結論
ヴェラルト(Veralto)は 2023 年 9 月にダナハー(Danaher)から分離した会社で、水質と製品識別の 2 つの事業を持つ。水質(2025 年売上 33.2 億ドル)は水質分析計器と試薬(ヘック)、紫外線殺菌(トロジャン)、産業用の水処理薬剤(ケムトリート)。製品識別(同 21.8 億ドル)は産業用印字と消耗品(ヴィデオジェット・リンクス)、包装ワークフローソフトと色管理(エスコ・エックスライト・パントン)。合計の売上は 55.0 億ドル、GAAP の営業利益率 23.2%、純利益 9.4 億ドル、消耗品・サービス・ソフトなどの定期収入が約 6 割(2026 年上期は 62%)を占める。
2026 年 4〜6 月の自社成長は 4.2%(水質 5.7%、製品識別 2.0%)で、会社は通期の見通しを 4.0〜4.5% に引き上げた。2026 年 4〜6 月の自社成長は 4.2%(水質 5.7%、製品識別 2.0%)で、会社は通期の見通しを 4.0〜4.5% に引き上げた。この分析は売上を「市場 × シェア × 価格」で積み、中立の筋書きで 2035 年に売上 94.3 億ドル・純利益 18.2 億ドル、10 年後の時価総額 341 億ドルと置いた。資本コスト 7.75%、長期の成長 4%、ROE 31.6%、堀は普通(残る割合 1/2)から利益ベースの上限は 21.2 倍で、その 8.8 割の 18.7 倍を置く。
バリュー投資の観点では、消耗品の比率が高く悲観の深さは浅い一方、上場後の実績が短く、深い不況での検証がまだ無い。今の時価総額 253 億ドル(GAAP の PER 26.9 倍)に対し、総合の本質価値は約 231 億ドルで、やや高めだが適正の範囲。成立済みの買収(イン・シチュ・グローバルビジョン・アルファ UV)は入れ、未成立のクリーンウォーター1 は入れていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ヴェラルトは「10 年後も存在し、今より強い」と言いやすい事業である。水を測る・水を処理する・食品の包装に日付を刻むという仕事は景気が悪くても止まらず、一度据えた計器・印字機は消耗品を買わせ続ける。堀は、据え付け台数・公定の測定法・紫外線の認証・現場の技術者網で、広がる側に近い。ただし上場して 3 年で、深い不況でどれだけ崩れないかは実績で確かめられていない。
オーナー利益(株主のものになる利益)は、GAAP の純利益 9.4 億ドルに近い。設備投資が小さく(売上の 1〜1.5%)、成長に要る元手は主に買収ののれんで、今の自己資本利益率 30% で伸びを支えられる。経営は VES で費用を磨き、買収は小さく積み重ねる方針だが、イン・シチュは売上の約 5 倍、クリーンウォーター1 は EBITDA の約 17 倍と値段は安くない。株式報酬は費用として見ている。
安全域は薄くも厚くもない。利益ベースの倍率(資本コスト 7.75%・成長 4%・ROE 約 32%・堀 普通で上限 PER 21 倍、中立 19 倍)は今の PER 26.9 倍を下回り、市場は利益ベースの上限を超えて値付けしている。定期収入の厚みで悲観が浅く、10 年の期待の年率は資本コスト 7.75% を下回る 5.6% にとどまる。わからない部分(成長の出どころの市場規模、製品識別の鈍り、競争の強さ)は確信度を下げて見ている。
何で稼ぐ会社か
ダナハーの環境・応用ソリューション事業が 2023 年 9 月に分離独立した会社で、本社は米マサチューセッツ州ウォルサム。2025 年の売上は 55.0 億ドル、うち水質 33.2 億ドル(GAAP の営業利益率 25.4%)、製品識別 21.8 億ドル(25.2%)。ダナハー流の経営手法をもとにした VES(ヴェラルト企業システム)で改善を回す。
水質には 3 つの稼ぎ方がある。①ヘック(Hach)の水質分析計器と試薬:上下水道・工業・食品の水を測る計器を据えると、使い切りの試薬(ケムキーなど)を毎回買ってもらえる。②トロジャン(Trojan)の紫外線殺菌:自治体の上下水と水の再利用向けで、北米の売上は 2025 年に 1 割弱伸びた。③ケムトリート(ChemTreat)の産業用水処理薬剤:発電所・半導体・データセンターの冷却水やボイラー水へ薬剤と技術者を送る。2026 年には水の現場計測のイン・シチュ(In-Situ、純 4.3 億ドル)を加えた。
製品識別は、ヴィデオジェット(Videojet)とリンクス(Linx)の産業用印字機とインク・溶剤(賞味期限やロット番号を印字する)、エスコ(Esko)の包装設計・工程管理ソフト、エックスライト(X-Rite)とパントン(Pantone)の色の測定と色見本、トレースゲインズ(TraceGains)の食品・サプリメント向けの品質管理ソフトが柱である。2026 年には包装の検査ソフトのグローバルビジョン(純 1.95 億ドル)を加えた。
売上のうち消耗品・サービス・部品・ソフトの定期収入が約 6 割で、残りの機器が景気の影響を受ける。設備投資は売上の 1〜1.5% と軽く、フリーキャッシュフローは GAAP の純利益の 100% を超える。
優良さと弱いところ
堀の中心は「据え付け台数が消耗品を呼ぶ」仕組みである。ヘックの計器は上下水道の公定の測定法に沿って校正され、使う試薬も決まっているため、一度据えると同じ試薬を買い続ける。ヴィデオジェットの印字機は専用のインクと溶剤が要り、食品・飲料の製造ラインに入ると止められない。トロジャンの紫外線は自治体の認証と実績が壁になる。ケムトリートは技術者が現場に入り、薬剤と水の管理を一括で受ける。
資本効率は高い。2025 年の自己資本利益率は 30%(自己資本が分離時の借入で小さい分も含む)、設備投資は売上の 1〜1.5%、純負債は EBITDA の約 0.5〜0.9 倍と軽い。VES で営業利益率を年 0.5pt ほど上げてきた。弱い点は 4 つある。①価格は物価より低く、実現は年 1〜2.3% にとどまった(機器の競争と技術の進歩)。②製品識別の自社成長は 2026 年 4〜6 月に 2.0% へ鈍った。③中国の水質は縮んでいる。④2023 年に上場したばかりで、深い不況を経験した実績が無い。また、のれん 31.7 億ドルが自己資本とほぼ同額で、成長の一部は買収に頼る(クリーンウォーター1 は EBITDA の約 17 倍)。2026 年上期の GAAP のセグメント営業利益率(水質 24.6%、製品識別 23.6%)は、コスト最適化の費用と買収の償却で 2025 年通期より低い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
水質は規制と水不足に支えられる。米国の飲料水の PFAS(有機フッ素化合物)規制は PFOA・PFOS の上限(4ppt)を維持し、測定の義務は予定どおり、処理の期限は 2029 年(希望する事業者は 2031 年へ延期する提案)である。測定の需要は期限どおり出るが、処理設備の需要は後ろへずれうる。水の再利用(自治体の下水の高度処理)、半導体・データセンター・発電所の冷却水と超純水が産業側の成長の核で、ケムトリートはデータセンターの周辺(電力・鉱業・半導体)で二桁成長と会社は述べている。液冷は水量が小さく管理が厳しいため、水質の製品の需要を押し上げると会社は見ている。
競争は、水質計器でザイレム(Xylem)・エンドレスハウザー(Endress+Hauser)、薬剤でエコラボ(Ecolab)・ソレニス・ヴェオリア、紫外線でザイレム傘下のブランドと専業。製品識別の印字ではダーバー(Dover)傘下のマーケム・イマージュ、ブラザー傘下のドミノ、日立が相手で、市場調査会社の推定ではヴェラルト(ヴィデオジェット・リンクス)が 15〜18%、ダーバーが 12〜15% と上位を分け合う。
今の位置は、水質が加速(自社成長 4.7% から 2026 年 4〜6 月 5.7%)、製品識別が減速(4.8% から 2.0%)という二極である。機器は産業の設備投資に連動し、消耗品は稼働に連動するため、景気の山谷での振れ幅は機器が大きい。ほかに、関税(IEEPA 関税の払い戻しが 2026 年 4〜6 月の利益に約 0.16 億ドル(税引き前)入った)、物価 3.5% による原料(ケムトリートの薬剤)の値上がり、中国の水質の縮みが効く。
資本政策と M&A
資本配分は、配当と自社株買いと買収を並べる。2026 年に四半期配当を 18% 上げ、自社株買いの枠は 7.5 億ドル(2026 年上期に 4.3 億ドルを実行)。ただし筋書きの還元は、株式報酬(2025 年は約 0.7 億ドル)で増える株の分を差し引いた正味で書いている。
買収はボルトオン(小さな買収)中心で、成立済みのものは 3 件:イン・シチュ(2026 年 1 月、純 4.3 億ドル、2025 年の売上約 0.8 億ドル、粗利約 50%)、グローバルビジョン(4 月、純 1.95 億ドル)、アルファ UV(7 月、紫外線)。この分析はこの 3 件を全筋書きに入れる(支払い合計 6.5 億ドル)。未成立のクリーンウォーター1(2026 年 8 月に合意、4.65 億ドル、売上約 1.35 億ドル、完了は 2026 年 10〜12 月の見込み)は入れていない。成立すれば水質の売上と償却が増える。
借金は 2025 年末の総額 27 億ドル・現金 20 億ドル(会社の数え方で純負債 6.4 億ドル)から、2026 年 6 月末は借金 33.8 億ドル・現金 21.2 億ドル(純負債 12.6 億ドル)へ増えた(買収と自社株買い)。純負債は EBITDA の 1 倍前後にとどまる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ヴェラルトは水の世界の「消耗品付きの据え付け」で、景気に強く、伸びが加速している。2026 年 4〜6 月の水質の自社成長は 5.7%、会社は通期の見通しを引き上げ、下期は 5〜6% の自社成長と利益率の改善を見込む。PFAS の測定義務は予定どおりで、飲料水の処理・測定の需要が 2027 年から出る。水の再利用、半導体の超純水、データセンターと発電所の冷却水は産業側の新しい需要で、ケムトリートの周辺の売上は二桁で伸びる。液冷は水量が小さく水質管理が厳しいので、ヘック・トロジャン・ケムトリートのすべてに追い風になる。
定期収入が約 6 割で、売上の過半は景気が悪くても止まらない。設備投資は売上の 1〜1.5% で、フリーキャッシュフローは純利益の 100% を超え、買収と株主還元の両方に回せる。VES で営業利益率を年 0.5pt 上げてきた実績があり、ボルトオン買収(成立済みの 3 件に加え、クリーンウォーター1 の話も進む)で水質の品ぞろえを広げられる。製品識別では包装の検査ソフトと追跡の需要(トレースゲインズが 20% 超の成長)で、印字機だけの会社から変わりつつある。
時価総額 253 億ドルは今の GAAP の PER で 26.9 倍だが、利益ベースの上限(資本コスト 7.75%・成長 4%・ROE 約 32%・堀 普通で 21 倍)に近く、成長が自社成長 5% 台後半・利益率上昇の筋書きなら 10 年後の時価総額は今の 1.8 倍に達する。
慎重な見方
今の PER 26.9 倍は、利益ベースの成熟後の倍率(上限 21 倍前後)をすでに超えており、安全域は無い。成長の中身を見ると、水質の 5.7% は価格の寄与が小さく(2025 年第 4 四半期の価格は +2.3%)、機器の受注と IEEPA 関税の払い戻し(2026 年 4〜6 月に約 0.16 億ドル(税引き前))に助けられた面がある。製品識別は 2.0% に鈍り、中国の水質は縮んでいる。価格の実現は年 1〜2.3% と物価 3.5% を下回り、物価が続く世界で利益率を守るには値上げで追いつく必要がある。
買収の価格が上がっている。クリーンウォーター1 は EBITDA の約 17 倍、イン・シチュは売上の約 5 倍で、のれん 31.7 億ドルは自己資本と同じ規模にふくらんだ。成長を買い続けると、減損や償却の増加(GAAP の利益を押し下げる)が出る。調整後の 1 株利益の伸び(2026 年 12〜14%)は株式報酬と買収の償却を足し戻した値で、GAAP の純利益の伸びはそれより小さい。
上場が 2023 年で、不況での実績が無い。機器は設備投資に連動し、安価なアジアの計器・印字機・AI の画像検査に置き換わる恐れもある。PFAS の処理期限は 2031 年へ延びる提案が出ており、処理設備の需要は後ろへずれうる。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分(消耗品の厚み・VES・水の需要)は事業の質として強いが、慎重な見方(今の値段が利益ベースの上限を超える・価格実現が物価を下回る・買収の割高さ)も同じくらい強く、中立の筋書きの確率を最も厚く置いた。確率は、楽観 9%・やや楽観 22%・中立 40%・やや悲観 19%・悲観 10%。消耗品が約 6 割ある点は悲観の深さを浅くする理由(売上の落ち込みは数%)だが、その比率の見積りと、置き換えが起これば定期収入そのものが減る危険を、悲観とやや悲観の確率の厚みで表した。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 130.71 ドル327 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 43.92 ドル110 億ドル)。 今の値に割り戻すと 92.21 ドル231 億ドル、今との差 −9.0%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 188.09 ドル471 億ドル | 48.38 ドル121 億ドル | +133.4% | +8.8% | 21.28 ドル53 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 161.81 ドル405 億ドル | 46.50 ドル116 億ドル | +105.6% | +7.5% | 45.83 ドル115 億ドル |
| 中立 | 40% | 136.20 ドル341 億ドル | 44.51 ドル111 億ドル | +78.4% | +6.0% | 72.28 ドル181 億ドル |
| やや悲観 | 19% | 96.20 ドル241 億ドル | 42.43 ドル106 億ドル | +36.8% | +3.2% | 26.34 ドル66 億ドル |
| 悲観 | 10% | 54.29 ドル136 億ドル | 34.72 ドル87 億ドル | −12.1% | −1.3% | 8.90 ドル22 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 130.71 ドル327 億ドル | 43.92 ドル110 億ドル | +72.4% | +5.6% | 174.63 ドル437 億ドル |
今の株価時価総額 101.31 ドル254 億ドル(2026-10-21)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 9% 楽観:水と包装の規制・需要でシェアが上がり、利益率が 27% 台 利益 23 億ドル · PER 20.4 倍 · 株価時価総額 188.09 ドル471 億ドル
2035 年 12 月期、売上 110.5 億ドル(10 年で年 +7.2%)、営業利益 30.4 億ドル(率 27.5%)、純利益 23.1 億ドル。水質は市場が実質年 3.2%(水不足と再利用、PFAS、データセンターと発電所の冷却水、半導体の超純水)、シェアは年 +0.5%(5.5% が買収分を含め 6.0% 前後へ)、価格は 10 年で 1.43 倍と、消耗品と薬剤が物価を上回って上がる。製品識別は市場が年 2.2%、包装ソフトとトレーサビリティ(追跡)の需要でシェアが年 +0.3%、価格 1.40 倍。水質 70.5 億ドル(率 30.0%)、製品識別 40.0 億ドル(率 29.0%)。機器から消耗品・ソフトへの比重が上がり(定期収入 7 割近く)、営業利益率は 27% 台まで広がる。未成立・未発表のボルトオン買収は入れていない。長期の成長 g は市場 1.8% + シェア 0.2% + 価格 3.0%=5.0%。期末の純負債は 20.8 億ドル、期間の還元(配当+自社株買いから株式報酬で増えた株の分を引いた正味)は 121.1 億ドル。成立済みの買収の支払い 6.5 億ドルと、伸びに要る投資 44.2 億ドル(増えた利益 ÷ 事業の ROE 30%)を差し引き、自己資本の繰り越しと合わせた。
- 水質(分析計器・消耗品・処理薬剤):数量 822(水質分析・消毒機器・消耗品・産業用水処理薬剤の市場(億ドル、2025 年価格・推定))× 価格 8.6%(ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 70 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場 822 億ドル × 価格(シェア 5.99% × 指数 1.430)
- 製品識別(印字・包装ワークフロー・色管理):数量 373(産業用印字・包装ワークフロー・色管理の市場(億ドル、2025 年価格・推定))× 価格 10.7%(ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 40 億ドル・営業利益 12 億ドル。市場 373 億ドル × 価格(シェア 7.67% × 指数 1.400)
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 33.2%(この筋書きの純利益 23.1 ÷ 自己資本 70 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 7.8%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 20.5%(堀は普通:消耗品・据え付け台数・公定の測定法・技術者網は強いが、製品識別は競合が多く価格が物価を下回る)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=市場の実質 1.6% + シェア 0% + 価格 3.0%(水質は物価並み、製品識別は物価を下回る))。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=21.5 倍に対し、95% の 20.4 倍に置いた(自社成長 5% 台後半と利益率の上昇が続く筋書きなので上限の近く)。時価総額=純利益 23.1 億ドル × 20.4 倍=471 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:規制・水不足・包装のデジタル化が重なりシェアが上がる。上場後の短い実績(自社成長が 2 年で約 2pt 加速)の延長で 1 割弱。
やや楽観 22% やや楽観:消耗品とソフトの比重が上がり、利益率が 26% 台半ば 利益 21 億ドル · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 161.81 ドル405 億ドル
2035 年 12 月期、売上 102.5 億ドル(10 年で年 +6.4%)、営業利益 27.1 億ドル(率 26.5%)、純利益 20.6 億ドル。水質は市場が実質年 2.8%、シェアは年 +0.25%、価格は 1.41 倍。製品識別は市場が年 1.9%、シェアは年 +0.1%、価格は 1.37 倍。水質 65.2 億ドル(率 29.0%)、製品識別 37.3 億ドル(率 28.0%)。VES による費用の削減が年 0.3〜0.4pt の利益率の改善を 10 年続け、営業利益率は 26% 台半ばまで上がる。堀は、ヘックの計器・試薬の据え付けの多さ(交換のたびに同じ試薬が要る)、トロジャンの紫外線の実績、ケムトリートの現場の技術者網で保たれる。長期の g は市場 1.7% + シェア 0.1% + 価格 3.0%=4.8%。期末の純負債は 18.6 億ドル、期間の還元(配当+自社株買いから株式報酬で増えた株の分を引いた正味)は 116.4 億ドル。成立済みの買収の支払い 6.5 億ドルと、伸びに要る投資 35.9 億ドル(増えた利益 ÷ 事業の ROE 30%)を差し引き、自己資本の繰り越しと合わせた。
- 水質(分析計器・消耗品・処理薬剤):数量 791(水質分析・消毒機器・消耗品・産業用水処理薬剤の市場(億ドル、2025 年価格・推定))× 価格 8.2%(ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 65 億ドル・営業利益 19 億ドル。市場 791 億ドル × 価格(シェア 5.85% × 指数 1.410)
- 製品識別(印字・包装ワークフロー・色管理):数量 362(産業用印字・包装ワークフロー・色管理の市場(億ドル、2025 年価格・推定))× 価格 10.3%(ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 37 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 362 億ドル × 価格(シェア 7.52% × 指数 1.370)
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 32.5%(この筋書きの純利益 20.6 ÷ 自己資本 64 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 7.8%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 20.1%(堀は普通:消耗品・据え付け台数・公定の測定法・技術者網は強いが、製品識別は競合が多く価格が物価を下回る)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=市場の実質 1.6% + シェア 0% + 価格 3.0%(水質は物価並み、製品識別は物価を下回る))。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=21.4 倍に対し、92% の 19.6 倍に置いた(自社成長が安定して続く筋書き)。時価総額=純利益 20.6 億ドル × 19.6 倍=405 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:堀と費用削減が効き、緩やかにシェアが上がる。2 割強。
中立 40% 中立:価格は物価並み、シェアは横ばい、利益率が 2pt 余り上がる 利益 18 億ドル · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 136.20 ドル341 億ドル
2035 年 12 月期、売上 94.3 億ドル(10 年で年 +5.5%)、営業利益 24.0 億ドル(率 25.5%)、純利益 18.2 億ドル。水質は市場が実質年 2.4%、シェアは横ばい(買収の 3% を除く)、価格は 10 年で 1.38 倍(年 3.3%。消耗品・薬剤は物価並み、機器は技術で据え置き気味)。製品識別は市場が年 1.6%、シェアは年 −0.1%(アジアの低価格の印字機との競争)、価格は 1.33 倍(年 2.9%)。水質 59.8 億ドル(営業利益率 28.0%)、製品識別 34.4 億ドル(27.0%)。全体の売上は年 5.5% 前後で、営業利益率は 2025 年の 23.2% から 25.5% へ 2pt 余り上がる(過去の年 0.5pt のペースは 10 年は続かず、半分に鈍る)。ザイレム・エンドレスハウザー・エコラボ・ドミノ・マーケム・イマージュと渡り合い、シェアは守るが取り切らない。長期の g は市場 1.6% + シェア 0% + 価格 3.0%=4.6%。期末の純負債は 16.4 億ドル、期間の還元(配当+自社株買いから株式報酬で増えた株の分を引いた正味)は 111.4 億ドル。成立済みの買収の支払い 6.5 億ドルと、伸びに要る投資 28.0 億ドル(増えた利益 ÷ 事業の ROE 30%)を差し引き、自己資本の繰り越しと合わせた。
- 水質(分析計器・消耗品・処理薬剤):数量 761(水質分析・消毒機器・消耗品・産業用水処理薬剤の市場(億ドル、2025 年価格・推定))× 価格 7.9%(ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 60 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場 761 億ドル × 価格(シェア 5.70% × 指数 1.380)
- 製品識別(印字・包装ワークフロー・色管理):数量 352(産業用印字・包装ワークフロー・色管理の市場(億ドル、2025 年価格・推定))× 価格 9.8%(ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 34 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 352 億ドル × 価格(シェア 7.37% × 指数 1.330)
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 31.6%(この筋書きの純利益 18.2 ÷ 自己資本 58 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 7.8%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 19.7%(堀は普通:消耗品・据え付け台数・公定の測定法・技術者網は強いが、製品識別は競合が多く価格が物価を下回る)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=市場の実質 1.6% + シェア 0% + 価格 3.0%(水質は物価並み、製品識別は物価を下回る))。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=21.2 倍に対し、88% の 18.7 倍に置いた(定期収入の厚みは認めるが、上場が浅く深い不況での実績が無いので上限すれすれにはしない)。時価総額=純利益 18.2 億ドル × 18.7 倍=341 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:シェアを守り、価格は物価をわずかに下回る。4 割で最も厚い。
やや悲観 19% やや悲観:アジアの低価格競合でシェアを少しずつ失う 利益 14 億ドル · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 96.20 ドル241 億ドル
2035 年 12 月期、売上 82.8 億ドル(10 年で年 +4.2%)、営業利益 18.7 億ドル(率 22.6%)、純利益 14.1 億ドル。中国・インドの安価な分析計器、センサーの低価格化、エコラボ・ソレニスなどの薬剤の値引き、アジアの印字機の価格攻勢でシェアを少しずつ失う。水質は市場が実質年 1.8%・シェアが年 −0.3%、価格は 10 年で 1.33 倍、製品識別は市場が年 1.0%・シェアが年 −0.5%(包装のデジタル化で色管理の需要が減り、AI の画像検査に置き換わる)、価格 1.28 倍。水質 52.8 億ドル(率 25.5%)、製品識別 30.0 億ドル(率 23.5%)。営業利益率は 22.6% と 2025 年の 23.2% からやや下がる。消耗品の定期収入が壁になり事業は崩れないが、成長は物価をわずかに上回る程度で、長期の g は市場 1.2% + シェア −0.2% + 価格 3.0%=4.0%。期末の純負債は 16.9 億ドル、期間の還元(配当+自社株買いから株式報酬で増えた株の分を引いた正味)は 106.2 億ドル。成立済みの買収の支払い 6.5 億ドルと、伸びに要る投資 14.2 億ドル(増えた利益 ÷ 事業の ROE 30%)を差し引き、自己資本の繰り越しと合わせた。
- 水質(分析計器・消耗品・処理薬剤):数量 717(水質分析・消毒機器・消耗品・産業用水処理薬剤の市場(億ドル、2025 年価格・推定))× 価格 7.4%(ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 53 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場 717 億ドル × 価格(シェア 5.53% × 指数 1.330)
- 製品識別(印字・包装ワークフロー・色管理):数量 331(産業用印字・包装ワークフロー・色管理の市場(億ドル、2025 年価格・推定))× 価格 9.1%(ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 30 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 331 億ドル × 価格(シェア 7.08% × 指数 1.280)
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 32.5%(この筋書きの純利益 14.1 ÷ 自己資本 43 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 7.8%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 20.1%(堀は普通:消耗品・据え付け台数・公定の測定法・技術者網は強いが、製品識別は競合が多く価格が物価を下回る)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=市場の実質 1.6% + シェア 0% + 価格 3.0%(水質は物価並み、製品識別は物価を下回る))。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=21.4 倍に対し、80% の 17.1 倍に置いた(製品識別が AI の画像認識などに置き換えられ、価格実現が弱まる筋書き)。時価総額=純利益 14.1 億ドル × 17.1 倍=241 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:低価格競合と AI による置き換えで少しずつ負ける姿。2 割弱。
悲観 10% 悲観:構造的に負けて優良でなくなる(シェア喪失・価格が追いつかない) 利益 8 億ドル · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 54.29 ドル136 億ドル
2035 年 12 月期、売上 64.4 億ドル(10 年で年 +1.6%)、営業利益 11.3 億ドル(率 17.6%)、純利益 8.4 億ドル。構造的に負ける筋書き。中国・インドの安価な計器とセンサー、薬剤の値引き合戦、水の規制の緩和(PFAS の期限の延期・撤廃)、アジアの印字機・AI による包装検査の置き換えで、シェアを年 −1.2%(水質)・−1.5%(製品識別)失い、価格は 10 年で 1.22 倍・1.15 倍にとどまる(物価に追いつけない)。水質 41.7 億ドル(率 21.0%)、製品識別 22.7 億ドル(率 18.0%)で、営業利益率は 17.6% まで下がり、もう優良ではなくなる。買収の費用に見合う成長が出ず、のれんの減損の恐れも出る。消耗品の比率が高くても、置き換えが起これば定期収入そのものが減る。長期の g は市場 0.5% + シェア −0.5% + 価格 3.0%=3.0%。期末の純負債は 13.4 億ドル、期間の還元(配当+自社株買いから株式報酬で増えた株の分を引いた正味)は 86.9 億ドル。成立済みの買収の支払い 6.5 億ドルと、伸びに要る投資 0.0 億ドル(増えた利益 ÷ 事業の ROE 30%)を差し引き、自己資本の繰り越しと合わせた。
- 水質(分析計器・消耗品・処理薬剤):数量 676(水質分析・消毒機器・消耗品・産業用水処理薬剤の市場(億ドル、2025 年価格・推定))× 価格 6.2%(ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 42 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 676 億ドル × 価格(シェア 5.05% × 指数 1.220)
- 製品識別(印字・包装ワークフロー・色管理):数量 309(産業用印字・包装ワークフロー・色管理の市場(億ドル、2025 年価格・推定))× 価格 7.4%(ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41))→ 売上 23 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 309 億ドル × 価格(シェア 6.40% × 指数 1.150)
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 25.6%(この筋書きの純利益 8.4 ÷ 自己資本 33 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 7.8%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 16.7%(堀は普通:消耗品・据え付け台数・公定の測定法・技術者網は強いが、製品識別は競合が多く価格が物価を下回る)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=市場の実質 1.6% + シェア 0% + 価格 3.0%(水質は物価並み、製品識別は物価を下回る))。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=20.3 倍に対し、80% の 16.2 倍に置いた(シェアを失い価格が物価に届かなくなる構造的な負け)。時価総額=純利益 8.4 億ドル × 16.2 倍=136 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:10 年の構造的な負け(競合・規制の緩和・買収の失敗)。定期収入が 6 割あるぶん深くは置かないが、置き換えが起これば定期収入そのものが減るので 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
水質(分析計器・消耗品・処理薬剤)
水質分析計器と試薬(ヘック)、紫外線殺菌(トロジャン)、産業用の水処理薬剤とサービス(ケムトリート)、流量計・水文観測(マクロメーター・オット・イン・シチュ)。2025 年の売上の約 6 割。
| 数量水質分析・消毒機器・消耗品・産業用水処理薬剤の市場(億ドル、2025 年価格・推定) | 価格ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 5.5% | 33 | 8 |
| 10 年後 中立 | 761 | 7.9% | 60 | 17 |
取り方:2025 年 12 月期の実績(水質の売上 33.21 億ドル、GAAP のセグメント営業利益 8.46 億ドル・率 25.4%)。市場の大きさは推定:水質の分析計器・試薬・紫外線消毒・流量計など約 150 億ドルと、ヴェラルトが戦う産業用の水処理薬剤・サービス(北米・欧州の発電・半導体・食品・化学・データセンターなど)約 450 億ドルを合わせて 600 億ドルと置き、シェアは 33.21÷600=5.5% と逆算した(開示された市場規模ではない)。2025 年の自社成長は 4.7%(価格 2% 前後+数量 3% 弱)、定期収入(試薬・薬剤・サービス・部品)が 6 割台、残りが機器。数量=市場×シェアで置き、価格=シェア×価格指数。2026 年上期は売上 17.82 億ドル(営業利益率 24.6%、コスト最適化の費用と買収の償却で低い)。
製品識別(印字・包装ワークフロー・色管理)
産業用印字と消耗品(ヴィデオジェット・リンクス)、包装の工程管理・検査ソフト(エスコ・グローバルビジョン・トレースゲインズ)、色の測定・色見本(エックスライト・パントン)。2025 年の売上の約 4 割。
| 数量産業用印字・包装ワークフロー・色管理の市場(億ドル、2025 年価格・推定) | 価格ヴェラルトのシェア × 価格指数(2025 年=1。物価並みなら 3 年 1.11・10 年 1.41) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 7.3% | 22 | 6 |
| 10 年後 中立 | 352 | 9.8% | 34 | 9 |
取り方:2025 年 12 月期の実績(製品識別の売上 21.82 億ドル、GAAP のセグメント営業利益 5.50 億ドル・率 25.2%)。市場の大きさは推定:産業用の印字・コーディング装置と消耗品(インク・溶剤)が約 120 億ドル規模、包装のワークフロー・検査ソフトと色管理が約 180 億ドルで、合わせて 300 億ドルと置き、シェアは 21.82÷300=7.3% と逆算した(開示値ではない。印字だけなら市場調査会社の推定でヴィデオジェットとリンクスが 15〜18%)。2025 年の自社成長は 4.8%、2026 年 4〜6 月は 2.0% に鈍った。定期収入(消耗品・ソフト・サービス)は 5 割台と推定。2026 年上期は売上 11.14 億ドル(営業利益率 23.6%)。
リスクと懸念
産業の設備投資の落ち込み(機器の急減)
売上の約 4 割は機器で、産業・自治体の設備投資に連動する。深い不況では水質の機器・紫外線と包装ラインの新設が 15〜20% 落ち、固定費の重さで営業利益率が 3〜5pt 下がる。消耗品は 3% 程度の減少にとどまるが、それは定期収入が約 6 割という推定が合っている前提で、上場後に深い不況を経験していない。
製品識別の成長の鈍り
製品識別の自社成長は 2025 年の 4.8% から 2026 年 4〜6 月は 2.0% に落ちた。包装需要の弱さ、日用品メーカーの設備投資の抑制、ドミノ・マーケム・イマージュ・日立との値引き競争が重なる。AI の画像検査や色管理のデジタル化が既存のエックスライト・パントンの売上を置き換える恐れもある。
中国・インドの低価格競合と水質の縮み
中国の水質は 2026 年も縮んでいる。中国・インドの安価な分析計器とセンサーが高成長市場だけでなく先進国の入札にも入ると、機器の値引きで利益率が下がる。ケムトリートでも、エコラボ・ソレニスなどが薬剤の値引きで取りに来る。
買収の割高さとのれん・償却
クリーンウォーター1(4.65 億ドル、EBITDA の約 17 倍・未成立)、イン・シチュ(売上の約 5 倍)など買収の値段が上がっている。のれん 31.7 億ドルは自己資本とほぼ同額で、成長が思うように出ないと減損が GAAP の利益を押し下げる。この分析は未成立の買収を入れていない。
水の規制の緩和・延期
EPA は PFOA・PFOS の上限 4ppt を維持する一方、遵守期限を最大 2031 年へ延ばす提案を出し、ほかの 4 物質の規制は撤廃を提案している。測定の需要は予定どおり出るが、処理設備の需要が後ろへずれたり、規制がさらに緩んだりすると、水質の成長の一部が遅れる。
原料高・関税と価格の追いつき
ケムトリートの薬剤は原料の価格が荒れやすく、物価 3.5% の世界で転嫁が遅れると利益率が落ちる。関税の払い戻し(IEEPA 関税、2026 年 4〜6 月に約 0.16 億ドル(税引き前))は一度限りで、払い戻しが無くなった後の利益率の維持が試される。価格の実現は過去に年 1〜2.3% で、物価に追いつけない年がある。
上場後の実績の短さ
2023 年 9 月に分離した会社で、深い景気後退・金利上昇の下での経営実績が無い。自社成長が 2 年で約 2pt 加速したという実績も、ダナハー流の改善手法(VES)が効いた初期の効果で、10 年続く保証は無い。台帳の β や谷の倍率も自社の履歴が無いため推定に頼る。
今後の分かれ目
- クリーンウォーター1 の買収が 2026 年内に成立し、水質の売上が約 1.35 億ドル増える
- 水質の売上と償却が増え、のれんがさらに膨らむ。この分析は今の会社だけで書いているので、成立しても上振れ分は反映されていない。割高な買収で成長を買う姿が続くなら、慎重な見方の確率を少し上げる。
- 2026 年下期の自社成長が 5〜6% に届き、製品識別が 3% 台に戻る
- 中立から楽観側へ確率を寄せる根拠になる。製品識別の鈍りが一時的だったことを示し、利益率の改善(年 0.3〜0.5pt)も続く可能性が高まる。
- 産業の設備投資が急減し、機器の受注が 2 四半期続けて前年を 15% 以上下回る
- 悲観・やや悲観の確率を上げる。消耗品の定期収入が 3% 程度の減少にとどまるかどうかが、この会社の質の試金石になる。消耗品の定期収入が 3% 程度の減少にとどまるかどうかが、この会社の質の試金石になる。
- EPA が PFAS の規制をさらに緩め、処理の期限を 2031 年より後ろへ延ばす
- 水質の規制由来の成長が遅れる。水質の市場の伸びを実質 0.5pt 下げ、楽観の確率を下げる。
- データセンターの冷却水・半導体の超純水向けの売上が自社成長に 1pt 以上寄与する
- ケムトリート・ヘックの産業向けが主役になり、水質の市場の伸びを実質年 3% 台へ引き上げる根拠になる(楽観・やや楽観の確率を上げる)。
- 中国・インドの低価格計器が先進国の入札で価格を下げ、ヘックの機器の値引きが広がる
- 機器の価格が物価を大きく下回り、水質の営業利益率の伸びが止まる。やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 水質と製品識別それぞれの自社成長(2026 年下期 5〜6%、製品識別の 3% 台への回復)
- 定期収入の比率(2026 年上期 62%)と機器の受注
- 営業利益率(GAAP)の推移(水質 24.6%・製品識別 23.6% からの回復)
- クリーンウォーター1 の完了とのれん・償却の増加、買収の値段
- EPA の PFAS 規則の最終形(遵守期限 2029 年か 2031 年か)、中国の水質の動き
- 株式報酬を除いた正味の還元と純負債(EBITDA の 1 倍前後を超えないか)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER 26.9 倍に寄せず、資本コスト 7.75%(基本 8.0% + quality −0.25%)、長期の成長 g 4%(市場 1.6% + シェア 0% + 価格 3.0% の合計 4.6% を上限で止めた値)、ROE 31.6%、堀は普通(残る割合 1/2)から利益ベースの正当化 PER(10 年の中立で上限 21.2 倍)を出し、その 8.8 割の 18.7 倍に置いた。定期収入の厚みは認めるが、上場が浅く深い不況での実績が無いので 10 割にはしていない。売上と利益は市場 × シェア × 価格で先に積み、倍率は最後に決めた。悲観側は上限の 8 割に置き、やや悲観の倍率は中立より低く保った。市場の倍率には寄せていない。結果は本質価値が今の時価総額を 1 割弱下回る適正の範囲で、確信度は中程度。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 5% + β 1.00 × 5%。k=基本 8.0% + quality −0.25% = 7.75%。定期収入が厚く景気に強い分だけ少し下げた。上場が浅く深い不況での実績が無い点、製品識別の鈍り、買収の値段などの個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した(前は台帳の規定値 β 1.0 で 8.0%)。純負債は小さく、上乗せは置かない。