結論
パーカー・ハネフィン(Parker Hannifin)は、油圧・空圧・流体の制御・ろ過・密封・電気機器などの動き・流れの制御部品(モーション&コントロール)の世界最大手である。2026 年 6 月期は売上 215 億ドル(オーガニック +6.6%)、営業利益率は調整後のセグメントで 27.3%、純利益 36.5 億ドル(GAAP)。売上は北米産業 84 億、国際産業 60 億、航空 71 億ドルの 3 本柱で、受注残は過去最高の 128 億ドル、うち航空が 85 億ドルである。
利益率は 2015 年 6 月期の営業利益率 11.6% から 2026 年 6 月期の 21.9% へ、10 年で約 10 ポイント切り上がった。航空の増収(旅客機の部品・整備、防衛)と、全社の経営の仕組み(ウィン・ストラテジー)、買収した事業の統合が効いている。会社は 2031 年 6 月期に調整後のセグメント営業利益率 30% を目標に掲げた。ただし景気で需要が動く産業向けが 7 割で、2009 年のリーマン不況では営業利益率が 8.6%、株価は山から谷で 60% 下げた。
バリュー投資の観点では、事業は優良で、交換・保守で稼ぐ割合が高く、資本配分も 70 期連続の増配に表れる規律がある。問題は値段で、時価総額 1,234 億ドルは純利益の約 34 倍、自己資本の 8 倍に当たる。数量 × 価格で 10 年を積み上げ、倍率は利益ベースの正当化 PER で置く。上限は 17.6 倍(RONIC 約 16%・g 4%・k 8.25%)で、中立はその 8 割の 14.0 倍。10 年後は純利益 74 億ドルで時価総額は約 1,040 億ドル、今の約 0.85 倍にとどまる。割り引くと今の値段を 4 割強下回る。今を上回るのは楽観(今の約 1.3 倍)とやや楽観の筋書きだけで、事業の質は評価しつつ、値段の余白はない。未成立の大型買収(フィルトレーション・グループ 92.5 億ドル、CIRCOR 航空 25.5 億ドル)は入れず、今の会社だけで評価した。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、パーカー・ハネフィンは「10 年後も存在し、今より強いか」と聞かれれば強い側にある。航空の認証と交換部品の囲い込み、約 4 割に及ぶアフターマーケット、顧客が価格より稼働を優先する産業の部品という性格は、10 年では損なわれにくい。電動化は油圧部品を減らすが、電動・熱管理で埋められる余地もある。
オーナー利益(成長のための再投資を引いた株主のもの)は大きく、事業そのものの ROE が 40% 前後と高いため、利益の伸びに必要な投資は小さい。2026 年 6 月期の純利益 36.5 億ドルに対し、営業キャッシュフローは 43.6 億ドルで、利益の質も良い。ただし産業向けの景気の山谷(2009 年の営業利益率 8.6%)と、買収で成長を買う癖は見る必要がある。買収倍率が 19.6 倍の案件を重ねると、のれんが積み上がり、収益率が資本コストに近づく。
今の値段は時価総額 1,234 億ドルで、純利益の約 34 倍。利益ベースの上限(PER 約 18 倍)と比べても、利益の伸びと航空の好調の両方を先取りしている。資本コスト 8.25% で割り引いた本質価値は今の値段を 4 割強下回る。事業は高く評価できるが、安全域は無い。確信度は、航空と産業の混合で見通しやすいため中程度から高めとした。
何で稼ぐ会社か
売上は 3 つの事業から成る。北米産業(2026 年 6 月期 84 億ドル)は、建設・農業機械、工作機械、半導体装置、食品・飲料、エネルギーなどの装置向けに、油圧ポンプ・バルブ・ホース・継手・ろ過・空圧機器を、専門の販売店網を通して売る。国際産業(60 億ドル)は欧州・アジアの同種の事業で、現地の機械メーカー向けが中心。航空(71 億ドル)は、旅客機・軍用機・ヘリ向けの飛行制御、油圧、燃料、エンジン系統、車輪・ブレーキ、センサーなどで、メギット(2022 年に約 88 億ドルで買収)を取り込んで厚くなった。
収益の特徴は 3 つある。第 1 に、1 つの機械に使う部品点数が多く、1 点ずつの単価は小さいが機械が止まると損失が大きいので、顧客は価格より納期と品質を優先する。第 2 に、売上の約 4 割は交換・保守・消耗品のアフターマーケット(推定)で、景気が悪くても機械の稼働台数が下支えになる。航空は特に、機体の稼働時間が増えるほど交換部品が売れ、新品より利益率の高いアフターが、航空の売上の約半分を占める。第 3 に、多数の事業単位に権限を渡し、改善(ウィン・ストラテジー)で利益率を競わせる分権の経営で、買収した会社の利益率を数年で引き上げてきた。
課題は、産業向けが景気の影響を大きく受けること(製造業の ISM 指数、農業・自動車の弱さ)、買収の償却費で GAAP の利益が調整後より約 15% 低いこと、そして航空が全社利益の 3 割強を占めるため民間機の生産・整備の遅れがそのまま効くことである。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 に、専門販売店網と部品の互換性・認証である。航空の部品は機体ごとに認証を取っており、一度採用されると 30 年以上、交換部品も同じ会社から買う。第 2 に、4 つの技術(油圧・空圧・電気機械・ろ過・密封)の幅で、顧客は 1 社から 1 つの装置に必要な動き・流れの部品をまとめて買える。第 3 に、ウィン・ストラテジーによる分権経営で、買った会社の営業利益率を 20% 台に引き上げる実績がある(クラーコー・LORD・メギット)。
資本効率は高い。ROE は 2024 年 6 月期 23.6%、2025 年 6 月期 25.8%、2026 年 6 月期 23.7%。買収で積み上がったのれん・無形資産を除けば、事業そのものの ROE は 40% 前後と推定する。営業キャッシュフローは売上の約 20%(43.6 億ドル)と純利益を上回る。配当は 70 期連続で増え、2026 年は 11% 増配した。
弱い所もある。産業向けは細分化した市場で競合が多く(ボッシュ・レックスロス、ダンフォス、ドナルドソン、ダナハー傘下のポール、エマソン、ムーグ、ウッドワード、コリンズ・エアロスペース、サフラン、ハネウェル)、価格を決める力は部品ごとに差がある。買収で成長を買う戦略は、買収倍率が高い局面(フィルトレーション・グループは償却前利益の 19.6 倍)では、投資の収益率が資本コストを下回るおそれがある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
事業環境は二極化している。航空は 2026 年に民間機の増産(ボーイング・エアバスの受注残は数年分以上)と防衛予算の増加(2027 会計年度の要求は 1.5 兆ドル)が重なり、同社の航空部門はオーガニック成長 13%、利益率 29.8% に達した。受注残は 85 億ドルで、整備需要(機体の高稼働と老朽化)も強い。一方、産業は北米で 2026 年に入って回復に転じた(ISM 製造業指数は 9 月に 54.5、1 月に 2022 年 2 月以来の高さ)が、農業機械と自動車は弱く、住宅向けも金利 5% の下で鈍い。
構造の変化は 3 つある。第 1 に、データセンター・半導体・エネルギー向けの冷却・流体・ろ過の需要で、液冷システムや高純度の流体制御は同社の成長の芽である。第 2 に、電動化により油圧・内燃機関向けの部品が減る一方、電動アクチュエーターや熱管理の需要が増える。第 3 に、中国・インドのメーカーが標準品で値下げを続け、国際産業の標準部品の価格を押さえる。
競争の形は、油圧は同社・ダンフォス・ボッシュ・レックスロス・イートン(油圧事業はダンフォスへ売却)・ドーバーなどで細分化、ろ過はドナルドソン・ダナハー(ポール)・マン+フンメル・フィルトレーション・グループ、航空は同社・コリンズ・サフラン・ハネウェル・ムーグ・ウッドワードが並ぶ。業界ノートの置き方(中立:10 年数量 年 +2%・価格 年 +3.5%、航空は数量 年 +4〜5%)に沿い、会社固有の差は航空の厚みと買収余地で出した。
資本政策と M&A
資本配分は規律が高い。2026 年 6 月期は配当 9.4 億ドルと自社株買い 12.6 億ドルで約 22 億ドルを還元し、買収に純額 10.1 億ドル(カーティス・インスツルメンツ)を使った。営業キャッシュフロー 43.6 億ドルの約半分を還元に回し、残りで債務を返しながら買収に備える形である。70 期連続の増配で、2026 年は 11% 増やした。
M&A は成長の中心で、クラーコー(2017 年・約 43 億ドル)、LORD(2019 年・約 37 億ドル)、メギット(2022 年・約 88 億ドル)と大型案件を続け、統合後に利益率を引き上げた。今は未成立の 2 件がある。フィルトレーション・グループ(92.5 億ドル、2025 暦年売上 約 20 億ドル・アフターが 85%・償却前利益の 19.6 倍)と CIRCOR 航空(25.5 億ドル、2026 暦年売上 約 2.7 億ドル・利益率 40% 超)で、成立すれば純負債が約 110〜120 億ドル増える。資料は完了の有無で割れる(会社の決算書類は保留扱い)。今の時価総額は今の株数で測るため、今の会社だけで書き、成立した時の得失は文章と確率で触れる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
航空は受注残が過去最高の 85 億ドルで、民間機の増産(ボーイング・エアバスの受注残は数年分以上)、防衛予算の増加、機体の高稼働による整備需要が重なる。同社の航空の利益率は 29.8%(調整後)で、アフターが約半分と高い収益を支える。メギットを取り込んだことで、車輪・ブレーキや防衛・宇宙の部品を取り込め、2030 年代にかけて高い 1 桁の成長が続く。
産業は、2026 年に北米と国際で回復が戻り、ISM 指数が拡大側に入った。データセンターの冷却、半導体装置、エネルギーの設備投資が重なり、ろ過の拡大(フィルトレーション・グループが成立すれば、アフター 85% の事業が加わる)が価値を上積みする。ウィン・ストラテジーで買収した会社の利益率を引き上げる実績があり、会社が掲げた 2031 年 6 月期の調整後セグメント営業利益率 30%(従来 27%)は、航空の 30% 台と産業の 27〜28% の合計で届く。
配当は 70 期連続で増え、自社株買いも続く。事業の ROE が 40% 前後と高く、成長に必要な再投資が小さいので、利益のほぼ全額を株主に返せる。10 年で純利益が 2.7 倍(約 98 億ドル)になれば、上限に近い PER 16.8 倍で時価総額は約 1,640 億ドル(今の約 1.3 倍)に達する。これが強気の見方で、楽観の筋書きの下敷きである。
慎重な見方
今の純利益は景気と航空の山に当たる。産業向けは 7 割を占め、リーマンでは営業利益率が 8.6%、株価は山から谷で 60% 下げた。2026 年 6 月期の売上のオーガニック成長 +6.6% は価格の上昇が大きく、数量の戻りは農業・自動車・住宅で弱い。金利 5% の世界で、設備投資が冷えれば油圧・空圧の受注は落ちやすい。
航空は全社利益の 3 割強で、民間機の増産が供給網(エンジン・座席・部品)の遅れで進まない、あるいは防衛予算が議会で削られると、受注残の消化が遅れる。メギットの買収で得た無形資産の償却が大きく、GAAP の利益は調整後より約 15% 低い。さらに、買収で成長を買う戦略は、フィルトレーション・グループ(償却前利益の 19.6 倍)のような高い倍率の案件で、資本コストを下回る収益率になるおそれがある。
電動化で油圧部品が減り、中国・インドの標準品が値下げを続け、競合のダンフォス・ボッシュ・レックスロスも技術を磨く。PER 34 倍は過去 20 期の中央値 20.6 倍の 1.6 倍で、利益ベースの PER(14〜18 倍)に戻れば時価総額は 4 割以上減る。これが慎重な見方で、事業の質ではなく値段が論点である。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は航空の質と受注残、利益率の切り上げの実績で説得力がある。慎重な見方は倍率の回帰と産業の循環で強い。確率は 楽観 10%・やや楽観 22%・中立 38%・やや悲観 20%・悲観 10% と、循環産業として悲観をやや厚めに置いた。悲観には構造的な負け筋(電動化・標準品の値下げ・買収の失敗)を 10% 置いた。今の時価総額を上回るのは楽観・やや楽観だけ(確率の合計 32%)。中立の倍率は上限 17.6 倍の 8 割に置いた。確率の加重平均で割り引くと今の値段を 4 割強下回り、結論は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した株価時価総額 805.83 ドル1,032 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 293.60 ドル376 億ドル)。 今の値に割り戻すと 562.24 ドル720 億ドル、今との差 −37.1%、 期待の年率 +2.1%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,280 ドル1,639 億ドル | 380.17 ドル487 億ドル | +85.8% | +6.4% | 166.00 ドル213 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 1,036 ドル1,327 億ドル | 340.36 ドル436 億ドル | +54.1% | +4.4% | 302.74 ドル388 億ドル |
| 中立 | 38% | 814.36 ドル1,043 億ドル | 301.33 ドル386 億ドル | +24.9% | +2.2% | 423.96 ドル543 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 550.43 ドル705 億ドル | 245.90 ドル315 億ドル | −10.8% | −1.1% | 159.27 ドル204 億ドル |
| 悲観 | 10% | 304.37 ドル390 億ドル | 170.18 ドル218 億ドル | −46.9% | −6.1% | 47.46 ドル61 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 805.83 ドル1,032 億ドル | 293.60 ドル376 億ドル | +23.1% | +2.1% | 1,099 ドル1,408 億ドル |
今の株価時価総額 893.21 ドル1,144 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:航空が 2030 年代も伸び続け、産業のアフターが厚くなり、調整後利益率が 31% 台に届く 利益 98 億ドル · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 1,280 ドル1,639 億ドル
2036 年 6 月期、航空の市場は 2026 年比 年 +5%(1.63 倍)、価格も物価を上回って(1.45 倍)、売上は 175 億ドル、利益率 31.5%。北米産業は数量 年 +3.2%、国際産業は +3.4%、シェアも各 5% 上がり、2 つの産業で売上 295 億ドル、利益率 28〜29%。全社売上は 470 億ドル(10 年で 2.2 倍、年 +8.1%)、営業利益 126 億ドル、純利益は 98 億ドルで 2026 年の 2.7 倍。調整後のセグメント利益率 31% 台は、会社の目標 30% をやや超えるが、買収した会社の改善の積み上げと航空のアフターの厚みで説明できる。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 18.7 倍(g 4.0%・RONIC 19.4%・k 8.25%)の 9.0 割で PER 16.8 倍、時価総額は 1,639 億ドル。 還元は純利益の約 8 割に達する。
- 北米産業:数量 1,151(北米の対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 14.8%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 170 億ドル・営業利益 49 億ドル。市場 1,151 億ドル × シェア 10.5% × 価格 1.41 倍
- 国際産業:数量 2,096(北米以外の対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 6.0%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 125 億ドル・営業利益 35 億ドル。市場 2,096 億ドル × シェア 4.2% × 価格 1.41 倍
- 航空システム:数量 1,010(航空向けの対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 17.3%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 175 億ドル・営業利益 55 億ドル。市場 1,010 億ドル × シェア 12.0% × 価格 1.45 倍
倍率:正当化 PER 18.7 倍(g 4.0%・RONIC 19.4%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 30.5%−k)・moat=normal)に対して 16.8 倍(上限の 9.0 割)に置いた。航空の増産と産業の回復が重なり利益率が 2031 年の目標を前倒しで満たす最良の筋書き。ただし買収の倍率が高く収益が k に近づくので上限の 9.0 割にとどめた。
確率:航空の長期の増産・防衛・整備が続き、産業の買収と統合も成功し、シェアも上がる必要がある。大型の構造変化が味方する筋書きで 1 割。
やや楽観 22% やや楽観:航空は 2030 年代前半に成長が緩み、産業は名目成長で、調整後の利益率は 30% 前後 利益 86 億ドル · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 1,036 ドル1,327 億ドル
2036 年 6 月期、航空の市場は 2026 年比 年 +4.8%(1.60 倍)、シェアは小幅に上がり、価格は物価並み。北米産業は年 +2.2%、国際産業は +2.5% で、売上は全社で 427 億ドル(年 +7.1%)。営業利益は 111 億ドル、純利益 86 億ドル(2026 年の 2.4 倍)。電動化で油圧部品は減るが、電動アクチュエーターと熱管理で補い、データセンターの冷却も加わる。PER 15.4 倍(利益ベースの正当化 PER の上限 18.2 倍の 8.5 割。g 4.0%・RONIC 17.5%・moat=normal・k 8.25%)。買収はこの筋書きに含めず、会社の自力成長だけで描く。
- 北米産業:数量 1,046(北米の対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 14.4%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 150 億ドル・営業利益 42 億ドル。市場 1,046 億ドル × シェア 10.2% × 価格 1.41 倍
- 国際産業:数量 1,920(北米以外の対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 5.8%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 111 億ドル・営業利益 30 億ドル。市場 1,920 億ドル × シェア 4.1% × 価格 1.41 倍
- 航空システム:数量 992(航空向けの対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 16.7%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 165 億ドル・営業利益 51 億ドル。市場 992 億ドル × シェア 11.7% × 価格 1.42 倍
倍率:正当化 PER 18.2 倍(g 4.0%・RONIC 17.5%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 26.8%−k)・moat=normal)に対して 15.4 倍(上限の 8.5 割)に置いた。航空は堅調で産業が緩やかに回復する筋書き。
確率:航空の長期成長は続くが中国・欧州の追い上げで価格はわずかに弱く、産業は標準品の値下げを受ける展開。強気の見方に近い。
中立 38% 中立:航空は 2030 年代に高い 1 桁、産業は物価並みで、利益率は営業利益率 25% 前後 利益 74 億ドル · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 814.36 ドル1,043 億ドル
2036 年 6 月期、航空の対象市場は 2026 年比 年 +3.8%(1.45 倍)、価格は物価並みで 144 億ドル、利益率 30%。北米産業は数量 年 +1.5%(1.16 倍)・価格 1.41 倍で 137 億ドル、国際産業は 102 億ドル。全社売上は 384 億ドル(年 +5.9%。会社の長期目標 オーガニック 4〜6% に買収以外の価格の上昇を含む)、営業利益 96 億ドル(利益率 25%)、純利益 74 億ドル(2026 年の 2 倍)。調整後のセグメント利益率は 29% 前後で、会社の目標 30% は届かないとみる。借り換えの利払い増は純利益に反映。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 17.6 倍(g 4.0%・RONIC 15.8%・k 8.25%)の 8.0 割で PER 14.0 倍、時価総額は 1,043 億ドル。
- 北米産業:数量 974(北米の対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 14.1%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 137 億ドル・営業利益 37 億ドル。市場 974 億ドル × シェア 10.0% × 価格 1.41 倍
- 国際産業:数量 1,792(北米以外の対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 5.7%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 102 億ドル・営業利益 27 億ドル。市場 1,792 億ドル × シェア 4.0% × 価格 1.41 倍
- 航空システム:数量 899(航空向けの対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 16.1%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 144 億ドル・営業利益 43 億ドル。市場 899 億ドル × シェア 11.4% × 価格 1.41 倍
倍率:正当化 PER 17.6 倍(g 4.0%・RONIC 15.8%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 23.3%−k)・moat=normal)に対して 14.0 倍(上限の 8.0 割)に置いた。航空の認証と交換部品の囲い込み、約 4 割のアフターで質は高く、ROE も高い。ただし産業が 7 割で景気に振れ、買収倍率が高く買収の収益が k に近づくので上限の 8.0 割。
確率:業界ノートの中立(数量 年 +2%・価格 年 +3.5%、航空は数量 +4%)に、利益ベースの上限 18.1 倍の 8 割の PER 14.5 倍を当てた。
やや悲観 20% やや悲観:標準品の値下げと電動化で産業の価格が弱まり、利益率が 22% 台に戻る 利益 59 億ドル · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 550.43 ドル705 億ドル
2036 年 6 月期、国際産業のシェアが中国・インドの標準品で 3% 落ち、北米産業は数量 年 +0.8%・価格 1.38 倍にとどまる。航空は数量 年 +2.8%、民間機のサイクルの谷で利益率 27.5%。全社売上は 342 億ドル(年 +4.7%)、営業利益 77 億ドル(利益率 22%)、純利益 59 億ドル(2026 年の 1.6 倍)。買収した会社の統合の益は一巡し、償却と買収倍率の高さで事業の ROE が約 33% に下がる。PER 11.9 倍(利益ベースの正当化 PER の上限 16.5 倍の 7.2 割。g 4.0%・RONIC 13.4%・moat=normal・k 8.25%)。還元は純利益の約 7 割で、純負債は解消して純現金へ移る。
- 北米産業:数量 910(北米の対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 13.8%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 125 億ドル・営業利益 31 億ドル。市場 910 億ドル × シェア 10.0% × 価格 1.38 倍
- 国際産業:数量 1,650(北米以外の対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 5.4%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 89 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場 1,650 億ドル × シェア 3.9% × 価格 1.38 倍
- 航空システム:数量 812(航空向けの対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 15.7%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 127 億ドル・営業利益 35 億ドル。市場 812 億ドル × シェア 11.3% × 価格 1.39 倍
倍率:正当化 PER 16.5 倍(g 4.0%・RONIC 13.4%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 18.5%−k)・moat=normal)に対して 11.9 倍(上限の 7.2 割)に置いた。産業の景気が鈍り航空の増産も遅れる筋書きなので上限の 7.2 割。
確率:電動化と中国・インドの低価格が重なる展開。航空も民間機のサイクルの谷を 1 回挟む。起きても不思議でない。
悲観 10% 悲観:構造的に負ける(電動化・標準品の値下げ・買収の失敗)うえに、景気の谷が重なる 利益 41 億ドル · PER 9.6 倍 · 株価時価総額 304.37 ドル390 億ドル
2036 年 6 月期、北米産業と国際産業はシェアを 8〜10% 落とし、数量は横ばい、価格は物価を下回る(1.30 倍)。航空は数量 年 +2.2%・シェアは 3% 落ち、価格 1.35 倍。全社売上は 287 億ドル(年 +3.0%)、営業利益 53 億ドル(利益率 19%)、純利益 41 億ドル(2026 年の 1.1 倍)。買収した事業の統合の益が剥がれ、のれんの減損と人員整理の費用が続く。PER 9.6 倍(利益ベースの正当化 PER の上限 14.5 倍の 6.6 割。g 4.0%・RONIC 10.4%・moat=normal・k 8.25%)。2008〜09 年のような急な谷は来ないが、長い停滞で自社株買いは大きく縮み、純負債は純現金に移る。バリュー投資家の目では、優良企業としての評価はもう受けられない。
- 北米産業:数量 840(北米の対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 11.9%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 100 億ドル・営業利益 20 億ドル。市場 840 億ドル × シェア 9.2% × 価格 1.30 倍
- 国際産業:数量 1,500(北米以外の対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 4.7%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 71 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場 1,500 億ドル × シェア 3.6% × 価格 1.30 倍
- 航空システム:数量 775(航空向けの対象市場(億ドル、2026 年価格))× 価格 14.9%(パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1))→ 売上 116 億ドル・営業利益 28 億ドル。市場 775 億ドル × シェア 11.0% × 価格 1.35 倍
倍率:正当化 PER 14.5 倍(g 4.0%・RONIC 10.4%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 12.6%−k)・moat=normal)に対して 9.6 倍(上限の 6.6 割)に置いた。電動化と標準品の値下げで構造的に負ける筋書き。成長の弱さ・優良さの崩れは g と ROE に入れ、式の外では引かない。
確率:電動化で油圧部品が大きく減り、中国メーカーが標準品を奪い、買収した会社がのれんの減損を出す展開。もう優良ではなくなっている姿。1 割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
北米産業
北米の機械・装置メーカー向けの油圧・空圧・流体制御・ろ過・密封の部品と、販売店経由の交換・保守品。
| 数量北米の対象市場(億ドル、2026 年価格) | 価格パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 840 | 10.0% | 84 | 20 |
| 10 年後 中立 | 974 | 14.1% | 137 | 37 |
取り方:北米の動き・流れの制御部品(油圧・空圧・流体・ろ過・密封・電気機器)の対象市場を約 840 億ドル(2026 年価格・推定)、パーカーのシェアを約 10% と置いた。売上 83.9 億ドル、セグメント営業利益は GAAP で 20.4 億ドル(利益率 24.3%、調整後 26.3%)。売上 = 市場 × シェア × 価格(価格指数は 2026 年 = 1、中立で 10 年 1.41 倍)。競合と照らすと、ろ過はドナルドソン・ダナハー(ポール)、油圧はイートン(油圧事業はダンフォスへ)・ボッシュ・レックスロス・ドーバー、流体はエマソン・スワゲロックなど細分化していて、1 社で 1 割の持ち分は妥当な水準。
国際産業
欧州・アジア・その他の機械・装置メーカー向けの同種の部品と保守品。
| 数量北米以外の対象市場(億ドル、2026 年価格) | 価格パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 1,500 | 4.0% | 60 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,792 | 5.7% | 102 | 27 |
取り方:北米以外の同種の市場を約 1,500 億ドル(推定)、パーカーのシェアを約 4% と置いた。売上 60.5 億ドル、セグメント営業利益は GAAP で 14.0 億ドル(利益率 23.1%、調整後 25.8%)。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合はボッシュ・レックスロス、ダンフォス、フェスト、SMC、ハイダックのほか、中国・インドの地場メーカーが多く、シェアは 1 桁にとどまる。標準品の値下げ圧力は悲観側の価格・シェアで表した。
航空システム
旅客機・軍用機・ヘリ向けの飛行制御・油圧・燃料・エンジン系統・車輪・ブレーキ・センサー。アフターが約半分。
| 数量航空向けの対象市場(億ドル、2026 年価格) | 価格パーカーのシェア × 価格指数(2026 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 620 | 11.4% | 71 | 18 |
| 10 年後 中立 | 899 | 16.1% | 144 | 43 |
取り方:航空機の飛行制御・油圧・燃料・エンジン系統・車輪・ブレーキ・センサー・流体搬送の対象市場を約 620 億ドル(推定)、パーカーのシェアを約 11.4% と置いた。売上 70.6 億ドル、セグメント営業利益は GAAP で 18.3 億ドル(利益率 26.0%、調整後 29.9%)。売上 = 市場 × シェア × 価格。コリンズ・エアロスペース(RTX)・サフラン・ハネウェルが大手で、ムーグ・ウッドワード・イートンが続く。パーカーは油圧・燃料・車輪とブレーキで上位に入り、メギットの取り込みで厚くなった。シェア 11% は妥当と見る。
リスクと懸念
産業向けの景気の循環
売上の 7 割は産業向けで、リーマンでは営業利益率が 8.6%、株価は山から谷で 60% 下がった。製造業の設備投資が冷えると、油圧・空圧の受注は早く落ちる。景気の山で受けた受注を、将来も続くものと見ないことが大切である。農業・自動車・住宅は 2026 年も弱い。
航空への依存
航空は全社利益の 3 割強(調整後 21.1 億ドル)を稼ぐ。民間機の増産が供給網の遅れで進まない、防衛予算が議会で削られる、機体の整備の遅れで需要が後ろにずれると、成長の主役が崩れる。受注残 85 億ドルの消化の時期も読みにくい。
買収の倍率と統合
フィルトレーション・グループ(92.5 億ドル、償却前利益の 19.6 倍)と CIRCOR 航空(25.5 億ドル、22.7 倍)は高い倍率で、シナジーが計画どおり出ても収益率が資本コストを大きく上回らない可能性がある。成立すれば純負債は約 110〜120 億ドル増え、利払いも増える。今回は成立前なので入れていない。
電動化と油圧部品の減少
建設・農業・トラックの電動化で、油圧ポンプ・バルブ・ホースの点数が減る。電動アクチュエーター・熱管理で補えるかが論点で、競合のダンフォス・ボッシュ・レックスロスも同じ分野を狙う。移行期に利益率が落ちるおそれがある。
標準品の値下げ
中国・インドのメーカーが汎用の流体・継手で値下げを続け、国際産業の標準品の価格を押さえる。アフターで囲い込める分は守れるが、新品の OEM 向けで価格を決める力は部品ごとに差がある。値下げが広がると国際産業の利益率が先に下がり、売上の伸びにも響くため、標準品の比率を見ておく必要がある。
関税と為替
鉄鋼・アルミの関税は残り、原材料のコストが上がる。価格転嫁が遅れる、または需要が冷える場合は利益率の下押しになる。為替は筋書きでは動かさないが、売上の 4 割近くが北米外で、実際には海外の通貨の変動が利益に出る。
償却と調整後の見かけ
メギットなどの無形資産の償却で、GAAP の純利益は調整後より約 15% 低い。調整後の利益率(27.3%)だけを見ると、本当の収益力より高く見える。本評価は GAAP で書き、償却が減る効果は利益の伸びに入れた。
今後の分かれ目
- 製造業の ISM 指数が 2027 年に 50 を割り、北米産業の新規受注が前年比で 1 割以上減る
- 北米・国際の産業の数量が谷へ向かう信号で、やや悲観・悲観の確率を上げる。倍率は 13 倍前後に近づく。
- 航空の受注残が 100 億ドルを超え、オーガニック成長が高い 1 桁(8% 以上)を 2 年続ける
- 航空の長期成長が確認され、楽観・やや楽観の確率を上げる。ただし倍率の上限は 17〜18 倍で変わらない。
- 調整後のセグメント営業利益率が景気の山でも 30% を 2028 年までに超える
- 会社の 2031 年目標の前倒しで、利益率の構造的な切り上げが確認される。楽観の確率を上げる。
- フィルトレーション・グループの買収が成立し、償却前利益の 14 倍(シナジー込み)で統合が進む
- 純負債が増えても利益の質(アフター 85%)が加わり、価値は中立。統合が遅れれば、投資収益が資本コストを下回り、10 年のやや悲観の確率を上げる。
- 中国・インドの標準品が欧州・東南アジアで 1〜2 割の値下げを続け、国際産業のシェアが落ちる
- 価格を決める力の低下で、国際産業の利益率を 2〜3 ポイント下げる。10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。
- 株価が下がり、自社株買いを PER 14 倍以下の水準で続けられるようになる
- 1 株の価値を守る買いになり、還元の質が上がる。
見ておくもの
- 航空の受注残(85 億ドル)とオーガニック成長
- ISM 製造業指数と北米産業の新規受注(12 か月の移動平均)
- 調整後セグメント営業利益率(2031 年 6 月期の 30% 目標)
- フィルトレーション・グループ・CIRCOR 航空の成立と純負債
- 農業・自動車向けの回復と標準品の価格
- 営業キャッシュフロー(売上の 20%)と還元(配当 70 期連続増)
倍率と資本コストの決め方
今の PER 34 倍や 2027 年 6 月期のガイダンス基準の PER(調整後で約 28 倍・GAAP で約 32 倍)を見る前に、3 つの事業ごとに市場 × シェア × 物価(10 年 1.41 倍)で売上を積み、利益率を置いた。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限(k 8.25%・g は上限の 4%・RONIC = k + 1/2 ×(事業の ROE − k))に対して置いた。10 年の中立は上限 17.6 倍の 8 割の 14.0 倍で、k は景気の振れと純負債(EBITDA の 1.5 倍)の少し重い分(cycle +0.5%・debt +0.25%)から、値段の守り(pricing −0.5%)を引いて quality +0.25%。過去中央値 20.6 倍より低い。買収倍率が高く収益が k に近づくので 9 割には置かない。業界ノートの PER 18〜21 倍(k 10〜12%)は使わなかった。純負債は期末の値を 1 ドルで数え、純利益は GAAP(償却を足し戻さない)。結果は確率の加重平均で今の値段を 4 割強下回り、割高が出たが、帳尻は合わせていない。未成立の買収は入れず、今の会社だけで書いた。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.25%。景気の振れと借金の少し重い分に、値段の守りやすさの割引を足した。個別のリスク(買収の統合・航空宇宙の山・産業の景気)は k に足さず、筋書きの数量・利益率と確率で表した。存続を疑う要素はなく上乗せは 0。