結論
未来工業は、建物の電気配線に使う資材のメーカーだ。壁に埋めるボックス、電線を通す管、給水給湯のサヤ管などを作る。職人の取り付けの手間を減らす工夫品が強みである。筆者の結論は「適正圏」だ。会社は堅いが、割安とまでは言えない。
稼ぎの柱は電材・管材で、売上の約 4 分の 3 を占める。2023 年に価格改定が通り、全社の営業利益率は 10% 台前半から 15% 前後へ上がった。この水準が続くかが最大の論点だ。今期は原料高で利益が 1 割近く減る計画で、戻りはすでに始まっている。
財務はきわめて堅い。実質の現金が時価総額の 3 分の 1 に当たり、借金はない。配当性向は 50% を目安にしており、還元にも前向きだ。ただ、国内の住宅着工は縮み、数量での成長は望みにくい。10 年先の利益は、物価の分だけ伸びる程度と見る。中立では営業利益が 70 億円強、利益率は 12% 台に落ち着く。
筋書きを確率で加重した価値は、今の時価総額を 1 割以内でわずかに下回る。厚い現金と堅い利益を認めても、利益率の山の分は払う値段に入れすぎない方がよい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、未来工業は「良い会社だが、払う値段で結果が決まる会社」である。
良い点は三つある。借金がなく、実質の現金が厚い。経営が資本をむやみに使わず、還元にも前向きだ。製品は小さな工夫で顧客の手間を省き、値上げが通った。10 年後もこの事業は残り、今より弱くなる理由は見当たらない。
気になる点も三つある。一つは、いまの利益率が値上げの効果で押し上げられていることだ。この水準を「普通の利益」と見ると、払いすぎる。二つ目は、数量の成長がないことだ。国内の住宅は縮み、利益は物価の分しか伸びない。三つ目は、厚い現金が資本効率を下げていることだ。現金は帳簿の額のまま価値になるが、事業の稼ぎを高くはしない。
株主のものになる利益は、年に 40 億円台と筆者は見る。堅い会社だが、安全域が厚いとは言えない。値段が 2 割ほど下がれば、持ち続けたい会社に変わる。いまの時点では、よい会社を適正な値段で買える、という程度の評価にとどまる。
何で稼ぐ会社か
未来工業は岐阜県輪之内町に本社を置く、電気設備資材の専業に近いメーカーである。売上の約 76% が電材・管材、約 18% が配線器具、残りが省力化機械と樹脂成形用金型の外販だ。
電材・管材の代表は、電線を通す可とう管「ミラフレキ」、壁や天井に埋めるボックス、地中に埋める管、給水給湯用のサヤ管「ミラペックス」である。顧客は電気工事店と設備工事店で、製品は問屋や通販を通じて全国に流れる。戸建て住宅から物流施設、データセンター、病院、官公庁の建て替えまで使われる。
配線器具はスイッチとコンセントで、子会社の神保電器が作る。大手が押さえる市場で、意匠のよい高価格品を非住宅に広げる役割を負う。省力化機械と金型は、自社の樹脂成形の技術を外へ売る小さな事業だが、利益率は高い。
グループは連結で約 1,300 人。神保電器のほか、未来精工、未来化成、未来運輸などの 100% 子会社を持ち、海外は台湾に拠点がある。工場は岐阜県内が中心で、2016 年に垂井工場が完成した。国内の建設に密着した、地味で堅い構えの会社である。
同社の製品は、値段で選ばれるより「使うと楽だから」で選ばれる。建設現場の人手不足が深いほど、この強みは効く。一方で材料は樹脂が中心だ。石油の値段に原価が振れる点は、事業の性格として押さえておきたい。
優良さと弱いところ
堀は「工夫を出し続ける組織」にある。ただし鉄壁ではない。
強みは、小さな工夫で職人の手間を減らす製品づくりだ。社員が提案を出す文化が背景にある。1 日 7 時間 15 分、残業ゼロ、年間休日 140 日という働き方でも製品が出てくる。この文化は他社にまねしにくい。
値上げが通った実績も堀の証拠だ。2023 年の価格改定のあと、営業利益率は 10% 前後から 15% 台へ上がり、改定後の水準を保ってきた。工事全体の費用に占める資材の割合は小さい。筆者は、工事店が値上げより手間の節約を選んだ結果だと見る。
弱みは三つある。可とう管やボックスは樹脂製で、原料の石油価格に原価が振れる。戸建て住宅向けは人口減で縮む。そして固定費が重い。休みが多く給与も高水準とされるため、売上が落ちると利益が早く削られる。
資本効率は並みだ。ROE は 8.5% と資本コストをわずかに上回るだけで、厚い現金がそれを押し下げている。自己資本比率は 8 割を超え、利益の質も素直だ。純利益は営業利益の 7 割ほどで、特別な利益に頼っていない。経営は中島靖社長が率いる。不祥事の報道は見当たらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の中身は、新築住宅の工事、非住宅の工事、そして改修の三つである。
新築の戸建ては、人口減とともに着工が縮み続ける。同社の 2025 年 4〜9 月期の純利益が 8% 減ったのも、住宅着工の減少が響いたと報じられた。ここに数量の成長を期待するのは難しい。
支えになるのは非住宅だ。会社は、関東の再開発、物流施設、データセンター、病院、官公庁の建て替えを重点に置く。建設業界は人手不足が深く、職人の手間を減らす資材は選ばれやすい。社長も 2024 年に、省力化の面で自社製品は相性がよいと語った。
原料の側にも波がある。2026 年は中東情勢でナフサの調達不安が出た。同社は 4 月に今期の予想を出せず、7 月に調達リスクが和らいで予想を公表した。樹脂の値段は、物価の流れとは別に利益率を揺らす。
競争は分散的だ。可とう管では古河電工のような大手が同じ売り場に並ぶ。配線器具はパナソニックなど大手の市場で、同社は小さな挑戦者にとどまる。電設資材の国内統計も、シェアの公表値も見つからない。筆者は、対象市場の国内規模を 3,500 億円ほどと置き、同社のシェアを 1 割弱と推定した。公表値はなく、推定である。国内の実質の数量は 10 年で 1 割弱縮み、値段は物価並みに上がるとみる。
資本政策と M&A
還元は手厚い。配当は、配当性向 50% か純資産配当率 3% の高い方を目安にする。2026 年 3 月期の配当性向は約 50% で、期末配当を引き上げた。今期は一度減配の計画を出したが、7 月に大きく増額へ修正した。
自己株式が発行済株式の約 33% に上る点が目を引く。長年の自社株買いと、従業員向けの株式給付信託の結果だ。残りの株主構成では、未来A.K.O、名古屋中小企業投資育成が大きい。政策保有株は、対話で改善が見られなければ縮減する方針である。
M&A は大きなものがない。配線器具の神保電器など、既存の子会社が中心だ。中期経営計画では 2028 年 3 月期に売上 504 億円、営業利益率 14.8% を掲げた。後継の計画は一度延期され、報道では 2029 年 3 月期に売上 526 億円を目指すとされる。
買収される側になる可能性は、時価総額の小ささと厚い現金を考えると無視できない。ただ、大株主が分散し、買収提案の報道も見当たらないため、筋書きの中心には置かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
非住宅の電気工事が長く続き、建設現場の人手不足がさらに深まる。取り付けの手間を減らす同社の製品は、値上げをしても選ばれ続ける。データセンター、物流施設、再開発の需要が、住宅の縮みを打ち返す。
価格改定の効果は崩れない。原料高が来ても転嫁でき、営業利益率は 14% 台を保つ。中期計画が描く利益率に近い姿だ。配線器具は意匠のよい高価格品が非住宅に広がり、利益率が上がる。省力化機械と金型の外販も伸びる。
厚い現金は、配当と自社株買いで株主に戻り続ける。事業に要る分を超えた現金は 150 億円ほどあり、これが戻れば ROE は大きく上がる。すでに自己株式が発行済株式の 3 分の 1 に達しており、消却や追加の買い入れが行われても不思議はない。
会社は 2023 年に利益率を一段上げた。その水準が一時の山でなく、新しい普通だったと分かる。物価の上昇を価格に上乗せする力も、10 年を通して衰えない。強気の見方では、今の値段はこの持続力を織り込んでいない。配当性向 50% を守るだけで、純資産の積み上がりより早く株主に戻る。現金が厚い会社が、利益率でも勝つ。そう読める。
慎重な見方
いまの利益率は値上げの山であり、普通の利益ではない。2023 年より前の 10 年間、営業利益率は 11% 前後にとどまった。原料の石油価格が戻れば、価格改定の効果は薄れる。今期はすでに利益が 1 割近く減る計画である。
数量は伸びない。新設の住宅着工は人口減で縮み、同社も住宅着工の減少で減益を経験した。データセンターや物流施設の工事は波があり、電設資材の使用量は住宅ほど大きくない。
固定費が重いのも弱点だ。1 日 7 時間 15 分、年間休日 140 日、定年 70 歳という働き方は誇れるが、売上が落ちる局面では人件費が下がらない。利益が一気に削られる。
厚い現金は帳簿の額のまま価値になる。だが、現金が厚いぶん ROE は 8% 台にとどまり、10 年先は資本コストに届かない。事業の稼ぐ力に見合う値段は、すでに今の時価総額に近い。堅いことと割安であることは別である。
自己株式が発行済株式の 3 分の 1 に達しても、資本効率は改善していない。還元の質を見るべきで、量だけで安心はできない。中期計画の利益率の目標も、すでに今期の計画で下回っている。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。成長の数量がなく、利益率が山から戻る途中という指摘は、今期の計画減益が裏づけている。強気の見方の中心は、非住宅の需要と省力化の強みだが、それは数量でなく価格と利益率の話で、すでに今の決算に出ている。
そこで中立の確率を 38% と厚めに置き、やや悲観に 23% を置いた。悲観は固定費の重さを理由に 11% とし、楽観は 8% にとどめた。現金の厚さは確率ではなく、余った現金を別に足すことで反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,106 円988 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,623 円263 億円)。 今の値に割り戻すと 4,438 円718 億円、今との差 +21.7%、 期待の年率 +7.8%(資本コスト 6.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 9,635 円1,558 億円 | 2,040 円330 億円 | +220.3% | +12.3% | 934 円151 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,261 円1,336 億円 | 1,842 円298 億円 | +177.2% | +10.7% | 2,021 円327 億円 |
| 中立 | 38% | 7,133 円1,154 億円 | 1,676 円271 億円 | +141.7% | +9.2% | 3,347 円541 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,198 円517 億円 | 1,453 円235 億円 | +27.6% | +2.5% | 1,070 円173 億円 |
| 悲観 | 11% | 2,158 円349 億円 | 1,094 円177 億円 | −10.8% | −1.1% | 358 円58 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,106 円988 億円 | 1,623 円263 億円 | +112.1% | +7.8% | 7,729 円1,250 億円 |
今の株価時価総額 3,645 円590 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 非住宅と省力化で値上げが定着する 利益 75 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 9,635 円1,558 億円
データセンター、物流施設、再開発の電気工事が長く続き、建設現場の人手不足は深まる。取り付けの手間を減らす同社の製品は、値上げをしても選ばれ続ける。電材・管材は数量が 1 割強増え、値段は物価を少し上回って上がる。
配線器具は意匠のよい高価格品が非住宅に広がり、利益率が上がる。原料高が来ても価格に転嫁でき、全社の営業利益率は 14% 台を保つ。中期計画が描く利益率に近い姿である。
厚い現金は配当と自社株買いで戻り続け、ROE は 9% 台に乗る。ただ、住宅の縮みを打ち返し、なお数量で伸びるのは条件が多い。好条件が重なる筋書きなので、確率は低くとどめる。省力化機械と金型の外販も、この筋書きでは 2 割ほど伸びる。
- 電材・管材:数量 38,901(国内の電設・給排水資材の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.40(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 545 億円・営業利益 90 億円。非住宅が伸び、値上げも定着
- 配線器具:数量 9,243(国内の配線器具の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.38(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 128 億円・営業利益 16 億円。高価格品が非住宅に広がる
- その他:数量 3,482(外販の対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 47 億円・営業利益 11 億円。外販が伸びる
倍率:事業の純利益 73 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 18.97 倍、時価総額 1,531 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:非住宅の工事の長期の好調と、価格改定の定着、現金の還元の三つが重なる姿。条件が多く、数量の成長もないため確率は 8% にとどめた。
やや楽観 20% 非住宅が住宅の縮みを吸収する 利益 63 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 8,261 円1,336 億円
住宅着工は縮み続けるが、非住宅の工事が下支えする。電材・管材の数量はわずかに増え、値段は物価をやや上回る。価格改定の水準は大きく崩れず、営業利益率は 13% 台を保つ。
配線器具は非住宅向けの高価格品が少しずつ伸びる。省力化機械と金型の外販も堅調だ。原料高は転嫁の遅れで一時的に利益を削るが、数年のうちに価格へ吸収される。
還元は配当性向 50% を守り、自社株の消却も進む。成長は物価並みに少し上乗せされる程度で、ROE は 8% 弱まで戻る。堅い会社が堅いまま、利益を着実に積む姿である。配線器具の神保電器は、非住宅向けの意匠品で採算を上げる。電材・管材の営業利益率は 15% 台を保ち、全社の利益は 85 億円ほどに増える。
- 電材・管材:数量 35,775(国内の電設・給排水資材の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.37(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 490 億円・営業利益 76 億円。非住宅が住宅の縮みを吸収
- 配線器具:数量 8,439(国内の配線器具の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.36(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 115 億円・営業利益 13 億円。高価格品がじわり伸びる
- その他:数量 3,192(外販の対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 43 億円・営業利益 10 億円。外販は堅調
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 18.48 倍、時価総額 1,281 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:非住宅が住宅の縮みを吸収し、利益率が 13% 台を保つ姿。会社の中期計画に近いが、今期はすでに計画を下回っており、確率は 20% に置いた。
中立 38% 利益率は 12% 台に落ち着く 利益 54 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 7,133 円1,154 億円
住宅の縮みと非住宅の下支えがほぼ釣り合い、国内の実質の数量は 10 年で 5% ほど減る。値段は物価並みに上がり、売上は 3 割弱増える。数量の成長はない。
価格改定の効果は、原料価格の戻りと競争で半分ほど薄れる。営業利益率は今の 14% 台から 12% 台に落ち着く。今期の計画が示す減益の水準に近い。これが筆者の見る「普通の利益」である。
厚い現金は大きく動かない。配当性向 50% 強の還元を続け、純資産は 780 億円ほどに積み上がる。ROE は 7% 弱で、資本コストに届かない。会社が堅く、利益が物価の分だけ伸びる、静かな 10 年になる。配線器具と外販は横ばいで、全社の利益は 70 億円強にとどまる。
- 電材・管材:数量 32,996(国内の電設・給排水資材の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 442 億円・営業利益 64 億円。住宅減と非住宅増が釣り合い、数量は 5% 減
- 配線器具:数量 7,876(国内の配線器具の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 106 億円・営業利益 11 億円。数量はほぼ横ばい
- その他:数量 2,902(外販の対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 39 億円・営業利益 9 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 17.94 倍、時価総額 1,074 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は縮み、値段は物価並み、利益率は計画減益の水準に落ち着く姿。慎重な見方がやや強いことを踏まえ、中立に厚めの 38% を置いた。
やや悲観 23% 住宅が縮み、値上げの効果が薄れる 利益 33 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 3,198 円517 億円
新設住宅の着工が加速して縮み、非住宅の工事も金利高で鈍る。電材・管材の数量は 1 割強減る。大手との競争が強まり、価格改定の水準は守りきれない。値段は物価に届かない。
1 日 7 時間 15 分、年間休日 140 日という働き方は変えにくく、人件費は物価で上がり続ける。固定費の重さが利益率を削り、営業利益率は 8% 台まで下がる。原料高の転嫁が遅れる年もある。
配当性向は上がるが、純利益は 30 億円台に細る。現金は一部が減益の穴埋めと投資で減る。堅さは残るものの、ROE は 5% に届かず、市場は稼ぐ力に見合う値段しか付けない。配線器具は競争で採算が悪化し、省力化機械の外販も鈍る。10 年後の営業利益は 45 億円に届かない。
- 電材・管材:数量 30,565(国内の電設・給排水資材の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 382 億円・営業利益 42 億円。数量が 1 割強減り、値上げが戻る
- 配線器具:数量 7,394(国内の配線器具の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 92 億円・営業利益 8 億円。競争で価格が伸びない
- その他:数量 2,612(外販の対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.20(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 31 億円・営業利益 5 億円。外販が鈍る
倍率:ROE 4.7% は k 6.5% に届かず、ためた利益は額面未満の価値になる。PER の上限は 1÷k=13.3 倍。価格改定が失われた利益で、構造的な縮みの中にあるため、稼ぐ力の 7.9 割の 10.5 倍に置いた。余った現金は谷で食う前提で 0.75 倍の約 112 億円を足した。
確率:住宅の縮みと競争で、価格改定の効果が失われる姿。固定費の重さが利益を削るため、楽観側より厚めの 23% を置いた。
悲観 11% 価格が戻り、固定費が重くのしかかる 利益 12 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 2,158 円349 億円
新設住宅が構造的に落ち込み、非住宅も建設の抑制で伸びない。大手が同種の省力化製品を投入し、同社の工夫品の差が縮む。値上げで得た価格は戻り、10 年の値段は物価の 8 割ほどにとどまる。
売上が 2 割落ちても、休みの多い働き方と高い給与は変えられず、営業利益率は 4% 弱まで下がる。工場の稼働が落ち、減損も出る。もう優良な会社ではなくなっている。
それでも現金と土地建物があり、倒れることはない。配当は純資産配当率 3% の下限で支えるが、純利益は 10 億円ほどに細る。価値は稼ぐ力でなく、現金と売れる資産で測られる。再編や事業の売却が課題に上がる。経営の選択肢は、買収を受け入れるか、事業を絞って現金を戻すかに狭まる。
- 電材・管材:数量 25,008(国内の電設・給排水資材の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.10(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 275 億円・営業利益 18 億円。数量・価格ともに構造的に落ちる
- 配線器具:数量 6,269(国内の配線器具の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.10(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 69 億円・営業利益 3 億円。高価格品の差が消える
- その他:数量 2,176(外販の対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%))× 価格 1.05(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。外販が縮む
倍率:10 年の構造的に負ける筋書き。純利益は 12.2 億円まで細り、ROE は 2% に届かない。稼ぐ力でなく、現金と売れる資産の税後(約 350 億円)で測り、今の自己資本 554 億円に 0.63 倍を掛けた。減損で自己資本は 600 億円まで下がる。
確率:構造的な負け:大手が省力化製品で追いつき、値上げの価格が戻り、固定費の重さで利益が細る。現金で倒れはしないが優良さを失う姿。確率は 11%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電材・管材
可とう管、ボックス、地中埋設管、給水給湯のサヤ管など、電気・給排水設備の資材。売上の約 76%。
| 数量国内の電設・給排水資材の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%) | 価格値段の指数(今を 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 34,733 | 1.00 | 347 | 60 |
| 10 年後 中立 | 32,996 | 1.34 | 442 | 64 |
取り方:2026 年 3 月期の売上 347.3 億円を、対象市場(電線管・ボックス・支持材・樹脂管など)の実質規模を約 3,500 億円と置き、シェア約 9.9% で割り戻した。統計もシェアの公表値もなく、市場規模は推定。シェアは数量の側に置き、価格は値段の指数とした。
配線器具
スイッチ・コンセント。子会社の神保電器が製造販売し、意匠のよい高価格品を非住宅に広げる。売上の約 18%。
| 数量国内の配線器具の実質市場(億円、今の値段)× シェア(%) | 価格値段の指数(今を 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,037 | 1.00 | 80 | 9 |
| 10 年後 中立 | 7,876 | 1.34 | 106 | 11 |
取り方:2026 年 3 月期の売上 80.4 億円を、国内の配線器具の実質規模を約 2,500 億円と置き、シェア約 3.2% で割り戻した。大手が押さえる市場で、規模は推定。
その他
省力化機械と樹脂成形用金型の外販など。売上の約 6%。
| 数量外販の対象市場の実質規模(億円、今の値段)× シェア(%) | 価格値段の指数(今を 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,902 | 1.00 | 29 | 7 |
| 10 年後 中立 | 2,902 | 1.34 | 39 | 9 |
取り方:2026 年 3 月期の売上 29.0 億円を、省力化機械・金型の対象市場を約 1,500 億円と置き、シェア約 1.9% で割り戻した。開示が乏しく推定。
リスクと懸念
価格改定の効果が戻る
営業利益率は 2023 年に一段上がり、15% 前後を保ってきた。原料価格の戻りや競争で改定後の水準を守りきれなければ、利益率は 12% 前後へ落ちる。今期の計画減益は、その入り口とも読める。価格改定は一度通れば戻りにくいが、原価が下がれば値下げ要求は強まる。
国内の住宅着工の縮小
戸建て向けは人口減とともに縮み続ける。同社の 2025 年 4〜9 月期の減益にも、住宅着工の減少が響いた。非住宅の工事がどこまで補えるかが、数量の分かれ目になる。会社の製品は住宅でも非住宅でも使われ、住宅向けの比重は小さくない。
原料の樹脂と石油の値段
可とう管、ボックス、サヤ管は樹脂製品だ。2026 年は中東情勢でナフサの調達不安が出て、同社も 4 月に今期の予想を出せなかった。転嫁が遅れる年は、利益が一時的に削られる。原料の供給そのものが細る事態も、数量の面で無視できない。
固定費の重さ
1 日 7 時間 15 分、年間休日 140 日、定年 70 歳という働き方は誇りだが、人件費は売上が落ちても下がらない。需要が下振れすると、利益が一気に削られる体質である。売上が 1 割落ちると、利益は 3 割以上落ちうる。
大手との競争
可とう管では古河電工のような大手が同じ売り場に並び、配線器具はパナソニックなど大手の市場に小さく挑む立場だ。大手が省力化製品を投入すると、工夫品の差は縮む。値段で選ばれにくい製品である分、差が縮めば利益率に直結する。
厚い現金の使い方
実質の現金は時価総額の 3 分の 1 に当たる。配当と自社株買いで戻る限りは価値だが、使い途の定まらない買収や投資に回れば、価値を壊す。社長は、自由に使える資金は数字ほど多くないとも話した。現金の額面だけを見て、余りと決めつけない点には注意が要る。
今後の分かれ目
- 非住宅の電気工事が想定以上に続く
- 電材・管材の数量が増え、価格改定の水準も保たれる。営業利益率は 14% 台に戻り、強気の筋書きに近づく。
- ナフサなど原料価格が落ち着く
- 転嫁した値段が残る間は利益率が上がる。ただし、競争で値下げ圧力が出れば、効果は半分ほどで薄れる。
- 新設住宅の着工がさらに減る
- 戸建て向けの数量が落ち、固定費の重さで利益が早く削られる。やや悲観の筋書きに近づく。
- 大手が省力化製品を投入する
- 同社の工夫品の差が縮み、値上げの価格が戻る。利益率は 10% を割る方向になる。
- 自社株の消却や追加の買い入れが進む
- 発行済株式に対する自己株式の割合が下がり、現金が戻る。ROE の改善につながる。
- 買収提案が出る
- 厚い現金と小さな時価総額が魅力になりうる。ただ、大株主が分散しており、提案の有無で価値の評価は変えない。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期)と、電材・管材の利益の動き
- 国内の新設住宅着工と、非住宅の着工床面積
- ナフサ・樹脂の値段と、価格改定の動き
- 中期経営計画 2027 の利益率の目標と還元方針
- 自己株式の消却・追加の買い入れの発表
倍率と資本コストの決め方
倍率は、セグメントごとの数量と価格から利益を積み、資本コスト 6.5% と ROE から式で置いた。今の PER や PBR を見て置いていない。価格改定で上がった利益率を普通の水準とせず、中立では 12% 台まで戻して見た。現金は事業の利益と分け、余った 150 億円を別に足した。結果として今の値段に近い適正圏に出たが、数量の成長がなく利益は物価並みという筋書きの帰結であり、寄せにいってはいない。新リース会計基準で営業利益や負債の形が変わるが、同社は工場中心でリースは小さく、数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→18.97 倍・やや楽観 PER 13→18.48 倍・中立 PER 12→17.94 倍)。
資本コスト 6.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0。個別の理由(住宅の縮み、原料の振れ)は k に足さず、数量・利益率と確率で表した。事業が傾く様子はなく extra は 0。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 6.50%。