結論
フクビ化学工業は、住宅用の樹脂建材をつくる福井の老舗メーカーだ。床下や内装の部材、断熱材「フェノバボード」、住宅設備や車両の部品、車載の反射防止シートまで扱う。
筆者の結論は「やや割高」だ。価値は今の時価総額191億円の2割ほど下になる。理由は、稼ぐ力の薄さにある。営業利益率は4%台で、自己資本利益率は4%にとどまり、資本コストの7.75%を大きく下回る。
一方で、財務は強い。純現金が134億円と時価総額の7割に迫り、自己資本比率は73%に達する。このうち事業に要る分を除いた60億円を、余った現金として価値に足した。
ただし、現金の戻りは鈍いとみる。大株主は創業地の福井の資産管理会社、化学商社の長瀬産業、三井系で、安定株主が厚い。自己資本に対する時価総額は0.5倍にとどまり、現金は増え続けている。
強気の筋書きは、断熱基準の義務化で断熱材が伸び、車載シートが倍近くに増える展開だ。慎重な筋書きは、住宅着工の縮小が止まらず、本社費の重さが利益を食う展開である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安全だが、眠っている会社」だ。純現金が時価総額の7割に迫り、借金はほぼない。この点では安全域がある。
オーナー利益、つまり事業を維持したうえで株主のものになる利益は、営業利益17億円からそう多く増えない。本社費が重く、設備投資も新工場で増える。利益のうち、現金の利息や配当が2割を占める点も見ておきたい。
経営の資本配分は、堅実だが遅い。累進配当は評価できるが、現金の積み上がりを放置している。自己資本利益率が4%と、資本コストを下回る以上、現金を事業に使うか、株主に戻すかを決める必要がある。
安全域はどうか。現金は安全域になるが、戻らない現金は満額で数えにくい。事業の稼ぐ力は資本コストに届かず、10年後の中立でも、時価総額は今の1.2倍にとどまる。
筆者は、現金の使い方が変わる兆しが出るまでは、満額の評価を与えない。逆に、自社株買いや大型の成長投資が確認できれば、見直す価値がある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、住宅に使う樹脂の部材だ。売上は建材が254億円で6割強を占め、住宅設備と車両向けのCSEが102億円、海外向けのグローバルが38億円、車載向けの精密が21億円だ。内部取引を含む数字で、連結の売上は406億円になる。
建材は、外装・内装・床まわりの部材と、断熱材のフェノバボードだ。住宅の着工が減る中、汎用品は弱く、断熱材などの伸びでようやく補っている。断熱基準の義務化を追い風に、岡山に第2の生産拠点を建てる。
CSEは、住宅設備や車両の部品を、客の注文に応じてつくるOEM・ODMの事業だ。精密は、反射防止の樹脂シートが中心で、車載ディスプレイ向けが伸びている。グローバルは、米国・ベトナム・タイの拠点が海外向けの建材をつくるが、まだ赤字だ。
顧客は、建材商社の伊藤忠建材が売上の16.9%を占める。従業員は約1,000人。研究開発費は10億円と、売上の約2.5%だ。
利益の出方に特徴がある。4つの事業の営業利益を足すと46億円だが、研究費や本社費など約28億円を全社で引くと、連結の営業利益は17億円に縮む。
原料は塩化ビニルなどの汎用樹脂で、市況の影響を受ける。生産と物流の中核は福井県に集中しており、災害の備えが課題だ。
優良さと弱いところ
堀は普通だ。断熱材のフェノバボードは需要が構造的に伸びる分野で、工場を持つ強みがある。ただし、汎用の建材は、競合が多く、住宅メーカーと商社に値段を握られる。
強みは三つある。一つは断熱材など、規制を追い風にできる成長分野を持つこと。二つ目は、車載の反射防止シートなど、高付加価値の製品が育っていること。三つ目は、無借金に近い財務だ。
弱みははっきりしている。営業利益率は過去12年の最高が前の期の4.4%で、10年を通して3%台が中心だ。自己資本利益率の10年の中央値は4%で、資本コストを下回ってきた。
本社費の重さも見ておきたい。事業の利益の6割に迫る約28億円が全社費用で消える。売上が伸びても、この費用が先に膨らめば、利益は薄いままだ。
経営は堅実だが、資本効率への意識は弱い。累進配当を掲げ、配当性向は3割前後だが、自社株買いは目立たず、現金は増え続けている。株主には長瀬産業や三井系が並び、資本政策を急がせる圧力は弱い。
結論として、財務は強く、事業は普通の堀で稼ぐ会社だ。成長分野を持つが、全体の利益はまだ薄い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の土台は、新設住宅の着工戸数だ。前の年度は71万戸と、13%減った。人口減と世帯数の減少で、長期では細り続ける。着工が減るぶん、改修と断熱の需要で補えるかが、この業界の分かれ目になる。
追い風は断熱基準の義務化だ。新築の断熱性能を高める規制が進み、フェノバボードのような高性能の断熱材の需要が伸びる。会社が岡山に第2の生産拠点を建て、国の補助金にも採択された。
逆風は、住宅着工の縮小と、原料の塩化ビニルなどの市況だ。汎用建材は競合が多く、原料高を転嫁するのに時間がかかる。物流費と人件費も上がり続けている。
自動車向けでは、車載ディスプレイの大型化と増加が、反射防止シートの需要を押し上げる。ただし、客の値下げ要求は強い。
海外は、米国・ベトナム・タイの拠点が育てている段階で、利益はまだ出ていない。会社は国内生産の一部をASEANへ移す計画で、コストの低い海外での生産を増やす方向だ。
業界全体の構図は、国内の住宅は縮むが、断熱と改修と車載の高付加価値品で伸びる部分もあるということだ。10年の見通しは、全体を物価並みに伸ばすのがやっとと置くのが妥当だ。
資本政策と M&A
還元は、配当性向30%以上を原則とする累進配当だ。前の期の配当性向は3割強で、配当は減らさない方針を掲げる。自社株買いは目立たない。
純現金は134億円で、5年前の100億円台前半から増えた。設備投資は16億円、今後の計画は28億円で、うち岡山の断熱材の新工場が14億円を占める。現金を使う道はあるが、厚い現金をすべて使うほどの規模ではない。
M&Aは目立たない。政策保有株は、上場株が18銘柄で59億円と、時価総額の3割ほどに及ぶ。会社は縮減の方針を示している。配当は利益に入っているので、価値として別に足さない。
大株主は、福井の資産管理会社の八木熊が13.0%、化学商社の長瀬産業が12.5%、三井化学の退職給付信託が9.4%、三井物産プラスチックが5.0%と、安定株主が厚い。親会社や支配株主はいない。
自己資本に対する時価総額は0.5倍にとどまる。厚い安定株主の下では、買収の動きも、資本政策の変化も起こりにくいとみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の足場は固く、改善が始まっている。前の期は営業利益が12%増え、今期の第1四半期は営業利益が44%増えた。会社予想の経常利益は17%増の25億円で、実績は上に出る。
断熱基準の義務化は、国の規制が追い風になる珍しい分野だ。フェノバボードは高性能の断熱材で、岡山の第2拠点が稼働すれば、供給が伸びる。補助金にも採択され、成長投資の足場が整った。
車載向けも伸びている。精密事業は売上が30%増え、利益は2倍を超えた。車載ディスプレイの大型化と増加で、反射防止シートの需要は広がる。
赤字だった海外も縮小している。グローバル事業の赤字は前の期の1億円超から、ほぼゼロになった。国内生産の一部をASEANへ移せば、コストも下がる。
財務は盤石だ。純現金は134億円、自己資本比率は73%。累進配当で還元は着実に増え、資本コストへの意識も高まっている。この条件がそろえば、営業利益率は5〜6%台に乗り、純利益は35億円を超える。
慎重な見方
利益の薄さは、構造だ。営業利益率は過去12年の最高でも4.4%で、10年を通して3%台が中心だった。事業の利益は46億円あっても、本社費が28億円を食い、手元に残るのは17億円にすぎない。
住宅着工の縮小は止まらない。前の年度は13%減の71万戸で、人口と世帯数が減る国内では、長期の縮小が続く。汎用建材は競合が多く、住宅メーカーと商社に値段を握られる。
原料の塩化ビニルなどの市況も、転嫁に時間がかかる。物価と人件費が上がるのに、客の値下げ要求は強く、利益率が上がる構造が見えない。
現金は積み上がるが、戻らない。自己資本に対する時価総額が0.5倍にとどまるのは、市場が現金の戻りを信じていない証拠だ。大株主は安定株主が中心で、資本政策を急がせる圧力は弱い。
自己資本利益率は4%と、資本コストの7.75%を大きく下回る。ためた利益は、額面の価値を持たない。現金が厚いことは安全だが、収益力ではない。
どちらに重みを置いたか
筆者は、慎重な見方がやや強いとみる。強気の根拠である断熱材と車載シートの伸びは本物だが、全体の利益を押し上げるほどの規模ではない。慎重な見方の根拠である利益の薄さと本社費の重さは、長い実績に裏づけられている。
そのため、中立に重みを置き、やや楽観を20%、やや悲観を25%とした。悲観の10%は、住宅着工の長期縮小と本社費の重さが重なる場合を映している。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,469 円282 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 356 円68 億円)。 今の値に割り戻すと 981 円188 億円、今との差 +0.6%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,636 円506 億円 | 557 円107 億円 | +227.5% | +12.6% | 224 円43 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,255 円433 億円 | 474 円91 億円 | +179.9% | +10.8% | 546 円105 億円 |
| 中立 | 38% | 1,703 円327 億円 | 380 円73 億円 | +113.6% | +7.9% | 791 円152 億円 |
| やや悲観 | 25% | 569 円109 億円 | 260 円50 億円 | −14.9% | −1.6% | 207 円40 億円 |
| 悲観 | 10% | 442 円85 億円 | 130 円25 億円 | −41.3% | −5.2% | 57 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,469 円282 億円 | 356 円68 億円 | +87.2% | +6.5% | 1,825 円351 億円 |
今の株価時価総額 975 円187 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 断熱材と車載シートが伸び、利益率が6%に乗る 利益 34 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,636 円506 億円
断熱基準の義務化で、フェノバボードを含む建材の数量は横ばいを保ち、単価は物価を上回る1.36倍になる。建材の利益率は16%に上がる。
車載ディスプレイの増加で精密の数量は9割増え、利益率は17%に上がる。住宅設備のCSEは数量が1割増え、海外のグローバルは数量が8割増えて黒字になる。
営業利益は39億円、営業利益率は6.1%と、過去12年の最高を大きく上回る。純利益は34億円、10年の還元は約107億円だ。
ただし、本社費は物価で増え、利益の伸びを抑える。ROEは6〜7%にとどまり、資本コストには届かない。
- 建材(外装・内装・床・断熱材):数量 711(新設住宅着工相当(千戸・浸透度込み))× 価格 0.49(千戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 346 億円・営業利益 55 億円。着工相当1.0倍・価格1.36倍、利益率16%
- CSE(住宅設備・車両の受注生産):数量 22.3(出荷(百万個相当・推定))× 価格 6.71(百万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 8 億円。数量1.1倍・価格1.34倍、利益率5.5%
- 精密(反射防止樹脂シート):数量 1.9(出荷(百万㎡・推定))× 価格 26(百万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 8 億円。出荷1.9倍・価格1.25倍、利益率17%
- グローバル(海外向け建材):数量 3.4(出荷(百万㎡相当・推定))× 価格 27(百万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 5 億円。出荷1.8倍・価格1.36倍、利益率5%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 506 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:断熱基準の義務化、車載シートの倍増、海外の黒字化が全部そろう必要がある。ROE が資本コストに届かない会社なので7%にとどめた。
やや楽観 20% 会社の見通しどおり、利益率が5%台に乗る 利益 29 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,255 円433 億円
住宅着工の縮小を、断熱と改修で補い、建材の数量は4%減にとどまる。単価は1.34倍で、利益率は16%を保つ。車載シートの数量は6割増え、利益率は17%になる。
CSEは横ばい、グローバルは数量が5割増えて小さな黒字になる。営業利益は32億円、営業利益率は5.6%で、前の期の4.3%から一段上がる。
純利益は29億円、10年の還元は約91億円。本社費は物価で増えるが、売上の伸びで薄まる。
ROEは6%にとどまり、資本コストには届かない。「財務の強い、普通の建材会社」として、今より一段高い評価を受ける。
- 建材(外装・内装・床・断熱材):数量 683(新設住宅着工相当(千戸・浸透度込み))× 価格 0.48(千戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 327 億円・営業利益 52 億円。着工相当0.96倍・価格1.34倍、利益率16%
- CSE(住宅設備・車両の受注生産):数量 20.3(出荷(百万個相当・推定))× 価格 6.61(百万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 134 億円・営業利益 7 億円。数量横ばい・価格1.32倍、利益率5.5%
- 精密(反射防止樹脂シート):数量 1.6(出荷(百万㎡・推定))× 価格 25(百万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 7 億円。出荷1.6倍・価格1.22倍、利益率17%
- グローバル(海外向け建材):数量 2.9(出荷(百万㎡相当・推定))× 価格 27(百万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 3 億円。出荷1.5倍・価格1.34倍、利益率4.5%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 433 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社予想(経常利益が17%増)と、断熱材・車載シートの伸びが続く筋書き。過去の山(4.4%)を上回るので20%に抑えた。
中立 38% 中立:断熱と車載が住宅の縮小を補い、利益率は4%台にとどまる 利益 21 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,703 円327 億円
住宅着工は10年で15%ほど縮み、建材の数量は断熱と改修で8%減にとどまる。単価は原料の転嫁の遅れで1.32倍で、利益率は直近並みの15%を保つ。
精密は、車載ディスプレイの増加で数量が4割増え、利益率は16%。CSEは数量が5%減る。グローバルは数量が3割増え、小さな黒字になる。
本社費と研究費は物価で増え、約38億円になる。営業利益は22億円、営業利益率は4.2%。前の期の4.3%と同じで、改善を前提にしない。借金がないので、金利の上昇は現金の利息を増やし、利益を押し上げる。
純利益は21億円。配当性向は3割台半ばで、10年の還元は約73億円。今ある設備の償却は物価で増えず、新工場の償却が新しい値段で加わる。
精密の単価が物価の上昇に届かない1.20倍なのは、車載向けの反射防止シートで客の値下げ要求が毎年続き、新規参入も出るためだ。数量の伸びで補う前提とした。
「堅実だが、成長しない会社」という姿が、中立の10年後だ。
- 建材(外装・内装・床・断熱材):数量 654(新設住宅着工相当(千戸・浸透度込み))× 価格 0.47(千戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 309 億円・営業利益 46 億円。着工相当0.92倍・価格1.32倍、利益率15%
- CSE(住宅設備・車両の受注生産):数量 19.3(出荷(百万個相当・推定))× 価格 6.51(百万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 125 億円・営業利益 6 億円。数量0.95倍・価格1.30倍、利益率5%
- 精密(反射防止樹脂シート):数量 1.4(出荷(百万㎡・推定))× 価格 25(百万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 6 億円。出荷1.4倍・価格1.20倍(車載シートは客の値下げ要求と新規参入で物価に届かない)、利益率16%
- グローバル(海外向け建材):数量 2.5(出荷(百万㎡相当・推定))× 価格 27(百万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 2 億円。出荷1.3倍・価格1.34倍、利益率3%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 327 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:住宅着工は縮むが、断熱・改修・車載で補い、本社費が物価で増える、過去の実績と会社予想の中間にあたる中心。強気と慎重の言い分を平均した中心。
やや悲観 25% 住宅の縮小が深まり、本社費の重さで利益率が2%に落ちる 利益 10 億円 · PER 7.7 倍 · 株価時価総額 569 円109 億円
住宅着工は2割近く縮み、建材の数量は15%減る。単価は物価の上昇に届かず1.28倍にとどまり、利益率は14%に下がる。
CSEは数量が1割減り、利益率は4%。精密の数量の伸びは1割にとどまり、グローバルは損益トントンだ。
本社費は物価で増え、約38億円のまま残る。営業利益は10億円、営業利益率は2.0%。2021年3月期の8億円に近い、谷の水準だ。純利益は10億円。
配当は、累進配当の方針を維持するのがやっとで、10年の還元は約50億円になる。財務は崩れないが、資本効率は2%台まで下がる。
現金は谷の年に取り崩しも起こるため、余った現金は今の4分の3に減るとみる。車載シートは新しい競合の参入で値上げが通りにくく、単価は物価に届かない。それでも会社の存続を脅かす水準ではなく、配当の累進を守ることで株価の下値は支えられる。
- 建材(外装・内装・床・断熱材):数量 604(新設住宅着工相当(千戸・浸透度込み))× 価格 0.46(千戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 277 億円・営業利益 39 億円。着工相当0.85倍・価格1.28倍、利益率14%
- CSE(住宅設備・車両の受注生産):数量 17.9(出荷(百万個相当・推定))× 価格 6.31(百万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 113 億円・営業利益 5 億円。数量0.88倍・価格1.26倍、利益率4%
- 精密(反射防止樹脂シート):数量 1.1(出荷(百万㎡・推定))× 価格 23(百万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 4 億円。出荷1.1倍・価格1.10倍、利益率14%
- グローバル(海外向け建材):数量 1.9(出荷(百万㎡相当・推定))× 価格 26(百万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 1 億円。出荷横ばい・価格1.30倍、利益率1%
倍率:事業の ROE 2.2%は k 7.25%を大きく下回る。PER の上限は 1÷k=12.9 倍で、やや悲観は上限の 6 割の 7.74 倍に置いた(7 割へは引き上げない)。余った現金は谷で食うので今の 0.75 倍の 45 億円とし、戻り方 0.5 で足した。
確率:住宅着工の縮小が続き、原料高と値下げ要求で利益率が落ちる筋書き。過去の谷(2021年3月期の営業利益率2.3%)に近いので25%を置いた。
悲観 10% 構造的に負ける:住宅が縮み、汎用建材が値崩れし、赤字が常態に 利益 −13 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 442 円85 億円
住宅着工が45万戸台まで落ち、建材の数量は3割減る。海外の安い建材が流れ込み、単価は物価の上昇にも届かず1.15倍にとどまる。建材の利益率は8%に落ちる。
CSEと精密も、客の値下げ要求と内製化で数量が減る。グローバルは赤字が続く。本社費は人員の整理で33億円まで削るが、事業の利益を食いつぶす。営業利益は16億円の赤字、純利益は13億円の赤字だ。
工場の閉鎖と減損で、自己資本は10年で約125億円減る。配当は3割台に落とした水準を保てず、10年の還元は約25億円に縮む。
ただし、現金は残る。小さな株主には現金の使い方を決める力がなく、半分ほどが戻る前提で価値を置く。
- 建材(外装・内装・床・断熱材):数量 498(新設住宅着工相当(千戸・浸透度込み))× 価格 0.41(千戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 205 億円・営業利益 16 億円。着工相当0.7倍・価格1.15倍、利益率8%
- CSE(住宅設備・車両の受注生産):数量 14.2(出荷(百万個相当・推定))× 価格 5.61(百万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 80 億円・営業利益 1 億円。数量0.7倍・価格1.12倍、利益率1%
- 精密(反射防止樹脂シート):数量 0.8(出荷(百万㎡・推定))× 価格 21(百万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。出荷0.8倍・価格横ばい、利益率8%
- グローバル(海外向け建材):数量 1.3(出荷(百万㎡相当・推定))× 価格 24(百万㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 −2 億円。出荷0.7倍・価格1.2倍、利益率−5%
倍率:赤字で稼ぐ力はほぼゼロ。ROE が k を大きく下回るので利益から倍率を出さず、現金・売れる資産の半分から成る約 85 億円を床にした。今の自己資本 399 億円に対する倍率では約 0.21 倍。減損後の自己資本は 274 億円。EV÷営業利益は赤字のため意味を持たない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.3102 倍・時価総額 85 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:住宅着工の長期縮小、汎用建材の価格崩れ、本社費の重さが重なる変化は無視できない。厚い現金が下値を支えるので10%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建材(外装・内装・床・断熱材)
住宅向けの外装・内装・床まわりの部材と、断熱材フェノバボード。商社を通して住宅メーカー・工務店に納める。
| 数量新設住宅着工相当(千戸・浸透度込み) | 価格千戸あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 711 | 0.36 | 254 | 37 |
| 10 年後 中立 | 654 | 0.47 | 309 | 46 |
取り方:製品別の数量は開示がない。前の年度の新設住宅着工戸数 71.1 万戸(−12.9%)を数量の基準とし、売上 254.4 億円を割って 1 戸あたり約 3.6 万円相当(改修需要も含む)と置いた。10 年の数量は、着工の縮小(約 15% 減)と断熱・改修の伸び(約 8% 増)を合わせて指数で動かす。営業利益はセグメント利益 37.4 億円(開示、全社費用の配賦前)。
CSE(住宅設備・車両の受注生産)
住宅設備や車両向けの部品を、客の注文でつくる OEM・ODM。
| 数量出荷(百万個相当・推定) | 価格百万個あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.3 | 5.01 | 102 | 5 |
| 10 年後 中立 | 19.3 | 6.51 | 125 | 6 |
取り方:個数は開示がない。売上 101.6 億円を、部品 1 個あたりの単価を推定して割り戻し、約 2,030 万個相当と置いた。営業利益はセグメント利益 5.0 億円(開示、前年比 +52%)。
精密(反射防止樹脂シート)
車載ディスプレイなど向けの反射防止樹脂シート。主に商社経由で販売する。
| 数量出荷(百万㎡・推定) | 価格百万㎡あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 21 | 21 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 25 | 35 | 6 |
取り方:面積は開示がない。売上 20.7 億円を、機能性シートの単価を推定して割り戻し、約 100 万㎡相当と置いた。営業利益はセグメント利益 3.5 億円(開示、前年比 2.2 倍)。
グローバル(海外向け建材)
米国・ベトナム・タイの拠点で、海外向けの外装・内装建材をつくり売る。
| 数量出荷(百万㎡相当・推定) | 価格百万㎡あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.9 | 20 | 38 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.5 | 27 | 66 | 2 |
取り方:面積は開示がない。売上 37.9 億円を、海外建材の単価を推定して割り戻し、約 190 万㎡相当と置いた。営業利益はセグメント損失 0.3 億円(開示、前年は 1.2 億円の損失)。
リスクと懸念
住宅着工の長期縮小
前の年度の新設住宅着工は71万戸と13%減った。人口と世帯数の減少で、長期では縮み続ける。建材は売上の6割強を占め、汎用品は競合が多く値段を握られる。断熱と改修で補えるかが分かれ目だ。
本社費の重さ
4つの事業の営業利益を足すと46億円だが、研究費や本社費など約28億円を全社で引き、連結は17億円になる。物価で増える一方、売上の伸びが鈍ければ、利益率は薄いままだ。
原料の市況
主原料は塩化ビニルなどの汎用樹脂で、市況の影響を受ける。値上がりの転嫁は遅れ、その間は利益が削られる。物流費と人件費も上がり続けている。
福井への生産の集中
生産と物流の中核が福井県に集中しており、大規模災害の影響を受けやすい。岡山の第2拠点で分散を進めるが、まだ移行の途中だ。
現金が戻らない
純現金は134億円と時価総額の7割に迫るが、配当性向は3割台で、自社株買いは目立たない。安定株主が厚く、資本政策を急がせる圧力が弱い。少数株主は現金の使い方を決められない。
海外事業の赤字
グローバル事業は前の期にほぼ損益トントンまで縮んだが、立て直しの途中だ。国内生産の一部をASEANへ移す計画には、移行の費用と品質管理の課題が伴う。
今後の分かれ目
- フェノバボードの第2拠点が計画どおり稼働したら
- 断熱材の供給が伸び、建材の利益率が保たれる。強気側の確率を上げる。
- 自社株買いや増配など現金の戻りが動いたら
- 余った現金の戻り方を0.5から1.0に引き上げて評価できる。価値が上がる。
- 新設住宅着工が60万戸を割り込んだら
- 建材の数量の縮小が深まり、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 精密の売上が車載向けで伸び続けたら
- 高付加価値品の比率が上がり、利益率が戻る道筋が見える。やや楽観の確率を上げる。
- 全社費用が売上の伸び以下に抑えられたら
- 利益率が改善する構造的な理由になる。中立の利益率を見直せる。
- 大株主による株の買い増しや提案があったら
- 自己資本の0.5倍という低い評価が見直される可能性がある。ただし安定株主が多く、動きにくい。
見ておくもの
- 建材セグメントの営業利益と利益率
- 精密セグメントの売上と利益(車載)
- 全社費用の水準
- 純現金の積み上がりと配当・自社株買いの額
- 新設住宅着工戸数
倍率と資本コストの決め方
数量(着工相当・出荷)は実質、価格は物価 3%を含む名目として別に置いた。全社費用 28.2 億円は、物価で 37.8 億円に増やした。10 年の償却費は、今の設備の分が物価で増えず、岡山の新工場など増強・更新の分が新しい値段で足されて 15 億円前後(推定)と置き、中立の営業利益率は過去 12 年の最高 4.4%より少し低い 4.2%にした。倍率は資本コスト 7.25%(基本 7.5%+quality 0.25%)から、ROE が k 以下なので上限 1÷k の 7.5 割に置き、今の株価(PER 11 倍)や過去の PBR には寄せていない。余った現金は戻り方 0.5 で別に足し、金利の上昇は現金の利息を増やして純利益に入れた。上場政策保有株は配当が利益に入っているので別に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.61→13.79 倍・やや楽観 PER 10.32→13.79 倍・中立 PER 9.68→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.25% を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.25%。