結論
アキレスは、ウレタンや塩化ビニルの加工を軸にした、素材と靴の会社だ。車や飛行機の内装材、医療用のフイルム、半導体ウエハーの搬送部材、断熱材、そして「瞬足」で知られる靴を手がける。売上は818億円、営業利益は30億円である。
筆者の結論はやや割高。立ち直りは本物だが、利益の底がまだ浅い。営業利益は2023年3月期から3期続けて赤字だったが、前期に30億円へ戻った。ただし営業利益率は3.6%で、過去12年の最高を更新したに過ぎない。自己資本利益率(ROE)は5%、資本コストの8%台には届かない。
戻った理由は、医療向けフイルムと半導体向け部材の伸びだ。粗利益率の改善だけで27億円の増益になった。採算の悪い品目から撤退し、工場の集約も進めた。会社は今期の営業利益を22億円と慎重に見ており、「成長の踊り場」と説明する。
重荷は靴と、今期から始まる大型投資だ。靴は売上が12%減り、赤字が続く。設備投資は今期58億円と前期の2.3倍で、営業キャッシュフローをかなり上回る。財務は健全だが、借金は増える。
10年後の中立の筋書きは、営業利益が52億円、ROEが6%。会社の目標(2030年度に営業利益50億円規模)にほぼ沿う形だ。鍵は、医療向けと半導体向けが本当に主力に育つかどうかにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「立ち直りの途中にある、普通の会社」だ。10年後も、半導体の搬送部材と断熱材は必要とされる。ただ、堀が広がっていくと言い切れる段階ではない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、今はマイナスに近い。営業キャッシュフローは26億円で、設備投資は29億円だった。今期はさらに設備投資が膨らむ。借金で成長投資を賄う局面で、配当を増やす余地は小さい。
資本の配分は、評価が分かれる。医療・半導体という利益率の高い領域に資源を寄せ、赤字の靴と防災の整理に動いている点は、正しい。一方、営業利益率3.6%の会社が、PBR0.6倍に甘んじてきたのは、資本を効率よく使えてこなかった結果でもある。
安全域は、財務の健全さにある。自己資本比率は52%、純有利子負債は自己資本の2割だ。悪い方に倒れても、会社が行き詰まる心配は小さい。ただ、「安い」と呼べるほど利益の質が高いわけでもない。
自分がオーナーなら、靴の継続判断を前倒しし、医療向けフイルムの能力増強を成果で確かめる。この2点が見えるまで、大きな賭けは控える。
何で稼ぐ会社か
事業は3つの区分で、売上は第一事業部が499億円(61%)、第二事業部が230億円(28%)、シューズが89億円(11%)だ(2026年3月期)。
第一事業部は、車輌資材、フイルム、ウレタン、工業資材の4つを束ねる。車輌資材は自動車や航空機の内装用の合成皮革などだ。フイルムは、バイオ医薬の製造に使う使い捨て袋などの医療向けと、電子部品向けがある。工業資材は、半導体ウエハーを運ぶケースとクッション材、スペーサーを一式で作る。ここが会社の稼ぎ頭で、営業利益は33億円だ。
第二事業部は、断熱資材、建装資材、防災対策商品からなる。断熱資材は、非住宅の防水シート下地のボードと、工事を伴うシステム製品が中心。防災事業は、テントやマット、米国向けのボートなどを作るが、前期に9億円の減損を出した。営業利益は24億円である。
シューズは、小学生向けの「瞬足」、ランニングの「ブルックス」、コンフォートシューズの「ソルボ」を売る。少子化と百貨店の不振で売上が細り、営業損失は3億円だった。会社は2027年度までに黒字化を見極め、続けるかを決める。
売上の74%は国内で、米国が13%、その他が13%だ。米国はフイルムの生産ラインがあり、前期に売上が3割近く伸びた。
優良さと弱いところ
優良とは言いがたい。堀(他社がまねできない強み)は、半導体の搬送部材と医療用フイルムにあるが、会社全体で見ると薄い。
強みは、顧客の工程に入り込んだ製品だ。ウエハーの搬送は、ケース、クッション、スペーサーの三つを一社で出せ、使い終わったケースを台湾の子会社で洗浄して再利用する仕組みもある。医療用のフイルムは、品質の認証を通った製品で、顧客が簡単には替えられない。粗利益率はここで上がった。
弱みは、数字に出ている。営業利益率は過去12年、-1.2%から3.6%の間で、3%を超えたのは前期が初めてだ。ROEが7%を超えたのは2021年3月期の一度きりで、赤字の期も3回ある。2024年3月期には80億円を超える純損失を出した。
車輌資材は、中国での日系自動車メーカーの減産で伸び悩む。ウレタンのうち寝具用は低調だ。建装資材は新築住宅の低迷で苦しい。会社の経営は、原材料と為替の波に利益が揺れる構造から抜け出せていない。
財務は軽くない代わりに、重くもない。自己資本比率は52%、営業利益は支払利息の13倍ある。倒産を心配する会社ではないが、成長投資の拡大で借金は増える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
アキレスの市場は、成長が違う4つに分かれる。
医療向けフイルムは、バイオ医薬の製造で使い捨て部材を使う流れに乗る。海外のバイオ医薬企業からの受注が好調で、会社は米国の生産ラインを増やしている。市場の伸びは大きいが、参入する企業も多く、同じ技術の競合はこれから増える。
半導体向けの部材は、ウエハーの出荷量に連動する。2026年4〜6月の世界のシリコンウエハー出荷面積は前年同期比で7.4%増えた。生成AI向けの需要が追い風だが、半導体は好不況の波が大きく、10年のうちには必ず一度は谷が来る。
断熱資材は、省エネ基準の義務化と政府の支援が後押しする。非住宅の防水シート用途が堅調だ。一方、建装資材は新築住宅の着工が減るなかで、価格改定に頼る。国内の住宅需要は人口減で構造的に縮む。
車輌資材とウレタンは、自動車と寝具の需要に連動する成熟分野だ。中国での日系車の減産が数量を押し下げる。靴は、少子化で子ども向けが細り、百貨店の不振も重なる。国内のスポーツ・カジュアルシューズは大手ブランドが強く、小さな会社が価格で戦える余地は狭い。
全体として、数量は国内の成熟分野で微減、医療・半導体で伸びる。値上げは原材料高の転嫁が中心で、会社が自在に価格を決められる領域は限られる。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから成長への切り替え期にある。2025年度の配当は前期の倍にしたが、配当性向は26%、配当金は5億円台にとどまる。今期は減配の予想で、中期計画の「配当性向30%以上」をにらんだ形だ。
投資が優先される。2027年3月期の設備投資は58億円で、前期の2.3倍。約19億円は米国子会社のフイルム生産設備に使う。前期の営業キャッシュフローは26億円、設備投資は29億円で、すでに借入で補っている。短期借入金は25億円増えた。
投資有価証券は78億円ある。前期に17億円増えた。内訳は確認できていないが、取引先の株が中心と見られる。配当は利益に入っているため、価値には足していない。退職給付に係る資産も88億円あるが、これは現金化できない積立の余剰で、価値には入れない。
大株主は、日本マスタートラスト信託銀行の信託口が約10%、東京・大阪・足利の各アキレス協和会(取引先の持株会)が合計13%台、みずほ銀行が3.6%。自己株式も6%ほどある。親会社はなく、安定株主が厚い。データ上、10年以内にTOB(株式公開買付け)を受ける確率は26%とされる。
株主優待は、自社製品の割引販売(100株以上で3割引、500株以上で5割引)で、現金のやり取りは小さい。還元としては重く見ていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
医療向けフイルムと半導体部材が、会社の主力に化ける。バイオ医薬の製造は、使い捨て部材への切り替えが世界で進んでいる。アキレスは米国に生産ラインを持ち、今期は約19億円を投じて増やす。売上が10年で5割増えるなら、第一事業部の営業利益率は8%に達する。
半導体は、生成AI向けの需要で装置と材料の投資が続く。ウエハーの搬送資材を一式で出せる強みで、顧客の囲い込みが進めば、利益率は上がる。再利用の仕組みは、環境規制が強まるほど価値を持つ。
靴は整理が進んで赤字が止まる。防災事業も立て直しが済み、第二事業部は断熱資材の省エネ需要を取り込む。会社が2030年度に掲げる営業利益50億円規模は通過点になり、10年後には85億円に届く。
配当は、利益の3割台を保ちながら増える。投資が終われば営業キャッシュフローが厚くなり、ROEは9%近くまで上がる。市場はこの会社を、素材メーカーから成長する機能材メーカーへと評価し直す。
慎重な見方
今回の回復は、一度きりの要因を多く含む。前期の経常利益39億円には、為替差益6.9億円が入っている。営業利益の増加も、構成比が良い品目に偏った結果で、来期は会社自身が26%の減益を見込む。落ちる理由が、原材料と為替と中東情勢なら、戻る理由もまた外にある。
設備投資が重い。今期は58億円と前期の2.3倍で、営業キャッシュフローを大きく上回る。借金で成長を買っても、医療向けフイルムの競合が増え、価格が下がれば、減価償却だけが残る。防災事業で9億円の減損を出したのは、投資の見立てが外れた例だ。
靴は、少子化と百貨店不振で構造的に縮む。継続判断が先送りされるほど、赤字と在庫が積み上がる。車輌資材は、日系自動車メーカーの中国での不振が続く。建装資材は、新築住宅の減少から逃れられない。
過去12年を見ると、営業利益率が3%を超えた期は前期だけだ。ここから先を、その延長で描くのは危うい。半導体の谷が来れば、せっかく上げた利益率は簡単に戻る。
どちらに重みを置いたか
医療向けと半導体向けの伸びは本物で、強気の見方に分がある部分もある。だが、営業利益率が過去最高でも3.6%にとどまり、来期は減益の予想、設備投資は借金頼みという現実が、慎重な見方を支える。中立の筋書きは、第一事業部が数量で2割増え、営業利益率が4%台に乗る形とした。確率は中立を最も厚くし、楽観とやや楽観を合わせて3割、悲観とやや悲観を合わせて3割強に置いた。悲観は、投資の回収が遅れ、靴と車輌資材の不振が続いて、純資産の回収見込みが床になる形である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,070 円420 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 627 円86 億円)。 今の値に割り戻すと 1,811 円248 億円、今との差 +0.1%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,644 円771 億円 | 1,061 円145 億円 | +270.5% | +14.0% | 536 円73 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,390 円600 億円 | 856 円117 億円 | +189.8% | +11.2% | 1,154 円158 億円 |
| 中立 | 38% | 3,523 円481 億円 | 659 円90 億円 | +131.0% | +8.7% | 1,589 円217 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,097 円150 億円 | 402 円55 億円 | −17.2% | −1.9% | 330 円45 億円 |
| 悲観 | 10% | 732 円100 億円 | 146 円20 億円 | −51.5% | −7.0% | 88 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,070 円420 億円 | 627 円86 億円 | +104.3% | +7.4% | 3,697 円505 億円 |
今の株価時価総額 1,810 円247 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 医療と半導体が主力に育ち、靴の赤字が止まる 利益 62 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,644 円771 億円
第一事業部は、医療向けフイルムと半導体向け部材で数量が45%増え、営業利益率は8%に達する。第二事業部は断熱資材の省エネ需要を取り込み、利益率が10.5%になる。シューズは整理が進み、規模は6割に縮むが、黒字を確保する。
営業利益率は全体で6.2%。会社が掲げる2030年度の5.0%を上回る。配当性向を35%に保ち、10年の還元は145億円。ROEは9%近くで、資本コストを初めて超える。ここまで来れば、市場はこの会社の見方を変える。営業利益は85億円、純利益は62億円と、今の3倍弱になる。ROEは9%近くで、資本コストを超える。ここまで揃う確率は高くない。
- 第一事業部:数量 603(出荷量(千トン換算・年、推定))× 価格 1.63(1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり120万円相当))→ 売上 984 億円・営業利益 79 億円。数量換算60.3千トン、単価は今の1.36倍、営業利益率8%
- 第二事業部:数量 260(出荷量(千トン換算・年、推定))× 価格 1.22(1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり90万円相当))→ 売上 319 億円・営業利益 33 億円。数量換算26.0千トン、単価は今の1.36倍、営業利益率10.5%
- シューズ:数量 119(販売足数(万足・年、推定))× 価格 0.60(1万足あたり平均売上(億円・名目。1足あたり0.45万円相当))→ 売上 72 億円・営業利益 2 億円。数量換算119.0万足、単価は今の1.34倍、営業利益率3%
倍率:事業の純利益 62 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.48 倍、時価総額 771 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:医療向けフイルムの競争、半導体の循環、靴の整理が、すべて良い方に出る必要がある。前期にようやく3.6%まで戻った利益率が、10年で6%台に乗る筋書きは、高い要求を課している。
やや楽観 22% 医療向けが伸び、全社で採算が定着する 利益 50 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,390 円600 億円
第一事業部は数量が33%増え、営業利益率は7.4%になる。第二事業部は横ばいの数量で、利益率10%を保つ。シューズは規模を3分の2に縮め、損益はほぼゼロになる。
営業利益率は5.3%で、前期の3.6%から1.7ポイント上がる。配当性向は33%、10年の還元は117億円。ROEは7%台で、資本コストにはわずかに届かない。借金は設備投資で一時増えるが、10年の後半で減る。営業利益は68億円、純利益は50億円。会社が2030年度に掲げる営業利益50億円規模を超える形だ。ただしROEは7%台で、資本コストにはなお届かない。
- 第一事業部:数量 553(出荷量(千トン換算・年、推定))× 価格 1.62(1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり120万円相当))→ 売上 896 億円・営業利益 66 億円。数量換算55.3千トン、単価は今の1.35倍、営業利益率7.4%
- 第二事業部:数量 255(出荷量(千トン換算・年、推定))× 価格 1.22(1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり90万円相当))→ 売上 310 億円・営業利益 31 億円。数量換算25.5千トン、単価は今の1.35倍、営業利益率10%
- シューズ:数量 129(販売足数(万足・年、推定))× 価格 0.59(1万足あたり平均売上(億円・名目。1足あたり0.45万円相当))→ 売上 77 億円・営業利益 0 億円。数量換算129.0万足、単価は今の1.32倍、営業利益率0.5%
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 600 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の2030年度の目標(営業利益50億円規模)を上回る筋書き。前期の改善が定着し、医療向けの伸びが続けば届く水準だが、過去の実績は一度も到達していない。
中立 38% 医療・半導体で伸びるが、靴と住宅は縮む 利益 39 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,523 円481 億円
第一事業部は医療向けと半導体向けで数量が20%増える。車輌資材の不振は残るが、構成比が良くなり、利益率は6.8%と前期並みを保つ。第二事業部は断熱資材が伸びる一方、建装資材が住宅の縮小で細り、数量が3%減、利益率9.5%。シューズは3割縮み、損益はゼロにとどまる。
営業利益率は4.4%で、直近の3.6%から0.8ポイント上がる。配当性向は30%で、10年の還元は90億円。ROEは6%で、資本コストを超えない。営業利益は52億円、純利益は39億円。今の1.7倍だが、物価の上昇分で3割強を占める。ROEは6%で資本コストに届かず、市場の見方は今とあまり変わらない。
- 第一事業部:数量 499(出荷量(千トン換算・年、推定))× 価格 1.61(1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり120万円相当))→ 売上 803 億円・営業利益 55 億円。数量換算49.9千トン、単価は今の1.34倍、営業利益率6.8%
- 第二事業部:数量 247(出荷量(千トン換算・年、推定))× 価格 1.21(1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり90万円相当))→ 売上 298 億円・営業利益 28 億円。数量換算24.7千トン、単価は今の1.34倍、営業利益率9.5%
- シューズ:数量 139(販売足数(万足・年、推定))× 価格 0.59(1万足あたり平均売上(億円・名目。1足あたり0.45万円相当))→ 売上 81 億円・営業利益 0 億円。数量換算138.9万足、単価は今の1.30倍、営業利益率0%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 468 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:第一事業部が数量で2割伸び、第二事業部と靴が縮む筋書き。営業利益率は前期より1ポイント高いが、会社が掲げる2030年度の水準より低い。最も確率の高い筋書きとして置く。
やや悲観 22% 回復が一巡し、元の薄利に戻る 利益 16 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 1,097 円150 億円
第一事業部は数量が横ばいで、医療向けの伸びを中国の車輌資材の減産が相殺する。利益率は5%。第二事業部は住宅の縮小で数量が8%減り、利益率8%。シューズは売上が半分近くに縮むが、赤字が残る。
営業利益率は2.0%で、2020年代前半の水準に戻る。純利益は16億円。配当性向は30%で、10年の還元は55億円。ROEは3%を割り、成長の物語は描けない。会社は存続し、財務も保たれる。営業利益は20億円、純利益は16億円。物価の分を除けば、赤字から脱した直後の水準に戻る。ROEは3%を割り、資本の働きは乏しいままだ。
- 第一事業部:数量 416(出荷量(千トン換算・年、推定))× 価格 1.54(1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり120万円相当))→ 売上 639 億円・営業利益 32 億円。数量換算41.6千トン、単価は今の1.28倍、営業利益率5%
- 第二事業部:数量 235(出荷量(千トン換算・年、推定))× 価格 1.15(1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり90万円相当))→ 売上 270 億円・営業利益 22 億円。数量換算23.5千トン、単価は今の1.28倍、営業利益率8%
- シューズ:数量 109(販売足数(万足・年、推定))× 価格 0.56(1万足あたり平均売上(億円・名目。1足あたり0.45万円相当))→ 売上 61 億円・営業利益 −2 億円。数量換算109.1万足、単価は今の1.25倍、営業利益率-3%
倍率:事業のROEは3%を割り、資本コスト8.25%を大きく下回る。PERの上限は1÷k=11.8倍。稼ぐ力が弱いので、上限の約65%の7.6倍に置いた。純資産を回収する見込みの床(悲観と同じ見方で約100億円)より上にある。
確率:前期の改善が一過性で、原材料と為替の波に利益が揺れ、靴の赤字が残る筋書き。過去12年の平均的な利益率に近い。会社自身が今期を減益と見ており、十分ありうる。
悲観 10% 投資が空振りし、靴・車輌・住宅の不振が続く 利益 −6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 732 円100 億円
第一事業部は中国での自動車減産と、医療向けの価格競争で数量が1割減り、利益率3%にとどまる。第二事業部は住宅の縮小で数量が15%減る。シューズは撤退を決め、規模は4割まで縮むが、整理費用で赤字が膨らむ。
営業損益は赤字で、全社費の物価上昇分が重い。配当は下げ、10年の還元は20億円。投資の回収が遅れ、米国のフイルム設備や防災事業で減損が出る。借金は膨らみ、自己資本比率は下がる。会社は存続するが、財務の余裕は薄れ、事業の再編を迫られる。株主の取り分は、稼ぐ力ではなく、売れる資産の価値で決まる局面に入る。営業利益は7億円強の赤字、純損益も赤字になる。事業の稼ぐ力ではなく、手元の資産を売った場合の価値が下値を決める。
- 第一事業部:数量 374(出荷量(千トン換算・年、推定))× 価格 1.44(1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり120万円相当))→ 売上 539 億円・営業利益 16 億円。数量換算37.4千トン、単価は今の1.20倍、営業利益率3%
- 第二事業部:数量 217(出荷量(千トン換算・年、推定))× 価格 1.08(1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり90万円相当))→ 売上 234 億円・営業利益 12 億円。数量換算21.7千トン、単価は今の1.20倍、営業利益率5%
- シューズ:数量 79.4(販売足数(万足・年、推定))× 価格 0.54(1万足あたり平均売上(億円・名目。1足あたり0.45万円相当))→ 売上 43 億円・営業利益 −3 億円。数量換算79.4万足、単価は今の1.20倍、営業利益率-8%
倍率:稼ぐ力が消え、資産を回収した場合の価値が床になる。内訳は floor_assets_why に書いた。
確率:医療向けの競争激化、半導体の谷、靴と車輌資材の構造的な不振が重なる筋書き。今期から始まる大型投資が回収できず、赤字に戻る。日本の素材メーカーで、投資が先行した会社が受ける最も厳しい形。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
第一事業部
車輌資材(自動車・航空機の内装用合成皮革)、フイルム(医療・電子向け)、ウレタン、工業資材(半導体ウエハー搬送部材ほか)。売上の61%。
| 数量出荷量(千トン換算・年、推定) | 価格1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり120万円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 416 | 1.20 | 499 | 33 |
| 10 年後 中立 | 499 | 1.61 | 803 | 55 |
取り方:売上499.1億円、営業利益32.9億円(利益率6.6%)は決算短信。開示は金額だけなので、フイルム・合成皮革・ウレタン・工業資材の混合として平均単価を1トンあたり120万円と仮置きし、約41.6万トン換算とした。数量は実質、物価の分は単価に入れる。
第二事業部
断熱資材(非住宅の防水下地ボードなど)、建装資材、防災対策商品(テント・マット・ボートなど)。売上の28%。
| 数量出荷量(千トン換算・年、推定) | 価格1千トンあたり平均売上(億円・名目。1トンあたり90万円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 255 | 0.90 | 230 | 24 |
| 10 年後 中立 | 247 | 1.21 | 298 | 28 |
取り方:売上229.6億円、営業利益23.9億円(利益率10.4%)は決算短信。断熱ボードや建装シート、防災品の混合として平均単価を1トンあたり90万円と仮置きし、約25.5万トン換算とした。数量は実質。
シューズ
「瞬足」「ブルックス」「アキレス・ソルボ」。売上の11%。
| 数量販売足数(万足・年、推定) | 価格1万足あたり平均売上(億円・名目。1足あたり0.45万円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 198 | 0.45 | 89 | −3 |
| 10 年後 中立 | 139 | 0.59 | 81 | 0 |
取り方:売上89.3億円、営業損失3.2億円(前期は9.7億円の損失)は決算短信。卸売り中心で平均の売上単価を1足あたり0.45万円と仮置きし、約198万足とした。数量は実質。2027年度までに黒字化を見極め、継続を判断する方針。全社費(-23.8億円)は adjust_oku に入れた。
リスクと懸念
回復の持続性
前期の営業利益30億円は、構成比の改善と原価低減に支えられた。会社は今期を22億円と見ており、再び赤字に戻った過去(3期連続)がある。利益率の定着は未確認である。
設備投資と借金
今期の設備投資は58億円で、前期の営業キャッシュフロー26億円の2倍以上。短期借入金はすでに25億円増えた。投資の回収が遅れれば、財務の余裕が削られる。
医療向けフイルムの競争
バイオ医薬向けの使い捨て部材は、成長が見込まれる分、競合が増える。海外大手の価格攻勢や、顧客の内製化があれば、粗利益率の改善が止まる。
半導体の循環
ウエハー搬送部材は、半導体の投資と出荷に連動する。好調が続くのは前提にならず、谷が来れば数量が1〜2割動く。
靴事業と防災事業の整理
靴は売上が12%減り、赤字が続く。防災事業は前期に9億円の減損を計上した。撤退や整理の費用が追加で出る可能性がある。
原材料・為替・中東情勢
ウレタンや塩ビの原料、エネルギーの価格が利益を揺らす。前期の経常利益には為替差益6.9億円が入っており、円高に振れれば逆に効く。会社は中東情勢を予想に織り込んでいない。
今後の分かれ目
- 医療向けフイルムの米国新設備が計画どおり稼働し、第一事業部の営業利益率が8%に近づいたら
- 第一事業部の利益率の前提を引き上げ、やや楽観・楽観の確率を上げる。
- シューズの撤退・縮小が決まり、赤字が止まったら
- 全社の営業利益のうち赤字3億円が消える前提を強め、中立の営業利益を引き上げる。
- 営業利益が来期の予想22億円を割り込み、2期続けて減益になったら
- 前期の回復は一過性だったと見て、悲観側の確率を上げる。
- 半導体向け部材の売上が前年を下回り始めたら
- 循環の谷に入ったと見て、数量の前提を下げ、一時的か構造的かを確かめる。
- 純有利子負債が150億円を超え、配当の引き上げが止まったら
- 投資が借金頼みになったと見て、k の借金の項を引き上げる。
- 配当性向が30%を超えて引き上げられ、自社株買いが始まったら
- 資本効率を意識した転換と見て、還元の前提を上げる。
見ておくもの
- 第一事業部の営業利益率と、医療向けフイルムの米国設備の稼働状況
- シューズ事業の黒字化の見極め(2027年度)と継続判断
- 純有利子負債の推移と、営業キャッシュフローに対する設備投資の水準
- 半導体向け部材の売上と、ウエハー出荷量の動き
倍率と資本コストの決め方
今の株価やPBR0.6倍には寄せていない。売上は数量(実質)×単価(名目、物価の10年1.34倍が基本)で積んだ。第一・第二事業部は開示が金額だけなので、平均単価を1トンあたり120万円と90万円に仮置きして数量を逆算した推定で、変化率に意味がある。中立の数量は、第一事業部が医療向けと半導体向けで2割増、第二事業部が住宅の縮小で3%減、シューズが3割減とした。営業利益率は全社で4.4%と過去12年の最高(3.6%)を超える。超える理由は、前期に粗利益率の改善だけで27億円の増益が開示されたことと、会社が2030年度に営業利益50億円規模(利益率5.0%)を掲げること。第一事業部の利益率は前期並みの6.8%で、目標より低く置いた。全社費は前期の23.8億円を10年で1.34倍にし、削減は3%にとどめた。純利益は営業利益に営業外の純益3億円を足し、税等で3割を引いた。倍率は資本コスト8.25%で、事業のROEが6%とそれ以下なので、PERの上限1÷k=11.8倍の約78%に置いた。余った現金はなく、投資有価証券と退職給付資産は価値に足していない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。