結論
ハンティントン・インガルス(HII)は、米国で唯一の原子力空母の造船所であるニューポートニューズ造船(空母・潜水艦)、ミシシッピ州パスカグーラのインガルス造船(強襲揚陸艦・駆逐艦・沿岸警備隊の大型カッター)、防衛 IT と無人システムのミッション・テクノロジーズ(MT)の 3 部門を持つ。2025 年は売上 125 億ドル(前年比 +8%)、営業利益 6.6 億ドル(利益率 5.3%)、純利益 6.1 億ドル、FCF 8.0 億ドル。2026 年は造船売上の見通しが 102〜104 億ドル、造船の営業利益率が 6.0〜6.5% へ引き上げられ、受注残は 6 月末で 573 億ドル(売上の約 4.6 年分)。7 月にバージニア級ブロック VI とコロンビア級の契約変更 766 億ドルが決まり、潜水艦の仕事は 2038 年まで見える。
売上は艦種ごとに「海軍の建造予算(市場)× HII の取り分 × 価格」で積み上げた。2025 年の市場は空母 約 45 億ドル・潜水艦 約 180 億ドル・水上艦 約 160 億ドル・防衛 IT と電子 約 2,000 億ドル(いずれも推定)で、HII の取り分は空母 約 88%・潜水艦 約 14%・水上艦 約 19%・MT 約 1.5%。10 年後の中立の売上は 230 億ドル、営業利益率 6.4%、純利益 12.7 億ドル(今の約 2.1 倍)。
バリュー投資の観点では、空母は競合のいない独占、潜水艦は電気ボート社との 2 社で、政府が唯一の顧客という堀は広い。一方で、人手不足と固定価格契約の損失が利益率を 5% 台に抑えてきた。今の時価総額 107 億ドルは GAAP の純利益の約 18 倍で、純利益の約 25% は現金を生まない年金の非営業収益と、質は高くない。k 8% と利益ベースの正当化 PER(g 4%・RONIC 約 10%・上限 14.9 倍)の 8.5 割の 12.7 倍では、10 年の中立で時価総額は今の約 1.5 倍(還元を含めて約 1.8 倍)で、期待の年率は約 5% と資本コストに届かず、総合はやや割高になる。k が 1 ポイント上がれば倍率の上限は 2 割弱縮む。確率は 10 年で悲観・やや悲観を 41% と厚くした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後も存在し、今より強いかという問いに「はい」と答えやすい会社である。米国で原子力空母を造れる唯一の造船所、潜水艦は 2 社、顧客は米政府で、2038 年までの潜水艦の契約と 573 億ドルの受注残がある。堀は施設・許認可・熟練工という「作れない資産」で、広がりこそしないが狭まりにくい。
問題はオーナー利益。純利益 6.1 億ドルの約 25% は年金の非営業収益で、現金を生まない。しかも造船は固定価格の長期契約が多く、見積りを誤ると利益が削られる(CVN 80/81 の遅れ・ステニスの燃料交換)。営業利益率が 5% 台では、費用が数%動くだけで利益が 2〜3 割ぶれる。FCF は 2024 年 0.4 億ドル・2025 年 8.0 億ドルと振れが大きい。
経営は資本を守る型で、買収で価値を壊す心配は小さい一方、利益率を上げる力の証拠はまだ薄い。人手の確保(採用と離職の改善)は進んでいるが、賃上げ後も作業量が増えて初めて利益率が上がる。安全域:利益ベースの式(k 8%)の中立 12.7 倍(上限の 8.5 割)で測ると、今の値段より 1 割強低い価値で、安全域は無い。HII の実力(営業利益率 6〜7%・ROE 12%)に対しても高めで、k が 1 ポイント上がると上限は 2 割弱縮む。予測しやすい受注残と、予測しにくい執行力が混ざった事業なので、確信度は中程度で、悲観の確率を厚くした。予測しやすい受注残と、予測しにくい執行力が混ざった事業なので、確信度は中程度で、悲観の確率を厚くした。
何で稼ぐ会社か
空母(新造・原子炉燃料交換・艦隊整備、2025 年売上 39.7 億ドル)は、ニューポートニューズ造船が米国で唯一造るフォード級空母(CVN 79 ケネディは 2027 年引き渡し、CVN 80 エンタープライズは 64% 組み上げ、CVN 81 は 2026 年に起工予定)と、原子炉の燃料交換を伴う大規模オーバーホール(RCOH)、艦隊の整備からなる。2025 年は空母 33.9 億ドルとその他 5.8 億ドルで、この 2 つを合わせて空母の事業とした。2026 年には燃料交換・複雑整備の専用施設を開いた。
潜水艦(2025 年売上 25.4 億ドル)は、バージニア級攻撃型原潜(ニューポートニューズは 6 隻の引き渡し造船所)とコロンビア級弾道ミサイル原潜(1 隻あたり 6 つのモジュール)を電気ボート社と分担して造る。2026 年 7 月の契約変更は、バージニア級 9 隻(と 10 隻目の材料)421 億ドルとコロンビア級 5 隻 295 億ドルの計 766 億ドルで、ニューポートニューズ分は約 250 億ドル。
水上艦(インガルス、2025 年売上 30.8 億ドル)は、強襲揚陸艦(14.6 億ドル)と駆逐艦・国家安全保障カッター(16.0 億ドル)。2026 年 6 月は 13 隻を建造中(駆逐艦 6・LPD 3・LHA 2 ほか)。2025 年 12 月に海軍が国家安全保障カッターをもとにした新型フリゲート FF(X) の 1 番艦をインガルスで造ると決め、2026 年 4 月に 2.8 億ドルの先行契約を受けた。
ミッション・テクノロジーズ(2025 年売上 30.4 億ドル、営業利益率 5.0%)は、2021 年に 16.5 億ドルで買ったアリオンを核にした防衛 IT・サイバー・電子戦・訓練・無人システム(無人水上艇・無人潜水機)の部門で、2026 年は売上 30〜32 億ドル・利益率 約 5% の見通し。顧客は米海軍・国防総省で、艦艇の建造とは別の動きをする。
優良さと弱いところ
堀の中身は 3 つ。第一に、米国で原子力空母を造れるのは HII だけで、潜水艦も電気ボート社との 2 社。施設(ニューポートニューズのドライドックと重量物クレーン)、原子力の許認可、熟練工は、新規に作れば何年もかかる。第二に、受注残 573 億ドルと潜水艦の長期契約で、今後 4〜5 年の売上は大きく動かない。第三に、顧客は米政府で、国防上、造船所をつぶしにくい。この「つぶれにくい」ことが堀の本体で、利益を守る力ではない。
弱い点は利益率と執行力。造船の営業利益率は 2024 年 5.2%・2025 年 5.9%・2026 年見通し 6.0〜6.5% と、防衛の主契約者(10〜12%)の約半分。空母は CVN 80 の引き渡しが 2030 年 7 月から 2031 年 3 月へ、CVN 81 が 2032 年 2 月から 2034 年 2 月へ延び(大型機器の到着遅れと最終組み立て場所の占有)、2025 年の決算では空母とバージニア級に不利な累積修正が出た。ステニスの燃料交換は 1 年超遅れ数億ドルの追加費用との二次の報道があるが、一次の出典は確認できていない。
人手は改善中で、2025 年に造船工 6,600 人超を採用して離職は前年比 15〜18% 改善、2026 年上期にも 3,500 人超、作業量(スループット)は 2025 年 +14%・2026 年上期 +12%。ただし賃上げ(インガルスの労働協約は 2026 年 3 月に更新)が利益率を抑える。年金の非営業収益(2026 年見通し 2.1 億ドル)は税引き前利益の約 25% を占め、現金を生まない会計上の利益で、利益の質を下げる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米海軍の造船は、需要が過去最大級に膨らむ一方、供給(造船所の人手・部品・設備)が追いつかない構造にある。2027 年度の造船要求は 658 億ドル(基本 602 億ドル+調整予算 56 億ドル、1962 年以来の高さ)で、戦闘艦 18 隻と補助艦 16 隻、うちバージニア級 2 隻・コロンビア級 1 隻・アーレイ・バーク級 1 隻・サンアントニオ級 1 隻・アメリカ級 1 隻・FF(X) 1 隻、さらに戦艦 BB(X) の設計が入る。ただし議会が決めるもので、調整予算は別の法案。2011〜2015 年の予算管理法のように、予算が凍結されれば調達は数年止まる。
競争は少ない。空母は HII のみ、潜水艦は HII と GD の電気ボート社、駆逐艦は HII と GD のバス鉄工所、補助艦は GD の NASSCO など。FF(X) は 1 番艦と 2 番艦が随意契約、3 番艦以降は競争(2027 年度予算の購入予定は 2027 年度 1 隻・2029 年度 1 隻・2031 年度 2 隻)で、競争が入るとインガルスのシェアが動く。競合よりも、顧客である海軍が造船会社の遅れと費用に厳しくなる点が最大の圧力。
市場の見方:空母は 10 年で実質 +18%(CVN 82 以降の購入と燃料交換)、潜水艦は 10 年で +45%(バージニア級 年 2 隻・コロンビア級 年 1 隻と潜水艦の工業基盤)、水上艦は +42%(駆逐艦・揚陸艦・FF(X))、防衛 IT と電子(MT)は +22%。供給の制約があるので、予算が増えても売上が追いつく速さは造船所の人手で決まる。
資本政策と M&A
資本配分は堅実だが守りが中心。2025 年の配当は 2.1 億ドル(純利益の約 35%)、自社株買いは 0(2024 年は 1.6 億ドル)。株数は 3,940 万株前後でほとんど変わらない。設備投資は売上の 4〜5%(2025 年 4.0 億ドル、減価償却は約 3.3 億ドル)で、造船所の増産に回す。長期債は 27 億ドルで、2025 年末の現金 7.7 億ドルを引いた純負債は約 19 億ドル。6 月末は運転資本の増加で現金が 0.1 億ドルまで減り、純負債は約 27 億ドル(4〜6 月の FCF は −1.5 億ドル)。契約の前払い・インセンティブで年内に約 10 億ドルの回収が見込まれ、通期の FCF は 5〜6 億ドルを維持している。
M&A は 2021 年のアリオン買収(16.5 億ドル)が最大で、MT の収益性はまだ低い(利益率 5%)。今後の大型買収は前提に置かない(造船所どうしの統合は独占の問題で難しい)。MT は無人システムへの投資で利益率が当面 4〜5% にとどまるため、売却・分離は選択肢になりうるが、見通しには入れていない。フリー・キャッシュフローが戻れば還元は増えうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注残 573 億ドル(売上の約 4.6 年分)と、7 月のバージニア級・コロンビア級 766 億ドルの契約で、2038 年までの潜水艦の仕事が見える。契約変更にはインセンティブがあり、会見では質問者が挙げた造船の長期の利益率 9〜10% を、経営陣が新しい潜水艦契約の条件と矛盾しないと答えた(逐語録は自動書き起こし)。2027 年度の造船要求 658 億ドルは過去最高水準で、戦艦 BB(X) の設計と FF(X) 4 隻が加わる。FF(X) の 1 番艦はインガルスが随意契約で造り、2 番艦も随意の予定で、新しい仕事が競争なしで入る。
実行力は戻っている。作業量は 2025 年 +14%・2026 年上期 +12%(通期目標 +15%)、採用は 2025 年 6,600 人超・2026 年上期 3,500 人超、離職は 15〜18% 改善した。造船売上の見通しは 5 月の 97〜99 億ドルから 102〜104 億ドルへ上がり、営業利益率の下限も上がった。外注(分散造船)は 2025 年に倍増し 2026 年は +30% の計画で、人手の制約が緩む。
この 3 点が重なれば、造船の営業利益率は 6〜7% 台から 8% 前後へ上がり、売上は年 6〜8% で伸びて 2035 年に 292 億ドル、純利益は 19.1 億ドル(今の約 3 倍)。中立でも売上 230 億ドル・純利益 12.7 億ドルと今の約 2 倍になり、k 8% の利益ベースの式で PER は約 12.7 倍(上限 15 倍の 8.5 割)。米国で空母を造れる唯一の会社なので、他社へ流れる心配がない。
慎重な見方
全社の営業利益率は 2021〜2025 年に 4〜5% 台で、防衛の主契約者の半分。固定価格の長期契約は見積りの誤りが利益を直撃する。CVN 80 は 2031 年 3 月へ、CVN 81 は 2034 年 2 月へ延び、2025 年の決算では空母とバージニア級に不利な累積修正が出た。ステニスの燃料交換は遅れと追加費用が報じられている(一次の出典は未確認)。766 億ドルの潜水艦契約は見積りどおり造れる前提で、コロンビア級は 1 番艦が 12〜16 か月遅れている(海軍の説明)。
人手は採用が進んでも、賃上げと訓練の費用が先に出る。2026 年 4〜6 月の FCF は −1.5 億ドル、上期 −6.1 億ドルで、年内の回収 10 億ドルが遅れれば通期の FCF 見通し 5〜6 億ドルを外す。純利益の約 25% は年金の非営業収益で、現金を生まない。MT は 2026 年 4〜6 月に売上 −3.9%、無人システムへの投資で利益率は 4〜5%。
今の時価総額 107 億ドルは、2025 年の純利益の約 18 倍で、利益ベースの上限(15 倍前後)を上回る。式の PER の上限は k に敏感で、k が 1 ポイント上がれば 12 倍前後に縮む。予算が凍結されたり、競争のある FF(X) 3 番艦以降でシェアを落としたりすれば、利益は 10 年後も今の 6〜8 億ドル台にとどまり、倍率の高さが負担になる。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分(受注残・独占・潜水艦のインセンティブ)は確かな数字に支えられ、売上は読みやすい。一方、慎重な見方が突く利益率の薄さと執行力は、過去 5 年の実績(全社の営業利益率 4〜5% 台)が裏付けているので軽く見ない。HII は同じ領域の GD・ロッキードより利益率が低く、遅れと損失の実績がある。そこで確率は、10 年で楽観 7%・やや楽観 19%・中立 33%・やや悲観 26%・悲観 15%(悲観側 41%)と、GD(35%)より悲観を厚くした。利益ベースの倍率は k に敏感なので、結論はやや割高で、確信は GD より低い。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 368.62 ドル145 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 93.55 ドル37 億ドル)。 今の値に割り戻すと 234.41 ドル92 億ドル、今との差 −15.9%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 750.38 ドル295 億ドル | 137.66 ドル54 億ドル | +218.5% | +12.3% | 62.16 ドル24 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 547.33 ドル215 億ドル | 112.21 ドル44 億ドル | +136.5% | +9.0% | 125.31 ドル49 億ドル |
| 中立 | 33% | 408.91 ドル161 億ドル | 94.66 ドル37 億ドル | +80.6% | +6.1% | 166.18 ドル65 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 237.91 ドル94 億ドル | 80.66 ドル32 億ドル | +14.2% | +1.3% | 82.83 ドル33 億ドル |
| 悲観 | 15% | 102.04 ドル40 億ドル | 69.21 ドル27 億ドル | −38.6% | −4.8% | 25.69 ドル10 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 368.62 ドル145 億ドル | 93.55 ドル37 億ドル | +65.7% | +5.2% | 462.17 ドル182 億ドル |
今の株価時価総額 278.86 ドル110 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 【楽観】潜水艦の利益率 9%・造船が増産に成功し、2035 年の売上 292 億ドル・純利益 19.1 億ドル 利益 19 億ドル · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 750.38 ドル295 億ドル
2035 年、空母は CVN 80〜83 と燃料交換で市場が実質 +30%、取り分 90%。潜水艦はバージニア級年 2 隻とコロンビア級が最盛期で市場が +75%、取り分 15%、新しい契約条件のもとで利益率 9%。水上艦は駆逐艦・揚陸艦・FF(X) 4 隻で市場 +85%、取り分 20.5%。MT は無人システムで利益率 8%。売上は 292 億ドル(空母 74.2・潜水艦 66.6・水上艦 85.6・MT 65.4)、営業利益率 7.9%、純利益 19.1 億ドル。作業量の増加で人手の制約を越え、固定価格契約の損失も減る。年金の非営業収益は 2.0 億ドルで続く。
- 空母(新造・原子炉燃料交換・艦隊整備):数量 58.5(米海軍の空母の新造・燃料交換・整備の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 126.9%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 74 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 58 億ドル × シェア 90.0% × 価格 1.41 倍
- 潜水艦(バージニア級・コロンビア級):数量 315(米海軍の攻撃型・弾道ミサイル原潜の建造・工業基盤・先行調達の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 21.2%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 67 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 315 億ドル × シェア 15.0% × 価格 1.41 倍
- 水上艦(強襲揚陸艦・駆逐艦・カッター):数量 296(米海軍の水上戦闘艦・揚陸艦・沿岸警備隊カッターの新造市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 28.9%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 86 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 296 億ドル × シェア 20.5% × 価格 1.41 倍
- ミッション・テクノロジーズ(防衛 IT・無人システム):数量 2,900(米政府 IT と防衛電子・通信・指揮統制・無人システムの市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。GD の技術セグメントと同じ定義))× 価格 2.3%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 65 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 2,900 億ドル × シェア 1.6% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 16.3%(この筋書きの純利益 19.1 ÷ 自己資本 117 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 8.0%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 12.2%(堀は普通:空母は唯一の造船所でも、固定価格契約と人手不足で利益は価格に乗りにくい(残る割合 1/2))。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=米海軍の造船・潜水艦の作業量(実質年 1〜1.5%)+ 契約の物価調整 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=16.8 倍に対し、92% の 15.4 倍に置いた(造船要求が通り作業量が伸びる筋書きだが、固定価格契約と人手不足の実績があるので上限の 9 割強)。時価総額=純利益 19.1 億ドル × 15.4 倍=295 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:造船要求 658 億ドルが複数年続き、潜水艦のインセンティブで利益率が 9% へ上がり、FF(X) と BB(X) が加わる展開。HII の実績(利益率 4〜5% 台)から見て楽観は 7% に抑えた(GD は 10%)。
やや楽観 19% 【やや楽観】造船が増産に概ね成功し、2035 年の売上 258 億ドル・純利益 15.4 億ドル 利益 15 億ドル · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 547.33 ドル215 億ドル
空母の市場は実質 +24%、潜水艦 +60%、水上艦 +62%、MT +33%。取り分は空母 89%・潜水艦 14.5%・水上艦 19.8%・MT 1.52%。造船の営業利益率は潜水艦 8%・水上艦 8%・空母 6.5% と、2026 年の 6.0〜6.5% から上がる。売上は 258 億ドル、営業利益率 7.1%、純利益 15.4 億ドル。賃上げ後も作業量が増え、外注の拡大が人手不足を補う。MT の利益率は 7%。空母は CVN 82 以降の購入が決まり、FF(X) は 1・2 番艦を随意契約で受けたあと 3 番艦以降の競争でもシェアをおおむね守る。年金の非営業収益は 1.9 億ドルで、純利益に占める比率は下がっていく。
- 空母(新造・原子炉燃料交換・艦隊整備):数量 55.8(米海軍の空母の新造・燃料交換・整備の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 125.5%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 70 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 56 億ドル × シェア 89.0% × 価格 1.41 倍
- 潜水艦(バージニア級・コロンビア級):数量 288(米海軍の攻撃型・弾道ミサイル原潜の建造・工業基盤・先行調達の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 20.4%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 59 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 288 億ドル × シェア 14.5% × 価格 1.41 倍
- 水上艦(強襲揚陸艦・駆逐艦・カッター):数量 259(米海軍の水上戦闘艦・揚陸艦・沿岸警備隊カッターの新造市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 27.9%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 72 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場 259 億ドル × シェア 19.8% × 価格 1.41 倍
- ミッション・テクノロジーズ(防衛 IT・無人システム):数量 2,660(米政府 IT と防衛電子・通信・指揮統制・無人システムの市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。GD の技術セグメントと同じ定義))× 価格 2.1%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 57 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 2,660 億ドル × シェア 1.5% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 13.8%(この筋書きの純利益 15.4 ÷ 自己資本 112 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 8.0%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 10.9%(堀は普通:空母は唯一の造船所でも、固定価格契約と人手不足で利益は価格に乗りにくい(残る割合 1/2))。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=米海軍の造船・潜水艦の作業量(実質年 1〜1.5%)+ 契約の物価調整 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=15.8 倍に対し、88% の 13.9 倍に置いた(予算は概ね通るが、造船の利益率が上限の想定に届かない筋書き)。時価総額=純利益 15.4 億ドル × 13.9 倍=215 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:予算は増え、造船の利益率が 7〜8% へ改善するが、潜水艦の利益率が 9% には届かない展開。受注残の厚さを根拠に 19% とした。
中立 33% 【中立】受注を売上に変え、造船の利益率は 6〜7%、2035 年の売上 230 億ドル・純利益 12.7 億ドル 利益 13 億ドル · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 408.91 ドル161 億ドル
2035 年の市場は空母が実質 +18%(CVN 82 以降と燃料交換)、潜水艦 +45%(バージニア級年 2 隻・コロンビア級・工業基盤)、水上艦 +42%(駆逐艦・揚陸艦・FF(X))、MT +22%。取り分は空母 88%・潜水艦 14.1%・水上艦 19.0%・MT 1.48%。価格は物価並みの 1.41 倍。売上は 230 億ドル(空母 65.9・潜水艦 51.9・水上艦 60.9・MT 50.9)。営業利益率は空母 6.0%・潜水艦 7.2%・水上艦 7.4%・MT 6.5% で全社 6.4%、純利益 12.7 億ドル(今の約 2.1 倍)。年金の非営業収益は 1.8 億ドルへ緩やかに減る。
- 空母(新造・原子炉燃料交換・艦隊整備):数量 53.1(米海軍の空母の新造・燃料交換・整備の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 124.1%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 66 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 53 億ドル × シェア 88.0% × 価格 1.41 倍
- 潜水艦(バージニア級・コロンビア級):数量 261(米海軍の攻撃型・弾道ミサイル原潜の建造・工業基盤・先行調達の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 19.9%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 52 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場 261 億ドル × シェア 14.1% × 価格 1.41 倍
- 水上艦(強襲揚陸艦・駆逐艦・カッター):数量 227(米海軍の水上戦闘艦・揚陸艦・沿岸警備隊カッターの新造市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 26.8%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 61 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場 227 億ドル × シェア 19.0% × 価格 1.41 倍
- ミッション・テクノロジーズ(防衛 IT・無人システム):数量 2,440(米政府 IT と防衛電子・通信・指揮統制・無人システムの市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。GD の技術セグメントと同じ定義))× 価格 2.1%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 51 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 2,440 億ドル × シェア 1.5% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 11.9%(この筋書きの純利益 12.7 ÷ 自己資本 107 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 8.0%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 9.9%(堀は普通:空母は唯一の造船所でも、固定価格契約と人手不足で利益は価格に乗りにくい(残る割合 1/2))。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=米海軍の造船・潜水艦の作業量(実質年 1〜1.5%)+ 契約の物価調整 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=14.9 倍に対し、85% の 12.7 倍に置いた(受注残が売上に変わるものの利益率が薄く、人手と遅れで損失が出る年がある。1÷k(12.5 倍)の床の少し上に置いた)。時価総額=純利益 12.7 億ドル × 12.7 倍=161 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:受注残と 2038 年までの潜水艦契約で売上は読めるが、利益率の改善は緩やかで、人手不足と固定価格契約の損失が残る展開。33% は同じ領域の GD と同じ水準。
やや悲観 26% 【やや悲観】人手と遅れで利益率が上がらず、2035 年の売上 188 億ドル・純利益 7.9 億ドル 利益 8 億ドル · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 237.91 ドル94 億ドル
予算は増えるが、造船所の作業量が追いつかず、市場の実質伸びは空母 +8%・潜水艦 +28%・水上艦 +22%・MT +8%。取り分は空母 86%・潜水艦 12.5%・水上艦 17.0%・MT 1.38%(競争のある FF(X) 3 番艦以降でシェアを落とす)。利益率は空母 4.5%・潜水艦 5.2%・水上艦 5.5%・MT 5.2%。売上は 188 億ドル(中立の 82%)、営業利益率 4.7%、純利益 7.9 億ドルで、今の 6.1 億ドルから 3 割ほどの増加にとどまる。年金の非営業収益は 1.65 億ドル。それでも受注残が売上の約 4 年分あり、潜水艦と空母の仕事が途切れることはないので、利益は今より増える。
- 空母(新造・原子炉燃料交換・艦隊整備):数量 48.6(米海軍の空母の新造・燃料交換・整備の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 121.3%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 59 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 49 億ドル × シェア 86.0% × 価格 1.41 倍
- 潜水艦(バージニア級・コロンビア級):数量 230(米海軍の攻撃型・弾道ミサイル原潜の建造・工業基盤・先行調達の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 17.6%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 41 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 230 億ドル × シェア 12.5% × 価格 1.41 倍
- 水上艦(強襲揚陸艦・駆逐艦・カッター):数量 195(米海軍の水上戦闘艦・揚陸艦・沿岸警備隊カッターの新造市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 24.0%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 47 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場 195 億ドル × シェア 17.0% × 価格 1.41 倍
- ミッション・テクノロジーズ(防衛 IT・無人システム):数量 2,160(米政府 IT と防衛電子・通信・指揮統制・無人システムの市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。GD の技術セグメントと同じ定義))× 価格 1.9%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 42 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場 2,160 億ドル × シェア 1.4% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 8.8%(この筋書きの純利益 7.9 ÷ 自己資本 90 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 8.0%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 8.4%(堀は普通:空母は唯一の造船所でも、固定価格契約と人手不足で利益は価格に乗りにくい(残る割合 1/2))。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=米海軍の造船・潜水艦の作業量(実質年 1〜1.5%)+ 契約の物価調整 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=13.1 倍に対し、90% の 11.8 倍に置いた(賃上げと採用の遅れで作業量が足りず、利益率が 4% 台に下がる筋書き)。時価総額=純利益 7.9 億ドル × 11.8 倍=94 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:人手不足・固定価格契約の損失・空母の遅れが続き、利益率が 4〜5% にとどまる展開。過去 5 年の実績に近く、現実味が高いので 26% とした(GD は 23%)。
悲観 15% 【悲観】造船所が人手を確保できず、シェアと利益率を失い、2035 年の売上 141 億ドル・純利益 3.5 億ドル 利益 3 億ドル · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 102.04 ドル40 億ドル
人手不足が解けず、CVN 80/81 の遅れと 766 億ドルの潜水艦契約の追加損失が重なり、造船の利益率は 2〜3% まで落ちる。海軍は FF(X) の 3 番艦以降を競争で他社へ出し、駆逐艦も新規参入に分け、潜水艦では電気ボート社の増産が先行する。市場の実質は空母 −2%・潜水艦 +5%・水上艦 −2%・MT −5%、取り分は空母 80%・潜水艦 10.5%・水上艦 14.0%・MT 1.2%。売上は 141 億ドル(今より 1 割ほど多いだけ)、営業利益率 2.7%、純利益 3.5 億ドル。MT は無人システムの投資が回収できず売却も検討される。年金の非営業収益は 1.4 億ドルに減る。
- 空母(新造・原子炉燃料交換・艦隊整備):数量 44.1(米海軍の空母の新造・燃料交換・整備の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 112.8%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 50 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 44 億ドル × シェア 80.0% × 価格 1.41 倍
- 潜水艦(バージニア級・コロンビア級):数量 189(米海軍の攻撃型・弾道ミサイル原潜の建造・工業基盤・先行調達の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 14.8%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 28 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 189 億ドル × シェア 10.5% × 価格 1.41 倍
- 水上艦(強襲揚陸艦・駆逐艦・カッター):数量 157(米海軍の水上戦闘艦・揚陸艦・沿岸警備隊カッターの新造市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 19.7%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 31 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 157 億ドル × シェア 14.0% × 価格 1.41 倍
- ミッション・テクノロジーズ(防衛 IT・無人システム):数量 1,900(米政府 IT と防衛電子・通信・指揮統制・無人システムの市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。GD の技術セグメントと同じ定義))× 価格 1.7%(HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 32 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場 1,900 億ドル × シェア 1.2% × 価格 1.41 倍
倍率:事業の ROE 5.1% は k 8.0%(基本 8.0% + quality +0.0%)以下なので、ためた利益は額面を割る価値で、正当化 PER は 1÷k=12.5 倍まで。92% の 11.5 倍に置いた(構造的に負ける筋書き。値段は稼ぐ力(純利益 ÷ k)で置く)。時価総額=純利益 3.5 億ドル × 11.5 倍=40 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。 EV(時価総額 40 + 純有利子負債 22 億ドル)÷ 営業利益 3.8 = 17 倍。利益が潰れた構造的な負けの年の見かけの高さで、値段は稼ぐ力(純利益 ÷ k = 44 億ドル)の内側に収まると読んだ。
確率:構造的に負ける展開:人手と固定価格契約の損失が慢性化し、海軍が新しい造船所・他社へ仕事を移す。HII は営業利益率の薄さと遅れの実績があるので 15% と厚くした(GD は 12%)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
空母(新造・原子炉燃料交換・艦隊整備)
ニューポートニューズ造船の空母(新造 CVN 79〜82・原子炉燃料交換 RCOH)と艦隊整備。米国で唯一の空母造船所。
| 数量米海軍の空母の新造・燃料交換・整備の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質) | 価格HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 45.0 | 88.2% | 40 | 2 |
| 10 年後 中立 | 53.1 | 124.1% | 66 | 4 |
取り方:2025 年のニューポートニューズの売上 65.1 億ドルのうち、空母 33.9 億ドルと「その他」5.8 億ドル(10-K の売上区分を集計したサイトによる。本文は未確認)を合わせた 39.7 億ドルを空母とした。市場は米海軍の空母の新造・燃料交換・整備を約 45 億ドル(推定。公営の造船所が行う整備を含む)と置き、HII のシェア 88% で出した。営業利益は 2025 年のニューポートニューズ 3.31 億ドル(5.1%)を、空母 4.6%(1.83 億ドル)・潜水艦 5.8%(1.47 億ドル)に推定で配分した(開示なし。空母は CVN 80/81 の不利な累積修正があり低め)。競合はなく、数量の変化は海軍の購入計画(CVN 82 以降)と燃料交換の件数。
潜水艦(バージニア級・コロンビア級)
バージニア級攻撃型原潜(引き渡し造船所)とコロンビア級弾道ミサイル原潜(モジュール)。電気ボート社と分担。
| 数量米海軍の攻撃型・弾道ミサイル原潜の建造・工業基盤・先行調達の市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質) | 価格HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 180 | 14.1% | 25 | 1 |
| 10 年後 中立 | 261 | 19.9% | 52 | 4 |
取り方:2025 年の潜水艦売上 25.4 億ドル。市場は米海軍の潜水艦の建造(バージニア級 年 2 隻・コロンビア級 年 1 隻)と潜水艦の工業基盤・先行調達を約 180 億ドル(推定)と置き、HII のシェア 14.1%(バージニア級 6 隻の引き渡しとコロンビア級 6 モジュール。電気ボート社が残り)で出した。営業利益率 5.8%(推定配分)。競合は電気ボート社(GD)のみ。2026 年 7 月の契約変更 766 億ドルのうち HII 分は約 250 億ドル(コロンビア級を含む)で、2038 年までの売上の裏付けになる。
水上艦(強襲揚陸艦・駆逐艦・カッター)
インガルスの強襲揚陸艦・駆逐艦・国家安全保障カッターと新型フリゲート FF(X)。
| 数量米海軍の水上戦闘艦・揚陸艦・沿岸警備隊カッターの新造市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質) | 価格HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 160 | 19.2% | 31 | 2 |
| 10 年後 中立 | 227 | 26.8% | 61 | 5 |
取り方:2025 年のインガルスの売上 30.8 億ドル(強襲揚陸艦 14.6 億ドル・駆逐艦とカッター 16.0 億ドル)。市場は米海軍の水上戦闘艦・揚陸艦・沿岸警備隊カッターの新造を約 160 億ドル(推定)と置き、シェア 19.2% で出した。営業利益率は 2025 年 7.6%(2.33 億ドル)。競合は駆逐艦のバス鉄工所(GD)、補助艦の NASSCO(GD)、オースタル USA など。FF(X) は 1・2 番艦が随意契約、3 番艦以降は競争。
ミッション・テクノロジーズ(防衛 IT・無人システム)
防衛 IT・サイバー・電子戦・訓練・無人水上艇・無人潜水機。2021 年のアリオン買収が核。
| 数量米政府 IT と防衛電子・通信・指揮統制・無人システムの市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。GD の技術セグメントと同じ定義) | 価格HII のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,000 | 1.5% | 30 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,440 | 2.1% | 51 | 3 |
取り方:2025 年の MT の売上 30.4 億ドル、営業利益 1.53 億ドル(5.0%)。市場は米連邦の IT 予算(約 1,000 億ドル)と防衛の電子・通信・指揮統制(約 1,000 億ドル)を合わせた約 2,000 億ドル(推定。GD の技術セグメントと同じ)と置き、シェア 1.52%。競合はリードス・SAIC・CACI・ブーズ・アレン・GD の GDIT など。2025 年の部門間消去(−1.45 億ドル)は、売上を各部門の合計で置くので全社の売上だけが小さくなる(利益には影響しない)。
リスクと懸念
人手不足と賃上げの費用
造船所は採用と離職の改善が進んでいる(2025 年に 6,600 人超を採用、離職は 15〜18% 改善、2026 年上期に 3,500 人超)が、賃上げ(インガルスの労働協約は 2026 年 3 月更新)と訓練の費用が先に出る。作業量が増えなければ利益率は 5% 台のまま。悲観の筋書きで利益率を 2〜3% まで落とした。
固定価格契約の損失と空母・潜水艦の遅れ
CVN 80 の引き渡しは 2031 年 3 月、CVN 81 は 2034 年 2 月へ延び、2025 年の決算では空母とバージニア級に不利な累積修正が出た。ステニスの燃料交換も遅れと追加費用の報道がある(一次の出典は未確認)。766 億ドルの潜水艦契約は見積りどおり造れる前提で、見積りを誤れば追加損失になる。
予算の凍結と調整予算の不成立
2027 年度の造船要求 658 億ドルのうち 56 億ドルは調整予算で、別の法案。つなぎ予算が長引くと新規契約が止まる。2011〜2015 年の予算管理法のように、財政赤字と金利 5% の利払いで防衛の調達が数年止まる展開を、悲観の筋書きの背景に置いた。
年金の非営業収益と利益の質
2026 年の純利益のうち、年金の非営業収益(2.1 億ドル)は税引き前利益の約 25% を占め、現金を生まない会計上の利益。年金資産の運用が悪化すれば減る。GAAP の純利益に含めて倍率を掛けるので、この分が減ると時価総額の見積りも下がる。
FF(X) 3 番艦以降の競争と新規参入
FF(X) の 1・2 番艦は随意契約だが、3 番艦以降は競争(2027 年度予算の購入予定は 2027・2029 年度に 1 隻ずつ、2031 年度に 2 隻)。駆逐艦・補助艦でも他の造船所や新規参入が仕事を取れば、インガルスの取り分(今 19%)が下がる。悲観の筋書きで 14% まで下げた。
運転資本と FCF の振れ
FCF は 2024 年 0.4 億ドル、2025 年 8.0 億ドルと振れが大きく、2026 年上期は −6.1 億ドル(年内に契約の前払いなどで約 10 億ドルを回収予定)。回収が遅れれば純負債が増え、利払い(借り換えで 5.75%)の分だけ利益が減る。
倍率が資本コストに敏感
式の PER の上限(約 15 倍)は k 8% で決まる。k が 9% に上がれば上限は約 12 倍へ 2 割弱縮み、中立の時価総額も同じ割合で下がる(割り引きも重くなる)。
今後の分かれ目
- 2027 年度の造船要求(658 億ドル、うち調整予算 56 億ドル)がほぼそのまま成立し、FF(X) の購入が増える
- 空母・潜水艦・水上艦の売上の伸びが 10 年で年 7〜8% になり、楽観・やや楽観の確率を上げる。売上と受注の見通しが固まる。
- 造船の営業利益率が 2027 年に 6.5% を超え、潜水艦のインセンティブが計画どおり入る
- 造船の長期の営業利益率 8% 前後が現実味を持ち、やや楽観・楽観を厚くする。
- CVN 80 または CVN 81 の引き渡しがさらに延び、空母で追加の累積修正が出る
- 空母の利益率 4% 台が続くことになり、やや悲観・悲観の確率を上げる。2025 年の決算と同じ型の損失が繰り返される。
- バージニア級・コロンビア級の契約で見積りの誤りによる追加損失が出る
- 潜水艦の利益率 5% 台が続き、766 億ドルの契約の利益がほとんど出ない。悲観の深さを実現側に寄せる。
- FF(X) の 3 番艦以降の競争でインガルスが負けるか、駆逐艦も新規参入に分け与えられる
- 水上艦の取り分が 19% から 14〜17% へ下がり、水上艦の売上が 1〜2 割減る。やや悲観の確率を上げる。
- 年内の契約前払い・インセンティブの回収(約 10 億ドル)が遅れ、通期の FCF 見通し(5〜6 億ドル)を外す
- 運転資本が重い体質が確かになり、純負債と利払いが増える。利益の質への疑いが強まる。
見ておくもの
- 造船の営業利益率(2026 年見通し 6.0〜6.5%)と、四半期ごとの累積修正(空母・潜水艦・水上艦)
- 作業量(スループット)の改善率(2026 年目標 +15%)と、採用・離職・外注の進み
- CVN 80/81 の引き渡し日、潜水艦のブロック VI・コロンビア級の工程と契約のインセンティブ
- 2027 年度の造船予算(要求 658 億ドル、調整予算 56 億ドル)の成立と FF(X) の購入計画、競争の有無
- FCF(2026 年見通し 5〜6 億ドル)と運転資本、年金の非営業収益(2.1 億ドル)、MT の売上と利益率
倍率と資本コストの決め方
今の PER(GAAP で約 18 倍)や時価総額 107 億ドル、アナリストの予想 PER は見ずに、艦種ごとに市場 × 取り分 × 価格で 2028 年・2035 年の売上と営業利益を積み、純利益から倍率を出した。倍率は利益ベースの正当化 PER((1−g÷RONIC)÷(k−g)、k 8%=基本 8.0% + quality 0%、g 4%、RONIC=k+1/2×(事業の ROE−k)、moat 普通)の内側に、上限の 8.5〜9.2 割で置いた(10 年の中立は上限 14.9 倍の 8.5 割で 12.7 倍。1÷k の床の少し上)。HII は利益率が薄く遅れと損失の実績があるので、悲観側の確率を厚く(10 年 41%)、悲観の深さも営業利益率 2〜3% と深くした。悲観は ROE が k 以下で、稼ぐ力(純利益 ÷ k)で置いた。結果はやや割高で、式と筋書きのとおり受け入れている。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β 0.60 × 5%。k=基本 8.0% + quality 0% = 8.0%。受注残の厚さと政府だけの顧客による安定を −0.25%、固定価格契約と人手不足で利益率が薄い点を +0.25% とし、差し引き 0。人手不足・空母の遅れ・年金の非営業収益などの個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率(やや悲観・悲観 41%)で表した。純負債は小さく上乗せは置かない。