結論
フォーティブ(Fortive)は、2025 年 6 月 28 日に精密技術部門(テクトロニクス・クォリトロル)をラルティス(Ralliant)として分離した後の会社で、残った事業はインテリジェント運用ソリューション(IOS)と先進医療ソリューション(AHS)の 2 つである。IOS は電気・産業用の携帯型測定器「フルーク」、施設・資産管理ソフト(アクルーエント・ゴーディアン・サービスチャネル)、ガス検知などの安全事業から成り、売上の約 7 割と営業利益の大半を稼ぐ。AHS は病院の低温滅菌(ASP)、手術記録ソフト(プロベーション)、線量計測(ランドウアー)などである。
分離後の 2025 年は売上 41.6 億ドル、営業利益 7.2 億ドル(17.3%)、継続事業の GAAP 純利益 5.3 億ドル、フリーキャッシュフロー 9.3 億ドル。2026 年 4〜6 月期はコア成長 6.7% と加速し、通期のコア成長見通しは約 4% に引き上げられた。データセンターの光ファイバー試験器と施設管理ソフトが伸びている。
バリュー投資の観点では、フルークのブランドと販売店網、解約されにくい業務ソフトの積み上げで質は高い。ただし GAAP の純利益は買収無形資産の償却(年 3.7 億ドル)を費用に含み、帳簿の自己資本利益率は 8〜9% と低い。市場 × シェア × 価格で 10 年を積むと、中立の売上は年 6.3% 増の 77 億ドル、純利益は 12 億ドル。利益ベースの成熟した倍率は正当化 PER の上限 19 倍の 7.5 割、14 倍前後で、10 年後の時価総額は中立で今とほぼ同じ、これに 10 年の還元を足して資本コスト 8.25% で割り引くと、本質価値は今の時価総額 176 億ドルを 1 割ほど下回る。総合は「やや割高」。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後もこの事業は存在し、今より強いか、が最初の問いになる。フルークの測定器は現場の安全規格と信頼で選ばれ、電化とデータセンターで使われる場所が増える。施設・資産ソフトは解約が少なく、ASP の消耗品は装置の設置台数に比例して毎年売れる。10 年後に事業がなくなる心配は小さく、堀は計測と医療で保たれるとみる。
問題は「株主に残る利益」と値段である。GAAP の純利益 5.3 億ドルのうち買収無形資産の償却 2.9 億ドル(税引き後)は現金が出ない費用で、FCF は 9.3 億ドルと純利益の 1.7 倍ある。償却を戻した利益は約 8 億ドルだが、株式報酬が年 1.2 億ドルあるので、所有者の利益は 7 億ドル前後にとどまる。時価総額 176 億ドルは FCF 利回り 5.3%(所有者の利益では 4% 前後)で、成長(名目 5〜6%)を足すと 9〜10% と、資本コスト 8.25% にわずかに届かない程度に見えるが、これは償却を戻した FCF の見方で、GAAP の純利益で測る利益ベースの本質価値は今の時価総額を 13% ほど下回る。
経営の資本配分は、割高な買収で価値を壊すより自社株買いを選んでいる点は評価できる。ただし自社株買いは純負債を増やして行われており、値段が本質価値に近い今は、買い戻しで株主の価値が大きく増えるわけではない。安全域は薄く、悲観の確率も 3 割ある。確信度は上げずに、総合で「やや割高」と見る。
何で稼ぐ会社か
売上 41.6 億ドルは 2 つの事業から成る。IOS(2025 年 28.6 億ドル、営業利益率 25.8%)は、(1) フルーク:電気技師・保全担当が使うデジタルマルチメーター、熱画像カメラ、絶縁・電力品質試験器、データセンター向けの光ファイバー・ケーブル試験器(推定 16.5 億ドル)、(2) 施設・資産ライフサイクル事業:アクルーエント(施設・不動産の管理ソフト)、ゴーディアン(建設コストデータ RSMeans・公共工事の調達)、サービスチャネル(小売・飲食チェーンの施設保守の発注市場)(推定 8.0 億ドル)、(3) 安全事業:インダストリアル・サイエンティフィック(ガス検知器のサービス型提供)とインテレックス(安全衛生管理ソフト)(推定 4.1 億ドル)。
AHS(13.0 億ドル、営業利益率 10.6%)は、(4) ASP:過酸化水素プラズマ低温滅菌装置(STERRAD)と専用消耗品、洗浄の確認(推定 6.3 億ドル)、(5) プロベーション(内視鏡・手術の記録ソフト)、センシス(器具の追跡ソフト)、ランドウアー(放射線の線量測定サービス)、フルーク・バイオメディカル(医療機器の校正)(推定 6.7 億ドル)。
収益の質は、新品の機器を売る部分と、消耗品・サブスクリプション・校正などの繰り返し収入が混ざる。米国外の売上は 44%、米連邦政府向けは約 4.2 億ドル。分離で製造・計測の景気循環が大きかった精密技術部門が外に出て、売上の経常的な部分が厚くなった。課題は、フルークの欧州流通在庫の調整、AHS の利益率の低さ(買収償却が重い)、関税である。
優良さと弱いところ
堀は事業ごとに違う。フルークは電気・保全の現場で「落としても壊れない・安全規格を満たす」道具として 70 年以上のブランドがあり、保全担当者は価格より信頼で選ぶ。販売は工具の流通店・オンライン経由の割合が大きく、買い替えのたびに同じ機種を指名する傾向がある。ただし中国の安価な熱画像カメラ・マルチメーター(ハイクマイクロなど)が下位市場から迫り、高機能機の差で守る形になる。
施設・資産ソフトは、一度入れると契約が長く続くので切り替え費用が高い。ゴーディアンの RSMeans は建設コストの標準データで、公共調達の囲い込みがある。サービスチャネルは発注側(小売)と受注側(業者)の双方が使う市場で、ネットワーク効果がある。ASP の STERRAD は病院の滅菌ワークフローに組み込まれ、装置を置けば専用の消耗品が毎年売れる。
弱みは 3 つ。第 1 に利益率:分離後も AHS の GAAP 営業利益率は 10〜11% 止まりで、ASP の利益率は医療機器としては高くない。第 2 に資本効率:買収で積んだのれんと無形資産(約 95 億ドル)が総資産の大半で、帳簿の ROE は 8〜9%。第 3 に規模:分離で売上が 42 億ドルに縮み、自社株買い(2025 年 16 億ドル)で自己資本も 65 億ドルに縮んだため、買収を続けるか自社株買いで返すかの資本配分が成果を左右する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
フォーティブの市場は 1 つではない。電気試験機(フルーク)は、データセンターの増設・送配電の更新・EV 充電・工場の電化で現場の点検が増える追い風があり、2026 年は光ファイバー試験器(CertiFiber Max)が計画を大きく上回った。一方で欧州では流通業者が購入を先送りし、在庫調整がある。製造業の景気(ISM 製造業指数は 2026 年 9 月 54.5 と強い)に比例して売れるが、重機ほど深く落ちない(保全は止められない)。
施設管理ソフトは、小売・飲食チェーンの店舗数と保守外注の増加、公共インフラの更新、AI による故障予測で需要が伸びる。ただし AI ネイティブの新興ソフトや、サービスナウ(ServiceNow)・IBM などの大手が機能を取り込み、価格が下がる懸念がある。感染防止では、病院の手術件数の増加と、低温滅菌のうち過酸化水素プラズマ方式の STERRAD が熱に弱い医療器具の滅菌で使われる一方、ステリス(STERIS)が装置・消耗品の両面で競合する。
関税は輸入部材のコスト上昇と価格転嫁の問題で、2026 年は IEEPA 関税の還付(2,000〜2,500 万ドルの見込み)が出る。物価 3.5% の世界では、実際の価格転嫁は年 2% 台にとどまってきたので、価格を物価並みに上げ続けられるかが利益率の分かれ目になる。
資本政策と M&A
分離後の資本配分は「有機成長への投資、ボルトオンの買収、自社株買い、緩やかな増配」の順。分離後 1 年で約 20 億ドル・発行株式の約 11%(約 3,800 万株)を買い戻し、2026 年上期だけで 7.0 億ドルを使った。配当は小さく、利回りは 0.4% ほどにとどまる。買収は小型(2026 年に UV Smart の過半数取得など)で、ソフトウェアは独自データや規制の参入障壁があるものに限り、ハードウェア寄りを優先するという。
レバレッジは総債務÷調整後 EBITDA で 2.7 倍と、分離後も高めである。自社株買いの原資が FCF を超える年があり、純負債は 2025 年末の 28 億ドルから 2026 年 7 月に 31 億ドルへ増えた。2029 年満期のユーロ債の借り換えなど、新しい金利(約 5.75% を想定)に置き換わる分は純利益を削る。
過去には旧フォーティブとして 2016 年のダナハーからの分離、2020 年のヴォンティア(Vontier)の分離、2021〜22 年のサービスチャネル・インテレックス・プロベーションなどの買収と、買ったり分けたりを繰り返してきた。今回の分離は、成長率と利益率の高い精密部門が外に出て、残る会社の見かけの利益成長が下がる面もあった。
2026 年に決算期末後すでに実行した自社株買い 7.0 億ドル(10-Q・2026 年 1 月〜7 月 3 日)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元には数えず、自己資本の起点(57.5 億ドル)からも外した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2025 年に精密技術を切り離し、残った会社は成長が速く利益率の高い業務ソフトと計測だけになった。コア成長は 2025 年の 1.7% から 2026 年の 6.7%(4〜6 月期)へ加速し、通期見通しも約 4% に引き上げられた。フルークはデータセンターと電化の需要を受け、光ファイバー試験器が計画を大きく超え、欧州の流通在庫の調整は終わりに近い(販売時点の数量が 6 四半期ぶりの高さ)。サービスチャネルは小売チェーンの保守外注の増加で伸び、アクルーエントも改善している。
ASP は設備投資が戻り、STERRAD の新しい承認(50 ポンド対応)で装置の入れ替えが期待できる。FCF は純利益の 1.7 倍で、年 9〜10 億ドルを自社株買いと買収に回せる。償却が減る 2030 年代には GAAP の利益率が自然に上がり、中立でも 10 年後の営業利益率は 22% を超える。アクルーエント・ゴーディアン・サービスチャネルが施設データの標準になれば、ソフトの価格は物価を超えて上げられる。楽観の筋書きでは売上が年 8% 台で伸びる。
慎重な見方
今の時価総額 176 億ドルは、GAAP 純利益の 30 倍、自己資本の 2.7 倍で、成熟した産業機械・ソフト企業の倍率ではない。利益ベースの成熟後の PER は 14 倍前後(正当化 PER の上限の 7.5 割)で、10 年後の中立の時価総額は今とほぼ同じ、還元を足しても資本コストに届かない。調整後の利益が伸びても、買収償却と株式報酬(年 1.2 億ドル)を費用として見れば所有者の利益は小さい。
フルークは中国の安価な熱画像カメラ・測定器に下位市場を削られ、欧州の流通在庫の調整はなお続く可能性がある。施設ソフトは AI ネイティブの新興とサービスナウ・IBM などが機能を重ね、価格を下げる。ASP の STERRAD は病院の購買統合の影響を受け、ステリスの値引きに合うか分からない。分離後の会社は規模が小さく、買収の対象も限られ、自社株買いのために純負債を 28 億ドルから 40 億ドル台へ増やすことになる。物価 3.5% を価格に転嫁できていない実績(価格 +2.2%)は、中立の「価格は物価並み」の置き方を疑わせる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は事業の質と 2026 年の勢いについて正しいが、値段を支える根拠にはならない。利益ベースの倍率(10 年の中立 14 倍)と GAAP の純利益に直すと、10 年後の中立の時価総額は今の値段とほぼ同じで、還元を足しても資本コストにやや届かない。事業は堅く、悲観を深く厚くする理由はないが、2026 年の勢いを織り込んだ今の値段に対して強気に寄せる理由も弱い。確率は中立を最も厚く 38%、楽観側(楽観+やや楽観)を 32%、悲観側(やや悲観+悲観)を 30% に置いた。悲観には構造的な負け 10% を含む。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 57.16 ドル174 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 33.66 ドル102 億ドル)。 今の値に割り戻すと 48.52 ドル148 億ドル、今との差 −19.2%、 期待の年率 +4.2%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 95.63 ドル291 億ドル | 43.72 ドル133 億ドル | +132.1% | +8.8% | 13.93 ドル42 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 73.44 ドル223 億ドル | 37.48 ドル114 億ドル | +84.7% | +6.3% | 24.40 ドル74 億ドル |
| 中立 | 38% | 58.12 ドル177 億ドル | 35.83 ドル109 億ドル | +56.5% | +4.6% | 35.70 ドル109 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 37.28 ドル113 億ドル | 27.61 ドル84 億ドル | +8.1% | +0.8% | 12.98 ドル39 億ドル |
| 悲観 | 10% | 19.03 ドル58 億ドル | 19.07 ドル58 億ドル | −36.6% | −4.4% | 3.81 ドル12 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 57.16 ドル174 億ドル | 33.66 ドル102 億ドル | +51.3% | +4.2% | 90.83 ドル276 億ドル |
今の株価時価総額 60.05 ドル183 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:施設ソフトが標準データになり、フルークも電化で伸び、利益率が 26% 台へ 利益 17 億ドル · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 95.63 ドル291 億ドル
データセンターの増設と電化が 2030 年代も続き、フルークの対象市場は年 +3% で伸びてシェアも守る。アクルーエント・ゴーディアン・サービスチャネルが施設データの標準になり、市場の年 +4.5% に加えてシェアを 15% 押し上げ、価格も物価を上回って上がる(10 年 1.46 倍)。買収は年 2 億ドルのボルトオンで、償却が減るため GAAP の営業利益率は 26% 台まで上がる。10 年後の売上は 92.4 億ドル(年 8.3%)、内訳は フルーク 34.0 億ドル、施設・資産ライフサイクルソフト 20.9 億ドル、安全・コンプライアンス 8.8 億ドル、ASP 12.4 億ドル、医療ソフト・線量・校正 16.3 億ドル。事業の営業利益 26.0 億ドルから本社費 1.8 億ドルと純利息 3.5 億ドルを引き、営業利益 24.2 億ドル、GAAP 純利益 17.2 億ドル(2025 年の 3.2 倍)。純負債は 60.1 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 20.4 倍(g 4.0%・RONIC 30.0%・k 8.25%)の 8.3 割で PER 16.9 倍、時価総額は 291 億ドル。
- フルーク(計測・保全ツール):数量 148(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 23.0%(フルークのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 34 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場 148 億ドル × シェア 15.75% × 価格 1.46 倍
- 施設・資産ライフサイクルソフト:数量 295(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 7.1%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 21 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 295 億ドル × シェア 4.84% × 価格 1.46 倍
- 安全・コンプライアンス(ガス検知・安全衛生ソフト):数量 91.7(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 9.6%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 9 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 92 億ドル × シェア 6.56% × 価格 1.46 倍
- ASP(感染防止・低温滅菌):数量 76.8(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 16.1%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 12 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 77 億ドル × シェア 11.03% × 価格 1.46 倍
- 医療ソフト・線量・校正:数量 207(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 7.9%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 16 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 207 億ドル × シェア 5.38% × 価格 1.46 倍
倍率:帳簿の ROE 51% は 40% 超(自己資本が借金・自社株買いで縮んだ見かけ)なので ROIC から直した(ROIC = 税引き後営業利益 ÷(自己資本+純負債 29 億ドル)= 29.8%、ROE = ROIC +(ROIC − 借入金利 5.75%×(1−22%))× 純負債÷自己資本(1 倍まで)= 51.7%)。正当化 PER 20.4 倍(g 4.0%・RONIC 30.0%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 51.7%−k)・moat=normal)に対して 16.9 倍(上限の 8.3 割)に置いた。施設ソフトが標準データになりフルークも電化で伸びる最良の筋書き。ただし買収償却を費用にした GAAP 利益で 10 年の ROE の高さは自社株買いによる見かけが大きいので上限の 8.3 割にとどめた。
確率:電気設備・データセンターの点検需要の長期化と、施設ソフトのシェア拡大が両方そろう必要があり、業界ノートの楽観(塊 B:10 年 年 +5%)より少し低い置き方でも 1 割にとどめた。
やや楽観 22% やや楽観:フルーク・ソフトとも堅調で、償却の減少が GAAP 利益率を押し上げる 利益 15 億ドル · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 73.44 ドル223 億ドル
フルークの対象市場は年 +2.5%、施設ソフトは年 +4.5%、安全・医療ソフトは年 +3〜3.5% で、いずれもシェアはわずかに上がる。価格は物価並み(1.41 倍)。AHS は ASP の設備更新と医療ソフトで利益率が 17% 前後まで上がり、GAAP の償却は年 3.7 億ドルから逓減する。自社株買いを続けるため純負債は 49 億ドルまで増えるが、利益の伸びが利払いを上回る。10 年後の売上は 83.5 億ドル(年 7.2%)、内訳は フルーク 30.4 億ドル、施設・資産ライフサイクルソフト 19.3 億ドル、安全・コンプライアンス 7.9 億ドル、ASP 11.4 億ドル、医療ソフト・線量・校正 14.5 億ドル。事業の営業利益 22.2 億ドルから本社費 1.7 億ドルと純利息 2.9 億ドルを引き、営業利益 20.5 億ドル、GAAP 純利益 14.6 億ドル(2025 年の 2.7 倍)。純負債は 49.5 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 19.2 倍(g 4.0%・RONIC 21.6%・k 8.25%)の 8.0 割で PER 15.3 倍、時価総額は 223 億ドル。
- フルーク(計測・保全ツール):数量 141(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 21.6%(フルークのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 30 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場 141 億ドル × シェア 15.30% × 価格 1.41 倍
- 施設・資産ライフサイクルソフト:数量 295(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.5%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 19 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 295 億ドル × シェア 4.63% × 価格 1.41 倍
- 安全・コンプライアンス(ガス検知・安全衛生ソフト):数量 87.4(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 9.1%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 8 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 87 億ドル × シェア 6.43% × 価格 1.41 倍
- ASP(感染防止・低温滅菌):数量 75.0(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 15.3%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 75 億ドル × シェア 10.81% × 価格 1.41 倍
- 医療ソフト・線量・校正:数量 198(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 7.3%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 15 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 198 億ドル × シェア 5.19% × 価格 1.41 倍
倍率:正当化 PER 19.2 倍(g 4.0%・RONIC 21.6%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 35.0%−k)・moat=normal)に対して 15.3 倍(上限の 8.0 割)に置いた。フルーク・ソフトとも堅調で償却の減少が GAAP 利益率を押し上げる筋書き。
確率:楽観ほど市場が伸びなくても、2026 年のコア成長 4% 超と償却の逓減が続けば届く。業界ノートの中立と楽観の中間に置いた。
中立 38% 中立:売上は年 6% 台で伸び、営業利益率は 23% 前後で成熟した倍率に落ち着く 利益 12 億ドル · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 58.12 ドル177 億ドル
フルークの対象市場は年 +2%、シェアは一定。施設ソフトは市場 年 +3.5% で、サービスチャネルの伸びで 7% 分シェアを足す。安全と医療ソフトはボルトオンで 3〜5% 分のシェアが増え、価格は物価並み(1.41 倍)。経営の枠組み(コア 3〜5%)に物価の上振れが乗る形で、10 年の売上は年 6.3%。ボルトオン買収は年 0.8 億ドル。償却が逓減し、GAAP の営業利益率は 17.3% から 22〜23% へ上がる。10 年後の売上は 76.6 億ドル(年 6.3%)、内訳は フルーク 28.4 億ドル、施設・資産ライフサイクルソフト 17.0 億ドル、安全・コンプライアンス 7.6 億ドル、ASP 10.8 億ドル、医療ソフト・線量・校正 12.8 億ドル。事業の営業利益 19.2 億ドルから本社費 1.7 億ドルと純利息 2.6 億ドルを引き、営業利益 17.5 億ドル、GAAP 純利益 12.4 億ドル(2025 年の 2.3 倍)。純負債は 43.3 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 19.0 倍(g 4.0%・RONIC 20.8%・k 8.25%)の 7.5 割で PER 14.3 倍、時価総額は 177 億ドル。
- フルーク(計測・保全ツール):数量 134(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 21.2%(フルークのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 28 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場 134 億ドル × シェア 15.00% × 価格 1.41 倍
- 施設・資産ライフサイクルソフト:数量 268(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.4%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 17 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 268 億ドル × シェア 4.51% × 価格 1.41 倍
- 安全・コンプライアンス(ガス検知・安全衛生ソフト):数量 83.2(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 9.1%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 8 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 83 億ドル × シェア 6.43% × 価格 1.41 倍
- ASP(感染防止・低温滅菌):数量 73.1(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 14.8%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 73 億ドル × シェア 10.50% × 価格 1.41 倍
- 医療ソフト・線量・校正:数量 179(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 7.1%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 179 億ドル × シェア 5.05% × 価格 1.41 倍
倍率:正当化 PER 19.0 倍(g 4.0%・RONIC 20.8%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 33.4%−k)・moat=normal)に対して 14.3 倍(上限の 7.5 割)に置いた。フルークのブランドと販売店網・解約されにくい業務ソフト・ASP の消耗品で質は堅いが、帳簿の自己資本 ROE は自社株買いで縮んだ値で ROIC は 10% 前後、レバレッジも 2.7 倍あるので上限の 7.5 割。
確率:業界ノート塊 B の中立(数量 年 +2%・価格 年 +3%)に、ソフトの高い伸びとボルトオンを足した。フォーティブは経営の見通し(コア 3〜5%)の範囲に収まる最も起こりやすい姿。
やや悲観 20% やや悲観:中国勢と AI ソフトに価格とシェアを削られ、利益率は伸びない 利益 9 億ドル · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 37.28 ドル113 億ドル
フルークは中国勢に下位帯を取られシェアが 7% 縮み、対象市場も年 +1.5% にとどまる。施設ソフトは市場の伸びは保つが、AI ネイティブとの値引き競争で価格が 1.38 倍と物価に届かない。ASP も病院の購買統合で単価が下がる。利益率は事業で 24〜28% から 14〜24% に落ち着き、売上の伸びは年 4.8% にとどまる。買収は年 1.5 億ドルで続けるが、投資収益は資本コスト以下に終わる。10 年後の売上は 66.6 億ドル(年 4.8%)、内訳は フルーク 24.6 億ドル、施設・資産ライフサイクルソフト 14.8 億ドル、安全・コンプライアンス 6.5 億ドル、ASP 9.6 億ドル、医療ソフト・線量・校正 11.1 億ドル。事業の営業利益 15.2 億ドルから本社費 1.7 億ドルと純利息 2.3 億ドルを引き、営業利益 13.5 億ドル、GAAP 純利益 9.3 億ドル(2025 年の 1.7 倍)。純負債は 38.4 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 16.7 倍(g 4.0%・RONIC 13.9%・k 8.25%)の 7.3 割で PER 12.2 倍、時価総額は 113 億ドル。
- フルーク(計測・保全ツール):数量 128(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 19.3%(フルークのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 25 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 128 億ドル × シェア 13.95% × 価格 1.38 倍
- 施設・資産ライフサイクルソフト:数量 255(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.8%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 15 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 255 億ドル × シェア 4.21% × 価格 1.38 倍
- 安全・コンプライアンス(ガス検知・安全衛生ソフト):数量 79.2(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 8.2%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 7 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 79 億ドル × シェア 5.93% × 価格 1.38 倍
- ASP(感染防止・低温滅菌):数量 69.6(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 13.8%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 70 億ドル × シェア 9.97% × 価格 1.38 倍
- 医療ソフト・線量・校正:数量 171(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.5%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 171 億ドル × シェア 4.71% × 価格 1.38 倍
倍率:正当化 PER 16.7 倍(g 4.0%・RONIC 13.9%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 19.5%−k)・moat=normal)に対して 12.2 倍(上限の 7.3 割)に置いた。中国勢と AI ソフトに価格とシェアを削られる筋書きなので上限の 7.3 割。
確率:中国の安価な測定器と AI ネイティブの施設ソフトの両方が効く筋書きで、フォーティブの価格転嫁の実績(2025 年は価格 +2.2%、物価に届かず)を見れば 2 割は起きる。
悲観 10% 悲観:測定器の価格競争とソフトの置き換えで、もう優良とは言えない水準へ 利益 6 億ドル · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 19.03 ドル58 億ドル
フルークは中国勢の安価な機器にシェアを 18% 失い、AI ネイティブの施設ソフトに価格を奪われ、ASP は病院の購買統合で単価が下がる。10 年の価格は 1.33 倍にとどまり、数量の伸びも鈍る。レバレッジは 2.6 倍へ上がり、買収は年 2 億ドルを使うが成果が出ず、のれんを約 8 億ドル減損して自己資本が縮む。営業利益率は 17% 弱まで下がり、純利益は今とほぼ同じ 5.8 億ドルにとどまる。10 年後の売上は 54.5 億ドル(年 2.7%)、内訳は フルーク 19.9 億ドル、施設・資産ライフサイクルソフト 11.4 億ドル、安全・コンプライアンス 5.5 億ドル、ASP 8.1 億ドル、医療ソフト・線量・校正 9.6 億ドル。事業の営業利益 10.7 億ドルから本社費 1.6 億ドルと純利息 2.0 億ドルを引き、営業利益 9.1 億ドル、GAAP 純利益 5.8 億ドル(2025 年の 1.1 倍)。純負債は 33.5 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 14.2 倍(g 4.0%・RONIC 10.1%・k 8.25%)の 7.0 割で PER 10.0 倍、時価総額は 58 億ドル。
- フルーク(計測・保全ツール):数量 122(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 16.4%(フルークのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 20 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 122 億ドル × シェア 12.30% × 価格 1.33 倍
- 施設・資産ライフサイクルソフト:数量 232(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.9%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 232 億ドル × シェア 3.71% × 価格 1.33 倍
- 安全・コンプライアンス(ガス検知・安全衛生ソフト):数量 75.4(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 7.3%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 75 億ドル × シェア 5.50% × 価格 1.33 倍
- ASP(感染防止・低温滅菌):数量 66.3(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 12.3%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 66 億ドル × シェア 9.24% × 価格 1.33 倍
- 医療ソフト・線量・校正:数量 163(対象市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.9%(シェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 162 億ドル × シェア 4.42% × 価格 1.33 倍
倍率:正当化 PER 14.2 倍(g 4.0%・RONIC 10.1%=k 8.25%+残る割合×(事業の ROE 12.0%−k)・moat=normal)に対して 10.0 倍(上限の 7.0 割)に置いた。測定器の価格競争とソフトの置き換えで優良でなくなる筋書き。成長の弱さ・優良さの崩れは g と ROE に入れ、式の外では引かない。
確率:構造的な負けは業界ノートで 10% を上限とした(悲観は 5〜12%)。フルーク・ソフト・滅菌の 3 つが同時に崩れる必要があるので 10% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
フルーク(計測・保全ツール)
電気・産業用の携帯型測定器(マルチメーター・熱画像・絶縁・光ファイバー試験)。データセンターと電化の点検が追い風。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格フルークのシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 110 | 15.0% | 17 | 5 |
| 10 年後 中立 | 134 | 21.2% | 28 | 9 |
取り方:対象市場を携帯型の電気・産業用試験・熱画像・ネットワーク試験の世界市場 約 110 億ドル(推定)、フルークのシェアを約 15% と置いた。売上は IOS 28.56 億ドルのうち約 16.5 億ドル(推定、10-K に開示なし)、GAAP 営業利益率は約 29%(IOS 全体の 25.8% を事業別に割った推定)。売上 = 市場 × シェア × 価格(価格指数は 2025 年 = 1、中立で 10 年 1.41 倍)。競合と照らすと、キーサイト・日置電機・メガー・テスト・ハイクマイクロ・テレダイン FLIR(熱画像)・クラインが並び、フルークは高機能・安全規格対応の上位帯で首位級。
施設・資産ライフサイクルソフト
アクルーエント(施設管理)、ゴーディアン(建設コストデータ・公共調達)、サービスチャネル(小売の保守発注市場)。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 190 | 4.2% | 8 | 2 |
| 10 年後 中立 | 268 | 6.4% | 17 | 5 |
取り方:対象市場を施設・資産管理(CMMS・IWMS)、建設コストデータ、施設保守の調達ソフトの合計 約 190 億ドル(推定)、シェアを約 4.2% と置いた。売上は約 8.0 億ドル(推定)、GAAP 営業利益率は買収償却が重いため約 21%(調整後 EBITDA 率はこれより高い)。競合と照らすと、IBM(TRIRIGA)・アーキバス・サービスナウ・各種の業界特化ソフトが並び、ゴーディアンの RSMeans とサービスチャネルの発注網はニッチで首位級。
安全・コンプライアンス(ガス検知・安全衛生ソフト)
インダストリアル・サイエンティフィック(ガス検知器のサービス型提供)とインテレックス(安全衛生管理ソフト)。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 65.0 | 6.2% | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 83.2 | 9.1% | 8 | 2 |
取り方:対象市場を携帯・固定のガス検知・個人安全・EHS ソフトの合計 約 65 億ドル(推定)、シェアを約 6.2% と置いた。売上は約 4.1 億ドル(推定)、GAAP 営業利益率は約 22%。競合と照らすと、MSA セーフティ・ハネウェル(BW)・ドレーゲル・各種の EHS ソフトが並び、インダストリアル・サイエンティフィックは機器のサービス型(月額)で差をつける。
ASP(感染防止・低温滅菌)
STERRAD 低温滅菌装置と専用消耗品、洗浄の確認製品。病院の中央滅菌室の標準機。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 10.5% | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 73.1 | 14.8% | 11 | 2 |
取り方:対象市場を低温滅菌・高水準消毒・感染防止消耗品の世界市場 約 60 億ドル(推定)、シェアを約 10.5% と置いた。売上は約 6.3 億ドル(推定)、GAAP 営業利益率は約 14%(AHS 全体 10.6% の事業別の推定)。競合と照らすと、ステリス(STERIS)・ゲティンゲ・ジョンソン・エンド・ジョンソン(旧 ASP の買収元)の周辺・各国の滅菌器メーカーが並び、低温滅菌の過酸化水素プラズマ方式は STERRAD が代表格。
医療ソフト・線量・校正
プロベーション(手術・内視鏡の記録)、センシス(器具追跡)、ランドウアー(放射線の線量測定)、フルーク・バイオメディカル(医療機器の校正)。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 140 | 4.8% | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 179 | 7.1% | 13 | 2 |
取り方:対象市場を手術・器具管理のソフト、線量測定サービス、医療機器の校正の合計 約 140 億ドル(推定)、シェアを約 4.8% と置いた。売上は約 6.7 億ドル(推定)、GAAP 営業利益率は買収償却(プロベーション等)が重く約 8.6%。競合と照らすと、エピック(電子カルテ内の機能)・メディテック・ミリオン(Mirion)・ランドウアー自身のニッチで、ソフトは病院の導入の手間が堀になる。
リスクと懸念
中国の安価な測定器・熱画像カメラ
フルークは上位の安全規格対応機で守っているが、ハイクマイクロなどの安価な熱画像カメラ・マルチメーターが下位帯のシェアと価格を削る。フルークは IOS の約 6 割を占めるので、数量と価格の両方に効く。10 年の悲観・やや悲観でシェアを 7〜18% 縮めた。
欧州の流通在庫の調整と製造業の景気
2026 年の 4〜6 月期は欧州の販売店が購入を先送りして減収だったが、販売時点の数量は戻りつつある。ISM が強い今は追い風だが、製造業が崩れれば保全予算の削減と在庫調整が重なる。悲観でフルークの数量を 25% 減らした。
AI ネイティブのソフトとの競争
施設・資産管理は、サービスナウ・IBM が機能を重ねるうえ、AI で故障を予測する新興が現れ、価格が下がるおそれがある。ゴーディアンの RSMeans とサービスチャネルの発注網は堀だが、アクルーエントは改善途上。ソフトの価格が物価に届かない筋書きを悲観に置いた。
買収償却と GAAP の低い利益の質
買収無形資産の償却は年 3.7 億ドルで、GAAP の純利益 5.3 億ドルを大きく押し下げる。償却は現金が出ないが、買収は過去に株主の資金で行われたもの。調整後の利益だけを見ると割安に見えるが、株式報酬(年 1.2 億ドル)も含めた所有者の利益は 7 億ドル前後にとどまる。
自社株買いのための純負債の増加
分離後 1 年で約 20 億ドルを買い戻し、純負債は 28 億ドルから 31 億ドルへ増えた。レバレッジは 2.7 倍で、借り換えは 5.75% 前後になる。値段が割高なまま買い戻しを続けると、株主の価値を増やさず、負債だけが増える。
関税とサプライチェーン
輸入部材(電子部品・光学部品)の関税は、価格転嫁が遅れる分だけ利益率を削る。2026 年は IEEPA 関税の還付(2,000〜2,500 万ドル)が出るが、鉄鋼・アルミ関税などは残る。価格が物価並みに上がるという中立の前提が崩れる原因にもなる。
病院の購買統合と医療機器の規制
ASP の STERRAD は、病院の購買の集約で値引き圧力を受け、ステリスなどと比べられる。装置の承認(FDA)の遅れや滅菌方式の規制の変更が、消耗品の継続収入に響く。AHS の GAAP 営業利益率は 10〜11% と低く、少しの値下げで利益が大きく動く。
今後の分かれ目
- フルークのコア成長が 3 年続けて 5% を超え、データセンター向け光ファイバー試験器の受注が続く
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。ただし倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 19 倍前後で、今の GAAP の PER 30 倍は成熟後に持ち込めない。
- 施設・資産ソフトのコア成長が 8% 以上で、ARR(年間の継続収入)が安定して増える
- ソフトの市場シェアを押し上げ、10 年の営業利益率が 25% を超える。楽観側に寄せる。
- 欧州の販売店の在庫調整が 2027 年まで続き、フルークが減収に戻る
- やや悲観の確率を上げる。
- 中国の安価な熱画像カメラ・測定器が北米・欧州の中位帯で値下げを始める
- フルークの価格が物価に届かなくなり、10 年の筋書きはやや悲観・悲観に寄る。
- 買収が大型(IOS・AHS で 30 億ドル超)になり、株式交換や債務の増加を伴う
- 成立した買収は筋書きに足す。倍率が高い買収は投資収益が k 8.25% に届かず、のれんの減損リスクが増える。
- 製造業の景気後退で ISM が 45 を割り、病院の手術件数も減る
- 悲観の筋書き(フルーク −25%、時価総額は今の 3 割強)に近づく。ただし AHS・ソフトの経常収入が下支えする。
見ておくもの
- IOS のコア成長(特にフルークのデータセンター向けと、販売店の在庫・販売時点の数量)
- 施設・資産ソフト(サービスチャネル・ゴーディアン・アクルーエント)の継続収入と解約
- AHS の営業利益率(GAAP 10〜11%)と ASP の設備・消耗品の販売
- 買収償却の逓減(年 3.7 億ドルから)と GAAP の純利益
- 純負債(31 億ドル)と総債務÷調整後 EBITDA(2.7 倍)、借り換えの金利
- 自社株買いの規模(2026 年上期 7.0 億ドル)と買い戻しの水準
- IEEPA 関税の還付(2,000〜2,500 万ドル)と価格転嫁
- ISM 製造業指数(9 月 54.5)と欧州の販売店の購入
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) の上限で置いた(k 8.25%・g は上限の 4%・RONIC = k + 残る割合 1/2(moat=normal)×(ROE − k)。ROE は帳簿の自己資本 ROE:自社株買いで縮み 10 年の中立で 33%、楽観は 40% 超なので ROIC から直した値。ROIC は 10% 前後なので割合は低めの 7.5 割)。中立の 10 年は上限 19.0 倍の 7.5 割の 14.3 倍。k は景気の振れの小ささ(cycle +0.25%)・値段の守り(pricing −0.25%)・純負債が EBITDA の 2.5 倍(debt +0.25%)で quality を +0.25% とした。今の GAAP の PER 30 倍は成熟後に持ち込まず、調整後の利益は使わず償却は戻していない。確率は DOV・IR など同じ塊の会社に揃えた。総合は −13%(やや割高)。悲観側は谷の PBR を根拠にせず、稼ぐ力(上限の 7 割台)で置いた。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.25%。繰り返し収入の厚さと借金の少し重い分を quality で見た。個別のリスク(欧州流通の調整・AI 競合・買収の倍率)は k に足さず、筋書きの数量・利益率と確率で表した。存続を疑う要素はなく上乗せは 0。