結論
ワブテック(Wabtec)は、貨物鉄道向けの機関車・部品・サービス・デジタル(信号・検査)と、旅客車両向けの部品を世界 50 か国以上に売る鉄道機器の最大手である。2025 年は売上 112 億ドル、営業利益 19 億ドル(営業利益率 16.7%)、GAAP の純利益 12 億ドル。2026 年 4〜6 月期は売上が前年比 +17.5%、受注残は 309 億ドル(+42%)と過去最高で、会社は 2026 年の売上見通しを 123〜126 億ドルに上げた。
押し上げているのは、(1) 機関車の新造(輸出が中心)、(2) 北米の古い機関車を作り直す更新・近代化(ユニオン・パシフィックと 12 億ドルで 1,000 台)、(3) 買収で厚くなったデジタル(検査・信号)、(4) デリナー買収で広がった旅客車両部品である。一方で、貨車の生産は 2026 年に前年比 −21% と弱く、機関車の新造は北米では歴史的な低水準にあり、受注残の多くは輸出向けの長い納期の案件である。
バリュー投資の観点では、機関車の保有基盤(約 2.5 万台)に積み上がる整備・部品の収益と、プログレス・レール(キャタピラー)との 2 社体制が堀になる。ただし買収ののれんが自己資本の 9 割を占め、GAAP の利益は償却で薄く、今の時価総額 491 億ドルは 2026 年の純利益見込み(約 15 億ドル)の 32 倍に当たる。数量 × シェア × 価格で 10 年を積み上げ、利益ベースの正当化 PER(k 8.25%)の内側に倍率を置くと、中立の PER は 12.4 倍で、確率の加重平均は今の値段を 5 割強下回る。受注残の山と機関車の循環は、悲観の確率と深さで受けた。
倍率は利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)(k 8.25%・g は上限の 4%・事業の ROE 15%・moat=普通)で、10 年の中立の上限は 15.5 倍。これの 8 割(12.4 倍)に置いた(機関車は北米で寡占に近く、受注残 309 億ドルと保守収益で安定するが、貨物鉄道の投資循環に振れ、のれん込みの ROE は 15% 前後)。総合は今の時価総額に対し -55% で「割高」。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ワブテックは 10 年後も存在し、堀は広がる側にある。保有基盤(約 2.5 万台)に紐づく整備・部品・近代化・デジタルは、新造が谷でも続き、売上の約 6 割がアフターマーケットで、受注残 309 億ドルが数年の見通しを支える。経営は買収が多く、GE 運輸部門・ファイベレー・デリナー・インスペクションと、成長を買ってきた。
ただし、バリュー投資家が見るオーナー利益(成長に再投資が要る分を引いた株主のものになる利益)で、GAAP の純利益は償却で薄く出る一方、のれんは自己資本の 9 割を占める。買収は払った値段が利益で回収されて初めて価値になり、成功か失敗かは 10 年後にしか分からない。この分析では、これからの買収は価値を作らない(払った分だけ)と置き、成立済みの 3 件だけを数量に入れ、のれんを除いた元手で伸びを賄う ROE(約 32%)を式に使った。
値段の面では、今の時価総額は 2026 年の純利益見込みの 32 倍で、機関車の新造が山に近い今、安全域は薄い。受注残の多くが輸出で、納入の遅れ・キャンセル・為替が山の後に利益を削る。中立の PER は 12 倍台(上限 15.5 倍の 8 割)で、今の水準は多くを先取りしている。事業の質は高く、確信度は中程度(循環と買収の統合が不確実)、よい会社だが、今の値段は余白が小さい、というのが結論である。
何で稼ぐ会社か
売上は貨物(Freight、2025 年 80 億ドル、約 72%)と輸送(Transit、31 億ドル、約 28%)の 2 部門から成る。貨物は 4 つの製品に分かれる。機器(約 24 億ドル)は新造の機関車と、鉱山・船舶・産業用エンジンで、北米の貨物鉄道(ユニオン・パシフィック、CSX、ノーフォーク・サザン、BNSF、CPKC)と、インド・カザフスタン・インドネシア・UAE・豪州などの輸出が柱。サービス(約 32 億ドル)は機関車の保守・部品・修理と、古い機関車を作り直す更新・近代化で、保有基盤は約 24,600 台。部品(約 16 億ドル)は連結器・ブレーキ・台車など貨車・機関車の機器、デジタル(約 10 億ドル)は列車制御・信号・検査・運行最適化のソフトとセンサーで、2025 年のインスペクション・テクノロジーズ(約 18 億ドル)とフラウシャー(約 8 億ドル)の買収で急拡大した。
輸送は、地下鉄・通勤電車・高速鉄道の車両に使うブレーキ・ドア・空調・連結器などを、車両メーカー(アルストム・シーメンス・スタドラー・CRRC など)と鉄道事業者に売る。新造向け(OEM)が約 45%、整備・交換のアフターマーケットが約 55% で、2026 年 2 月に約 9 億ユーロで買った連結器大手のデリナーが加わった。
収益の構造は、新品の機関車を売って保有基盤を増やし、その後の部品・整備・近代化・デジタルで長く稼ぐ形で、全社の約 6 割がアフターマーケットである。上位 5 社の顧客が売上の約 30% で、1 社が 1 割を超えることはない。課題は、機関車の新造が景気と貨物の物量で大きく動くこと、買収の統合(2025〜26 年に約 36 億ドルを投じた)、貨車の部品の弱さである。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 に機関車の基盤で、GE の運輸部門を 2019 年に統合して得た約 2.5 万台の保有機に、整備・部品・更新・デジタルが紐づき、鉄道会社は止まらないことと燃費を優先するので、同じ会社の部品と整備に戻りやすい。第 2 に 2 社体制で、新造の機関車はワブテックとプログレス・レール(キャタピラー子会社)が分け合い、新規参入には排ガス規制の認証、数十年の信頼性の実績、整備網が要る。第 3 にブレーキ・連結器・信号など安全に関わる部品の認証で、車両メーカーが簡単に替えにくい。
営業利益率は 2018 年 12.6% → 2025 年 16.7%(GAAP)と、統合の効率化(統合 3.0 でさらに 2028 年までに年 1 億ドル超の効果)で上がってきた。経営は買収と自社株買いを交互に使い、2024 年は自社株買い 11 億ドル、2025 年は買収 25 億ドルと機動的に動かす。
弱い所は 3 つある。第 1 に利益の質で、GAAP の純利益は買収無形資産の償却(2025 年 3.0 億ドル、2026 年は月次で年 3.6 億ドル超の勢い)と株式報酬を差し引いており、会社の調整後の数字は約 3 割高く見える。第 2 に資本効率で、自己資本の 91% がのれんで、帳簿の ROE は 10% 台にとどまる。第 3 に新造の循環で、2015〜17 年の機関車の谷では売上が落ちた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
鉄道機器は、貨物の物量・鉄道会社の設備投資・車両の更新で動く。北米の機関車は約 3.77 万台(2024 年末)で、25% 超が 20 年以上使われ、25% が旧型の直流機である。新造の発注は歴史的な低水準だが、鉄道会社は新造より更新・近代化(燃料 5〜7% 減、牽引力 +14%、信頼性 +80%)を選ぶ流れで、ユニオン・パシフィックが AC4400 を 1,000 台(12 億ドル、2027 年から)、CSX が新造 100 台と改修 50 台(6.7 億ドル)を発注した。EVO 近代化の世界の対象は約 1 万台とされる。
輸出は、インド・カザフスタン・インドネシア・UAE・豪州の国の発注で、受注残の中でも納期が長く、価格が安く、金利と為替の影響を受けやすい。競合は新造の機関車ではプログレス・レール(2023 年の訴訟で北米の主線機関車の 71% をワブテックが持つと主張したが、検証されておらず、2026 年 2 月に和解と報じられた)、輸出では CRRC・アルストム・シーメンス・スタドラー。部品は NYAB(クノールブレムゼ)・アムステッド・レール・CRRC。
貨車の生産は 2026 年に約 2.5 万両(前年比 −21%)と弱く、貨物の物量は関税と景気で揺れる。旅客は欧州・アジアの更新と米国の公的投資(ニューヨーク市交通局の車両など)で堅調。今後 10 年は、北米の稼働機関車の数量は横ばいから微増(年 +0.5%)、更新・近代化の発注が増え、輸出が機関車の数量を支え、デジタル(信号・検査)が最も速く伸びる(年 +6%)というのが中立の見方である。
資本政策と M&A
資本配分は、買収とフリー・キャッシュ・フローの還元を状況で使い分ける。2025 年は営業 CF 18 億ドル、設備投資 3 億ドル、買収 25 億ドル、自社株買い 3 億ドル、配当 2 億ドルで、2024 年は自社株買い 11 億ドルだった。2026 年 2 月に自社株買いの枠を 12 億ドルに再承認し、4〜6 月期は 2.2 億ドルを買った。配当は小さい(2025 年 約 2 億ドル)。
M&A は、デジタルと輸送の部品の買い増しが続く。2025 年にインスペクション・テクノロジーズ(約 18 億ドル)とフラウシャー(約 8 億ドル)、2026 年 2 月にデリナー(約 9 億ユーロ)を買い、純負債は 2025 年末の約 51 億ドルから 2026 年 6 月末の約 63 億ドルに増えた。のれんが 106 億ドル、無形資産が 41 億ドルあり、買収の高値づかみは減損の元になる。借金は 2026 年以降の借り換えで利払いが増える。大型の合併(旅客車両メーカーとの再編など)の可能性は低く、成立していない買収はこの分析に入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注残は 309 億ドルで前年の 1.4 倍、うち 12 か月以内に出る分が 91 億ドル。貨物の受注残 253 億ドルは長期の輸出と近代化で、納期が 2030 年代に伸びる分は価格が決まっている。ユニオン・パシフィックの 1,000 台の近代化は 2027 年から始まり、同じ型の AC4400 は他の鉄道会社にもあり、EVO の対象は世界で 1 万台ある。更新・近代化は新造より安く、燃費が 5〜7% 減り、牽引力が 14% 増えるので、鉄道会社の採算に直結し、新造が弱い北米でも需要が続く。
デジタルは、インスペクション・テクノロジーズ(車両・線路の検査)とフラウシャー(車軸計数センサー・信号)で、2026 年 4〜6 月期に 3.6 億ドル(前年の 1.9 億ドルから +88%)に達し、営業利益率が高い。統合 3.0 の効率化は 2028 年までに年 1 億ドル超が上積みされ、営業利益率は 2025 年の 16.7% から 2026 年 4〜6 月期 GAAP で 18.9% へ上がり、2028 年にかけてさらに上がる。
輸送は、デリナー(連結器の世界首位級)が加わり、地下鉄・通勤電車の更新サイクルが続く。アフターマーケットが約 55% なので景気に強い。プログレス・レールとの 2 社体制は価格が安定し、輸出の入札でも実績が効く。これが強気の見方で、楽観とやや楽観の筋書きの下敷きである。
慎重な見方
受注残の山が最大の論点である。309 億ドルの大半は輸出の機関車と長期の近代化で、納期が遅れる、発注国の財政や為替で縮む、キャンセルや値下げ交渉が起きる、といった実現リスクを持つ。機関車の新造は 2015〜17 年に北米の貨物の物量減と石油・ガスの落ち込みで売上が大きく落ちた谷があり、今の新造は輸出の山に頼る。貨車の生産は 2026 年に −21% で、部品は前年を下回っている。
のれんは自己資本 112 億ドルの 9 割で、買収が高く、統合が遅れれば減損になる。2025 年から 2026 年に約 36 億ドルを買収に使い、純負債は 63 億ドルに増えた。GAAP の純利益は償却と株式報酬を引いており、今の PER 32 倍は利益ベースの上限(15〜16 倍)を大きく超える。プログレス・レールは新造の入札で攻め、2026 年の CPKC では 65 台を獲得した。アルストム・CRRC・スタドラーは輸出と輸送で低価格を出し、電池式・水素式の機関車が将来、ディーゼルの保有基盤の整備収益を置き換える可能性がある。
貨物の物量が関税と景気で落ちれば、新造と近代化は先送りされ、リーマンでは株価が 55% 下がった。これが慎重な見方で、やや悲観・悲観の筋書きの下敷きである。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は受注残・近代化・デジタルで説得力があり、数量の伸びは中立の筋書きに入れた。しかし利益ベースの倍率の上限は 15.5 倍前後(k 8.25%)で、今の 32 倍を正当化できる筋書きはなく、時価総額を上回るのは楽観だけである。慎重な見方は、受注残の山と機関車の循環で強い。確率は楽観 8%・やや楽観 20%・中立 36%・やや悲観 22%・悲観 14% と、悲観を厚めにおき、受注残の山が崩れる筋と構造的な負けを悲観に入れた。倍率は利益ベースの正当化 PER の内側(中立は 8 割)に置き、総合は今の時価総額に対し -55% で「割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 185.15 ドル317 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 66.84 ドル114 億ドル)。 今の値に割り戻すと 128.76 ドル220 億ドル、今との差 −53.4%、 期待の年率 −0.9%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 329.81 ドル564 億ドル | 69.55 ドル119 億ドル | +44.4% | +3.7% | 31.95 ドル55 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 265.81 ドル455 億ドル | 70.72 ドル121 億ドル | +21.7% | +2.0% | 67.31 ドル115 億ドル |
| 中立 | 36% | 208.47 ドル357 億ドル | 71.30 ドル122 億ドル | +1.2% | +0.1% | 100.72 ドル172 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 119.52 ドル205 億ドル | 67.80 ドル116 億ドル | −32.2% | −3.8% | 41.21 ドル71 億ドル |
| 悲観 | 14% | 30.39 ドル52 億ドル | 46.76 ドル80 億ドル | −72.1% | −12.0% | 10.80 ドル18 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 185.15 ドル317 億ドル | 66.84 ドル114 億ドル | −8.9% | −0.9% | 251.98 ドル431 億ドル |
今の株価時価総額 276.47 ドル473 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:近代化が世界へ広がり、デジタルが 380 億ドル市場で首位級になり、利益率が 21% を超える 利益 38 億ドル · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 329.81 ドル564 億ドル
2035 年、新造は市場 3,100 台・シェア 28.5%、近代化は北米の稼働機関車に対する年間の発注率が 4.8%(1,800 台)、シェア 68%。保有基盤は 29,500 台で、サービスは 360 億ドルに迫る。デジタルは市場 380 億ドル(年 +7.8%)でシェア 7.5%、売上 38 億ドル。輸送は市場が年 +4% で、デリナーの連結器と空調が伸びる。価格は物価並み(10 年 1.41 倍)、デジタルのセンサーは 1.35 倍。営業利益率は 21.5%、純利益は 2025 年の約 3.3 倍。プログレス・レールとの 2 社体制が続き、輸出はアルストム・CRRC に対して価格を守る。長期の成長 g は 4.8%(数量 1.3% × 価格 3.5%)。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 15.9 倍(g 4.0%・RONIC 12.4%・k 8.25%)の 9.3 割で PER 14.8 倍、時価総額は 564 億ドル。
- 機関車の新造(機器):数量 3,100(世界の新造機関車市場(台/年。中国の国内向けを除く、推定))× 価格 1.5%(ワブテックのシェア × 1 台あたり単価(0.0379 億ドル。鉱山・船舶用などを含む機器全体の平均)× 価格指数)→ 売上 47 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 3,100 台 × シェア 28.5% × 単価 0.0379 億ドル × 価格 1.41 倍
- 機関車の更新・近代化:数量 1,800(北米の稼働機関車 3.77 万台 × 年間の発注率(台/年))× 価格 1.4%(ワブテックのシェア × 1 台あたり改修単価(0.0143 億ドル)× 価格指数)→ 売上 25 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 1,800 台(発注率 4.8%)× シェア 68% × 単価 0.0143 億ドル × 価格 1.41 倍
- 機関車の保守・部品・サービス:数量 29,500(ワブテックの機関車の稼働基盤(台))× 価格 0.00(1 台あたりの年間サービス売上(億ドル)× 価格指数)→ 売上 36 億ドル・営業利益 12 億ドル。稼働基盤 29,500 台 × 1 台あたり 0.000866 億ドル × 価格 1.41 倍
- 貨物の車両部品:数量 160(貨物向けの部品の市場(億ドル、2025 年価格。推定))× 価格 17.3%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 28 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 160 億ドル × シェア 12.30% × 価格 1.41 倍
- デジタル・インテリジェンス:数量 380(鉄道向けの信号・検査・運行ソフトの市場(億ドル、推定))× 価格 10.1%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 39 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 380 億ドル × シェア 7.50% × 価格 1.35 倍
- 輸送:新造向け(OEM):数量 520(旅客車両の新造向け部品の市場(億ドル、推定))× 価格 6.3%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 33 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 520 億ドル × シェア 4.50% × 価格 1.41 倍
- 輸送:アフターマーケット:数量 590(旅客車両のアフターマーケット部品・整備の市場(億ドル、推定))× 価格 6.6%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 39 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場 590 億ドル × シェア 4.70% × 価格 1.41 倍
倍率:正当化 PER 15.9 倍(g 4.0%・RONIC 12.4%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 16.6%−k)・moat=normal)に対して 14.8 倍(上限の 9.3 割)に置いた。近代化が世界へ広がりデジタルが大きな市場で首位級になる最良の筋書き。ただし ROE の大半はのれんを含む帳簿の値で、貨物鉄道の投資循環にも振れるので上限の 9.3 割にとどめた。
確率:近代化(EVO の対象は世界で約 1 万台)が広がり、輸出の機関車でシェアを守り、デジタルが高成長を続ける必要がある。大型の構造変化が味方する筋書きで 8%。
やや楽観 20% やや楽観:近代化とデジタルが伸び、新造は輸出で保ち、利益率は 20% 台前半 利益 33 億ドル · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 265.81 ドル455 億ドル
2035 年、新造は市場 2,900 台・シェア 27.8%、近代化は 1,650 台(発注率 4.4%)でシェア 66%。保有基盤は 28,200 台。デジタルは市場 355 億ドル、シェア 7.15%、価格 1.35 倍で売上 34 億ドル。輸送は市場が年 +3.5%。営業利益率は 20.5%、営業利益は 47 億ドル、純利益は 2025 年の約 2.8 倍。貨車の部品は鉄道の物量に連動して年 +1.8% の数量。長期の成長 g は 4.5%(数量 1.0% × 価格 3.5%)で、近代化の更新サイクルが 2035 年以降も続く。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 15.8 倍(g 4.0%・RONIC 12.1%・k 8.25%)の 8.7 割で PER 13.7 倍、時価総額は 455 億ドル。
- 機関車の新造(機器):数量 2,900(世界の新造機関車市場(台/年。中国の国内向けを除く、推定))× 価格 1.5%(ワブテックのシェア × 1 台あたり単価(0.0379 億ドル。鉱山・船舶用などを含む機器全体の平均)× 価格指数)→ 売上 43 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 2,900 台 × シェア 27.8% × 単価 0.0379 億ドル × 価格 1.41 倍
- 機関車の更新・近代化:数量 1,650(北米の稼働機関車 3.77 万台 × 年間の発注率(台/年))× 価格 1.3%(ワブテックのシェア × 1 台あたり改修単価(0.0143 億ドル)× 価格指数)→ 売上 22 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 1,650 台(発注率 4.4%)× シェア 66% × 単価 0.0143 億ドル × 価格 1.41 倍
- 機関車の保守・部品・サービス:数量 28,200(ワブテックの機関車の稼働基盤(台))× 価格 0.00(1 台あたりの年間サービス売上(億ドル)× 価格指数)→ 売上 34 億ドル・営業利益 11 億ドル。稼働基盤 28,200 台 × 1 台あたり 0.000866 億ドル × 価格 1.41 倍
- 貨物の車両部品:数量 155(貨物向けの部品の市場(億ドル、2025 年価格。推定))× 価格 17.1%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 27 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 155 億ドル × シェア 12.15% × 価格 1.41 倍
- デジタル・インテリジェンス:数量 355(鉄道向けの信号・検査・運行ソフトの市場(億ドル、推定))× 価格 9.7%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 34 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場 355 億ドル × シェア 7.15% × 価格 1.35 倍
- 輸送:新造向け(OEM):数量 495(旅客車両の新造向け部品の市場(億ドル、推定))× 価格 6.2%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 31 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 495 億ドル × シェア 4.38% × 価格 1.41 倍
- 輸送:アフターマーケット:数量 565(旅客車両のアフターマーケット部品・整備の市場(億ドル、推定))× 価格 6.5%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 37 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 565 億ドル × シェア 4.60% × 価格 1.41 倍
倍率:正当化 PER 15.8 倍(g 4.0%・RONIC 12.1%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 16.0%−k)・moat=normal)に対して 13.7 倍(上限の 8.7 割)に置いた。近代化とデジタルが伸び、新造は輸出で保つ筋書き。楽観より控えめで上限の 8.7 割。
確率:更新・近代化とデジタルの成長は続くが、新造は循環で上下する。強気の見方の下敷きを確率 2 割とした。
中立 36% 中立:保有基盤は微増、近代化とデジタルが伸び、利益率は 20% 手前で落ち着く 利益 29 億ドル · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 208.47 ドル357 億ドル
2035 年、世界の新造は市場 2,650 台・シェア 27%(輸出と北米のならした水準)、近代化は北米の稼働機関車 3.77 万台に対する発注率が 4.0%(1,500 台)でシェア 64%(プログレス・レールの SD70M-2 の改修など競合が一部を取る)。保有基盤は 27,000 台で、1 台あたりのサービス売上が物価で上がり 330 億ドル。デジタルは市場 330 億ドル(年 +6.2%)、シェア 6.8%、価格 1.35 倍で売上 30 億ドル。10 年の物価は 1.41 倍で、売上は 208 億ドル(年 +6.4%)、営業利益率は 19.6%。純利益は 2025 年の約 2.4 倍。長期の成長 g は 4.2%(数量 0.7% × 価格 3.5%)。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 15.5 倍(g 4.0%・RONIC 11.8%・k 8.25%)の 8.0 割で PER 12.4 倍、時価総額は 357 億ドル。
- 機関車の新造(機器):数量 2,650(世界の新造機関車市場(台/年。中国の国内向けを除く、推定))× 価格 1.4%(ワブテックのシェア × 1 台あたり単価(0.0379 億ドル。鉱山・船舶用などを含む機器全体の平均)× 価格指数)→ 売上 38 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 2,650 台 × シェア 27.0% × 単価 0.0379 億ドル × 価格 1.41 倍
- 機関車の更新・近代化:数量 1,500(北米の稼働機関車 3.77 万台 × 年間の発注率(台/年))× 価格 1.3%(ワブテックのシェア × 1 台あたり改修単価(0.0143 億ドル)× 価格指数)→ 売上 19 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 1,500 台(発注率 4.0%)× シェア 64% × 単価 0.0143 億ドル × 価格 1.41 倍
- 機関車の保守・部品・サービス:数量 27,000(ワブテックの機関車の稼働基盤(台))× 価格 0.00(1 台あたりの年間サービス売上(億ドル)× 価格指数)→ 売上 33 億ドル・営業利益 10 億ドル。稼働基盤 27,000 台 × 1 台あたり 0.000866 億ドル × 価格 1.41 倍
- 貨物の車両部品:数量 150(貨物向けの部品の市場(億ドル、2025 年価格。推定))× 価格 16.9%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 25 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 150 億ドル × シェア 12.00% × 価格 1.41 倍
- デジタル・インテリジェンス:数量 330(鉄道向けの信号・検査・運行ソフトの市場(億ドル、推定))× 価格 9.2%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 30 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 330 億ドル × シェア 6.80% × 価格 1.35 倍
- 輸送:新造向け(OEM):数量 470(旅客車両の新造向け部品の市場(億ドル、推定))× 価格 6.0%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 28 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 470 億ドル × シェア 4.25% × 価格 1.41 倍
- 輸送:アフターマーケット:数量 540(旅客車両のアフターマーケット部品・整備の市場(億ドル、推定))× 価格 6.3%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 34 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 540 億ドル × シェア 4.47% × 価格 1.41 倍
倍率:正当化 PER 15.5 倍(g 4.0%・RONIC 11.8%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 15.3%−k)・moat=normal)に対して 12.4 倍(上限の 8.0 割)に置いた。機関車は北米で寡占に近く、受注残 309 億ドルと保守収益で安定するが、貨物鉄道の投資循環に振れ、のれん込みの ROE は 15% 前後なので上限の 8.0 割。
確率:稼働台数は微増(年 +0.9%)、更新・近代化は年 +3%、デジタルは年 +6%、価格は物価並みという業界の置き方に、新造の循環をならして置いた。
やや悲観 22% やや悲観:プログレス・レールと中国勢に押され、価格が物価に届かず、利益率は 17% 近くに落ちる 利益 19 億ドル · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 119.52 ドル205 億ドル
2035 年、新造は市場 2,400 台でシェアが 25.5% に下がり、輸出の入札では中国勢が価格を押し下げる。近代化は発注率 3.3%(1,250 台)でシェア 58%、鉄道会社の自社工場とプログレス・レールが一部を取る。保有基盤は 25,500 台に微減し、価格は物価に届かない(10 年 1.38 倍、デジタルのセンサーは 1.30 倍)。営業利益率は 16.7% に落ち、純利益は 2025 年の約 1.6 倍にとどまる。貨車の部品は鉄道の物量が伸びず、数量が年 +0.4%。長期の成長 g は 3.8%(数量 0.5% × 価格 3.3%)。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 14.5 倍(g 4.0%・RONIC 10.4%・k 8.25%)の 7.5 割で PER 10.9 倍、時価総額は 204 億ドル。
- 機関車の新造(機器):数量 2,400(世界の新造機関車市場(台/年。中国の国内向けを除く、推定))× 価格 1.3%(ワブテックのシェア × 1 台あたり単価(0.0379 億ドル。鉱山・船舶用などを含む機器全体の平均)× 価格指数)→ 売上 32 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 2,400 台 × シェア 25.5% × 単価 0.0379 億ドル × 価格 1.38 倍
- 機関車の更新・近代化:数量 1,250(北米の稼働機関車 3.77 万台 × 年間の発注率(台/年))× 価格 1.1%(ワブテックのシェア × 1 台あたり改修単価(0.0143 億ドル)× 価格指数)→ 売上 14 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 1,250 台(発注率 3.3%)× シェア 58% × 単価 0.0143 億ドル × 価格 1.38 倍
- 機関車の保守・部品・サービス:数量 25,500(ワブテックの機関車の稼働基盤(台))× 価格 0.00(1 台あたりの年間サービス売上(億ドル)× 価格指数)→ 売上 31 億ドル・営業利益 9 億ドル。稼働基盤 25,500 台 × 1 台あたり 0.000866 億ドル × 価格 1.38 倍
- 貨物の車両部品:数量 135(貨物向けの部品の市場(億ドル、2025 年価格。推定))× 価格 16.0%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 22 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 135 億ドル × シェア 11.60% × 価格 1.38 倍
- デジタル・インテリジェンス:数量 280(鉄道向けの信号・検査・運行ソフトの市場(億ドル、推定))× 価格 7.5%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 21 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 280 億ドル × シェア 5.80% × 価格 1.30 倍
- 輸送:新造向け(OEM):数量 400(旅客車両の新造向け部品の市場(億ドル、推定))× 価格 5.4%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 22 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 400 億ドル × シェア 4.00% × 価格 1.35 倍
- 輸送:アフターマーケット:数量 470(旅客車両のアフターマーケット部品・整備の市場(億ドル、推定))× 価格 5.7%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 27 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 470 億ドル × シェア 4.20% × 価格 1.35 倍
倍率:正当化 PER 14.5 倍(g 4.0%・RONIC 10.4%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 12.6%−k)・moat=normal)に対して 10.9 倍(上限の 7.5 割)に置いた。プログレス・レールと中国勢に押され価格が物価に届かない筋書き。堀が削れた会社として中立より下の上限の 7.5 割。
確率:2 社体制の価格が崩れ、輸出で CRRC・アルストムが価格を下げ、更新の発注が分散する展開。受注残の山のあとの反動を含めて 2 割強とした。
悲観 14% 悲観:電池式・新規参入と物量の減少で機関車の基盤が縮み、のれんの減損が出て利益率は 11% に落ちる 利益 7 億ドル · PER 7.9 倍 · 株価時価総額 30.39 ドル52 億ドル
2035 年、鉄道会社が精密運行(PSR)で必要な機関車の台数を減らし、電池式・水素式の機関車が新規参入で価格を押し下げる。新造は市場 1,700 台・シェア 22%、近代化は発注率 2.1%(800 台)でシェア 50%、保有基盤は 22,500 台に縮む。価格は物価に大きく届かない(10 年 1.20〜1.25 倍)。営業利益率は 11.2% に落ち、営業利益は 12 億ドル、純利益は 6.6 億ドルと 2025 年の約半分。買収で払ったのれんのうち 25 億ドル分を減損し、自己資本が縮む(帳簿のみ)。デジタルは高価格の競争に押され、輸送は中国勢の安値で利益率が 1 桁に落ち、優良な循環株ではなくなる。長期の成長 g は 3.0%(数量 −0.5% × 価格 3.5%)。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 12.1 倍(事業の ROE が k 以下なので上限は 1÷k)の 6.5 割で PER 7.9 倍、時価総額は 52 億ドル。
- 機関車の新造(機器):数量 1,700(世界の新造機関車市場(台/年。中国の国内向けを除く、推定))× 価格 1.0%(ワブテックのシェア × 1 台あたり単価(0.0379 億ドル。鉱山・船舶用などを含む機器全体の平均)× 価格指数)→ 売上 17 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 1,700 台 × シェア 22.0% × 単価 0.0379 億ドル × 価格 1.20 倍
- 機関車の更新・近代化:数量 800(北米の稼働機関車 3.77 万台 × 年間の発注率(台/年))× 価格 0.9%(ワブテックのシェア × 1 台あたり改修単価(0.0143 億ドル)× 価格指数)→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 800 台(発注率 2.1%)× シェア 50% × 単価 0.0143 億ドル × 価格 1.25 倍
- 機関車の保守・部品・サービス:数量 22,500(ワブテックの機関車の稼働基盤(台))× 価格 0.00(1 台あたりの年間サービス売上(億ドル)× 価格指数)→ 売上 24 億ドル・営業利益 6 億ドル。稼働基盤 22,500 台 × 1 台あたり 0.000866 億ドル × 価格 1.25 倍
- 貨物の車両部品:数量 110(貨物向けの部品の市場(億ドル、2025 年価格。推定))× 価格 13.1%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 110 億ドル × シェア 10.50% × 価格 1.25 倍
- デジタル・インテリジェンス:数量 220(鉄道向けの信号・検査・運行ソフトの市場(億ドル、推定))× 価格 5.8%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 13 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 220 億ドル × シェア 5.00% × 価格 1.15 倍
- 輸送:新造向け(OEM):数量 330(旅客車両の新造向け部品の市場(億ドル、推定))× 価格 4.5%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 15 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 330 億ドル × シェア 3.60% × 価格 1.25 倍
- 輸送:アフターマーケット:数量 400(旅客車両のアフターマーケット部品・整備の市場(億ドル、推定))× 価格 4.8%(ワブテックのシェア × 価格指数)→ 売上 19 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 400 億ドル × シェア 3.80% × 価格 1.25 倍
倍率:事業の ROE 7.1% は k 8.25% 以下なので上限は 1÷k の 12.1 倍。7.9 倍(上限の 6.5 割)に置いた。電池式・新規参入と物量の減少で機関車の基盤が縮み、のれんの減損(25 億ドル、帳簿のみ)で利益率が 11% に落ちる筋書き。事業の ROE が k 以下なので上限は 1÷k で、稼ぐ力(純利益 ÷ k)の 6.5 割に置いた。市場の評価倍率は根拠にしていない。
確率:リーマン級の不況に、10 年のうちの構造的な負け(電動化、貨物の物量の構造的な減少、プログレス・レールの攻勢、中国の価格競争)が重なる。受注残の山が崩れた後の反動を含め 14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
機関車の新造(機器)
貨物鉄道向けの新造機関車と、鉱山・船舶・産業用エンジン。北米は低水準で、輸出が中心。
| 数量世界の新造機関車市場(台/年。中国の国内向けを除く、推定) | 価格ワブテックのシェア × 1 台あたり単価(0.0379 億ドル。鉱山・船舶用などを含む機器全体の平均)× 価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,300 | 1.0% | 24 | 3 |
| 10 年後 中立 | 2,650 | 1.4% | 38 | 6 |
取り方:世界の新造機関車の市場を年 2,300 台(推定。北米は歴史的な低水準、輸出が大半)、シェア約 27%、機器全体の 1 台あたり単価 0.0379 億ドル(約 380 万ドル)と置いた。2025 年の機器売上は 6 か月の実績(102 億ドル)と第 4 四半期の +33.5% から約 23.5 億ドルと推定、営業利益率は約 13%。売上 = 市場 × シェア × 単価 × 価格指数。競合はプログレス・レール(北米)、輸出では CRRC・アルストム・シーメンス・スタドラー。
機関車の更新・近代化
古い機関車(AC4400・Evolution など)を作り直し、燃費・牽引力・信頼性を上げる事業。サービスに含まれて開示される。
| 数量北米の稼働機関車 3.77 万台 × 年間の発注率(台/年) | 価格ワブテックのシェア × 1 台あたり改修単価(0.0143 億ドル)× 価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,100 | 0.9% | 10 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 1.3% | 19 | 5 |
取り方:北米の稼働機関車 3.77 万台(2024 年末)に対する年間の更新・近代化の発注率を約 2.9%(約 1,100 台、推定)、シェア約 65%、1 台あたり約 143 万ドル(ユニオン・パシフィックの 12 億ドルで 1,000 台=1 台 120 万ドルを目安)と置き、売上を約 10.2 億ドルと推定した(サービス全体 32 億ドルのうちの約 3 割)。競合はプログレス・レール(ノーフォーク・サザンの SD70M-2 を 96 台改修)と鉄道会社の自社工場。営業利益率は約 23%。
機関車の保守・部品・サービス
保有機関車の保守・修理・交換部品。保有基盤が増えるほど長く稼ぐ。
| 数量ワブテックの機関車の稼働基盤(台) | 価格1 台あたりの年間サービス売上(億ドル)× 価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 24,600 | 0.00 | 21 | 6 |
| 10 年後 中立 | 27,000 | 0.00 | 33 | 10 |
取り方:ワブテックの機関車の稼働基盤は約 24,600 台(10-K)。サービス売上は 2025 年に約 31.5 億ドル(6 か月の実績 16.4 億ドルから推定)で、うち近代化を除く保守・部品が約 21.3 億ドル、1 台あたり約 8.7 万ドル。売上 = 稼働台数 × 1 台あたりの売上 × 価格指数。営業利益率は約 28%。競合はプログレス・レール(自社機の保守)と鉄道会社の自社整備。保有基盤はワブテックの新造の納入で増え、廃車で減る。
貨物の車両部品
連結器・ブレーキ・台車・機関車の機器など、貨車と機関車に付く部品。
| 数量貨物向けの部品の市場(億ドル、2025 年価格。推定) | 価格ワブテックのシェア × 価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 130 | 11.9% | 16 | 3 |
| 10 年後 中立 | 150 | 16.9% | 25 | 6 |
取り方:貨物向けの部品(ブレーキ・連結器・台車・機関車機器)の市場を約 130 億ドル(推定)、シェア約 11.9% と置いた。2025 年の売上は約 15.5 億ドル(上半期は前年並み 7.5 億ドル、2026 年は貨車の生産が前年比 −21% と弱い)、営業利益率は約 19%。競合は NYAB(クノールブレムゼ)・アムステッド・レール・CRRC。
デジタル・インテリジェンス
列車制御・信号・車両や線路の検査・運行最適化のソフトとセンサー。
| 数量鉄道向けの信号・検査・運行ソフトの市場(億ドル、推定) | 価格ワブテックのシェア × 価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 180 | 5.4% | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 330 | 9.2% | 30 | 7 |
取り方:鉄道向けの信号・列車制御・検査・運行ソフトの市場を約 180 億ドル(推定)、シェア約 5.4% と置いた。2025 年の売上は約 9.8 億ドルで、7 月に買収したインスペクション・テクノロジーズが半年分、12 月に買収したフラウシャーが 1 か月分しか入っていない(2026 年 4〜6 月期は 3.6 億ドル)。営業利益率は買収の償却を含め約 14%。競合は信号のシーメンス・アルストム・ハネウェル、検査の専業各社。
輸送:新造向け(OEM)
地下鉄・通勤電車・高速鉄道の新造車両に使うブレーキ・ドア・空調・連結器。
| 数量旅客車両の新造向け部品の市場(億ドル、推定) | 価格ワブテックのシェア × 価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 350 | 4.0% | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 470 | 6.0% | 28 | 4 |
取り方:旅客車両の新造向けの機器の市場を約 350 億ドル(推定)、シェア約 4.0% と置いた。輸送の売上は 2025 年に 31.3 億ドル(10-K)で、新造向けは約 45% の約 14.0 億ドル、営業利益率は約 10%。2026 年 2 月に成立したデリナー(連結器)の通年分は、2028 年以降の数量とシェアに入れた。競合はクノールブレムゼ・アルストム・シーメンス・CRRC。
輸送:アフターマーケット
稼働中の旅客車両の保守・部品・改修。
| 数量旅客車両のアフターマーケット部品・整備の市場(億ドル、推定) | 価格ワブテックのシェア × 価格指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 400 | 4.3% | 17 | 3 |
| 10 年後 中立 | 540 | 6.3% | 34 | 7 |
取り方:旅客車両のアフターマーケット(部品・整備・改修)の市場を約 400 億ドル(推定)、シェア約 4.3% と置いた。2025 年の売上は約 17.3 億ドル(輸送の約 55%)、営業利益率は約 16%(輸送の営業利益 4.2 億ドルから OEM を引いて推定)。2026 年 4〜6 月期は 5.25 億ドル(+21%)。デリナーの通年分は 2028 年以降のシェアに入れた。競合は同じ。
リスクと懸念
受注残の山の実現リスク
受注残 309 億ドル(前年比 +42%)の大半は輸出の機関車と長期の近代化で、納期が長い。発注国の財政や為替、キャンセル・延期・値引き交渉、納入の遅れで、受注の山のとおりに売上と利益が出ない恐れがある。受注残が最高の時期は、過去に新造の循環の山と重なりやすく、山のあとの反動が悲観の筋書きの下敷きである。
機関車の新造の循環と北米の低水準
機関車の新造は貨物の物量・石油とガスの景気・鉄道会社の設備投資で大きく動く。2015〜17 年には売上が落ちた谷があり、今の北米の新造は歴史的な低水準で、成長は輸出に頼る。北米の鉄道会社が精密運行で必要な台数を減らす、更新・近代化が新造を置き換えて 1 台あたりの金額が下がる、といった形でも利益は下がる。
プログレス・レールとの競争
新造の機関車はキャタピラー子会社のプログレス・レールとの 2 社体制で、2026 年の CPKC の発注では同社が 65 台を取った。同社は近代化(ノーフォーク・サザンの SD70M-2 を 96 台改修)にも広がる。2023 年の訴訟で北米のシェアが争われ、2026 年 2 月に和解と報じられた。シェアや価格の崩れは、新造・近代化・サービスの 3 つの事業に同時に効く。
買収ののれんと統合
2025〜26 年にインスペクション・テクノロジーズ(約 18 億ドル)・フラウシャー(約 8 億ドル)・デリナー(約 9 億ユーロ)を買い、のれんは 106 億ドルと自己資本の 9 割になった。買収の高値づかみは減損になり、統合が遅れれば数量・利益率に響く。純負債は 2026 年 6 月末で約 63 億ドルと 2025 年末から増えた。
貨物の物量・貨車部品の弱さ・関税
貨車の生産は 2026 年に約 2.5 万両(前年比 −21%)と弱く、貨物の部品の売上は前年を下回っている。貨物の物量は関税・景気・住宅で揺れ、鉄道会社の設備投資の抑制は新造・近代化・部品の発注に同時に効く。関税は 2025 年には緩和できたが、鉄鋼・アルミの関税の影響は残る。
電動化・新規参入・中国勢
電池式・水素式の機関車や新規参入が、ディーゼルの保有基盤の整備・部品の収益を長期で置き換える可能性がある。輸出と輸送では CRRC・アルストム・シーメンス・スタドラーが低価格で参入し、鉄道会社が自社の工場で整備する動きも価格を押し下げる。10 年の悲観の筋書きでは、価格が物価に届かない形で表した。
利益の質(償却と株式報酬)
GAAP の純利益は買収無形資産の償却(2026 年は四半期 0.9 億ドル)と株式報酬を引いており、会社の調整後の利益は約 3 割高く見える。調整後の数字で今の PER を測ると安く見えるが、この分析は GAAP で測っている。償却を戻すなら利益自体を戻す必要があり、倍率で二重に上乗せしてはならない。
今後の分かれ目
- 北米の鉄道会社が近代化の発注を広げ、ユニオン・パシフィックの 1,000 台に続く大型案件が出る
- 更新・近代化の数量が中立の想定(発注率 4%)を上回り、楽観・やや楽観の確率を上げる。サービス全体の伸びと営業利益率の上方修正の根拠になる。
- 貨物の物量が落ち、鉄道会社が新造と近代化の発注を先送りする
- 受注残の山が崩れる筋で、やや悲観・悲観の確率を上げる。新造の数量が 2025 年を下回れば、悲観の稼ぐ力に見合う水準を当てはめる側に寄る。
- 輸出の大型案件(インド・カザフスタン・UAE・豪州など)で納入の遅れやキャンセルが出る
- 受注残の質が疑われ、新造の数量とシェアを下げ、やや悲観の確率を上げる。為替の影響も受ける。
- プログレス・レールが北米の新造の入札で連続して勝ち、近代化にも広がる
- シェアと価格を決める力の低下で、新造・近代化・サービスの 3 事業の利益が減る。10 年の悲観・やや悲観の確率を上げる。
- デジタル(インスペクション・フラウシャー)が買収時の計画を上回り、営業利益率が上がる
- 買収が価値を作ったことの確認で、のれんの減損リスクが下がり、楽観側の確率を上げる。デジタルの売上の伸びは年 +6% を上回る。
- 大型の買収が発表され、のれんがさらに増える
- 成立するまでは単体で見る。成立後は買収額と利益の回収を数量・利益率で積み直す。払い込みが大きければ純負債が増え、時価総額への寄与は小さくなる。
見ておくもの
- 受注残(309 億ドル)の出荷ペースと、12 か月以内に出る分(91 億ドル)の伸び
- 貨物の機器の売上と、新造の機関車の納入台数(北米と輸出の内訳)
- 更新・近代化の発注(ユニオン・パシフィック、CSX、ノーフォーク・サザン)とサービス売上の推移
- 貨車の生産数と貨物の物量(部品の売上の先行指標)
- デジタルの売上(四半期 3.6 億ドル)と営業利益率
- 営業利益率(GAAP 18.9%・調整後 21.9%)の推移と統合 3.0 の効果
- 純負債(約 63 億ドル)・自社株買い・償却費の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見る前に、数量 × 価格で積んだ利益から利益ベースの正当化 PER((1−g/RONIC)/(k−g)、RONIC=k+残る割合×(事業の ROE−k))で出した。10 年の中立は正当化 PER 15.5 倍(k 8.25%・g は上限の 4%・ROE 15%・moat=普通)の 8 割 = 12.4 倍。機関車は北米で寡占に近く、受注残 309 億ドルと保守収益で安定するが、貨物鉄道の投資循環に振れ、のれん込みの ROE は 15% 前後なので 8 割。k は貨物鉄道の投資循環への振れ(cycle +0.5%)と値段の守り(pricing −0.25%)で quality +0.25%。悲観側は谷の倍率や市場の評価倍率を根拠にせず、稼ぐ力の内側で置いた。今の株価に寄せて選んだ値ではなく、全筋書きが検査の上限(正当化 PER × 事業の純利益の 1.1 倍)の内側に収まっている。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.25%。受注残に支えられた景気の振れの中ほどと、値段の守りやすさを quality で見た。個別のリスク(鉄道会社の設備投資の減速・合併の統合・関税)は k に足さず、筋書きの数量・利益率と確率で表した。存続を疑う要素はなく上乗せは 0。