結論
アラスカ・エア・グループは、米国西海岸とハワイを地盤に旅客、提携カード、貨物で稼ぐ航空会社である。筆者は、今の時価総額は10年先の本質価値をやや上回り、やや割高と判断する。航空機と空港枠を押さえ、シアトルでは大きな路線網を持つが、運賃を自分だけの都合で決める力は弱い。事業の強さと株主の取り分を分けて考える必要がある。
2024年に買ったハワイアン航空の統合は進み、2025年の売上は142.4億ドルとなった。しかし純利益は1.0億ドルにとどまり、純有利子負債は47.4億ドルに膨らんだ。2026年7〜9月期には売上が前年同期比14%増えたが、燃油高でGAAP純損失1.47億ドルを計上した。会社は同年通期の調整後損益を赤字へ下方修正し、業績回復の出発点は想定より低くなった。
2035年の中立では、アラスカ本体の座席供給は2025年の約1.28倍、ハワイアンは約1.51倍に広がる。単位収入は物価に沿って約1.41倍となり、全社の売上は約268億ドル、営業利益は約18億ドルへ回復する。それでも機材の更新と借金返済が先で、株主への正味還元は厚くならない。10年後の中立の時価総額は約90億ドルだが、現在まで割り戻すと十分な安全域とは言えない。
上振れには長距離国際線、上級席、アトモス・リワーズの拡大が必要だ。逆に、ハワイ路線の価格競争と燃料・人件費の上昇が重なると、売上が伸びても株主利益は残らない。五つの筋書きを重み付けした10年の現在価値は約33.6億ドルで、台帳時価総額38.4億ドルを約12%下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、航空会社は「客が増えれば儲かる」と単純に考えてはいけない。運賃を受け取る前に飛行機を買い、人を雇い、整備と空港設備に支出する。需要が落ちても、この費用の多くはすぐには減らない。2025年に営業から生まれた現金は12.5億ドルだったが、設備投資後の自由現金収支は約3.4億ドルの赤字だった。株主のものになる利益は、会計上の純利益とも異なる。
この会社を保有する理由があるとすれば、シアトルを中心とする便数と、ハワイでのブランド・会員基盤の組み合わせだ。競合にとって同じ接続便の網を一度に作るのは難しい。2026年のプレミアム収入は伸びており、長距離便と提携カードが航空運賃の薄い利幅を補う可能性がある。だが、その強みを維持するには新しい機材と路線への投資が絶えず必要になる。
投資した追加資本の収益率が10%の資本コストを継続して超えるかが肝心だ。10年後の中立のROEは約11.7%と大きな余裕がなく、統合後も値上げや費用削減が止まればすぐ下回る。負債を減らす方が自社株買いより価値を生む期間も長いだろう。筆者は将来の路線網に価値を認めるが、長く安心して複利を積める企業と見なすには、燃料高の年にも自由現金が残る証拠がまだ足りない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はアラスカ航空の主力便で、2025年の売上は90.9億ドルである。シアトル、ポートランド、アンカレジから西海岸と全米をつなぎ、ボーイング737を多く使う。座席を何マイル運ぶかを表す有効座席マイル(ASM)が年間631.6億、ASM当たり収入は約14.4セントだった。旅客運賃に手荷物、提携カード、貨物を加えた複合収入である。
ハワイアン航空は2024年9月に買収を完了した事業で、2025年は売上32.8億ドル、ASM232.1億だった。ホノルルと島しょ部を結ぶ生活路線、北米本土からの観光路線、日本・太平洋方面の国際線を担う。アラスカとの航空券販売システムを2026年に統合し、機材と接続便を使い回す段階へ進んだ。地域便はホライゾン航空とスカイウェストのE175で、ASM65.9億、売上18.5億ドルを稼ぐ。
会社は2026年から旅客航空輸送を一つの報告セグメントへまとめるが、長期の数量と価格を見極めるため、2025年の三つの運航区分を維持して分析する。2025年の会社全体の旅客収入は128.35億ドル、ロイヤルティの外部収入は8.55億ドル、貨物等は5.49億ドルだった。カード提携の収入は各運航区分に既に配賦されているため、別の事業としてもう一度足さない。合計との差0.13億ドルと本社費・特殊費用の調整は全社の調整項目に含む。
旅客数が増えても、燃料、整備、人件費、航空機リース、空港使用料が利益を吸い取る。2025年の営業利益の下調べ値5.5億ドルは特殊項目除外後に近く、GAAPの営業利益約3.0億ドルとは異なる。AIエージェント代替の判定表に当たる人月商売や席課金ソフトではなく、実際に人と荷物を運ぶ事業だ。予約業務のAI化は費用削減に役立っても、飛行機の資本負担を消さない。
優良さと弱いところ
堀、つまり競合が容易に奪えない強みは、西海岸の便数と乗り継ぎの密度にある。2025年のシアトル空港ではアラスカ航空本体の搭乗者シェアが約43%で、デルタ航空の約20%を上回る。時間帯を選べる便数、アラスカ・ハワイアン両ブランド、提携航空会社への接続が法人客と頻繁に飛ぶ個人を引きつける。アトモス・リワーズの会員や提携カードも、次の搭乗を自社便に向ける仕組みとして機能する。
ただし、この堀は独占ではない。デルタはシアトルに自前の国際線と提携網を持ち、ユナイテッドはサンフランシスコを、サウスウエストは西海岸の短距離を押さえる。ハワイでは日本からの客足、島内運賃、観光需要で競争が厳しい。2026年7〜9月期の座席当たり収入は前年同期比11.7%増えたが、同時に燃油費も跳ね上がった。値上げの実績があっても、その上昇分すべてが利益として残るわけではない。
資本効率は買収で悪化した。過去10年のROE中央値は10.3%だが、2025年は2.4%しかなかった。2026年9月末のリース込み有利子負債比率は66%、純負債を調整後EBITDARで割ると5.5倍だった。追加の一機が将来の税引後資本コストを超えて稼ぐかは、長距離路線の搭乗率次第である。既存顧客の厚みは認めるが、資本が軽い強い堀とは呼ばない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国内の航空旅客市場は巨大だが、利益を分け合う競争が激しい。米運輸省の2026年7月までの直近12か月の国内搭乗者は約8.4億人で、デルタ、アメリカン、ユナイテッド、サウスウエストのシェアはそれぞれ約18%、18%、17%、17%だった。アラスカ本体は約7.1%で全国では中堅だが、西海岸の起点空港では存在感が大きい。四大で国内旅客数の約7割であり、業界ノートの「約8割」は測定対象の違いを含む概算として扱う。
世界の実質旅客輸送は長期で年3%程度伸びる余地があるものの、米国の成熟した国内線とハワイ観光は同じ速度ではない。アラスカはシアトル発の欧州・アジア直行便を増やし、2026年には東京、ソウル、ロンドン、ローマなどを結んだ。2030年までに大陸間15都市を目指し、上級席と航空貨物で単なる座席の量に頼らない構造を作る。ハワイの観光客は年約960万人で、住民の島間移動と海外からの観光需要を分けて見る必要がある。
需要だけでなく供給制約が運賃を左右する。ボーイングの納入遅延や整備士の不足は、席が増えないため単価を支える反面、航空会社の稼働率と機材更新を妨げる。燃料の高騰はさらに厄介で、2026年はアラスカの年間計画比で約18億ドルの費用増が見込まれた。10年の中立は市場のASM年3%前後、物価年3.5%を共通の物差しとし、自社の数量は路線別のシェア変化で調整した。燃料価格や物価を楽観だけで下げず、競争と機材効率で利益率の差を表す。
資本政策と M&A
資本配分の過去10年は、路線網を買って広げる一方、借金と固定費を抱え込んだ歴史である。2016年のヴァージン・アメリカ買収には現金約26億ドルを払い、2024年には約9.8億ドルの現金でハワイアン航空の株式を買った。後者では相手の負債も引き受けた。合併による年5億ドル以上の相乗効果を掲げ、2026年9月の説明会では増益施策10億ドルの約3分の2を既に捕捉したと説明したが、燃料高のため純利益にはまだ表れていない。
会社の長期目標は2027年の税前利益率11〜13%で、2030年までに大陸間15都市と収入の多角化を進める。2026年に示した2035年の機材規模は550機超で、2025年末の413機から大幅に増える。2025年の設備投資は約15.9億ドル、2026年も約14〜15億ドルが計画され、成長と更新に必要な現金は大きい。
2024年末には10億ドルの自社株買い枠を決め、2025年に5.7億ドルを実行した。しかし同年の自由現金収支は赤字で、筆者はこの還元を手放しでは評価しない。2026年9月末には利用可能流動性33億ドルを確保する一方、リース込み有利子負債比率は66%へ上がった。配当再開の数字の約束はなく、今後の還元は債務削減と機材投資を優先した残りで決めるべきだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
シアトルの便数の密度と、ハワイを含む航空網の再編効果は簡単には再現できない。2026年に統合した予約システムとアトモス・リワーズによって、以前は別々だった顧客を同じ便へ誘導できる。上級席を増やせば乗客数が横ばいでも単位収入が上がる。2026年7〜9月期に座席当たり収入が11.7%伸びたことは、顧客が高い運賃を全く受け入れないわけではない証拠だ。
ハワイアンの長距離機はシアトル発アジア・欧州便にも回せる。2030年の大陸間15都市、2035年の550機超という計画が実現すれば、西海岸以外へつながる接続便の厚みが増す。アトモス・リワーズはカード提携収入と乗り継ぎ需要を同時に伸ばし、貨物は旅客機の空いた貨物室でも稼げる。2016年のヴァージン・アメリカ統合で西海岸の路線を手にした経験も生きるだろう。
燃油高は2026年の特別な逆風であり、10年続くとは限らない。航空機の燃費改善と上級席の増設が進むほど、営業利益率は戻る。最良の筋書きでは全社売上が約394億ドル、営業利益が36億ドルを超え、利益の多くを債務返済と再投資に回しながら株主還元も再開できる。今の利益だけを見て、統合後の新しい稼ぐ力を無視するのは早計である。
慎重な見方
航空会社にはネットワークの利点があるが、顧客は他社便へ乗り換えるのにほとんど費用を払わない。シアトルではデルタが競り、サンフランシスコではユナイテッドが強い。ハワイは観光市場の景気と日本発の需要に左右され、島間の生活路線では値上げに政治的制約もある。空席を埋めるための値引きが増えれば、アラスカの強い空港でも採算は急に悪化する。
2026年の決算が警告を発している。7〜9月期は売上が14%増えたのに純損失となり、通期の調整後損益見通しは赤字へ下がった。9月末の純負債はリースを含め約53億ドルで、調整後EBITDARの5.5倍に達した。2025年には自由現金収支が赤字でも自社株買いを進め、2026年は機材投資と借り換えが重なる。これでは好調年の利益を平時のオーナー利益として扱えない。
長距離国際線の増便にも不確かさがある。デルタ、ユナイテッド、アメリカンの国際ネットワークと上級会員制度に対抗し、採算が合うまで数年を要する。ボーイングの納入遅延、機材の整備費、組合交渉、燃料高が重なると、ハワイアン統合の相乗効果は費用増で消える。構造的に負ける筋書きでは、10年後も売上は名目で横ばいにとどまり、将来の利益と株主取り分は大きく傷む。
どちらに重みを置いたか
路線網と統合の成果には十分な根拠があるが、その利益を株主に残す力はまだ弱い。2026年の最終赤字と借入負担を踏まえ、楽観・やや楽観を合わせた25%に対し、やや悲観・悲観を45%と厚くした。中立は30%で、燃油費が平準化し国際線が育つものの、資本効率は少ししか改善しない道である。確率加重した現在価値は約33.6億ドルとなり、今の時価総額38.4億ドルを約12%下回る。結論はやや割高であり、燃料費よりも自由現金と負債削減の実績が評価を変える鍵となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 70.48 ドル79 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 4.73 ドル5 億ドル)。 今の値に割り戻すと 30.11 ドル34 億ドル、今との差 −15.7%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 10.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 218.26 ドル244 億ドル | 19.71 ドル22 億ドル | +566.4% | +22.5% | 16.66 ドル19 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 127.54 ドル142 億ドル | 13.44 ドル15 億ドル | +294.8% | +15.9% | 25.38 ドル28 億ドル |
| 中立 | 30% | 80.42 ドル90 億ドル | 6.27 ドル7 億ドル | +142.8% | +9.7% | 26.01 ドル29 億ドル |
| やや悲観 | 29% | 24.15 ドル27 億ドル | −1.79 ドル−2 億ドル | −37.4% | −4.4% | 6.48 ドル7 億ドル |
| 悲観 | 16% | 6.99 ドル8 億ドル | −2.69 ドル−3 億ドル | −88.0% | −16.5% | 0.69 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 70.48 ドル79 億ドル | 4.73 ドル5 億ドル | +110.6% | +8.0% | 75.21 ドル84 億ドル |
今の株価時価総額 35.71 ドル40 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 楽観:シアトルの国際拠点化と上級席・会員収入が定着 利益 21 億ドル · PER 11.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 218.26 ドル244 億ドル
ハワイアンとの統合で開いたシアトル発の欧州・アジア便が根づき、デルタやユナイテッドに対抗できる接続網が育つ。アラスカ本体のASMは990億、ハワイアンは490億、地域便は105億となり、全社の実質座席供給は2025年の約1.7倍になる。世界の航空需要の伸びに加え、西海岸のシェア維持と長距離路線の取り込みが数量を押し上げる。上級席とアトモス・リワーズの充実で複合単位収入は物価を上回り、売上は394億ドルまで広がる。
機材の燃費改善、貨物の稼働率向上、統合した販売網の効果が利益に残る。2026年の損失は約6億ドルでも、その後は2027年2億、2030年10.5億、2035年21億ドルの純利益に回復する。10年累計のGAAP純利益は105.5億ドルとなる。追加買収を当てにせず、利益の多くで機材を更新しながら自社株買い28億ドルから株式報酬6億ドルを控除した正味22億ドルを還元する。自己資本は約123億ドルまで積み上がり、堀は地域の優位から国際接続網へ広がる。
- アラスカ航空本体(737中心):数量 990(億ASM(有効座席マイル、提供座席数×飛行距離))× 価格 0.24(ドル/ASM(旅客・ロイヤルティの外部収入・貨物等を含む総単位収入))→ 売上 233 億ドル・営業利益 26 億ドル。本体ASMは2025年比1.57倍、単価1.63倍。上級席と長距離便で競合との差をつける
- ハワイアン航空(ハワイ・太平洋路線):数量 490(億ASM(有効座席マイル))× 価格 0.24(ドル/ASM(旅客・外部ロイヤルティ・貨物等の合計))→ 売上 115 億ドル・営業利益 10 億ドル。ハワイの長距離・国際接続でASM2.11倍、単位収入1.66倍
- 地域航空(ホライゾン・スカイウェスト):数量 105(億ASM(有効座席マイル))× 価格 0.44(ドル/ASM(旅客と外部ロイヤルティ収入の合計))→ 売上 46 億ドル・営業利益 3 億ドル。E175接続便の需要と単位収入が改善
倍率:事業のROEは21.0÷122.96=17.08%。k10.0%、堀は普通で超過収益の残る割合1/2からRONIC13.54%。2035年以降の市場実質輸送量年2.2%とシェア維持、物価と高付加価値化から名目成長は4%を超えうるが、永続的には上限g4.0%に抑える。来年利益ベース(1−g/RONIC)/(k−g)を当年に直すと正当化PER12.21倍。上限の約95%で11.60倍。純利益はGAAPで株式報酬を費用とし、余剰純現金の上乗せはしない。
確率:大陸間15都市・550機超の拡張とプレミアム・カードの成功が同時に進み、燃料費を吸収できる展開。可能性はあるが、2026年の赤字と重い負債を踏まえ7%に抑える。
やや楽観 18% やや楽観:統合効果が広がり、国際線とカード提携が着実に育つ 利益 13 億ドル · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 127.54 ドル142 億ドル
シアトルの国際接続は定着するが、デルタやユナイテッドとの競争で大幅な運賃上昇は難しい。アラスカ本体のASMは895億、ハワイアン415億、地域便95億へ増え、単位収入は2025年の1.48〜1.51倍に改善する。ボーイング機の増便とハワイのアジア便で市場成長率をやや上回り、アトモス・リワーズの提携カード収入が上級席の需要を補う。売上は323億ドル、営業利益は25億ドル規模になる。
2026年の燃油高による損失6億ドルを踏まえても、翌年に小幅黒字へ戻り、2028年3.5億、2030年7億、2035年13億ドルの純利益へ進む。10年間の累計純利益は65億ドルにとどまり、大型機投資や債務圧縮の元手に多くを回す。自社株買い21億ドルから株式報酬相当6億ドルを引いた正味還元は15億ドルとする。ハワイアンの赤字は解消し、旅客運賃以外の収入が競争に対する緩衝材となるが、強い独占的な堀にはならない。
- アラスカ航空本体(737中心):数量 895(億ASM(有効座席マイル、提供座席数×飛行距離))× 価格 0.22(ドル/ASM(旅客・ロイヤルティの外部収入・貨物等を含む総単位収入))→ 売上 195 億ドル・営業利益 19 億ドル。本体ASM1.42倍、単価1.51倍。デルタとの競争で上値を制限
- ハワイアン航空(ハワイ・太平洋路線):数量 415(億ASM(有効座席マイル))× 価格 0.21(ドル/ASM(旅客・外部ロイヤルティ・貨物等の合計))→ 売上 89 億ドル・営業利益 7 億ドル。ハワイの観光とアジア線が回復しASM1.79倍
- 地域航空(ホライゾン・スカイウェスト):数量 95.0(億ASM(有効座席マイル))× 価格 0.42(ドル/ASM(旅客と外部ロイヤルティ収入の合計))→ 売上 40 億ドル・営業利益 2 億ドル。地域接続便の拡充、利益率4%
倍率:10年純利益13.0億ドルと自己資本89.46億ドルからROE14.53%。k10.0%、通常の堀の残存率1/2でRONIC12.27%。長期g3.8%は市場の実質需要年1.7%、シェアの微減年−0.3%、長距離便の成熟後の単位収入約2.4%を合成した名目成長で、ROEから出していない。正当化PERは当年利益で11.56倍、利益の質を認めて約95%の10.95倍。SBC費用はGAAP利益に含む。
確率:シアトル発の新路線と会員収入が利益率を改善するが、最良ほどの値決め力は得られない。統合進捗の開示に根拠があるため18%を配した。
中立 30% 中立:座席数は市場並みに伸び、物価分の値上げと統合効果が残る 利益 9 億ドル · PER 10.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 80.42 ドル90 億ドル
シアトルの地盤は維持するが、国内線の一部はデルタやサウスウエストに取られる。アラスカ本体はASM810億、ハワイアン350億、地域便85億となり、2025年の全社ASM929.6億から約1.34倍へ増える。米国内と国際線の実質市場成長が年3%前後であるのに対し、主力のシェアは大きく伸ばさない。各区分の単位収入は物価年3.5%に沿った約1.41倍とし、売上は267.9億ドルとなる。
2026年は約6億ドルの純損失、その後2027年は損益均衡、2028年2.2億、2030年5.2億、2035年8.8億ドルと段階的に持ち直す。2026年の燃料費ショックと、10年で約1億ドルの借換え金利負担増を純利益に含めた。ハワイアンは黒字化するが、国際線の競争で利益率はデルタ・ユナイテッドほど高くならない。10年累計純利益42.6億ドルから株主へ正味7億ドルを返し、残りは更新機材と財務改善を支える。自己資本は75.06億ドルとなり、ROEは11.7%で資本コストをわずかに上回る。
- アラスカ航空本体(737中心):数量 810(億ASM(有効座席マイル、提供座席数×飛行距離))× 価格 0.20(ドル/ASM(旅客・ロイヤルティの外部収入・貨物等を含む総単位収入))→ 売上 164 億ドル・営業利益 15 億ドル。本体ASM1.28倍、単価1.41倍。市場は年3%成長、シェアは微減
- ハワイアン航空(ハワイ・太平洋路線):数量 350(億ASM(有効座席マイル))× 価格 0.20(ドル/ASM(旅客・外部ロイヤルティ・貨物等の合計))→ 売上 70 億ドル・営業利益 5 億ドル。ハワイアンASM1.51倍、単価1.41倍。国際路線で増便
- 地域航空(ホライゾン・スカイウェスト):数量 85.0(億ASM(有効座席マイル))× 価格 0.40(ドル/ASM(旅客と外部ロイヤルティ収入の合計))→ 売上 34 億ドル・営業利益 1 億ドル。E175接続便ASM1.29倍、単価1.41倍
倍率:2035年のGAAP純利益8.8億ドル÷自己資本75.06億ドルでROE11.72%。k10.0%、普通の堀の残る割合1/2からRONIC10.86%。2035年以降のg3.5%は航空市場の実質ASM年1.5%、自社シェア年−0.2%、成熟後の単位収入年2.2%を合わせた名目成長で、ROEから導いていない。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)×(1+g)=10.79倍、航空の競争と更新投資を考慮して約95%の10.20倍。時価総額=8.8×10.20=89.76億ドル。純現金の上乗せなし。
確率:2026年の一時的な燃料高を越え、シアトルとハワイの路線網が残る一方、投資と大手競合で利益率の上限が低い。最も幅のある道として30%。
やや悲観 29% やや悲観:ハワイの競争と高コストが残り、座席のシェアを失う 利益 4 億ドル · PER 7.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 24.15 ドル27 億ドル
ハワイの運賃競争が長引き、シアトルでもデルタに乗継需要を奪われる。航空市場全体は伸びるのにアラスカ本体のASMは710億、ハワイアン250億、地域便66億にとどまり、全社の実質供給量は約1.1倍しか増えない。単位収入は物価の1.41倍に届かず、各区分で約1.23〜1.24倍となる。ボーイングの納入遅れと労働費用の上昇が効き、営業利益は8.72億ドル、純利益は3.5億ドルしか残らない。
2026年の損失6億ドルに続き、2027年は3億、2028年は1億ドルの赤字を想定する。その後に利益は回復しても10年累計は10.2億ドルに過ぎず、2025年末の利益水準から大きな飛躍はない。自社株買い3億ドルより株式報酬に伴う希薄化価値5億ドルが大きく、正味還元はマイナス2億ドルになる。自己資本は51.66億ドルまで増えるが、ROEは資本コスト未満だ。事業を安値で売れるわけではなく、時価総額は稼ぐ力の範囲で評価する。
- アラスカ航空本体(737中心):数量 710(億ASM(有効座席マイル、提供座席数×飛行距離))× 価格 0.18(ドル/ASM(旅客・ロイヤルティの外部収入・貨物等を含む総単位収入))→ 売上 126 億ドル・営業利益 9 億ドル。本体ASM1.12倍にとどまり単価は物価以下
- ハワイアン航空(ハワイ・太平洋路線):数量 250(億ASM(有効座席マイル))× 価格 0.18(ドル/ASM(旅客・外部ロイヤルティ・貨物等の合計))→ 売上 44 億ドル・営業利益 2 億ドル。島内・観光路線の競争でASM1.08倍、単価1.24倍
- 地域航空(ホライゾン・スカイウェスト):数量 66.0(億ASM(有効座席マイル))× 価格 0.35(ドル/ASM(旅客と外部ロイヤルティ収入の合計))→ 売上 23 億ドル・営業利益 0 億ドル。地域便のASM横ばい、地方路線を整理
倍率:GAAP純利益3.5億ドル÷自己資本51.66億ドル=ROE6.78%でk10.0%を下回る。市場の実質需要年1%前後からシェア低下を差し引き、運賃の伸びも物価を下回るため長期gは2%。新規投資の超過利益を認めずPERの上限は1/k=10倍で、競争と再投資負担を踏まえて7.70倍とした。時価総額26.95億ドルは稼ぐ力3.5÷0.10=35億ドルより小さく、税後資産の床12億ドルより大きい。過去のPBRを床に使わない。
確率:2026年の純損失、リース込み負債66%、ハワイアンの低採算を踏まえると、統合で成長しても株主利益が残らない危険が大きい。29%とした。
悲観 16% 悲観:国際線の採算が崩れ、資本を減らしながら縮小する 利益 1 億ドル · PER 6.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6.99 ドル8 億ドル
上級席の価格競争で長距離国際線の採算が悪化し、シアトルの乗継客をデルタに奪われる。ハワイへの観光客も伸び悩み、ハワイアンの島内便は公共性のため大幅値上げが難しい。アラスカ本体のASMは640億とほぼ横ばい、ハワイアンは200億へ減り、地域便も60億になる。運賃は10年で約1.01〜1.02倍にしかならず、物価で調整した実質値は大きく落ちる。売上は2025年とほぼ同じ140億ドルで、固定費と更新投資が重荷となる。
2026〜2031年に6年続けて損失を計上し、追加の機材処分と減損を含む10年累計純損失は26.3億ドルになる。事業の縮小後は残存路線で2035年の純利益1.2億ドルまで戻るが、自己資本は16.16億ドルへ痩せる。赤字期間に自社株買いはできず、株式報酬相当3億ドルが正味還元をマイナスにする。会社全体の時価総額は7.8億ドルまで縮み、簿価ではなく低い将来収益と航空機の税後換価価値で測る。
- アラスカ航空本体(737中心):数量 640(億ASM(有効座席マイル、提供座席数×飛行距離))× 価格 0.15(ドル/ASM(旅客・ロイヤルティの外部収入・貨物等を含む総単位収入))→ 売上 94 億ドル・営業利益 7 億ドル。本体ASMほぼ横ばい、単価は物価を大きく下回る
- ハワイアン航空(ハワイ・太平洋路線):数量 200(億ASM(有効座席マイル))× 価格 0.14(ドル/ASM(旅客・外部ロイヤルティ・貨物等の合計))→ 売上 29 億ドル・営業利益 −1 億ドル。国際線の撤退と島内の低運賃で縮小・赤字
- 地域航空(ホライゾン・スカイウェスト):数量 60.0(億ASM(有効座席マイル))× 価格 0.28(ドル/ASM(旅客と外部ロイヤルティ収入の合計))→ 売上 17 億ドル・営業利益 0 億ドル。赤字路線を廃止し、ASMが減少
倍率:将来のGAAP純利益1.2億ドル÷自己資本16.16億ドル=ROE7.43%はk10%未満。市場の実質需要増があっても自社シェア低下と実質運賃下落で相殺され、2035年以降の持続gは0%。PER上限1/k=10倍より低い6.50倍とし、mcapは1.2×6.50=7.80億ドル。稼ぐ力の上限12億ドル以下であり、税後換価資産の床4億ドル以上。現時点の自己資本に過去の谷のPBRを掛けていない。
確率:燃油・賃金高と国際線競争が長期化し、ハワイアン買収と新型機投資が資本を回収できない構造的な負け。会社の強い路線網が残るため破綻を既定とせず16%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
アラスカ航空本体(737中心)
シアトル・ポートランド・アンカレジを中心に、米国内と西海岸発の国際線へ旅客・貨物を運ぶ。運賃・提携カード・手荷物等を一体のASM単位収入で捉える。
| 数量億ASM(有効座席マイル、提供座席数×飛行距離) | 価格ドル/ASM(旅客・ロイヤルティの外部収入・貨物等を含む総単位収入) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 632 | 0.14 | 91 | 5 |
| 10 年後 中立 | 810 | 0.20 | 164 | 15 |
取り方:2025年10-Kの運航区分別売上90.90億ドル・営業利益5.41億ドルと、2026年1月22日通期決算資料のASM631.61億(63,161百万)を使用。運賃以外の当該区分の提携カード6.53億ドルと貨物等3.05億ドルを含めた単価は90.90÷631.61=0.1439ドル。売上を後から全社比で割り振った数字ではない。2026年以降は経営上の区分が一体化するため、将来も同じ運航のまとまりで追跡する。
ハワイアン航空(ハワイ・太平洋路線)
ハワイ島間、米本土とハワイ、日本・アジア・太平洋の広胴機運航。統合した販売網を通じてアラスカの国際路線にも機材を供給する。
| 数量億ASM(有効座席マイル) | 価格ドル/ASM(旅客・外部ロイヤルティ・貨物等の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 232 | 0.14 | 33 | −1 |
| 10 年後 中立 | 350 | 0.20 | 70 | 5 |
取り方:2025年10-Kのハワイアン運航区分売上32.83億ドル、営業損失0.80億ドル、決算資料のASM232.08億(23,208百万)を直接利用。運賃29.18億、提携会員1.34億、貨物等2.31億を含み、32.83÷232.08=0.14146ドル。市場はハワイ州の年間観光客約960万人、島内住民140万人の利用、米国〜アジア・太平洋便を分け、シアトル発の新しい長距離路線によるシェア増を数量へ反映する。
地域航空(ホライゾン・スカイウェスト)
E175型機によるシアトル・西海岸・アラスカ州の短中距離接続便。大手便への乗継を増やすための地域便も含む。
| 数量億ASM(有効座席マイル) | 価格ドル/ASM(旅客と外部ロイヤルティ収入の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 65.9 | 0.28 | 19 | 0 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 0.40 | 34 | 1 |
取り方:2025年10-KのRegional売上18.53億ドルと損益−0.01億ドル、通期決算資料のE175便ASM65.93億(6,593百万)を使用。地域便は約1,100万人を運び、短距離と高頻度運航のため単位収入0.2811ドルは本体より高い。2025年の約11百万人の搭乗者数は10-Kで開示。中立のASMは米国内地方路線の実質需要と接続便シェアで緩やかに伸びる。
リスクと懸念
燃油価格と運賃の転嫁
2026年7〜9月期の燃油費は前年同期比で大きく増え、会社は通期の計画外燃料費を18億ドルと見積もった。単位収入が二桁伸びても利益が赤字になるのは、価格決定力が十分ではない証拠だ。原油価格が落ち着かず燃料が高止まりする場合、航空機の効率改善だけで埋められず、やや悲観以下の利益率になる。
負債・リースと航空機の投資競争
2026年9月末の調整後純負債は約53億ドルで、EBITDARの5.5倍だった。機材購入、整備、空港リース、前受航空券の履行など、利用可能流動性とは別に支払いが続く。借換金利5.75%前後が浸透すると、2025年比で税前の年利払いを約1億ドル押し上げうる。自己資本は帳簿上厚く見えても、自由現金で借金を減らすまでは安全域が狭い。
ハワイアン統合の未回収と島内路線
ハワイアンは2025年に運航区分で営業赤字となり、統合の相乗効果と利益の回復は同義ではない。予約システムは一本化したが、労働協約や機材更新が残る。日本発の観光客や島内の生活路線は、燃料費が上がったからといって一律に値上げできない。ハワイのブランド価値を高く見積もり過ぎると、設備投資と統合費用だけが残る。
デルタと大手国際線網との競争
アラスカはシアトルで多くの便を持つが、デルタも約2割の搭乗者を抱え、ユナイテッドは西海岸の別の拠点を強く押さえる。欧州・アジアの長距離便はプレミアム需要をつかめる半面、大型機の固定費が重く、路線開設直後の搭乗率が低いと採算が悪化する。大手4社の会員基盤と提携網に押されれば、中立で想定した数量増と単位収入は両方とも下振れする。
航空機の納入・整備と労働契約
ボーイング737と787の納入遅延、整備部品の不足、運航・整備人員の賃金上昇は、飛ばせる座席の数と座席当たり費用を同時に悪化させる。長距離便の拡張と旧機の退役がずれると、燃費改善が遅れ、リース料が重なる。会社が2035年に550機超を見込んでも、増やす機体の投資利回りが資本コストに届かなければ株主価値は増えない。
旅行需要の構造変化と地政学
ハワイ観光、企業出張、日本・太平洋からの渡航は景気、感染症、入国制度、戦争や航空路の制限に左右される。AIによる会議や出張手配の効率化は間接的に旅行回数を減らす可能性があるが、航空輸送そのものはAIエージェントに直接代替されない。予約・顧客データが統合されたぶん、システム障害や情報漏えいが両ブランドを一度に止める被害も大きい。
今後の分かれ目
- 燃油価格が長く正常化し、座席当たり収入の伸びが非燃油費の伸びを3年続けて上回るなら
- 2026年の赤字を循環の谷と評価し、やや楽観の営業利益率に近づける。先に純負債が減るかを確認する。
- 燃料が1ガロン4ドル台で高止まりし、ASM当たり収入の成長が2年続けて費用に負けるなら
- やや悲観と悲観の確率を引き上げる。価格転嫁不足で自己資本が削れ、還元より資本調達が必要になる。
- ハワイアン運航区分の営業損益が継続して黒字化し、島内と長距離の搭乗率が改善したら
- 買収シナジーが実際の利益に変わった証拠であり、中立・やや楽観の純利益を再評価する。
- アトモス・リワーズの提携現金収入が二桁成長し、上級席が売上の4割を超えたら
- 顧客の囲い込みと単価改善が本物と判断する。ただし償還債務と販売費の増加を差し引いて見る。
- シアトルでの搭乗者シェアが大きく落ち、デルタなどの便数が逆転したら
- 接続便の網という堀の劣化であり、ASMの数量成長と長期の単価想定を引き下げる。
- リース込み有利子負債比率が50%以下に下がり、設備投資後のFCFが2年以上黒字になったら
- 追加の機材が資本コストを超えて稼ぐ証拠として、正味還元の見通しを上方修正する。
見ておくもの
- 四半期のASM・RASM・燃料を除くCASMと燃油のガロン単価
- アラスカ・ハワイアン・地域便の数量と収益性、国際線の搭乗率
- シアトルの搭乗者シェアとデルタ・ユナイテッドとの競争
- アトモス・リワーズの提携カード現金収入・会員増加と償還債務
- 設備投資・機材納入・機材の平均稼働率と自由現金収支
- リース込み有利子負債比率と調整後純負債/EBITDAR、正味還元
倍率と資本コストの決め方
会社の現在のPERや過去のPBRではなく、2025年の三つの航空運航区分のASMと単位収入を起点に、数量と物価を含む価格、費用率を個別に考えた。2035年の中立は売上267.9億ドル、営業利益17.85億ドル、GAAP純利益8.8億ドルである。資本コスト10%、成熟後のg3.5%、帳簿ROE11.7%からRONIC10.86%、正当化PER上限約10.79倍となり、その約95%の10.20倍で評価した。2026年の赤字と既済の株式買戻しは純利益累計と期首自己資本で一度だけ数える。航空機リースは既に米国基準で貸借対照表に計上されている。現在の時価総額と最後に比べると約12%のやや割高となるが、差に合わせて倍率や確率を逆算していない。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。資本コストは米国株の基本8.0%に事業の質+2.0%を加えた10.0%。株価のベータや株式市場の倍率は使わない。2026年に大幅赤字でも流動性33億ドルと未担保機材があり、継続企業の前提を否定する状況ではないため存続危機の追加上乗せは0。燃料・買収の実行リスクは筋書きに反映する。