結論
フェデックス・フレイト(FDXF、フェデックスから 2026 年 6 月 1 日に分離)は米国最大級の LTL(小口混載)トラック会社で、2026 年 5 月期は売上 88.0 億ドル、営業利益 5.4 億ドル(営業利益率 6.1%)だった。営業利益には分離費用 4.9 億ドルが入っており、除くと 10.3 億ドル(11.7%)で、2024 年 5 月期の 15.8%、2023 年 5 月期の 18.6% からは大きく低い。台帳の純利益 6.6 億ドルは、親会社への貸付に当たる受取利息 3.5 億ドルが入った分膨らんでおり、分離後は無くなるため、GAAP の分離後の姿(新しい借金 43 億ドルの利払い約 2.2 億ドルを引いた純利益)は約 6 億ドルで見る。
論点は 3 つある。第 1 に、荷物の件数を失う局面(1 日あたり出荷件数は 4〜6% 減)で運賃を守り、利益率を 11.7% から経営陣の道筋(調整後営業利益を年 10〜12% 増)どおり 15% 台へ戻せるか。第 2 に、オールド・ドミニオン(ODFL)・エックスピーオー(XPO)・サイア(Saia)という利益率の高い競合に挟まれた時の取り分。第 3 に、分離で負った借金(純負債 43 億ドル)とフェデックスが残す 19.9% の持ち株の売り出しという需給の重さ。
バリュー投資の観点では、事業は参入しにくい寡占の一角で、ならした利益に式の倍率を掛けて測る。今の時価総額 169 億ドルは分離後の正常な純利益(約 6 億ドル)の 28 倍。10 年後の純利益 18.1 億ドルを中立と置き、利益ベースの倍率(12.0 倍。上限 16.5 倍の 7 割強)で割り引いた価値は今の時価総額を 3 割弱下回り、安全域は無い。総合はやや割高である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、FDXF は「LTL の寡占の一角で、10 年後も存在し、今より少し強い」と言える事業である。ただし ODFL のように質で荷主に高い運賃を払わせる堀ではなく、規模と網の密度で運賃をほかの会社並みに上げ続ける堀で、強さは中ぐらいである。
オーナー利益は、分離後の正常な純利益約 6 億ドルから、成長に要る再投資(売上の増分 × 0.4)を引いた分で、2026 年は約 4 億ドル(時価総額の 2.4%)にすぎない。回復で純利益が 2028 年に 9.3 億ドル、2035 年に 18.2 億ドルになる中立の筋書きでも、投下資本の利益率は 31% 前後に戻るだけで、借金(純負債 43 億ドル)が先に返済を迫る。分離で借金を負った会社は、負債の返済が安全域を削る。
経営の資本配分は、これからの試金石である。分離費用と移行サービスの卒業に 6〜7.5 億ドルを使い、配当と借金の返済のどちらを先にするか、フェデックスの持ち分の売りをどう扱うかで質が決まる。今の値段は、谷の利益の上に経営陣の回復の道筋を乗せた水準で、利益ベースの式で測ると中立でも今の値段に届かず、やや割高である。強気の筋書きの上振れは大きいが、悲観で借金の重さが出ると下は深い。安全域を取りに行く値段ではなく、確信度は低い。
何で稼ぐ会社か
FDXF は 1982 年創業(前身はアメリカン・フレイトウェイズ)、本社メンフィスの LTL 専業で、売上の全部(2026 年 5 月期 88.0 億ドル)が LTL 運賃である。LTL は、トラック 1 台に満たない荷物を、集荷・ターミナルでの仕分け・幹線輸送・配達の網で運ぶ事業で、ターミナル(355 か所、ドア 2.6 万超)と約 3 万台の車両・約 4 万人の従業員・約 10.8 万社の顧客を持つ。最大の顧客でも売上の約 4%、上位 25 社で 21% と、荷主は分散している。
商品は 2 つに分かれる。速い配送の Priority(1 日あたり 5.95 万件)と、遅いが安い Economy(2.66 万件)で、合計 8.61 万件/日、1 件あたり重量 931 ポンド、100 ポンドあたり収入 41.54 ドル、1 件あたり収入は約 387 ドルだった(2026 年 5 月期、それぞれ前年比 −4%・+1%・+2%・+4%)。2026 年 3〜5 月期は件数 −5.9%、100 ポンドあたり収入 +8.2%(燃油サーチャージを含む)と、数量を落として単価で補う形が強まっている。
ここでは単一の LTL セグメントとして、数量 = 米国の LTL 市場(運賃収入、燃油込み、約 500 億ドルと推定)、シェア ≒ 17.6%(88.0 ÷ 500)、価格 = 1 件あたり収入の指数で売上を積んだ。IT・人事・調達などはフェデックスの移行サービス契約(TSA)に頼っており、卒業までの移行費用は 6〜7.5 億ドル(12〜18 か月)と会社は見ている。決算期は 5 月から 12 月に変わり、2026 年 12 月までの 7 か月が過渡期になる。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 に網の密度で、355 か所のターミナルと許可を持つ用地は新設が難しく、旧イエローの破綻(2023 年)後も新規参入は限られる。第 2 に荷主の分散と契約の幅で、最大の顧客が 4%・上位 5 社で 9% にとどまり、特定の荷主の離反に強い。第 3 に規模で、LTL の売上シェア(約 17.6%)は米国で首位級である。
一方で、堀の質は ODFL に及ばない。2026 年 4〜6 月期の営業比率は ODFL 70.1%、XPO(調整後)79.9%、サイア 86.9% に対し、FDXF は分離費用を除いても約 88%(営業利益率 11.7%)で、サイアに近い。2023 年 5 月期の 18.6% まで戻れば XPO に並ぶが、ODFL の 28〜30% には届かない前提で置く。理由は、Priority と Economy を同じ網に乗せる複雑さ、フェデックスの旧体制下で他社より遅れた網の効率化、移行サービス契約を卒業するまでの二重の費用である。
資本効率は、分離後の自己資本が −5 億ドル(フェデックスへ 41 億ドルを配当し、借金で賄った)と薄く、帳簿の ROE は意味を持たない。そこで ROIC(税引き後営業利益 ÷(自己資本 + 純負債)、2026 年は調整後で約 20%)に直して式に使う。経営陣は中期の枠組み(売上 年 4〜6%、調整後営業利益 年 10〜12%、設備投資は売上の約 5%)を出したが、独立した会社としての実績の裏づけはこれからである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の LTL は寡占で、FDXF(収入シェア 約 17.6%)、ODFL(約 11%)、XPO(約 9%)、サイア、エステス、アーカベスト(ABF)が上位を占める。市場規模は運賃収入(燃油込み)で約 500 億ドルと推定する。貨物は 2023 年から不況に入り、Cass の支出指数は 2023 年 −19%、2024 年 −11%、2025 年 −0.5% だった。2026 年は運賃が戻りつつあり(支出指数 +9.1%、トラック運賃指数 +8.6%)、出荷件数の回復は遅い(7 月の出荷指数は前年比 −4.8%)。
供給の面では、旧イエローの拠点を XPO・サイア・エステスが買って増やしており、能力が余ったまま需要を待つ状態にある。ABF が 6 月に平均 5.9%、サイアが 7 月に 7.1% の値上げを出し、値上げは通る環境だが、件数は ODFL(4〜6 月期 −5.7%)と FDXF(−5.9%)が落とし、XPO(+2.8%)とサイア(+4.4%)が取っている。つまり件数の取り合いでは FDXF は負けており、単価で補っている。
アマゾンは 2026 年 6 月に LTL 部門を作ったが、クロスドックは 100 か所未満で、上位の約 300 か所には届かない。長期の脅威は、荷主系の網と、自動運転トラックによる幹線費用の低下である。トラックの運転免許の規制強化で全車積みの運賃が上がり、LTL への荷物の移動が起きるのは追い風である。需要は 2026 年に横ばい、2027〜2028 年に年 +3% 台で戻り、価格は物価(3.5%)並みに LTL の規律を少し乗せた年 +3.8%(10 年 1.45 倍)を中立とした(業界ノートどおり)。
資本政策と M&A
分離の資本政策は、フェデックスへ現金 41 億ドルを配当し、その元手に新規の借金 43 億ドル(シニア債 37 億ドルと長期ローン 6 億ドル、平均金利 4.79%)を起こした形である。ほかに 12 億ドルの未使用の与信枠がある。有利子負債は 43 億ドル(ファイナンスリース 2.6 億ドルを含む)、現金 2.5 億ドルで、純負債は約 43 億ドルである。調整後 EBITDA(約 15 億ドル)に対して 2.8 倍と高く、2〜3 年で 1.5〜2 倍へ下げる前提で置いた。
フェデックスは持ち分の 19.9% を残し、2 年以内に売る(借入先との株式交換で貸付を返す形か、株主への特別配当)。この売りは需給の重しで、時価総額の約 2 割にあたる株が市場に出る。株価は 6 月の上場後に 3 割ほど下がっており(買い手が先に織り込んだとも言える)、この需給は筋書きの確率で表す(k には足さない)。
還元は、配当を始める意向が示されているが、額と時期は未定。設備投資は 2026 年下半期に 3.2〜3.4 億ドル、中期で売上の約 5%、フリーキャッシュフローは 10 億ドル超・転換率 90% 超が目標である。株式報酬は 0.13 億ドルと小さい。payout_oku は配当・自社株買いの総額から株式報酬を引いた正味で、純負債を各筋書きの目標の倍率(10 年 0.8〜1.3 倍)へ下げた残りとして置いた。分離以外の買収は見込まず、増資もしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
LTL の谷は終わりつつある。運転免許の規制でトラックの供給が減り、全車積みの運賃が 2026 年に 8% 以上上がって、LTL への荷物の移動が起きる。ABF(5.9%)とサイア(7.1%)が値上げを出し、FDXF の 100 ポンドあたり収入も 3〜5 月期に 8.2% 上がった。件数は旧イエローの拠点の取り合いで落ちたが、能力の余りは需要が戻れば吸収され、2023 年 5 月期に 18.6% を付けた営業利益率は数量の戻りだけで取り返せる。
分離で意思決定が速くなる。フェデックスの航空・宅配の網の都合に縛られず、LTL 専用の投資と価格付けができ、中期の枠組み(売上 年 4〜6%、調整後営業利益 年 10〜12%)は、費用を下げ、1 件あたり収入を上げる 2 つの手で達成できる。分離費用の 4.9 億ドルと移行費の 6〜7.5 億ドルは一度きりで、2027 年以降は消える。
長期では、LTL は製造業の国内回帰・データセンターと電力の工事で数量が年 +2.7% 伸び、FDXF のシェアは Priority の強い網で 18.5% へ上がる。営業利益率は XPO を超える 24% に達し、純利益は 30 億ドル、借金は EBITDA の 0.8 倍まで下がり、投下資本の利益率は 43% になる。そのとき利益ベースの倍率は上限 17.3 倍に近い 14.2 倍、時価総額は 430 億ドル台になる。
慎重な見方
今の値段は、回復の道筋をほぼ満額で織り込んでいる。FDXF は件数を 4〜6% 落とし、100 ポンドあたり収入の上昇の半分近くは燃油サーチャージで、燃油を除く運賃は物価を少し上回る程度にとどまる。2026 年 5 月期の営業利益率は 6.1%(分離費用を除き 11.7%)で、同じ期間に ODFL は 29.9%(営業比率 70.1%)、XPO は 20%、サイアは 13% と、FDXF は最も低い。ODFL・XPO の水準へ近づくどころか、サイアとの差が縮む方向もある。
借金が先にある。純負債 43 億ドルは調整後 EBITDA の 2.8 倍で、分離費用と移行費で 2027 年はキャッシュが細る。景気が再び落ちれば、固定費の重い LTL では営業利益率が 5% 台まで落ち、利払い(年 2.3 億ドル)で純利益はほぼ消え、配当どころか借金の返済が優先になる。さらにフェデックスが残した 19.9% の持ち株は 2 年以内に市場へ出る(時価総額の約 2 割)。
競争も強まる。ODFL は能力に余裕があり、XPO・サイアは旧イエローの拠点を増やし、アマゾンの LTL は 2026 年 6 月に始まった。10 年後は、自動運転トラックと荷主系の網で運賃の天井が下がり、FDXF のシェアが 12% まで下がる負けの筋書きがありうる。
どちらに重みを置いたか
事業の回復余地は強気の見方が強いが、借金と需給と競合の重さが慎重な見方の側にある。中立の筋書きでも今の値段に届かない価値にとどまるため、確率は上振れ(楽観+やや楽観)24%・中立 30%・下振れ 46% と、悲観側をやや厚くした。上場直後で実績が薄く、利益率の回復は経営陣の計画だけに頼れないため、悲観の確率を 18% とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 121.22 ドル181 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 45.23 ドル68 億ドル)。 今の値に割り戻すと 80.60 ドル120 億ドル、今との差 −27.4%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 289.35 ドル433 億ドル | 77.46 ドル116 億ドル | +230.4% | +12.7% | 22.01 ドル33 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 205.81 ドル308 億ドル | 62.94 ドル94 億ドル | +142.1% | +9.2% | 48.38 ドル72 億ドル |
| 中立 | 30% | 145.01 ドル217 億ドル | 51.17 ドル77 億ドル | +76.7% | +5.9% | 58.85 ドル88 億ドル |
| やや悲観 | 28% | 68.83 ドル103 億ドル | 38.33 ドル57 億ドル | −3.5% | −0.4% | 30.00 ドル45 億ドル |
| 悲観 | 18% | 22.41 ドル34 億ドル | 17.59 ドル26 億ドル | −64.0% | −9.7% | 7.20 ドル11 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 121.22 ドル181 億ドル | 45.23 ドル68 億ドル | +49.9% | +4.1% | 166.44 ドル249 億ドル |
今の株価時価総額 111.02 ドル166 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:Priority の網を生かして 18.5% までシェアを伸ばし、営業利益率 24% 利益 30 億ドル · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 289.35 ドル433 億ドル
2035 年、LTL は全車積みからの移動・製造業の国内回帰・データセンターや電力の工事で市場の数量が 2026 年比 +30%(年 +2.7%)、FDXF のシェアは Priority の網の強みで 17.6% から 18.5% へ上がる。旧イエローの拠点を買った競合が過剰能力に苦しむ一方、FDXF は自前の網を生かす。営業利益率は 24%(XPO の 20% を超え、ODFL の 29〜30% には届かない)。売上は 180.4 億ドル、営業利益 43.3 億ドル、純利益 30.4 億ドル(分離後の正常な利益の 5 倍)。倍率は利益ベースの正当化 PER(上限 17.3 倍)の 8.2 割で 14.2 倍に置いた(時価総額 433 億ドル。根拠は multiple.why)。競合に勝った姿で、中立より利益は 7 割多い。 10 年(2026〜2035 年)の純利益の累計は約 183 億ドル(2028 年の 13.0 億ドルを通って 2035 年の 30.4 億ドルへ。減損・赤字の年は無い)。 自己資本は 今 -5 億ドル + 累計 183 億ドル − 還元 115.8 億ドル ≒ 62.3 億ドル。
- LTL(小口混載):数量 650(米国の LTL 市場(運賃収入、燃油込み、億ドル、2026 年価格。推定))× 価格 27.8%(FDXF のシェア × 価格の指数(2026 年 5 月期 = 1))→ 売上 180 億ドル・営業利益 43 億ドル。市場 650 億ドル(2026 年価格)× シェア 18.5% × 価格 1.500 倍
倍率:帳簿の ROE 49% は 40% 超(自己資本が借金・自社株買いで縮んだ見かけ)なので ROIC から直した(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債 61 億ドル)= 27.4%、ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利 5.75%×(1−22%))× 純負債÷自己資本(1 倍まで)= 49.8%)。正当化 PER 17.3 倍(g 4.0%・RONIC 29.4%=k 9.00%+残る割合×(事業の ROE 49.8%−k)・moat=normal)に対して 14.2 倍(上限の 8.2 割)に置いた。件数と運賃が戻り営業利益率が 17% へ上がる筋書き。g の内訳=米国 LTL の数量(実質年 1.5〜2%)と運賃の物価(3.5%)並みの上げ。
確率:利益率の回復が経営陣の計画を上回り(XPO 超え)、シェアも上がる必要がある。上位の展開として 6%。
やや楽観 18% やや楽観:数量は年 +2.3%、価格は物価に上乗せ、営業利益率 20.5% 利益 23 億ドル · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 205.81 ドル308 億ドル
2035 年、市場の数量は +26%(年 +2.3%)、FDXF のシェアは 17.8%、価格は 1.47 倍。営業利益率は 20.5%(XPO 並み)。売上は 164.8 億ドル、営業利益 33.8 億ドル、純利益 23.4 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER(上限 16.9 倍)の 7.8 割で 13.2 倍に置いた(時価総額 308 億ドル。根拠は multiple.why)。経営陣の中期の道筋(調整後営業利益 年 10〜12%)が 10 年続いた姿に近い。競合の能力は需要で吸収され、運賃の規律が保たれる。ODFL(営業利益率 28%)にはなお届かないが、サイア(13%)を大きく上回り、XPO(20%)と並ぶ位置を保つ。件数のシェアは Priority の網で守り、競合に負けた時の利益(やや悲観の 11.3 億ドル)との差が大きい筋書きである。 10 年(2026〜2035 年)の純利益の累計は約 149 億ドル(2028 年の 11.1 億ドルを通って 2035 年の 23.4 億ドルへ。減損・赤字の年は無い)。 自己資本は 今 -5 億ドル + 累計 149 億ドル − 還元 94.1 億ドル ≒ 50.1 億ドル。
- LTL(小口混載):数量 630(米国の LTL 市場(運賃収入、燃油込み、億ドル、2026 年価格。推定))× 価格 26.2%(FDXF のシェア × 価格の指数(2026 年 5 月期 = 1))→ 売上 165 億ドル・営業利益 34 億ドル。市場 630 億ドル(2026 年価格)× シェア 17.8% × 価格 1.470 倍
倍率:帳簿の ROE 47% は 40% 超(自己資本が借金・自社株買いで縮んだ見かけ)なので ROIC から直した(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債 61 億ドル)= 23.7%、ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利 5.75%×(1−22%))× 純負債÷自己資本(1 倍まで)= 42.9%)。正当化 PER 16.9 倍(g 4.0%・RONIC 26.0%=k 9.00%+残る割合×(事業の ROE 42.9%−k)・moat=normal)に対して 13.2 倍(上限の 7.8 割)に置いた。移行費用が終わり営業利益率が 15.5% になる筋書き。g の内訳=米国 LTL の数量(実質年 1.5〜2%)と運賃の物価(3.5%)並みの上げ。
確率:数量が年 +2.3%、価格が物価に上乗せ、2023 年 5 月期の 18.6% を超える利益率に定着する流れ。実績が薄いので 18%。
中立 30% 中立:数量は年 +2%、シェアはわずかに譲り、営業利益率 17.5% 利益 18 億ドル · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 145.01 ドル217 億ドル
2035 年、市場の数量は 2026 年比 +22%(年 +2.0%:回復と年 +1.5% の成長)、FDXF のシェアは 17.2%(件数でのシェアは XPO・サイア・ODFL に少し譲る)、価格は 1.45 倍(年 +3.8%)。営業利益率は 17.5%(2023 年 5 月期の 18.6% の少し下)。売上は 152.1 億ドル、営業利益 26.6 億ドル、純利益 18.1 億ドル(分離後の正常な利益の 3 倍)。競合と照らすと、ODFL(営業利益率 28%)には届かず、XPO(20%)の下、サイア(13%)の上。倍率は利益ベースの正当化 PER(上限 16.5 倍)の 7.3 割で 12.0 倍に置いた(時価総額 217 億ドル。根拠は multiple.why)。配当と自社株買いは 10 年で約 76.5 億ドル(株式報酬を除く正味)、純負債は EBITDA の 1.0 倍へ。 10 年(2026〜2035 年)の純利益の累計は約 121 億ドル(2028 年の 9.3 億ドルを通って 2035 年の 18.1 億ドルへ。減損・赤字の年は無い)。 自己資本は 今 -5 億ドル + 累計 121 億ドル − 還元 76.5 億ドル ≒ 39.8 億ドル。
- LTL(小口混載):数量 610(米国の LTL 市場(運賃収入、燃油込み、億ドル、2026 年価格。推定))× 価格 24.9%(FDXF のシェア × 価格の指数(2026 年 5 月期 = 1))→ 売上 152 億ドル・営業利益 27 億ドル。市場 610 億ドル(2026 年価格)× シェア 17.2% × 価格 1.450 倍
倍率:帳簿の ROE 45% は 40% 超(自己資本が借金・自社株買いで縮んだ見かけ)なので ROIC から直した(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債 61 億ドル)= 20.6%、ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利 5.75%×(1−22%))× 純負債÷自己資本(1 倍まで)= 36.6%)。正当化 PER 16.5 倍(g 4.0%・RONIC 22.8%=k 9.00%+残る割合×(事業の ROE 36.6%−k)・moat=normal)に対して 12.0 倍(上限の 7.3 割)に置いた。LTL は規模の堀があるが首位の ODFL に利益率で及ばず、分離で借金を負った新会社。薄い利益率の回復を織り込み、上限の 7.3 割に置いた。g の内訳は米国 LTL の数量(実質年 1.5〜2%)と運賃の物価(3.5%)。
確率:議論の落としどころ。数量は 10 年で +22%(年 +2%)、価格は 1.45 倍、シェア 17.2%、営業利益率 17.5%(経営陣の道筋は 20% 超だが、サイア 13%・XPO 20%・FDXF の過去 18.6% の間に置いた)。30%。
やや悲観 28% やや悲観:能力過剰と荷主系の網でシェアが 15.5% へ下がり、営業利益率 14% 利益 11 億ドル · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 68.83 ドル103 億ドル
2035 年、市場の数量は +14%(年 +1.3%)にとどまり、能力過剰で FDXF のシェアは 15.5% へ下がり、価格は 1.40 倍と物価並みを下回る。営業利益率は 14%(2024 年 5 月期の 15.8% を下回る)。売上は 123.7 億ドル、営業利益 17.3 億ドル、純利益 11.3 億ドル。XPO・サイアが ODFL に近づき、荷主が運賃より質で選ぶようになる。FDXF は値を守ればシェアを、シェアを守れば利益率を失う。倍率は利益ベースの正当化 PER(上限 15.7 倍)の 5.8 割で 9.1 倍に置いた(時価総額 103 億ドル。根拠は multiple.why)。
- LTL(小口混載):数量 570(米国の LTL 市場(運賃収入、燃油込み、億ドル、2026 年価格。推定))× 価格 21.7%(FDXF のシェア × 価格の指数(2026 年 5 月期 = 1))→ 売上 124 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 570 億ドル(2026 年価格)× シェア 15.5% × 価格 1.400 倍
倍率:帳簿の ROE 55% は 40% 超(自己資本が借金・自社株買いで縮んだ見かけ)なので ROIC から直した(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債 61 億ドル)= 16.5%、ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利 5.75%×(1−22%))× 純負債÷自己資本(1 倍まで)= 28.5%)。正当化 PER 15.7 倍(g 4.0%・RONIC 18.8%=k 9.00%+残る割合×(事業の ROE 28.5%−k)・moat=normal)に対して 9.1 倍(上限の 5.8 割)に置いた。件数が戻らず移行費用が長引き営業利益率が 11.5% 止まりの筋書き。g の内訳=米国 LTL の数量(実質年 1.5〜2%)と運賃の物価(3.5%)並みの上げ。
確率:能力過剰・ODFL の質・荷主系の網で件数のシェアを失い、利益率が 14% で止まる流れ。2023〜2026 年に 18.6% から 11.7% へ落ちた実績があり 28%。
悲観 18% 悲観:自動運転・アマゾン・競合で構造的に負け、シェア 12%・営業利益率 7% 利益 3 億ドル · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 22.41 ドル34 億ドル
2035 年、構造的に負けている。自動運転トラックが幹線の費用を下げ、アマゾンなど荷主系の網が大口を取り、旧イエローの拠点を取った競合が能力過剰で値を崩す。FDXF のシェアは 12% にとどまり、価格は 1.36 倍と物価を下回る。営業利益率は 7%(2026 年の調整後 11.7% の 6 割)。売上 85.7 億ドル、営業利益 6.0 億ドル、純利益 3.0 億ドルと、分離後の正常な利益の半分。もう優良とは言えず ROE 20.8%・g 2.5% に下がり、PER 11.2 倍(上限 16.5 倍の 6.8 割。k 9.00%)。純負債は EBITDA の 2.5 倍が残る。 10 年(2026〜2035 年)の純利益の累計は約 39.5 億ドル(2026 年 5.5 億ドルから 2035 年の 3.0 億ドルまで年々下がる。減損・赤字の年は無い)。 自己資本は 今 -5 億ドル + 累計 40 億ドル − 還元 26.3 億ドル ≒ 8.2 億ドル。
- LTL(小口混載):数量 525(米国の LTL 市場(運賃収入、燃油込み、億ドル、2026 年価格。推定))× 価格 16.3%(FDXF のシェア × 価格の指数(2026 年 5 月期 = 1))→ 売上 86 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 525 億ドル(2026 年価格)× シェア 12.0% × 価格 1.360 倍
倍率:正当化 PER 16.5 倍(g 4.0%・RONIC 22.8%=k 9.00%+残る割合×(事業の ROE 36.6%−k)・moat=normal)に対して 11.2 倍(上限の 6.8 割)に置いた。もう優良とは言えない筋書き。長期の g 2.5%(市場 −0.5%・シェア −0.5%・価格 +3.0%)に落とし、倍率は上限の 6.8 割に置いた。式の外では割り引かず、下げは g と ROE に入れた。
確率:自動運転・アマゾン系の網・分離後の投資不足で、10 年で優良さが崩れる確率として 18%(5% 未満ではない)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
LTL(小口混載)
トラック 1 台に満たない小口の荷物を、集荷・ターミナル・幹線・配達の網で運ぶ事業。売上の全部(燃油サーチャージを含む)。Priority と Economy の 2 商品。
| 数量米国の LTL 市場(運賃収入、燃油込み、億ドル、2026 年価格。推定) | 価格FDXF のシェア × 価格の指数(2026 年 5 月期 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 500 | 17.6% | 88 | 5 |
| 10 年後 中立 | 610 | 24.9% | 152 | 27 |
取り方:米国の LTL 市場を、競合の売上(ODFL 約 55 億ドルで収入シェア約 11%、XPO 約 9%、FDXF 約 17.6% などの推定。ODFL の分析と同じ置き方)から約 500 億ドルと置き(推定、幅あり)、FDXF のシェアを 88.0 ÷ 500 = 17.6% と置いた。売上 88.0 億ドルは 2026 年 5 月期(台帳は 2025/12 と表記)の LTL 収入、営業利益 5.4 億ドルは分離費用 4.9 億ドルを含む実績で、除くと 10.3 億ドル(11.7%)。数量は市場 × シェア × 価格指数(価格の指数は 2026 年 5 月期 = 1、中立は物価 3.5% に LTL の規律を少し乗せた年 +3.8%、10 年 1.45 倍)。競合と照らすと、2026 年 4〜6 月期の営業比率は ODFL 70.1%、XPO(調整後)79.9%、サイア 86.9% に対し FDXF は調整後で約 88%。
リスクと懸念
分離の費用と移行サービスの卒業の遅れ
分離費用は 2026 年 5 月期に 4.9 億ドルで、さらに 6〜7.5 億ドルの移行費用が 12〜18 か月かかる見込みである。IT・人事・調達をフェデックスに頼る移行サービス契約を 2026 年末に卒業できない場合、二重の費用が 2027 年以降も続き、営業利益率の回復が 1〜2 年遅れる。
件数のシェア流出と競合の質
1 日あたり出荷件数は 2026 年 5 月期に 4%、3〜5 月期に 5.9% 減った。同じ期間に XPO は +2.8%、サイアは +4.4% と件数を取った。ODFL は営業比率 70.1% で、品質で価格を守る。FDXF は単価で補っているが、荷主が運賃より質と件数で選ぶようになると、シェアと利益率の両方を失いうる。
借金とフェデックスの持ち分の売り出し
純負債 43 億ドルは調整後 EBITDA の約 2.8 倍で、同業では高い。貨物が再び落ちると利払い(年 2.2〜2.5 億ドル)が利益を食い、配当や自社株買いが遅れる。フェデックスが残す 19.9% の持ち株(時価総額の約 2 割)は 2 年以内に市場へ出る見込みで、需給の重しになる。
次の景気後退と固定費の重さ
貨物の不況は 2023 年から 3 年続いたが、さらに貨物量が 15% 落ちると、ターミナルと人件費が固定費なので営業利益率は 5% 前後まで落ちる。FDXF は分離前から利益率が低く、谷に入った時の余裕が ODFL より小さい。
倍率の高さと回復の織り込み
今の時価総額は、分離後の正常な純利益(約 6 億ドル)の 28 倍で、回復が進まなければ倍率の根拠が薄い。回復が中立どおり進んでも、利益ベースの倍率は 10 年後 12.0 倍で、今の 28 倍からは大きく下がるため、利益の伸びが倍率の縮みで打ち消される。
アマゾンと自動運転
アマゾンは 2026 年 6 月に LTL を始めたが、クロスドックは 100 か所未満で、当面の影響は限られる。長期では、荷主系の網と自動運転トラックが幹線の費用と運賃の天井を下げ、規模の優位を弱めうる。
今後の分かれ目
- 2026 年 10 月 29 日の決算で、分離後の最初の四半期に 100 ポンドあたり収入が +8% 以上、件数が前年並みまで戻る
- 谷が終わり、営業利益率 15.5〜17% の筋書き(楽観・やや楽観)の確率が上がる。分離費用の一度きりの部分を除いた調整後で、利益の戻りの速さを確かめる。
- 調整後の営業比率が 2027 年中に 85% を割る(営業利益率 15% 超)
- 経営陣の道筋(年 10〜12% 増)が実績で裏づけられ、中立の確率が上がる。
- フェデックスが持ち分 19.9% を、借入先との交換や特別配当ではなく市場で売る
- 短期の需給の悪化は出るが、売りの不安が消えれば値の下げは一巡する。下振れの確率を下げる。
- アマゾンのクロスドックが 300 か所へ増え、大口の荷主が移る
- 荷主系の網が運賃の天井になり、10 年の悲観の確率を上げる。
- 貨物が再び悪化し(2027〜2028 年の景気後退)、貨物量が 15% 落ちる
- 悲観に近づく。借金が重いので配当の開始が遅れ、利益が谷の水準に落ちれば時価総額は今の半分前後にとどまる。
- 配当の開始と同時に純負債の返済ペース(EBITDA の 2.8 倍から 2 倍へ)が示される
- 資本配分の質が確かめられ、バリュー投資の観点での確信度が上がる。
見ておくもの
- 10 月 29 日の決算(分離後の最初の四半期):1 日あたり件数・100 ポンドあたり収入・調整後営業比率・移行費用の進み方
- ODFL・XPO・サイアの月次の件数と運賃の伸び、営業比率の差(FDXF は調整後で約 88%)
- Cass 出荷指数と運賃指数、クラス 8 の受注、トラック運転免許の規制の進展
- 純負債と調整後 EBITDA の比(2.8 倍から下がるか)、配当の開始の時期と額
- フェデックスが残す 19.9% の持ち株の処分の方法と時期
- アマゾンの LTL のクロスドックの数と、移行サービス契約の卒業の時期
倍率と資本コストの決め方
倍率は先に事業(市場 × シェア × 価格)から利益を積み、利益ベースの正当化 PER((1−g÷RONIC)÷(k−g)、k 9%、g は上限の 4%、RONIC=k+1/2×(事業の ROE−k)、moat 普通)の内側に、上限の 6〜8 割(10 年の中立は上限 16.5 倍の 7.3 割で 12.0 倍)で置き、今の PER(26 倍)や下落した株価に寄せていない。分離直後で自己資本が小さく帳簿の ROE が 40% を超える筋書きは、ROIC +(ROIC − 借入金利×(1−税率))× 純負債÷自己資本(1 倍まで)の式で出した ROE で上限を測った。k は景気の振れ(cycle +0.75%)と分離時の借金(debt +0.25%)で quality を +1.0% とした。分離後の純利益は、台帳の 6.6 億ドルをそのまま使わず、親会社への貸付の受取利息 3.5 億ドルを除き、新しい借金の利払い 2.2 億ドルと分離費用の除外を入れて約 6.0 億ドルに直した。上場直後で実績が薄いため、悲観の確率を厚くした。確率は業界・競合・借金の状況から決め、帳尻合わせはしていない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +1.0%。分離したばかりで自己資本はマイナスだが、利益の質は運賃の振れと借金で見て quality に入れた。個別のリスク(分離後の経営・労使)は k に足さず、筋書きと確率で表す。