結論
日本カーバイド工業は、ナンバープレートや道路標識に使う反射シートで稼ぐ素材メーカーだ。もとはカーバイド(炭化カルシウム)の会社で、いまは反射シートのフィルム・シート製品が売上の4割強、利益の6割を占める。
筆者の結論は、今の値段はおおむね妥当というものだ。主力の反射シートは世界で約3割のシェアを持つ。ただ、残りの事業は利益が薄い。建材はほぼ利益が出ず、プラント施工は受注の波が大きい。
引っかかるのは、会社の計画の信頼性である。前の中期計画は売上620億円、営業利益70億円を掲げたが、実績は499億円と41億円だった。新しい計画は同じ数字を5年先に送っている。筆者はこれをそのまま信じない。
悪い話ばかりではない。株主還元は配当性向40%を目安とする方針に変わり、少額の優待も始まった。純現金も70億円ある。10年先の中立は、営業利益が今の1.6倍ほどになる姿で、会社の計画よりは控えめだ。確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額と近い水準に収まった。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日本カーバイド工業は「一つの良い事業と、三つの普通の事業」からなる会社だ。良い事業は反射シートである。規格に守られ、世界で3割のシェアを持つ。10年後も、車がある限りナンバープレートは要る。ここは持ち続けたい資産だと筆者は考える。
残りの事業が評価を下げる。建材はほぼ利益がなく、エンジニアリングは受注の波が大きい。電子・機能製品は技術こそあるが、投じた資本に見合う利益を出していない。ROEが資本コストに届かない以上、ためた利益は額面未満の価値にとどまる。
資本の使い方では、計画の未達が目立つ。前の計画は売上620億円を掲げたが、499億円で終わった。新しい計画はそれを先送りし、投資額を3倍超に増やす。実行力を試される局面だ。
安全域は中くらいである。純現金があり、財務は堅い。値段は利益の十数倍で、安いとは言えない。株主還元を強める方針は評価できるが、それだけで割安にはならない。
何で稼ぐ会社か
事業は四つある。最大の柱はフィルム・シート製品だ。ナンバープレートや道路標識に使う再帰反射シートは、光を来た方向へ跳ね返す素材で、夜間の視認性を高める。世界のシェアは約3割で2位と、同社は説明している(会社調べ)。自動車の3Dエンブレムなど、加飾用のフィルムも手がける。需要は世界の自動車の登録台数と、南米や欧州の新車・二輪車の市場に連動する。
電子・機能製品は、半導体や電子部品、医薬・農薬向けの化学品を作る。半導体の回路を描く薬品、樹脂封止の金型を掃除する材料、スマートフォンの部品向けの薄型セラミック基板、粘着剤と接着剤が主な製品だ。医農薬の中間体や原薬は、顧客の製造工程に組み込まれる。
建材関連は、住宅の手すりや樹脂の押出成形品を作る。子会社のビニフレーム工業が担う。国内の住宅着工が減るため、会社は増産投資を中止した。
エンジニアリングは、製鉄・化学・電力向けのプラントの設計と施工だ。製鉄会社が進める脱炭素の設備に、粉体を精密に吹き込む技術を提供する。
売上の国内比率は46%で、海外が54%を占める。中国向けは約1割で、売上の1割を超える単一の顧客はない。
優良さと弱いところ
優良さの中身は、事業によって大きく違う。
堀は反射シートにある。堀とは、他社がまねできない強みのことだ。ナンバープレートは国の規格に合わせて作るため、一度採用されると長く使われる。世界の3割のシェアを持ち、競合の一社が欧州の生産から手を引いたことで、同社の出荷が伸びた。ここは本物の強みだと筆者は見る。
電子・機能製品は、技術は高いが規模が小さい。利益率は直近で9%に届かない。市況の回復が遅れ、電子デバイス向けの増産投資は先送りになった。
弱いのは建材とエンジニアリングだ。建材の利益率は1%ほどで、国内の住宅の縮小がそのまま響く。エンジニアリングは製鉄会社の投資の時期に左右される。
資本効率はROEが6〜7%で、資本コストに届かない。無借金に近い財務は安全だが、自己資本の厚さが利益率を薄めている。経営は計画の未達が続き、前の計画で掲げたROE12%の目標は、10%に引き下げて持ち越した。この点は評価を下げる材料である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の柱は二つある。
一つ目は、自動車と二輪車の世界の登録台数だ。ナンバープレートは新車ごとに要る。新興国でモータリゼーションが進めば、反射シートの数量は増える。ブラジルなど南米では、二輪車向けの出荷が伸びている。先進国では、交換需要が底を支える。ただし台数が実質で伸びる速さは、年1〜2%が妥当だ。物価の分はその上に乗る。
二つ目は、半導体と電子部品の投資である。AIサーバー向けの先端パッケージが広がると、封止工程の材料と金型の清掃材への要求が高まる。業種全体の見通しでは、電子材料の市場は実質で年3〜5%伸びる。ただし半導体投資は2〜4年周期で山と谷を作る。電子デバイスは、スマートフォンの需要が伸び悩んで調整局面が長引いた。
競争の面では、反射シートは3Mとエイブリィ・デニソンが並ぶ寡占に近い。電子の化学品は、中国企業が中位品を追いかける構図だ。
建材は、国内の住宅着工の縮小が構造的に続く。エンジニアリングは、製鉄会社の脱炭素の設備更新が重なり、受注が増えやすい局面にある。ただし、案件ごとの波は大きい。
資本政策と M&A
株主還元の方針が変わった。2027年3月期の中間配当から、配当性向40%、または自己資本配当率3.0%の高いほうを目安にする。これまでの下限は30%だった。直近の配当性向は33%である。株主優待も始め、100株以上の株主に年2回、少額のデジタルギフトを贈る。株主数は9千人ほどで、年間の費用は1億円に届かず、価値への影響は1ポイント未満と小さい。
設備投資は5年で280億円と、前の計画の3.3倍に増やす。電子の化学品の増強、中国工場の移転、ブラジル工場の増強が主な使い道だ。純現金70億円は、この投資と運転資金に充てられる。
M&Aでは大きな動きがない。2026年9月に米国の子会社2社を合併したが、小さな整理にとどまる。大株主は信託銀行の口座が中心で、親会社はいない。買収される側になる可能性は、時価総額が300億円台と小さく、無借金に近いのでゼロとは言えない。ただし、その動きを示す材料は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
反射シートの強さは、まだ十分に評価されていない。世界で約3割のシェアを持ち、競合の一社が欧州から手を引いたため、欧州の出荷が伸びている。ナンバープレートの更新は国の制度に支えられ、景気に左右されにくい。南米の二輪車と、新興国の新車登録が伸びれば、数量はさらに増える。
新しい中期計画は、投資を3倍に増やして半導体と電子部品の成長に賭ける。AIサーバー向けの先端パッケージが広がれば、封止材料と金型クリーニング材の需要は着実に増える。製鉄会社の脱炭素の設備投資は、エンジニアリングの受注を押し上げる。
配当性向40%を目安とする方針は、資本効率を意識する経営に変わった証拠だ。自己資本配当率3%も組み合わせ、増配が続く。優待も始まり、個人株主の裾野が広がる。
会社の計画は営業利益70億円で、今の1.7倍にあたる。たとえ計画を6割しか達成できなくても、利益は今より3割以上増える。純現金と合わせれば、今の値段は成長の一部しか織り込んでいない。
慎重な見方
計画をそのまま信じるのは危ない。前の計画は売上620億円、営業利益70億円、ROE12%を掲げたが、実績は499億円、41億円、7%にとどまった。新しい計画は同じ金額を5年遅らせ、ROEの目標だけを10%に引き下げた。実行力の評価は低いままだ。
事業の質にも差がある。利益の6割は反射シート一つに集中する。競合の3Mとエイブリィ・デニソンは世界的な大手で、価格競争が起きれば利益率は簡単に落ちる。ナンバープレートは国ごとの規格に依存し、制度の変更や自国メーカーの優遇が起きれば、輸出が止まりうる。
電子・機能製品は規模が小さく、中国企業の追随で中位品の価格が下がる。建材は利益がほぼゼロで、国内の住宅が縮めば赤字になる。エンジニアリングは受注の波が大きい。
投資の負担も重い。5年で280億円は、年間の純利益の約2倍にあたる額だ。投資が空振りに終われば、純現金は消え、ROEはさらに下がる。ROEが資本コストに届かないまま資本を積み上げる会社に、高い倍率は払えない。
どちらに重みを置いたか
強く出たのは慎重な見方のほうだ。反射シートは本物の強みだが、利益の大半を一つの事業が支える構造と、計画の未達という実績は重い。そこで中立は会社の計画よりも控えめに置き、確率は中立をもっとも厚くした。一方で、還元強化と反射シートの強さは評価し、悲観の確率は1割にとどめた。その結果、本質価値は今の値段と近い水準になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,284 円586 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,563 円146 億円)。 今の値に割り戻すと 4,138 円386 億円、今との差 +22.1%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,246 円1,143 億円 | 2,218 円207 億円 | +326.7% | +15.6% | 1,157 円108 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,944 円834 億円 | 1,881 円176 億円 | +219.3% | +12.3% | 2,382 円222 億円 |
| 中立 | 38% | 6,503 円607 億円 | 1,594 円149 億円 | +138.9% | +9.1% | 3,077 円287 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,372 円315 億円 | 1,267 円118 億円 | +36.8% | +3.2% | 1,021 円95 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,237 円115 億円 | 873 円81 億円 | −37.8% | −4.6% | 211 円20 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,284 円586 億円 | 1,563 円146 億円 | +131.5% | +8.8% | 7,847 円732 億円 |
今の株価時価総額 3,390 円316 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 計画を超えて、反射シートと半導体材料が10年伸びる 利益 71 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 12,246 円1,143 億円
新しい中期計画を上回る成長になる。AIサーバー向けの先端パッケージが広がり、封止材料と金型クリーニング材の出荷が大きく伸びる。レジスト用の薬品も採用が増える。反射シートは、競合の撤退が続く欧州で首位を固め、南米の二輪車と新興国の新車でも数量が増える。製鉄会社の脱炭素の設備投資は10年にわたって続き、エンジニアリングの受注も安定する。高層ビル向けの手すりも伸び、建材の利益率が3%に上がる。営業利益率は11%に乗り、計画の目標を超えた姿になる。配当性向は4割台半ばまで上がり、投資と還元を両立する。ただし、これらがそろうのは、計画の達成度が前の計画の6割から大きく上振れした場合に限られる。
- 電子・機能製品:数量 12.2(出荷量(千トン、推定))× 価格 268(1トンあたり単価(万円))→ 売上 327 億円・営業利益 36 億円。半導体・電子部品向けが計画以上に伸びる
- フィルム・シート製品:数量 22.5(出荷面積(百万平方メートル、推定))× 価格 2,090(1平方メートルあたり単価(円))→ 売上 470 億円・営業利益 71 億円。世界の登録台数と欧州のシェアが拡大
- 建材関連:数量 9.1(出荷量(千トン換算、推定))× 価格 94(1トンあたり単価(万円))→ 売上 86 億円・営業利益 3 億円。高層ビル向けの高付加価値品が育つ
- エンジニアリング:数量 26.0(年間の完成案件数(件、推定))× 価格 2.71(1件あたり売上(億円))→ 売上 71 億円・営業利益 6 億円。脱炭素設備の受注が続く
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.16 倍、時価総額 1,142 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体向けの拡大、反射シートの数量増、製鉄の脱炭素投資がそろい、計画を超える組み合わせ。前の計画が未達だったため、確率は低く抑えた。
やや楽観 22% 計画に近い成長で、利益率が1割に迫る 利益 56 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 8,944 円834 億円
新しい中期計画におおむね沿って進む。電子・機能製品は先端パッケージとスマートフォン向けの部材が伸び、利益率が10%に上がる。反射シートは南米と欧州で出荷が増え、世界の登録台数の伸びを上回って成長する。建材は国内の住宅縮小を高付加価値品で補い、利益を小さな黒字に保つ。エンジニアリングは脱炭素の設備更新を取り込む。営業利益率は1割に迫り、計画の11%には届かないが、過去の水準を1ポイント以上上回る。配当性向は4割台前半で、自己資本配当率3%の下限が配当を支える。設備投資の成果が出始め、10年後のROEは9%台に回復する。
- 電子・機能製品:数量 11.1(出荷量(千トン、推定))× 価格 268(1トンあたり単価(万円))→ 売上 298 億円・営業利益 30 億円。先端パッケージ向けが伸びる
- フィルム・シート製品:数量 20.4(出荷面積(百万平方メートル、推定))× 価格 2,001(1平方メートルあたり単価(円))→ 売上 408 億円・営業利益 57 億円。南米・欧州で出荷が伸びる
- 建材関連:数量 8.9(出荷量(千トン換算、推定))× 価格 94(1トンあたり単価(万円))→ 売上 84 億円・営業利益 2 億円。国内の住宅縮小を高付加価値品で補う
- エンジニアリング:数量 23.0(年間の完成案件数(件、推定))× 価格 2.71(1件あたり売上(億円))→ 売上 62 億円・営業利益 4 億円。脱炭素設備の受注が増える
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.82 倍、時価総額 834 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい中期計画におおむね沿って進み、営業利益が10年で計画の水準を超える姿。前の計画の達成度が6割だったことを考え、中立より薄く置いた。
中立 38% 計画の6割ほどの達成で、営業利益は1.6倍 利益 45 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 6,503 円607 億円
反射シートは世界の登録台数の緩やかな増加と欧州のシェア拡大で、数量が10年で2割強増える。電子・機能製品は半導体向けが伸びるが、スマートフォン向けは伸び悩み、全体では2割弱の増加にとどまる。建材は国内の住宅着工の減少で、数量が15%ほど減る。エンジニアリングは受注の波を均して横ばい。全社の営業利益率は8.7%と過去12年の山の8.2%をわずかに超える。理由は、利益率13%の反射シートの比重が高まり、利益率1%台の建材が縮むためで、各事業の利益率は今の水準に近い。計画の11%には置かない。配当性向は4割強で、10年後のROEは7.5%ほどにとどまる。
- 電子・機能製品:数量 9.9(出荷量(千トン、推定))× 価格 260(1トンあたり単価(万円))→ 売上 258 億円・営業利益 23 億円。半導体向けがゆっくり伸びる
- フィルム・シート製品:数量 18.3(出荷面積(百万平方メートル、推定))× 価格 2,001(1平方メートルあたり単価(円))→ 売上 366 億円・営業利益 48 億円。世界の登録台数が緩やかに増える
- 建材関連:数量 8.6(出荷量(千トン換算、推定))× 価格 94(1トンあたり単価(万円))→ 売上 81 億円・営業利益 1 億円。国内の住宅着工の減少が続く
- エンジニアリング:数量 20.0(年間の完成案件数(件、推定))× 価格 2.71(1件あたり売上(億円))→ 売上 54 億円・営業利益 3 億円。案件は波があるが横ばい
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.47 倍、時価総額 599 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:反射シートが世界の登録台数とともに緩やかに伸び、電子と建材が足を引っ張る姿。もっとも起きやすいので確率を厚くした。
やや悲観 22% 計画は未達のまま、利益は伸びない 利益 30 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 3,372 円315 億円
電子デバイスの調整が長引き、半導体向けの伸びも計画を下回る。反射シートは台数が増えても、競合の値下げ要請で単価が物価に追いつかない。建材は国内の住宅縮小で数量が2割以上減り、ほぼ利益が出ない。エンジニアリングは製鉄会社の投資が一巡し、受注が減る。全社の営業利益率は7%弱と、今の水準を下回る。設備投資280億円は、期待した利益を生まない。前の計画と同じく、目標の6割に届かない状況が繰り返される。配当性向は4割台に引き上げられるが、利益が伸びないため金額は増えない。純現金は積み上がらず、ROEは5%台にとどまる。
- 電子・機能製品:数量 8.8(出荷量(千トン、推定))× 価格 250(1トンあたり単価(万円))→ 売上 221 億円・営業利益 17 億円。電子デバイスの調整が長引く
- フィルム・シート製品:数量 16.2(出荷面積(百万平方メートル、推定))× 価格 1,911(1平方メートルあたり単価(円))→ 売上 310 億円・営業利益 34 億円。台数は増えるが値下げ要請が強まる
- 建材関連:数量 7.9(出荷量(千トン換算、推定))× 価格 88(1トンあたり単価(万円))→ 売上 69 億円・営業利益 0 億円。住宅の縮小で販売が落ちる
- エンジニアリング:数量 18.0(年間の完成案件数(件、推定))× 価格 2.63(1件あたり売上(億円))→ 売上 47 億円・営業利益 2 億円。受注が減る
倍率:事業の純利益で見たROEは5.5%と、資本コストを大きく下回る。上限は1÷k=12.5倍で、利益の質が落ちる筋書きなので上限の7.5割の9.38倍に置いた。
確率:電子デバイスの調整が長引き、反射シートの値下げ要請も強まる場合。前の計画の未達が繰り返される可能性を考え、楽観側と同じ厚さで置いた。
悲観 10% 反射シートの優位が崩れ、投資が空振りに終わる 利益 10 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,237 円115 億円
反射シートが優位を失う。競合の大手が値下げで攻勢をかけ、国ごとの規格の変更で自国メーカーが優遇される。数量も単価も落ちる。電子・機能製品では、中国企業が中位品の価格を崩す。建材は住宅の縮小で赤字になり、エンジニアリングも受注が細る。5年で280億円の設備投資は回収できず、償却の負担だけが残る。全社の営業利益率は3%に落ち、もはや優良な素材メーカーとは言えない。配当は自己資本配当率3%の約束を果たせず、減配に追い込まれる。財務の健全さと現金だけが最後の支えとして残り、事業の売却や再編が経営課題になる。
- 電子・機能製品:数量 7.6(出荷量(千トン、推定))× 価格 230(1トンあたり単価(万円))→ 売上 174 億円・営業利益 9 億円。中国企業の追随で中位品が崩れる
- フィルム・シート製品:数量 12.8(出荷面積(百万平方メートル、推定))× 価格 1,717(1平方メートルあたり単価(円))→ 売上 219 億円・営業利益 15 億円。競合の値下げで数量も単価も落ちる
- 建材関連:数量 6.1(出荷量(千トン換算、推定))× 価格 81(1トンあたり単価(万円))→ 売上 49 億円・営業利益 −2 億円。住宅の縮小で赤字になる
- エンジニアリング:数量 12.0(年間の完成案件数(件、推定))× 価格 2.32(1件あたり売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 0 億円。製鉄投資の一巡で受注が細る
倍率:構造的に負ける筋書き。純利益は10億円ほどに細り、稼ぐ力は1÷kで約130億円。大型投資の減損も出るので、稼ぐ力よりも控えめに、純現金と売れる資産の税後を合わせた床の約115億円に置いた。今の自己資本385億円に0.30倍を掛けた額である。
確率:反射シートが競合の値下げで優位を失い、大型投資が空振りに終わる構造的な負け。利益が一つの事業に偏る会社なので、5%は超える確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子・機能製品
ファインケミカル、医薬品原薬、医農薬中間体、粘着剤・接着剤、半導体用金型クリーニング材、セラミック基板を作る事業。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1トンあたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.4 | 200 | 168 | 15 |
| 10 年後 中立 | 9.9 | 260 | 258 | 23 |
取り方:電子・機能製品の売上168億円を、高付加価値の薬品が中心なので1トンあたり約200万円と見て、出荷量を約8.4千トンと逆算した。開示は無く推定。
フィルム・シート製品
ナンバープレートや標識用の再帰反射シートと、自動車の加飾用フィルムを作る事業。世界シェアは約3割(会社調べ)。
| 数量出荷面積(百万平方メートル、推定) | 価格1平方メートルあたり単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15.0 | 1,493 | 224 | 30 |
| 10 年後 中立 | 18.3 | 2,001 | 366 | 48 |
取り方:フィルム・シート製品の売上224億円を、反射シートの平均単価を1平方メートルあたり1.5千円ほどと見て、出荷面積を約1,500万平方メートルと逆算した。開示は無く推定。
建材関連
住宅用の手すりと樹脂の押出成形品を作る事業。子会社のビニフレーム工業が担う。
| 数量出荷量(千トン換算、推定) | 価格1トンあたり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.2 | 70 | 71 | 1 |
| 10 年後 中立 | 8.6 | 94 | 81 | 1 |
取り方:建材関連の売上71億円を、アルミ手すりと樹脂押出品の平均単価を1トンあたり約70万円と見て、出荷量を約10千トンと逆算した。開示は無く推定。
エンジニアリング
製鉄・化学・電力向けのプラントの設計・施工と、製鉄の脱炭素設備を手がける事業。
| 数量年間の完成案件数(件、推定) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 2.02 | 40 | 2 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 2.71 | 54 | 3 |
取り方:エンジニアリングの売上40億円を、1件あたり約2億円の案件が年に約20件あると見て置いた。案件ごとの規模の差が大きく、推定。
リスクと懸念
利益が反射シート一つに偏る
セグメント利益の6割が反射シートに集中する。ナンバープレートは国ごとの規格に依存し、制度の変更や競合の値下げ、自国メーカーの優遇があれば、全社の利益が大きく崩れる。競合の3Mとエイブリィ・デニソンは世界的な大手である。
計画の未達
前の中期計画は売上620億円、営業利益70億円、ROE12%を掲げたが、実績は499億円、41億円、7%だった。新しい計画は同じ金額を2030年度に先送りしている。実行力に疑問が残り、投資が空振りに終わるリスクがある。
大型の設備投資の負担
設備投資は5年で280億円と、前の計画の3.3倍になる。年間の純利益の約2倍にあたる。電子の化学品の需要が回復しなければ、償却の負担だけが残り、ROEが資本コストにさらに届かなくなる。
電子分野の市況の波
半導体とスマートフォン向けの需要は2〜4年の周期で動く。電子デバイスは調整が長引き、増産投資を先送りした経緯がある。AI向けの先端パッケージが伸びても、周辺の汎用品が足を引っ張る恐れがある。
国内住宅と建材
建材関連の利益率は1%ほどで、国内の住宅着工の縮小が続けば赤字に転じる。会社は増産投資を中止したが、固定費の重さは残る。全社の利益に占める割合は小さいが、足を引っ張る。
中国企業の追随
電子の化学品とセラミック基板の中位品では、中国企業の品質が上がっている。反射シートでも、現地メーカーが育てば新興国向けの数量が奪われる。為替の動きも海外売上の円換算に響く。
エンジニアリングの受注の波
製鉄会社の脱炭素設備は一巡すると、受注が急減する。直近は売上が増えたのに利益が半減しており、案件ごとの採算の振れが大きい。
今後の分かれ目
- 反射シートが欧州と南米で出荷を伸ばし続ける
- フィルム・シート製品の利益率が13%を超え、全社の利益が計画に近づく。強気の筋書きに寄る。
- ナンバープレートの規格が変わる、または競合が大幅に値下げする
- 利益の6割を稼ぐ事業の採算が崩れ、悲観の筋書きに近づく。
- AIサーバー向けの先端パッケージ材料の受注が急増する
- 電子・機能製品の利益率が10%を超え、投資の回収が早まる。
- 2030年度の営業利益70億円の計画が、途中で下方修正される
- 前の計画に続く未達となり、経営への信頼が下がる。配当性向40%の方針だけが値段を支える形になる。
- 配当性向が50%を超え、自社株買いも加わる
- 資本効率の改善が進み、倍率が上がる余地が出る。
- 製鉄会社の脱炭素設備の発注が一巡する
- エンジニアリングの受注が減り、全社の営業利益は小さく減る。
見ておくもの
- フィルム・シート製品の営業利益率(13%を維持できるか)
- 新しい中期計画の初年度の営業利益(45億円の見込みに届くか)
- 電子・機能製品の売上と、先端パッケージ向けの採用
- 配当性向と自己資本配当率の運用(4割・3%を守るか)
- 設備投資の進捗と純現金の減り方
倍率と資本コストの決め方
倍率は今のPER12倍台・PBR0.9倍を見る前に、セグメントごとの数量×価格の積み上げと資本コスト7.5%から、ROEが資本コストを下回る領域の上限1÷kを基準に置いた。中立の結果が今の値段に近いのは、会社の計画より控えめに置いたうえで、還元の強化と反射シートの強さが評価できるためで、株価に寄せたのではない。計画の営業利益70億円は採らず、前の計画の達成度の6割を見た。新リース会計基準で数字の形が変わる点は、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.26→16.16 倍・やや楽観 PER 11.32→14.82 倍・中立 PER 10.62→13.47 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+0.5%を足して8.0%。電子と自動車の需要に左右されるので循環に+0.5、反射シートは世界3割のシェアと規格に守られて値決めに-0.25、借金は純現金で0、利益が反射シート一つに偏るので寿命に+0.25。事業が傾いている様子はなく、extraは0。計画の未達は筋書きの確率で表し、kには足していない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。