結論
ディア・アンド・カンパニー(ジョン・ディア)は、大型トラクター・コンバイン・散布機・播種機で世界首位の農機メーカーで、小型農機・芝の機械、建設・林業・道路機械、金融子会社を持つ。会計 2025 年(2025 年 10 月期)は売上 456 億ドル、純利益 50 億ドル。2023 年の山(売上 612 億ドル、純利益 102 億ドル)から利益は半減した。会計 2026 年の純利益の見通しは 47.5〜50 億ドルで、会社は「2026 年が農機サイクルの底」と言い、2027 年は急な反発でなく緩やかな回復と見ている。
大型農機は穀物価格の低迷と高い投入費用で米加の販売が 15〜20% 減り、谷の底にある。一方で小型農機は +15%、建設・林業は +20% と伸び、利益の下支えになっている。2027 年は関税の純負担が約 7.5 億ドルから約 10 億ドルへ増え(払い戻しが消える)、回復の足を引っ張る。精密農業(See & Spray、自動操舵、サブスクリプション)は更新率が 7 割・2 年目以降 9 割超と堀を広げているが、2026 年 7 月の FTC との和解で修理の囲い込みは緩む。
バリュー投資の観点では事業の質は高い。販売・整備網、技術の優位、部品とサービスの収益、世界首位のシェアが 10 年後も残る堀である。ただし値段が問題で、時価総額 1,744 億ドルは底の年の純利益の 35 倍。市場 × シェア × 価格で 10 年を積み上げ、資本コスト 8.5% で割り引くと、中立の筋書きの利益は 2035 年に約 90 億ドル(今の 1.8 倍)、成熟した倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 15 倍の 8 割、約 12 倍、10 年後の時価総額は今の 0.6 倍。割り引くと今の値段の 4 割半ばの価値で、割高が出る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ディアは「10 年後も存在し、今より強いか」と聞かれれば存在する。人は食べ続け、畑は大型化と自動化が進む。ディーラー網、ブランド、中古価格、精密農業のデータは、10 年で損なわれにくい堀である。強さが増すかは、精密農業が価格に上乗せできるか、競合の技術が追いつくか、修理する権利の和解でサービスの囲い込みがどれだけ緩むかで決まる。
ただし、バリュー投資家が重視するオーナー利益(成長のための再投資を引いた、株主のものになる利益)は安定していない。純利益は 2020 年 28 億ドル、2023 年 102 億ドル、2025 年 50 億ドルと動き、2014〜2025 年の平均は約 53 億ドル。足元の純利益 約 49 億ドルは谷の底の値だが、2023 年の山の 102 億ドルは例外で、ならした利益は 65〜75 億ドル前後にある、というのが落ち着いた見方である。今の時価総額 1,744 億ドルは、そのならした利益に対しても 25 倍を超え、10 年後の成熟した姿(利益ベースの PER 12 倍前後)と比べると、回復と倍率の両方で多くを先取りしている。
資本コスト 8.5% で割り引くと、今の値段を正当化できるのは、10 年先に精密農業で利益率が構造的に切り上がる楽観・やや楽観の筋書きだけで、確率は合わせて 3 割ほどである。安全域はなく、事業の質の高さが値段に先に織り込まれている。予測しにくい要素(穀物価格、関税、競合の技術、修理する権利)が多く、確信度は中程度に下げる。よい会社と、よい投資対象は別だ、というのが結論である。
何で稼ぐ会社か
売上は 3 つの機械部門と金融子会社から成る(会計 2025 年の推定)。生産・精密農業(PPA、約 166 億ドル)は、高馬力トラクター・コンバイン・散布機・播種機と、自動操舵・精密散布(See & Spray)・データ(オペレーションズ・センター)で、利益率が最も高く景気の振れも最も大きい。小型農機・芝(SAT、約 107 億ドル)は、中小型トラクター、コンパクトユーティリティ、芝刈機、干し草・畜産機械で、住宅と牧畜の需要に連動し、北米と欧州で強い。建設・林業(CF、約 113 億ドル)は、ショベル・ローダー・ドーザー・林業機械に加え、道路舗装機械のヴィルトゲンを持つ。金融子会社(ジョン・ディア・ファイナンシャル、売上 約 70 億ドル、純利益 約 8 億ドル)は、ディーラーと顧客への融資・リースを出し、機械の販売を支えて安定した利益を生む。
収益の構造は、機械を直販でなく約 1,400 の独立ディーラー(北米・欧州)経由で売り、新機種の売上のあとに部品・整備・修理・精密農業の定期収入で稼ぐ形。農家は収穫の時期に機械が止まるのを最も嫌うため、ディーラーの網と部品の供給が価格を決める力になる。
課題は 3 つある。第 1 に大型農機の谷で、米加の大型農機は 15〜20% 減、PPA の営業利益は 9 か月で 34% 減った。第 2 に関税で、直接の関税費用は 2026 年 約 11 億ドル、払い戻しを除いた純額は約 7.5 億ドルで、2027 年は約 10 億ドルへ増える。第 3 に修理する権利で、FTC と 5 州の和解により、10 年間、診断ソフトや部品を農家と独立修理店にも提供する義務を負い、サービス収益の囲い込みは弱まる。
優良さと弱いところ
堀は 4 つある。第 1 に独立ディーラーの網と部品の供給で、収穫期の故障に翌日対応できる体制が稼働率を守り、農家は価格より止まらないことを優先する。第 2 にブランドと中古価格の高さ(下取り価値が高く、新品の価格を守る)。第 3 に精密農業の技術で、自動操舵・See & Spray・データが農家の作業に組み込まれ、更新率は約 7 割(2 年目以降は 9 割超)。第 4 に金融子会社で、ディーラーと顧客の購入を支える。CNH(ケース IH・ニューホランド)・AGCO(フェント・マッセイ)・クボタ・クラース・中国勢が追うが、北米の大型機でのシェアは約半分と推定される。
資本効率は高く、ROE は 2023 年 47%、2025 年 19%、営業利益率は 2023 年 25%、2025 年 20% と、2010 年代(10〜14%)より構造的に高い。ただし ROE は金融子会社の借入(純負債 546 億ドル、自己資本比率 24.5%)で押し上げられており、機械事業だけの収益性はもう少し低い。
弱い所は 3 つ。景気の山谷が大きく、2009 年は株価が 70% 下げた。農家の収益(穀物価格・投入費用・金利)という一つの要因に利益が左右される。修理する権利の和解でサービス収益の囲い込みが弱まり、価格を決める力が少し落ちる。経営は資本配分に規律があり、FCF の多くを還元しているが、底の年に自社株買いを絞る(9 か月で 7 億ドル)など、山で買い、谷で止める癖がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
農機は、穀物価格・農家の収益・金利・為替・政策(補助金・関税・エタノール)で数量が 3〜5 割動く典型的な循環産業である。2021〜2023 年は穀物価格の高騰と在庫不足で山を作り、2024〜2026 年は価格の下落・投入費用の高止まり・金利 5% で 3 年連続の下降となった。2026 年は大型農機が谷の底(会社は「底を割った水準」と言う)、小型農機は平年に向かい、建設機械は平年よりやや上にある。景気の位置は、PPA が底、SAT が中腹、CF がやや山の手前という三段階である。
構造の変化は 3 つある。第 1 に精密農業・自動化で、種・肥料・農薬の使用量を減らす See & Spray、自動操舵、自動運転の機械が農家のコストを下げ、機械の価格に価値を乗せやすくなる。競合は CNH(ブルー・リバーに対抗するキャメコ等)・AGCO(トリンブルとの合弁)・クラースで、技術の差が縮むか広がるかが最大の論点。第 2 に関税と貿易で、米国の機械は約 8 割が国内工場製だが、鉄鋼・アルミの関税で原価が上がり、中国向けの穀物輸出の落ち込みが農家の収益を傷つける。第 3 に修理する権利で、2026 年 7 月の FTC 和解により、部品・診断ソフトの独占が緩む。
今後 10 年は、人口増と食料需要で農機の市場は名目で年 +4〜5%(数量 +1.5〜2%、価格 +3.5%)で伸び、山谷をならした水準は今の底より 2 割ほど高い、というのが中立の見方である。倍率は利益ベースの正当化 PER(k 8.5%)の上限の 7.5〜9 割で置き、成熟した優良循環株で PER 10〜15 倍、悲観側は稼ぐ力の内側で置いた。
資本政策と M&A
資本配分は規律があるが山で買い、谷で止める。会計 2025 年は配当 17 億ドルと自社株買い 11 億ドル、2023 年は自社株買い 72 億ドルだった。2026 年の 9 か月は配当 13.2 億ドル(四半期 1.62 ドル)、自社株買い 7 億ドルと、谷の年に絞った。株数は 2014 年以降ほぼ毎年 1〜6% 減り、割高な局面で買い続けた年もあった。株式報酬による株の増加は小さく、還元は正味でほぼ全額が株主に届く。
M&A は小さな買収が中心で、ブルー・リバー・テクノロジー(2017 年、See & Spray の基礎)、ヴィルトゲン(2017 年、道路機械)、ゴッス(GUSS、果樹園の自律散布)、ベア・フラッグ(自動運転)などで、技術の取り込みが目的。大型の合併の可能性は低く、競合を買収して独占を強めるのも独禁の面で難しい。金融子会社を含む連結の純負債は 546 億ドルで、ほぼ金融子会社の貸出の資金調達。機械事業だけを見れば純負債は小さく、借り換えによる利払いの増加は 10 年で約 10 億ドル(税前)と推定する。2026 年 7 月の修理する権利の訴訟では、FTC・5 州との和解に加え、農家の集団訴訟を 9,900 万ドルで和解し、費用は小さいが 10 年間の義務が残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会計 2026 年が底、というのは会社が繰り返す見方で、大型農機は底を割った水準にある。農家の機械は 7〜10 年で入れ替わるため、3 年連続の落ち込みで年齢の高い機械が積み上がり、2027〜28 年は入れ替え需要が一度に出る。早期予約はすでに前年比 1 桁台半ばの増に転じている。PPA の営業利益率は底でも 11〜12% を確保しており、2010 年代の谷(10% 前後)より構造的に高い。山では 25% を超えた実績がある。
精密農業はディアの最大の差別化で、See & Spray は前年 500 万エーカーを超え、Precision Essentials の更新率は 2 年目以降 9 割を超える。農薬を 5 割以上減らせる効果が農家の費用対効果を生み、機械の価格に上乗せしやすく、サブスクリプションが定期収入になる。自動運転・自動散布の先行者として、競合が追いつくまでに数年の差がある。小型農機(+15%)と建設・林業(+20%)はすでに伸びており、全社の利益は谷でも 5 割しか落ちていない。
金融子会社は毎年 8 億ドル規模の安定利益で、自社株買いは谷で絞っても山で大きく増やせる。米国のインフラ・データセンター工事が建設機械を支え、10 年で食料需要は人口増と所得増で増える。これが強気の見方で、楽観とやや楽観の筋書きの下敷きである。
慎重な見方
今の利益は谷の底に見えるが、谷はまだ底ではない可能性がある。穀物価格は低く、農家の投入費用は高く、金利は 5% で、農家の収益は 2013〜2019 年の長い低迷期に近づいている。2013 年から 2016 年にかけて、ディアの売上は 3 割減、純利益は半減し、株価は 2 年以上横ばいだった。今回は 2023 年の山が高かった分、落ち込みが長引く。2027 年は関税の純負担が約 10 億ドルに増え(払い戻しが消える)、回復を食う。
精密農業の優位は縮む。2026 年 7 月の FTC 和解で 10 年間、診断ソフトと部品を独立修理店にも提供する義務を負い、サービスの囲い込みが弱まる。CNH・AGCO・クラースも自動操舵と散布の自動化を進め、中国勢(雷沃・東風)は新興国で、農機を半額に近い価格で売る。See & Spray の効果は農薬価格が下がれば小さくなる。
PER 35 倍は、2014〜2025 年の中央値 18 倍の約 2 倍で、成熟すれば 12 倍前後に戻る。ならした利益 約 70 億ドル × 20 倍 = 約 1,400 億ドルで、今の時価総額より 2 割低い。自社株買いは割高な株価では価値を壊し、谷で絞ることで、買い手の質も落ちる。景気の山を 2 度連続で超える利益は、10 年のうちに来るとは限らない、というのが慎重な見方である。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は技術と入れ替え需要の説得力があるが、今の時価総額はそれを織り込み済みで、底の年の利益に PER 35 倍を払っている。慎重な見方は倍率の回帰と、谷が長引く可能性、関税、修理する権利で強い。確率は楽観 9%・やや楽観 22%・中立 38%・やや悲観 21%・悲観 10% とした。割り引いた価値で今の時価総額を上回るのは楽観の筋書きだけで、確率の加重平均を割り引くと今の値段を 5 割半ばほど下回るため、結論は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 410.08 ドル1,114 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 149.10 ドル405 億ドル)。 今の値に割り戻すと 280.53 ドル762 億ドル、今との差 −56.4%、 期待の年率 −1.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 762.61 ドル2,072 億ドル | 228.19 ドル620 億ドル | +53.9% | +4.4% | 89.17 ドル242 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 557.75 ドル1,515 億ドル | 191.39 ドル520 億ドル | +16.4% | +1.5% | 164.81 ドル448 億ドル |
| 中立 | 38% | 397.83 ドル1,081 億ドル | 149.06 ドル405 億ドル | −15.0% | −1.6% | 207.82 ドル565 億ドル |
| やや悲観 | 21% | 275.27 ドル748 億ドル | 110.42 ドル300 億ドル | −40.1% | −5.0% | 80.99 ドル220 億ドル |
| 悲観 | 10% | 97.57 ドル265 億ドル | 66.25 ドル180 億ドル | −74.5% | −12.8% | 16.38 ドル45 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 410.08 ドル1,114 億ドル | 149.10 ドル405 億ドル | −13.1% | −1.4% | 559.18 ドル1,519 億ドル |
今の株価時価総額 643.62 ドル1,749 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 楽観:精密農業の定期収入が 3 割に近づき、利益率が構造的に切り上がって世界の農機の標準になる 利益 140 億ドル · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 762.61 ドル2,072 億ドル
2035 年(会計)、大型農機の市場は 2025 年比 年 +4.1% の 720 億ドル(食料需要の増加、機械の大型化と自動化、入れ替えの短縮)、ディアのシェアは精密農業の優位で 38% へ上がる。価格は 10 年で 1.41 倍。精密農業の定期収入(サブスクリプション・散布の成果課金)が売上の 1 割を超え、粗利益率が高いため、大型農機の営業利益率は 24%。小型農機は 900 億ドル、シェア 18.5%、建設機械は 1,600 億ドル、シェア 10.8%。営業利益は約 190 億ドル、純利益は約 140 億ドル(2025 年の 2.8 倍)。成長がまだ残るため PER 14.8 倍(利益ベースの正当化 PER の上限 16.5 倍の 9.0 割。g 4.0%・RONIC 15.5%・moat=normal・k 8.50%)。自社株買いで株数は減り、還元は純利益の約 65%。修理する権利の和解後も、技術のパッケージ全体の優位は保たれる。
- 生産・精密農業:数量 720(世界の大型農機市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 53.6%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 386 億ドル・営業利益 93 億ドル。市場 720 億ドル × シェア 38.0% × 価格 1.41 倍
- 小型農機・芝:数量 900(小型・中型農機と芝・庭の機械市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 26.1%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 235 億ドル・営業利益 42 億ドル。市場 900 億ドル × シェア 18.5% × 価格 1.41 倍
- 建設・林業:数量 1,600(中国を除く建設・道路・林業機械の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 15.2%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 244 億ドル・営業利益 33 億ドル。市場 1,600 億ドル × シェア 10.8% × 価格 1.41 倍
- 金融子会社:数量 1,200(融資・リース残高(億ドル))× 価格 0.11(収益率(利回り))→ 売上 132 億ドル・営業利益 22 億ドル。融資・リース残高 1200 億ドル × 利回り 11.0%
倍率:正当化 PER 16.5 倍(g 4.0%・RONIC 15.5%=k 8.50%+残る割合×(事業の ROE 22.5%−k)・moat=normal)に対して 14.8 倍(上限の 9.0 割)に置いた。精密農業の定期収入が積み上がり利益率が構造的に切り上がる最良の筋書き。農機の循環があるので上限の 9.0 割にとどめた。
確率:自動化・See & Spray・サブスクリプションが畑の標準になり、ディアが堀を広げる展開。CAT の発電のような急成長の需要は無く、10 年続く構造の変化に賭ける必要があるため 1 割弱。
やや楽観 22% やや楽観:技術の優位でシェアと利益率を守り、農機の景気が山谷をならすと利益が 2.3 倍 利益 112 億ドル · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 557.75 ドル1,515 億ドル
2035 年、大型農機の市場は 660 億ドル(年 +3.2%)、シェアは 36.5% と小幅に上がる。価格は 1.41 倍。大型農機の営業利益率は 21.5%(2023 年の山 26% には届かず、2010 年代の 10%台より高い)。小型農機は 840 億ドル、シェア 17.9%、建設機械は 1,510 億ドル、シェア 10.3%。営業利益は約 155 億ドル、純利益は約 114 億ドル(2025 年の 2.3 倍)。PER 13.5 倍(利益ベースの正当化 PER の上限 15.9 倍の 8.5 割。g 4.0%・RONIC 14.1%・moat=normal・k 8.50%)。借り換えで利払いは 10 億ドル弱増える。自社株買いを続け、株数は 10 年で 2 割ほど減る。
- 生産・精密農業:数量 660(世界の大型農機市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 51.5%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 340 億ドル・営業利益 73 億ドル。市場 660 億ドル × シェア 36.5% × 価格 1.41 倍
- 小型農機・芝:数量 840(小型・中型農機と芝・庭の機械市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 25.2%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 212 億ドル・営業利益 36 億ドル。市場 840 億ドル × シェア 17.9% × 価格 1.41 倍
- 建設・林業:数量 1,510(中国を除く建設・道路・林業機械の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 14.5%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 219 億ドル・営業利益 27 億ドル。市場 1,510 億ドル × シェア 10.3% × 価格 1.41 倍
- 金融子会社:数量 1,100(融資・リース残高(億ドル))× 価格 0.11(収益率(利回り))→ 売上 121 億ドル・営業利益 19 億ドル。融資・リース残高 1100 億ドル × 利回り 11.0%
倍率:正当化 PER 15.9 倍(g 4.0%・RONIC 14.1%=k 8.50%+残る割合×(事業の ROE 19.6%−k)・moat=normal)に対して 13.5 倍(上限の 8.5 割)に置いた。技術の優位でシェアと利益率を守り、回復が着実に進む筋書き。
確率:強気の見方の落としどころ。精密農業がシェアを守る壁になるが、価格を上げ続けるほどの独占力は無い、という置き方。
中立 38% 中立:大型農機は山谷をならして名目成長、シェアは 35% を保ち、営業利益率は 19% 前後 利益 90 億ドル · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 397.83 ドル1,081 億ドル
2035 年、大型農機の市場は 2025 年比 年 +2.3% の 600 億ドル(景気の山谷をならした水準)、ディアのシェアは 35% で物価並みの価格 1.41 倍。小型農機は 780 億ドル(年 +2.3%)、シェア 17.6%、建設機械は 1,420 億ドル(年 +2.1%)、シェア 10.0%。金融子会社の残高は 1,000 億ドル(名目 年 +4.9%)。全社の売上は約 800 億ドルで、2025 年の 1.8 倍(年 +6.2%)。大型農機の営業利益率は 19%(谷の 11〜12% と山の 25% の中間)、全社の営業利益は約 127 億ドル、借り換えの利払い増(約 10 億ドル)を引いて純利益は約 92 億ドル(2025 年の 1.8 倍)。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 15.0 倍(g 4.0%・RONIC 12.3%・k 8.50%)の 8.0 割で PER 12.0 倍、時価総額は 1,081 億ドル。
- 生産・精密農業:数量 600(世界の大型農機市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 49.4%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 296 億ドル・営業利益 56 億ドル。市場 600 億ドル × シェア 35.0% × 価格 1.41 倍
- 小型農機・芝:数量 780(小型・中型農機と芝・庭の機械市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 24.8%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 194 億ドル・営業利益 31 億ドル。市場 780 億ドル × シェア 17.6% × 価格 1.41 倍
- 建設・林業:数量 1,420(中国を除く建設・道路・林業機械の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 14.1%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 200 億ドル・営業利益 23 億ドル。市場 1,420 億ドル × シェア 10.0% × 価格 1.41 倍
- 金融子会社:数量 1,000(融資・リース残高(億ドル))× 価格 0.11(収益率(利回り))→ 売上 110 億ドル・営業利益 16 億ドル。融資・リース残高 1000 億ドル × 利回り 11.0%
倍率:正当化 PER 15.0 倍(g 4.0%・RONIC 12.3%=k 8.50%+残る割合×(事業の ROE 16.2%−k)・moat=normal)に対して 12.0 倍(上限の 8.0 割)に置いた。販売・整備網・ブランド・精密農業の更新率(7〜9 割超)という堀は深く、10 年の利益は山谷をならした値だが、農機の循環・関税・修理する権利の和解・金融子会社の借金があるので上限の 8.0 割。
確率:業界ノートの中立(農機は数量 年 +2%、価格 年 +3%)に、精密農業の技術による利益率の小幅な切り上がりを足した。2023 年の山は例外で、10 年の平均は山と谷の中間という置き方。
やや悲観 21% やや悲観:精密農業の差が縮み、CNH・AGCO・中国勢にシェアを削られて利益率は 14% 台 利益 61 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 275.27 ドル748 億ドル
2035 年、大型農機の市場は 540 億ドル(年 +1.2%)と成熟、ディアのシェアは 33.5% に下がり、価格は物価をやや下回る(1.38 倍)。CNH・AGCO のほか、中国の農機(雷沃・東風)が新興国で、また自動化の分野でも追う。大型農機の営業利益率は 15%(10 年の谷と山の下寄り)。小型農機は 700 億ドル、シェア 16.5%、建設機械は 1,300 億ドル、シェア 9.3%。営業利益は約 86 億ドル、借り換えの利払い増を引いて純利益は約 60 億ドル(2025 年の 1.2 倍)。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 14.1 倍(g 4.0%・RONIC 10.9%・k 8.50%)の 8.7 割で PER 12.3 倍、時価総額は 748 億ドル。自社株買いは抑えられ、還元は純利益の約 5 割。
- 生産・精密農業:数量 540(世界の大型農機市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 46.2%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 250 億ドル・営業利益 38 億ドル。市場 540 億ドル × シェア 33.5% × 価格 1.38 倍
- 小型農機・芝:数量 700(小型・中型農機と芝・庭の機械市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 22.8%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 159 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場 700 億ドル × シェア 16.5% × 価格 1.38 倍
- 建設・林業:数量 1,300(中国を除く建設・道路・林業機械の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 12.8%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 167 億ドル・営業利益 15 億ドル。市場 1,300 億ドル × シェア 9.3% × 価格 1.38 倍
- 金融子会社:数量 900(融資・リース残高(億ドル))× 価格 0.11(収益率(利回り))→ 売上 97 億ドル・営業利益 13 億ドル。融資・リース残高 900 億ドル × 利回り 10.8%
倍率:正当化 PER 14.1 倍(g 4.0%・RONIC 10.9%=k 8.50%+残る割合×(事業の ROE 13.3%−k)・moat=normal)に対して 12.3 倍(上限の 8.7 割)に置いた。精密農業の差が縮み CNH・AGCO・中国勢にシェアを削られる筋書きなので、上限の 8.7 割。
確率:修理する権利の和解で独立修理店が部品・診断を使えるようになり、サービスの囲い込みが弱まる。ディアの技術の差が縮み、価格の上がり方が物価を下回る展開。
悲観 10% 悲観:構造的に負ける(農家の収益悪化・技術の標準化・自動運転の新規参入)うえに不況が重なる 利益 27 億ドル · PER 9.8 倍 · 株価時価総額 97.57 ドル265 億ドル
2035 年、世界の農家の収益が長く伸びず、大型農機の市場は 420 億ドルと 2025 年より 1 割ほど小さい。精密農業の技術が汎用化し(自動操舵・散布の自動化が競合や新規参入でも標準になる)、ディアのシェアは 30% に下がり、価格の上がり方は 1.30 倍にとどまる。建設機械は中国勢の値引きと北米のインフラ需要の一巡で 1,050 億ドルへ縮み、シェアは 8.5%。営業利益率は大型農機 11%、小型農機 10%、建設機械 6%。営業利益は約 44 億ドル、純利益は約 27 億ドル(2025 年の約半分)。自己資本は 272 億ドル、ROE は約 10%。倍率は利益ベースの正当化 PER の上限 12.6 倍(g 4.0%・RONIC 9.2%・k 8.50%)の 7.8 割で PER 9.8 倍、時価総額は 265 億ドル。金融子会社は貸倒れが増え、利益が 7 億ドル弱に縮む。自社株買いは止まり、配当の維持が焦点になる。 10 年(2026〜2035 年)の純利益の累計は約 228 億ドル。2026 年 45 億ドル・2027 年 39 億ドルのあと、2028 年の不況の底で 11 億ドルまで落ち、そこから 2035 年の 27 億ドルへ戻る道筋で足した(減損・売却益は見込まない)。
- 生産・精密農業:数量 420(世界の大型農機市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 39.0%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 164 億ドル・営業利益 18 億ドル。市場 420 億ドル × シェア 30.0% × 価格 1.30 倍
- 小型農機・芝:数量 600(小型・中型農機と芝・庭の機械市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 19.5%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 117 億ドル・営業利益 12 億ドル。市場 600 億ドル × シェア 15.0% × 価格 1.30 倍
- 建設・林業:数量 1,050(中国を除く建設・道路・林業機械の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 11.1%(ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 116 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 1,050 億ドル × シェア 8.5% × 価格 1.30 倍
- 金融子会社:数量 750(融資・リース残高(億ドル))× 価格 0.10(収益率(利回り))→ 売上 75 億ドル・営業利益 7 億ドル。融資・リース残高 750 億ドル × 利回り 10.0%
倍率:正当化 PER 12.6 倍(g 4.0%・RONIC 9.2%=k 8.50%+残る割合×(事業の ROE 9.9%−k)・moat=normal)に対して 9.8 倍(上限の 7.8 割)に置いた。構造的に負けたうえに不況が重なる筋書き。成長の弱さ・優良さの崩れは g と ROE に入れ、式の外では引かない。EV でも見た:(時価総額 + 純有利子負債 546 億ドル)÷ 営業利益 = 24 倍。純有利子負債の大半は金融子会社の貸出債権の資金調達で、機械事業の純負債は小さい(期首ほぼ 0)ので、事業の価値は PER で見てよい。
確率:ディアが農機の技術の優位を失い、リーマン級の不況も重なって、優良な循環株ではなくなる筋書き。10 年で起きうる構造の変化に 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
生産・精密農業
大型トラクター・コンバイン・散布機・播種機と、精密農業の技術(自動操舵・See & Spray・サブスクリプション)。大型農機の中核。
| 数量世界の大型農機市場(億ドル、2025 年価格) | 価格ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 480 | 34.6% | 166 | 26 |
| 10 年後 中立 | 600 | 49.4% | 296 | 56 |
取り方:大型農機(高馬力トラクター・コンバイン・散布機・播種機・精密農業)の世界市場を約 480 億ドル(2025 年価格・推定、2023 年の山からほぼ 4 割下がった谷の水準)、ディアのシェアを約 34.6% と置いた。売上は会計 2025 年の部門売上 約 166 億ドル(9 か月 125 億ドルと 4Q から推定)、営業利益は約 26 億ドル(営業利益率 約 15.7%)。売上 = 市場 × シェア × 価格(価格指数は 2025 年 = 1。中立で 10 年 1.41 倍)。競合と照らすと、北米の大型トラクターとコンバインはディアが半分前後を持つ首位で、CNH(ケース IH・ニューホランド)・AGCO(フェント・マッセイ)・クボタ・クラース・中国勢が続く。世界全体ではブラジル・欧州で競合が厚く、シェアは 3 割台半ばと推定した(一次資料が無いので推定)。
小型農機・芝
中小型トラクター・コンパクトユーティリティ・芝刈機・干し草機械・畜産向け機械。
| 数量小型・中型農機と芝・庭の機械市場(億ドル、2025 年価格) | 価格ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 620 | 17.3% | 107 | 16 |
| 10 年後 中立 | 780 | 24.8% | 194 | 31 |
取り方:小型・中型トラクター、コンパクトユーティリティ、芝・庭の機械、干し草・畜産機械の市場を約 620 億ドル(推定)、ディアのシェアを約 17.3% と置いた。売上は会計 2025 年に約 107 億ドル(9 か月 78 億ドルと 4Q から推定)、営業利益は約 16 億ドル(約 15%)。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合はクボタ・マヒンドラ・CNH・AGCO・ヤンマー・中国勢で、世界の小型トラクターはインドと中国の台数が圧倒的に多く、ディアは北米・欧州の中高級に強い。ディアの対象市場はインド・中国の低価格帯を除いた範囲で置いている。
建設・林業
ショベル・ローダー・ドーザー・小型建設機械・林業機械・道路舗装機械(ヴィルトゲン)。
| 数量中国を除く建設・道路・林業機械の市場(億ドル、2025 年価格) | 価格ディアのシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,150 | 9.8% | 113 | 11 |
| 10 年後 中立 | 1,420 | 14.1% | 200 | 23 |
取り方:建設・林業・道路機械の市場を、中国を除いて約 1,150 億ドル(推定)と置いた(キャタピラーの注記の世界市場 1,300 億ドルより狭いのは、ディアが北米・欧州中心で中国・新興国の低価格帯にほぼ出ていないため)。ディアのシェアは約 9.8%。売上は会計 2025 年に約 113 億ドル(9 か月 80 億ドルと 4Q から推定)、営業利益は約 11 億ドル(約 10%)。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合はキャタピラー・コマツ・ボルボ・日立建機・JCB・CNH(ケース)で、ヴィルトゲン(道路舗装)と林業機械は首位級、ショベルは北米 2〜3 位級。
金融子会社
ディーラーと顧客への融資・リース(ジョン・ディア・ファイナンシャル)と周辺収益。
| 数量融資・リース残高(億ドル) | 価格収益率(利回り) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 620 | 0.11 | 70 | 11 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.11 | 110 | 16 |
取り方:ジョン・ディア・ファイナンシャルの融資・リース残高を約 620 億ドル(推定)、収益率(周辺収益を含む)を約 11.3% と置いた。売上 約 70 億ドル、営業利益 約 10.5 億ドル(純利益は約 8 億ドル)。借入は金融の事業の仕入れなので、金利の変化は利ざやに含め、純利益の調整には入れない(brief の利払いの変化は機械事業側の借入分)。
リスクと懸念
大型農機の谷が長引く
穀物価格の低迷・投入費用の高止まり・金利 5% で、農家の収益が戻らなければ入れ替えが先送りされる。2013〜2016 年は売上が 3 割減り回復に 2 年以上かかった。会社は 2026 年が底と言うが、2027 年の早期予約は 1 桁台半ばの増にとどまり、強い反発は見込めない。
関税の純負担の増加
直接の関税費用は 2026 年に約 11 億ドル、払い戻し(9 か月で 3.8 億ドル)を除くと約 7.5 億ドル。2027 年は払い戻しが消えて約 10 億ドルと、営業利益率を約 3 ポイント押し下げる。鉄鋼・アルミの追加関税や価格転嫁の遅れが重なれば、さらに増える。
修理する権利と精密農業の囲い込みの弱まり
2026 年 7 月の FTC・5 州との和解で、10 年間、診断ソフト・マニュアル・部品を農家と独立修理店にも提供する義務を負った。サービス・部品の収益と、精密農業のデータの囲い込みが弱まる可能性がある。別の農家の集団訴訟は 9,900 万ドルで和解済み。
競合の技術の追い上げと中国勢
CNH・AGCO(トリンブルとの合弁)・クラースが自動操舵と散布の自動化を進め、中国の農機メーカー(雷沃・東風)が新興国で低価格で攻める。ディアの技術の差が 3〜5 年で縮めば、価格を決める力が下がり、PPA の営業利益率の構造的な切り上がりが失われる。
谷で買わず山で買う自社株買い
2023 年の山で 72 億ドルを買い、2026 年の谷では 9 か月で 7 億ドルに絞った。株価が割高な局面で買った分は、残る株主の価値を薄める。今の PER 35 倍の水準で買い続ければ同じ失敗になる。
金融子会社の貸倒れと金利
連結の純負債は 546 億ドルで、ほぼ金融子会社の貸出の資金調達。農家の収益が悪化すれば貸倒れ引当てが増え、谷では自己資本を削る。借り換えで機械事業の利払いは 10 年で約 10 億ドル増える。
建設・林業と小型農機の循環
小型農機(+15%)と建設・林業(+20%)は 2026 年に伸びて全社の利益を下支えしているが、北米の住宅・インフラ投資・金利の反動を受ける。大型農機の谷を覆い隠している分、大型農機の回復が遅れると下支えも弱まる。
今後の分かれ目
- 2027 年の大型農機の受注が早期予約を超えて前年比 2 割以上の増になり、PPA の営業利益率が 15% を超える
- 2026 年が谷という見方が確認され、楽観・やや楽観の確率を上げる。ただし倍率の上限(正当化 PER 15〜16 倍)は変わらない。
- 穀物価格がさらに下がり、農家の所得見通しが 2027 年も悪化する
- 谷が 2028 年まで延び、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- See & Spray の対象面積と Precision Essentials の更新率(7 割)が上がり、定期収入が売上の 1 割に近づく
- 利益率の構造的な切り上がりが確認され、10 年の楽観・やや楽観の確率を上げる。
- CNH・AGCO・中国勢が自動操舵・散布の自動化で同等の技術を出し、大型農機の価格が下がる
- 技術の差の縮みで、10 年のやや悲観・悲観の確率を上げ、PPA のシェアを 3〜5 ポイント下げる。
- 修理する権利の和解後、サービス・部品の収益の伸びが落ちる
- 囲い込みの弱まりが確認され、中立の利益率を 1〜2 ポイント下げる。
- 株価が下がり、自社株買いを PER 12 倍以下の水準で続けられるようになる
- 1 株の価値を守る買いになり、還元の質が上がる。
見ておくもの
- 米加の大型農機の販売の前年比(2026 年の −15〜20%)と 2027 年モデルの早期予約
- PPA の営業利益率(2026 年 11〜12% の見通し)の戻り方
- 穀物価格(トウモロコシ・大豆)と農家の純所得の見通し
- 関税の純負担(2027 年 約 10 億ドル)と価格転嫁
- See & Spray の対象面積と Precision Essentials の更新率
- サービス・部品の収益の伸び(修理する権利の和解の影響)
- 金融子会社の貸倒れ率と、自社株買いの金額・価格
倍率と資本コストの決め方
今の PER 35 倍や時価総額を見る前に、4 つの事業ごとに市場(2025 年価格)× シェア × 物価(10 年 1.41 倍)で売上を積み、利益率を置いた。倍率は利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)(k 8.5%・g は上限の 4%・RONIC = k + 残る割合 1/2(moat=normal)×(ROE 10〜23% − k))の上限に対して置いた:10 年の中立は上限 15.0 倍の 8 割の 12.0 倍。k は農機の循環の深さ(cycle +0.75%)と販売網・精密農業による値段の守り(pricing −0.25%)で quality を +0.5% とし、金融子会社の借入は貸付債権が裏付けなので debt は 0 とした。循環は悲観の確率と谷の利益で表し、倍率の割り引きはしない。悲観側は谷の PBR や過去の谷の倍率を根拠にせず、上限の内側(稼ぐ力)で置いた。結果として今の時価総額を上回るのは楽観だけで、加重平均では割高が出るが、数字を調整して帳尻を合わせてはいない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.5%。農機の循環を quality の cycle で、販売網と精密農業の強さを pricing で見た。個別のリスク(関税・修理する権利の和解・金融子会社の貸倒れ)は k に足さず、筋書きと確率で表した。存続を疑う要素はなく上乗せは 0。