結論
アメテック(AMETEK)は、航空宇宙・防衛、半導体・石油ガス・電力、医療などの現場に入る計測機器・分析機器・精密部品を、年に数件のペースで小さな企業を買い足しながら束ねる分散型の産業企業で、2025 年 12 月期は売上 74.0 億ドル、GAAP 営業利益 19.1 億ドル(25.8%)、GAAP 純利益 14.8 億ドル。2026 年は受注が 2 四半期続けて急増(4〜6 月期の受注 +28%、受注残 41.1 億ドル)し、売上は約 +10% の見通しに引き上げられた。
一方で、2026 年 8 月 26 日に 50 億ドルの現金でインディコー・インスツルメンテーション(Indicor Instrumentation、年間売上 約 11 億ドル)の買収が成立した。株は出さず全額が借入で、純負債は 2025 年末の約 21 億ドルから約 60 億ドルへ 3 倍近くに増え、利払いと買収無形資産の償却が GAAP 利益を削る。
バリュー投資の観点では、事業の質(ニッチでの採用の固さ・価格転嫁・継続収益)は高く、10 年後も今より強い確率が高い。市場 × シェア × 価格で既存事業の伸びを置き、買収で伸ばす分は投じる現金と買収先の利益をセットで置いて、資本コスト 7.5%(基本 8.0% + quality −0.5%)で割り引き確率で加重すると、10 年後の本質価値は 438 億ドルで、今の時価総額 574 億ドルを約 24% 下回る。
倍率は利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)(k 7.5%・g 4.0%・事業の ROE 21%・moat=普通)の上限 20.6 倍の 8.5 割(17.5 倍)に置いた(ニッチな計測・精密部品を買い足して束ねる質の高い事業で、利益率が安定し景気の振れが小さい。ただしインディコー買収で借金が増え、買収の成否に頼る)。総合は今の時価総額に対し -24% で「やや割高」。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。アメテックの製品は航空機・半導体装置・発電所・水道・病院の設備に組み込まれ、10 年後も使われ続けるうえ、校正・消耗・更新の継続収益がある。多数のニッチに分かれ、1 つの技術や 1 社の顧客で崩れにくい。堀は少なくとも保たれ、買い足しと生産性の改善で広がる余地がある、と見る。
次に、株主のものになる利益。FCF は純利益の 1.1 倍を超え、成長に要る設備投資は軽い。ただし GAAP 純利益に対する倍率は約 39 倍で、成長 4%・資本コスト 7.5% の式どおりの成熟後の倍率(約 19 倍)の 2 倍ある。優良さは価格にすでに織り込まれており、よい会社を高く買うことになる。
経営の資本配分は、買い足しで価値を作ってきた実績が長い一方、2026 年は 1 件で 50 億ドルを借りる大きな賭けに出た。借金が 3 倍近くに増え、買収無形資産の償却と利払いで GAAP 利益が削られ、買収が利益を増やすのはシナジーが出てからになる。わかりやすい事業なので確信度は高いが、安全域は無い。よい会社だが、今の値段では適正の範囲の割高寄りで、買収の成果が見えるまで待つのが自然である。
何で稼ぐ会社か
アメテック(AMETEK)は、現場の「測る・動かす」を担う小さく専門的な製品を束ねる企業で、2025 年 12 月期の売上は 74.0 億ドル、GAAP 営業利益は 19.1 億ドル(25.8%)。事業は 2 つのグループに分かれ、さらに 2026 年から 3 つ目の塊が加わった。
【電子計測機器グループ(EIG)】売上 49.2 億ドル、営業利益率 29.4%。航空宇宙・防衛の計測、半導体・石油ガスの分析、電力の計測と電源、超精密の光学(ゾイゴ(Zygo))、3D 計測(クレアフォーム(Creaform)、2025 年 7 月に約 9.2 億ドルで買ったファロ(FARO))、眼科・研究用の機器とソフトを持つ。1 台の単価は小さいが、装置や航空機の仕様に組み込まれ、校正・消耗品・更新が続く。
【電気機械グループ(EMG)】売上 24.8 億ドル、営業利益率 23.3%。自動化・精密モーション、医療用の精密部品(パラゴン・メディカル(Paragon Medical))、航空・防衛の整備と部品(2026 年 5 月に買ったファースト・アビエーション・サービシズ)、熱管理を持ち、受注の変動が EIG より大きい。
【インディコー】産業・科学用の計測 10 事業(水道のデジタル計測のテクノログ・オバロなどを含むと報じられる)で、売上は年 約 11 億ドル、消耗品・サービス・アフター収益が売上の約 50%。50 億ドルを借入で払い、EIG と EMG に振り分けて統合している。
収益の構造は、小さなニッチを多数持ち(顧客一社への依存が低い)、それぞれで首位級になるまで買い足し、本社の生産性の仕組み(Operational Excellence。2026 年の生産性目標は 1.6 億ドルに引き上げ)で利益率を磨く形である。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 に、仕様への組み込み。計測器やセンサーは顧客の装置・航空機・工場の設計図に載り、一度採用されると、完成品の価格に占める割合が小さいのに、故障したときの損失が大きいため、顧客は値引きより実績で選ぶ。2026 年 4〜6 月期は、価格が物価と関税の上昇を上回って転嫁できたと会社は説明している。第 2 に、ニッチの分散。多数の小さな事業で、どれか 1 つが落ちても全体の利益率は 25% 台を保ちやすい(2006 年以降の最悪の営業利益率でも 17%)。第 3 に、買収後の改善の仕組み。買った会社に本社の生産性の手順を入れて利益率を上げる経験が長く、2026 年 4〜6 月期は調整後の営業利益率 26.6%(コア 27.1%)、営業 CF から投資を引いた FCF は純利益を超える(変換率 111%)。
資本効率は、事業の稼ぐ力に比べて帳簿の ROE(13.9%)が低い。買収を重ねて、のれんが 2026 年 6 月で 74 億ドルまで膨らみ、さらにインディコーで(推定)30 億ドル台ののれんと 20 億ドル前後の無形資産が載るためで、年 約 2.8 億ドルの償却(インディコー分が加わると年 4 億ドル超)が GAAP 純利益を下げる。
弱い所は 3 つ。買収の倍率が上がっていること(インディコーは約 14 倍 EBITDA、売上の 4.5 倍)、EMG の受注の振れ、航空宇宙・半導体・電力の好況が重なる 2026 年が山に近いことである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
アメテックの市場は 1 つの産業ではなく、計測・センサー・分析・精密モーションの数十のニッチの集まりで、全体を測る統計は無い。本分析では EIG の対象市場を約 1,600 億ドル、EMG を約 900 億ドル、インディコーを約 600 億ドルと推定した(シェアは売上 ÷ 市場で、それぞれ 3.1%・2.8%・1.8%)。市場の実質の伸びは年 2〜3%(航空宇宙・防衛、半導体の検査、電力、医療が高く、石油ガス・一般産業が低い)、価格は物価並みの年 3.5% を基本に置いた。
2026 年は好況の側にいる。4〜6 月期の事業別のオーガニック成長は、航空宇宙・防衛が 10% 台半ば、自動化が 10% 台半ば、プロセスが 10% 台後半(半導体・エネルギー)、電力が 1 桁半ばで、受注は EMG +35%・EIG +20%(6 月は過去最高)と、売上の伸びに先行している。ただし会社は後半の売上を 1 桁半ば〜後半に鈍る前提で見通しを置いている。
競合は分野ごとに違う。計測・電子ではテレダイン(Teledyne)、キーサイト(Keysight)、ロッパー(Roper)、フォーティブ(Fortive)、ハルマ(Halma)、ヘキサゴン(Hexagon)、電気機械・モーションではアンフェノール(Amphenol)、パーカー・ハネフィン(Parker Hannifin)、リーガル・レックスノード(Regal Rexnord)、インディコーが入る水道の計測ではザイレム(Xylem)、バッジャー・メーター(Badger Meter)、イトロン(Itron)がいる。営業利益率は、ハルマやテレダインが 20% 前後、ロッパーが 20% 台後半(いずれも推定)で、アメテックの 26% 台は同業の上位にある。構造の論点は、買収の倍率が競り上がり、買い足しで伸びる戦略の収益率が下がらないか、である。
資本政策と M&A
還元は配当が年 約 2.9 億ドル(GAAP 純利益の約 19%)で、自社株買いは 2026 年上半期に 0.3 億ドルとほぼ止まっている。会社の資本配分の最優先は買収で、「あらゆる規模の買収の案件が豊富」と説明している。
買収の履歴は、2024 年 10 月にバーテック・ビジョン(Virtek Vision)、2025 年にケルン(Kern)と ファロ(約 9.2 億ドル)、2026 年にエルケーシー・テクノロジーズ(LKC Technologies)とファースト・アビエーション(2 件で現金 4.25 億ドル)、そして 8 月に 50 億ドルのインディコーである。2025 年の買収の支出は約 9.3 億ドルだったので、インディコー 1 件でその 5 倍を超える。資金は 2026 年 6 月に締結したタームローン 40 億ドル(3・4・5 年、変動金利)と、35 億ドルに増やした循環与信で、純負債は 2026 年 6 月の約 15 億ドルから成立後 約 60 億ドルになる。
インディコーは売上 約 11 億ドルに 50 億ドル(会社の説明で約 14 倍 EBITDA。売上の 10〜12% のシナジーを加えると 10 倍強)を払い、会社は売上の 10〜12% の費用シナジーを見込む。利息(税引き後で年 約 2.2 億ドル)と償却(年 1.67 億ドル)を GAAP で差し引くと、シナジーが出るまでは純利益がほとんど増えない。本分析は、今後の買収も「投じる現金」と「買収先の GAAP 利益」を組にし、現金は還元と純負債から差し引いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026 年 4〜6 月期は売上 +15%(オーガニック +10%、買収 +5 ポイント)、受注 +28%(オーガニック +25%)、受注残 41.1 億ドルと、需要は売上より先に走っている。受注残の約 8 割は 12 か月以内に出荷され、EMG の受注は +35%、EIG は +20%、6 月は過去最高、7 月も「非常に良い」と会社は言う。航空宇宙・防衛は 10% 台半ば、自動化は 10% 台半ば、半導体は EIG で目立つ。価格は物価と関税を上回って転嫁でき、生産性目標は 1.6 億ドルに上がった。
インディコーは売上の約 50% が継続収益で、会社は売上の 10〜12% の費用シナジーに自信を深めている。シナジーが満額出れば、50 億ドルの買収は約 10 倍 EBITDA になり、償却を引いた GAAP 利益でも 2028 年に利息を十分に上回る。ファロは「今後 6〜12 か月で利益率に大きな上積み」の見通し。純負債は FCF(年 25 億ドル前後)で 2 年ほどで 2 倍から 1 倍強まで下がり、2028 年以降は買収と自社株買いに回せる。これが強気の見方で、楽観とやや楽観の筋書きの下敷きである。
慎重な見方
GAAP 純利益に対する倍率は約 39 倍で、成長 4%・資本コスト 7.5% の式どおりの成熟後の倍率(約 19 倍)に戻るだけで半分近く下がる。調整後の利益(償却を戻した値)では安く見えるが、償却は買収が価値を生まなければ本物の損失であり、アメテックの買収は大型化して倍率が上がっている(インディコーは売上の 4.5 倍、約 14 倍 EBITDA。売り手の CD&R は約 4 年前に 36 億ドルで買った)。
2026 年は航空宇宙・半導体・電力・自動化の好況が重なる山に近く、会社自身が後半の売上の伸びを鈍らせる前提を置いている。受注の山のあとには EMG の受注が先に落ちる。純負債は 21 億ドルから約 60 億ドルに増え、借り換えは約 5.75% で、純利息は今年の約 1.9 億ドルから 2027 年に約 2.7 億ドルまで増える。利息と償却で、インディコーは初年度の GAAP 純利益をほとんど増やさず、シナジー(売上の 10〜12%)が出なければ買収は株主に価値を残さない。
同業のロッパー・フォーティブ・ハルマが同じニッチで買収を競い、買収倍率が高止まりすれば、買い足しで伸びる戦略の収益率は下がる。水道の計測は公益の予算に左右される。これが慎重な見方である。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は受注と継続収益の確かさに説得力があるが、10 年では買い足しの収益率が下がる側も厚く見た。確率は楽観 8%・やや楽観 22%・中立 38%・やや悲観 22%・悲観 10%。事業は質が高く、2009 年も営業利益率は 17% を保ったので悲観は 1 割にとどめ、買収の収益率が下がる分はやや悲観を少し厚くした。倍率は利益ベースの正当化 PER の内側(中立は 8.5 割)に置き、総合は今の時価総額に対し -24% で「やや割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 271.76 ドル628 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 82.81 ドル192 億ドル)。 今の値に割り戻すと 189.54 ドル438 億ドル、今との差 −20.6%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 477.04 ドル1,103 億ドル | 109.49 ドル253 億ドル | +145.6% | +9.4% | 46.92 ドル109 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 364.61 ドル843 億ドル | 96.13 ドル222 億ドル | +92.9% | +6.8% | 101.36 ドル234 億ドル |
| 中立 | 38% | 278.48 ドル644 億ドル | 86.05 ドル199 億ドル | +52.6% | +4.3% | 138.52 ドル320 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 177.29 ドル410 億ドル | 67.67 ドル157 億ドル | +2.6% | +0.3% | 53.89 ドル125 億ドル |
| 悲観 | 10% | 85.62 ドル198 億ドル | 53.14 ドル123 億ドル | −41.9% | −5.3% | 13.88 ドル32 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 271.76 ドル628 億ドル | 82.81 ドル192 億ドル | +48.5% | +4.0% | 354.57 ドル820 億ドル |
今の株価時価総額 238.82 ドル552 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:航空宇宙・半導体・電力・医療が 10 年伸び、買い足しも高い収益率を保つ 利益 51 億ドル · PER 21.6 倍 · 株価時価総額 477.04 ドル1,103 億ドル
2035 年 12 月期、航空宇宙・防衛、半導体の検査、電力、医療が 10 年続けて伸び、市場は年 +3.5〜4%(実質)、価格は物価をやや上回る年 +3.7%(仕様に組み込まれた製品の値上げ)、シェアも毎年 0.5% 取る。売上 222.9 億ドル。EIG 109.6 億ドル(営業利益率 34.0%)・EMG 60.3 億ドル(31.0%)・インディコー 23.2 億ドル(GAAP 33.8%)。今後の買収に累計 114.0 億ドルを投じ、買収先の売上 29.9 億ドル・GAAP 営業利益 5.6 億ドルが乗る。営業利益 67.6 億ドル(30.3%)、純利益 51.1 億ドル(GAAP)、純負債 81 億ドル(EBITDA の 1.0 倍)、2026 年からの還元の合計 253 億ドル(配当 63・自社株買い 197・株式報酬を差し引いた正味)。
- 電子計測機器(Electronic Instruments・コア):数量 2,345(アメテックの計測・センサー・分析機器の対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.7%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 110 億ドル・営業利益 37 億ドル。市場・シェア・価格
- 電気機械(Electromechanical・コア):数量 1,411(アメテックの電気機械・精密部品・MRO の対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.3%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 60 億ドル・営業利益 19 億ドル。市場・シェア・価格
- インディコー(Indicor Instrumentation・買収成立済み):数量 842(インディコーの対象市場(水道・産業・科学用の計測。億ドル、2025 年価格))× 価格 2.8%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 23 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場・シェア・価格
- 今後の買収(投じる現金とセット):数量 114(2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル))× 価格 0.26(投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額))→ 売上 30 億ドル・営業利益 6 億ドル。投じた現金と買収先の利益
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 7.50%(基本 8.0% + quality -0.50%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 2〜3% + 価格は物価並みの 3.5% から買収に頼らない伸びを見て、4% を超えない)・事業の ROE 28%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 51.1 ÷ 自己資本 185.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 17.6%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 22.1 倍(上限 = 純利益 51.1 億ドル × これ = 1127 億ドル)。これの 1.0 割(21.6 倍)に置いた。楽観:利益の質が最も良く出る筋書きなので上限に最も近く置いた。
確率:10 年を通して需要が強く、価格もやや物価を上回り、買い足しの収益率が資本コストを上回り続ける必要がある。構造の追い風が全部味方する筋書きで 1 割弱とした。
やや楽観 22% やや楽観:高成長は 2030 年前後に一巡するが、買い足しの仕組みは働き続ける 利益 43 億ドル · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 364.61 ドル843 億ドル
2035 年 12 月期、市場は年 +2.8〜3.2%(実質)、価格は物価並みの年 +3.5%、シェアは年 +0.25%。売上 197.3 億ドル。EIG 98.8 億ドル(営業利益率 32.5%)・EMG 53.4 億ドル(29.0%)・インディコー 21.1 億ドル(GAAP 32.1%)。今後の買収に累計 98.0 億ドルを投じ、買収先の売上 24.1 億ドル・GAAP 営業利益 4.3 億ドルが乗る。営業利益 56.9 億ドル(28.8%)、純利益 43.0 億ドル(GAAP)、純負債 69 億ドル(EBITDA の 1.0 倍)、2026 年からの還元の合計 222 億ドル(配当 56・自社株買い 173・株式報酬を差し引いた正味)。
- 電子計測機器(Electronic Instruments・コア):数量 2,194(アメテックの計測・センサー・分析機器の対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.5%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 99 億ドル・営業利益 32 億ドル。市場・シェア・価格
- 電気機械(Electromechanical・コア):数量 1,299(アメテックの電気機械・精密部品・MRO の対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.1%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 53 億ドル・営業利益 16 億ドル。市場・シェア・価格
- インディコー(Indicor Instrumentation・買収成立済み):数量 798(インディコーの対象市場(水道・産業・科学用の計測。億ドル、2025 年価格))× 価格 2.6%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 21 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場・シェア・価格
- 今後の買収(投じる現金とセット):数量 98.0(2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル))× 価格 0.25(投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額))→ 売上 24 億ドル・営業利益 4 億ドル。投じた現金と買収先の利益
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 7.50%(基本 8.0% + quality -0.50%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 2〜3% + 価格は物価並みの 3.5% から買収に頼らない伸びを見て、4% を超えない)・事業の ROE 24%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 43.0 ÷ 自己資本 180.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 15.7%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 21.3 倍(上限 = 純利益 43.0 億ドル × これ = 915 億ドル)。これの 0.9 割(19.6 倍)に置いた。やや楽観:楽観より伸びと利益率が控えめなので一段下。
確率:新設需要の高成長が一巡しても、更新・校正・消耗の継続収益と買い足しが残る展開。強気の見方に近いが、買収の倍率が高止まりして収益率が少し下がる。
中立 38% 中立:成熟した優良な産業企業になり、買い足しで年 7% 台伸びる 利益 37 億ドル · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 278.48 ドル644 億ドル
2035 年 12 月期、市場は EIG 年 +2.2%・EMG 年 +2.5%(実質)、価格は物価並みの年 +3.5%、シェアは一定。売上 178.1 億ドル。EIG 90.0 億ドル(営業利益率 31.0%)・EMG 48.4 億ドル(27.0%)・インディコー 20.0 億ドル(GAAP 30.6%)。今後の買収に累計 82.0 億ドルを投じ、買収先の売上 19.7 億ドル・GAAP 営業利益 3.5 億ドルが乗る。純負債は EBITDA の 1.0 倍を保ち、残りの FCF は自社株買いに回る。営業利益 48.8 億ドル(27.4%)、純利益 36.8 億ドル(GAAP)、純負債 60 億ドル(EBITDA の 1.0 倍)、2026 年からの還元の合計 199 億ドル(配当 50・自社株買い 155・株式報酬を差し引いた正味)。
- 電子計測機器(Electronic Instruments・コア):数量 2,046(アメテックの計測・センサー・分析機器の対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.4%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 90 億ドル・営業利益 28 億ドル。市場・シェア・価格
- 電気機械(Electromechanical・コア):数量 1,203(アメテックの電気機械・精密部品・MRO の対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.0%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 48 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場・シェア・価格
- インディコー(Indicor Instrumentation・買収成立済み):数量 757(インディコーの対象市場(水道・産業・科学用の計測。億ドル、2025 年価格))× 価格 2.6%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 20 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場・シェア・価格
- 今後の買収(投じる現金とセット):数量 82.0(2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル))× 価格 0.24(投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額))→ 売上 20 億ドル・営業利益 4 億ドル。投じた現金と買収先の利益
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 7.50%(基本 8.0% + quality -0.50%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 2〜3% + 価格は物価並みの 3.5% から買収に頼らない伸びを見て、4% を超えない)・事業の ROE 21%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 36.8 ÷ 自己資本 173.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 14.4%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 20.6 倍(上限 = 純利益 36.8 億ドル × これ = 759 億ドル)。これの 0.8 割(17.5 倍)に置いた。中立:ニッチな計測・精密部品を買い足して束ねる質の高い事業で、利益率が安定し景気の振れが小さい。ただしインディコー買収で借金が増え、買収の成否に頼るので上限の 8.5 割にとどめた。
確率:業界ノートの置き方(数量の伸び年 +2.5%、価格は物価並み)に、会社の過去の買い足しのペース(年 10 億ドル前後)を重ねた落としどころ。
やや悲観 22% やや悲観:買収倍率の競り上がりと値引きで、利益率が 24% 台にとどまる 利益 25 億ドル · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 177.29 ドル410 億ドル
2035 年 12 月期、市場は年 +1.0〜1.2%(実質)、価格は物価を下回る年 +2.8%、シェアは年 −0.3%。売上 140.5 億ドル。EIG 75.0 億ドル(営業利益率 28.0%)・EMG 37.1 億ドル(23.0%)・インディコー 16.5 億ドル(GAAP 24.9%)。買収は倍率が上がって収益率が下がり、累計 57.0 億ドルにとどまる。営業利益 33.7 億ドル(24.0%)、純利益 25.0 億ドル(GAAP)、純負債 52 億ドル(EBITDA の 1.2 倍)、2026 年からの還元の合計 156 億ドル(配当 39・自社株買い 124・株式報酬を差し引いた正味)。
- 電子計測機器(Electronic Instruments・コア):数量 1,855(アメテックの計測・センサー・分析機器の対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.0%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 75 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場・シェア・価格
- 電気機械(Electromechanical・コア):数量 1,013(アメテックの電気機械・精密部品・MRO の対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.7%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 37 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場・シェア・価格
- インディコー(Indicor Instrumentation・買収成立済み):数量 679(インディコーの対象市場(水道・産業・科学用の計測。億ドル、2025 年価格))× 価格 2.4%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 17 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場・シェア・価格
- 今後の買収(投じる現金とセット):数量 57.0(2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル))× 価格 0.21(投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額))→ 売上 12 億ドル・営業利益 2 億ドル。投じた現金と買収先の利益
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 7.50%(基本 8.0% + quality -0.50%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 2〜3% + 価格は物価並みの 3.5% から買収に頼らない伸びを見て、4% を超えない)・事業の ROE 16%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 25.0 ÷ 自己資本 155.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 11.8%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 18.9 倍(上限 = 純利益 25.0 億ドル × これ = 472 億ドル)。これの 0.9 割(16.4 倍)に置いた。やや悲観:伸びが落ち堀が削れた会社として中立より下。
確率:同業と投資ファンドが買収を競って倍率が上がり、ニッチの値引きも起きる展開。計測・部品の産業は歴史的に価格競争が繰り返されてきた。
悲観 10% 悲観:ニッチの優位が薄れ、買収も裏目に出て優良企業ではなくなる 利益 16 億ドル · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 85.62 ドル198 億ドル
2035 年 12 月期、市場は年 0〜0.3%(実質)、価格は物価を下回る年 +2.5%、シェアは年 −0.8〜1.0% 失う。売上 114.4 億ドル。EIG 63.7 億ドル(営業利益率 24.0%)・EMG 31.3 億ドル(19.0%)・インディコー 13.5 億ドル(GAAP 15.6%)。買収は倍率 5.5 倍の売上で割高に買い(買収先の利益率 24% 前後)、累計 33.0 億ドルにとどまる。のれんの減損は純利益に入れていない。営業利益 22.0 億ドル(19.2%)、純利益 15.9 億ドル(GAAP)、純負債 42 億ドル(EBITDA の 1.4 倍)、2026 年からの還元の合計 123 億ドル(配当 30・自社株買い 100・株式報酬を差し引いた正味)。 もう優良企業としての評価は受けられない姿である。
- 電子計測機器(Electronic Instruments・コア):数量 1,691(アメテックの計測・センサー・分析機器の対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.8%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 64 億ドル・営業利益 15 億ドル。市場・シェア・価格
- 電気機械(Electromechanical・コア):数量 926(アメテックの電気機械・精密部品・MRO の対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.4%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 31 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場・シェア・価格
- インディコー(Indicor Instrumentation・買収成立済み):数量 609(インディコーの対象市場(水道・産業・科学用の計測。億ドル、2025 年価格))× 価格 2.2%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場))→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場・シェア・価格
- 今後の買収(投じる現金とセット):数量 33.0(2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル))× 価格 0.18(投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。投じた現金と買収先の利益
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 7.50%(基本 8.0% + quality -0.50%)・g 4.0%(上限の内側。市場の実質 2〜3% + 価格は物価並みの 3.5% から買収に頼らない伸びを見て、4% を超えない)・事業の ROE 11%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 15.9 ÷ 自己資本 141.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 9.4%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 16.4 倍(上限 = 純利益 15.9 億ドル × これ = 261 億ドル)。これの 0.8 割(12.4 倍)に置いた。悲観:構造的に負けて優良でなくなった会社として最も下。
確率:技術の置き換え(AI を使ったソフトの安い代替・中国メーカーの低価格化)と、割高な買収の積み重ねの失敗が重なる。のれんの減損が出る水準で、起きる確率は 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
電子計測機器(Electronic Instruments・コア)
航空宇宙・防衛の計測、プロセス(石油ガス・半導体)の分析、電力の計測・電源、超精密の光学・3D 計測(ゾイゴ・クレアフォーム・ファロ)、眼科・研究用の機器とソフト。
| 数量アメテックの計測・センサー・分析機器の対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,600 | 3.1% | 49 | 15 |
| 10 年後 中立 | 2,046 | 4.4% | 90 | 28 |
取り方:対象市場を約 1,600 億ドル(推定。アメテックの示すニッチ市場の合算で、調査会社により幅がある)、シェア約 3.1% と置いた。2025 年 12 月期の売上は 49.2 億ドル、セグメントの営業利益 14.5 億ドル(29.4%。買収無形資産の償却を費用に含む GAAP)。2026 年は会社の見通し(全社で売上 約 +10%)に合わせ、市場 +3.5%・買収で取り込んだ分(ファロの通年化・LKC)でシェア +1.5%・価格 +3.5%。
電気機械(Electromechanical・コア)
自動化・精密モーション、医療用の精密部品(パラゴン・メディカル)、航空の整備・部品(ファースト・アビエーション)、熱管理、特殊金属。受注の変動が EIG より大きい。
| 数量アメテックの電気機械・精密部品・MRO の対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 900 | 2.8% | 25 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,203 | 4.0% | 48 | 13 |
取り方:対象市場を約 900 億ドル(推定)、シェア約 2.8% と置いた。2025 年 12 月期の売上は 24.8 億ドル、セグメントの営業利益 5.79 億ドル(23.3%)。2026 年 4〜6 月期は売上 +17%、受注(オーガニック)+35%、調整後の営業利益率 26.3% と急回復している。2026 年は市場 +5%・買収(ファースト・アビエーション等)でシェア +3.5%・価格 +3.5%。
インディコー(Indicor Instrumentation・買収成立済み)
産業・科学用の計測機器の 10 事業(デジタル水道のテクノログ・オバロ等を含むと報じられる)。消耗品・サービス・アフター収益が売上の約 50%。2026 年 8 月 26 日に 50 億ドルの現金で取得済み。
| 数量インディコーの対象市場(水道・産業・科学用の計測。億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 対象市場) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 1.8% | 11 | 2 |
| 10 年後 中立 | 757 | 2.6% | 20 | 6 |
取り方:2025 年の見込み売上は約 11 億ドル(買収発表時の開示。アメテック未保有の見込み値)、対象市場を約 600 億ドル(推定)、シェア約 1.8% と置いた。営業利益は、償却前・シナジー前 29%(会社の「利益率はアメテック並み」と買収の約 14 倍 EBITDA から逆算)から、買収無形資産の償却(価格の約 4 割を 12 年で年 1.67 億ドル)を引いた GAAP の 1.6 億ドル(14.5%)。2026 年の取り込みは 8 月 26 日からの約 4 か月。
今後の買収(投じる現金とセット)
アメテックが毎年行ってきたニッチな計測・電子部品の買収。2027 年以降に投じる現金の累計と、買収先の売上・利益を 1 つの塊で置く。投じた現金は還元と純負債から差し引く。
| 数量2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル) | 価格投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.22 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 82.0 | 0.24 | 20 | 4 |
取り方:2025 年末の時点では今後の買収はゼロ(2026 年までに成立した買収は上の 3 つに入れてある)。売上 ÷ 買収額は、インディコー(11 億 ÷ 50 億 = 0.22)と同じ約 0.22 を基本に置く。買収先の営業利益は、償却前 30%(シナジー込み)から、買収無形資産の償却(価格の約 4 割を 12 年)を引いた GAAP で置く。
リスクと懸念
インディコー買収の借金とシナジーの未達
50 億ドルを全額借入で払い、純負債は約 21 億ドルから約 60 億ドルへ。利息(税引き後で年 約 2.2 億ドル)と償却(年 1.67 億ドル)で、シナジー(売上の 10〜12%)が出るまでは GAAP 純利益がほとんど増えない。統合が遅れれば、償却と利息だけが残る。
好況の山と受注の反落
2026 年は航空宇宙・半導体・電力・自動化の受注が同時に強く、会社自身が後半の売上の伸びを鈍らせる前提を置く。山のあとは EMG の受注が先に落ちる。2020 年は売上が 1 割強落ち、2008〜2009 年は株価が約 5 割下がった。
買収倍率の競り上がり
アメテックの戦略は小さな企業を割安に買い足すことだが、ファロ(約 9.2 億ドル)、インディコー(約 14 倍 EBITDA)と案件が大型化している。同業のロッパー・フォーティブ・ハルマや投資ファンドが競り、倍率が高止まりすれば、買い足しで伸びる分の収益率が資本コストを下回る。
GAAP と調整後の乖離
調整後の利益は買収無形資産の償却を戻すため、GAAP 純利益より 1 割強大きい。大型買収が続くと償却は年 4 億ドル超まで増え、株価の割安感は調整後の数字に頼ったものになる。本分析は GAAP で評価した。
金利の上昇と借り換え
借金は借り換えで約 5.75% に上がる前提で、純利息は 2026 年の約 1.9 億ドルから 2027 年に約 2.7 億ドルへ増える。タームローン 40 億ドルは変動金利で、金利が前提より上がれば純利益がさらに削られ、純負債を減らす速さが落ちて自社株買いの再開も遅れる。
関税と部材費
2026 年 4〜6 月期は価格が物価と関税の上昇を上回って転嫁できたが、航空宇宙・半導体向けは顧客の交渉力が強く、鉄鋼・アルミや電子部品の関税、部材と人件費の上昇が続く。転嫁が追いつかなくなれば、会社が掲げる利益率の拡大(年 0.3 ポイント前後)が止まる。
ニッチの競合と技術の置き換え
多数のニッチのうち、水道・3D 計測・分析など技術の入れ替わりが早い分野では、新興の競合や AI を使ったソフトの安い代替が入る恐れがある。EIG は売上の 3 分の 2、営業利益の 7 割を占めるので、その利益率(29%)が下がれば全体の利益に直接効く。
今後の分かれ目
- 2026 年 10 月下旬の第 3 四半期で、インディコーの売上・費用シナジーの進みが計画(売上の 10〜12%)に沿い、受注が前年を大きく上回る
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。ただし倍率の上限(k 7.5%・g 4% の式)は変わらない。
- 受注(オーガニック)の伸びが 2027 年に 1 桁前半へ落ち、受注残の伸びが止まる
- 好況の山が過ぎた信号で、10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。EMG の利益率が先に下がる。
- アメテックが 20 億ドル超の大型買収をさらに発表する
- 純負債が再び 3 倍を超える水準へ戻り、買収の収益率に確信が持てるまで還元(自社株買い)が先送りされる。やや悲観の確率を上げる。
- 買収の倍率が約 14 倍 EBITDA から 10 倍台前半へ下がる(小さな案件に戻る)
- 同じ現金で得る利益が増え、買い足しの収益率が上がる。楽観寄りに見る。
- ファロとインディコーの統合後の利益率(コア営業利益率)が 2027 年に 28% 台へ届く
- EIG の利益率 31% 超の筋書きの確率を上げる。
- 航空宇宙・防衛の受注(コア)が 2 桁成長を保つ
- EMG の利益率 28% 超とシェアの上昇の筋書きに寄せる。
見ておくもの
- 受注(オーガニック)の伸びと受注残(2026 年 6 月 41.1 億ドル、約 8 割が 12 か月以内に出荷)
- インディコーの売上・利益率・費用シナジー(売上の 10〜12%)の進みと、2026 年の売上寄与(約 3.5 億ドル)
- 純負債(約 60 億ドル)の返済の進みと、自社株買いの再開の時期
- コア営業利益率(2026 年 4〜6 月期 27.1%)と調整後・GAAP の差(買収無形資産の償却)
- 航空宇宙・防衛、半導体、電力、医療の事業別オーガニック成長
- 買収の倍率(EBITDA 倍率・売上倍率)と案件の規模
- 価格と関税・部材費のバランス(価格が物価を上回っているか)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見る前に、数量 × 価格で積んだ利益から利益ベースの正当化 PER((1−g/RONIC)/(k−g)、RONIC=k+残る割合×(事業の ROE−k))で出した。10 年の中立は正当化 PER 20.6 倍(k 7.5%・g 4.0%・ROE 21%・moat=普通)の 8.5 割 = 17.5 倍。ニッチな計測・精密部品を買い足して束ねる質の高い事業で利益率が安定する一方、インディコー買収で借金が増え買収の成否に頼るので、上限の 8.5 割にとどめた。今の株価や過去の倍率に寄せて選んだ値ではなく、全筋書きが検査の上限(正当化 PER × 事業の純利益の 1.1 倍)の内側に収まっている。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality −0.5% = 7.5%(β は使わない。決まり v2。内訳は quality_parts と quality_why)。個別のリスク(インディコー買収の統合・倍率の高止まり・航空宇宙や半導体の循環)は k に足さず、筋書きと確率で表した。長期の g は 4.0% まで、k − g ≥ 3.5% を守る。