結論
ファーガソンは北米の水道管、住宅設備、空調機器を職人や建築会社へ届ける専門商社の最大手である。筆者の結論はやや割高だ。全国の在庫と専門知識は簡単にまねできないが、今の時価総額は向こう10年の成長をすでに相当織り込んでいる。
利益を支えるのは景気に左右されにくい修理と更新で、売上のおよそ3分の2を占める。自治体の老朽水道管更新、商業施設の機械設備、住宅の空調更新に同じ物流網を使える点も強い。FY2025の売上は添付台帳で308億ドル、営業利益27億ドル、純利益19億ドルである。直近の2026年4~6月期は売上が前年同期比4.6%伸び、非住宅の強さが続いた。
2026年8月には産業用バルブのFloWorksを取得した。買収によって顧客の工場やデータセンターに届ける製品は広がり、対象市場の会社推計も3400億ドルから4000億ドルに増えた。ただし、買収で増える売上は株主の利益が同じ割合で増えることを意味しない。のれん、借金、現場の統合費用も考えなければならない。
10年後は水インフラと商業設備が数量を増やし、取引価格が物価にほぼ追いつく中立を中心とする。株主への正味の現金還元を含めても、資本コストに見合う十分な安全域は見いだせない。流通網の価値を認めつつ、景気の悪い時期に営業利益率が大きく落ちる現実を忘れない評価である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10年後も水が流れ、建物が空調を要する限り、この商売の役目は消えにくい。小口で種類の多い部品を各地に蓄え、工事の進行に合わせて届ける仕事は、取引画面が便利になるだけでは代替できない。全国の物流網と現場の専門家を持つ企業には、長い時間をかけて築いた価値がある。
ただし、よい商売にも値段の限界がある。2025年の営業利益率は9%弱で、景気が悪かった2010年には1%程度まで落ちた。2026年の大口工場案件が好調でも、すべての年がその水準になるわけではない。オーナーが受け取れる利益は、純利益から在庫を増やすための資金と支店の更新投資を差し引いた残りである。自社株買いも株式報酬の穴埋めを控除しなければならない。
長期に成長する資金を高い利回りで再投資できるなら、保有し続ける理由はある。水インフラと高機能産業用品への進出はその候補だ。しかし買収にはのれんが付き、経営者の技量に依存する。買収額が大きいほど、見かけの利益成長と株主の実質的な利益成長を分けて見る必要がある。
筆者が重く見るのは競争が激しい住宅や施設用品まで、上下水道と同じ強さで評価しないことだ。十年の中立では利益の増加と正味の還元は期待できるが、不況と流通の価格競争に対する安全域は薄い。事業の寿命には納得する一方、今の持ち分を取得する値段には慎重である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、仕入れた製品を保管し、現場が必要とする順番と納期で届けることだ。配管や空調機を単に右から左へ売るのではない。仕様に合う部材の選定、配管の事前加工、見積もり、工程調整と配送まで束ね、工事が止まる損失を減らすことで粗利を得る。2025年末には約1729の支店、約6200台の車両、約3万7000の仕入れ先を抱え、単独の顧客が売上の1%を超えない。
正式な報告セグメントは米国とカナダの二つである。しかし価値の源を理解するには、米国の八つの顧客群を別々に考えたい。上下水道は自治体とインフラ業者に管材と計量器を届ける。住宅ではファーガソン・ホームが水栓や照明を売り、住宅工事業者向けの配管材は職人が何度も訪れる支店の棚に強みがある。空調は更新用機器や部品を扱う。
非住宅では、商業用機械設備が病院やデータセンターの管材をまとめ、産業流通が高機能バルブを扱う。防火配管は現場での加工工程を減らし、施設保全は完成した建物の修繕需要に応える。カナダではウォルスリーがほぼ同じ仕事を担う。商品の個数や平均単価は会社が開示しないため、顧客群ごとの固定価格の市場規模とシェアを数量の代理として使う。
2025年の公式資料では住宅と非住宅がほぼ半分ずつで、新設より修理・保守・改修の比重が大きい。買収後も自社で設備機器を大量に製造する会社にはならない。専門家の知識と地域の在庫、全国の調達力を組み合わせて施工業者の仕事を速くする会社である。
優良さと弱いところ
堀、つまり競争相手が簡単に崩せない強みは全国の供給網にある。支店は顧客の近くにあり、必要な部材をその日か翌日に揃えられる。工事現場では数十ドルの部品が欠けるだけで大勢が作業を止める。調達と配送の信頼は、単なる最安値以上の意味を持つ。複数の顧客群を同じ現場に提供できるため、仕入れや配車も厚くなる。
もう一つの強みは規模を生かした仕入れと自社ブランドである。2026年の戦略説明では自社ブランドが売上の約1割を占める。2025暦年の粗利益率は31%に達し、前年より改善した。長年の資本効率も高いが、それは仕入れ・在庫・買掛金をうまく回し、還元で自己資本を増やし過ぎていない結果でもある。利益率が改善した事実だけで将来の価格支配力を決めつけない。
弱点は流通の多くが競争入札で、顧客が他社へ注文を分けられることだ。上下水道ではコア・アンド・メイン、空調ではワツコ、住宅ではホーム・デポやウィンサプライが強い。地域によっては地場卸の方が近く、仕入れ先が直販を増やせば利益の取り分も減る。したがって全社の堀は強固な独占ではなく、長持ちするが補修を要する規模の優位と判断する。
物流システムや顧客との取引履歴は切り替えの手間を高めるが、解約不能の契約ではない。AIによる設計支援や発注の自動化は、同社の作業効率を上げる半面、デジタル調達を得意とする競合にも同じ武器を与える。現物の配送そのものがAIエージェントに置き換わる事業ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
北米の専門流通市場は大きいが、勝者が独占した市場ではない。会社が2026年2月に示した八つの対象市場の合計は約3400億ドルで、上下水道350億ドル、空調800億ドル、住宅仕上げ材600億ドルなどに分かれる。8月に成立したFloWorks買収で、会社が掲げる対応可能な市場は4000億ドルへ拡張した。これは実際の受注が600億ドル増えた数字ではなく、扱える産業用品の範囲が広がった意味である。
上下水道には長い更新の波がある。米国の飲料水と下水・雨水の設備更新には、政府機関の推計で今後20年間に巨額の資金が要る。老朽管の交換は景気後退でも消えないが、自治体の予算編成と補助金によって工事着手は遅れる。非住宅ではデータセンターや半導体工場が配管・バルブの需要を広げる一方、巨大案件の投資が一巡すれば注文も急に細る。
住宅は別の循環にある。住宅ローン金利が高く、新築と小規模改修は鈍い。住宅の不足と老朽化は中長期の需要を支えるが、人口や移民の動き次第で着工戸数は伸び悩む。空調も省エネ規制や暑熱で更新が進むが、卸の取り分はワツコや新規参入のホーム・デポ系との競争で決まる。
地域別に競合を見れば、コア・アンド・メインは水インフラ売上で約76億ドルを持ち、ワツコは空調関連で約72億ドルを売る。両社の開示市場はファーガソンの定義と完全には同じでないため、単純なシェア合算は避ける。10年の数量成長は水インフラと商業設備に厚く、住宅・施設用品はより慎重に見る。
資本政策と M&A
資本配分の腕は概して堅実だが、買収価格の検証は欠かせない。2025暦年には小型買収8件に約2.8億ドルを投じ、配当と自社株買いの合計で約16億ドルを株主へ渡した。2026年5月には最大20億ドルの新たな自社株買い枠を設定した。額は承認の上限であり、実際に買い切る約束ではない。株式報酬による持ち分の増加は、還元額から控除して考える。
最大の変化は2026年8月末に現金で取得したFloWorksである。企業価値約16億ドル、2025年売上約10億ドルの事業を取り込み、産業用バルブと流体制御に広げた。公表された買収倍率は期待する相乗効果を含む調整後EBITDAの約10倍で、実現しなければ割高な買い物になる。財務方針は純負債を調整後EBITDAの1~2倍に抑えることだ。
2026年4~6月期の会社見通しは通年売上の1桁台半ばの伸び、調整後営業利益率9.5~9.8%、設備投資3.75~4.25億ドルである。中期的には売上400億ドル超、調整後営業利益40億ドル超を掲げるが、GAAP純利益を同じ比率で伸ばす約束ではない。2026年7月の上場廃止はロンドンの第二上場だけで、NYSEは維持し、8月にS&P500へ採用された。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
水インフラの需要は短期の住宅着工とは異なる。自治体は老朽管の取り替えを先送りし続けられず、ファーガソンは管材だけでなく計量、雨水対策、処理設備まで束ねられる。地域の支店網と技術者の蓄積があるので、単独の値引き業者に大口案件を奪われにくい。コア・アンド・メインと競いながらも、両社が分散した地場業者からシェアを取る余地は大きい。
商業・機械設備の品揃えは、データセンターと先端工場の工事現場で威力を発揮する。複数の顧客群をまたいで発注でき、配管の事前加工や現場配送まで任せられるなら、施工会社は完成までの時間を短くできる。2026年の非住宅売上は四半期で8%伸びており、もともとの顧客関係が市場シェア拡大に結び付いている。
FloWorksの技術的な弁と流体制御は、建設後も交換や補修が必要だ。買収した専門知識と全国の拠点をつなげれば、これまで接点の少なかった製薬、半導体、発電所で追加の取引が生まれる。中期売上400億ドル超は通過点になり、会社が説明する年6~11%の成長にも理由がある。
自社ブランドは仕入れ利益の一部を社内に残し、配車と在庫の自動化は資本の回転を速める。新築が弱い間も修理・更新が売上の約3分の2を支える。事業の伸びが安定すれば、営業利益率と配当原資はさらに増えるという見方には十分な根拠がある。
慎重な見方
配管材の専門卸は消費者向けブランドほど価格を決められない。職人は在庫がある店で買い、設備業者は大口の見積もりを競わせる。ホーム・デポはSRSとGMSに続き空調卸も取り込み、建築業者の購買をまとめに来ている。既存の地域卸が強い都市では、全国網は自動的に高い利益率を生まない。
住宅の不足が続いても、住宅購入者の所得が追いつかなければ着工も改修も伸びない。売上の約半分が住宅に関係し、新築の比率は約3分の1だ。値上げで名目売上が増えても、人件費と配送費が同じように上がる。2010年には営業利益率が1%程度まで下がった事実を、今の株主は忘れてはならない。
大型案件も一方向に増えるわけではない。データセンター建設が先行し、設備の増設が止まれば配管材や産業用品の新規注文は同時に失速する。FloWorksを取得したことで取引先の幅は広がったが、現金16億ドルの買収代金を取り戻すには高い利益率と相乗効果が必要だ。思惑が外れた場合、のれんの減損と借り換え費用が株主の利益を削る。
さらに顧客の自動発注とメーカー直販が進めば、卸売の手数料部分は透明になる。現場配送の仕事自体は残っても、デジタル経由の注文を低い粗利で取り合うことになる。成長の鈍化と利益率の低下が同時に起こると、たとえ会社が存続しても現在の株主の取り分は大きく減る。
どちらに重みを置いたか
継続的な更新需要と全国の物流網は、極端な悲観を中心に置かない理由になる。一方、住宅と大規模工事の二重の循環、そして2026年に拡大した買収負担を考えると、強気側へ大きく確率を寄せることもできない。中立を35%、上側を30%、下側を35%とし、下振れの幅を大きめにした。
利益と事業を一つずつ積み上げた結果、確率加重の現在価値は台帳の時価総額を約1割下回った。従って結論はやや割高である。景気回復を待つだけではなく、買収に使った資本がどれだけ株主利益を生むかを追い続けたい。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 309.10 ドル616 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 88.23 ドル176 億ドル)。 今の値に割り戻すと 203.22 ドル405 億ドル、今との差 −14.9%、 期待の年率 +6.0%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 667.12 ドル1,329 億ドル | 143.07 ドル285 億ドル | +239.4% | +14.8% | 64.82 ドル129 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 507.08 ドル1,010 億ドル | 122.99 ドル245 億ドル | +164.0% | +11.7% | 138.62 ドル276 億ドル |
| 中立 | 35% | 342.50 ドル682 億ドル | 95.38 ドル190 億ドル | +83.5% | +7.2% | 153.26 ドル305 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 94.72 ドル189 億ドル | 57.73 ドル115 億ドル | −36.1% | −5.3% | 36.59 ドル73 億ドル |
| 悲観 | 11% | 14.25 ドル28 億ドル | 22.59 ドル45 億ドル | −84.6% | −21.6% | 4.05 ドル8 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 309.10 ドル616 億ドル | 88.23 ドル176 億ドル | +66.5% | +6.0% | 397.33 ドル791 億ドル |
今の株価時価総額 238.68 ドル475 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 楽観:水インフラと高度な工場設備のシェアを拡大 利益 69 億ドル · PER 19.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 667.12 ドル1,329 億ドル
米国の上下水道更新は自治体の工事を超えて計量・処理設備へ広がり、上下水道関連の実質市場は2025年の1.6倍強となる。ファーガソンは仕様の提案と全国の配送網で市場シェアを24%近くまで高める。商業設備は先端工場とデータセンターで伸び、複数顧客群を同じ工事に納める力が生きる。
2026年に取得したFloWorksは技術者と特注弁の事業を失わず、既存支店への製品横展開で産業流通の取り分を大きくする。住宅の改修と空調更新も市場を上回り、自社ブランドと事前加工が粗利を押し上げる。ホーム・デポ系SRSやコア・アンド・メインの追撃を受けても、重要部材の納期で選ばれる。
営業利益率は11%台に上がり、利益の現金化を保ったまま再投資と配当・自社株買いを両立する。2035年末には急成長が平準化し、次の10年は物価と緩やかな実質拡大の速度に落ち着く。高度な案件の受注が多いぶん、不況期の投資延期にはなお注意が要る。
- 上下水道・雨水管理:数量 567(米国の上下水道・雨水管理関連市場(億ドル、2025年価格))× 価格 34.9%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 198 億ドル・営業利益 24 億ドル。水道更新市場1.62倍、シェア23.6%、価格1.48倍
- ファーガソン・ホーム:数量 762(米国住宅設備・改装用仕上げ材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 16.8%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 128 億ドル・営業利益 11 億ドル。住宅改修市場1.27倍、シェア11.3%、価格1.49倍
- 商業用機械設備:数量 549(米国商業用機械設備流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 24.9%(同社獲得シェア×機器・工事材料の単価指数(2025年=1))→ 売上 137 億ドル・営業利益 17 億ドル。商業設備市場1.83倍、シェア16.6%、価格1.50倍
- 住宅工事業者向け配管材:数量 405(米国住宅工事業者向け配管材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 24.6%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 100 億ドル・営業利益 10 億ドル。住宅配管市場1.35倍、シェア16.6%、価格1.48倍
- 空調機器・交換部品の卸:数量 1,240(米国空調・冷凍機器の流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 9.0%(同社獲得シェア×空調設備の単価指数(2025年=1))→ 売上 112 億ドル・営業利益 12 億ドル。空調市場1.55倍、シェア6.1%、価格1.48倍
- 産業用配管・流体制御:数量 1,570(産業流通400億ドル+FloWorksで開拓する追加600億ドルの市場(億ドル、2025年価格))× 価格 6.2%(拡大後の市場への獲得シェア×機器単価指数(2025年=1))→ 売上 97 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場1.57倍、FloWorks取得後のシェア4.1%、価格1.51倍
- 施設保全用品:数量 858(米国施設維持管理用資材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 4.4%(同社獲得シェア×補修材単価指数(2025年=1))→ 売上 38 億ドル・営業利益 4 億ドル。施設用品市場1.43倍、シェア3.0%、価格1.47倍
- 防火配管・事前加工:数量 59.2(米国防火設備向け流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 39.0%(同社獲得シェア×防火材・加工品の単価指数(2025年=1))→ 売上 23 億ドル・営業利益 3 億ドル。防火設備市場1.48倍、シェア26.0%、価格1.50倍
- カナダ・ウォルスリー:数量 476(カナダの対象専門流通市場(億ドル、2025年価格、当方推定))× 価格 7.6%(同社獲得シェア×カナダの取引単価指数(2025年=1))→ 売上 36 億ドル・営業利益 3 億ドル。カナダ市場1.36倍、シェア5.2%、価格1.46倍
倍率:GAAP純利益を使用し、調整後利益や買収償却の足し戻しはしない。資本コストk=8.0%、2035年の純利益68.5億ドル÷自己資本198.3億ドルでROE=34.5%。堀は普通(残る割合1/2)なので、RONIC=k+1/2×(ROE−k)=21.3%。長期g=4.0%は物価3.5%に、成長する市場の実質数量と緩やかなシェア増を合わせた持続成長の上限4.0%を適用した。正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=21.1倍。業界の循環と価格競争のため上限の92%で19.4倍とした。
確率:水道管更新と先端工場の大型案件が持続する上、FloWorksとの製品横展開にも成功する必要がある。会社の掲げる売上成長上限に近い状況が10年続くため8%に限る。
やや楽観 22% やや楽観:更新需要と買収の相乗効果が順調 利益 56 億ドル · PER 18.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 507.08 ドル1,010 億ドル
水インフラと商業用機械設備は実質市場の伸びが続き、2025年より大きな取り分を確保する。住宅は新築の高成長には戻らないが、古い配管と空調機の更新が堅調になる。現場の必要部品を一括で届ける物流網の利点は残り、値上げは物価にほぼ沿って通る。
FloWorksの統合は計画どおり進み、特殊バルブの販路が全国へ広がる。買収した専門人材が定着し、工場の保守・修繕にも継続的な注文が入る。コア・アンド・メインやワツコとの競争で価格の一方的な引き上げはできないが、品揃えと在庫の厚さで大きな値崩れを防ぐ。
物流の自動化と自社ブランドの拡大が固定費を薄め、会社全体の営業利益率は10%を超える。10年間の利益を積み重ねた後も、余剰資金を正味で約245億ドル返す。成熟後は成長率が落ち着くため、強い会社だからといって利益に無制限の価値を与える展開ではない。
- 上下水道・雨水管理:数量 525(米国の上下水道・雨水管理関連市場(億ドル、2025年価格))× 価格 32.6%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 171 億ドル・営業利益 19 億ドル。水道市場1.50倍、シェア22.5%、価格1.45倍
- ファーガソン・ホーム:数量 720(米国住宅設備・改装用仕上げ材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 15.8%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 114 億ドル・営業利益 9 億ドル。住宅改修市場1.20倍、シェア10.9%、価格1.45倍
- 商業用機械設備:数量 507(米国商業用機械設備流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 23.7%(同社獲得シェア×機器・工事材料の単価指数(2025年=1))→ 売上 120 億ドル・営業利益 14 億ドル。商業市場1.69倍、シェア16.2%、価格1.46倍
- 住宅工事業者向け配管材:数量 384(米国住宅工事業者向け配管材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 22.6%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 87 億ドル・営業利益 8 億ドル。住宅配管市場1.28倍、シェア15.7%、価格1.44倍
- 空調機器・交換部品の卸:数量 1,144(米国空調・冷凍機器の流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 8.4%(同社獲得シェア×空調設備の単価指数(2025年=1))→ 売上 96 億ドル・営業利益 10 億ドル。空調市場1.43倍、シェア5.8%、価格1.45倍
- 産業用配管・流体制御:数量 1,500(産業流通400億ドル+FloWorksで開拓する追加600億ドルの市場(億ドル、2025年価格))× 価格 5.9%(拡大後の市場への獲得シェア×機器単価指数(2025年=1))→ 売上 88 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場1.50倍、買収後シェア4.0%、価格1.47倍
- 施設保全用品:数量 810(米国施設維持管理用資材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 4.0%(同社獲得シェア×補修材単価指数(2025年=1))→ 売上 33 億ドル・営業利益 3 億ドル。施設市場1.35倍、シェア2.8%、価格1.44倍
- 防火配管・事前加工:数量 56.0(米国防火設備向け流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 36.0%(同社獲得シェア×防火材・加工品の単価指数(2025年=1))→ 売上 20 億ドル・営業利益 2 億ドル。防火市場1.40倍、シェア24.5%、価格1.47倍
- カナダ・ウォルスリー:数量 448(カナダの対象専門流通市場(億ドル、2025年価格、当方推定))× 価格 7.2%(同社獲得シェア×カナダの取引単価指数(2025年=1))→ 売上 32 億ドル・営業利益 2 億ドル。カナダ市場1.28倍、シェア5.0%、価格1.44倍
倍率:GAAP純利益を使用し、調整後利益や買収償却の足し戻しはしない。資本コストk=8.0%、2035年の純利益55.5億ドル÷自己資本178.3億ドルでROE=31.1%。堀は普通(残る割合1/2)なので、RONIC=k+1/2×(ROE−k)=19.6%。長期g=4.0%は物価3.5%に、成長する市場の実質数量と緩やかなシェア増を合わせた持続成長の上限4.0%を適用した。正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=20.7倍。業界の循環と価格競争のため上限の88%で18.2倍とした。
確率:水インフラと商業設備が強く、住宅更新もほどほどに回復する。足元で市場を上回る実績があり、買収成功の条件も過度ではないため22%。
中立 35% 中立:実質市場成長と穏やかなシェア上昇 利益 41 億ドル · PER 16.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 342.50 ドル682 億ドル
上下水道の実質市場は10年で約4割、商業用機械設備は約5割広がる。公共管路の更新と先端工場の新設が市場の数量を増やし、ファーガソンも地場卸から少しずつ取引を奪う。一方、住宅の新築は金利と所得の制約が残るため、仕上げ材・配管の数量は年率1%程度の伸びにとどまる。全顧客群の価格は平均して物価に沿って上がる。
FloWorksは2026年以降の売上に加わり、産業流通の市場を広げる。ただし買収先の利益率が会社全体を急変させるとは見ない。コア・アンド・メインの上下水道、ワツコの空調、ホーム・デポ系SRSの専門流通に対し、地理的な近さと現場サービスでシェアを維持・微増する。
2025年の営業利益率8%台後半から、2035年は9%台前半へ穏やかに改善する。借金は10年で順次借り換えられるため、新しい金利水準の負担を純利益に含めた。純利益は40億ドル余となり、その間の利益累計から正味還元を差し引いて自己資本も積み上がる。成長はROEから逆算せず、各市場の数量と価格から生まれる。
- 上下水道・雨水管理:数量 483(米国の上下水道・雨水管理関連市場(億ドル、2025年価格))× 価格 29.6%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 143 億ドル・営業利益 15 億ドル。水道市場1.38倍、シェア21.0%、価格1.41倍
- ファーガソン・ホーム:数量 672(米国住宅設備・改装用仕上げ材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 14.9%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 100 億ドル・営業利益 7 億ドル。住宅改修市場1.12倍、シェア10.6%、価格1.41倍
- 商業用機械設備:数量 450(米国商業用機械設備流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 21.2%(同社獲得シェア×機器・工事材料の単価指数(2025年=1))→ 売上 95 億ドル・営業利益 10 億ドル。商業市場1.50倍、シェア15.0%、価格1.41倍
- 住宅工事業者向け配管材:数量 348(米国住宅工事業者向け配管材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 21.3%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 74 億ドル・営業利益 6 億ドル。住宅配管市場1.16倍、シェア15.1%、価格1.41倍
- 空調機器・交換部品の卸:数量 1,072(米国空調・冷凍機器の流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 7.0%(同社獲得シェア×空調設備の単価指数(2025年=1))→ 売上 76 億ドル・営業利益 7 億ドル。空調市場1.34倍、シェア5.0%、価格1.41倍
- 産業用配管・流体制御:数量 1,380(産業流通400億ドル+FloWorksで開拓する追加600億ドルの市場(億ドル、2025年価格))× 価格 4.7%(拡大後の市場への獲得シェア×機器単価指数(2025年=1))→ 売上 64 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場1.38倍、FloWorks後シェア3.3%、価格1.41倍
- 施設保全用品:数量 720(米国施設維持管理用資材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 3.5%(同社獲得シェア×補修材単価指数(2025年=1))→ 売上 25 億ドル・営業利益 2 億ドル。施設市場1.20倍、シェア2.5%、価格1.41倍
- 防火配管・事前加工:数量 52.0(米国防火設備向け流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 32.4%(同社獲得シェア×防火材・加工品の単価指数(2025年=1))→ 売上 17 億ドル・営業利益 2 億ドル。防火市場1.30倍、シェア23.0%、価格1.41倍
- カナダ・ウォルスリー:数量 406(カナダの対象専門流通市場(億ドル、2025年価格、当方推定))× 価格 6.3%(同社獲得シェア×カナダの取引単価指数(2025年=1))→ 売上 26 億ドル・営業利益 1 億ドル。カナダ市場1.16倍、シェア4.5%、価格1.41倍
倍率:GAAP純利益を使用し、調整後利益や買収償却の足し戻しはしない。資本コストk=8.0%、2035年の純利益40.8億ドル÷自己資本165.3億ドルでROE=24.7%。堀は普通(残る割合1/2)なので、RONIC=k+1/2×(ROE−k)=16.3%。長期g=4.0%は物価3.5%に、成長する市場の実質数量と緩やかなシェア増を合わせた持続成長の上限4.0%を適用した。正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=19.6倍。業界の循環と価格競争のため上限の84%で16.5倍とした。
確率:水インフラと商業設備に重点を置く一方、住宅と空調の競争を打ち消し切れない。業界共通の実質成長と名目価格上昇に最も近い展開なので35%。
やや悲観 24% やや悲観:住宅低迷と専門卸の価格競争 利益 16 億ドル · PER 10.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 94.72 ドル189 億ドル
米国住宅の新築が長く鈍り、改修用の配管材とファーガソン・ホームは実質数量を減らす。上下水道工事は残るが、補助金の遅れとコア・アンド・メインの攻勢で市場シェアが落ちる。商業設備はデータセンターの建設計画が一巡し、地場卸も入札を取り返す。値段は一部の商品で物価に追いつかない。
FloWorksは買収後の顧客維持には成功するものの、期待した販路の横展開は進まない。ホーム・デポ系SRSは空調と建材卸の連携を進め、ファーガソンの小口客を奪う。固定の倉庫賃料と配達網を十分に薄められず、営業利益率は6%台半ばへ低下する。利益の縮小に合わせて自社株買いも抑える。
純利益は約16億ドルまで減り、成長向け資金を置いて残る正味還元は約115億ドルとなる。10年間の純利益累計は約170億ドルで、自己資本は約113億ドルへ増えるが、その利益率は資本コストを大きく上回らない。経営破綻ではなく、優位が少しずつ侵食される筋書きである。
- 上下水道・雨水管理:数量 392(米国の上下水道・雨水管理関連市場(億ドル、2025年価格))× 価格 24.3%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 95 億ドル・営業利益 8 億ドル。水道市場1.12倍だがシェア18.3%、価格1.33倍
- ファーガソン・ホーム:数量 564(米国住宅設備・改装用仕上げ材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 11.7%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 66 億ドル・営業利益 4 億ドル。住宅市場0.94倍、シェア9.0%、価格1.30倍
- 商業用機械設備:数量 336(米国商業用機械設備流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 16.5%(同社獲得シェア×機器・工事材料の単価指数(2025年=1))→ 売上 55 億ドル・営業利益 4 億ドル。商業市場1.12倍、シェア12.4%、価格1.33倍
- 住宅工事業者向け配管材:数量 282(米国住宅工事業者向け配管材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 16.4%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 46 億ドル・営業利益 3 億ドル。住宅配管市場0.94倍、シェア12.6%、価格1.30倍
- 空調機器・交換部品の卸:数量 856(米国空調・冷凍機器の流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 5.0%(同社獲得シェア×空調設備の単価指数(2025年=1))→ 売上 43 億ドル・営業利益 3 億ドル。空調市場1.07倍、シェア3.9%、価格1.29倍
- 産業用配管・流体制御:数量 1,100(産業流通400億ドル+FloWorksで開拓する追加600億ドルの市場(億ドル、2025年価格))× 価格 3.3%(拡大後の市場への獲得シェア×機器単価指数(2025年=1))→ 売上 36 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場1.10倍、買収後シェア2.5%、価格1.30倍
- 施設保全用品:数量 618(米国施設維持管理用資材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 2.8%(同社獲得シェア×補修材単価指数(2025年=1))→ 売上 18 億ドル・営業利益 1 億ドル。施設市場1.03倍、シェア2.2%、価格1.29倍
- 防火配管・事前加工:数量 43.2(米国防火設備向け流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 26.2%(同社獲得シェア×防火材・加工品の単価指数(2025年=1))→ 売上 11 億ドル・営業利益 1 億ドル。防火市場1.08倍、シェア20.5%、価格1.28倍
- カナダ・ウォルスリー:数量 361(カナダの対象専門流通市場(億ドル、2025年価格、当方推定))× 価格 5.4%(同社獲得シェア×カナダの取引単価指数(2025年=1))→ 売上 20 億ドル・営業利益 0 億ドル。カナダ市場1.03倍、シェア4.1%、価格1.32倍
倍率:GAAP純利益を基準とする。ROE=14.1%、k=8.0%、堀は普通でRONIC=11.1%。長期g=2.5%は、物価上昇は残るが市場の実質伸びとシェアが弱くなることを反映。式に(1+g)を掛けた正当化PER上限は14.4倍だが、構造的な値引きと買収効果の不足で10.6倍とした。稼ぐ力の上限は純利益16.0/k=200.0億ドルであり、時価総額169.6億ドルは超えない。
確率:住宅の長期低迷、SRS拡大、FloWorksの相乗効果不足のうち複数が同時に起こる。流通業は顧客の購買先変更が比較的容易なので24%。
悲観 11% 悲観:流通の取り分が構造的に減少 利益 3 億ドル · PER 8.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 14.25 ドル28 億ドル
流通の構造そのものが変わる。ホーム・デポ系SRSと大手設備メーカーの直販が増え、発注のデジタル化で値引きが常態化する。住宅の修繕工事は消えないが、専門卸を通す比率が下がる。自治体の上下水道工事も続くものの、コア・アンド・メインと地場卸に重要案件を奪われる。実質の対象市場と同社シェアが同時に縮む。
データセンター建設の投資一巡と景気後退が重なり、商業設備と産業流通の注文が減る。FloWorksの買収時に期待した相乗効果は実現せず、期間の中ほどでのれん減損や事業整理が起こる。2027~2030年にはまだ利益を稼ぐが、その後の注文減と評価損で10年のGAAP純利益累計は約90億ドルにとどまる。
倉庫賃料と配送費は簡単に減らせないため、2035年の営業利益率は3%弱になる。純利益は約3億ドルまで低下するが、倒産はせず小規模な専門卸として存続する。株主還元は約45億ドルに削られ、事業の収益力だけでは高い企業価値を支えられない。売れる資産も、のれんと在庫の値引き、借金を差し引くと厚い床にはならない。
- 上下水道・雨水管理:数量 333(米国の上下水道・雨水管理関連市場(億ドル、2025年価格))× 価格 17.8%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 59 億ドル・営業利益 2 億ドル。水道市場0.95倍、シェア14.2%、価格1.25倍
- ファーガソン・ホーム:数量 468(米国住宅設備・改装用仕上げ材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 8.9%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 42 億ドル・営業利益 1 億ドル。住宅市場0.78倍、シェア7.3%、価格1.22倍
- 商業用機械設備:数量 270(米国商業用機械設備流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 13.0%(同社獲得シェア×機器・工事材料の単価指数(2025年=1))→ 売上 35 億ドル・営業利益 2 億ドル。商業市場0.90倍、シェア10.5%、価格1.24倍
- 住宅工事業者向け配管材:数量 225(米国住宅工事業者向け配管材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 14.0%(同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1))→ 売上 32 億ドル・営業利益 1 億ドル。住宅配管市場0.75倍、シェア11.5%、価格1.22倍
- 空調機器・交換部品の卸:数量 720(米国空調・冷凍機器の流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 3.6%(同社獲得シェア×空調設備の単価指数(2025年=1))→ 売上 26 億ドル・営業利益 1 億ドル。空調市場0.90倍、シェア3.0%、価格1.20倍
- 産業用配管・流体制御:数量 900(産業流通400億ドル+FloWorksで開拓する追加600億ドルの市場(億ドル、2025年価格))× 価格 2.6%(拡大後の市場への獲得シェア×機器単価指数(2025年=1))→ 売上 24 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場0.90倍、買収後シェア2.2%、価格1.20倍
- 施設保全用品:数量 540(米国施設維持管理用資材市場(億ドル、2025年価格))× 価格 2.1%(同社獲得シェア×補修材単価指数(2025年=1))→ 売上 11 億ドル・営業利益 0 億ドル。施設市場0.90倍、シェア1.7%、価格1.22倍
- 防火配管・事前加工:数量 36.0(米国防火設備向け流通市場(億ドル、2025年価格))× 価格 21.3%(同社獲得シェア×防火材・加工品の単価指数(2025年=1))→ 売上 8 億ドル・営業利益 0 億ドル。防火市場0.90倍、シェア17.5%、価格1.22倍
- カナダ・ウォルスリー:数量 315(カナダの対象専門流通市場(億ドル、2025年価格、当方推定))× 価格 4.6%(同社獲得シェア×カナダの取引単価指数(2025年=1))→ 売上 14 億ドル・営業利益 0 億ドル。カナダ市場0.90倍、シェア3.7%、価格1.23倍
倍率:GAAP純利益を用いる。ROE=3.2%は資本コスト8.0%を下回るため、利益が伸びても高い再投資価値を認めず、PERの上限は1/k=12.5倍。長期gは市場の横ばいとシェア低下、物価の一部転嫁を合わせて1%に抑え、事業悪化の不確実性から8.6倍とした。株価の過去の谷やPBRは使わない。純利益/kは41.2億ドルである。
確率:全国の物流網が残ってもメーカー直販とデジタル購買で粗利が削られ、のれんの評価損まで重なる。事業の寿命は長いため破綻ではないが、極端な負け筋に11%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
上下水道・雨水管理
水道管、弁、消火水、雨水排水、計量器。自治体、工事業者、上下水道設備の更新と新設に供給する。
| 数量米国の上下水道・雨水管理関連市場(億ドル、2025年価格) | 価格同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 350 | 19.2% | 67 | 6 |
| 10 年後 中立 | 483 | 29.6% | 143 | 15 |
取り方:会社2026年戦略説明資料は対象市場350億ドル・自社年商約75億ドルを開示する。当分析の基準年は別の2025年7月期なので、基準の米国売上292.22億ドルに公式顧客群比率23%を掛け67.21億ドルを得た。市場350億ドル×シェア19.20%×価格指数1。コア・アンド・メインは2025年度売上約76億ドル、対象市場440億ドルと開示し、異なる市場定義で約17%に相当する。実際の管本数・工事件数は非開示であり、市場金額を固定価格の実質数量の代用とした。
ファーガソン・ホーム
住宅の浴室・台所の水栓、衛生陶器、照明、家電。ショールームと電子商取引で建築会社や改修業者に販売する。
| 数量米国住宅設備・改装用仕上げ材市場(億ドル、2025年価格) | 価格同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 10.2% | 61 | 4 |
| 10 年後 中立 | 672 | 14.9% | 100 | 7 |
取り方:会社2026年資料は住宅仕上げ材の市場600億ドルと年商約60億ドルを開示する。2025年7月期の米国売上に公式構成比21%を掛け61.37億ドル、当該市場への浸透率10.23%を基準とした。ショールーム、旧Build.com由来の通販を含む。ホーム・デポ、ロウズ、専門ショールームが競争相手だが、各社のこの細目での売上は非開示なので競合シェアは断定しない。水栓の個数や客単価も開示されず、固定価格市場×シェア×単価指数で代用する。
商業用機械設備
病院、工場、データセンター、商業ビル向けの配管、バルブ、機械設備と現場での事前加工。
| 数量米国商業用機械設備流通市場(億ドル、2025年価格) | 価格同社獲得シェア×機器・工事材料の単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 13.6% | 41 | 4 |
| 10 年後 中立 | 450 | 21.2% | 95 | 10 |
取り方:会社2026年資料の市場300億ドル・年商約50億ドル(丸め値)を使用。基準2025年7月期は米国売上の14%=40.91億ドルで、対象市場シェア13.64%。暦年2025の構成比15%とは対象期間が違う。ファーガソンは現場加工・工程管理も行うが、顧客に請求する主対象は設備・管材であり、人月売上とは区別した。ウィンサプライ、地域設備卸、メーカー直販が競合し、後二者のシェアは非開示。
住宅工事業者向け配管材
住宅の新築・改修に使う給排水管、継手、給湯器と工具。職人への迅速な現場配送が主な役目である。
| 数量米国住宅工事業者向け配管材市場(億ドル、2025年価格) | 価格同社獲得シェア×商品単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 14.6% | 44 | 4 |
| 10 年後 中立 | 348 | 21.3% | 74 | 6 |
取り方:会社2026年資料の市場300億ドル、年商約50億ドルを参照。基準2025年7月期米国売上の15%=43.83億ドル、市場シェア14.61%。リースUSA、ウィンサプライ、ハジョカと地域の配管卸が競争相手。リースUSAの公開売上約51億ドルは他分野も含むため、そのまま配管市場シェアにはしない。件数と平均伝票単価は公表されず、市場金額を2025年固定価格の数量とした。
空調機器・交換部品の卸
住宅・商業施設向け空調機、ヒートポンプ、冷媒関連の交換部品。施工業者と複数のメーカーをつなぐ。
| 数量米国空調・冷凍機器の流通市場(億ドル、2025年価格) | 価格同社獲得シェア×空調設備の単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 800 | 4.4% | 35 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,072 | 7.0% | 76 | 7 |
取り方:会社2026年資料の市場800億ドル・自社売上約40億ドルを基礎とする。2025年7月期の公式構成比12%を米国売上に掛け35.07億ドル、シェア4.38%とした。競合ワツコは2025年全社売上約72億ドルで、この市場を粗い分母にすれば約9%だが地域・品目が異なる。ホーム・デポ傘下SRSも2026年に空調卸を買収した。出荷台数の自社開示がないので実質の市場金額を数量代理とする。
産業用配管・流体制御
石油化学、半導体、発電、製薬工場向けの弁、配管、ポンプと流体制御。2026年に取得したFloWorksの専門流通を含める。
| 数量産業流通400億ドル+FloWorksで開拓する追加600億ドルの市場(億ドル、2025年価格) | 価格拡大後の市場への獲得シェア×機器単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,000 | 2.0% | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,380 | 4.7% | 64 | 7 |
取り方:基準2025年7月期の米国売上の7%=20.46億ドルが既存産業流通の売上である。2026年説明資料の既存対象市場400億ドルに、8月31日買収成立のFloWorksで拡大した600億ドルの対象市場を足して1000億ドルを固定価格の基準市場とする。したがって買収前の浸透率2.05%は既存市場だけの競争シェア5.11%とは異なる。FloWorksの2025年約10億ドルは基準期に足さず、将来のシェア上昇で初めて織り込む。エムエスシー・インダストリアルやアプライド・インダストリアル、各種バルブ専門卸と競う。
施設保全用品
ビルや集合住宅の管理会社・産業施設に、配管部品、消耗品、補修材料を供給する。
| 数量米国施設維持管理用資材市場(億ドル、2025年価格) | 価格同社獲得シェア×補修材単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 2.4% | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 720 | 3.5% | 25 | 2 |
取り方:会社資料の市場600億ドル・年商約10億ドルは丸め値。基準2025年7月期では米国売上の5%=14.61億ドルで、市場シェア2.44%と計算した。工場・施設の補修部品は多品種小口のため販売数量が公表されず、需要金額を固定価格の数量とする。グレインジャー、ファスナル、MSC、アマゾンビジネスが競合し、対象範囲が異なるため正確な各社の市場シェアは得られない。
防火配管・事前加工
スプリンクラー、防火用管材、継手と現場向けの切断・溶接済み配管を専門業者に納める。
| 数量米国防火設備向け流通市場(億ドル、2025年価格) | 価格同社獲得シェア×防火材・加工品の単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 40.0 | 21.9% | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 52.0 | 32.4% | 17 | 2 |
取り方:会社2026年資料は対象市場40億ドル、売上約10億ドルと開示する。基準2025年7月期の米国売上3%=8.77億ドルで、シェア21.92%となる。スプリンクラーの配管点数、加工点数と実際の販売単価は非公開のため、市場金額を固定価格の数量とする。バイキング・サプライネット、ウィンサプライ、地場の防火管材卸が競合する。
カナダ・ウォルスリー
ウォルスリー・カナダの支店網を通じ、給排水、空調、上下水道と産業用管材を現地施工業者に供給する。
| 数量カナダの対象専門流通市場(億ドル、2025年価格、当方推定) | 価格同社獲得シェア×カナダの取引単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 350 | 4.4% | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 406 | 6.3% | 26 | 1 |
取り方:SEC移行年報で2025年7月期カナダは全社売上の5%と確認できるので15.38億ドルを使う。カナダのこの品目横断の市場規模は会社開示なしのため350億ドルを控えめな作業仮説とし、見かけの浸透率4.39%を算出した。米国8顧客群の市場合計4000億ドルにはこの補助推定を足さない。地域大手エムコ、レシュー等との比較可能なシェアは非開示である。
リスクと懸念
住宅市場の長期停滞
売上の約半分が住宅に関係し、配管材とショールーム商品は高い住宅ローン金利に弱い。米国の住宅不足が残っても、新築が減ったままでは業者の発注は戻らない。住宅向け価格が物価ほど上がらなければ、在庫回転と支店採算を同時に悪化させる。
上下水道工事の発注遅延
老朽管の更新需要は消えにくいが、自治体の財政、地方債利回り、連邦補助金の配分で工期は動く。コア・アンド・メインや地場卸との公共工事入札も厳しい。更新需要の総額が大きいことを、そのまま毎年の注文増と考えるべきではない。
FloWorks買収と負債
2026年に成立した企業価値約16億ドルの買収は、流体制御の技術を取り込む反面、のれんと借り換え金利を負担する。公表された約10倍の買収倍率には予定された相乗効果が含まれる。事業統合が遅れれば投下資本の利回りは資本コストに届かない。
競争激化と直販・電子調達
ワツコ、コア・アンド・メイン、ウィンサプライに加え、ホーム・デポ傘下SRSが品揃えを拡大している。顧客の電子購買やメーカー直販が進めば、相見積もりと値引きが増える。AIによる自動発注は配送を不要にしないが、卸の粗利を削る方向には働きうる。
大型設備投資の反転
データセンター、半導体工場、電力・製薬設備の建設が集中すると、商業用機械設備と産業用品の売上は同時に伸びる。しかし計画延期も同時に起こる。専門機器の在庫と買収した支店の固定費が残ると、景気後退時に営業利益率は売上以上の速さで下がる。
商品価格・運転資金・リース
銅管や鋼製配管の値下がりは名目売上と在庫の評価を押し下げる。高値の在庫を長く抱えれば値下げ損も出る。会社は倉庫・支店の賃借契約を多数持ち、米国会計で負債が計上済みだが、不況になっても家賃は直ちに消えない。
過剰な自社株買いと株式報酬
経営陣は大きな自社株買い枠を持つが、高い値段で自社株を買えば継続株主の価値が減る。株式報酬で渡す株の分を差し引いた実質還元を追う必要がある。急いで株数を減らすより、良い買収か配当を選ぶ規律が大切である。
今後の分かれ目
- 水道・下水道工事向けの受注が住宅不況中も年5%以上増え、同社のシェアが継続して上昇する
- 上下水道の数量を上方修正し、商業用設備との複合提案が効いているなら、やや楽観・楽観の可能性を高める。
- FloWorksの売上と営業利益が想定を上回り、取得後3~5年で投下資本利益率が資本コストを明確に超える
- 産業用流体制御のシェア上昇と全社の利益率改善を認め、買収を成長の源として評価する。
- 住宅工事業者向け配管材とホーム事業が複数年にわたり実質で縮み、支店統廃合が増える
- 住宅関連の数量と粗利を引き下げ、やや悲観へ重みを移す。物価上昇による名目増収では打ち消さない。
- ホーム・デポ傘下SRSやワツコの増店で空調卸のシェアが低下し、値引きが常態化する
- 空調のシェアと価格指数を下げ、営業利益率低下が全社へ及ぶかを検討する。
- 売上が増えても運転資金の増加で営業キャッシュフローが純利益を3期連続で大幅に下回る
- 利益の現金化に疑問が生じるため、正味の株主還元と買収可能額を下方修正する。
- データセンターの大型案件が相次ぎ延期され、商業設備と産業用流体制御の受注残が同時に落ちる
- 景気循環の悪い側が現実化したとみなし、利益率だけでなく実質数量の10年成長も弱める。
- 住宅の更新・改修が持ち直し、全国の自社ブランド取扱高が売上の15%を超える
- 商品構成による粗利改善を認め、住宅関連でも利益を守れる見方に近づける。
見ておくもの
- 米国8顧客群別の売上構成と、上下水道・商業設備の実質成長
- 住宅/非住宅と新設/修理改修の売上構成(約50/50、約1/3対2/3)
- 既存店の売上増を数量と価格に分けた内訳、対市場成長差
- 2026年取得FloWorksの売上・粗利・相乗効果と投下資本利益率
- GAAP営業利益率と調整後営業利益率の差、のれん償却や統合費用
- 正味の配当・株式買戻し・株式報酬と純負債/EBITDA
- 営業キャッシュフロー・在庫・売掛金と運転資金の増加
- 賃借倉庫・支店の固定費と支店閉鎖の件数
- 競合のコア・アンド・メイン、ワツコ、ホーム・デポ系の増収とシェア
倍率と資本コストの決め方
現在のPERや株価を使わず、八つの米国顧客群とカナダについて2025年固定価格市場×シェア×単価指数で2035年の売上を求めた。長期の数量成長は水道インフラ、商業用設備、住宅、空調で別々にした。倍率は資本コスト8.0%、10年目のROE、堀は普通、成熟後のgを用いた正当化PERの内側で決め、来期利益に対する式には1+gを掛けた。純利益は株式報酬と買収償却を費用に含むGAAP相当とし、現金は純負債なので別加算しない。2025年は7月期が基準で、2026年から12月決算へ変更された。リース負債は米国会計ですでに計上されており、同じ会計形で10年を見た。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に、循環+0.5%、値決め0%、負債0%、寿命−0.5%を加えて8.0%。βや市場のPERを用いない。FloWorksの統合と建設景気の下振れは割引率の上乗せではなく数量・利益率・確率に反映した。