結論
北の達人は、美容と健康食品を自社サイトの定期購入で売る通販会社だ。創業者の木下氏が株の過半を持ち、純現金も厚い。ただ、売上は2020年2月期の101億円から112億円までしか伸びず、営業利益率は29%から9%へ下がった。広告で新規客を買う費用が上がったためだ。会社は2028年2月期に営業利益31億円を掲げ、第1四半期は新規客が増えている。それでも今期の予想は営業利益10億円台で、計画との間は大きい。筆者は、堀の薄さと広告費の重さを見て、今の時価総額は成功をかなり織り込んでいると考える。 2026年2月期の売上は112億円、営業利益は10億円で、前の期より4割減った。今期は広告を増やして売上160億円を見込むが、営業利益は10億円台にとどまる予想で、第1四半期は営業損失だった。事業は広告で客を買い、定期購入で回収する単純な形で、強みは回収の管理と軽い固定費にある。弱みは、売上の8割強が上位5商品に集まることと、広告の単価に利益が左右されることだ。純現金は57億円、自己資本比率は85%と守りは固い。問題は、守りの厚さに対して攻めの利益が伸びていない点にある。
バリュー投資の観点から
事業の本質は、広告費を使って顧客を買い、定期購入で回収する計算の商売だ。計算が合う間は効率が高いが、堀ではなく、広告市場の値段に利益が左右される。経営者は筆頭株主で、資本の使い方も慎重だ。借金をせず、現金を厚く持つ。ただ、厚い現金は10年かけて11億円から57億円に積み上がり、還元に回った額は配当性向30%にとどまる。ROEが資本コストを大きく超える期は、使い道のない現金が足を引く。安全域は、純現金と、小さくても黒字を続ける体質にある。 安全域は純現金にあるが、現金の価値は戻り方で決まる。過半を持つ木下氏が還元をどう決めるかで、少数株主の取り分は変わる。事業に関しては、広告の単価が上がる中で利益率を守れるかを見る。利益率が戻る証拠が出るまで、中立の利益は直近5期の平均並みに置くのが筋だと考える。経営者の腕は確かだが、堀がない事業では、腕だけで10年の利益を約束することはできない。
何で稼ぐ会社か
自社の化粧品と健康食品を、ネットで定期購入として売る。広告を先に打ち、3〜4か月で回収する。定期の売上が約7割を占める。柱は、美容用マイクロニードルの「ディープパッチ」と、機能性表示食品の「カイテキオリゴ」だ。上位5商品で売上の8割強を占める。新商品を年に数点出し、広告効率の良いものだけを育てる。自社で広告の最適化システムを持ち、商品ごとに1人の客を得るための上限費用を決めている。店舗は持たず、固定費は軽い。ドラッグストア向けの卸と、ECモールの単品販売もある。 売上の内訳は開示されず、単一の事業として報告される。筆者は、美容が6割弱、健康食品が4割強と推定した。ディープパッチは、髪や肌の悩みに合わせた商品を重ねて出すシリーズで、会社は売上世界一のマイクロニードル美容ブランドと発表している。カイテキオリゴは2015年に売上の45.5%を占めたが、いまは分散が進んだ。新規客は広告で獲得し、2回目以降の購入で利益を出す。この回収の速さが、ほかの通販との差になっている。 商品の企画から広告、受注、発送までを自社で一貫して行い、顧客のデータを広告の最適化に使う。
優良さと弱いところ
強みは、広告の回収を数字で管理する仕組みと、固定費の軽さだ。2020年2月期の営業利益率は29%と高く、いまも赤字の期はない。弱みは堀の薄さだ。売上の8割強が上位5商品に集まり、広告の単価が上がると利益が先に削られる。ブランドが客を呼ぶのではなく、広告が客を呼ぶ構造だ。純現金57億円で自己資本比率は85%と財務は強いが、ROEは直近で9%まで下がった。売上は6年でほぼ横ばいで、成長は計画の中にあり、実績にはまだない。 強みの裏返しとして、広告の運用は他社にも真似しやすく、差は商品の当たりに寄る。売上の8割強を握る5商品が、5年後も同じ顔ぶれかは分からない。定期購入は積み上がる収益だが、解約の少なさは商品の力次第だ。2023年2月期には営業利益率が5.2%まで落ち、広告の効き方次第で利益が一気に細ることを示した。経営者は筆頭株主で、利益の使い方も保守的だ。ただ、厚い現金を事業で使い切れていない点は、資本の使い方としては物足りない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の化粧品・健康食品の通販は、人口が減る中で数量が横ばいに近い成熟市場だ。伸びるのは、機能性や新しい商品の形を持つ会社だけで、価格は年1〜2%の上昇にとどまる。競争は、大手メーカーの通販、新興のD2Cブランド、モールの低価格品が重なる。ネット広告の単価は上がる傾向にあり、新規客の獲得費が利益を削る。機能性表示食品や定期購入への規制が強まる余地もある。不況では化粧品などの選択的消費が2〜3割落ちた例がある。需要は景気に鈍いが、広告費は景気に関係なく上がる。 国内の化粧品市場は、人口減で量が増えず、高付加価値化で金額が緩やかに伸びる。インバウンドの追い風は、店頭の商品に偏り、国内向けの定期通販には効きにくい。機能性表示食品は、制度の見直しで販売の条件が変わりうる。大手メーカーが自社通販に力を入れ、価格競争力のある新興ブランドも増えるため、広告で客を奪い合う構図は10年続くと見る。勝つ会社は、広告で客を買った後の再購入率を高められる会社だ。 値上げが通りにくい商品ほど、広告費の上昇が利益に直撃する。
資本政策と M&A
純現金57億円で自己資本比率85%。借入はなく、利息は受け取る側だ。配当は連結の配当性向30%程度を目安とし、中期経営計画の期間は下限を設けている。下限は総額で年5億円弱にあたり、利益が減る期は配当性向が7割に上る。自社株買いの実績は確認できない。筆頭株主は木下氏で、持株比率は51.7%と過半だ。株主優待は、美容液と自社通販の金券で、2025年12月に拡充した。優待の費用は開示が見つからず、年0.8億円と推定した。M&Aは「集客のノウハウを活かせる商品」を買う小型のものを想定し、中期経営計画の目標には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社は変わり始めている。2026年2月期は予想を上回り、新規顧客の獲得は6四半期連続で増えた。今期は売上160億円を見込み、広告を先に打つことで、翌期以降の利益を厚くする設計だ。ディープパッチは会社の発表で売上世界一のマイクロニードル美容ブランドで、年10商品を出す体制も整う。中期経営計画の営業利益31億円は、2020年2月期の利益29億円を少し超える水準で、実績の範囲内だ。木下氏の過半保有で意思決定が速く、純現金57億円は広告投資の余力になる。
商品が当たれば、固定費の軽い通販は利益率が急に戻る。売上200億円を超え、営業利益率が15%に達すれば、利益は今の3倍だ。 第1四半期の営業損失は、受注残の売上計上が遅れた分と、先行投資の増加によるもので、事業の悪化ではないと見る。広告の回収が3〜4か月で進む以上、先行投資が売上に変わる時期は読みやすい。 世界一をうたう主力ブランドを持ち、定期購入の客が積み上がる点で、同業の新興ブランドより一歩先にいる。純現金57億円は、広告を増やしても財務が揺らがない余力だ。
慎重な見方
売上は6年間、100億円台でほぼ横ばいだ。営業利益率は29%から9%に下がり、広告の単価が上がって、新規客を買う費用が利益を食っている。今期の予想は売上が4割増えて営業利益が横ばいで、成長は利益を生んでいない。第1四半期は販促費が6億円増え、営業損失になった。上位5商品に売上の8割強が集まり、1つが外れれば穴は大きい。機能性表示食品と定期購入への規制が強まれば、モデルそのものが変わる。
中期経営計画は広告を増やす前提で組まれ、利益の厚みは先送りだ。厚い現金は守りだが、成長の根拠ではない。 広告費を増やして売上を買う手法は、利益率の改善を約束しない。2023年2月期のように利益が5分の1に落ちた期が、再び来ない保証はない。 上位5商品への集中と、広告の単価の上昇は、10年の間に必ず試される。純現金があっても、事業の利益が戻らなければ現金は守りにしかならない。 木下氏が過半を持つため、少数株主が現金の使い方に口を出す余地も小さい。
どちらに重みを置いたか
筆者は、強気の見方の足場が弱いと考える。広告の回収が効く間は伸びるが、堀がない以上、広告単価の上昇で利益率は戻りにくい。中立では売上が名目で1.65倍、営業利益率が11%台に戻る姿を置いた。計画の31億円は楽観に位置づけ、確率は1割に抑えた。純現金と配当の下限があり、悲観でも大きくは割れない。それでも、今の時価総額は中立の価値を大きく上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 168 円234 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 32 円45 億円)。 今の値に割り戻すと 94 円131 億円、今との差 −38.0%、 期待の年率 +2.8%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 413 円576 億円 | 52 円73 億円 | +207.9% | +11.9% | 37 円52 億円 |
| やや楽観 | 20% | 268 円374 億円 | 39 円54 億円 | +102.8% | +7.3% | 61 円86 億円 |
| 中立 | 34% | 180 円251 億円 | 36 円50 億円 | +42.9% | +3.6% | 73 円102 億円 |
| やや悲観 | 26% | 61 円86 億円 | 26 円36 億円 | −42.3% | −5.4% | 23 円32 億円 |
| 悲観 | 12% | 32 円45 億円 | 11 円16 億円 | −71.1% | −11.7% | 5 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 168 円234 億円 | 32 円45 億円 | +32.2% | +2.8% | 200 円279 億円 |
今の株価時価総額 151 円211 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 広告の回収が効き、利益率が昔の水準へ戻る 利益 33 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 413 円576 億円
10年後、北の達人は売上270億円規模の通販会社になっている。ディープパッチに続く看板商品が年に数点当たり、広告の回収が早まる。固定費の軽い通販は、売上が増えると利益が急に伸びる。営業利益率は17%と、2020年2月期の29%には届かないが、直近の9%からは大きく戻る。木下氏が過半を握るため判断は速く、純現金も広告投資に回せる。M&Aは小型の商品買収にとどまる。配当は利益に連動して増え、優待も続く。 広告の単価が上がっても、再購入率が高い商品の比率が増え、1人の客から得る利益が厚くなる。ヘアケアなど周辺の商品も育ち、上位5商品への集中は7割台まで下がる。純現金は積み上がるが、事業の拡大と配当の増加で使われ、現金の比率は下がる。
- 美容(ディープパッチ・ヘアケアなど):数量 393(年間の販売個数(万個、推定))× 価格 0.41(1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後))→ 売上 163 億円・営業利益 31 億円。個数 ×1.9・利益率 19%
- 健康食品(カイテキオリゴ・ほか):数量 300(年間の販売個数(万個、推定))× 価格 0.35(1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後))→ 売上 103 億円・営業利益 14 億円。個数 ×1.5・利益率 14%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.1% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 15.93 倍、時価総額 543 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画どおり、2028年2月期前後に営業利益30億円台へ乗り、その後も商品が当たり続ける姿。売上は6年ほぼ横ばいで、実績の裏づけが薄いため、確率は1割を切る8%に抑えた。
やや楽観 20% 新商品が育ち、計画に近い利益を出す 利益 22 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 268 円374 億円
新規客の増加が利益につながる。ディープパッチとカイテキオリゴは売上を保ち、新商品が2〜3点育つ。売上は220億円ほどで、営業利益率は14%前後に戻る。広告の単価は上がるが、定期の積み上げで吸収できる。2028年2月期の営業利益31億円には届かないものの、10年の後半には近づく。配当は配当性向30%程度を保つ。 上位商品への集中は緩み、新商品の当たり外れが利益の振れを小さくする。広告の単価は上がり続けるが、再購入の積み上がりで1人あたりの利益が保たれる。純現金は積み上がるものの、一部は新商品の開発と広告に回り、使い道が事業に戻る。
- 美容(ディープパッチ・ヘアケアなど):数量 321(年間の販売個数(万個、推定))× 価格 0.41(1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後))→ 売上 131 億円・営業利益 20 億円。個数 ×1.55・利益率 15%
- 健康食品(カイテキオリゴ・ほか):数量 260(年間の販売個数(万個、推定))× 価格 0.34(1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後))→ 売上 88 億円・営業利益 10 億円。個数 ×1.3・利益率 11.5%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 15.17 倍、時価総額 348 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新規客の増加が利益に転じ、売上200億円前後、営業利益率が14%前後に戻る姿。第1四半期の新規客の増加という手がかりがあるため、楽観側ではやや厚めに置いた。
中立 34% 売上は伸びるが、広告費に利益を削られる 利益 15 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 180 円251 億円
売上は名目で1.65倍の185億円ほどになる。数量の伸びは美容が3割、健康食品が1.5割と、人口減の国内では新商品の寄与が中心だ。価格は物価並みに上がる。ただし、広告の単価も上がるため、営業利益率は11%台にとどまり、2028年2月期の計画(13%)にも届かない。営業利益は約20億円、純利益は約15億円だ。配当は配当性向30%程度で、優待も続く。純現金は積み上がり、使い道は決まらない。 新商品は年に数点出るが、当たるのはそのうちの一部で、育った商品も数年で広告の効きが落ちる。この入れ替えを繰り返す形で、利益は直近5期の平均に近い水準に落ち着く。
- 美容(ディープパッチ・ヘアケアなど):数量 269(年間の販売個数(万個、推定))× 価格 0.40(1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後))→ 売上 108 億円・営業利益 14 億円。個数 ×1.3・利益率 12.5%
- 健康食品(カイテキオリゴ・ほか):数量 230(年間の販売個数(万個、推定))× 価格 0.34(1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後))→ 売上 77 億円・営業利益 7 億円。個数 ×1.15・利益率 9%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.5% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 14.37 倍、時価総額 234 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は伸びるが、広告の単価上昇で営業利益率は11%台にとどまる落としどころ。直近5期の利益率の平均に近く、最も実績に沿うため、中立の確率は3分の1とした。
やや悲観 26% 主力が衰え、売上は伸びず利益は細る 利益 7 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 61 円86 億円
主力商品が衰え、新商品が育たない。売上は140億円ほどで、数量は美容が横ばい、健康食品が1割減る。広告の単価が上がり、営業利益率は6〜8%に落ちる。営業利益は約9億円で、2023年2月期と同じような薄い利益だ。配当は下限の水準にほぼ張りつき、配当性向は7割を超える。優待は縮める。純現金は残るが、少数株主に届く保証はない。 広告を増やして売上を保とうとするが、新規客の獲得費が上がり、利益は増えない。定期の客は高齢化と競合で減り、再購入の積み上がりも細る。経営は守りに入り、投資を絞って利益を確保する。
- 美容(ディープパッチ・ヘアケアなど):数量 207(年間の販売個数(万個、推定))× 価格 0.39(1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後))→ 売上 81 億円・営業利益 7 億円。個数 ×1.0・利益率 8.5%
- 健康食品(カイテキオリゴ・ほか):数量 180(年間の販売個数(万個、推定))× 価格 0.33(1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後))→ 売上 58 億円・営業利益 2 億円。個数 ×0.9・利益率 4%
倍率:ROE は6%前後で k 8.75% を下回る。この場合 PER の上限は 1÷k の 11.8 倍で、減益と広告依存を考えて約7割の 8.5 倍に置いた。
確率:主力商品が衰え、新商品も育たず、売上が横ばい、利益率が8%台に落ちる姿。2023年2月期の5.2%という低い期がすでにあるため、中立に近い厚みを置いた。
悲観 12% 広告が効かず、規制も重なり縮小する 利益 1 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 32 円45 億円
広告が効かなくなり、上位商品の売上が落ちる。機能性表示食品や定期購入の規制も重なり、売上は90億円ほどに縮む。営業利益は1億円に満たず、利益ではほとんど値が付かない。配当は減り、優待も縮める。純現金は使い道がなく、清算されない限り少数株主は手にできない。残る価値は、運転資金を引いた純現金と、売れる資産に限られる。 新規客の獲得費が1人あたりの利益を上回り、広告を減らして利益を守ろうとすると売上がさらに縮む悪循環に入る。商品開発の人材も流出し、新商品が出なくなる。配当は下限を割り込み、優待も廃止される。
- 美容(ディープパッチ・ヘアケアなど):数量 145(年間の販売個数(万個、推定))× 価格 0.38(1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後))→ 売上 54 億円・営業利益 2 億円。個数 ×0.7・利益率 3%
- 健康食品(カイテキオリゴ・ほか):数量 110(年間の販売個数(万個、推定))× 価格 0.31(1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後))→ 売上 34 億円・営業利益 −1 億円。個数 ×0.55・利益率 −2%
倍率:稼ぐ力が細り、事業の利益では値が付かない。純現金と売れる資産の税後を床にし、今の自己資本 80 億円に 0.56 倍を掛けた。清算されない限り少数株主は現金の使い道を決められないため、純現金を満額では数えなかった。
確率:広告が効かなくなり、規制も重なって、売上と利益が縮む姿。上位5商品への集中と広告単価の上昇という構造的な弱みから、1割強の確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
美容(ディープパッチ・ヘアケアなど)
マイクロニードルの美容パッチなどを、自社サイトの定期購入とモールで売る。
| 数量年間の販売個数(万個、推定) | 価格1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 207 | 0.30 | 62 | 6 |
| 10 年後 中立 | 269 | 0.40 | 108 | 14 |
取り方:開示は単一セグメントで、売上112.1億円を美容62億円と健康食品50億円に分けたのは筆者の推定。美容を、割引後の平均単価(price 欄の値)で割って約207万個とした。営業利益10.0億円は美容6.4億円、健康食品3.6億円と配分した。数量は人口減で実質やや減る。
健康食品(カイテキオリゴ・ほか)
機能性表示食品のオリゴ糖などを、自社サイトの定期購入とモールで売る。
| 数量年間の販売個数(万個、推定) | 価格1個あたりの平均単価(万円、名目・定期割引後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 200 | 0.25 | 50 | 4 |
| 10 年後 中立 | 230 | 0.34 | 77 | 7 |
取り方:健康食品の売上を50億円と推定し、定期・初回割引後の平均単価(price 欄の値)で割って約200万個とした。2015年はカイテキオリゴが売上の45.5%を占めたが、いまは上位5商品で82.5%。利益は広告を厚く入れる商品が多いため薄く配分した。
リスクと懸念
広告単価の上昇
利益の源泉である新規客の獲得費が、ネット広告の値上がりで上がり続けている。営業利益率が下がった主因と筆者は見る。さらに上がれば中立の利益率も届かない。
上位商品への集中
上位5商品が売上の8割強を占める。主力が飽きられるか、競合が似た商品を安く出せば、売上と利益が同時に落ちる。新商品の当たり外れも利益を大きく振らせる。
規制の強化
機能性表示食品や定期購入の販売方法は、消費者保護の観点で規制が強まる方向にある。初回安値の定期購入の条件を変えれば、広告の回収計算が崩れる。
計画の未達
中期経営計画は営業利益31億円だが、今期の予想は10億円台で、残りの1年で3倍にする必要がある。第1四半期は営業損失で、受注残の売上計上の遅れもある。
現金の使い道
純現金57億円が、10年かけて積み上がった。オーナー経営で、買収や投資で目減りするか、配当性向30%の範囲にとどまれば、少数株主に届かない。
オーナー依存
木下氏が過半を持ち、経営の判断も氏に集まる。同氏の判断が外れた時に止める力が弱い。浮動株が少なく、売買も薄くなりやすい。
今後の分かれ目
- 今期の売上が計画の160億円に近づき、営業利益率が7%を超える
- 広告の回収が計画どおり進む。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし、翌期以降の利益率が10%を超えるかを別に確認する。
- 第2四半期以降も営業利益が黒字に戻らず、販促費の増加が続く
- 広告効率の悪化を疑う。やや悲観の確率を上げる。
- 上位5商品の売上比率が7割台まで下がり、新商品が育つ
- 依存の弱まりが確認できる。k の寿命の上乗せを見直してよい。
- 機能性表示食品や定期購入の規制で、初回の販売条件が変わる
- 広告の回収計算が変わる。利益率の前提を下げ、悲観側の確率を上げる。
- 自社株買いや大きな特別配当など、現金を還元する方針が出る
- 余った現金の戻り方の評価を1.0へ上げてよい。
- 木下氏の持株比率が大きく変わる、または後継の計画が出る
- 支配と資本政策が変わる。TOBや非公開化の可能性も含めて再評価する。
見ておくもの
- 営業利益率と広告・販促費の売上比
- 新規顧客数と定期売上比率
- 上位5商品の売上比率
- 純現金の推移と配当・自社株買い
- 機能性表示食品・定期購入の規制の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを見ず、美容と健康食品を数量×価格で積んだ利益と、その時点のROE・資本コスト(基本7.5%に値決め+0.5%・寿命+0.5%を足した8.5%)から置いた。中立のROEは約10%で、式の正当化PERは約13倍。広告に頼る利益の質を見て約8割の10.5倍に置いた。余った現金は戻りの実績が薄いため半分で数えた。中立の営業利益率は11%台で、過去12年の最高(29%)より低く、直近5期の平均(約12%)に近い。時価総額と比べると、中立の価値は大きく下回る。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→15.93 倍・やや楽観 PER 12.5→15.17 倍・中立 PER 10.5→14.37 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。