結論
SAICは、米国の国防総省、情報機関、国境警備などのために、複雑なシステムをつなぎ、維持する政府技術サービス会社である。筆者の結論は割高だ。10年先も不可欠な仕事は残るが、人の作業時間を売る仕事がAIエージェントに置き換わるため、現在の利益がそのまま育つとは考えにくい。
2025/12期相当の売上は73億ドル、営業利益は5億ドルで、純利益は4億ドル弱だった。実際の会社決算は2026年1月末であり、添付データの年度表記とは一か月ほどずれる。直近の2026年7月末四半期は売上が前年を上回り、通期見通しも改善した。ただし直近12か月の受注倍率は0.8倍で、受注の積み直しに不安が残る。
堀、つまり競合が簡単に奪えない強みは、機密情報へのアクセス、政府の複雑な現場を知る人員、長年の契約履行実績にある。だが契約は再入札され、政府がデータとシステムを持つ。値上げを自由に通せる独占企業ではない。さらに純有利子負債は25億ドルと、年間の営業利益を大きく上回る。
現場の機器統合は増えても、IT運用・助言の工数は縮むと考える。中立では2035/12期の売上は約91億ドル、純利益は約4億ドルにとどまる。配当・買い戻しも加えた五つの筋書きの現在価値は約30億ドルで、添付株数による時価総額約62億ドルの半分ほどである。国防需要の伸びだけで埋まる差ではなく、安全域は乏しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、政府が十年先もこの会社の力を必要とするかが最初の問いである。答えは半分が「はい」だ。軍の指揮系統、宇宙の情報処理、入国審査のシステムは消えず、機密環境で装置を統合する仕事には長い経験が要る。しかし、人が何時間働くかで請求するIT業務まで同じ姿で残るとは言い切れない。
次に、その継続性を株主がどれほど受け取れるかを見る。政府が入札条件を決め、完成したデータの権利を持つ以上、SAICはサービスの不可欠さを利益率に十分変換できない。現場に深く入っていても、契約の再入札とAIによる作業量削減は避けられない。強い堀を持つ製品会社のような長い超過収益は期待しにくい。
オーナー利益は現金の余り方で確かめたい。直近のフリーキャッシュフローは約6億ドルだが、純負債25億ドルに加え、既存の仕事を守る人材・安全認証・提案活動に継続的な支出が要る。株式報酬と大きな買収も株主の取り分を薄くする。過去の豊富な自社株買いだけを将来の利回りと数えるべきではない。
最も厳しく見るのは安全域だ。現場統合の成長がAIの逆風を打ち消せても、中立の利益はほぼ横ばいである。売上を増やすために追加で投じた資本が資本コストを超えるか、十年先の投資家にはまだ証拠が足りない。買収で生じたのれんを資産の床とは認めず、負債を差し引いた残余を慎重に評価する。
何で稼ぐ会社か
SAICの顧客はほぼ米国政府で、売上の98%を元請け・下請けの連邦政府契約が占める。報告上は「防衛・情報機関」と「民生」の二部門だが、稼ぎの構造には大きな違いがある。前者は軍の指揮通信、宇宙・情報収集、車両の統合、デジタル設計などを担う。後者は国境で人と貨物を調べるシステムや、連邦機関のIT運用を支える。
収益は製品の販売台数ではなく、政府が発注する仕事の範囲と契約単価で決まる。2026年1月期の契約額のうち、原価償還型が62%、時間・材料型が22%、定額型が16%だった。原価償還型にも技術者の人件費が多く、時間・材料型はさらに作業量への依存が強い。数量は入札で確保した契約の実質的な仕事量、価格は仕事量当たりの契約収入である。
事業の本当の境目をつかむため、二つの報告部門を現場統合と人月型サービスに分けた。軍用装備に直接触れる試験、システム統合、機密環境の認証作業は、AIで文書が早くできても人手と責任が残る。一方、アプリケーション開発、運用監視、資料作成、技術助言は、発注する人数そのものが減りうる。2025年相当の売上73億ドルのうち約半分を後者とみるが、会社はこの四分割を開示していないため推計には幅がある。
企業は一つの巨大な製品を自社で所有しているわけではない。政府が持つデータ、装備、ソフトを安全につなぎ、動かし続けるのが主な仕事だ。2026年9月に受けた国境警備システムの約7億ドルの再受注は、実運用の切り替え費用が高いことを示す。一方、複数年の受注残は将来の売上をすべて保証するものではない。
優良さと弱いところ
一番の強みは、政府の現場に入り込んだ経験と機密業務に必要な人材だ。情報機関や国境のシステムを別会社に移すには、調達審査、権限設定、安全試験、引き継ぎが要る。20年以上続く顧客関係もあり、無名の新興企業が翌日から置き換えるのは難しい。2026年9月の税関・国境警備局との再契約は、その粘り強さを裏づける。
しかし堀の幅は広くない。政府は契約を便宜上終了でき、入札価格と過去の実績を並べて競争させる。顧客データや成果物の権利の多くは政府側にあり、SAIC独自の記録基盤に全員が閉じ込められる構図ではない。したがって継続率の高さは、値上げできる力と同じではない。AIで少人数が同じ仕事をこなせるほど、時間を売る側には逆風になる。
自己資本利益率は直近で約24%と高いが、自社株買いで自己資本が小さくなった影響がある。買収で積み上がったのれんと無形資産は約37億ドルあり、帳簿の自己資本15億ドルを大きく上回る。増分投資の収益率が十分高い証拠とはいえない。買収会社の利益が縮めば、減損と負債が同時に株主を傷つける。
AIへの対応として技術会社を買い、暗号と安全な統合を強めている点は評価する。ただし、独自製品の売上が会社全体を動かすほど大きくなったと確認できない限り、ソフト開発・運用受託まで守られた事業だとは扱わない。堀が残るのは現場の責任を負う仕事であり、人月型部分では縮むとみる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米連邦政府は、古いITを更新し、機密情報を安全に使い、少ない人員で任務を遂行する必要がある。市場そのものが消えるわけではない。デルテックは政府が外部調達するIT製品・サービスの市場を、2026年度の約1,445億ドルから2029年度の約1,646億ドルへ伸びると予測する。ただし、その成長が受託開発の人月に回るとは限らない。AIの普及で発注単位が人数から成果へ変わるためだ。
競合はレイドス、CACIインターナショナル、ブーズ・アレン・ハミルトン、ジェネラル・ダイナミクス、アクセンチュアの政府向け事業である。2026年の連邦技術契約ランキングでは、レイドス約118億ドル、ブーズ・アレン約93億ドル、CACI約57億ドルに対しSAICは約47億ドルだった。これは契約の集計であり、会計上の売上や市場シェアとは同じではない。それでもSAICが市場を支配していないことは明らかだ。
分けて考えるべきは、軍の装備・宇宙・情報システムの統合と、標準的なIT保守である。前者は防衛予算、機密認可、試験施設が仕事量を支え、実質需要はまだ増えうる。後者は政府の効率化圧力とAIエージェントが同じ方向に働く。2026年7月末の受注残は221億ドルだが、実際に予算が付いた部分は約38億ドルにすぎない。未行使の選択期間を確定収入とみなしてはいけない。
国境警備と軍の任務は今後も必要とされる一方、入札ではパランティアやアンドゥリルのような製品中心の競争相手が存在感を増す。製品に価値が移れば、技術者の人数を積み上げる会社は発注の主導権を失う。中立では現場統合の実質市場は十年で約二割伸びるが、一般IT業務の市場シェアは低下すると考える。
資本政策と M&A
経営は還元に積極的だ。直近の通期では配当が約0.7億ドル、自社株買いが約4.2億ドルで、株式報酬の希薄化を差し引いても資金の多くを株主へ戻した。2024年12月には最大12億ドルの買い戻し枠を承認している。
これは今後十年間の買い戻し額を約束したものではなく、四半期配当も都度の取締役会決議で決まる。2027年1月期の会社見通しは売上72〜73億ドル、調整後EBITDA7.50〜7.55億ドル、フリーキャッシュフロー6億ドル超である。有機的な売上成長はマイナス2%から0%で、長期の増収率や総還元額について数字の約束はない。
2015年のサイター、2019年のエンジリティ、2020年のユニシスの政府事業を買って規模を広げた。2025年10月にはシルバーエッジを約2億ドルで買い、2026年10月5日には暗号化ソフトのインフォメーション・セキュリティ・コーポレーションの買収完了を発表した。後者の対価は非開示であり、足元の財務から正確に差し引けない。
現時点でSAIC自身が買収・非公開化される合意は確認できない。特殊な複数議決権による支配よりも、取締役会の買い戻しと買収の判断が少数株主の取り分を左右する。
買収の成果は売上規模より稼ぐ力で測るべきだ。2019年以降、売上は大きくなったが、営業利益率は長く一桁台で、のれんが厚く残る。純負債は約25億ドル、年間EBITDAの約3.8倍である。
5.75%前後の借り換え金利を意識すると、買い戻しと追加買収を同時に続ける余裕は小さい。筆者は、AIによる受注減が現れたら、株主還元より財務の立て直しを優先してほしい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国の安全保障を担う情報システムは、景気の強弱で簡単に止められない。人工衛星、軍用車両、通信装置、国境の検査機器を接続する仕事は、装置ごとの秘密仕様と現場試験が壁になる。政府は既存の受託先を変える前に、権限、履行実績、安全性を一から確認しなければならない。SAICには長い取引履歴と幅広い機密業務の人材があり、この仕事が今後も増える余地は大きい。
2026年9月に更新した国境警備局向けの約7億ドルの契約は、その優位性を示した。情報機関のシステム工学でも数億ドルの再契約を獲得している。こうした案件を基礎に、国防予算の増加と宇宙・統合指揮の需要を取り込めば、現場統合の仕事量は十年で五割以上増えても不自然ではない。暗号、ゼロトラスト、安全なAI運用への投資も、契約を守る武器になる。
AIエージェントは利益を奪うだけではない。定型的な文書と運用監視を減らし、高度な技術者を設計と検証に振り向ければ、既存契約の履行費用が下がる。固定価格の案件では節約分を利益として残せる。人月型の仕事量が回復しなくても、価値の高い統合業務が主役になれば全社の利益率は改善する。
さらに、経営は業績が鈍い時期にも自社株買いを続け、株数を減らしてきた。将来の利益が増えれば、財務を壊さず還元を続けられる余地がある。長い受注残と自由現金の創出力を踏まえると、AIに負ける下請けではなく、機密の最終統合を引き受ける側になれる。
慎重な見方
この会社の強みの多くは、人員を抱えて政府の要求に応える能力でもある。その強みはAIエージェントの時代に弱みに変わりうる。仕様書の作成、コード生成、テスト、監視、問い合わせ対応まで少数の監督者で済めば、発注者は受託先の技術者数を減らせる。原価償還契約は原価が減れば請求額も減りやすい。生産性が上がっても、売上と利益が同じ速度で増えるとは限らない。
政府はデータと成果物の権利を保持することが多く、SAICだけが持つ巨大な情報資産で顧客を囲い込んでいるわけではない。レイドス、CACI、ブーズ・アレンの既存大手に加え、パランティア、アンドゥリルなど製品中心の供給者も任務の一部を奪う。入札が再開されるたび、今までの経験だけで契約を維持できる保証はない。単価は物価ほど上がらず、人月も減る二重の逆風になる。
2026年7月末の受注残221億ドルのうち、資金が確保された部分は約38億ドルである。直近12か月の受注倍率も0.8倍と売上を下回った。契約の選択期間が長くても、発注額が削られたり、選択期間が行使されなかったりすれば収入は減る。2027年度の通期売上見通しが、直近四半期の増収にもかかわらず既存事業では減収を含む点も見落とせない。
財務の余白も狭い。のれんと無形資産は自己資本を大きく上回り、純負債はEBITDAの約四倍ある。過去の買収で得た規模がAI時代の優位性に変わらなければ、買収価値の減損と受注減が同時に起こりうる。営業利益が半分になるだけでも利払いの負担は急に重くなり、買い戻しは止まる。
どちらに重みを置いたか
最も確かなのは現場統合の必要性であり、最も不確かなのは人月型業務の十年後の量だ。既存の重要契約と再受注の実績は下値を支えるが、巨大な受注残の多くは未手当の将来オプションであり、独自データの堀とは言えない。筆者は現場事業の成長を認めつつ、発注工数の減少と負債の重さを優先し、やや悲観25%と悲観15%の計40%に寄せた。中立自体にAIによる工数減を含め、確率で同じ縮小を二重には数えない。それでも現在価値は約30億ドルにとどまり、現行の約62億ドルには届かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 101.21 ドル43 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 46.53 ドル20 億ドル)。 今の値に割り戻すと 75.71 ドル32 億ドル、今との差 −50.1%、 期待の年率 −0.3%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 241.46 ドル102 億ドル | 94.34 ドル40 億ドル | +121.1% | +10.0% | 30.22 ドル13 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 164.77 ドル70 億ドル | 73.11 ドル31 億ドル | +56.6% | +5.5% | 40.44 ドル17 億ドル |
| 中立 | 34% | 124.67 ドル53 億ドル | 56.60 ドル24 億ドル | +19.4% | +2.1% | 61.63 ドル26 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 34.18 ドル14 億ドル | 21.23 ドル9 億ドル | −63.5% | −11.3% | 13.85 ドル6 億ドル |
| 悲観 | 15% | 3.54 ドル2 億ドル | 7.08 ドル3 億ドル | −93.0% | −29.2% | 1.59 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 101.21 ドル43 億ドル | 46.53 ドル20 億ドル | −2.7% | −0.3% | 147.74 ドル63 億ドル |
今の株価時価総額 151.86 ドル64 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 楽観:機密の現場統合が大きく伸び、工数減を補う 利益 7 億ドル · PER 14.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 241.46 ドル102 億ドル
政府が宇宙・軍の情報接続と国境の自動化を重点化し、SAICが現場統合の元請けとして仕事を取る。防衛の実機・機密統合市場は2025年価格で520億ドルから760億ドルへ広がり、シェアは5.9%から約6.3%になる。国境の現場市場も215億ドルへ拡大し、SAICのシェアは約3.0%まで上がる。レイドスやCACIとの入札に勝ち、特に機密環境での安全な接続が利益源になる。
人月型の防衛ITは市場830億ドルでもSAICのシェアが2.9%に下がり、実質工数は現在の95%にとどまる。民生の人月も同様に95%であり、AIが生産性を高めても受託売上を膨らませるとは考えない。暗号の小型買収は既存契約を守る助けになるが、未開示のAI新製品売上は加えない。現場の単価は物価をやや超えて上昇し、全社売上は約128億ドル、営業利益は約13億ドルとなる。
10年間のGAAP純利益の累計は約54億ドルで、配当と株式報酬控除後の買い戻しを40億ドル実行しても、自己資本は約29億ドルに増える。買収を重ねず、案件ごとの利益率を守れた時だけ起こる展開だ。
- 防衛・情報機関:機密の現場統合と装備支援:数量 47.6(防衛の実機・機密システム統合の実質市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.48(契約対象一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 70 億ドル・営業利益 8 億ドル。実質市場760億ドル×シェア約6.26%=47.585、価格指数1.48
- 防衛・情報機関:人月型IT・工学助言:数量 23.8(防衛・情報機関の受託IT・専門人材市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.34(契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 32 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質市場830億ドル×シェア約2.87%=23.845、AI人月数量0.95倍
- 民生:国境・公共安全の現場システム:数量 6.5(国境・公共安全の実機システム運用市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.48(現場で提供する契約成果一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場215億ドル×シェア約3.03%=6.510、価格指数1.48
- 民生:人月型IT運用・受託開発:数量 12.0(連邦民生のIT運用・受託開発市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.34(契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 16 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場345億ドル×シェア約3.47%=11.970、AI人月数量0.95倍
倍率:GAAP純利益7.2億ドル、期末自己資本29.0億ドルで伸びに必要な帳簿ROE24.83%。一般的な堀(残存比率1/2)なのでRONIC=8.5%+0.5×(24.83%−8.5%)=16.66%。長期g2.3%は現場型の実質需要と物価による約3.5〜4%の成長、人月型のAIエージェント代替によるg0%を加重した値。正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=14.22倍で、上限のほぼ100%を採用。人月型数量は0.95倍でAIによる拡大は入れず、機密統合の実績を最大限に認めた。時価総額=7.2×14.22=102.38億ドル。株式報酬を費用としたGAAP純利益で、現金の別加算なし。
確率:現場型の大規模増額と再入札の勝利が十年続く展開。米国防需要は強くてもSAICがその大半を取る証拠はなく、確率は9%とした。AI人月部分は楽観でも仕事量を増やさない。
やや楽観 17% やや楽観:現場の契約を守り、高付加価値へ緩やかに移る 利益 5 億ドル · PER 13.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 164.77 ドル70 億ドル
防衛の装備と宇宙システムの統合が着実に拡大する。現場統合の実質市場は約700億ドルとなり、SAICは5.9%前後のシェアを維持する。国境の現場市場は200億ドルに増え、シェアは2.8%強になる。長年の顧客関係を生かしてレイドスやジェネラル・ダイナミクスとの再入札で一定の勝率を保つが、寡占的な価格支配までは手に入らない。
AIエージェントで技術助言と行政ITの工数は現在の78%、75%へ減る。防衛の人月市場が740億ドルに広がっても、SAICのシェアは2.7%ほどに下がる。民生の人月市場350億ドルでもシェアは2.7%に低下し、契約単価の伸びは物価以下にとどまる。現場統合の増収がそれを補い、売上約105億ドル、営業利益約9億ドルまで伸びる。
シルバーエッジと暗号関連の買収は人材や安全性の強化に役立つが、大型買収による利益のかさ上げは見込まない。10年間の純利益累計約44億ドルから正味還元31億ドルを差し引いて、自己資本は約28億ドルになる。
- 防衛・情報機関:機密の現場統合と装備支援:数量 41.4(防衛の実機・機密システム統合の実質市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.44(契約対象一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 60 億ドル・営業利益 7 億ドル。実質市場700億ドル×シェア約5.92%=41.445、価格指数1.44
- 防衛・情報機関:人月型IT・工学助言:数量 19.6(防衛・情報機関の受託IT・専門人材市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.30(契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 25 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場740億ドル×シェア約2.65%=19.578、AI人月数量0.78倍
- 民生:国境・公共安全の現場システム:数量 5.7(国境・公共安全の実機システム運用市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.44(現場で提供する契約成果一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場200億ドル×シェア約2.84%=5.670、価格指数1.44
- 民生:人月型IT運用・受託開発:数量 9.5(連邦民生のIT運用・受託開発市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.28(契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 12 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場350億ドル×シェア2.70%=9.450、AI人月数量0.75倍
倍率:GAAP純利益5.1億ドル÷期末自己資本27.5億ドル=ROE18.55%。通常の堀でRONIC=8.5%+0.5×(18.55%−8.5%)=13.52%。全社g_long2.3%(現場の実質需要+物価と人月のAIエージェント代替g0%の加重)を使い、10年目利益基準の正当化PERは13.69倍。高付加価値の現場契約が維持される筋書きなので上限のほぼ100%を採用。時価総額=5.1×13.69=69.82億ドル。市場の倍率は参照せず、GAAPで株式報酬と買収償却を費用にした。
確率:長期の顧客関係と国境警備の再受注が効き、現場の付加価値を上げられる。防衛ITの工数減は避けられず、大規模な値上げもできないため17%。
中立 34% 中立:現場統合は伸びるが人月型ITが縮み、利益は横ばい 利益 4 億ドル · PER 13.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 124.67 ドル53 億ドル
防衛予算は名目で増え、実機・機密システムの仕事量も徐々に拡大する。2025年価格の市場520億ドルは640億ドルとなるが、SAICのシェアは5.9%から5.8%へわずかに下がる。民生の現場市場は180億ドルとなり、国境の安全確認や実機の統合では2.8%のシェアを保つ。現場の単価は物価に沿って十年で約1.41倍になる。
対照的に防衛の人月型IT市場が750億ドルになっても、SAICのシェアは3.9%から2.2%へ落ちる。工数は現在の67%となり、単価も1.30倍止まりだ。民生の人月市場330億ドルではシェアが4.2%から2.4%へ低下し、工数は62%となる。政府がAIと内製化を進めるためで、独自製品の新たな売上を仮定しない。
全社の売上は約91億ドルに増えるが、価格競争と工数減で営業利益は約6.5億ドル、GAAP純利益は約3.7億ドルとなる。期間の純利益累計約36.5億ドルに対して正味還元24億ドルを見込み、自己資本は約27.5億ドルになる。レイドスなどとの競争が続き、現在の収益力は大きく変わらない。
- 防衛・情報機関:機密の現場統合と装備支援:数量 36.8(防衛の実機・機密システム統合の実質市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.41(契約対象一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 52 億ドル・営業利益 5 億ドル。実質市場640億ドル×シェア5.76%=36.840、価格指数1.41
- 防衛・情報機関:人月型IT・工学助言:数量 16.8(防衛・情報機関の受託IT・専門人材市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.30(契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 22 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場750億ドル×シェア2.24%=16.817、AI人月数量0.67倍
- 民生:国境・公共安全の現場システム:数量 5.0(国境・公共安全の実機システム運用市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.41(現場で提供する契約成果一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場180億ドル×シェア2.80%=5.040、価格指数1.41
- 民生:人月型IT運用・受託開発:数量 7.8(連邦民生のIT運用・受託開発市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.25(契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場330億ドル×シェア2.37%=7.812、AI人月数量0.62倍
倍率:GAAP純利益3.7億ドル÷期末自己資本27.5億ドル=ROE13.45%。通常の堀でRONIC=8.5%+0.5×(13.45%−8.5%)=10.98%。長期g2.3%は現場型の実質小幅増・契約価格約3.5%と、人月型のAIエージェント代替によるg0%の加重。式(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)の上限は13.04倍であり、中立の事業の質を既に数量と成長率へ織り込んだので、上限の100%を採用。時価総額=3.7×13.04=48.25億ドル。SBC・買収償却はGAAPの費用として残した。
確率:既存契約の継続と防衛需要の小幅増が、AIによる工数減を相殺する。2026年7月末の受注倍率0.8倍と2027年度の既存事業減収見通しを踏まえ、最頻の34%とした。
やや悲観 25% やや悲観:AIと再入札でシェアを失い、還元を縮める 利益 1 億ドル · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 34.18 ドル14 億ドル
政府の効率化と再入札の厳格化が長引き、実機・機密統合でも既存の仕事を一部失う。防衛の現場市場は実質580億ドルにとどまり、SAICのシェアは4.9%まで下がる。国境の現場市場は165億ドルで、シェアも2.5%へ低下する。レイドス、CACIと製品を持つ新興勢への負けが積み重なり、装備支援での値上げも物価に届かない。
人月型防衛ITは市場680億ドルでもSAICのシェアが2.0%へ落ち、仕事量は55%まで減る。民生の人月市場290億ドルではシェア2.2%、仕事量は50%となる。AIエージェントが運用監視や文書作業を置き換え、契約単価も防衛1.20倍、民生1.15倍しか上がらない。売上は約67億ドル、営業利益は約2.8億ドルに落ちる。
利益を守るための事業整理と提案費の負担が残り、純利益は約0.7億ドルとなる。十年の累計純利益約21.5億ドルのうち正味還元は9億ドルに抑え、自己資本を維持する。資産の大半はのれんなので、帳簿の厚みは株主の安全網にはならない。
- 防衛・情報機関:機密の現場統合と装備支援:数量 28.2(防衛の実機・機密システム統合の実質市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.33(契約対象一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 38 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質市場580億ドル×シェア4.87%=28.244、現場も再入札で失う
- 防衛・情報機関:人月型IT・工学助言:数量 13.8(防衛・情報機関の受託IT・専門人材市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.20(契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 17 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場680億ドル×シェア約2.03%=13.805、AI人月数量0.55倍
- 民生:国境・公共安全の現場システム:数量 4.1(国境・公共安全の実機システム運用市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.30(現場で提供する契約成果一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場165億ドル×シェア2.49%=4.116、価格指数1.30
- 民生:人月型IT運用・受託開発:数量 6.3(連邦民生のIT運用・受託開発市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.15(契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 7 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質市場290億ドル×シェア約2.17%=6.300、AI人月数量0.50倍
倍率:ROEは純利益0.7億ドル÷期末自己資本27.5億ドル=2.55%でk8.5%を下回る。留保による価値増を認めず、継続利益の資本還元率1/k=11.76倍より低いPER9.0倍で評価。政府の入札敗北とAI代替後の利益は低く不安定であり、良い筋書きのPERを適用しない。時価総額=0.7×9.0=6.30億ドル。純現金はなく、純負債の負担をGAAP利益に反映した。売れる資産の税後から負債・未払金を控除すると床はほぼ0であり、帳簿自己資本を床にしない。
確率:政府調達の集約で現場契約も失い、人月業務の自動化が急速に進む。足元の受注倍率低下と入札圧力が根拠で、悪い筋書きのうち比較的起こりやすい側として25%。
悲観 15% 悲観:契約喪失と減損が重なり、株主価値が痩せる 利益 0 億ドル · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3.54 ドル2 億ドル
AIによる省人化と予算の再配分で、人月サービスと現場統合の双方が構造的に負ける。防衛の現場市場は実質470億ドルに縮み、SAICのシェアは3.4%へ落ちる。民生の現場市場は145億ドルでもシェア2.1%に下がる。新しい装備やクラウドの設計主導権は製品会社と競合に移り、SAICは低採算の保守に残される。
防衛ITの工数は現在の40%、民生ITは35%まで減る。防衛IT市場600億ドルでのSAICのシェアは1.7%となり、民生IT市場270億ドルでは1.6%に落ちる。価格はほぼ据え置きで、全社売上は約39億ドルと半分近くになる。人員削減後も機密現場の履行義務と家賃が残り、営業利益率は約4%しかない。
2029年と2030年に契約打ち切りと買収のれんの減損で、それぞれ6億ドル、4億ドルのGAAP純損失が出る。2026〜2035年の純利益累計は約マイナス4.45億ドルで、前半に行った正味還元3億ドルを差し引くと自己資本は約7.55億ドルとなる。十年目は微益に戻るが、純負債の負担で株主の残余価値はごく小さい。
- 防衛・情報機関:機密の現場統合と装備支援:数量 16.0(防衛の実機・機密システム統合の実質市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.25(契約対象一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 20 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場470億ドル×シェア3.40%=15.964、機密現場も失う
- 防衛・情報機関:人月型IT・工学助言:数量 10.0(防衛・情報機関の受託IT・専門人材市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.10(契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 11 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質市場600億ドル×シェア1.67%=10.040、AI人月数量0.40倍
- 民生:国境・公共安全の現場システム:数量 3.0(国境・公共安全の実機システム運用市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.25(現場で提供する契約成果一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質市場145億ドル×シェア2.09%=3.024、価格指数1.25
- 民生:人月型IT運用・受託開発:数量 4.4(連邦民生のIT運用・受託開発市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当))× 価格 1.05(契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00))→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質市場270億ドル×シェア1.63%=4.410、AI人月数量0.35倍
倍率:十年目のGAAP純利益0.25億ドルは低く、期末自己資本7.55億ドルに対するROEは3.31%でkを大きく下回る。将来の事業が清算・再編に近いことから、現在の自己資本15.0億ドルに、清算後の残余持分の小ささを表すPBR0.10倍を掛けた時価総額1.50億ドルとする。過去の市場PBRに由来する倍率ではない。時価総額は継続利益÷k=2.94億ドルを超えない。売掛金・現金・設備の売却見込みから借入と未払金、リースを引いた資産の床は0とみており、1.50億ドルは再編後も事業が一部残る選択権の価値である。
確率:政府の仕事自体は残るため全面消滅は避ける。ただし競合の製品化、AI省人化、のれん減損と借入負担が重なる尾部損失を15%とし、近い倒産・再編に相当する低い残余価値を認める。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
防衛・情報機関:機密の現場統合と装備支援
防衛・情報機関部門のうち、装備・宇宙・指揮通信の実機接続、機密環境の試験・認証、車両と情報システムの現場支援を担う。AIは補助になるが、物理的な検証と責任が残る部分を推計で抽出した。
| 数量防衛の実機・機密システム統合の実質市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当) | 価格契約対象一単位当たり名目単価指数(現在1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.7 | 1.00 | 31 | 3 |
| 10 年後 中立 | 36.8 | 1.41 | 52 | 5 |
取り方:会社開示の防衛・情報機関売上55.81億ドルから、作業時間依存のIT・助言部分25.1億ドルを分析用に分離した推定値であり、公式セグメントではない。実質対象市場は520億ドル、SAICシェア約5.9%と仮定し、520×5.9%=30.7と逆照合する。市場規模はデルテックの連邦IT市場と国防の実機・技術支援を手がかりにした推計で、独立した統計はない。単価指数は1。営業利益は会社の部門調整後利益と全社GAAP営業利益に整合するよう業務別の原価構造を仮定した。
防衛・情報機関:人月型IT・工学助言
防衛・情報機関部門のうち、受託ソフト開発、文書、技術助言、運用監視など人員と工数を契約の単位とする部分。AIエージェント代替の「人月・工数」型と判定する。
| 数量防衛・情報機関の受託IT・専門人材市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当) | 価格契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 25.1 | 1.00 | 25 | 2 |
| 10 年後 中立 | 16.8 | 1.30 | 22 | 1 |
取り方:防衛・情報機関売上55.81億ドルの約45%を人月・助言契約とみる分析用配分で、開示された種類別契約の原価償還79%、時間・材料9%、定額12%はこの配分と同じ分類ではない。実質市場650億ドル×推定シェア3.86%=25.1億ドル相当。米政府が成果物とコードの権利を持つため、記録の正本や独自データ型には当てはめない。AIエージェント代替により中立の数量は0.67倍、価格1.30倍、g_longはこの業務について0%。
民生:国境・公共安全の現場システム
税関・国境警備などで入出国者や貨物を扱うシステムの連携、機器の稼働試験、安全な運用を支える部分。現場の責任と認証が残るが、ソフト開発の工数自体は保護されない。
| 数量国境・公共安全の実機システム運用市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当) | 価格現場で提供する契約成果一単位当たり名目単価指数(現在1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.2 | 1.00 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 1.41 | 7 | 1 |
取り方:民生部門16.81億ドルの約25%を現場統合として抽出した分析用の推定であり、会社はこの内訳を公表しない。実質市場150億ドル×推定シェア2.8%=4.2億ドル。2026年9月の税関・国境警備局向け五年約7.42億ドルの再受注と、同局向け約1.99億ドルの別契約は、業務の存在を裏づけるが、市場シェアそのものの統計ではない。AIの影響は現場外の事務仕事に限定する。
民生:人月型IT運用・受託開発
行政機関のIT運用、プログラム更新、サポート、人材を使う業務改善などを担う。時間・材料型の契約が中心で、AIエージェント代替の「人月・工数」型と判定する。
| 数量連邦民生のIT運用・受託開発市場×SAIC推定シェア(2025年価格の億ドル相当) | 価格契約工数一単位当たり名目単価指数(現在1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12.6 | 1.00 | 13 | 2 |
| 10 年後 中立 | 7.8 | 1.25 | 10 | 1 |
取り方:民生売上16.81億ドルの約75%を人月型ITとみる推計。民生の契約種別は時間・材料67%、定額30%、原価償還3%であり、時間・材料型の厚さが配分の手がかり。実質市場300億ドル×推定シェア4.2%=12.6億ドル。標準化された運用は政府内製化やAIエージェントに置き換わるため、中立数量0.62倍、価格1.25倍、長期gはこの業務について0%とした。
リスクと懸念
AIエージェント代替と政府の内製化
AIエージェントがコード生成、仕様書、運用監視、問い合わせ対応を自動化すると、政府は従来の技術者数を必要としなくなる。原価償還と時間・材料型で稼ぐ業務は人員の減少が売上の減少につながりやすい。防衛の人月型は中立で実質工数が67%、民生は62%に落ちると考えた。政府が成果報酬へ変えても、SAICの取り分が増えるという契約実績はまだ確認できない。
政府調達の集中と再入札の敗北
売上の98%は米政府向けで、顧客が契約を終了・縮小する権利を持つ。複数社が資格を持つ契約車両では、価格と履行実績で毎回勝負が決まる。2026年7月末の直近12か月の受注倍率0.8倍が続けば、今は潤沢に見える受注残が数年先の減収に変わる。レイドス、CACIや大手IT企業に大型更新を奪われることが最大の数量リスクである。
純負債と借り換え
添付データの純有利子負債は25.2億ドルで、EBITDA6.7億ドルの約3.8倍ある。借り換えコストが5.75%前後で高止まりし、AIで契約量が減ると利息を払った後の利益が急減する。2026年7月末の決算では買い戻しも続いたが、受注が弱る中で大規模な買い戻しを続ければ、財務改善に使える現金を失う。
のれん・買収による減損
サイター、エンジリティ、ユニシスの政府事業、シルバーエッジなどの買収で事業は広がったが、のれんと無形資産は帳簿で約37億ドルある。これは自己資本15億ドルを大きく超える。取得した契約と人材がAI時代の利益を生まなければ、減損が純利益と自己資本を同時に削る。特に悲観では資産の処分価値を額面どおり認めない。
機密認証とサイバー事故
国家安全保障のシステムを扱う以上、情報漏えい、輸出規制違反、委託先のアクセス管理の失敗は一つの案件にとどまらない。政府からの信頼や契約の適格性を失えば、現場統合の乗り換え費用という強みが一転して弱みになる。暗号技術の買収は対策を厚くするが、事故の確率をゼロにするものではない。
見かけの受注残と資金未手当
2026年7月末の受注残は約221億ドルと年間売上の約3倍あるが、資金が手当てされた部分は38億ドルほどにとどまる。残りには政府の予算措置、契約の選択期間、将来の発注が必要な額が含まれる。枠契約の上限額は受注済みの売上ではない。予算の遅れや事業仕分けが重なると、予定していた仕事量が急に消える。
価格を決められない労働集約性
契約上の賃率が人件費上昇に追いつかなければ、熟練技術者の採用と保持に追加費用がかかる。固定価格契約では採用難や工程遅延が利益を直接削り、原価償還契約では作業を効率化しても顧客への請求額が減る。独自データや解約率の低い共通基盤を持つSaaSとは収益の仕組みが違い、値上げの継続を前提にできない。
今後の分かれ目
- 直近12か月の受注倍率が4四半期続けて1.1倍を超え、防衛現場の再契約率も改善したら
- 中立より上の数量を見込み、機密の現場統合の市場シェア低下を止める。ただし人月業務のAI代替は別に残し、すべての部門を一括で上方修正しない。
- 人月型の契約で政府がAIによる人員削減を要求し、実質作業量が年5%以上減り続けたら
- 防衛ITは中立の67%からやや悲観の55%へ、民生ITは62%から50%へ寄せる。利益率も下げ、正味の株主還元を減らす。
- CBPの約7.42億ドルの再受注が収益化し、国境システムの保守・更新が定量的に増えたら
- 民生の現場型だけをやや楽観方向に見直す。契約上限や選択期間の額を一度に売上には足さず、年度ごとの役務提供分を数える。
- 政府向け独自製品の継続売上と高い更新率が金額で開示され、売上の一割以上を占めたら
- その部分だけ人月型から製品・記録基盤型へ分類し直す。ただし単なるAI技術の導入や買収発表だけでは、数量の下方修正を取り消さない。
- 純負債がEBITDAの2倍を下回り、買収より借入返済が優先されるようになったら
- 財務の脆さが和らぎ、正味還元の持続性を引き上げる。資本コストの借金要因も見直せるが、政府入札の値決め力は変わらない。
- 二年続けて受注倍率が0.9倍未満になり、のれんの減損が発生したら
- 現場事業にも構造的な負けが広がった証拠として、やや悲観・悲観に寄せる。自己資本の減少と借金の返済余力を点検する。
- 原価償還型の比率が下がり、成果固定価格の契約で利益率が改善したら
- AIによる省力化が顧客ではなく株主の利益に残る可能性が高まる。粗利率と契約単価の実績を確認してから、人月型の単価上限を見直す。
見ておくもの
- 直近12か月の受注倍率(2026年7月末0.8倍)と新規受注の分野
- 資金手当て済み受注残と未手当て受注残の推移
- 防衛・情報機関部門と民生部門の有機的な売上増減
- 原価償還型・時間材料型・固定価格型の収入構成
- 受託ITの工数削減と契約単価、成果報酬契約の利益率
- 税関・国境警備局向け2026年再契約の実際の年次売上
- 自社所有の暗号・AI関連製品の継続売上と解約実績の開示
- 純有利子負債÷EBITDA、利息負担、のれん減損
- 配当・自社株買いから株式報酬の希薄化を引いた正味還元
倍率と資本コストの決め方
株価や現在・過去のPERを使わず、開示された防衛・情報機関55.81億ドル、民生16.81億ドルを、会社が非開示の四つの業務形態に推計で分けた。各業務の2025年実質市場とシェアから仕事量を出し、物価・契約単価を別に掛けて売上を作った。AIエージェント代替の人月部分には数量0.67倍と0.62倍、価格1.30倍と1.25倍、長期g0%を適用した。現場型の長期成長を加重して全社g_longは2.3%。k8.5%と普通の堀のRONICから、中立の正当化PER13.04倍を得た。楽観側も式の上限を超えず、悲観では帳簿ののれんを処分価値と見ない。GAAP利益からSBCと無形資産の償却を戻していない。今の時価総額約62億ドルに合わせた倍率操作はしていない。米国ASC842のリース負債は既に貸借対照表に計上され、固定費として悲観にも残る。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k=米国基準8.0%+quality0.5%=8.5%。βは使わない。政府向けの景気耐性と入札の価格制約、純負債の重さだけを品質に反映した。AI代替の同じ理由を寿命、資本コスト、確率で何度も足し直さない。経営交代・買収の不確実性は筋書きの利益と還元に含める。