結論
イリノイ・ツール・ワークス(ITW)は、自動車の留め具、業務用の厨房機器、材料試験機と電子機器の製造装置、溶接機、接着剤と整備用品、建築用の留め具、包装資材の 7 事業を、多数の事業部に分けて持つ分散型の産業機器メーカーである。2025 年は売上 160 億ドル、営業利益 42 億ドル(営業利益率 26.3%)、純利益 31 億ドル、FCF 27 億ドル。2012 年に始めた「80/20」の経営(顧客と製品の上位 2 割に経営資源を寄せる)で営業利益率を 9 ポイント以上引き上げ、2030 年に約 30% という目標を置く。2026 年 4〜6 月期は有機成長が +4.5% に加速し、通期見通しを引き上げた。
評価の核心は、利益率の高さより「売上を物価以上に伸ばせるか」にある。2025 年の有機成長は 0.0% で、売上は 2014 年の 145 億ドルから 11 年で 1 割増にとどまる。本質価値の計算では、7 事業を市場 × シェア × 価格で積み、10 年の売上を年 5% 前後、営業利益率を 28% 台とした。利益ベースの正当化 PER の上限は、ROIC から直した ROE(約 70%)、成長 4%、資本コスト 8.0%、RONIC 約 40% で 23.0 倍。売上の伸びの実績が弱いので、その 7.3 割の 16.8 倍を中立に置いた。慎重な見方(今の PER が過去の最高圏にあること、成長の実績が弱いこと、借金が増え自己資本が縮んでいること)を悲観側の確率に入れても、確率の加重平均は今の時価総額を 1 割半ばほど下回り(総合の差 −17%)、結論はやや割高である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ITW は「10 年後も存在し、今より強いか」に対して存在すると答えやすい。製品が顧客の費用に占める割合が小さく、切り替えにくく、保守・消耗品が売上の半分近くを占める。80/20 の運営は営業利益率を 2012 年から 9 ポイント以上押し上げた。
課題は 3 つある。第 1 に売上の伸びの実績が弱く、利益率の改善だけでは長期の複利は出ない。成長を最優先にした次の局面が、過去の実績と違う結果を出すかを見る必要がある。第 2 にオーナー利益で、2025 年の FCF は 27 億ドル(純利益の 88%)で、今の時価総額に対する利回りは約 3.4%。2026 年に純利益の 100% 超になる見通しだが、今の値段では利回りは低い。第 3 に資本配分で、還元が純利益を上回り、借金が増え、自己資本が縮んでいる。株価の割に高い自社株買いを続けていないかは、見ておくべき点である。
安全域は、利益ベースの PER(中立で約 17 倍)に対しても今の PER 約 26 倍は高く、大きくない。事業の質は高いが、確率の加重平均は今を 1 割半ばほど下回る。確信度は中程度とする。
何で稼ぐ会社か
7 つの事業で売上の全てを占める(2025 年、億ドル・営業利益率)。自動車 OEM(32.9・21.1%)は自動車メーカー向けの留め具・樹脂部品・内外装の部品で、車の台数と、1 台あたりに使われる部品の数に連動する。食品機器(27.0・27.9%)はホバートなどの業務用厨房機器で、売上の約 3 割は保守・部品(推定)。試験計測・電子機器(28.3・24.6%)は材料試験機のインストロンと、電子機器の組み立て・検査装置で、2026 年 4〜6 月は有機 +10.0%(電子機器 +21%)と加速した。
溶接(18.9・32.9%)は北米で最上位のミラーを持ち、2026 年 4〜6 月は有機 +13.9%(装置 +19%)。ポリマー・流体(17.7・27.9%)は接着剤・整備用の化学品、建設製品(18.2・30.2%)は釘打ち機などの建築用の留め具と屋根・デッキ資材、特殊製品(17.8・31.2%)は飲料の包装材や食品包装、特殊部品。3 事業が営業利益率 30% を超える。
特徴は 多数の事業部を、顧客と製品の上位 2 割に集中して運営する分散型の組織で、本社費は売上の 1% 未満。数量と価格は、対象市場 × シェア × 価格で置いた(開示が無いため市場規模は推定)。北米が中心で、2026 年 4〜6 月の北米の有機成長は +6.4%。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 に 80/20 の運営の仕組みで、細かく分かれた事業部ごとに、売上の上位 2 割の顧客と製品に経営資源を寄せ、残りの 8 割は値上げか縮小で整理する。2012 年以降で営業利益率を 9 ポイント以上上げた実績は、競合に真似しにくい経営の堀である。第 2 に個々の製品が顧客の工程に組み込まれ、ミラーの溶接機、ホバートの厨房機器、インストロンの試験機のように、ブランドと保守網で切り替えにくい。第 3 に、製品の単価が顧客の総費用に占める割合が小さい留め具・化学品が多く、値上げが通りやすい。
資本効率は帳簿で ROE 95%(自社株買いで自己資本が 32 億ドルまで縮み、見かけが膨らんでいる)。税引き後の営業利益を自己資本と純負債の合計(116 億ドル)で割った ROIC は約 28%。会社の指標では 2023 年に 30.4% とされる。営業利益率は 2009 年の 10.8% から 2025 年の 26.3% へ。
弱い所は、売上の伸びである。2025 年の有機成長は 0.0%、過去の 11 年で売上は 1 割増にとどまった。80/20 は利益率を上げる一方で、成長の低い製品を整理するため売上を削る面もある。自動車 OEM は顧客の値下げ圧力が強く、競合のニフコ・A・レイモンドなどと争う。経営は 2024 年にクリス・オハーリヒーが CEO に就き、成長を最優先する「次の局面」へ移った。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ITW の市場は、製造業の生産と設備投資、自動車の生産台数、外食・施設の設備更新、住宅と非住宅の建築、電子機器の生産、に分散していて、単一の市場は無い。売上の半分近くは保守・消耗品・交換部品で、景気の山谷は重機ほど深くない(営業利益率の谷は 2009 年の 10.8%)。2026 年は米国の ISM 製造業指数が 54.5 と拡大側にあり、データセンター・電力・半導体の設備、造船、製造業の国内回帰で溶接機と電子機器が伸びる一方、住宅の改装と北米の外食の設備は弱い。
構造の変化は 3 つある。第 1 に AI とデータセンターで、電子機器の組み立て装置と溶接機の新しい需要が生まれている。第 2 に自動車の電動化で、エンジン周りの部品点数が減る一方、電池・内装・軽量化で留め具と樹脂部品の新しい使われ方が出る。第 3 に中国・インドの安価な競合で、留め具・溶接・包装資材の標準品は値下げ競争になる。
今後 10 年の中立の見方は、業界ノートの塊 B(数量 年 +2%・価格 年 +3%)に整合し、事業ごとに市場の実質成長を 0.8〜3% に置く。電子機器と溶接は少し高く、自動車と特殊製品は低い。競合は事業ごとに異なり、溶接のリンカーン・エレクトリック、食品機器のミドルビーとアリ・グループ、接着剤のヘンケル、建築のシンプソン・マニュファクチャリングなど。細分化した市場で、ITW はそれぞれ上位にいる。
資本政策と M&A
資本配分は、まず事業への再投資(設備投資は売上の 2〜3%)、次に配当(半世紀以上の連続増配)、次に自社株買い、という順で、買収は小さな補完にとどめる。2025 年の還元は 33 億ドル(純利益の約 1.08 倍)で、純負債は 71 億ドルから 84 億ドルに増えた。2026 年は自社株買い 約 15 億ドルの見通しで、FCF は純利益の 100% 超を見込む。2026 年 6 月末の純負債は約 89 億ドル、自己資本は 29 億ドルに縮んだ。
M&A は小さな補完(試験計測・電子機器で 2026 年の有機以外の寄与 +1.5%)が中心で、大型買収はしない方針に見える。成長の優先順位を有機成長に置いた 2024 年以降も、買収で売上を稼ぐ型ではない。バリュー投資の観点では、割高な局面で自社株買いを続ける規律が問題になる。ITW の PER は過去の最高圏にあり、株価が上がり続ける間は自社株買いが 1 株の価値を押し上げるが、下がる局面では借金で買った株が重くなる。本質価値の計算では、還元から株式報酬の増加分(推定で年 1 億ドル弱)を引いた正味で置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026 年 4〜6 月期は有機成長が +4.5% に加速し、溶接が +13.9%、試験計測・電子機器が +10.0%、ポリマー・流体が +7.3%、建設製品が 4 年ぶりの高い伸びと、7 事業のうち 5 事業が伸びた。通期の見通しは 2 度引き上げられ、有機成長の中心値は 3.5%、営業利益率は 26.5〜27.5%。会社は 2030 年に営業利益率 約 30%、ROIC 35% 超、増分利益率 35〜40%、有機成長 4% 超を目標にしており、2025 年の営業利益率 26.3% から毎年 50〜60bp ずつ上げる自助努力が見えている。
80/20 の運営は、競合が追いつきにくい利益率の差を生み、セグメントの 3 つは既に 30% を超える。データセンター・電力・半導体の設備投資と国内回帰は、溶接機と電子機器の長い追い風で、受注が売上を上回って積み上がっている。利益ベースの上限は資本コスト 8.0%・成長 4%・RONIC 約 40% で 23 倍、楽観はその 8 割強(19 倍前後)まで上がり、10 年後の時価総額は今の約 1.6 倍に届く。FCF は純利益の 100% 超を見込む。これが強気の見方である。
慎重な見方
今の PER 約 26 倍は過去 20 期の最高圏(最小 10 倍・中央 21.6 倍)にあり、成長の実績が弱い会社には高すぎる。2025 年の有機成長は 0.0% で、売上は 11 年で 1 割増。2026 年の加速は、溶接機と電子機器という景気と投資の波に乗った部分で、自動車 OEM と食品機器は横ばい、特殊製品は樹脂価格の上昇で利益率が下がった。2026 年の営業利益率の見通し(26.5〜27.5%)は 2025 年の 26.3% からわずかな改善にとどまる。
自己資本は 32 億ドルから 29 億ドルに縮み、純負債は 71 億ドル(2024 年末)から 89 億ドル(2026 年 6 月)に増えた。還元を純利益以上に続け、借り換えで金利が上がれば利益が削られる。ISM が 54.5 の景気の山に近い今、製造業が一服すれば 1% 台の成長に戻り、割高な倍率が縮む。中国・インドの安価な競合と自動車の電動化は、留め具・溶接の標準品の価格を押し下げる。悲観の確率を厚くすべきだ、というのが慎重な見方である。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は直近の加速と目標の信頼性、慎重な見方は成長の実績の弱さと高い倍率で、それぞれ強い。確率は中立 38% を中心に、悲観 12%、楽観 8% と、悲観を楽観より厚くした。過去 10 年に有機成長 4% 超を示せなかった実績は、楽観の確率を抑える。一方で、中立の倍率は利益ベースの上限 23 倍の 7.3 割の 16.8 倍に置いた。やや悲観を 20% に厚くした確率の加重平均は今の時価総額を 1 割半ばほど下回り、結論は「やや割高」である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 289.80 ドル847 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 136.03 ドル398 億ドル)。 今の値に割り戻すと 226.82 ドル663 億ドル、今との差 −18.8%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 428.50 ドル1,253 億ドル | 159.08 ドル465 億ドル | +110.4% | +7.7% | 47.01 ドル137 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 371.33 ドル1,085 億ドル | 153.27 ドル448 億ドル | +87.9% | +6.5% | 115.41 ドル337 億ドル |
| 中立 | 38% | 304.24 ドル889 億ドル | 141.98 ドル415 億ドル | +59.8% | +4.8% | 169.56 ドル496 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 229.49 ドル671 億ドル | 126.24 ドル369 億ドル | +27.4% | +2.5% | 71.15 ドル208 億ドル |
| 悲観 | 12% | 102.67 ドル300 億ドル | 86.55 ドル253 億ドル | −32.2% | −3.8% | 22.71 ドル66 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 289.80 ドル847 億ドル | 136.03 ドル398 億ドル | +52.5% | +4.3% | 425.83 ドル1,245 億ドル |
今の株価時価総額 279.24 ドル816 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:有機成長が 10 年続けて 5% 前後になり、営業利益率は 30% 前後 利益 65 億ドル · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 428.50 ドル1,253 億ドル
2035 年、「顧客起点の技術革新」で新製品の比率が上がり、溶接機(ミラー)は造船・電力・インフラの需要でシェアを 5%、食品機器と試験計測・電子機器もシェアを 3〜4% 上げる。市場の実質成長は事業により 1.2〜4%、価格は物価並みの 1.43 倍(自動車と試験機は 1.36〜1.38 倍)。営業利益率は 29.8% と、会社の 2030 年の目標 30% に届く。純負債は 95 億ドルとほぼ今のままで、年 15 億ドル規模の自社株買いを続け、増配も 7% を保つ。g の内訳は市場の実質 +1.3%・シェア +0.1%・価格 +3.5%。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 23.2 倍(g 4.0%・RONIC 57.0%・k 8.00%)の 8.3 割で PER 19.3 倍、時価総額は 1,252 億ドル。
- 自動車 OEM:数量 901(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.6%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 50 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場 901 億ドル × シェア 4.1% × 価格 1.36 倍
- 食品機器:数量 896(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.7%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 51 億ドル・営業利益 16 億ドル。市場 896 億ドル × シェア 4.0% × 価格 1.43 倍
- 試験計測・電子機器:数量 888(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.8%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 60 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 888 億ドル × シェア 4.9% × 価格 1.38 倍
- 溶接:数量 635(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.3%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 40 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場 635 億ドル × シェア 4.4% × 価格 1.43 倍
- ポリマー・流体:数量 806(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.3%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 35 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場 806 億ドル × シェア 3.0% × 価格 1.43 倍
- 建設製品:数量 1,097(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 2.9%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 32 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場 1097 億ドル × シェア 2.1% × 価格 1.43 倍
- 特殊製品:数量 580(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.1%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 30 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 580 億ドル × シェア 3.6% × 価格 1.43 倍
倍率:帳簿の ROE 155% は 40% 超(自己資本が借金・自社株買いで縮んだ見かけ)なので ROIC から直した(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債 84 億ドル)= 55.3%、ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利 5.75%×(1−22%))× 純負債÷自己資本(1 倍まで)= 106.1%)。正当化 PER 23.2 倍(g 4.0%・RONIC 57.0%=k 8.00%+残る割合×(事業の ROE 106.1%−k)・moat=normal)に対して 19.3 倍(上限の 8.3 割)に置いた。溶接機・電子機器の勢いが続き利益率が 30% 前後に届く最良の筋書き。ただし有機成長の実績が 10 年弱いので上限の 8.3 割にとどめた。
確率:顧客起点の技術革新が実を結び、有機 4% 超の目標を景気をならして満たし、さらに溶接機・電子機器でシェアが上がる、の重なり。過去 10 年の実績からは遠く 8% に置いた。
やや楽観 22% やや楽観:シェアを保ち、営業利益率は 29% 台に上がる 利益 60 億ドル · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 371.33 ドル1,085 億ドル
2035 年、事業の質が保たれ、有機成長は年 4% 前後(市場の実質 1〜3.5% に価格 3〜3.5%)。溶接機・電子機器・ポリマーでは小幅にシェアを取り、自動車 OEM は値下げ圧力で価格が物価を下回る。営業利益率は 29.2% で、2030 年の目標にはわずかに届かない。80/20 の改善余地は残り、事業部の統合で増分利益率は 35% を保つ。純負債は 100 億ドルで、還元は純利益の 100% 近く。競合のリンカーン・エレクトリックやヘンケルに対しても価格を保ち、中国の安価な品には標準品で一部を譲るにとどまる。g の内訳は市場の実質 +1.0%・シェア 0%・価格 +3.4%。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 23.2 倍(g 4.0%・RONIC 55.2%・k 8.00%)の 7.8 割で PER 18.1 倍、時価総額は 1,085 億ドル。
- 自動車 OEM:数量 884(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.5%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 48 億ドル・営業利益 12 億ドル。市場 884 億ドル × シェア 4.1% × 価格 1.33 倍
- 食品機器:数量 870(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.5%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 48 億ドル・営業利益 15 億ドル。市場 870 億ドル × シェア 3.9% × 価格 1.41 倍
- 試験計測・電子機器:数量 846(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.5%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 55 億ドル・営業利益 16 億ドル。市場 846 億ドル × シェア 4.8% × 価格 1.36 倍
- 溶接:数量 605(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.1%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 37 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場 605 億ドル × シェア 4.3% × 価格 1.41 倍
- ポリマー・流体:数量 768(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.2%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 33 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 768 億ドル × シェア 3.0% × 価格 1.41 倍
- 建設製品:数量 1,076(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 2.9%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 31 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 1076 億ドル × シェア 2.0% × 価格 1.41 倍
- 特殊製品:数量 569(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.0%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 29 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 569 億ドル × シェア 3.5% × 価格 1.41 倍
倍率:帳簿の ROE 167% は 40% 超(自己資本が借金・自社株買いで縮んだ見かけ)なので ROIC から直した(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債 84 億ドル)= 53.5%、ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利 5.75%×(1−22%))× 純負債÷自己資本(1 倍まで)= 102.5%)。正当化 PER 23.2 倍(g 4.0%・RONIC 55.2%=k 8.00%+残る割合×(事業の ROE 102.5%−k)・moat=normal)に対して 18.1 倍(上限の 7.8 割)に置いた。2026 年の加速が続き有機成長 4% の筋書き。
確率:会社の 2030 年の目標(営業利益率 約 30%・有機成長 4% 超)に近い姿だが届かない。22% に置いた。
中立 38% 中立:名目成長 5% 台で営業利益率 28%、成長は市場並み 利益 53 億ドル · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 304.24 ドル889 億ドル
2035 年、売上は 2025 年の 1.64 倍の 262 億ドル(年 5%)。事業ごとに市場の実質成長を 0.8〜3%、価格を物価並み(1.41 倍。自動車 OEM は 1.30 倍、試験機は 1.33 倍と値下げ要求で低い)に置く。溶接機は新製品でシェアを 2% 上げ、自動車 OEM と特殊製品は 2〜3% 下げる。営業利益率は 28.3%(2025 年 26.3%、2030 年の目標 30% には届かない)。企業戦略の自助努力は続くが、人件費の上昇を価格で転嫁するのが精いっぱいで増分利益率は下がる。純負債は 100 億ドルで、配当と自社株買いの合計は純利益並み。g の内訳は市場の実質 +1.0%・シェア −0.3%・価格 +3.3%。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 23.0 倍(g 4.0%・RONIC 49.6%・k 8.00%)の 7.3 割で PER 16.8 倍、時価総額は 889 億ドル。
- 自動車 OEM:数量 866(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.2%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 45 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 866 億ドル × シェア 4.0% × 価格 1.30 倍
- 食品機器:数量 837(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.3%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 45 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場 837 億ドル × シェア 3.9% × 価格 1.38 倍
- 試験計測・電子機器:数量 806(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.3%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 51 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場 806 億ドル × シェア 4.7% × 価格 1.33 倍
- 溶接:数量 576(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.0%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 35 億ドル・営業利益 12 億ドル。市場 576 億ドル × シェア 4.3% × 価格 1.41 倍
- ポリマー・流体:数量 731(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.1%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 30 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 731 億ドル × シェア 2.9% × 価格 1.41 倍
- 建設製品:数量 1,044(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 2.9%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 30 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 1044 億ドル × シェア 2.0% × 価格 1.41 倍
- 特殊製品:数量 552(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.9%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 27 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 552 億ドル × シェア 3.5% × 価格 1.41 倍
倍率:帳簿の ROE 143% は 40% 超(自己資本が借金・自社株買いで縮んだ見かけ)なので ROIC から直した(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債 84 億ドル)= 47.9%、ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利 5.75%×(1−22%))× 純負債÷自己資本(1 倍まで)= 91.2%)。正当化 PER 23.0 倍(g 4.0%・RONIC 49.6%=k 8.00%+残る割合×(事業の ROE 91.2%−k)・moat=normal)に対して 16.8 倍(上限の 7.3 割)に置いた。製品が顧客の費用に占める割合が小さく切り替えにくい質の高い利益で ROE も高いが、売上の伸びの実績が 11 年で 1 割増と弱く、ROE の大半は借金による自己資本の縮みで膨らんでいるため、上限の 7.3 割。
確率:業界ノートの中立(数量 年 +2%・価格 年 +3%)に、ITW の価格を決める力(80/20)と、有機成長の実績の弱さ(過去 10 年の売上はほぼ横ばい)を合わせた落としどころ。
やや悲観 20% やや悲観:シェアが下がり、成長は物価をわずかに上回る程度 利益 41 億ドル · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 229.49 ドル671 億ドル
2035 年、市場の実質成長が 0〜2% にとどまり、自動車 OEM(数量 横ばいでシェア 7% 減)、試験計測・電子機器、食品機器でシェアを 3% 前後落とす。価格は物価を下回る 1.25〜1.36 倍。営業利益率は 25.8% まで下がり、2025 年の水準を割る。純負債は 115 億ドルに増え、企業買収を 15 億ドル試みるが利益への寄与は小さい。有機成長は年 2% 台で、過去 10 年に近い。溶接機と電子機器の需要は残るが、投資の波が去ると数量の伸びは市場並みに戻り、80/20 による整理の効果も出尽くす。配当は増配を保つが、増配の幅は 5% 程度に縮む。g の内訳は市場の実質 +0.7%・シェア −0.5%・価格 +3.2%。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 22.7 倍(g 4.0%・RONIC 43.8%・k 8.00%)の 7.2 割で PER 16.4 倍、時価総額は 671 億ドル。
- 自動車 OEM:数量 800(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.8%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 38 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場 800 億ドル × シェア 3.8% × 価格 1.25 倍
- 食品機器:数量 773(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.0%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 39 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場 773 億ドル × シェア 3.7% × 価格 1.33 倍
- 試験計測・電子機器:数量 731(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.8%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 43 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場 731 億ドル × シェア 4.6% × 価格 1.28 倍
- 溶接:数量 522(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.6%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 29 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 522 億ドル × シェア 4.1% × 価格 1.35 倍
- ポリマー・流体:数量 676(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.9%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 26 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 676 億ドル × シェア 2.9% × 価格 1.36 倍
- 建設製品:数量 975(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 2.7%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 26 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場 975 億ドル × シェア 2.0% × 価格 1.36 倍
- 特殊製品:数量 526(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.6%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 24 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 526 億ドル × シェア 3.4% × 価格 1.36 倍
倍率:帳簿の ROE 171% は 40% 超(自己資本が借金・自社株買いで縮んだ見かけ)なので ROIC から直した(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債 84 億ドル)= 42.0%、ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利 5.75%×(1−22%))× 純負債÷自己資本(1 倍まで)= 79.6%)。正当化 PER 22.7 倍(g 4.0%・RONIC 43.8%=k 8.00%+残る割合×(事業の ROE 79.6%−k)・moat=normal)に対して 16.4 倍(上限の 7.2 割)に置いた。製造業の一服で有機成長が 1% 台に落ち、利益率が低下する筋書きなので上限の 7.2 割。
確率:中国・インドの安価な競合と顧客の値下げ要求で、価格と数量の両方が重くなる姿。ITW の過去の実績に近く 2 割に置いた。
悲観 12% 悲観:事業の質が崩れ、売上は物価並みにも伸びず、営業利益率は 2 割まで下がる 利益 21 億ドル · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 102.67 ドル300 億ドル
構造的に負けて、もう優良ではなくなっている 2035 年。中国・インドの安価な競合が自動車 OEM・溶接・建設製品で値下げを仕掛け、ITW は数量を守るために価格を物価の 6 割しか上げられない。自動車 OEM の電動化で使われる部品点数が減り(数量 年 −1%)、シェアも 15% 失う。営業利益率は 20% 強まで下がり、純利益は 21 億ドル。80/20 の効果が出尽くし、企業買収に 20 億ドルを費やして成果が出ない。配当と自社株買いを維持するために純負債は 140 億ドルまで増え、借り換えの金利で利益がさらに削られる。g の内訳は市場の実質 +0.3%・シェア −1.0%・価格 +2.9%。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 21.0 倍(g 4.0%・RONIC 25.1%・k 8.00%)の 6.8 割で PER 14.3 倍、時価総額は 300 億ドル。
- 自動車 OEM:数量 724(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.0%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 29 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 724 億ドル × シェア 3.5% × 価格 1.15 倍
- 食品機器:数量 700(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.2%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 30 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 700 億ドル × シェア 3.5% × 価格 1.22 倍
- 試験計測・電子機器:数量 663(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.9%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 32 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 663 億ドル × シェア 4.2% × 価格 1.15 倍
- 溶接:数量 450(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.5%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 20 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 450 億ドル × シェア 3.7% × 価格 1.22 倍
- ポリマー・流体:数量 600(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.2%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 19 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 600 億ドル × シェア 2.6% × 価格 1.22 倍
- 建設製品:数量 900(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 2.2%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 20 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 900 億ドル × シェア 1.8% × 価格 1.22 倍
- 特殊製品:数量 476(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.8%(ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 18 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 476 億ドル × シェア 3.1% × 価格 1.22 倍
倍率:帳簿の ROE 70% は 40% 超(自己資本が借金・自社株買いで縮んだ見かけ)なので ROIC から直した(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債 84 億ドル)= 23.3%、ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利 5.75%×(1−22%))× 純負債÷自己資本(1 倍まで)= 42.2%)。正当化 PER 21.0 倍(g 4.0%・RONIC 25.1%=k 8.00%+残る割合×(事業の ROE 42.2%−k)・moat=normal)に対して 14.3 倍(上限の 6.8 割)に置いた。中国・インド勢の値下げと電動化で数量を失う筋書き。成長の弱さ・優良さの崩れは g と ROE に入れ、式の外では引かない。
確率:構造的な負けの筋(中国勢の値下げ・自動車の電動化・買収の失敗・高い自社株買いの価格)が同時に起きる姿。慎重な見方を反映して 12% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
自動車 OEM
自動車メーカー向けの留め具・樹脂と金属の部品・内外装の機能部品(全世界の軽自動車から商用車まで)。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 800 | 4.1% | 33 | 7 |
| 10 年後 中立 | 866 | 5.2% | 45 | 10 |
取り方:自動車 OEM 向けの留め具・成形部品・組み立て部品の対象市場を 約 800 億ドル(推定。世界の自動車部品のうち留め具・樹脂部品・小物部品の範囲を、各業界団体と競合の売上から足した概算)、ITW のシェアを約 4.1% と置いた。2025 年の売上は 32.9 億ドル、営業利益率 21.1%(2024 年から +150bp)、有機成長 +2.0%。売上 = 市場 × シェア × 価格(価格指数は 2025 年 = 1)。競合はニフコ・A・レイモンド・スタンレー・ブラック&デッカーの留め具事業など。ITW の事業は自動車の台数と電動化で変わる部品の使われ方に左右され、顧客の値下げ要求が強い。
食品機器
ホバートなどの業務用厨房機器(食器洗浄機・調理機器・冷蔵・計量)と保守サービス。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 700 | 3.9% | 27 | 8 |
| 10 年後 中立 | 837 | 5.3% | 45 | 13 |
取り方:業務用厨房機器とそのサービス・部品の世界市場を 約 700 億ドル(推定。機器と保守サービスの合計)、ITW のシェアを約 3.9% と置いた。2025 年の売上は 27.0 億ドル、営業利益率 27.9%、有機成長 +0.8%。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合はアリ・グループ(ウェルビルトを傘下に持つ)、ミドルビーなど。北米の外食・施設の設備更新に左右され、売上の約 3 割は保守・部品で安定する(推定)。
試験計測・電子機器
材料の試験機(インストロン)、電子機器の組み立て・検査装置、計測機器、ソフトウェア。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 4.7% | 28 | 7 |
| 10 年後 中立 | 806 | 6.3% | 51 | 14 |
取り方:材料試験・計測・電子機器の組み立て装置の対象市場を 約 600 億ドル(推定。電子機器向けのスクリーン印刷・検査装置、材料試験機、計測機器の合計)、ITW のシェアを約 4.7% と置いた。2025 年の売上は 28.3 億ドル、営業利益率 24.6%、有機成長 −1.4%(2026 年 4〜6 月は +10.0%、電子機器 +21%)。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合は ASMPT、ツビック・ローエル、アンフェノール傘下のエムティーエス(MTS)、キーサイトなど。
溶接
ミラー・ホバート・ブラザーズの溶接機と消耗品(溶接棒・ワイヤ)、プラズマ切断機。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 450 | 4.2% | 19 | 6 |
| 10 年後 中立 | 576 | 6.0% | 35 | 12 |
取り方:溶接機・消耗品・切断機の世界市場を 約 450 億ドル(推定。装置と消耗品の合計)、ITW のシェアを約 4.2% と置いた。2025 年の売上は 18.9 億ドル、営業利益率 32.9%、有機成長 +2.0%(2026 年 4〜6 月は +13.9%、装置 +19%)。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合はリンカーン・エレクトリック、ESAB、フロニウス、ダイヘン、神戸製鋼。北米の産業用溶接機ではミラーが最上位のブランド。
ポリマー・流体
接着剤・シーラント、整備用の化学品、自動車アフターマーケット用品、流体の分配・潤滑。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 2.9% | 18 | 5 |
| 10 年後 中立 | 731 | 4.1% | 30 | 9 |
取り方:接着剤・シーラント・整備用品・潤滑の対象市場を 約 600 億ドル(推定)、ITW のシェアを約 2.9% と置いた。2025 年の売上は 17.7 億ドル、営業利益率 27.9%、有機成長 −0.2%(2026 年 4〜6 月は +7.3%)。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合はヘンケル、HB フラー、シーカ、WD-40、3M など。原料は原油由来の樹脂・化学品で、価格と費用のずれが利益率に出やすい。
建設製品
住宅・非住宅の建築用の留め具(釘打ち機のパスロードなど)、屋根材・デッキ用の資材、アンカー。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 900 | 2.0% | 18 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,044 | 2.9% | 30 | 9 |
取り方:建築用の留め具・屋根材・デッキ用資材・アンカーの対象市場(主に北米)を 約 900 億ドル(推定)、ITW のシェアを約 2.0% と置いた。2025 年の売上は 18.2 億ドル、営業利益率 30.2%、有機成長 −5.1%(住宅の改装と新築の弱さ)。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合はシンプソン・マニュファクチャリング、スタンレー・ブラック&デッカー、ヒルティなど。2026 年 4〜6 月の有機成長は +2.0% で、4 年ぶりの高い伸びと説明された。
特殊製品
包装の資材と機器(飲料の 6 缶包装のハイコーンなど)、食品包装、家電・産業向けの特殊部品。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格ITW のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 500 | 3.6% | 18 | 6 |
| 10 年後 中立 | 552 | 4.9% | 27 | 9 |
取り方:包装の資材・機器、食品包装、家電や産業向けの特殊部品の対象市場を 約 500 億ドル(推定)、ITW のシェアを約 3.6% と置いた。2025 年の売上は 17.8 億ドル、営業利益率 31.2%、有機成長 +1.0%。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合はシールド・エア、アムコアなどの包装資材メーカー。2026 年は樹脂価格の上昇で、価格と費用のずれの影響が最も大きい事業(営業利益率が約 110bp 下がった)。
リスクと懸念
成長の実績の弱さ
2025 年の有機成長は 0.0% で、売上は 2014 年から 11 年で 1 割増にとどまる。80/20 は利益率を上げる一方、売上の小さな顧客と製品を整理する面があり、有機成長 4% 超という目標を景気をならして満たせるかは未確認。2026 年の加速も、溶接機と電子機器という投資の波に乗った部分が大きい。
高い倍率の縮み
今の PER は約 26 倍で、過去 20 期の最小 10 倍・中央 21.6 倍に比べて最高圏にある。成長の実績が弱いまま倍率が中央値へ戻れば、利益が伸びても時価総額は伸びない。利益ベースの上限(27 倍)は成長 4.5%・RONIC 約 40% を前提にしており、成長が 3% に鈍ると上限は 20 倍台前半に下がる。
景気の山と製造業の循環
2026 年 9 月の ISM 製造業指数は 54.5 と景気の山に近い。過去のリーマン(2007-09 の下げ −52%)では営業利益率が 10.8% まで落ち、コロナ(2020)でも売上は 126 億ドルまで減った。設備投資と自動車の生産が同時に落ちると、自動車 OEM・溶接・建設製品が同時に減る。
価格と費用のずれ
樹脂・化学品など原油由来の原料が上がると、値上げが追いつくまで営業利益率が下がる。2026 年 4〜6 月は約 40bp の押し下げで、特殊製品は約 110bp 低下した。会社は下期に緩和すると見るが、原料価格の上昇が続けば有機成長が価格に偏って数量が落ちる。
借金と自社株買い
純負債は 2024 年末の約 71 億ドルから 2026 年 6 月の約 89 億ドルへ増え、自己資本は 29 億ドルに縮んだ。借金の借り換えで金利が 5.75% 前後になると、利払いが増える。株価が高い局面で自社株買い(2026 年 約 15 億ドル)を続けると、1 株の価値を壊す側に働く可能性がある。
自動車の電動化と顧客の値下げ要求
自動車 OEM(売上の約 2 割)は顧客の値下げ要求が強く、電動化でエンジン周りの部品が減る。ニフコ・A・レイモンドなどの競合と、中国の部品メーカーの追い上げに挟まれ、価格は物価を下回る前提を置いた。営業利益率は 21% と全事業で最も低い。
関税と貿易政策
ITW は北米を中心に地域ごとに生産する方針で、関税の直接の影響は限られるとされるが、鉄鋼・アルミの関税は原材料の価格を押し上げる。報復関税で欧州・アジアの売上が減ると、有機成長の押し上げが弱まる。価格と費用のずれの一因にもなる。
今後の分かれ目
- 有機成長が 3 四半期連続で 4% を超え、7 事業のうち 5 事業以上が伸びる
- 成長の実績の弱さという最大の弱点が解消へ向かい、楽観・やや楽観の確率を上げる。倍率は利益ベースの上限の内側(17〜20 倍)で、今の PER が正当化される度合いが上がる。
- ISM 製造業指数が 50 を割り込み、自動車の生産が減る
- 自動車 OEM・溶接・建設製品が同時に減り、やや悲観・悲観の確率を厚くする。谷の PER は過去 20 期で 10〜16 倍。
- 営業利益率が 2027 年に 28% を超え、2030 年の目標 30% が見える
- 利益率の構造的な切り上げが確認され、10 年の営業利益率を 29〜30% 台に上げる。楽観側の確率を上げる。
- 樹脂・化学品の価格がさらに上がり、価格と費用のずれが 2027 年も続く
- 特殊製品・自動車 OEM・ポリマー・流体の利益率が下がり、中立の営業利益率を 27% 台前半に下げる。
- 純負債が 100 億ドルを超え、借り換えの金利が 6% に近づく
- 利払いが純利益を 1〜2% 押し下げ、自社株買いが縮む。やや悲観の確率を上げる。
- 自動車の電動化が加速し、1 台あたりの留め具・樹脂部品の数が減る
- 自動車 OEM の数量を 10 年で 1 割下げ、悲観の筋書き(シェア低下)の確率を厚くする。
見ておくもの
- 有機成長(2026 年 4〜6 月は +4.5%、事業ごとの広がり)
- 営業利益率(2026 年 26.5〜27.5%、2030 年の目標 約 30%)と増分利益率(40% 前後)
- 溶接機と電子機器の受注が売上を上回って続くか
- 価格と費用のずれ(樹脂・化学品の価格、特殊製品の利益率)
- 純負債・自己資本と自社株買いの額
- ISM 製造業指数と自動車の生産台数
- 2026 年 10〜12 月期決算(通期見通しの再上げの有無)
倍率と資本コストの決め方
今の PER 約 26 倍(GAAP の 2025 年)や、予想 PER は見ずに、7 事業ごとに市場 × シェア × 価格(10 年 1.41 倍が基本。自動車 OEM と試験機は低く置いた)で売上と利益を積み、倍率は利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)(k 8.0%・g は上限の 4%・RONIC = k + 1/2 ×(ROIC から直した ROE − k))の上限に対して置いた。10 年の中立は上限 23.0 倍の 7.3 割の 16.8 倍(成長の実績が弱く、ROE は縮んだ自己資本で膨らむため 8 割以上には置かない)。k は保守・消耗品が厚く景気の振れが小さい分(cycle +0.25%)と、切り替えにくい製品の値段の守り(pricing −0.25%)が打ち消し合い、quality は 0。同じ領域の DOV・IEX・IR と同じ物差しで、上限の 7〜8 割に揃えた。今の時価総額に寄せる調整はしていない。結果として確率の加重平均は今より 1 割半ば下に出た。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality 0。景気の振れ(+0.25%)と値段の守りやすさ(−0.25%)が打ち消し合う。成長の実績の弱さ・自社株買いと借金・自動車と電子機器の値下げ圧力は k に足さず、悲観側の確率と筋書きで表した。存続を疑う要素はなく上乗せは 0。