倍
- 防衛・推進技術:数量 993(軍用エンジン・推進装置の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 21.2%(GE のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 210 億ドル・営業利益 37 億ドル。市場 993 億ドル × シェア 15.0% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 65.9%(この筋書きの純利益 195.0 ÷ 自己資本 296 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 7.8%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 残る割合 0.67 ×(ROE − k)= 46.5%(堀は強:据え付け基盤の整備権・FAA の型式証明・LEAP の寡占(残る割合 2/3)。ROE は帳簿が 40% を超えるが、のれん込みの ROIC 式で出した値も同水準で、小さい方を使った)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=民間航空の座席・飛行時間の実質伸び 3〜4% + 整備・部品単価の物価 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=24.4 倍に対し、87% の 21.2 倍に置いた(堀は強いが、航空の循環と整備の山の時期が読めないので上限すれすれには置かない)。時価総額=純利益 195.0 億ドル × 21.2 倍=4134 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界の中立(市場 年 +8%・価格は物価並み)に沿う。GE のシェアは 34% から 36% へ上がる。
やや悲観 18% やや悲観:価格の反発と中古再生部品の拡大で、整備の利益率が下がる 利益 134 億ドル · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 241.02 ドル2,574 億ドル
2035 年、整備の独立系・PMA への流出と、新型エンジン(ロールス・ロイスの ULTRAFAN、RTX の GTF 改良)の台頭で、GE のシェアは 34% に止まる。市場は名目 2,000 億ドルまでしか伸びず、CES の利益率は 26%。GE9X の損失が 2030 年代前半まで長引く。防衛は予算の抑制でシェア 14.5%・利益率 15.5%。純利益は 134 億ドルと 2025 年の 1.5 倍。LEAP の稼働台数が増えても、価格を決める力が落ちた会社としての評価になる。 10 年(2026〜2035 年)の純利益の累計は約 1,010 億ドル(2026 年 90 億ドルから 2028 年の 79 億ドルまで下がり、そこから 2035 年の 134 億ドルへ戻る道筋。GE9X の損失は各年の利益に含む)。
- 民間エンジン・サービス:数量 1,418(民間エンジン(新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 47.9%(GE(CFM を含む)のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 680 億ドル・営業利益 177 億ドル。市場 1,418 億ドル × シェア 34.0% × 価格 1.41 倍
- 防衛・推進技術:数量 851(軍用エンジン・推進装置の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 20.4%(GE のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 174 億ドル・営業利益 27 億ドル。市場 851 億ドル × シェア 14.5% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 56.3%(この筋書きの純利益 134.0 ÷ 自己資本 238 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 7.8%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 残る割合 0.67 ×(ROE − k)= 40.1%(堀は強:据え付け基盤の整備権・FAA の型式証明・LEAP の寡占(残る割合 2/3)。ROE は帳簿が 40% を超えるが、のれん込みの ROIC 式で出した値も同水準で、小さい方を使った)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=民間航空の座席・飛行時間の実質伸び 3〜4% + 整備・部品単価の物価 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=24.0 倍に対し、80% の 19.2 倍に置いた(燃料高で航空会社の収益が悪化し、整備の先送りと価格の反発が出る筋書き)。時価総額=純利益 134.0 億ドル × 19.2 倍=2574 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:航空会社の収益悪化と整備単価の反発が重なる展開。起きても不思議はない。
悲観 10% 悲観:構造的な負け(耐久問題・価格反発・不況)で優良企業でなくなる 利益 58 億ドル · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 84.18 ドル899 億ドル
2035 年、LEAP の高温部の耐久が想定を下回り、GE が整備費を負担する契約が増える。航空会社は整備契約を競争入札に切り替え、PMA と独立系が部品の 2〜3 割を取る。次世代の狭胴機用エンジンで RTX・ロールス・ロイスに採用を取られる。景気後退も重なり、市場は名目 1,600 億ドル(年 +4.8%)、GE のシェアは 31%、価格の上昇も物価に届かない(10 年で 1.27 倍)。CES の利益率は 20%、DPT は 12%。純利益は 58 億ドルまで下がる(2025 年の 7 割弱)。 10 年(2026〜2035 年)の純利益の累計は約 546 億ドル。2026 年 92 億ドル・2027 年 66 億ドルのあと、景気後退の底の 2028 年に 40 億ドルまで落ち、そこから 2035 年の 58 億ドルへ戻る道筋で足した(LEAP の改修費用は各年の利益に含む)。自己資本は 今 187 億ドル + 累計 546 億ドル − 還元 520 億ドル ≒ 213 億ドル。
- 民間エンジン・サービス:数量 1,260(民間エンジン(新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 39.4%(GE(CFM を含む)のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 496 億ドル・営業利益 99 億ドル。市場 1,260 億ドル × シェア 31.0% × 価格 1.27 倍
- 防衛・推進技術:数量 787(軍用エンジン・推進装置の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 16.5%(GE のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 130 億ドル・営業利益 16 億ドル。市場 787 億ドル × シェア 13.0% × 価格 1.27 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 27.2%(この筋書きの純利益 58.0 ÷ 自己資本 213 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 7.8%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 残る割合 0.67 ×(ROE − k)= 20.7%(堀は強:据え付け基盤の整備権・FAA の型式証明・LEAP の寡占(残る割合 2/3)。ROE は帳簿が 40% を超えるが、のれん込みの ROIC 式で出した値も同水準で、小さい方を使った)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=民間航空の座席・飛行時間の実質伸び 3〜4% + 整備・部品単価の物価 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=21.5 倍に対し、72% の 15.5 倍に置いた(耐久問題・価格反発・不況が重なり優良さが崩れる筋書き)。時価総額=純利益 58.0 億ドル × 15.5 倍=899 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:リーマン級の景気後退に、10 年の間の構造的な負け(LEAP の耐久問題による大規模な改修費用、整備の独立系への流出、次世代エンジンでの敗北、規制)が重なる。確率は 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
民間エンジン・サービス
LEAP・GEnx・GE9X などの新品と、整備・部品・修理の長期契約。利益の大半は整備。
| 数量民間エンジン(新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質) | 価格GE(CFM を含む)のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,000 | 34.0% | 340 | 91 |
| 10 年後 中立 | 1,631 | 50.8% | 828 | 240 |
取り方:新品エンジンの納入額(約 350 億ドル)と整備・部品(約 650 億ドル)を合わせた市場約 1,000 億ドル(業界ノートから推定)に、GE・CFM のシェア 34% を置いた。利益率は 2026 年第 1 四半期の 26.4% 前後を使った。売上 = 市場 × シェア × 価格(価格指数は中立で 3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍)。競合と照らすと、民間エンジンは GE・CFM、RTX(プラット・アンド・ホイットニー)、ロールス・ロイスの 3 陣営の寡占で、狭胴機の約 3 分の 2 に LEAP・CFM56 が載る。整備では独立系(ルフトハンザ・テクニーク等)も取るため、新品と整備を合わせた市場で 34% と置いた。
防衛・推進技術
軍用戦闘機・ヘリのエンジンと整備、海軍の推進装置、次世代戦闘機用エンジンの開発。
| 数量軍用エンジン・推進装置の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質) | 価格GE のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 800 | 14.9% | 119 | 20 |
| 10 年後 中立 | 993 | 21.2% | 210 | 37 |
取り方:米国防総省の航空機・推進関連の調達と整備、同盟国の購入を合わせた約 800 億ドル(推定)に、シェア約 15%。利益率は 17% 前後(防衛エンジンは民間より低い)。売上 = 市場 × シェア × 価格。軍用エンジンは GE と RTX(プラット・アンド・ホイットニー。F-35 の F135)が米国の二強で、ロールス・ロイス・サフランが欧州の機体を持つ。GE は F-16・F-15EX・ヘリの T700 で厚く、F-35 は持たないため 15% と置いた。
リスクと懸念
LEAP の耐久と整備コスト
LEAP は高温部の劣化が想定より早く、改良キットで時間当たりの飛行を延ばしている。耐久がさらに下回ると、GE が負担する保証・改修費が増え、整備契約の利益率が下がる。LEAP の稼働台数が 3 倍になる 2030 年にかけて、この問題が最も大きくなる。
GE9X と 777X の遅れ
GE9X の損失は 2026 年に倍増し 2028 年ごろに山を越える計画だが、ボーイング 777X の就航が 2027 年初めからさらに遅れると損失は長引く。試験機でシール部分の耐久問題も見つかり、改修を進めている。1,000 基超の受注があり、2026 年下半期に納入が偏るため、認証と量産の工程が少しでも崩れると損失の山が高く、長くなる。
部品の供給網
鋳造品・単結晶ブレードの供給が成長の天井で、部品の納期遅れは 2026 年 4〜6 月期に前期比 +20% と悪化した。整備の需要が強くても売上に出ず、航空会社の不満が高まると、再生部品や他社の整備へ流れる。
航空需要の循環と燃料高
2026 年の中東の戦闘で原油・ジェット燃料が上がり、IATA の純利益見通しは 410 億ドルから 230 億ドルへ下がった。景気後退が重なると飛行時間が減り、整備の先送りと新品の受け取り遅れが同時に出る。コロナでは GE は -51%、リーマンでは -78% 下げた。
価格の反発と独立系・PMA
整備単価は物価以上に毎年上がり、航空会社の反発を招いている。FAA 承認の再生部品(PMA)と独立系整備が部品の一部を取り、競争入札が増えると、価格を決める力が落ちる。整備の価格の上げ幅が物価を下回る年が続けば、利益の伸びは数量の伸びだけになり、倍率にも響く。
割高な自社株買い
時価総額が純利益の 39 倍の水準で、毎年 70 億ドル超の自社株買いを続けている。利益利回り 2.6% は無リスク金利 5% を下回り、1 株あたりの価値を高めるとは言いにくい。株価が下がれば買い戻しの効率は上がるが、それまでは還元の質が落ちる。
防衛予算と調達の遅れ
2027 年度の国防費要求 1.5 兆ドルのうち、調整予算 3,500 億ドルは別の法案で、成立するかは未定。つなぎ予算になると、F-35 や次世代戦闘機のエンジンの調達が先送りになる。防衛は GE の利益の約 2 割にとどまるが、整備の需要は稼働が増える今の局面で堅く、予算の遅れは数量より時期のずれとして効く。
今後の分かれ目
- LEAP の部品供給が 2027 年までに正常化し、整備の入庫が年 20% 台を保ったら
- 整備売上が楽観側に寄る。ただし倍率は成長の減速を先に映すため、時価総額が追いつく保証はない。
- LEAP の高温部の耐久がさらに下回り、GE が整備費を負担する契約が広がったら
- CES の利益率が数ポイント下がる。やや悲観・悲観の確率を上げ、倍率も 2〜3 倍下げて見る。
- ボーイングの 777X の就航がさらに 2028 年以降へ遅れたら
- GE9X の損失が長引き、2028 年の利益率の回復が遅れる。中立の利益を 5% 前後下げる。
- 航空会社の収益悪化で整備の先送りと機体退役が増えたら
- 整備の入庫が数割減り、利益が 1〜2 年遅れる。ただし受注残が厚いため、悲観の深さは限られる。
- PMA・独立系整備が部品の 2 割を取る、または整備契約が競争入札に切り替わったら
- 価格を決める力が落ち、整備単価の上昇が物価を下回る。10 年の中立の確率を悲観側に動かす。
- 株価が下がり、純利益の 20 倍以下で自社株買いを続けられる局面になったら
- 同じ還元額でも 1 株あたりの価値の増え方が大きくなり、資本配分の評価が上がる。倍率の見方も 2〜3 倍上げてよい。
見ておくもの
- LEAP の納入数と整備の入庫数(四半期)、サービス売上の伸び率
- 部品の納期遅れ(デリンクエンシー)の残高と整備日数(約 100 日)
- GE9X の損失額と 777X の就航時期
- LEAP の耐久(高温部)の改良キットの効果と保証費用
- 航空会社の収益(IATA の見通し)と世界の出発数
- 国防費の調整予算の成立と、F-35・次世代戦闘機のエンジン調達
- FCF と、株式報酬を差し引いた正味の株主還元
倍率と資本コストの決め方
今の PER 39 倍を見る前に、セグメントごとに市場規模(実質)× シェア × 物価指数で売上を積み上げ、利益率を置いて純利益を出した。倍率は利益ベースの正当化 PER((1−g÷RONIC)÷(k−g)、k 7.75%=基本 8.0% + quality −0.25%、g 4%、RONIC=k+2/3×(事業の ROE−k)、moat=strong)の内側に、筋書きごとに上限の 7〜9.7 割で置いた(10 年の中立は上限 24.4 倍の 8.7 割で 21.2 倍)。堀は強い(据え付け基盤の整備権・FAA 認証・LEAP の寡占)が、航空の循環と整備の山の時期が読めないので上限すれすれには置かない。帳簿の ROE は自社株買いで 40% を超えるため、ROIC 式でも出して小さい方を使った。今の 39 倍にも過去の PER にも寄せていない。結果は中立で今の時価総額に届かないやや割高で、倍率を今の株価に合わせて調整してはいない。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 5% + β 1.29 × 5%。k=基本 8.0% + quality −0.25% = 7.75%。整備の権利と価格決定力による安定を −0.5% で認め、航空需要の循環を +0.25% で戻した。GE9X の損失・LEAP の耐久・部品の供給不足の個別のリスクは k に足さず、悲観・やや悲観の確率と筋書きの数量・利益率で表した。純負債は小さく上乗せは置かない。