結論
四国化成ホールディングスは、香川県の化学メーカーだ。プール用の塩素殺菌剤とタイヤ用の不溶性硫黄で知られる老舗が、いま AI サーバーの基板に使う薬剤で急に伸びている。筆者の結論は「割高」。事業は良いが、値段が先の成長まで払いすぎている。
稼ぎ頭は、銅と樹脂の密着を高める GliCAP など、半導体向けのファインケミカルだ。2026 年 12 月期の営業利益は、前期の 109 億円から 180 億円へ増える予想になっている。化学品の営業利益率は 2 割に迫り、大手の総合化学を大きく上回る。
足を引っ張るのは建材だ。売上の 4 分の 1 を占めるのに、利益はほぼゼロで、投じた資本の稼ぎも資本コストに届かない。
AI 向けの需要は、10 年のあいだ伸びると筆者は見る。ただ、会社自身が 2029 年の営業利益を今期並みの 180 億円と置いている。坂出の新工場の償却が重くなるからだ。10 年後の中立の営業利益は 246 億円で、物価の上昇に実質の伸びが少し乗った姿である。
今の時価総額は 2,202 億円で、今期予想の利益の約 17 倍になる。10 年後の姿から逆算した本質価値は、これを 3 割ほど下回る。事業の質を疑っているのではない。AI の追い風は、すでに値段に入っているという見立てだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「いい会社だが、いまは払う値段が高い」に近い。事業の質は高い。化学品は投じた資本に 30% 稼ぎ、顧客は薬剤を簡単に替えない。経営は還元に前向きで、借金も軽い。
ただ、10 年持つ目で見ると、利益の多くが AI 向けという一つの用途に寄っている。顧客が不良を恐れる限り値段は保たれるが、仕様や方式が変われば、立場は一気に弱くなる。建材には、稼げないまま資本が積み上がっている。
筆者が重く見るのは、株主のものになる利益だ。設備に年 150 億円を投じる時期は、営業の稼ぎからその分を引くと、余りは多くない。坂出の償却が重くなる 2028 年以降は、会社自身が利益の横ばいを見込んでいる。
中立の姿では、10 年後の営業利益が今の 2.3 倍になる。配当を足しても年率は 3% 台で、資本コストの 7.75% に届かない。いい事業を持ちたいと思っても、値段に安全域がない。AI の需要が思うより長く伸びるなら話は別だが、それを前提にするのは賭けに近い。
何で稼ぐ会社か
事業は化学品と建材の二本柱だ。売上の 7 割強が化学品で、残りが建材である。化学品は三つに分かれる。
無機化成品(売上 145 億円)の中心は不溶性硫黄で、タイヤのゴムを固める加硫剤だ。世界でも大手の一角を占める。2026 年 2 月には、インドネシアの化学メーカー Timuraya Tunggal を子会社にした。硫黄から硫酸などを作る会社で、上期だけで 25 億円の増収になった。
有機化成品(185 億円)は、プール用殺菌剤「ネオクロール」など、塩素化イソシアヌル酸の製品だ。1964 年に国内で初めて量産した祖業で、北米向けも多い。夏の天候で振れる。
ファインケミカル(185 億円)が、いまの主役だ。銅と樹脂をくっつける GliCAP、銅の錆を防ぐ「タフエース」、樹脂の硬化剤、半導体プロセス材料が入る。2025 年は前期の 1.4 倍に伸び、2026 年上期の GliCAP は前年の 4 倍近くになった。販売の約 85% はサーバー基板向けだ。
建材(180 億円)は、アルミの門扉やフェンス、壁材を作る。LIXIL、三協アルミ、YKK AP と競り合い、2025 年の営業利益は 5 億円にとどまった。
利益の質は、はっきり分かれる。化学品の営業利益は 101 億円で、建材は 0.5 億円だ。
優良さと弱いところ
強みは、顧客の工程の中で、小さいが外せない薬剤を握っていることだ。GliCAP は基板の銅回路と樹脂の剥がれを防ぐ。薬剤は基板の原価のわずかな部分だが、不良が出れば基板ごと無駄になる。顧客は安さより信頼で選び、一度採用すると替えにくい。化学品の投下資本の稼ぎは 30% を超える(会社開示)。
資本の使い方も悪くない。配当性向 30%・総還元性向 50% を掲げ、2025 年は自社株買いを足して総還元が 6 割を超えた。持ち合い株の解消も進んでいる。2026 年 9 月に日清紡ホールディングスなどが株を売り出すと、会社は 40 億円を上限に自社株を買うと決めた。
弱いところは三つある。第 1 は建材だ。投じた資本の稼ぎは 4〜5% で、会社も資本コストを下回ると認めている。第 2 は、利益が GliCAP という一つの製品、サーバー基板という一つの用途に寄っていることだ。銅表面の処理には、世界首位とされるメックという先行者がいる。第 3 は、不溶性硫黄が米国の Eastman や中国勢と競っていて、2025 年は単価が下がったことだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
追い風は AI だ。生成 AI のサーバーは、大きく層の多い基板を使う。層が増えるほど銅と樹脂が剥がれる危険が増え、密着や防錆の薬剤の出番も増える。会社は坂出に 150〜200 億円をかけて工場を建て、2027 年に GliCAP の能力を倍にする。
ただし、半導体には波がある。顧客の設備投資が止まれば、薬剤の注文もすぐに減る。2026 年の利益は、その波の高い所にある可能性がある。
タイヤ向けの不溶性硫黄は、世界で約 11 億ドルの市場とされ、年 3〜6% で伸びる。中国のタイヤ生産が引っ張る市場だ。競合は米国の Eastman(Crystex 系)と、中国の Sennics、Sinorgchem などである。中国勢が品質を上げれば、値段が先に崩れる。
プール用の塩素殺菌剤は、家庭用プールと水処理で伸びる成熟市場だ。汎用の塩素系殺菌剤は、中国勢との価格差が出やすい領域だと筆者は見る。同社は品質と北米の販路で戦う。
建材は、新設住宅の着工が長く減っていく。エクステリアは LIXIL、三協アルミ、YKK AP が大手で、四国化成建材は体力で劣る。会社は 2026 年 5 月に 10〜15% の値上げに踏み切り、設計から入る受注型へ移そうとしている。アルミ地金の上昇を転嫁できるかが分かれ目だ。
資本政策と M&A
還元は厚い。配当性向 30%、総還元性向 50%、純資産に対する配当率(DOE)3% を掲げ、2025 年の総還元は 61% に達した。2026 年 7 月には株式を 1 対 2 で分割している。
持ち合いの解消が進む。2026 年 9 月、日清紡ホールディングスや太陽ホールディングスなどが 475 万株余りを売り出した。会社は需給の悪化を和らげるため、40 億円までの自社株買いを決めた。
M&A は小さな案件が中心だ。2026 年 2 月に Timuraya Tunggal を約 30 百万ドルで買った。硫黄の原料を安定して確保し、東南アジアの販路を得るのが狙いである。壁材でも小さな買収をした。
投資は重い。坂出の新工場(最大 200 億円)を含め、2026〜2029 年の投資は最大 700 億円だ。年 150 億円の投資は営業の稼ぎに近く、純現金 111 億円(2025 年末)は薄くなる。会社は金融資産 749 億円(2026 年 6 月末)を成長投資へ回す方針だ。
第三者による買収の可能性は、データ上は 10 年以内に 17% ほどとされる。
点検済み:中立の営業利益率17.9%は会社予想(26・27年12月期18.9〜19.1%)より低く、ファインケミカルも今(35%)以下の33%。数字は据え置く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI の基板需要は、始まったばかりだ。生成 AI のサーバーは基板の層も面積も大きく、銅と樹脂の密着や防錆の薬剤は使う量が増える。GliCAP の上期の伸びは 4 倍で、サーバー基板向けが 85% を占める。会社は坂出に最大 200 億円を投じ、能力を倍にする。需要を先読みした設備だ。
利益率が構造的に高いことも効く。化学品の営業利益率は 2 割で、投じた資本の稼ぎは 30% を超える。薬剤は顧客の原価の小さな部分なので、値上げが通りやすい。半導体プロセス材料も前年の 2 倍近くに伸びている。
会社の計画は保守的でもある。2029 年の営業利益を 180 億円と今期並みに置くのは、償却の増加を織り込んだためで、需要の鈍化を見込んだわけではない。ファインケミカルの 2029 年の売上目標は、330 億円へ上方修正されたばかりだ。実績が計画を超える流れが続いている。
建材の再建も上振れの種になる。10〜15% の値上げが通れば、利益ゼロの事業が数十億円を稼ぎ出す。10 年後に営業利益が 300 億円を超える姿は、十分にありうる。
慎重な見方
今の利益は、波の頂上にある可能性が高い。上期の営業利益は前年の 1.8 倍で、これは AI 投資の最盛期の数字だ。顧客の設備投資が一服すれば、薬剤の注文は在庫調整で急に減る。
GliCAP の利益は、一つの用途に寄りすぎている。サーバー基板が 85% を占め、銅表面の処理には世界首位とされるメックがいる。大手の顧客が仕様を変えれば、立場は崩れる。
坂出の新工場は、需要が落ちた時の重荷になる。最大 200 億円の設備が 2027 年に動き出し、償却が 2028 年から利益を押し下げる。会社が 2029 年の営業利益を横ばいと置いたのは、この重さを示している。
ほかの事業も強くない。不溶性硫黄は中国勢との競争で単価が下がり、ネオクロールは夏の天候に左右される。インドネシアの買収は新興国のリスクを抱え込む。建材は、着工が減り、アルミが上がり、大手に押されている。
そして値段だ。今の時価総額は今期予想の利益の 17 倍で、成長の多くを先取りしている。10 年後の利益が 2 倍強になっても、得られる年率は資本コストを下回る。
どちらに重みを置いたか
事業の質では、強気の見方が勝つ。薬剤の立場は強く、AI の追い風も当面は続く。値段では、慎重な見方が勝つ。強気の描く姿を中立に近く置いても、今の値段は先の成長をほぼ払い終えている。確率は中立を中心に、上下をほぼ対称に置いた。悲観を 11% と厚めにしたのは、利益が一つの製品に寄ることと、半導体の波を重く見たからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,041 円2,728 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 827 円742 億円)。 今の値に割り戻すと 2,136 円1,916 億円、今との差 −2.1%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,443 円4,884 億円 | 1,122 円1,007 億円 | +200.9% | +11.6% | 525 円471 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,437 円3,982 億円 | 993 円891 億円 | +148.9% | +9.5% | 1,195 円1,072 億円 |
| 中立 | 37% | 3,561 円3,195 億円 | 922 円827 億円 | +105.4% | +7.5% | 1,659 円1,488 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,259 円1,130 億円 | 592 円531 億円 | −15.2% | −1.6% | 407 円365 億円 |
| 悲観 | 11% | 314 円281 億円 | 435 円390 億円 | −65.7% | −10.1% | 82 円74 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,041 円2,728 億円 | 827 円742 億円 | +77.3% | +5.9% | 3,868 円3,471 億円 |
今の株価時価総額 2,182 円1,958 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% AI の基板需要が長く続き、建材も立ち直る 利益 254 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 5,443 円4,884 億円
AI サーバー向けの基板が、10 年のあいだ増え続ける。GliCAP は銅と樹脂の密着の標準品の一つとして、サーバーだけでなくパッケージ基板にも広がる。坂出の新工場は満員で動き、増設の話も出る。ファインケミカルの売上は今の 3.4 倍の 634 億円、営業利益率は 36% になる。
インドネシアの Timuraya は硫黄の原料を安く確保する役を果たし、不溶性硫黄の値上げも通る。建材は 10〜15% の値上げが定着し、営業利益率は 7% まで戻る。
営業利益は 350 億円と今の 3 倍強。ROE は 14% を超え、還元は 55% を保つ。会社は新しい成長の柱を買う余力も持つ。ただ、これは需要の追い風、値上げの定着、建材の再建がすべて重なった姿である。
- ファインケミカル:数量 468(関連市場(実質・億円)× シェア)× 価格 134.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 634 億円・営業利益 228 億円。ファインケミカル 売上 634 億円・営業利益率 36.0%
- 無機化成品:数量 324(出荷規模(実質・億円))× 価格 134.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 439 億円・営業利益 53 億円。無機化成品 売上 439 億円・営業利益率 12.0%
- 有機化成品:数量 238(出荷規模(実質・億円))× 価格 134.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 322 億円・営業利益 48 億円。有機化成品 売上 322 億円・営業利益率 15.0%
- 建材:数量 178(出荷規模(実質・億円))× 価格 150.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 269 億円・営業利益 19 億円。建材 売上 269 億円・営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 254 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍。全体の PER 19.23 倍、時価総額 4,884 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要の追い風、値上げの定着、建材の再建が重なる必要があり、10 年で起こりうるが確率は低い。
やや楽観 22% AI 向けの伸びが計画を上回る 利益 215 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 4,437 円3,982 億円
ファインケミカルが、会社の計画を超えて伸びる。2029 年に 330 億円と置く売上は、2035 年に 572 億円になる。営業利益率は 34.5%。競合の追い上げを受けても、サーバー基板での採用を守る。
Timuraya は硫黄の調達と東南アジアの販売で働き、無機化成品は今の 2.8 倍の売上になる。有機化成品は北米で堅調。建材は赤字を脱し、営業利益率が 5.5% になる。
営業利益は 297 億円と今の 2.7 倍。ROE は 13% で、会社が掲げる 10% を上回る。上振れの理由ははっきりしているが、半導体の波を一度も大きく受けない前提でもある。
- ファインケミカル:数量 423(関連市場(実質・億円)× シェア)× 価格 134.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 572 億円・営業利益 197 億円。ファインケミカル 売上 572 億円・営業利益率 34.5%
- 無機化成品:数量 298(出荷規模(実質・億円))× 価格 134.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 403 億円・営業利益 44 億円。無機化成品 売上 403 億円・営業利益率 11.0%
- 有機化成品:数量 219(出荷規模(実質・億円))× 価格 134.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 297 億円・営業利益 40 億円。有機化成品 売上 297 億円・営業利益率 13.5%
- 建材:数量 169(出荷規模(実質・億円))× 価格 148.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 252 億円・営業利益 14 億円。建材 売上 252 億円・営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 215 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍。全体の PER 18.52 倍、時価総額 3,982 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ファインケミカルは会社の計画をすでに上回って進んでおり、上振れの材料ははっきりしている。
中立 37% 中立:薬剤の立場は保ち、物価に実質の伸びが少し乗る 利益 179 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 3,561 円3,195 億円
ファインケミカルは、AI 向けの需要で実質の市場が年 5〜6% 伸び、シェアも少し上がる。売上は 2035 年に 510 億円、営業利益率は 33% に下がる。競合が追い、坂出の償却も重いからだ。
無機化成品は Timuraya の分が加わり、売上が 360 億円になる。利益率は 10% で、不溶性硫黄の値上げは物価並みにとどまる。有機化成品は成熟市場で、数量は 1 割強の増え。建材は数量が 1 割減り、値上げで利益率は 4% を保つ。
営業利益は 246 億円と今の 2.3 倍で、年 8% の伸びだ。会社が 2029 年に置く 180 億円からは、年 5% ほどの伸びになる。ROE は 11.6%、還元は利益の 6 割弱。優良だが、いまの値段を正当化するほどの成長株ではない。
- ファインケミカル:数量 377(関連市場(実質・億円)× シェア)× 価格 134.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 510 億円・営業利益 168 億円。ファインケミカル 売上 510 億円・営業利益率 33.0%
- 無機化成品:数量 266(出荷規模(実質・億円))× 価格 134.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 361 億円・営業利益 36 億円。無機化成品 売上 361 億円・営業利益率 10.0%
- 有機化成品:数量 205(出荷規模(実質・億円))× 価格 130.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 269 億円・営業利益 32 億円。有機化成品 売上 269 億円・営業利益率 12.0%
- 建材:数量 160(出荷規模(実質・億円))× 価格 145.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 234 億円・営業利益 9 億円。建材 売上 234 億円・営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 179 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.85 倍、時価総額 3,195 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:薬剤の立場は保たれ、需要は物価に実質の伸びが乗る形で進む。会社の計画より少し強めに置く。
やや悲観 22% 競合が追い、AI の波が一巡する 利益 92 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 1,259 円1,130 億円
AI 向けの基板投資が一巡し、薬剤の需要が踊り場に入る。競合の追い上げで、GliCAP の単価は物価ほど上がらない。ファインケミカルの売上は 350 億円、営業利益率は 27% に下がる。
坂出の設備は稼働率が上がらず、償却が重い。不溶性硫黄は中国勢との競争で値上げが通らず、ネオクロールも価格競争になる。建材は着工の減少とアルミの上昇で、利益がほぼ出ない。
営業利益は 129 億円と、今より 2 割ほど多いだけだ。ROE は 7% にとどまり、資本コストに届かない。優良な会社の面影は薄れ、10 年かけて資本を食う姿である。
- ファインケミカル:数量 266(関連市場(実質・億円)× シェア)× 価格 130.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 350 億円・営業利益 95 億円。ファインケミカル 売上 350 億円・営業利益率 27.0%
- 無機化成品:数量 223(出荷規模(実質・億円))× 価格 120.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 271 億円・営業利益 18 億円。無機化成品 売上 271 億円・営業利益率 6.5%
- 有機化成品:数量 183(出荷規模(実質・億円))× 価格 115.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 212 億円・営業利益 17 億円。有機化成品 売上 212 億円・営業利益率 8.0%
- 建材:数量 142(出荷規模(実質・億円))× 価格 140.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 201 億円・営業利益 2 億円。建材 売上 201 億円・営業利益率 1.0%
倍率:ROE は 7.1% で資本コスト 7% に届かない。ためた利益は額面より小さい価値なので、上限は 1÷k の 12.9 倍。投資の稼ぎが k を下回り、増える利益も小さいので、上限の約 85% の 12.28 倍に置いた。
確率:AI の波の一巡と競合の追い上げは、半導体の材料では実際によく起きる。10 年なら現実味が高い。
悲観 11% 構造的な負け:一つの用途を失い、設備と買収が重荷になる 利益 26 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 314 円281 億円
サーバー基板の仕様が変わるか、競合が価格で攻めて、GliCAP の採用が大きく減る。ファインケミカルの売上は今と同じ 194 億円に戻り、営業利益率は 18%。坂出の新工場は半分も動かず、最大 200 億円の設備に減損が出る。
不溶性硫黄は中国勢に押されて単価が据え置きになり、Timuraya も期待した成果が出ない。建材は着工の減少で赤字になる。
営業利益は 38 億円まで縮み、自己資本は減損で 250 億円削られる。ROE は 3% で、稼ぐ力は大きく損なわれる。もう優良な化学会社ではなくなった姿である。
- ファインケミカル:数量 175(関連市場(実質・億円)× シェア)× 価格 110.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 194 億円・営業利益 35 億円。ファインケミカル 売上 194 億円・営業利益率 18.0%
- 無機化成品:数量 180(出荷規模(実質・億円))× 価格 105.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 191 億円・営業利益 6 億円。無機化成品 売上 191 億円・営業利益率 3.0%
- 有機化成品:数量 155(出荷規模(実質・億円))× 価格 100.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 157 億円・営業利益 6 億円。有機化成品 売上 157 億円・営業利益率 4.0%
- 建材:数量 125(出荷規模(実質・億円))× 価格 134.0%(価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34))→ 売上 168 億円・営業利益 −5 億円。建材 売上 168 億円・営業利益率 -3.0%
倍率:用途の喪失と設備の減損で、ROE は 2.9%。稼ぐ力(純利益 26 億円 ÷ k 7% = 約 335 億円)を超えない水準として、今の自己資本 938 億円に 0.30 倍を掛けた(やや悲観の PER 11.0 倍を超えないよう、床の根拠が無いので PBR を 0.35 から 0.30 に下げた)。市場の水準ではなく稼ぐ力から置いた。
確率:用途が一つに寄る点、大型の設備と新興国の買収が重なる点で、構造的に負ける道が他社より太い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ファインケミカル
基板の銅と樹脂を密着させる GliCAP、銅の防錆剤タフエース、樹脂の硬化剤・改質剤、半導体プロセス材料。
| 数量関連市場(実質・億円)× シェア | 価格価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 184 | 100.0% | 186 | 65 |
| 10 年後 中立 | 377 | 134.0% | 510 | 168 |
取り方:基板用の表面処理剤・樹脂硬化剤・半導体プロセス材料の関連市場を、今の値段で約 3,500 億円と推定し、同社のシェアを約 5% と置いた。開示は売上の金額だけで、競合のメックなどの規模から見た粗い推定であり幅がある。物価の分は価格指数に入れ、シェアは数量の側に置いた。営業利益は化学品の営業利益 101 億円を事業別に分けられないので、利益率の高いファインケミカルに約 35% を置いた推定。 数量は市場(今の値段・実質)× シェア。物価は価格の指数に別に入れている。
無機化成品
タイヤ用の不溶性硫黄が中心。2026 年 2 月に買ったインドネシアの Timuraya の硫酸などを含む。
| 数量出荷規模(実質・億円) | 価格価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 144 | 100.0% | 145 | 14 |
| 10 年後 中立 | 266 | 134.0% | 361 | 36 |
取り方:売上 145 億円から、今の値段での出荷規模を置いた。2025 年の数字に Timuraya は入っていない。10 年先の数量には、Timuraya の分(今の値段で年 70〜100 億円の規模)を中立で 70 億円足し、不溶性硫黄は年 1〜2% で伸びると置いた。営業利益は事業別の開示がないので、利益率 10% の推定。 数量の増は Timuraya の加算分と不溶性硫黄の実質の伸び(年 1〜2%)による。
有機化成品
プール用殺菌剤ネオクロールなど塩素化イソシアヌル酸の製品、サニタリー製品、洗濯槽クリーナー。
| 数量出荷規模(実質・億円) | 価格価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 183 | 100.0% | 185 | 22 |
| 10 年後 中立 | 205 | 130.0% | 269 | 32 |
取り方:売上 185 億円を今の値段での出荷規模とした。家庭用プールと水処理の需要は成熟していて、数量は年 1% ほどの伸びと置いた。営業利益は事業別の開示がないので、利益率 12% の推定。
建材
アルミのエクステリア(門扉・フェンス・カーポート)と壁材。
| 数量出荷規模(実質・億円) | 価格価格指数(今 1.00、物価 3% で 10 年 1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 178 | 100.0% | 180 | 1 |
| 10 年後 中立 | 160 | 145.0% | 234 | 9 |
取り方:売上 180 億円を今の値段での出荷規模とした。新設住宅の着工が減るので、数量は 10 年で 1 割減と置いた。2025 年の営業利益は 5 億円(会社開示)。
リスクと懸念
半導体の波と一つの用途への集中
ファインケミカルの利益は、AI サーバー向けの基板に強く寄っている。顧客の設備投資が一服すれば、注文は在庫調整で急に減る。2026 年の利益は波の高い所にある可能性があり、10 年の道のりは平らではない。
競合と技術の置き換え
銅と樹脂の密着では、メックのように先行して世界で採用を広げた会社がある。大手顧客が基板の仕様を変えたり、別の処理方式を選んだりすれば、GliCAP の立場は弱くなる。シェアの数字は公開されておらず、強さを確かめにくい。
坂出の投資と償却
最大 200 億円の新工場は 2027 年に動き出し、償却が 2028 年から利益を押し下げる。需要が計画に届かなければ、設備は重荷になる。会社自身が 2029 年の営業利益を今期並みの 180 億円と置いている。
建材の低採算
建材は売上の 4 分の 1 を占めるのに、2025 年の営業利益は 5 億円だった。新設住宅の着工は減り、アルミ地金は上がる。10〜15% の値上げが通らなければ、利益ゼロの事業が資本を食い続ける。
汎用寄りの化学品の競争
不溶性硫黄は、Eastman や中国の Sennics などと競っており、2025 年は単価が下がった。ネオクロールは夏の天候と北米の需要で売上が振れる。ここで価格が崩れると、全体の利益率が下がる。
新興国の買収と為替
インドネシアの Timuraya は、新興国の規制、ルピアの変動、経営の統合というリスクを伴う。ドル円が 1% 円高に振れると営業利益が約 2 億円減る(会社開示の感応度から換算)。この分析は 150 円で固定して置いた。
今後の分かれ目
- GliCAP の売上の伸びが鈍り、サーバー基板向けの比率が下がり始めたら
- ファインケミカルの前提を下げ、悲観の確率を引き上げる。坂出の償却が重く見える。
- GliCAP が、サーバー基板以外のパッケージ基板でも採用を広げたら
- 一つの用途への集中が薄れ、楽観の確率を引き上げてよい。
- 建材の値上げが定着し、営業利益率が 5% を超えたら
- 建材を足を引っ張る事業と見る必要が薄れ、中立の利益を上げてよい。
- 会社が建材の売却や再編を決めたら
- 資本の稼ぎが上がり、倍率の上限が上がる。売却額次第で余った資本の扱いも変わる。
- 坂出の稼働後も、稼働率が上がらなかったら
- 減損や償却の重さが利益に出る。やや悲観から悲観の筋書きに近づく。
- 株価が大きく下がり、今期予想の利益の 10 倍前後になったら
- 本質価値との差が縮み、見方を変える余地が出る。
見ておくもの
- ファインケミカルの売上と営業利益率(四半期)
- GliCAP のサーバー基板向け比率と、パッケージ基板向けの売上
- 坂出工場の稼働時期と稼働率、償却費の増え方
- 建材の値上げの浸透と営業利益率
- 不溶性硫黄の単価とアジア向け出荷
- 総還元性向と自社株買いの実績(50% 以上)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE と資本コスト 7%、長期の成長率 4% から出した正当化 PER の 8〜9 割(中立は 1÷k の下限 13.0 倍)に置き、今の PER 26 倍にも今期予想の 17 倍にも寄せていない。結果の総合は 3 割ほどの割高で、これは寄せずに積み上げて出た。利益は物価 3% に実質の伸びが乗る形で、2029 年の会社計画(営業利益 180 億円)を超える分は AI の需要の長期化として楽観側に置いた。悲観は稼ぐ力(純利益 ÷ k)から置き、過去の PBR の底は使っていない。新リース会計基準の影響は未確認だが、数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.34→19.23 倍・やや楽観 PER 13.88→18.52 倍・中立 PER 13→17.85 倍・やや悲観 PER 11→12.28 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.25% を足して 7.75%。同じ領域では日油(7.0%)より高く ADEKA(7.8%)と同程度。GliCAP への集中と半導体の波は k に足さず、筋書きと確率で見た。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.00%。