結論
IESホールディングスは、データセンターや住宅、工場の電気設備を施工し、発電設備の筐体や大型鉄骨まで手がける米国の建設関連企業である。事業の成長余地は大きいが、10年後の利益を資本コストで割り引くと、現在の時価総額には十分な安全域がなく、やや割高と判断する。
2025年9月期の売上は33.7億ドル、営業利益は3.8億ドルだった。2026年4~6月期には売上が前年同期比40%増え、営業利益も60%増えた。データセンターの配線と電力設備への投資が成長を牽引し、2026年6月末の受注残は45.3億ドルに達した。ただし、このうち17.2億ドルは法的に履行義務が確定していない案件であり、すべてが確実な将来売上ではない。
2026年10月5日にはDBMグローバルの買収を完了した。買収額は約6.91億ドルで、年間売上約15億ドルの鉄骨製作・建方事業が加わった。この買収は顧客への提供範囲を大きく広げるが、取得資金の大部分を借り入れたため、以前の純現金企業とは財務の姿も変わった。
中立では2035年の売上を106.4億ドル、純利益を7.57億ドルと見込む。データセンター需要は伸び続けても、現在の好採算工事がすべて定着するとは考えない。5つの筋書きの確率加重価値は約63.0億ドルで、比較対象の時価総額86.2億ドルを約27%下回る。事業を長く保有する魅力と、今払う値段の妥当性は分けて考える必要がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、IESの魅力は10年後も必要な仕事をしていることである。電気を通し、通信をつなぎ、鉄骨を建てる仕事は、AIが進歩しても物理的な施工を要する。優秀な現場監督と熟練工をまとめる能力は一朝一夕には作れず、難しい案件を完成させた実績が次の仕事を呼ぶ。長期にわたって利益を再投資できる余地はある。
しかし、事業の必要性が高いことと、株主が安定したオーナー利益を受け取れることは同じではない。2025年のフリーキャッシュフローは約2.8億ドルだったが、2026年には工場増設と買収のために現金支出が増えた。成長を維持するのに必要な設備や運転資金を引くと、会計上の利益をすべて還元できるわけではない。鉄骨工事の取得でこの性質は一段と強くなった。
堀の評価も慎重に行いたい。データセンターの難工事で選ばれる力は価格競争を多少和らげるが、顧客が大口で、案件ごとに再入札される。完成済み設備から毎年ほぼ自動的に高い保守料を得る事業とは違う。利益率11%台の直近実績をそのまま永続させるのではなく、工事量の伸びとともに競争も増えると考える方が安全である。
現在の企業価値は、買収後の能力拡大と高利益率の継続をかなり評価している。中立では10年後の事業規模は大きくなるが、利益の質にはなお建設業の循環性が残る。筆者が長期保有の前提で求める安全域は、需要予測の誤りだけでなく、固定価格契約の失敗と買収の高値づかみを吸収できる余裕である。今の評価には、その余裕が不足している。
何で稼ぐ会社か
IESの稼ぎは、建物や工場に不可欠な設備を設計・製作・施工することから生まれる。2025年9月期は4事業だったが、2026年10月に買収したDBMグローバルが加わり、現在は5つの事業群になった。顧客はデータセンター事業者、住宅建設会社、工場、物流施設、商業施設の所有者や元請け企業である。
コミュニケーションズは2025年に11.4億ドルを売り上げた。通信回線だけの事業ではなく、データセンター内部の電気・通信配線、ネットワーク基盤、関連する技術設備を施工する。住宅事業は13.0億ドルと当時最大で、戸建てや集合住宅の配線、地域によっては空調と配管も請け負う。住宅の着工戸数と建設会社の調達価格に業績が左右されやすい。
インフラストラクチャー・ソリューションズは約5.0億ドルの売上に対して約1.18億ドルの営業利益を稼いだ。発電機の筐体や産業用の特注製品を製作し、電動機などの修理も行う。2026年1月にはガルフ・アイランドの製作事業を取得し、大型製缶能力を増やした。商業・産業向け工事は4.3億ドルの売上で、電力設備や工場、商業施設の電気・機械工事を担当する。
新たな構造物事業はDBMグローバルが担う。シュフ・スチール、バンカー・スチール、グレイウルフなどを通じ、鉄骨の設計、加工、現場での建方までを引き受ける。買収前の直近12か月売上は約15億ドルであり、2025年のIESの連結売上には含まれていない。利益の源泉は人手そのものではなく、工程を守って複雑な現場を完成させる能力にあるが、固定価格契約で失敗すれば、その強みは容易に損失へ変わる。
優良さと弱いところ
IESの堀、つまり他社が容易には奪えない強みは、熟練工を組織し、厳しい安全基準のもとで大規模工事を期日どおり完成させる実行力にある。データセンターでは電源と通信の不具合が施設全体の稼働を妨げるため、顧客は最も安い入札額だけでは業者を選ばない。既存顧客との施工実績、設計変更への対応、現場監督と調達の能力が次の受注につながる。
この強みは一定の価格交渉力を生むが、強い独占的な堀ではない。電気工事市場にはロゼンディン、エムコア、コンフォート・システムズUSA、地域の専門業者など多数の競合がいる。入札制度も残り、優れた施工実績があっても恒久的な値上げを保証しない。住宅では2025年に建設会社から値下げ圧力を受け、売上と利益率が低下した。これは全社に一律の価格決定力がない明確な証拠である。
資本効率は近年著しく改善した。2022年の営業利益率は2.6%だったが、2025年には11.4%に上がり、ROEも34.3%となった。2022年から2025年の純利益増加額は自己資本増加額に比べて大きく、直近の増分収益性は高い。ただし、データセンター工事の好況と短納期案件の利益が重なっており、この数字を恒久的な再投資利回りとは扱わない。
最大の弱点は、保守契約の積み上がる設備メーカーとは異なり、新設工事の比率が高いことだ。受注残が減れば、仕事のない熟練工や工場の固定費が利益を圧迫する。DBMの取得で工場と現場の能力は広がる一方、運転資金、工事保証、借り入れの管理がより重要になる。強みは本物だが、景気と実行力の両方を見続ける必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の電気設備工事は大きく分散した市場である。業界調査による2024年の電気サービス市場は約1639億ドルで、電力網、産業設備、商業施設、保守などを広く含む。IESに直接対応する狭い市場だけの公的統計はないため、各事業の市場規模とシェアは用途別の需要から推定する。エムコアやコンフォート・システムズUSAも大手だが、広い電気サービス市場全体を支配する企業は存在しない。
需要の強い部分はデータセンターである。米国勢調査局の建設支出系列を基にすると、データセンター建設額は2023年の約200億ドルから2025年には約497億ドルに増えた。建物と電力・冷却設備の建設額であり、サーバーや半導体の購入額は含まない。電力密度が高いAI施設ほど設備工事は複雑になり、設計や施工ができる技術者の不足が供給制約となる。ただし、投資が急増した市場には、将来の建設能力の過剰という反動も伴う。
住宅は対照的である。2025年の米国住宅着工は約136万戸で、戸建ては約94万戸にとどまった。金利と住宅価格の負担が重く、住宅建設会社は下請けの単価を厳しく管理している。10年の中立では住宅の実質工事量が緩やかに回復すると見るが、データセンターと同じ伸び率は見込まない。
産業用の特注電力設備と鉄骨工事にも競争はある。イートン、パウエル、バーティブ、地域の製缶業者は製品や工程の一部で競合し、鉄骨ではカナム、シブズ・スチール、ニューコア系の加工事業者などが競う。2025年の米国構造用金属製品需要は約1280億ドルとされるが、DBMが直接競える大型鉄骨加工・建方はその一部である。市場全体の売上をそのままIESの獲得可能な仕事と誤認しないことが大切だ。
2035年に向けては、電力不足、送配電設備の更新、データセンターの新設・改修が市場を支える。一方、施工の工場生産化、競合の増員、発注者による直接調達、AIを使った設計・工程管理が利益の配分を変える。現場工事そのものが消える可能性は小さいが、現在の高い工事単価と利益率が続くかは別問題である。
資本政策と M&A
経営の資本配分は、過去10年の小規模買収から、2026年の大型買収へと段階が変わった。2025年にはアロー・エンジンなどの買収に約0.52億ドル、設備投資に約0.67億ドルを使い、自社株買いには約0.30億ドルを充てた。配当はこれまで実施しておらず、近い将来の現金配当も予定していない。2024年に承認された自社株買い枠は2.0億ドルで、2025年9月末には1.68億ドルが残っていた。
2026年1月のガルフ・アイランド買収は企業価値ベース約1.52億ドルだった。10月のDBM買収は約6.91億ドルとさらに大きく、現金5.45億ドルと株式1.46億ドルを対価とした。現金の支払いには約5.25億ドルの借り入れを用いた。買収先の利益が加わる一方、金利、のれん、設備更新、工事リスクを引き受けたことになる。会社は買収関連借入金を営業キャッシュフローで早期に返済したいとしている。
2026年6月末までの会社発表では、成長のための設備増強を優先していた。長期売上やROEに関する拘束力のある数字の約束はない。将来の自社株買いも既存枠を超える分は取締役会の追加承認が必要であり、予測上の還元は経営方針の保証ではない。
少数株主にとって、トンティンが2025年時点で約54%の株式を支配していたことは無視できない。長期経営の一貫性という利点はあるが、取締役の選任や重要な資本政策に一般株主の意見が通りにくい。現在、IES自体を買収・非公開化する合意は確認されていない。支配株主との利害が将来も一致するかを、還元額と買収の成果で検証する必要がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
IESは単なる地域の電気工事会社から、全国のデータセンター建設を支える総合施工企業へ変わりつつある。2026年6月末の受注残は45.3億ドルで、前年の水準を大きく超えた。コミュニケーションズでは2026年4~6月期の売上が前年同期比51%増え、営業利益率も18%台に達した。設計変更が多く、短い工期で品質を求められる仕事ほど、実績ある施工会社が選ばれやすい。
さらに、インフラストラクチャー・ソリューションズは発電機の筐体や特注製品を作り、電力設備投資の増加を取り込んでいる。ガルフ・アイランドの取得で大型の製作能力が増えた。DBMの買収は約4000人の従業員と鉄骨製作拠点を加え、建物の骨格から電気設備までの提案を可能にする。データセンターの顧客が工事工程を短縮したいなら、複数の工程を任せられるIESの価値は高まる。
市場はなお分散している。エムコアやコンフォート・システムズUSAとの競争は厳しいものの、IESの各用途別シェアは数%程度にとどまると推定され、シェアを奪う余地は大きい。大手顧客との関係を維持し、採用・訓練に投資するだけでも、地域の小規模業者に対する優位は広がりうる。住宅市場が回復すれば、現在弱い住宅事業も利益を押し上げる。
この見方では、2035年の売上は180億ドルを超え、営業利益は24億ドル台となる。買収先の鉄骨事業でも工場の稼働率が改善し、施工力を相互に販売する効果が出る。獲得した現金を借入返済と追加投資に回し、その後は自社株買いを増やせる。景気に敏感な会社でも、顧客が集約を進める時代に規模と実行力の優位が広がれば、長期保有に値する事業へ成長する可能性がある。
慎重な見方
現在の利益は建設投資の好況と、採算の良い短期案件が重なった結果でもある。2022年には営業利益率が2.6%まで低下していた。2026年4~6月期の商業・産業向け工事の高利益率も、会社自身が一部の特殊な案件の寄与を説明している。こうした利益を恒久的な力と考えるのは危険である。
受注残の質にも注意が要る。2026年6月末の45.3億ドルには、まだ履行義務が確定していない約17.2億ドルが含まれる。データセンターの投資が延期されれば、増員した技術者や増設した工場が重荷になる。顧客は少数の大手事業者に集中しやすく、案件が巨大化するほど、ひとつの工期遅延や見積もりの失敗が利益を傷つける。住宅では発注者に値下げを求められる実績がすでにある。
DBMは大きな機会であると同時に、企業の性格を変える買収でもある。鉄骨の製作・建方は大型の固定価格契約を含み、鋼材価格、現場の安全、工期、保証の負担が重い。買収前のDBMには大きな受注残があったが、その受注を予定どおり利益に変えられるとは限らない。5.25億ドルの新規借入金は、買収前の財務の強さをそのまま将来に引き継げないことを意味する。
競合も投資を増やす。エムコア、コンフォート・システムズUSA、民間の専門業者が工事能力を増やせば、現在の施工単価の優位は薄れる。設計・積算・図面作成ではAIエージェントが工数を圧縮し、関連サービスの単価を下げる可能性がある。現場で働く人手は残っても、利益を上げる工程の一部が自動化される。支配株主のもとで大型買収が続き、還元より成長規模を優先するなら、株主の取り分は期待ほど増えない。
どちらに重みを置いたか
需要の持続性と施工力の高さは評価する。特にデータセンター関連と特注電力設備は、10年後も現在より大きな市場になる公算が高い。一方、2026年の高利益率を長期の標準にする根拠は十分でなく、DBM買収の統合と借入返済にも実行リスクがある。
確率は楽観側34%、中立31%、悲観側35%とし、少しだけ慎重な側へ寄せた。AIによる事務工程の代替だけで悲観確率を厚くしたのではなく、データセンター投資の循環、固定価格契約、大型買収の不確実性を重視したためである。確率加重の現在価値は約63.0億ドルとなり、現在の時価総額に対して約27%の不足が生じる。結論はやや割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 266.00 ドル107 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 71.69 ドル29 億ドル)。 今の値に割り戻すと 158.96 ドル64 億ドル、今との差 −22.8%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 678.87 ドル274 億ドル | 163.51 ドル66 億ドル | +309.0% | +17.7% | 92.66 ドル37 億ドル |
| やや楽観 | 23% | 417.61 ドル169 億ドル | 116.44 ドル47 億ドル | +159.3% | +11.6% | 122.83 ドル50 億ドル |
| 中立 | 31% | 249.76 ドル101 億ドル | 69.37 ドル28 億ドル | +54.9% | +5.1% | 98.93 ドル40 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 66.22 ドル27 億ドル | 22.30 ドル9 億ドル | −57.0% | −9.0% | 20.36 ドル8 億ドル |
| 悲観 | 12% | 21.80 ドル9 億ドル | 2.48 ドル1 億ドル | −88.2% | −19.8% | 2.91 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 266.00 ドル107 億ドル | 71.69 ドル29 億ドル | +64.0% | +5.8% | 337.69 ドル136 億ドル |
今の株価時価総額 205.96 ドル83 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 楽観:データセンター建設が2030年代も伸び、鉄骨と電装の一体施工が広がる 利益 18 億ドル · PER 15.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 678.87 ドル274 億ドル
米国のデータセンター建設が2030年代にも拡大し、電装・通信工事の実質市場は2025年の2.5倍になる。IESは全国で技術者の採用と訓練を進め、市場シェアを約4.4%から5.4%へ高める。エムコアやコンフォート・システムズUSAも増員するが、工期の厳しい大型案件では施工実績が選定の決め手となる。
住宅は着工戸数の回復に合わせて受注を増やし、特注電力設備ではガルフ・アイランドの工場を効率よく稼働させる。DBMは鉄骨の設計・加工・建方をまとめて提供し、データセンターと産業施設の大型案件を獲得する。鉄骨事業の実質対応市場は約850億ドルへ広がり、DBMのシェアも高まる。
売上は184億ドルを超え、全社営業利益率は13%台となる。鉄骨事業の調整後EBITDA率をそのまま利益率に使わず、償却と本社費を引いた後で十分な収益性を確保する。2026年の大型買収に伴う借り入れは数年で返済し、その後は追加の設備投資と正味還元を増やす。10年目までの純利益累計は約130億ドルで、利益は前半に急増し2032年以降は成熟して伸び率が10%を下回る道筋である。
- コミュニケーションズ:数量 650(対応可能なデータセンター電装・通信設備および関連技術工事市場、2025年価格の億ドル)× 価格 7.6%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数)→ 売上 49 億ドル・営業利益 9 億ドル。実質市場260→650億ドル、シェア約4.39→5.38%、価格指数1.41倍。施工能力の拡充が競合からの受注獲得につながる。
- 住宅:数量 1,300(米国住宅着工戸数と住宅当たり設備工事費から見積もった市場、2025年価格の億ドル)× 価格 2.4%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする施工単価指数)→ 売上 31 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質市場950→1300億ドル、シェア約1.37→1.67%、価格指数1.41倍。住宅回復と地域展開が両立する。
- インフラストラクチャー・ソリューションズ:数量 1,100(米国の特注電力設備・発電設備筐体・産業用製缶修理の対応可能市場、2025年価格の億ドル)× 価格 2.6%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする製品単価指数)→ 売上 29 億ドル・営業利益 6 億ドル。実質市場500→1100億ドル、シェア約1.00→1.85%、価格指数1.41倍。ガルフ・アイランドの製作能力を生かす。
- 商業・産業向け工事:数量 1,450(米国の商業・産業向け電気・機械設備の対応可能工事市場、2025年価格の億ドル)× 価格 1.6%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数)→ 売上 23 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質市場600→1450億ドル、シェア約0.71→1.15%、価格指数1.41倍。大規模電力工事で受注を拡大する。
- 構造物・大型鉄骨事業:数量 850(米国の大型構造鉄骨加工・建方の対応可能市場、2025年価格の億ドル)× 価格 6.1%(同市場に占めるDBMの推定売上シェア×2025年を1とする工事単価指数。未連結の2025年はゼロ)→ 売上 52 億ドル・営業利益 5 億ドル。買収時の売上約15億ドルが出発点。2035年の実質市場850億ドル、シェア約4.49%、単価指数約1.37倍。設計効率化の価格圧力も一部含む。
倍率:資本コストk9.0%、10年後のROEは18.13÷72.8=24.9%。堀は普通、超過収益の残存割合1/2なのでRONICは16.95%。10年目以降のgは、実質市場約1%、シェア横ばい、価格約3%を合成した名目4.0%。正当化PERは(1-g÷RONIC)÷(k-g)×(1+g)=15.89倍。工事の循環を残すが大型顧客との関係が強まるため、上限の約95%となる15.10倍を採用。純利益はGAAPで、買収償却や株式報酬を倍率で戻していない。
確率:電力不足とAI計算設備の増設が長期化し、電気工事、特注電力設備、鉄骨の全事業でシェアを取る必要がある。買収の統合も成功する強い条件が重なるため11%とする。
やや楽観 23% やや楽観:電装と電力設備のシェアが伸び、DBMの買収効果も着実に出る 利益 12 億ドル · PER 14.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 417.61 ドル169 億ドル
データセンターの投資増加率は2030年前後に鈍るが、電力設備の更新と既存施設の増設が続く。コミュニケーションズの実質市場は2025年比約2.1倍となり、IESは大型顧客での施工実績を生かしてシェアを少し広げる。エムコアやロゼンディンとの競争は続くものの、現場の人員を安定的に確保したことが強みとなる。
住宅着工は緩やかに持ち直し、住宅事業の利益率は直近の弱い水準から回復する。インフラストラクチャー・ソリューションズでは新たに取得した製缶能力が特注電力設備の売上に結びつき、商業・産業工事では長期案件の管理が改善する。DBMの鉄骨事業も大きな損失を出さずに案件を消化し、2026年の買収時売上を十分に上回る。
利益率は2026年の好採算工事ほど高くならないが、会社全体の営業利益は16億ドル程度に増える。純利益の10年累計は約90億ドルとなり、株式報酬と買収対価の株式発行を差し引いた正味還元は47億ドルと見込む。借入返済後も設備投資を続け、過大な自社株買いに資金を偏らせない資本配分が実現する。
- コミュニケーションズ:数量 545(対応可能なデータセンター電装・通信設備および関連技術工事市場、2025年価格の億ドル)× 価格 7.1%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数)→ 売上 38 億ドル・営業利益 6 億ドル。実質市場545億ドル、シェア約5.00%、単価指数1.41倍。施工能力によって一部の案件を競合から獲得。
- 住宅:数量 1,190(米国住宅着工戸数と住宅当たり設備工事費から見積もった市場、2025年価格の億ドル)× 価格 2.2%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする施工単価指数)→ 売上 26 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場1190億ドル、シェア約1.57%、単価指数1.41倍。住宅着工の緩やかな回復。
- インフラストラクチャー・ソリューションズ:数量 950(米国の特注電力設備・発電設備筐体・産業用製缶修理の対応可能市場、2025年価格の億ドル)× 価格 2.2%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする製品単価指数)→ 売上 21 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質市場950億ドル、シェア約1.56%、単価指数1.41倍。増設した工場の稼働率が高まる。
- 商業・産業向け工事:数量 1,200(米国の商業・産業向け電気・機械設備の対応可能工事市場、2025年価格の億ドル)× 価格 1.4%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数)→ 売上 17 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場1200億ドル、シェア約1.02%、単価指数1.41倍。高難度の工事を増やす。
- 構造物・大型鉄骨事業:数量 720(米国の大型構造鉄骨加工・建方の対応可能市場、2025年価格の億ドル)× 価格 5.3%(同市場に占めるDBMの推定売上シェア×2025年を1とする工事単価指数。未連結の2025年はゼロ)→ 売上 38 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質市場720億ドル、シェア約3.88%、単価指数約1.37倍。DBMの買収時売上15億ドルを出発点とする。
倍率:k9.0%、ROEは11.78÷51.8=22.7%。堀は普通でRONIC15.87%。長期gは設備更新の実質市場成長約1%と価格上昇約3%から名目4.0%とする。正当化PERの上限は15.56倍で、買収効果が定着しても大型工事の循環が残るため、上限の約92%である14.31倍を採用する。GAAP純利益に対して適用し、株式報酬と償却は足し戻さない。
確率:データセンター需要が落ち着いても一定の成長を続け、買収した工場と鉄骨事業の採算が改善する展開は十分にあり得る。ただし全事業で最高益率が続くわけではないため23%とする。
中立 31% 中立:データセンターの高成長は正常化し、5事業が分散して成長する 利益 8 億ドル · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 249.76 ドル101 億ドル
2035年のデータセンター電装市場は2025年比で実質約1.6倍になる。IESは施工能力を増やし、コミュニケーションズのシェアを約4.4%から4.6%へ緩やかに高める。ただしエムコアやコンフォート・システムズUSAも技術者と調達能力を増やすため、2026年の高い利益率をそのまま維持することはできない。
住宅は着工が長期的な世帯増加に沿って回復する。インフラストラクチャー・ソリューションズはガルフ・アイランドの取得によって対応できる製品と工場が増え、商業・産業工事も電力網の更新から需要を得る。DBMは構造鉄骨の市場でおおむねシェアを維持し、2026年の約15億ドルの売上から規模を拡大する。鉄骨の営業利益率は7%程度に落ち着く。
全社の売上は106.4億ドル、営業利益は10.3億ドルとなり、営業利益率は約9.7%である。2026年の大型買収による金利負担を経た後、借入金の返済が進む。10年のGAAP純利益累計は約61.9億ドルで、配当ゼロと自社株買い中心の正味還元28億ドルを差し引くと、自己資本は42.7億ドルとなる。仕事の量は増えるが、2025年の高収益性がそのまま10年間続く姿ではない。
- コミュニケーションズ:数量 420(対応可能なデータセンター電装・通信設備および関連技術工事市場、2025年価格の億ドル)× 価格 6.5%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数)→ 売上 27 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質市場260→420億ドル、シェア約4.39→4.60%、価格指数1.41倍。2030年以降は高成長が鈍化。
- 住宅:数量 1,080(米国住宅着工戸数と住宅当たり設備工事費から見積もった市場、2025年価格の億ドル)× 価格 2.0%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする施工単価指数)→ 売上 22 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場950→1080億ドル、シェア約1.37→1.44%、価格指数1.41倍。住宅着工の回復は限定的。
- インフラストラクチャー・ソリューションズ:数量 800(米国の特注電力設備・発電設備筐体・産業用製缶修理の対応可能市場、2025年価格の億ドル)× 価格 2.0%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする製品単価指数)→ 売上 16 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質市場500→800億ドル、シェア約1.00→1.40%、価格指数1.41倍。買収した製作能力を生かすが利益率は低下。
- 商業・産業向け工事:数量 1,020(米国の商業・産業向け電気・機械設備の対応可能工事市場、2025年価格の億ドル)× 価格 1.3%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数)→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場600→1020億ドル、シェア約0.71→0.94%、価格指数1.41倍。特殊工事の一時的な高採算は平準化。
- 構造物・大型鉄骨事業:数量 600(米国の大型構造鉄骨加工・建方の対応可能市場、2025年価格の億ドル)× 価格 4.7%(同市場に占めるDBMの推定売上シェア×2025年を1とする工事単価指数。未連結の2025年はゼロ)→ 売上 28 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場450→600億ドル、シェア約3.40%、買収時からの単価指数約1.37倍。鉄骨の価格転嫁は物価をやや下回る。
倍率:k9.0%、ROEは7.57÷42.7=17.73%。強い独占的な堀は認めず、超過収益の残存割合は1/2、RONICは13.36%。2035年以降のgは実質市場の伸び約1%、シェア横ばい、請負単価の伸び約3%を合わせた名目4.0%で、ROEから成長率を逆算していない。正当化PERの上限は14.57倍。建設の入札競争と大型買収後の利益の質を考慮し、上限の約87%となる12.68倍を採用。純利益はGAAPで、金利、税、買収償却および株式報酬を含む。
確率:電力とデータセンターの実質需要は伸びる一方、入札競争と工場の能力増設が利益率を平準化させる展開。住宅は緩やかに回復し、DBMは買収時の規模を保って成長すると考える。
やや悲観 23% やや悲観:データセンター投資の反動と鉄骨工事の採算悪化が重なる 利益 2 億ドル · PER 9.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 66.22 ドル27 億ドル
2029年以降にデータセンターの新設が減速し、配線と特注電力設備の発注が弱まる。コミュニケーションズの実質対応市場は2025年から約2割の拡大にとどまり、IESは競争入札でシェアを失う。エムコアや大手専門業者との間で価格競争が強まり、施工単価の上昇は物価を下回る。
住宅は高金利と住宅価格の負担が続き、建設会社からの値下げ要求が収まらない。インフラストラクチャー・ソリューションズでは増設工場の稼働率が低下し、商業・産業工事では労務費の転嫁が遅れる。DBMも大型鉄骨案件で見積もりと実際の工数が食い違い、鉄骨事業の営業利益率は4%台に下がる。
全社の営業利益は3.3億ドルに縮み、純利益は2.21億ドルにとどまる。買収後の借入金を返済するため、配当は出さず自社株買いを抑える。純利益の10年累計は約25.9億ドルで、途中の落ち込みを含む。正味還元9億ドルを差し引くと自己資本は約25.7億ドルとなる。事業は存続するが、2025年のような高ROE企業ではなくなる。
- コミュニケーションズ:数量 310(対応可能なデータセンター電装・通信設備および関連技術工事市場、2025年価格の億ドル)× 価格 5.1%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数)→ 売上 16 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場310億ドル、シェア約4.00%、価格指数約1.29倍。競合の増員で取り分を失う。
- 住宅:数量 940(米国住宅着工戸数と住宅当たり設備工事費から見積もった市場、2025年価格の億ドル)× 価格 1.6%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする施工単価指数)→ 売上 15 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場940億ドル、シェア約1.26%、価格指数約1.28倍。住宅着工停滞と値引きが続く。
- インフラストラクチャー・ソリューションズ:数量 620(米国の特注電力設備・発電設備筐体・産業用製缶修理の対応可能市場、2025年価格の億ドル)× 価格 1.4%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする製品単価指数)→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場620億ドル、シェア約1.11%、価格指数約1.24倍。工場の固定費を十分に吸収できない。
- 商業・産業向け工事:数量 800(米国の商業・産業向け電気・機械設備の対応可能工事市場、2025年価格の億ドル)× 価格 1.0%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数)→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場800億ドル、シェア約0.81%、価格指数約1.20倍。入札価格が伸び悩む。
- 構造物・大型鉄骨事業:数量 480(米国の大型構造鉄骨加工・建方の対応可能市場、2025年価格の億ドル)× 価格 3.9%(同市場に占めるDBMの推定売上シェア×2025年を1とする工事単価指数。未連結の2025年はゼロ)→ 売上 19 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場480億ドル、シェア約3.08%、単価指数約1.27倍。建設工事の遅延で利益率が低下。
倍率:k9.0%、ROEは2.21÷25.7=8.60%となり資本コストを下回るため、正当化PERの上限は1÷k=11.11倍。2035年以降のgは実質需要の横ばいとシェア減少、価格上昇約3%を合わせた名目3.0%。工事の採算悪化が構造化し、ためた利益が資本コスト以上の価値を作れないため、上限より低い9.62倍を採用する。現在の市場倍率や過去の谷の倍率は参照していない。
確率:データセンターの工事能力が増えた後に投資が鈍化し、住宅も弱い状態が長引く可能性は小さくない。DBMの統合で固定費が増えた分、利益率が過去の水準へ戻るリスクを重く見て23%とする。
悲観 12% 悲観:大型工事で損失を出し、買収後の固定費が重荷となって構造的に競争力を失う 利益 1 億ドル · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 21.80 ドル9 億ドル
データセンター投資の過剰を受けて、2030年前後に新設案件が大きく減る。競合の増設能力が残るため、建設会社は稼働率を守ろうとして安値で受注する。IESは大型顧客を失い、コミュニケーションズのシェアが約3.1%に下がる。住宅向けでも価格競争が続き、特注電力設備の工場は稼働率不足に陥る。
DBMは鉄骨の大型案件で見積もりを超える原価を負担する。工事遅延と保証費用に加えて、10年間の途中で買収関連のれんや設備に減損を認識する。事業は存続するものの、優良な施工会社としての評価を失う。2025年から10年間の利益の道筋は、2026年に約4.3億ドルを稼いだ後に失速し、2030年代前半に赤字が続き、2033年には減損を含め約2.8億ドルの純損失を出すというものである。
2035年には小幅黒字へ戻るが、営業利益は約0.83億ドル、純利益は約0.54億ドルにとどまる。10年の純利益累計は減損を含め約1.0億ドルで、正味還元も約1.0億ドルに抑えられ、自己資本は概ね8.8億ドルに残る。継続企業としての前提は保つため時価総額をゼロにはしないが、利益だけで高い評価を支えられる会社ではなくなる。
- コミュニケーションズ:数量 250(対応可能なデータセンター電装・通信設備および関連技術工事市場、2025年価格の億ドル)× 価格 4.2%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数)→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質市場250億ドル、シェア約3.13%、価格指数約1.22倍。主要顧客を競合へ失う。
- 住宅:数量 730(米国住宅着工戸数と住宅当たり設備工事費から見積もった市場、2025年価格の億ドル)× 価格 1.3%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする施工単価指数)→ 売上 10 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質市場730億ドル、シェア約1.55%ではなく約1.12%からの価格構成を前提とし、需要減少と値下げの双方が響く。
- インフラストラクチャー・ソリューションズ:数量 500(米国の特注電力設備・発電設備筐体・産業用製缶修理の対応可能市場、2025年価格の億ドル)× 価格 1.1%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする製品単価指数)→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質市場500億ドル、シェア約0.88%、価格指数約1.20倍。製作設備の稼働率が低下。
- 商業・産業向け工事:数量 660(米国の商業・産業向け電気・機械設備の対応可能工事市場、2025年価格の億ドル)× 価格 0.7%(同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数)→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質市場660億ドル、シェア約0.66%、価格指数約1.12倍。低採算工事が中心となる。
- 構造物・大型鉄骨事業:数量 390(米国の大型構造鉄骨加工・建方の対応可能市場、2025年価格の億ドル)× 価格 2.9%(同市場に占めるDBMの推定売上シェア×2025年を1とする工事単価指数。未連結の2025年はゼロ)→ 売上 11 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質市場390億ドル、シェア約2.57%、単価指数約1.14倍。大型案件の赤字と価格競争で優位を失う。
倍率:長期のROEは0.54÷8.8=6.1%とk9.0%を下回り、利益ベースで高い価値を正当化できない。悲観では継続事業の収益力よりも残存資産の回収可能性が重要となるため、2025年の自己資本8.8億ドルを床の代理指標としてPBR1.0倍を採用する。減損を含む累計損益を自己資本に繰り越し、2025年の自己資本を超える留保利益を床に上乗せしていない。大型買収後の資産は全額を容易に売却できるわけではないため、これは保証された清算価値ではない。
確率:電装市場の競争激化、鉄骨大型案件の損失、需要減少が重なる厳しい事態であり、単なる通常の景気後退より発生確率は低い。ただし過去に赤字へ落ちた実績があり、12%を割り当てる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
コミュニケーションズ
データセンター内部の通信・電気配線、ネットワーク設備、高度な技術基盤の設計・施工・保守。大規模なデータセンターや高技術施設が主要な需要源である。
| 数量対応可能なデータセンター電装・通信設備および関連技術工事市場、2025年価格の億ドル | 価格同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 260 | 4.4% | 11 | 2 |
| 10 年後 中立 | 420 | 6.5% | 27 | 4 |
取り方:2025年9月期の事業売上11.4064億ドルと営業利益1.665億ドルは会社開示を採用。施工件数や契約当たり単価は非開示。米国の2025年データセンター建設支出約497億ドルを出発点とし、電装・通信工事として取り得る部分と、物流施設・高技術工場向けの関連工事を合わせた実質対応市場を260億ドルと推定した。両者は包含範囲が違うため単純な市場シェアではない。会社売上を推定対応市場で割った初期シェアは約4.39%。大型工事を奪い合う競合はエムコア、コンフォート・システムズUSA、ロゼンディン、M.C.ディーンなどで、用途限定の会社別シェアは未開示。市場資料はhttps://stackpath.ie/us/data-centre-construction、事業売上はIESの2025年決算資料による。
住宅
戸建て・集合住宅向けの電気配線工事を中心に、一部地域で空調・配管の施工も行う。住宅着工数と建設会社から受け取る施工単価に左右される。
| 数量米国住宅着工戸数と住宅当たり設備工事費から見積もった市場、2025年価格の億ドル | 価格同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする施工単価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 950 | 1.4% | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,080 | 2.0% | 22 | 2 |
取り方:2025年9月期の会社開示は住宅売上13.0437億ドル、営業利益1.0379億ドル。戸建て電気工事6.6561億ドル、戸建ての配管・空調3.2580億ドル、集合住宅等3.1296億ドルという内訳も確認した。全米住宅着工約136万戸に、NAHBが公表する戸建ての電気・配管・空調の工事費合計約8.15万ドルを掛けた金額を起点とする。ただし戸建てと集合住宅で工事費が異なるため、重複と対象外工事を調整し、対応可能市場を950億ドルと推定した。初期シェアは約1.37%。パワー・デザインや地域の住宅設備工事会社が競合し、正確な全国シェアは非開示。住宅着工はhttps://www.nahb.org/news-and-economics/press-releases/2026/02/overall-housing-starts-inch-lower-in-2025を参照。
インフラストラクチャー・ソリューションズ
発電機用筐体、特注の電力・産業設備、電動機等の修理。2026年1月に取得したガルフ・アイランドの大型製缶事業を含めて将来を評価する。
| 数量米国の特注電力設備・発電設備筐体・産業用製缶修理の対応可能市場、2025年価格の億ドル | 価格同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする製品単価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 500 | 1.0% | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 800 | 2.0% | 16 | 3 |
取り方:2025年9月期の事業売上4.9872億ドル、営業利益1.1847億ドルは会社開示。売上のうち特注製品が約4.00億ドル、産業サービスが約0.98億ドル。米国の電力配電設備市場331億ドルというBCEの2025年推定を参考に、発電機筐体や関連する大型製缶、産業機器修理など隣接用途約169億ドルを加えて、対応可能市場を500億ドルと推定した。したがって初期シェア約1.00%は広い用途の代理指標であり、電力配電設備だけのシェアではない。競合はパウエル、イートン、バーティブ、地域の製缶企業などで製品範囲が異なる。市場の参考資料はhttps://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2080126/000119312526008865/d890989ds1.htm。
商業・産業向け工事
工場、データセンター、物流施設、商業建築向けの電気・機械設備工事。複雑な電力設備工事に対応するが、案件ごとの採算変動が大きい。
| 数量米国の商業・産業向け電気・機械設備の対応可能工事市場、2025年価格の億ドル | 価格同市場に占めるIESの推定売上シェア×2025年を1とする請負単価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 0.7% | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,020 | 1.3% | 14 | 2 |
取り方:2025年9月期の会社開示売上4.2774億ドル、営業利益0.4726億ドルを採用。米国の2024年電気サービス全体市場約1639億ドルには送配電、保守、住宅なども含まれるため、そのうち商業・産業の施工が競争の中心となる市場を2025年価格で600億ドルと推定した。初期シェア約0.71%は用途別の代理指標であり、会社公表値ではない。エムコア、コンフォート・システムズUSA、MYRグループ、地域の電気工事会社が競合する。市場の参考資料はhttps://www.gminsights.com/industry-analysis/us-electrical-services-market。
構造物・大型鉄骨事業
2026年10月5日に取得したDBMグローバルの大型鉄骨加工・建方、産業工事、構造設計と図面作成。2025年のIES連結業績には含まれていない。
| 数量米国の大型構造鉄骨加工・建方の対応可能市場、2025年価格の億ドル | 価格同市場に占めるDBMの推定売上シェア×2025年を1とする工事単価指数。未連結の2025年はゼロ | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 450 | 0.0% | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 600 | 4.7% | 28 | 2 |
取り方:DBMは2026年10月5日に買収が完了したため、2025年のIES連結売上・営業利益には含めない。買収時に公表されたDBMの2026年6月までの直近12か月売上は約15億ドルで、取得後の出発点とする。米国の2025年構造用金属製品需要約1280億ドルは広すぎるため、実際に大型鉄骨加工・建方が対象となる範囲を約450億ドルと推定し、DBMの買収時点のシェアを約3.33%と逆算した。これは公表シェアではない。シブズ・スチール、カナム、ニューコア関連の加工事業者、地域の専門会社が競合する。DBMの2026年4~6月期売上4.14億ドル、調整後EBITDA率11.8%は売却前の親会社の開示であり、営業利益率と同一視しない。市場資料はhttps://www.euromonitor.com/structural-metal-products-in-the-us-isic-2811/report、買収資料はhttps://iesholdingsinc.gcs-web.com/news-releases/news-release-details/ies-holdings-completes-acquisition-dbm-global。
リスクと懸念
データセンター設備投資の反転
2026年6月末のIES単体の受注残45.3億ドルは強い需要の証拠だが、約17.2億ドルは履行義務が未確定である。2025年の米国データセンター建設支出は約497億ドルへ急拡大しており、増設が一巡すると反動も大きい。会社が採用した人員と増設した製作能力は、仕事が減ってもすぐには縮められない。
DBM買収の統合と借入負担
2026年10月に完了したDBMの買収額は約6.91億ドルで、約5.25億ドルの借り入れが必要となった。鉄骨の大型工事は原価超過や工程遅延の損失が大きくなりやすい。買収前に高かったDBMの調整後EBITDA率は営業利益率でも純利益率でもなく、設備の減価償却や買収後の支出を差し引いて判断する必要がある。
工事契約の固定価格と労務費
2025年の売上の大半は固定価格契約であり、受注後に賃金や材料費が上がっても、その増加分を十分に転嫁できない可能性がある。熟練工不足は参入障壁になる反面、賃金を押し上げる。大型現場で見積もりを誤ると、ひとつの契約で複数の好採算工事の利益を失う。
住宅市場の低迷と値下げ圧力
住宅事業は2025年に売上が減少し、建設会社からの価格引き下げ要求が営業利益率を圧迫した。住宅価格、住宅ローン金利、保険料の負担が重ければ着工は戻りにくい。住宅不足が存在することと、実際に購入できる世帯が増えることは異なるため、供給不足だけを根拠に数量を伸ばすべきではない。
AIエージェント代替と設計工数の圧縮
電気配線や鉄骨建方は物理的な現場作業であり、AIエージェントが直接代替することは難しい。一方、DBM Virconなどが行う構造図面の作成、設計補助、積算、工程の事務処理には自動化の余地がある。これらを人の作業時間で売る部分は、長期の工数減少と価格競争を受ける可能性がある。中立ではその影響を鉄骨事業の単価上昇率に反映した。
支配株主と少数株主の取り分
トンティンは2025年時点で約54%の株式を所有し、経営の重要な決定に強い影響力を持つ。長期視点の買収と再投資が成功すれば一般株主にも利益が及ぶが、割高な買収や株式発行、少数株主に不利な取引への反対は難しい。現金配当の実績がないため、株主価値は経営による再投資と自社株買いの質に大きく依存する。
2026年の利益率とGAAP利益の質
2026年4~6月期の営業利益は1.785億ドルと好調だったが、会社は短期間で完了する好採算案件の寄与を説明している。また、2026年の純利益には有価証券の評価損益も含まれる。市場価格の上昇による一時利益や特定案件の好採算を、2035年の通常の施工利益として延長すると将来価値を過大評価する。
今後の分かれ目
- 2027年以降もコミュニケーションズの新規受注が二桁成長し、受注残のうち確定契約の割合が上がる
- 需要の継続性が確認されるため、楽観・やや楽観の確率を引き上げる。工事能力とシェアの伸びを数量側に反映する。
- 2027~2029年にデータセンターの着工が減り、コミュニケーションズの営業利益率が10%前後へ下がる
- 現在の高採算は循環的だったと判断し、やや悲観の数量と営業利益率に近づける。
- DBMの営業利益率が買収後に8%以上で安定し、取得関連借入金が営業キャッシュフローで順調に減る
- 買収が経済的な価値を生んだ証拠となるため、鉄骨事業の再投資利回りと上方の筋書きの確率を高める。
- 鉄骨の大型案件で原価超過や保証損失が続き、のれんの減損が生じる
- 事業の優良さが損なわれたと判断し、悲観側の確率を増やす。自己資本には減損を反映し、未確定の受注残を割り引く。
- 住宅着工が年間150万戸を安定的に超え、住宅事業の営業利益率が9%前後に戻る
- 住宅の数量回復と価格交渉力の改善が確認されるため、中立の住宅売上と利益を上方修正する。
- 増設した特注製品工場の稼働率が低下し、インフラストラクチャー・ソリューションズの利益率が10%を割る
- 近年の高い資本収益率を循環的と判断し、設備投資の回収期間を長く見直してやや悲観側へ寄せる。
- 利益が拡大しても買収と株式発行が続き、正味の自社株買い・配当が増えない
- 会社全体の成長と既存株主の利益を区別し、正味還元を減らす。買収先の利益に対して株主が負担した資本も厳しく評価する。
見ておくもの
- IESの受注残45.3億ドルの推移と、うち確定済み履行義務28.0億ドルの増減
- コミュニケーションズの四半期売上、受注、営業利益率と主要顧客の設備投資計画
- 米国データセンター建設支出の実質成長と大型案件の延期・取消件数
- 住宅事業の受注、戸建て着工、建設会社からの値引き圧力
- 特注電力設備工場の稼働率と設備投資額、ガルフ・アイランド買収の収益寄与
- DBMの確定受注残、受注総額、工事原価率、営業利益率、案件損失
- DBM買収に伴う約5.25億ドルの借入残高と利払いの推移
- GAAP純利益と営業キャッシュフローの差、有価証券評価損益の寄与
- 自社株買い枠の使用額、株式報酬、買収の新株発行を差し引いた正味還元
- トンティンの保有比率と関連当事者取引、少数株主への利益配分
- 設計・積算・図面作成におけるAIエージェント導入と外注工数単価の変化
倍率と資本コストの決め方
2026年10月23日の市場時価総額を予測の出発点には使わず、まず2025年の4事業の実績と、2026年に取得済みのDBMを区別した。2035年の売上は各事業の実質対応市場、IESの取り分、請負単価指数を掛けて組み立て、競合の増員と採算の正常化を営業利益率へ反映した。倍率は現在や過去のPER、同業の取引倍率から決めていない。k9.0%、ROE、超過収益の残存割合1/2、事業から導いた長期gを使う正当化PERの上限から、利益の確実性に応じて割り引いた。2026年の好調な四半期を10年続く標準利益にせず、DBMの買収前利益を2025年に混ぜてもいない。米国のASC842ではリース負債が既に計上されており、賃借施設の固定支払いも営業費用とリスクに含める。5つの筋書きの企業価値と正味還元をk9.0%で割り引いた加重価値は62.99億ドル、台帳による時価総額は86.20億ドルで、差はマイナス26.9%。割高という結果を消すために利益や倍率を逆算していない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に、業種の循環性0.5ポイントと入札競争による価格決定力の弱さ0.5ポイントを加え、資本コストを9.0%とする。βや現在の株価倍率は使っていない。DBM買収後の統合失敗、工事損失、顧客集中、支配株主のリスクは、追加の割引率ではなく各筋書きの利益率と確率に反映した。事業継続が危うい状態ではないため、distress上乗せはゼロとする。