結論
クラトスは、安価なジェット無人機、ミサイル用エンジン、極超音速兵器の試験設備、衛星通信の地上システムを手掛ける防衛技術会社である。筆者の結論は割高だ。次世代防衛装備の有望な位置にいることと、その成長から株主が十分な利益を得られることは別問題である。
事業環境は追い風だ。2026年4~6月期の売上は前年同期比30.5%増え、受注残は20.84億ドルに達した。会社は2026年の売上見通しを17.50~18.10億ドルへ引き上げ、2027年に小型ジェットエンジン3000基、2028年初めまでにヴァルキリー無人機を年約40機生産する体制を目指している。しかし、2026年4~6月期のGAAP営業損益は赤字であり、開発費と設備投資の先行負担は続く。
最大の問題は資本効率である。2025年の自己資本利益率は1.1%にすぎず、過去10年の中央値もマイナスだった。2026年には13.48億ドルの公募増資を行った。新しい資金を利益率の高い量産事業へ変えられれば価値は生まれるが、受注前の設備と開発に資金を投じ続けるなら、売上が増えても株主の取り分は増えにくい。
2035年の中立では売上約34.9億ドル、純利益3.25億ドルを見込む。これは現在から大幅な収益改善を必要とする筋書きだが、自己資本に対する利益率はなお資本コストに届かない。5つの筋書きと正味還元を割り引いた形式上の現在価値は約6.3億ドルで、比較対象の時価総額約73億ドルを約91%下回る。ただし、2026年に実施済みの増資を期間中の負の還元として再控除する影響が含まれる。この重複を除く感応度でも価値は約15億ドルにとどまり、割高という結論は変わらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず10年後も必要な仕事かを考える。無人機、ミサイルの試験、衛星通信、電子戦は必要とされ続ける可能性が高い。しかし、社会に必要な技術を扱っていることは、その技術を持つ会社が利益を独占できることを意味しない。国防総省は常に複数の供給者を残そうとし、採用前の開発費を企業に負担させる力も持っている。
次に、利益のうち株主に渡せる部分を見る。2025年は純利益が出ても、設備投資と運転資金の増加によって現金は流出した。2026年も生産設備と在庫への投資が続く。会社が将来の量産を獲得できれば、この先行投資は高い増分利益を生む可能性がある。しかし、採用に失敗した設備や開発費は、ほかの顧客に簡単に転用できない。
最も気になるのは、規模の拡大と資本効率の改善が同時に起きるかである。2035年の中立では、現在よりはるかに高い営業利益率を見込んでも、増資によって厚くなった自己資本への利益率は6%程度にとどまる。資本コストを超える稼ぎが定着しなければ、成長によって価値を生む力は弱い。
会社には魅力的な技術と事業機会がある。一方、完成した堀と安定したオーナー利益を持つ企業とはまだ言い切れない。筆者は、量産契約が増えるだけでなく、営業利益率、投資後の現金収支、株式数の増え方が改善するまで、将来利益を高い確信で評価できない。現在の価格には、その不確実性を受け止める安全域が乏しい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、米国防総省と同盟国向けに防衛技術を開発し、装備品を納め、運用と試験を支援する仕事である。会社の開示上は、政府向け技術を束ねたKratos Government Solutions(KGS)と、無人機を扱うUnmanned Systems(US)の2事業に分かれる。2025年の売上はそれぞれ10.55億ドルと2.92億ドルだった。
KGSは実際には性質の違う仕事の集合体だ。防衛・ロケット支援とタービン技術では、標的ミサイル、固体ロケット、極超音速飛行試験、小型ジェットエンジンを供給する。顧客が購入するのは単なる部品ではなく、実際に飛ばして性能を証明できる能力である。2026年にはゼウスやオリオールの増産準備が進み、GEエアロスペースとの協力による巡航ミサイル向けエンジンも開発されている。
残るKGSの主要部分は、衛星地上局、マイクロ波電子機器、指揮通信装置、可搬式司令拠点、軍事訓練とサイバー関連業務である。OpenSpaceは衛星の制御機能をソフトウェア化する製品で、単純な業務用画面ではなく実際の通信設備を動かす。宇宙開発庁や通信事業者への採用実績があり、2026年にはオービットとノマドの買収で製品を広げた。
USは標的無人機と戦術無人機を製造する。ヴァルキリーは安価なジェット無人戦闘機として、有人戦闘機と協力する任務や単独の偵察・攻撃任務への採用を狙う。2026年にはエアバスとの欧州での飛行試験も進んだ。ただし、米空軍の協働無人戦闘機の初期量産契約はゼネラル・アトミクスとアンドゥリルが獲得しており、クラトスが主流機になることはまだ証明されていない。
収益は固定価格契約が中心で、原価が上がっても契約期間中は簡単に価格を変更できない。防衛装備は採用後の切り替えに手間がかかる一方、採用される前には価格と性能を厳しく競う。2025年の製品売上は8.78億ドル、サービス売上は4.69億ドルだった。会社の将来は、人員を増やして受託する仕事から、独自技術を載せた製品を大量生産する仕事へ移れるかにかかっている。
優良さと弱いところ
堀、つまり競合が簡単に奪えない強みは、開発速度と防衛装備の採用実績にある。クラトスは既存技術を組み合わせ、比較的安い費用で試作品を飛ばし、顧客の評価を早く得ることを得意とする。機体の飛行実績、ロケット試験施設、安全保障上の許可、衛星地上局の導入実績は、参入希望者が短期間で買えない資産である。
ただし、この強みは完成した独占ではない。米空軍の初期CCA量産では競合が選ばれた。衛星システムも、政府が接続方式を標準化すれば既存製品への依存は弱くなる。大型防衛会社が技術を内製化する可能性もあり、共同開発先が将来の競争相手になりうる。切り替え費用は一定程度存在するが、顧客が価格を受け入れ続ける強い証拠は乏しい。
値決め力も慎重に見る必要がある。2025年のKGSの固定価格契約は7.03億ドルに達した。会社は原材料費と人件費の上昇を契約更新まで転嫁しにくいと説明している。長期契約によって売上が安定しても、必ずしも利益が安定するわけではない。
資本効率は現在の弱点である。2025年の売上は伸びたが、GAAP営業利益率は2.1%にとどまり、フリーキャッシュフローは大幅なマイナスだった。2026年上期も設備投資、買収、在庫の積み増しが現金を消費している。投じた資金が将来の独占的な生産能力になるのか、それとも採用されない技術の残骸になるのかをまだ判断しきれない。筆者は現時点の堀を弱いと評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
防衛産業では、有人の高価な装備だけを少数保有する方法から、安価な無人機やミサイルを大量に用意する方法への転換が進む。クラトスの製品はこの変化に合っている。米国の2027年度予算要求は防衛支出を大きく増やす内容で、極超音速兵器、ミサイル生産、無人戦闘機、宇宙通信が重要分野となっている。ただし要求額がそのまま成立するとは限らず、予算の増加を会社の確定受注と混同してはならない。
無人戦闘機では、米空軍が2026年6月にゼネラル・アトミクスとアンドゥリルを初期量産の契約先に選び、計150機以上の製造へ進んだ。クラトスはこの最初の量産枠を獲得していない。今後は海兵隊、同盟国、標的無人機、別の調達段階で市場を広げる必要がある。競争相手にはエアロバイロメント、シールドAI、ロッキード・マーチンもいる。
ミサイルと推進装置では、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、L3ハリスなどが主契約者または重要供給者である。クラトスは小型エンジン、標的機、試験設備で入り込む余地がある。しかし、低価格の装備を量産するには、品質の安定した工場と部品供給網が必要になる。技術の優秀さよりも、納期と歩留まりが利益を決める局面へ移る。
宇宙・電子機器では、低軌道衛星の増加、衛星通信の耐妨害性、移動式通信設備が需要を支える。競合はL3ハリス、ロッキード・マーチン、ビアサット、エアロバイロメント傘下の宇宙関連事業などである。顧客が機器とソフトウェアを別々に調達できるようになると、標準化は市場を広げると同時に価格競争を促す。
市場規模については注意が要る。会社は細分化した事業別売上や販売数量をすべて開示していない。このため、以下の市場規模とシェアは国防予算、契約実績、製造能力から組み立てた分析上の推計であり、公表済みの市場シェアではない。10年後の売上を決める最大の変数は、防衛予算そのものよりも、クラトスが量産の正式採用を何件獲得できるかである。
資本政策と M&A
経営の資本配分は、現在の株主に現金を返すより、将来の防衛装備市場へ先に投資する方針である。会社は配当を支払っておらず、近い将来の配当や自社株買いについて数字の約束はない。2026年の計画では設備投資が1.25~1.35億ドル、フリーキャッシュフローは0.85~1.05億ドルのマイナスとなる見通しだ。
資金調達の規模は大きい。2024年に約3.31億ドル、2025年に約5.56億ドル、2026年2月に約13.48億ドルを公募増資で調達した。2026年6月末の現金は約14.38億ドル、自己資本は34.27億ドルとなったが、その多くは既存株主の利益ではなく新たな出資金である。2025年末の20.0億ドルという自己資本から増えた部分を、高い投資収益率の証拠として扱うことはできない。
買収も積極的だ。2019年のフロリダ・タービン・テクノロジーズへの投資は推進装置の技術基盤を作り、2025年のノーデン関連資産取得は電子機器を補強した。2026年にはノマド、オービット、ジェットセットの取得が成立した。オービットには約3.53億ドルを投じている。技術の範囲は広がったが、のれんと償却費も増えた。
長期の正味還元には、配当と自社株買いから株式報酬と増資の払い込みを引いた金額を使う。中立では期間累計の増資・株式報酬・買収株式の負担を、2030年代の一部買い戻しが相殺しても、なお16億ドルの負の還元となる。これは現時点の還元方針を延ばした保守的な見通しであり、将来の買い戻しは経営陣の約束ではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防衛装備の調達方法は大きな転換点にある。米軍は高価な機体を少数購入するだけでなく、安価な無人機、巡航ミサイル、極超音速装備を多数用意しようとしている。クラトスはヴァルキリー、標的無人機、小型ジェットエンジン、ロケット試験設備という複数の入り口を持つ。顧客が量産を始めれば、同社が長年積み上げた開発費と工場投資の価値が一度に表れる可能性がある。
会社の受注残は2026年6月末に20.84億ドルとなり、直近12か月の受注額は19.90億ドルだった。2026年の売上見通しも引き上げられた。2027年の小型エンジン3000基、2028年のヴァルキリー年40機という生産目標は、試作品の企業から製造業への転換を示している。欧州ではエアバスとの協力があり、米国の一つの調達計画だけに依存しない可能性もある。
宇宙分野でもOpenSpaceの採用、宇宙開発庁の契約、電子機器の買収によって技術の幅が広がった。製造数量が増えて単位原価が下がれば、売上以上の速度で利益が増える。量産設備は既に準備されており、追加の研究開発費を売上全体に薄く広げられる。
2035年に売上が約69億ドルへ伸び、営業利益率が16%近くまで改善する展開は、決して物理的に不可能ではない。この場合、GAAP純利益は9億ドルを超え、資本コストを上回る収益率がようやく現れる。初期CCAを失っても、別の無人機市場と推進装置で大きく成長できる点に、この会社の魅力がある。
慎重な見方
最大の弱点は、事業機会と株主利益の間に長い距離があることだ。クラトスは既に無人機、宇宙通信、ロケット、エンジンへ多額の資金を投じている。しかし、2025年のGAAP営業利益率は2.1%で、2026年4~6月期は営業赤字だった。2026年通期の会社見通しでもGAAP営業利益率は約1%にすぎない。売上の拡大が利益へ変わることはまだ実証されていない。
無人戦闘機での競争は厳しい。米空軍はゼネラル・アトミクスとアンドゥリルを初期量産先に選んだ。自律飛行のソフトウェアも機体とは分離して発注され、機体製造者が制御技術まで独占する仕組みではない。ヴァルキリーが技術的に優れていても、予算の中心から外れる可能性は残る。
固定価格契約の危険も大きい。原材料、人件費、品質保証費用が上がれば利益率は縮む。工場を増やしてから顧客の採用が遅れれば、減価償却と人件費だけが先に発生する。政府予算の遅れや量産仕様の変更が重なると、受注残があっても現金は不足する。
資本政策にも注意が必要だ。2024年から2026年にかけて大きな公募増資が続き、さらに買収での株式交付と株式報酬がある。会社全体の売上が増えても、既存株主の取り分は薄まる。買収した事業の収益が計画に届かなければ、のれんの減損も起こりうる。
10年後に構造的な敗者となる筋書きでは、無人機のシェアを失い、ロケットの低価格競争に巻き込まれ、宇宙分野のソフトウェアが標準化される。残るのは低い利益率の受託製造と技術支援業務である。成長市場に参加したこと自体では、株主の資本を守れない。
どちらに重みを置いたか
技術と市場機会については強い成長の余地を認める。ただし、利益の質、採用競争、増資の継続という株主の立場から見ると慎重な判断が勝る。楽観とやや楽観を合計33%、中立を31%、やや悲観と悲観を36%とした。AIによる工数業務の代替も一部にあるが、悲観確率を厚くした主因は無人機の採用競争と資本効率である。
同じ防衛領域の完成した主契約者と違い、クラトスには長期の高いROEの実績がない。中立でも現在価値は時価総額に届かず、増資を重複控除しない感応度でも大きな差が残る。結論は大幅な割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 20.28 ドル38 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 −7.40 ドル−14 億ドル)。 今の値に割り戻すと 3.62 ドル7 億ドル、今との差 −91.2%、 期待の年率 −9.2%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 15% | 52.68 ドル99 億ドル | −4.24 ドル−8 億ドル | +17.9% | +1.6% | 7.27 ドル14 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 23.90 ドル45 億ドル | −6.36 ドル−12 億ドル | −57.3% | −7.2% | 3.16 ドル6 億ドル |
| 中立 | 31% | 14.65 ドル28 億ドル | −8.48 ドル−16 億ドル | −85.0% | −12.9% | 1.91 ドル4 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 11.36 ドル21 億ドル | −9.01 ドル−17 億ドル | −94.3% | −15.6% | 0.52 ドル1 億ドル |
| 悲観 | 14% | 7.42 ドル14 億ドル | −7.16 ドル−14 億ドル | −99.4% | −19.1% | 0.04 ドル0 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 20.28 ドル38 億ドル | −7.40 ドル−14 億ドル | −68.6% | −9.2% | 12.89 ドル24 億ドル |
今の株価時価総額 41.09 ドル77 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 15% 楽観:無人機と推進装置の量産が定着し、独自製品の利益が厚くなる 利益 9 億ドル · PER 10.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 52.68 ドル99 億ドル
2035年には安価な無人戦闘機とミサイルの大量調達が定着する。クラトスは米軍の後続調達とエアバスを通じた欧州市場で採用を増やし、無人機の対象市場におけるシェアを15%まで広げる。対象市場の実質規模は95億ドルとなり、価格は製造効率によって物価より緩やかに上がる。ヴァルキリーの生産は2028年の年40機という初期目標を大きく上回り、機体と制御装置の共通化が原価を下げる。
ロケット・推進装置では、小型エンジンと固体ロケットの量産が成功する。関連市場は実質210億ドル、シェアは8.5%に伸びる。宇宙・電子機器もOpenSpaceの導入基盤と買収事業の統合が実を結び、対象市場の6%を取る。競合のアンドゥリル、ゼネラル・アトミクス、L3ハリスと競争しながらも、複数分野で独自の位置を確立する。
売上は約69.1億ドル、営業利益は11.03億ドルとなる。製品の量産による固定費の吸収と高い独自技術比率によって、全社営業利益率は約16%へ改善する。GAAP純利益は9.2億ドルである。2030年代には一部の現金を自社株買いに回すが、初期の増資と株式報酬を差し引くと正味還元はなお負となる。10年間の純利益累計39億ドルと正味還元マイナス8億ドルによって、最終自己資本は67億ドルとなる。
- 防衛ロケット・ミサイル推進・極超音速技術:数量 17.9(関連する米国・同盟国のロケット、推進装置、試験・標的システム市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.43(装備品・試験契約の平均実現単価指数(2025年=1))→ 売上 26 億ドル・営業利益 5 億ドル。実質市場210億ドル×シェア8.5%。エンジンとロケット量産が成功し、単価指数1.43。
- 宇宙・衛星通信・マイクロ波電子機器・C5ISR:数量 16.2(防衛・商用の衛星地上設備、通信電子機器、C5ISR関連市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.48(システム、部品、統合契約の平均単価指数(2025年=1))→ 売上 24 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質市場270億ドル×シェア6%。OpenSpaceと電子機器の採用拡大、単価指数1.48。
- 政府向け時間・材料契約と工数型技術支援:数量 0.5(政府向け専門技術支援の工数需要市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.30(人月・工数契約の実現単価指数(2025年=1))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。AI代替を受ける人月・工数需要は最大でも2025年並み。成果型への転換を織り込まず、価格指数1.30。
- 無人航空機・標的機・自律飛行システム:数量 14.3(米国・同盟国の対象となる標的無人機と比較的安価な戦術無人機の市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.33(機体、関連装備、保守契約の平均単価指数(2025年=1))→ 売上 19 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質市場95億ドル×シェア15%。量産で機体の実質単価は下がるが収益性は改善。
倍率:2035年のROEは9.2÷67=13.73%。k9.25%、moat=weakの残存割合1/3からRONICは約10.74%。gは名目3.6%で、防衛市場の実質需要増加と価格上昇から求めた。翌期利益に対する正当化PERを2035年利益に直すと約12.2倍となる。量産成功でも将来の再投資と政府調達競争が残るため、その約89%である10.8倍を使用する。2035年の増収率は高成長期より落ちる前提であり、倍率に高成長を重複計上していない。純利益は株式報酬を費用としたGAAPベース。
確率:無人機の複数顧客への量産採用、エンジンの大量生産、宇宙通信設備のシェア拡大が同時に成功する筋書き。市場機会は大きいが、初期CCA量産の敗北と過去の低利益率を考え、成功が重なる確率は15%とした。
やや楽観 18% やや楽観:主力製品の採用が増え、製造業としての収益力が育つ 利益 5 億ドル · PER 9.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 23.90 ドル45 億ドル
防衛用エンジンと標的無人機の増産が続くが、採用市場は楽観ほど広がらない。小型推進装置では国防総省の一部量産計画に入り、関連市場165億ドルの7%を確保する。ヴァルキリーは米軍の後続案件と同盟国に採用されるものの、ゼネラル・アトミクスとアンドゥリルの主流機体を置き換えるほどではない。
衛星通信と電子機器では、既存顧客への追加納入が増える。市場の実質規模は240億ドルとなり、クラトスのシェアは5%へ伸びる。固定価格契約の更新で費用上昇を回収できるが、価格が自由に上げられるわけではない。工数型サービスはAIの影響を受け、数量が2025年の9割へ減る。
売上は約47.2億ドル、GAAP営業利益は約6.51億ドルになる。利益率は現在より大きく改善するが、設備と研究開発への支出は続く。純利益4.9億ドルに対し、自己資本は57億ドルとなり、ROEは資本コストにほぼ届く水準である。期間累計純利益25億ドルと正味還元マイナス12億ドルを反映し、配当を前提にしない企業としての姿が残る。
- 防衛ロケット・ミサイル推進・極超音速技術:数量 11.6(関連する米国・同盟国のロケット、推進装置、試験・標的システム市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.41(装備品・試験契約の平均実現単価指数(2025年=1))→ 売上 16 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質市場165億ドル×シェア7%、価格は物価並み。
- 宇宙・衛星通信・マイクロ波電子機器・C5ISR:数量 12.0(防衛・商用の衛星地上設備、通信電子機器、C5ISR関連市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.43(システム、部品、統合契約の平均単価指数(2025年=1))→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質市場240億ドル×シェア5%、衛星制御と電子機器の構成改善。
- 政府向け時間・材料契約と工数型技術支援:数量 0.5(政府向け専門技術支援の工数需要市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.28(人月・工数契約の実現単価指数(2025年=1))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。工数需要は2025年比0.90倍、価格指数1.28。
- 無人航空機・標的機・自律飛行システム:数量 9.8(米国・同盟国の対象となる標的無人機と比較的安価な戦術無人機の市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.35(機体、関連装備、保守契約の平均単価指数(2025年=1))→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場75億ドル×シェア13%。量産で利益率が上がる。
倍率:ROEは4.9÷57=8.60%。k9.25%に届かず、moat=weakの残存割合1/3からRONICは約9.03%。市場の実質需要と価格を基にg3.6%とすると、2035年利益に対する正当化PERは約11.0倍。固定価格契約と設備投資の重さを考慮し、その約83%である9.2倍とした。ROEがk以下の会社に適用される1÷kの上限も守る。利益はGAAPで株式報酬を控除済み。
確率:エンジンと無人機のいずれかが大型量産へ進み、宇宙事業も安定成長する展開。技術と受注の実績から十分に可能だが、同時に高い利益率を定着させるには生産工程の改善が必要なため18%。
中立 31% 中立:売上は大きく伸びるが、資本効率の改善は限定的 利益 3 億ドル · PER 8.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 14.65 ドル28 億ドル
2035年にはクラトスが防衛産業の中堅供給者として一定の位置を得る。小型エンジンとロケットは量産が進み、関連市場135億ドルの6%を取る。宇宙通信、マイクロ波電子機器、指揮通信設備では、顧客の更新需要に支えられながら市場の4.5%を獲得する。初期CCAで先行するゼネラル・アトミクスとアンドゥリルに対して、クラトスは標的機と別用途の低価格戦術機で競争する。
無人機の対象市場は実質65億ドルに拡大するが、クラトスのシェアは11%にとどまる。機体の実質単価は競争と技術進歩で下がり、名目の価格指数は1.31となる。KGSの工数型契約はAIエージェント代替によって数量が2025年の7割に縮む。衛星地上局の実時間制御と物理装備の保守は残り、同じ縮みは受けない。
売上は約34.9億ドル、営業利益は4.14億ドルとなる。これは2025年の低い利益率から大幅に改善した姿であり、現状を単純に延ばしたものではない。GAAP純利益は3.25億ドルとなるが、10年間の純利益累計17.5億ドルに対して正味還元はマイナス16億ドルである。期末自己資本は53.5億ドルとなり、ROEは約6.1%と資本コストを下回る。成長は実現しても、株主の資本に十分な利回りを生めない筋書きである。
- 防衛ロケット・ミサイル推進・極超音速技術:数量 8.1(関連する米国・同盟国のロケット、推進装置、試験・標的システム市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.41(装備品・試験契約の平均実現単価指数(2025年=1))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場135億ドル×シェア6%。単価は物価並みの1.41倍。
- 宇宙・衛星通信・マイクロ波電子機器・C5ISR:数量 9.7(防衛・商用の衛星地上設備、通信電子機器、C5ISR関連市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.41(システム、部品、統合契約の平均単価指数(2025年=1))→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場215億ドル×シェア4.5%。単価は物価並み。
- 政府向け時間・材料契約と工数型技術支援:数量 0.4(政府向け専門技術支援の工数需要市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.20(人月・工数契約の実現単価指数(2025年=1))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替により工数需要0.70倍、価格指数1.20。
- 無人航空機・標的機・自律飛行システム:数量 7.2(米国・同盟国の対象となる標的無人機と比較的安価な戦術無人機の市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.31(機体、関連装備、保守契約の平均単価指数(2025年=1))→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場65億ドル×シェア11%。実質単価は低下する。営業利益率16%は量産定着を必要とする。
倍率:2035年のROEは3.25÷53.5=6.07%。k9.25%、moat=weakの残存割合1/3からRONICは約8.19%。市場需要の実質成長と物価を基にg3.6%とすると、2035年利益に対する正当化PERは約10.3倍となる。利益率の改善が未実証で、再投資に十分な超過利益がないため、上限の約79%である8.1倍を選んだ。ROEがk未満なのでPERは1÷k以下。時価総額はGAAP純利益3.25億ドル×8.1倍で26.325億ドル。
確率:2026年の受注増と量産準備を一定程度評価する一方、初期CCAの敗北、固定価格契約、設備投資負担を織り込む。成長市場の中で一部の製品は成功するが、全製品が大きな利益を生むわけではないため31%を中心に置く。
やや悲観 22% やや悲観:量産の採用が限られ、投資回収に時間がかかる 利益 2 億ドル · PER 7.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 11.36 ドル21 億ドル
クラトスは一部の無人機と推進装置で採用を得るものの、米空軍の主要調達ではアンドゥリルとゼネラル・アトミクスが優位を保つ。無人機市場の実質規模は70億ドルまで広がるが、クラトスのシェアは9%へ下がる。機体単価も競争で抑えられ、設備を十分に稼働させるには継続的な契約獲得が必要になる。
ロケット分野では市場が拡大するが、L3ハリスやノースロップ・グラマンとの競争によりシェアは5.2%にとどまる。衛星通信も標準化によって価格交渉力が弱まり、市場の4%を取るにとどまる。工数型の政府契約はAIによる省人化で実質需要が2025年の55%へ縮む。2026年に買収した事業の統合費用と設備の固定費は長く残る。
売上は約29.8億ドル、営業利益は2.95億ドルとなる。既存装備の更新需要があるため赤字企業にはならないが、成長投資に見合う利益率は得られない。純利益は2.4億ドル、期間累計の純利益は13億ドルである。正味還元マイナス17億ドルを反映した自己資本は50億ドルとなり、ROEは4.8%にとどまる。事業は存続するが、増資によって大きくなった資本を十分に生かせない。
- 防衛ロケット・ミサイル推進・極超音速技術:数量 7.3(関連する米国・同盟国のロケット、推進装置、試験・標的システム市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.32(装備品・試験契約の平均実現単価指数(2025年=1))→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場140億ドル×シェア5.2%。単価上昇は物価未満。
- 宇宙・衛星通信・マイクロ波電子機器・C5ISR:数量 9.0(防衛・商用の衛星地上設備、通信電子機器、C5ISR関連市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.33(システム、部品、統合契約の平均単価指数(2025年=1))→ 売上 12 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場225億ドル×シェア4%。標準化による価格競争。
- 政府向け時間・材料契約と工数型技術支援:数量 0.3(政府向け専門技術支援の工数需要市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.08(人月・工数契約の実現単価指数(2025年=1))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替で工数需要0.55倍。単価はほぼ据え置き。
- 無人航空機・標的機・自律飛行システム:数量 6.3(米国・同盟国の対象となる標的無人機と比較的安価な戦術無人機の市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.25(機体、関連装備、保守契約の平均単価指数(2025年=1))→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場70億ドル×シェア9%。量産の一部は維持するが価格競争が強い。
倍率:ROEは2.4÷50=4.8%。k9.25%、moat=weakのRONICは約7.77%。この筋書きでは市場の実質伸びを失い、2035年以降のgを2.7%に落とす。正当化PERは約10.2倍だが、受注競争、更新投資、利益率の不安定さから7.3倍に抑える。中立の8.1倍を下回り、事業純利益をkで割った稼ぐ力の上限も超えない。GAAP純利益を使用。
確率:無人機の大型案件を競合が維持し、クラトスは既存の標的機と部品供給が中心になる。ロケット・衛星事業は残るが、シェア拡大と値上げが弱い。固定費と買収償却が重く、十分に起こりうるため22%。
悲観 14% 悲観:主力技術が構造的に敗れ、残存設備と契約を売って価値を守る 利益 0 億ドル · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7.42 ドル14 億ドル
2035年にはクラトスの主要な無人機技術が米軍の中心的な調達仕様から外れる。ゼネラル・アトミクスとアンドゥリルが機体を、別の企業が自律制御ソフトを押さえ、クラトスは標的機や小規模な特殊用途を主に扱う。無人機の対象市場は成長してもシェアは5%へ下がり、単価も物価に追いつかない。ヴァルキリー向けに増やした設備の一部は稼働を止める。
推進装置でも量産契約を十分に取れず、関連市場のシェアは3.5%となる。宇宙・電子機器ではオープンな通信仕様が普及し、クラトスの独自システムへの依存が弱まる。KGSの工数型業務はAIによる自動化で2025年の43%まで縮む。2027~2030年に開発損失、固定価格契約の追加費用、買収のれんの減損を計上し、その後は採算の取れる仕事に絞る。
2035年の売上は約13.3億ドル、営業損益はほぼ均衡となる。現金の受取利息によってGAAP純利益は0.18億ドルを確保するが、事業の稼ぐ力は弱い。10年間の純利益累計は減損を含めマイナス3.5億ドルであり、2025年の自己資本20億ドルに正味還元マイナス13.5億ドルを反映すると、期末自己資本は約30億ドルとなる。2030年代後半には非中核資産の売却で一部の資金を株主に戻すが、それまでの増資を十分に取り戻せない。企業価値は収益倍率よりも、残る現金、回収可能な債権、設備、売却可能な技術で支えられる。
- 防衛ロケット・ミサイル推進・極超音速技術:数量 3.4(関連する米国・同盟国のロケット、推進装置、試験・標的システム市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.22(装備品・試験契約の平均実現単価指数(2025年=1))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質市場97億ドル×シェア3.5%。主要量産契約を失う。
- 宇宙・衛星通信・マイクロ波電子機器・C5ISR:数量 5.4(防衛・商用の衛星地上設備、通信電子機器、C5ISR関連市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.22(システム、部品、統合契約の平均単価指数(2025年=1))→ 売上 7 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質市場170億ドル×シェア3.2%。標準化と内製化で優位性が低下。
- 政府向け時間・材料契約と工数型技術支援:数量 0.2(政府向け専門技術支援の工数需要市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.00(人月・工数契約の実現単価指数(2025年=1))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。AI代替で工数需要0.43倍、価格は2025年のまま。
- 無人航空機・標的機・自律飛行システム:数量 2.0(米国・同盟国の対象となる標的無人機と比較的安価な戦術無人機の市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア)× 価格 1.13(機体、関連装備、保守契約の平均単価指数(2025年=1))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質市場40億ドル×シェア5%。新たな主力機体を獲得できない。
倍率:構造的に敗れた会社は、わずかな利益に高い倍率を掛けない。2025年の自己資本20億ドルに、回収可能資産の価値14億ドルを反映したPBR0.70倍を適用する。2035年の自己資本30億ドルへ倍率を掛けて評価を膨らませない。稼ぐ力による価値は純利益0.18億ドル÷k9.25%で約1.95億ドルにすぎず、売却可能資産14億ドルの方が大きい。株主に残る資産価値を床とするものであり、過去の市場倍率を根拠にしていない。
確率:無人機の量産採用に失敗し、推進装置と衛星通信でも競合の標準方式に押される。投資済み設備の減損と数年の赤字が重なる構造的な敗北である。市場自体は残るため倒産を基本にはしないが、成長投資が大きい会社では無視できない14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
防衛ロケット・ミサイル推進・極超音速技術
KGSの防衛・ロケット支援とタービン技術に相当する推計事業。標的ミサイル、極超音速試験、固体ロケット、小型ジェットエンジンを扱う。
| 数量関連する米国・同盟国のロケット、推進装置、試験・標的システム市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア | 価格装備品・試験契約の平均実現単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.0 | 1.00 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.1 | 1.41 | 11 | 2 |
取り方:2025年のKGS売上10.548億ドルのうち、DRSSとKTTに相当する約4.0億ドルを分析上の推計として割り当てた。会社はこの二事業の独立売上とエンジン別販売単価を開示していない。対象市場は米国の極超音速開発・調達支出に、標的ロケット、試験設備、小型推進装置と同盟国需要を加え、重複を除いた2025年固定価格約80億ドルと推計した。シェア5.0%なら売上4.0億ドルとなる。2026年の会社説明では2027年に小型エンジン3000基の生産体制を目標とする。競争相手はL3ハリス、ノースロップ・グラマン、ロッキード・マーチンなどで、競合別の同一市場シェアは未開示。市場規模とシェアはいずれも推計であり、実測値ではない。
宇宙・衛星通信・マイクロ波電子機器・C5ISR
KGSの宇宙・衛星・サイバー、電子機器、通信システム、可搬式司令設備、専門訓練などをまとめる。人月課金として識別できる部分は別に分ける。
| 数量防衛・商用の衛星地上設備、通信電子機器、C5ISR関連市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア | 価格システム、部品、統合契約の平均単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6.0 | 1.00 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 9.7 | 1.41 | 14 | 2 |
取り方:2025年KGS売上10.548億ドルからロケット・推進の推計4.0億ドルと、開示されたKGSの時間・材料契約0.528億ドルを除く6.02億ドルをこの群に配分した。内訳の会社開示がないため推計である。対象市場は衛星地上局と制御ソフトウェア、防衛マイクロ波機器、可搬式指揮通信設備を合わせた2025年固定価格150億ドルと推計し、シェア約4.01%を逆算した。宇宙開発庁の1.167億ドルの地上システム契約、最大5.79億ドルの衛星通信指揮契約、OpenSpaceの採用実績を需要の裏付けとした。競合はL3ハリス、ロッキード・マーチン、ビアサット、エアロバイロメント傘下事業など。部品数量と個別単価は非開示である。
政府向け時間・材料契約と工数型技術支援
KGSの時間・材料契約をAI代替にさらされる収益の識別可能な代理指標として切り出す。実際には現場作業も含むため、全額が事務作業ではない。
| 数量政府向け専門技術支援の工数需要市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア | 価格人月・工数契約の実現単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.5 | 1.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 1.20 | 0 | 0 |
取り方:2025年10-KはKGSの時間・材料契約を5280万ドルと開示している。対象となる政府向け専門技術支援の市場を2025年固定価格60億ドルと仮定した場合のシェアは0.88%。時間・材料契約のすべてが純粋な人月商売とは限らないが、保守的に全額をAIエージェント代替の数量制約に入れる。中立では実質工数需要を10年で0.70倍、価格を1.20倍、長期gを0%とする。軍用機の実地試験、施設操作、機密設備の保守は物理的作業であり、通常の事務処理と同じ縮みは適用しない。類似する政府ITの競合はレイドス、CACI、ブーズ・アレン、SAICなど。
無人航空機・標的機・自律飛行システム
ヴァルキリー、標的無人機、関連する制御・運用装置と無人システムを扱う会社開示のUS事業。
| 数量米国・同盟国の対象となる標的無人機と比較的安価な戦術無人機の市場(2025年固定価格の億ドル)×クラトスのシェア | 価格機体、関連装備、保守契約の平均単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.9 | 1.00 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 7.2 | 1.31 | 9 | 1 |
取り方:2025年のUS事業売上2.920億ドルは会社の10-Kによる。標的無人機、低価格戦術機体、関連制御装置の対象市場を2025年固定価格30億ドルと仮定すると、会社の推計シェアは9.73%。市場規模は2027年の米空軍CCA調達予算約10億ドル、従来型の標的機需要、同盟国向け調達を参考にした分析上の仮定であり、会社が公表したシェアではない。2026年6月の米空軍CCA初期量産はゼネラル・アトミクスとアンドゥリルが獲得したため、クラトスの同案件の初期量産シェアは0%。2028年のヴァルキリー年40機という会社目標を今後の数量増加の検証点とした。機種ごとの納入数と単価は非開示である。
リスクと懸念
無人戦闘機の採用競争
米空軍は2026年6月、協働無人戦闘機の初期量産にゼネラル・アトミクスとアンドゥリルを選んだ。クラトスのヴァルキリーは別用途や後続調達で受注できる可能性があるが、初期の主流機体ではない。米軍が選定済み機体を大量調達し、その仕様を同盟国が採用すれば、クラトスの対象市場シェアは伸びず、事前に増設した工場の採算が悪化する。
固定価格契約と量産品質
防衛製品は材料費、人件費、部品不足、検査のやり直しによって採算が変わる。固定価格契約では追加費用を契約期間中に顧客へ転嫁できないことが多い。2026年も会社は部品と材料の値上がりを警戒している。量産初期に不良率が高い状態が続けば、売上が会社の計画どおり増えてもGAAP利益と現金収支は改善しない。
増資と株式報酬による持ち分の希薄化
2024年、2025年、2026年に大規模な公募増資が行われた。株式報酬も2026年の会社見通しで年間0.60~0.64億ドルと大きい。将来の量産契約を取るためにさらに資金が必要なら、企業全体の売上が増えても既存株主の利益は薄まる。現金を調達できたことと、その現金が資本コスト以上の利益を生むことは区別すべきである。
買収の統合と減損
ノマド、オービットなどの買収によって製品の幅は広がったが、2026年6月末ののれんは約8.71億ドルまで増えた。買収後の利益が期待に届かない場合は無形資産の償却負担だけでなく、のれんの減損が起こりうる。とくに通信電子機器の標準化や顧客側の内製化が進むと、買収時に見込んだ技術の希少性が下がる。
国防予算と量産発注の遅れ
防衛需要は地政学的な緊張に支えられているが、予算要求は確定発注ではない。議会の予算審議、つなぎ予算、装備の仕様変更によって、試験から量産へ移る時期は数年単位で動く可能性がある。クラトスは顧客契約の前に資金を投じるため、政府の採用判断が遅れるほど在庫、設備、開発要員の負担が長引く。
AIエージェント代替と政府技術支援の縮小
2025年のKGSの時間・材料契約は0.528億ドルで、全社売上の約4%に相当する。技術調査、文書作成、ソフトウェア試験、報告業務などはAIエージェントで必要工数が減る可能性がある。一方、飛行試験や通信施設の物理操作まで同じ割合で縮むわけではない。本分析は識別可能な時間・材料契約の全額に保守的な数量縮小を適用した。
衛星制御ソフトの標準化と競争
OpenSpaceは衛星通信の仮想化で先行しているが、米政府は装備を特定企業へ固定しないためのオープンな接続方式も推進する。通信機器、地上局ソフト、運用サービスが分離して発注されれば、新規参入者が一部を低価格で提供できる。独自のシステムを持つ優位性は残っても、値上げの自由が広がるとは限らない。
今後の分かれ目
- 2028年までにヴァルキリーの年40機生産体制が稼働し、複数顧客から継続的な量産発注を獲得したら
- 無人機の数量見通しをやや楽観側へ引き上げる。機体の販売数と粗利益率を確認し、初期投資の回収が始まるかを評価する。
- 2027年の小型ジェットエンジン3000基という生産目標を達成し、翌年も同規模の有償需要が続いたら
- 推進装置事業の市場シェアと製造歩留まりを上方修正する。生産能力だけでなく、納入と代金回収の継続を条件とする。
- 全社GAAP営業利益率が2028~2029年に8%を超え、営業キャッシュフローが継続して設備投資を上回ったら
- 中立の利益率回復の確信度を高める。新たな増資を必要としないなら、株主の正味還元の見通しも改善する。
- 米空軍の後続CCA調達でもクラトスが主力機体を獲得できず、同盟国向け量産も遅れたら
- 無人機のシェアを悲観側へ下げる。量産設備の稼働率と資産減損を再評価し、利益率の回復を遅らせる。
- OpenSpaceの大型契約が複数更新され、製品の平均単価が物価以上に上がりながら採用顧客が増えたら
- 宇宙通信事業の切り替え費用と価格決定力の証拠とする。ただし契約総額だけでなく、実際の売上と継続利益を確認する。
- 2027年以降も大規模な公募増資が続き、設備投資後のフリーキャッシュフローが改善しなかったら
- 資本効率の回復確率を下げ、正味還元のマイナスを拡大する。企業全体の時価総額が増えても、株主の実質的な取り分は増えにくい。
- 工数型の政府契約がAIエージェントの採用によって急減し、固定価格のソフトウェア契約でも単価低下が確認されたら
- 人月型収入の数量を悲観側へ寄せ、価格上昇率も引き下げる。影響を物理装備全体へ機械的に広げず、該当契約の比率を調べ直す。
見ておくもの
- ヴァルキリーの顧客別の有償量産受注、実際の年間納入機数、製造歩留まり
- 小型ジェットエンジンの2027年3000基生産計画と、その後の継続発注
- KGSとUSの受注残、受注高÷売上高、受注残のうち資金が確保された割合
- KGSとUSのGAAP営業利益率、買収償却費、株式報酬、本社費用
- 営業キャッシュフロー、設備投資、運転資金、フリーキャッシュフローの改善
- 政府のCCA後続調達、同盟国向け無人機契約、競合企業の採用状況
- OpenSpaceの更新・追加契約、衛星地上局の標準化、電子機器の利益率
- 追加増資と買収株式の発行、株式報酬を差し引いた正味還元
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約73億ドルや過去のPERを利益予想の根拠にしていない。まず無人機、推進装置、宇宙・電子機器、工数契約の実質市場規模とシェアを分け、名目単価を掛けて2035年の売上を作った。倍率はk9.25%、市場・シェア・単価から導いたg、弱い堀のRONICによる正当化PERの内側に置いた。中立PER8.1倍は正当化上限約10.3倍の約79%。悲観は現在の自己資本20億ドルと売却可能資産14億ドルから床を出し、将来積み上がる自己資本へ床のPBRを掛けていない。なお、2026年の実施済み増資を負の還元へ含める計算には、2026年10月時点の株式数との比較で重複控除の問題がある。その約13.48億ドルを還元から除く感応度では現在価値が約15億ドルになるが、なお時価総額を大幅に下回る。2026年の第三四半期決算は11月5日発表予定であり未反映。米国のASC842によるリース負債は既に財務諸表に含まれる。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に事業の質の上乗せ1.25%を加え、資本コストを9.25%とした。βや現在の市場倍率は用いていない。エアロバイロメントの9.2%、ロケット・ラボの9.0%に近いが、防衛主契約者の7.8~8.0%より高い。量産の未成熟、固定価格契約、技術競争の危険による差である。存続危機は認められないためdistressの上乗せはない。