結論
GEベルノバ(GE Vernova)は、GE の電力・再生可能エネルギー部門が 2024 年に分離上場した会社で、ガスタービンを中心とする発電設備(パワー)、送配電設備と系統ソフトの電化、風力発電機の 3 事業から成る。2025 年は売上 381 億ドル、調整後 EBITDA 率 8.4%、受注 593 億ドル、受注残 1,500 億ドル。2026 年 4〜6 月期は受注が 242 億ドル(前年比 +88%)、受注残は 1,760 億ドルまで積み上がり、ガスタービンの受注残と枠予約は 116GW(年末に 125GW 以上の見込み)、2026 年通期の売上見通しは 455〜465 億ドルに引き上げられた。
データセンターと電力網の増強が、納期プレミアムと値上げを伴って数量と価格を同時に押し上げている。電化は営業利益率が 1 年で 5 ポイント以上改善し、パワーも EBITDA 率が 18.8% に達した。一方で風力は赤字が続き、2025 年の純利益 49 億ドルは税の評価引当の戻し 29 億ドルを含み、2026 年上半期の純利益も株式売却益などで膨らんでいる。実力の利益は、見かけの数字よりずっと小さい。
バリュー投資の観点では、事業の質は高まりつつあり、3 社寡占のタービンと、納期が 2028 年まで埋まった送配電設備は強い立場にある。ただ、時価総額は 2025 年の純利益の 52 倍、自己資本の 23 倍である。楽観かやや楽観の筋書きが実現すれば今の時価総額を上回るが、その確率は合わせて 3 割強にとどまる。
倍率は利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)(k 8%・g 4.0%・事業の ROE 46%・moat=普通)の上限 21.3 倍の 7 割(14.8 倍)に置いた(ガスタービン受注残 116GW は山の利益で、発電設備の景気は循環する。電化の伸びは数量に入れてあり倍率では先取りしない。上限の 7 割にとどめた)。総合は今の時価総額に対し -49% で「割高」。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。電力を作る・運ぶ装置は、AI の需要が弱まっても、電化・老朽設備の更新・人口増という長い需要の土台があるので、存在することは確実である。堀も、ガスタービンの 3 社寡占、稼働台数に付く保守収益、送配電設備の納期という 3 層があり、2 年前よりむしろ強まった。
次に、株主のものになるオーナー利益を考える。2025 年の純利益 49 億ドルは税の評価引当の戻し 29 億ドルを含み、実力は 20 億ドル前後。2026 年上半期の純利益 54 億ドルも売却益を含む。2026 年の見通し FCF 115〜125 億ドルは前受金を含み、納入で取り崩されるので、利益の質は見かけより弱い。ならした利益は 2035 年で 110 億ドル程度と見るのが落ち着いた置き方である。
それに対して時価総額は 2,542 億ドルで、(税の戻しを含む)2025 年の純利益の 52 倍に当たる。資本コスト 8% で割り引くと、楽観かやや楽観の筋書きが実現して初めて今の水準を上回り、中立では届かない。安全域はなく、値段はやや割高の側にある。ガスタービンの景気は、2001 年に受注が 9 割減った前例があり、景気の山で払う値段としては高い。事業の質は高いが、予測できない要素(AI 投資の持続、競合の増産)が大きいので確信度は中程度に下げる。よい会社と、よい投資対象は別だ、というのが結論である。
何で稼ぐ会社か
売上は 3 つの部門から成る。パワー(2025 年 約 198 億ドル)は、ガスタービン(大型 HA・小型航空転用型)、蒸気タービン、水力、原子力(小型モジュール炉 BWRX-300)の設備と、納入後 20〜30 年続く保守・部品・改修を担う。設備は受注から納入まで 2〜3 年かかり、納入済みの機械が増えるほど、サービス収益が安定した土台になる。2026 年上半期の売上は 104 億ドル、EBITDA 率は 17.6% で、通期見通しは売上の成長率が 18〜20%、EBITDA 率 17〜19% に上がっている。
電化(2025 年 約 96 億ドル)は、変圧器・開閉装置・高圧直流送電(HVDC)・系統の電力変換といった機器と、電力会社向けの系統管理ソフトを扱う。2026 年に合弁だったプロラック GE(Prolec GE、変圧器)の残り 50% を取得して連結し、通期の売上は 145〜150 億ドルの見通し。設備の受注残は 406 億ドル(前年比 +69%)で、2028 年末に 600 億ドルを目標にしている。
風力(2025 年 約 91 億ドル)は、米国の陸上風車が中心で、洋上風力は受注済みの案件の工事のみを続けている。2026 年上半期は売上 35 億ドル、EBITDA 損失 6.6 億ドルで、通期も低い 2 桁の減収と損失を見込む。
収益の構造は、設備の受注時に顧客から前受金を受け取り、納入までの間に現金が積み上がる形で、2026 年の FCF 見通し 115〜125 億ドルは前受金の増加を含む。この現金は設備が納入されると前受金の取り崩しで減るため、そのまま株主のものになる利益ではない点に注意が必要である。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 に、ガスタービンは GE ベルノバ・シーメンス・エナジー・三菱重工の 3 社寡占で、世界に据え付けられた大型タービンの台数(稼働台数)が大きく、納入後の部品・整備を長く囲い込める。参入には試験設備と運転実績が要り、新規参入は難しい。第 2 に、送配電の大型機器(変圧器・開閉装置)は納期が 2〜3 年で、顧客は価格より納期と信頼性を優先する。第 3 に、電力会社との長い取引関係と、系統ソフトという切り替えの費用が高い層を持つ。
今の価格を決める力は強い。2026 年上半期の受注では、1kW あたりの価格が 2025 年 10〜12 月期より 10〜20% 高く、ウッドマッケンジーは 2027 年末に 1kW あたり 600 ドルと、2019 年のほぼ 3 倍を予想する。ただし、この価格は需給のひっ迫が作るもので、納期が正常化すれば薄くなる。資本効率の ROE 43.7% は、自己資本が小さい(自己資本比率 17.7%)ことと、税の戻しによる純利益の押し上げの両方でかさ上げされている。
弱い所は 3 つ。風力の赤字と洋上風力の過去の失敗(受注済みの案件の損失)、過去に火力で大きな不具合や品質問題を出した事業の歴史(2017〜2019 年の巨額の減損)、そして増産投資が 2030 年以降の需要に見合うかどうかである。経営は 2023 年以降、価格の規律と品質を重視する方針に変わったが、まだ 2 年ほどの実績しかない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
発電設備は、10 年以上続いた需要の停滞(再エネへの置き換えと、2010 年代の火力の過剰能力)から、2024 年以降の AI データセンター・製造業の回帰・電化による電力需要の増加で、急激な上昇局面に入った。米国の電力需要は 20 年ぶりに年 2〜3% の伸びとなり、天然ガス火力は老朽石炭の置き換えと新設の両方で求められている。ガスタービンの納入枠は主要 3 社とも 2029〜30 年まで埋まり、納期プレミアムが価格を押し上げている。ただし 2001〜2004 年に、通信バブルの崩壊でガスタービンの受注が 9 割ほど減った前例(過剰な新設の反動)があり、今回も景気の山にいる点は変わらない。
送配電は、データセンターへの接続、再エネの増加、老朽設備の更新が重なって、変圧器・開閉装置が 2028 年まで埋まっている。国際エネルギー機関(IEA)は世界の送配電投資が年 約 4,000 億ドルから 2030 年に約 6,000 億ドルへ必要と見る。競合は、シーメンス・エナジー、日立エナジー、シュナイダー・エレクトリック、ABB、イートン、韓国の現代・斗山エナジー、中国の電気機器メーカーで、各社が増産に動いており、2028〜30 年に供給が追いついて価格が正常化する可能性が高い。
風力は、米国の補助金の縮小と洋上風力の頓挫で需要が弱く、中国メーカーが低価格で世界の市場を取っている。10 年の見通しは、パワーと電化は数量・価格ともに名目成長を上回る期間が数年続いた後に、物価並みへ戻る、風力は低迷が続く、というのが中立の見方である。業界ノートでは、資本コスト 8% のもとで成熟した PER は 20 倍台前半、谷ではならした利益に 11〜13 倍を置いている。
資本政策と M&A
資本配分は、受注の増加で現金が前受金で積み上がり、還元を急拡大する局面にある。2025 年 12 月に自社株買いの枠を 60 億ドルから 100 億ドルへ、四半期配当を倍にした。2026 年上半期の自社株買いは 430 万株(約 37 億ドル)、配当を合わせた還元は 39 億ドルで、2026 年は FCF の半分以上を還元に回している。ただし株価が高い局面での自社株買いは、1 株の価値を守る買いではなく、むしろ価値を損なう側に働く。株式報酬による株の増加分は、還元額から差し引いて正味で見る必要がある。
M&A は、2026 年にプロラック GE の残り 50% を約 53 億ドルで取得し、電化を強化した。売却では、中国の合弁(XD Electric)の持ち分を売って約 6 億ドルの益を計上した。大型の合併の可能性は低いが、電化の送配電ソフトや電力変換の小さな買収は続く見込みである。
借金は有利子負債 12 億ドルに対し現金等 93 億ドル(2025 年末)で、純現金の側にいる。2026 年 6 月末の現金は 131 億ドル。現金の運用益は短期金利 3.5〜4% で回るので、金利の変化による純利益の調整は置かない。年金の積み立て不足は、2026 年に約 5 億ドルの任意拠出で圧縮している。2025〜28 年の FCF 累計の目標は 220 億ドル超(説明会の時点)で、2026 年の見通しだけで 115〜125 億ドルに上振れている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ガスタービンの受注残と枠予約は 116GW に積み上がり、2028 年の分まで売り切れで、年産能力は 2030 年に 30GW へ拡張できる。価格は 1kW あたりで 2025 年 10〜12 月期より 10〜20% 高く、これから納入される案件の利益率は今の 17〜19% よりさらに上がる。経営が示した 2028 年の目標は、売上 520 億ドルに調整後 EBITDA 率 20% で、プロラック GE の連結分を足せばさらに大きい。
電化は、受注残 406 億ドル(前年比 +69%)で、2028 年末に 600 億ドルへ。利益率は 1 年で 5 ポイント以上上がり、EBITDA 率 18% 台に達した。データセンターの接続、再エネの系統連系、老朽設備の更新と、需要の理由が 3 つ重なり、AI の需要が弱まっても送配電の投資は止まらない。変圧器や開閉装置の供給は 2028 年まで逼迫している。
サービス収益は納入済みの設備が増えるほど積み上がり、景気が悪い年の下支えになる。受注の取り消しには、前受金の没収という歯止めがある。風力は赤字が縮小して 2027 年に底打ち、全社の利益率の足を引っ張る要因が消える。FCF は 2026 年に 115〜125 億ドル、還元の拡大で 1 株の価値が上がる。これが強気の見方で、楽観の筋書きの下敷きである。
慎重な見方
2026 年の見通し FCF 115〜125 億ドルは前受金で膨らんだ値で、納入で取り崩される。2025 年の純利益 49 億ドルは税の戻し 29 億ドル、2026 年上半期の 54 億ドルは売却益を含み、実力の利益はこの半分以下である。調整後 EBITDA 率は 2026 年の見通しで 12〜14% にとどまり、2028 年の 20% は、これから 2 年で 6〜8 ポイント上げる前提で、受注時の価格がそのまま利益に変わるかは納入まで分からない。
ガスタービンは 2001〜2004 年に受注が約 9 割減った前例があり、今回も AI の電力需要に支えられた景気の山である。シーメンス・エナジー、三菱重工、現代・斗山エナジーが増産を進め、2028〜30 年に供給が追いつくと納期プレミアムは消える。効率の高い AI チップで電力需要が下振れる、蓄電池や燃料電池、再エネの組み合わせで置き換わる、データセンターの許認可が止まる、といったことも起こりうる。
風力は赤字で、洋上風力の過去の損失の再発リスクが残る。過去には 2017〜2019 年に火力で巨額の減損を出し、品質の問題も繰り返した。株価は 2025 年の純利益の 52 倍で、成熟した姿(PER 20 倍台半ば)に戻るだけで半分近く下がる計算になる。自社株買いも高い株価で行われ、1 株の価値を守る買いではない。これが慎重な見方である。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は受注残の確かさと価格の強さで説得力がある。ただし供給競争と過去の景気の山谷が効く 10 年は、悲観側を厚めにした。確率は 楽観 10%・やや楽観 22%・中立 36%・やや悲観 20%・悲観 12%。倍率は利益ベースの正当化 PER の内側(中立は上限の 7 割)に置き、総合は今の時価総額に対し -49% で「割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 681.76 ドル1,882 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 232.17 ドル641 億ドル)。 今の値に割り戻すと 473.80 ドル1,308 億ドル、今との差 −42.7%、 期待の年率 +1.0%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,512 ドル4,174 億ドル | 398.55 ドル1,100 億ドル | +130.9% | +8.7% | 191.07 ドル527 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 1,059 ドル2,922 億ドル | 318.84 ドル880 億ドル | +66.5% | +5.2% | 303.08 ドル837 億ドル |
| 中立 | 36% | 607.97 ドル1,678 億ドル | 235.51 ドル650 億ドル | +1.9% | +0.2% | 303.65 ドル838 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 339.57 ドル937 億ドル | 152.17 ドル420 億ドル | −40.6% | −5.1% | 98.35 ドル271 億ドル |
| 悲観 | 12% | 90.22 ドル249 億ドル | 57.97 ドル160 億ドル | −82.1% | −15.8% | 17.78 ドル49 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 681.76 ドル1,882 億ドル | 232.17 ドル641 億ドル | +10.5% | +1.0% | 913.94 ドル2,522 億ドル |
今の株価時価総額 827.42 ドル2,284 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:電力需要が 2030 年代も伸び続け、パワーと電化が首位を広げる 利益 222 億ドル · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 1,512 ドル4,174 億ドル
2035 年、ガスタービンは年産 30GW 超で稼働し、パワーの対象市場は 2025 年比で年 +9.8% の 2,800 億ドル、シェアは 21% へ上がる。サービスが積み上がり、営業利益率は 22%。電化は送配電の投資拡大で市場が年 +9% の 4,000 億ドル、シェア 9%、営業利益率 21%。風力は洋上が終わり、陸上の黒字化で 7%。物価は 10 年で 1.41 倍。営業利益は 278 億ドル、純利益は 222 億ドル(2025 年の実力の約 10 倍)。倍率は PER 18.8 倍(正当化 PER の上限 22.6 倍の 8.3 割。内訳は multiple.why)。自社株買いで株数は大きく減り、還元は純利益の約 8 割に達する。
- パワー:数量 2,800(対象市場(億ドル、2025 年価格。納期プレミアムによる実質の値上がりを含む))× 価格 29.6%(シェア × 物価指数)→ 売上 829 億ドル・営業利益 182 億ドル。市場・シェア・価格
- 電化:数量 4,000(世界の送配電設備+系統ソフト市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 12.7%(シェア × 物価指数)→ 売上 508 億ドル・営業利益 107 億ドル。市場・シェア・価格
- 風力:数量 450(中国を除く世界の風力タービン市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 28.2%(シェア × 物価指数)→ 売上 127 億ドル・営業利益 9 億ドル。市場・シェア・価格
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.00%)・g 4.0%(上限の内側。電化・ガス発電の実質の伸び 3〜4% + 価格 3.5% だが、受注残は山の利益で先まで続くとは見ず 4% を超えない)・事業の ROE 77%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 222.0 ÷ 自己資本 290.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 42.3%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 22.6 倍(上限 = 純利益 222.0 億ドル × これ = 5025 億ドル)。これの 0.8 割(18.8 倍)に置いた。楽観:利益の質が最も良く出る筋書きなので上限に最も近く置いた。
確率:電力需要の高成長が長く続き、シェアも上がり、価格の強さも保たれる必要がある。構造変化が全部味方する筋書きで 1 割。
やや楽観 22% やや楽観:電力需要の高成長は 2030 年代前半に一巡するが、サービスが利益率を守る 利益 172 億ドル · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 1,059 ドル2,922 億ドル
2035 年、パワーの対象市場は 2,500 億ドル(年 +8.6%)、シェア 20%。納入済みの設備が増えて、サービスの積み上げで営業利益率は 20%。電化は市場 3,700 億ドル、シェア 8.5%、営業利益率 19.5%。風力は損益が小さな黒字。売上は約 1,260 億ドル、営業利益 216 億ドル、純利益 172 億ドル。倍率は PER 17.0 倍(正当化 PER の上限 22.1 倍の 7.7 割。内訳は multiple.why)。ガスタービンの新規は 2030 年前後にピークを打ち、その後は老朽置き換えが中心になる。韓国・中国勢の低価格は電化で価格の上がり方をわずかに下げる。
- パワー:数量 2,500(対象市場(億ドル、2025 年価格。納期プレミアムによる実質の値上がりを含む))× 価格 28.2%(シェア × 物価指数)→ 売上 705 億ドル・営業利益 141 億ドル。市場・シェア・価格
- 電化:数量 3,700(世界の送配電設備+系統ソフト市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 12.0%(シェア × 物価指数)→ 売上 443 億ドル・営業利益 86 億ドル。市場・シェア・価格
- 風力:数量 420(中国を除く世界の風力タービン市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 26.8%(シェア × 物価指数)→ 売上 113 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場・シェア・価格
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.00%)・g 4.0%(上限の内側。電化・ガス発電の実質の伸び 3〜4% + 価格 3.5% だが、受注残は山の利益で先まで続くとは見ず 4% を超えない)・事業の ROE 60%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 172.0 ÷ 自己資本 285.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 34.2%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 22.1 倍(上限 = 純利益 172.0 億ドル × これ = 3797 億ドル)。これの 0.8 割(17.0 倍)に置いた。やや楽観:楽観より伸びと利益率が控えめなので一段下。
確率:新設の高成長が一巡しても、稼働台数の保守収益が残る展開。強気の見方に近いが、競合の増産で価格が少し弱い。
中立 36% 中立:高成長は 2030 年前後に終わり、成熟した優良な設備メーカーになる 利益 113 億ドル · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 607.97 ドル1,678 億ドル
2035 年、パワーの対象市場は 2,100 億ドル(年 +6.7%、シェア 18% 一定)、納期プレミアムは 2030 年前に消え、価格は物価並みの 1.41 倍。営業利益率は 17%(調整後 EBITDA 率 約 18.5%)に落ち着く。電化は市場 3,400 億ドル、シェア 7.5%、営業利益率 17%。風力は赤字から小さな黒字へ。売上は約 990 億ドル(2025 年の 2.6 倍)、営業利益は 141 億ドル、純利益は 113 億ドル。倍率は PER 14.8 倍(正当化 PER の上限 21.3 倍の 7 割。内訳は multiple.why)。新設はピークを過ぎ、保守と置き換えが中心になる。
- パワー:数量 2,100(対象市場(億ドル、2025 年価格。納期プレミアムによる実質の値上がりを含む))× 価格 25.4%(シェア × 物価指数)→ 売上 533 億ドル・営業利益 91 億ドル。市場・シェア・価格
- 電化:数量 3,400(世界の送配電設備+系統ソフト市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 10.6%(シェア × 物価指数)→ 売上 359 億ドル・営業利益 61 億ドル。市場・シェア・価格
- 風力:数量 400(中国を除く世界の風力タービン市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 24.0%(シェア × 物価指数)→ 売上 96 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場・シェア・価格
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.00%)・g 4.0%(上限の内側。電化・ガス発電の実質の伸び 3〜4% + 価格 3.5% だが、受注残は山の利益で先まで続くとは見ず 4% を超えない)・事業の ROE 46%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 113.0 ÷ 自己資本 246.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 27.0%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 21.3 倍(上限 = 純利益 113.0 億ドル × これ = 2406 億ドル)。これの 0.7 割(14.8 倍)に置いた。中立:ガスタービン受注残 116GW は山の利益で、発電設備の景気は循環する。電化の伸びは数量に入れてあり倍率では先取りしない。上限の 7 割にとどめた
確率:業界ノートの中立(数量 年 +5〜7%、価格は納期正常化で物価並み)を落としどころにした。
やや悲観 20% やや悲観:新設のピークアウトと中韓の増産で、パワーの利益率が 13% に戻る 利益 66 億ドル · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 339.57 ドル937 億ドル
2035 年、データセンターの増設が止まり、パワーの対象市場は 1,800 億ドル(年 +5%)にとどまり、シェアは三菱重工や現代・斗山エナジーに取られて 17% へ落ちる。納期プレミアムが消えて価格は物価を下回る。パワーの営業利益率は 13%、電化は中国・韓国メーカーの低価格で 14%、風力は損益ゼロ。営業利益は 82 億ドル、純利益は 66 億ドル。倍率は PER 14.2 倍(正当化 PER の上限 20.3 倍の 7 割。内訳は multiple.why)。サービス収益は稼働台数で守られるが、新品の値引きと能力過剰で利益の伸びが売上を下回り、自社株買いも抑えられる。
- パワー:数量 1,800(対象市場(億ドル、2025 年価格。納期プレミアムによる実質の値上がりを含む))× 価格 24.0%(シェア × 物価指数)→ 売上 431 億ドル・営業利益 56 億ドル。市場・シェア・価格
- 電化:数量 3,000(世界の送配電設備+系統ソフト市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 9.2%(シェア × 物価指数)→ 売上 275 億ドル・営業利益 39 億ドル。市場・シェア・価格
- 風力:数量 380(中国を除く世界の風力タービン市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 21.2%(シェア × 物価指数)→ 売上 80 億ドル・営業利益 0 億ドル。市場・シェア・価格
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.00%)・g 4.0%(上限の内側。電化・ガス発電の実質の伸び 3〜4% + 価格 3.5% だが、受注残は山の利益で先まで続くとは見ず 4% を超えない)・事業の ROE 34%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 66.0 ÷ 自己資本 193.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 21.1%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 20.3 倍(上限 = 純利益 66.0 億ドル × これ = 1337 億ドル)。これの 0.7 割(14.2 倍)に置いた。やや悲観:伸びが落ち堀が削れた会社として中立より下。
確率:AI 電力の需要が 2030 年に頭打ちとなり、競合の増産が重なる展開。ガスタービンは過剰能力が繰り返されてきた産業で、起きても不思議でない。
悲観 12% 悲観:構造的に負ける(過剰能力・技術の置き換え・中韓の低価格)うえに不況が重なる 利益 30 億ドル · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 90.22 ドル249 億ドル
2035 年、電力需要の見通しが過大だったことが明らかになり、ガスタービンの新設は 2020 年代の半分以下に落ちる。パワーの対象市場は 1,500 億ドルで、シェアも 15% へ落ち、納期の強みを失って価格は物価に追いつかない。電化は中国・韓国勢に押されて営業利益率 9%。風力は小さな損失が続く。営業利益は 30 億ドル、純利益は 30 億ドル(2025 年の実力の 1.5 倍)。倍率は PER 8.3 倍(正当化 PER の上限 14.5 倍の 5.7 割。内訳は multiple.why)。景気の谷に近い年で、自社株買いは大きく縮み、設備の減損と能力の整理が続く。バリュー投資家の目で見れば、ここは優良企業としての評価をもう受けられない姿である。10 年の純利益の累計は約 320 億ドル。2026 年の約 85 億ドルから 2029 年に 28 億ドル、2032 年前後に 20 億ドル台へ下がって 2035 年の 30 億ドルへ戻る道で約 350 億ドル、ここから設備と能力整理の減損 約 30 億ドルを引く。還元の 160 億ドルを引くと自己資本は約 272 億ドルへ増える。
- パワー:数量 1,500(対象市場(億ドル、2025 年価格。納期プレミアムによる実質の値上がりを含む))× 価格 21.2%(シェア × 物価指数)→ 売上 317 億ドル・営業利益 25 億ドル。市場・シェア・価格
- 電化:数量 2,500(世界の送配電設備+系統ソフト市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 7.8%(シェア × 物価指数)→ 売上 194 億ドル・営業利益 18 億ドル。市場・シェア・価格
- 風力:数量 350(中国を除く世界の風力タービン市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 14.1%(シェア × 物価指数)→ 売上 49 億ドル・営業利益 −3 億ドル。市場・シェア・価格
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 8.00%(基本 8.0% + quality +0.00%)・g 4.0%(上限の内側。電化・ガス発電の実質の伸び 3〜4% + 価格 3.5% だが、受注残は山の利益で先まで続くとは見ず 4% を超えない)・事業の ROE 11%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 30.0 ÷ 自己資本 272.0 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 9.5%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 14.5 倍(上限 = 純利益 30.0 億ドル × これ = 435 億ドル)。これの 0.6 割(8.3 倍)に置いた。悲観:構造的に負けて優良でなくなった会社として最も下。
確率:過剰な能力と需要の頭打ち、代替電源(蓄電池・燃料電池)、不況が重なり、もう優良な設備メーカーとは評価されない。利益の山谷が大きい産業のため 1 割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
パワー
ガス・蒸気・水力・原子力(小型炉)の発電設備と、その保守・部品・改修。ガスタービンの受注残が成長源。
| 数量対象市場(億ドル、2025 年価格。納期プレミアムによる実質の値上がりを含む) | 価格シェア × 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,100 | 18.0% | 198 | 26 |
| 10 年後 中立 | 2,100 | 25.4% | 533 | 91 |
取り方:ガス・蒸気・水力・原子力の設備とサービスの対象市場を約 1,100 億ドル(推定)、シェア 18% と置いた。2025 年売上は約 198 億ドル。調整後 EBITDA 率は約 15% で、減価償却を引いた営業利益率は約 13% と推定。
電化
送配電の設備(変圧器・開閉装置・HVDC・系統の電力変換)、電力網のソフト、2026 年から Prolec GE を連結。
| 数量世界の送配電設備+系統ソフト市場(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,700 | 5.7% | 96 | 11 |
| 10 年後 中立 | 3,400 | 10.6% | 359 | 61 |
取り方:送配電設備と系統ソフトの対象市場を約 1,700 億ドル(推定)、シェア約 5.65% と置いた。2025 年売上は約 96 億ドル(Prolec GE の連結前)。EBITDA 率 約 14.5% から営業利益率 約 11.5% と推定。
風力
陸上風車(米国が主)と洋上風車(受注済みの工事のみ)。
| 数量中国を除く世界の風力タービン市場(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 30.3% | 91 | −5 |
| 10 年後 中立 | 400 | 24.0% | 96 | 4 |
取り方:中国を除く風力タービン市場を約 300 億ドル(推定)、シェア約 30% と置いた。2025 年売上は約 91 億ドルで、洋上風力の損失が続き営業利益率は約 -5% と推定。
リスクと懸念
AI・データセンター投資の反動
ガスタービンの受注残と枠予約 116GW、電化の受注残 406 億ドルは、AI のための電力投資に大きく依存している。投資が止まる、電力効率の高いチップで必要量が下振れる、許認可が止まる場合、新規受注が急減し、納期プレミアムが消える。2001〜2004 年はガスタービンの受注が約 9 割減った前例がある。
利益の質(前受金・一時益)
2026 年の FCF 見通し 115〜125 億ドルは前受金を含み、納入で取り崩される。2025 年の純利益は税の戻し 29 億ドル、2026 年上半期は売却益を含む。見かけの数字だけで、実力の利益と還元の余力を見誤りやすい。受注の取り消しや納期の延期があると前受金の返還の議論が起こりうる。
競合の増産と納期プレミアムの消失
シーメンス・エナジー、三菱重工、日立エナジー、シュナイダー、ABB、現代・斗山エナジーが増産しており、2028〜30 年に供給が追いつくと、値上げが通らなくなる。受注残に入っている高い価格がこの先も続く保証はなく、後ろの納入の利益率は下がりうる。中国・韓国メーカーの低価格も効く。
風力の赤字と洋上風力
2026 年上半期の風力の EBITDA 損失は 6.6 億ドルで、通期も約 4 億ドルの損失を見込む。米国の補助金の縮小、洋上風力の工事の遅れ・追加費用、陸上の価格競争が続く場合、全社の利益率の足を引っ張り続ける。過去の洋上風力の失敗の再発リスクも残る。
品質・工場の増産実行
年産能力を 20GW から 30GW へ拡張し、変圧器の工場も増やす計画で、実行が遅れる・品質の問題が出ると、納入の遅れで違約金や顧客離れが起こる。2017〜2019 年に火力の設計不具合と減損を出した歴史があり、人手と部材の不足もある。
割高な自社株買いと高い倍率
株価が純利益の 52 倍の水準で行われる自社株買いは、残る株主の価値を薄める。株式報酬による株の増加分を差し引いた正味の還元は見かけより小さい。倍率が成熟した 20 倍台に戻る場合、利益が計画どおりに伸びても株価は大きく下がる。
関税・政策
米国の鉄鋼・アルミ関税、中国との貿易摩擦、再エネ補助金(税額控除)の縮小、電力規制の変更は、風力・電化・資材調達の費用に効く。政権が変わると電力政策の方向が大きく変わる可能性があり、受注の時期や顧客の投資判断にも影響する。
今後の分かれ目
- ガスタービンの新規受注と枠予約が 2027 年に前年を下回り、125GW に届かない
- 景気の山が近いという信号で、10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。倍率は PER 18〜20 倍前後へ寄る。
- 受注残の高い価格の案件が、2028 年以降の納入でも利益率 20% 以上で出荷される
- 価格の強さが一時でなく構造だと確認され、楽観・やや楽観の確率を上げる。ただし倍率の上限(k=8%・g=5% の式)は変わらない。
- シーメンス・エナジーや現代・斗山エナジーの増産が早く進み、新規の受注価格が下がり始める
- 納期プレミアムの消失が前倒しされ、パワーの利益率を 3〜5 ポイント下げる。10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。
- 風力の損失が 2027 年に止まり、洋上風力の工事が完了する
- 全社の利益率の足かせが消え、営業利益が 2〜3 億ドル改善。やや楽観の確率を少し上げる。
- 株価が下がり、自社株買いが PER 20 倍以下の水準で続けられる
- 1 株の価値を守る買いになり、還元の質が上がる。
- データセンターの電力需要の予測が引き下げられる(チップの効率向上・許認可の停止・大手の投資削減)
- 電化・パワーの受注の取り消しが連鎖し、悲観の確率を上げる。前受金の返還リスクも点検する。
見ておくもの
- ガスタービンの受注残と枠予約(116GW から 125GW 以上への進み)
- パワー・電化の営業利益率(EBITDA 率 18〜20% が続くか)
- 電化の受注残(406 億ドルから 2028 年末 600 億ドルへ)
- 前受金と FCF の質(納入による取り崩し)
- シーメンス・エナジー・三菱重工・現代・斗山の増産と受注価格
- 風力の損失の縮小と洋上風力の工事
- 自社株買いの平均価格と株式報酬を引いた正味の還元
- 大手 5 社のデータセンター設備投資の見直し
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見る前に、数量 × 価格で積んだ利益から利益ベースの正当化 PER((1−g/RONIC)/(k−g)、RONIC=k+残る割合×(事業の ROE−k))で出した。10 年の中立は正当化 PER 21.3 倍(k 8%・g 4.0%・ROE 46%・moat=普通)の 7 割 = 14.8 倍。ガスタービン受注残 116GW は山の利益で、発電設備の景気は循環する。電化の伸びは数量に入れてあり倍率では先取りしない。上限の 7 割にとどめた。今の株価や過去の倍率に寄せて選んだ値ではなく、全筋書きが検査の上限(正当化 PER × 事業の純利益の 1.1 倍)の内側に収まっている。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0% = 8%(β は使わない。決まり v2。内訳は quality_parts と quality_why)。景気で振れる産業だが、3 社寡占のガスタービンの値決め力と相殺して quality は 0 とした。個別のリスク(風力の赤字・AI 投資への依存・景気の山)は k に足さず、筋書きと確率(悲観を厚め)で表した。長期の g は 4.0% まで、k − g ≥ 3.5% を守る。