結論
アース製薬は、虫ケア用品で国内シェア約6割を持つ日用品メーカーだ。入浴剤、洗口液、園芸・ペット用品も手がけ、食品工場などの衛生管理を請け負うサービス事業も持つ。
筆者の結論は、10年で測ると今の値段はやや割高、というものだ。確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額を2割台半ば下回る。理由は単純で、売上は21期連続で増えてきたのに、利益がなかなか積み上がらなかったからだ。
稼ぎ頭は虫ケアである。全社の売上の3分の1強だが、利益の大半はここから出る。蚊やゴキブリ用品は天候に左右されるものの、ブランドと売り場の強さは本物で、値上げも通りやすい。2025年は猛暑にも助けられ、営業利益は前の年より26%増えた。
弱いのは日用品だ。入浴剤と洗口液は大手が強く、アースはシェアを落としてきた。広告費をかけても利益率は1〜2%にとどまる。中期経営計画の目標は1年早く超えたが、収益の質が変わったかは、まだ見極めが要る。
海外(タイ・マレーシアと中東などへの輸出)と衛生管理サービスが伸びしろだ。それでも筆者は、10年後の営業利益率を5%台前半と見る。資本コスト7.2%に対し、自己資本利益率は8%前後。超過分が薄く、倍率を高く置ける会社ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、アースは「良い部分と、そうでない部分が混ざった会社」だ。
良い部分は虫ケアである。国内の首位で、設備投資も軽く、毎年安定して現金を生む。オーナー利益(再投資を引いた、株主の取り分)の多くはここから出る。
気になるのは、資本の使い方の歴史だ。売上を広げるために品目と事業を増やしたが、利益率は上がらなかった。近年は品目を3割削り、バスクリンを合併し、まず足元を固めている。この方向は正しい。ただ、手元の現金と100億円の待機資金が、また低採算の買収に向かわないか。筆者はそこをいちばん注視する。
10年後も事業があり、今より強いか。虫ケアは「強いまま」、日用品は「分からない」、衛生管理は「やや強くなる」と見る。予測の確信度は中程度だ。
安全域は、今の値段にはない。10年の稼ぐ力と、自己資本利益率8%前後で測ると、払ってよい値段は今より低い。純現金は魅力だが、時価総額の1割強で、季節の運転資金を引けば実質はもっと薄い。安全域を取るには、今より大きく低い値段が要る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は家庭用品事業で、全社売上の約8割を占める。
中心は虫ケア用品だ。アースノーマット、アースジェット、ブラックキャップなどのブランドを持ち、国内の金額シェアは約6割。市場は1,300億円前後で、アースが断トツの首位、金鳥とフマキラーが追う。2025年の売上は約680億円。国内のほか、タイやマレーシアなどアジアと、中東を中心とする輸出がある。
日用品は、入浴剤(バスクリン、きき湯、温泡、BARTH)、洗口液モンダミン、消臭芳香剤、除湿剤、冷却用品などの寄せ集めだ。売上は約700億円。コロナ禍で品目を広げすぎ、広告費が分散した。品目を3割減らして立て直している最中で、2026年1月には子会社のバスクリンを吸収合併した。
園芸(2025年にプロトリーフを連結)とペット用品を合わせた売上は約190億円。まだ小さい。
もう1つの柱が総合環境衛生事業だ。子会社のアース環境サービスが、食品・医薬品工場の防虫・防鼠、異物混入対策、衛生監査を年間契約で請け負う。売上は約340億円、利益率は4〜5%。景気に左右されにくい積み上げ型の収益で、2026年にはシンガポールの同業を買収し、アジアに拠点を作った。
利益には強い季節性がある。虫ケアの出荷が集中する上期に1年分以上を稼ぎ、下期は赤字になる。期末の現金には、季節の運転資金が含まれる。
優良さと弱いところ
堀の中身は、虫ケアのブランドと売り場の支配力だ。
殺虫剤は、効き目を信じられるブランドが選ばれる商品である。アースは長年の広告と、ドラッグストアや量販店との取引で、棚の主役になった。国内シェア約6割は、2位以下を大きく引き離す。ここは強い。
問題は、堀が全社に広がっていないことだ。入浴剤は花王のバブが最大手で、アースグループ全体で約4割、アース単体は1割台。洗口液も2割弱で、大手との消耗戦が続く。ブランドが利益を生まない領域まで、事業を広げた過去がある。
数字がそれを示す。売上は2005年から増え続けているのに、営業利益率は過去10年の多くの年で2〜5%台だった。2018年12月期は営業利益が10億円まで落ちた。値決めの力は虫ケアに偏り、その虫ケアも天候に振り回される。
資本効率も平凡だ。自己資本利益率は過去10年の中央値で6%台で、資本コストに届かない年が多い。借金は少ない。ただ、手元の現金には季節の運転資金が混じる。
筆者は、堀を「強い」とまでは言えないと見る。虫ケアは強く、ほかは普通以下。全体では普通の堀だ。2023年以降は品目削減と価格改定で収益構造を直し始めたが、実績はまだ2〜3年分しかない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
虫ケアは、人口が減っても需要が崩れにくい市場だ。
国内の殺虫剤は1,300億円前後で、量はほぼ横ばい。蚊やゴキブリは人口が減っても出る。暖かい日が増える温暖化は、使う期間を延ばす追い風になる。会社が「年間定番商品化」を掲げるのはそのためだ。一方、売れ行きは夏の気温で毎年ぶれる。同業のフマキラーは2026年3月期、春先の天候不順で国内が減収となり、営業利益が2割近く減った。
競合は、金鳥(大日本除虫菊)とフマキラーが中心。アースの強みは、シェア約6割と、小売店の棚への発言力だ。ただし、価格を上げすぎればプライベートブランドや安価な輸入品に客を取られる。
海外は成長の源だが、規模はまだ小さい。ASEANは蚊が多い気候で、虫ケアの需要が根強い。アースはタイで首位を狙い、マレーシアでもシェアを広げている。中国はネット販売中心の戦略を改め、実店舗の小売りへ切り替えた。輸出は約50か国に及ぶ。
入浴剤は市場が約560億円で、2025年は前年比3%増えた。単価の高い発泡錠や機能品が伸び、粉末は苦しい。洗口液は競争が激しい。この2つが、日用品の足を引っ張っている。
衛生管理サービスは、食品工場の異物混入が社会問題になり、需要が増えている。ただし人手が先に詰まる事業でもある。
資本政策と M&A
資本政策は、守りの配当と、小ぶりの買収の組み合わせだ。
配当は純資産配当率4%台を目安にする。2025年は配当性向52%で、前の年より増配した。2026年はさらに増配の予定だ。自社株買いは「機動的に検討」とあるだけで、大きくは使っていない。
中期経営計画(2024〜26年)は、3年で営業キャッシュ約275億円を見込み、約300億円を投資に回す。設備とITに150億円、構造改革に50〜60億円、買収の待機資金に100億円だ。借入も使い、自己資本に対する借金の比率を0.3〜0.4倍まで許す。今は純現金だが、会社は財務を攻めに使う姿勢だ。
買収は小粒である。2022年にBARTH事業を譲り受け、2025年にプロトリーフを連結し、2026年にシンガポールの衛生管理会社2社を買った。上場以来の提携・買収は13件。2008〜11年にはフマキラー株を買い増したが、防衛策に阻まれて売却した前歴がある。
大塚グループが議決権の約25%を持つ。親会社ではないが、大塚ホールディングスにとっては関連会社だ。再編が起きるとき、無視できない存在になる。TOBや再編で値が付く可能性はあるが、本質価値はそれを織り込まずに測った。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アースは、売上を21期連続で増やし、中期経営計画の利益目標を1年早く超えた。価格改定と品目削減が効き、収益構造は変わり始めている。2026年は営業利益90億円、2027年は100億円が視野に入る。
虫ケアは国内シェア6割の首位で、温暖化で使う期間が延びる。海外は、タイとマレーシアでシェアが伸び、輸出は約50か国に広がった。海外売上は2026年に250億円が目標で、まだ入口にすぎない。
衛生管理サービスは、食品・医薬品工場の需要が強い。年間契約が積み上がる事業で、景気に左右されにくい。シンガポールの買収で、アジアの日系工場にも広がる。
入浴剤と洗口液は、バスクリンの合併とモンダミンの全面刷新で、シェアを取り返す準備が整った。ここで利益率が3〜5%まで戻れば、全社の営業利益率は6%台に乗る。
財務は純現金で、100億円の買収余力もある。配当は増え続け、大塚グループという安定株主もいる。2027年からの次の中期経営計画で、利益率の目標を一段上げる余地もある。
慎重な見方
売上が増えても、利益は増えなかった。これが20年の実績だ。2025年の利益増は猛暑と価格改定に助けられた面が大きく、冷夏が一度来れば元に戻る。フマキラーが2026年3月期に天候不順で減益になったことが、その危うさを示す。
日用品は構造的に弱い。入浴剤は花王が強く、洗口液は大手との消耗戦だ。品目を削っても、広告費をかけなければシェアを守れず、かければ利益が出ない。バスクリンの合併も、今のところ売上を増やす話ではなく、コストを削る話だ。
海外は、中国が思うように伸びず、戦略をネット重視から実店舗重視へ切り替えている。ASEANは現地勢と価格で戦うため、利益率が薄い。
衛生管理サービスは人手が命で、人件費の上昇を価格に転嫁しきれない。利益率はここ数年、4〜5%に張り付いたままだ。
資本の使い方にも不安が残る。100億円の待機資金と借入を使う方針は、過去の低採算の拡大を思い出させる。中東情勢で原材料も上がり、2026年だけで約10億円の利益が飛ぶ。自己資本利益率8%前後では、資本コストをわずかに上回るだけで、高い倍率に値しない。
どちらに重みを置いたか
虫ケアの強さについては、強気の見方が正しい。だが利益が全社に広がる確かな証拠は、まだ2〜3年分しかなく、20年の実績と天候への弱さは軽くない。確率は中立を軸に、やや悲観・悲観に計36%を置いた。中立では営業利益率5%台前半、自己資本利益率8%前後で、倍率は1÷資本コストに近い13倍台になる。この倍率では、10年後の時価総額に配当を足しても、今の時価総額から年率3%強しか増えず、資本コストの7.5%に届かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 5,599 円1,227 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,721 円377 億円)。 今の値に割り戻すと 4,009 円879 億円、今との差 −18.8%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 10,236 円2,244 億円 | 2,281 円500 億円 | +153.4% | +9.7% | 1,001 円219 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,819 円1,714 億円 | 2,053 円450 億円 | +99.8% | +7.2% | 1,974 円433 億円 |
| 中立 | 36% | 6,099 円1,337 億円 | 1,825 円400 億円 | +60.4% | +4.8% | 2,853 円625 億円 |
| やや悲観 | 24% | 3,160 円693 億円 | 1,460 円320 億円 | −6.5% | −0.7% | 1,109 円243 億円 |
| 悲観 | 12% | 2,190 円480 億円 | 1,004 円220 億円 | −35.3% | −4.3% | 383 円84 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,599 円1,227 億円 | 1,721 円377 億円 | +48.2% | +4.0% | 7,320 円1,605 億円 |
今の株価時価総額 4,940 円1,083 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:海外が柱になり、日用品が稼げる事業に変わる 利益 135 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 10,236 円2,244 億円
10年後、海外が全社売上の5分の1を超え、日用品が稼げる事業に変わっている。
タイとマレーシアで虫ケアが首位に立ち、中東・北米への輸出も広がる。国内は温暖化で使う期間が延び、年間定番商品として返品が減る。虫ケアの営業利益率は9.8%まで高まる。
入浴剤はバスクリンの合併で広告の効率が上がり、BARTH など高単価品が伸びる。モンダミンも若年層をつかみ、日用品の営業利益率は5%に届く。
衛生管理サービスは、シンガポールを足がかりにアジアの日系工場へ広がり、利益率は5.5%まで上がる。
全社の営業利益は200億円、利益率は6.9%。過去20年の最高だった6%台前半を上回る。買収は小粒のままで、配当は着実に増える。
- 虫ケア用品(国内・海外):数量 2.9(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 402(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 1,166 億円・営業利益 114 億円。営業利益率9.8%
- 日用品(入浴剤・洗口液・消臭芳香剤ほか):数量 4.4(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 201(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 884 億円・営業利益 44 億円。営業利益率5.0%
- 園芸・ペット用品ほか:数量 1.1(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 268(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 295 億円・営業利益 10 億円。営業利益率3.5%
- 総合環境衛生(工場の衛生管理サービス):数量 2,200(従事者数(人、推定。実質の数量))× 価格 2,673(1人あたり売上(万円、名目))→ 売上 588 億円・営業利益 32 億円。営業利益率5.5%
倍率:事業の純利益 135 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.20% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.62 倍、時価総額 2,244 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:虫ケアの強さに加え、日用品の利益率改善と海外の拡大が同時に当たる必要がある。過去 20 年、売上は増えても利益率は上がらなかったので、確率は 1 割を割る。
やや楽観 20% やや楽観:中期経営計画の方向が、おおむね当たる 利益 110 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 7,819 円1,714 億円
海外と虫ケアが伸び、日用品の改善は半分だけ進む10年だ。
虫ケアは国内が横ばい、海外が年8%ほどで伸び、営業利益率は9%になる。入浴剤は市場の伸びに追いつき、洗口液はシェアを守る。日用品の利益率は4%へ上がる。
衛生管理サービスは契約が年1〜2%ずつ増え、人件費の転嫁も進んで、営業利益率は5.2%になる。
全社の営業利益は165億円、利益率は6.1%。売上は約2,700億円。会社が描く方向がほぼ実現した姿だが、日用品の弱さは残る。買収は小粒で、大きな失敗もない。2036年を前に、次の中期経営計画の目標も達成できている。
- 虫ケア用品(国内・海外):数量 2.6(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 402(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 1,045 億円・営業利益 94 億円。営業利益率9.0%
- 日用品(入浴剤・洗口液・消臭芳香剤ほか):数量 4.2(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 201(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 844 億円・営業利益 34 億円。営業利益率4.0%
- 園芸・ペット用品ほか:数量 1.1(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 268(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 281 億円・営業利益 8 億円。営業利益率3.0%
- 総合環境衛生(工場の衛生管理サービス):数量 2,100(従事者数(人、推定。実質の数量))× 価格 2,673(1人あたり売上(万円、名目))→ 売上 561 億円・営業利益 29 億円。営業利益率5.2%
倍率:事業の純利益 110 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.20% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.58 倍、時価総額 1,714 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格改定・品目削減・海外拡大という中計の方向が、おおむね当たる筋書き。直近の増益の実績があるので 2 割を置いた。
中立 36% 中立:国内は横ばい、海外と値上げの分だけ伸びる 利益 91 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 6,099 円1,337 億円
国内は横ばいで、海外と値上げの分だけ伸びる10年だ。
虫ケアは国内の数量が変わらず、海外の伸びで全体が15%増える。単価は物価並みに上がる。営業利益率は今と同じ8.5%前後で、天候の当たり外れは平均すればならされる。
日用品は数量が5%ほど減る。入浴剤は高単価品が支え、洗口液は現状を保つが、広告費は減らせない。利益率は3%にとどまる。
衛生管理サービスは人手が上限になり、従事者は18%増にとどまる。
全社の営業利益は139億円、利益率は5.4%。2025年の81億円からは増えるが、売上の伸びの大半は物価の分にすぎない。配当は純資産配当率4%台の方針どおり、着実に続く。
- 虫ケア用品(国内・海外):数量 2.4(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 402(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 965 億円・営業利益 82 億円。営業利益率8.5%
- 日用品(入浴剤・洗口液・消臭芳香剤ほか):数量 4.1(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 201(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 824 億円・営業利益 25 億円。営業利益率3.0%
- 園芸・ペット用品ほか:数量 1.0(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 268(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 268 億円・営業利益 7 億円。営業利益率2.5%
- 総合環境衛生(工場の衛生管理サービス):数量 2,000(従事者数(人、推定。実質の数量))× 価格 2,673(1人あたり売上(万円、名目))→ 売上 535 億円・営業利益 26 億円。営業利益率4.8%
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.20% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.69 倍、時価総額 1,337 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の数量は横ばいで、物価並みの値上げと海外の伸びが乗る中心の筋書き。20 年の実績から、利益率の大幅な改善は見込まない。
やや悲観 24% やや悲観:天候と競争に削られ、値上げも通りにくい 利益 60 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 3,160 円693 億円
天候と競争に削られ、値上げも思うように通らない10年だ。
国内の虫ケアはプライベートブランドや安価な輸入品に押され、単価の上昇が物価に追いつかない(10年で27%増にとどまる)。海外は伸びても、現地勢との価格競争で利益が薄い。虫ケアの営業利益率は7%に下がる。
入浴剤と洗口液はシェアの低下が続き、日用品は数量が14%減る。利益率は1.5%に沈む。
衛生管理サービスは人件費の転嫁が遅れ、営業利益率は4%に下がる。
全社の営業利益は92億円、利益率は4.1%。2025年をわずかに上回るだけで、構造改革は定着しなかったことになる。配当は据え置きが精いっぱいだ。
- 虫ケア用品(国内・海外):数量 2.2(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 382(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 840 億円・営業利益 59 億円。営業利益率7.0%
- 日用品(入浴剤・洗口液・消臭芳香剤ほか):数量 3.7(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 190(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 703 億円・営業利益 11 億円。営業利益率1.5%
- 園芸・ペット用品ほか:数量 0.9(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 254(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 229 億円・営業利益 3 億円。営業利益率1.5%
- 総合環境衛生(工場の衛生管理サービス):数量 1,850(従事者数(人、推定。実質の数量))× 価格 2,540(1人あたり売上(万円、名目))→ 売上 470 億円・営業利益 19 億円。営業利益率4.0%
倍率:ROE 6.1%で k を下回る。RONIC=k 7.2%+1/2×(6.1−7.5)=6.8%、g 3.0% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.4 倍。ためた利益は額面より低い価値なので、上限(1÷k=13.3 倍)を下回る 11.0 倍に置いた。
確率:天候の振れと日用品の競争が利益を削り続ける筋書き。20 年の実績に近く、売上が増えても利益が付いてこなかった歴史があるので、他の日用品大手よりやや厚めに置いた。
悲観 12% 悲観:虫ケアの首位が崩れ、日用品は赤字に沈む 利益 22 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 2,190 円480 億円
ブランドも収益構造も崩れ、優良さを失う10年だ。
虫ケアの国内シェアは、プライベートブランドと海外勢、規制の強化に削られ、6割から4割台に落ちる。単価は物価の半分ほどしか上がらず、営業利益率は4.5%まで下がる。海外は為替と現地勢の価格競争で、利益が出ない。
入浴剤と洗口液は広告を減らさざるを得ず、シェアを失う。日用品は営業赤字になり、ブランドの減損も出る。
衛生管理サービスは人件費の高騰を転嫁できず、利益率は2.5%に落ちる。
全社の営業利益は32億円、利益率は1.9%。配当は大きく減らされる。値打ちは、純現金と、売れる工場・土地・在庫・有価証券の税後で測ることになる。
- 虫ケア用品(国内・海外):数量 1.8(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 340(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 612 億円・営業利益 28 億円。営業利益率4.5%
- 日用品(入浴剤・洗口液・消臭芳香剤ほか):数量 3.2(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 165(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 528 億円・営業利益 −5 億円。営業利益率-1.0%
- 園芸・ペット用品ほか:数量 0.8(出荷個数(億個、推定。実質の数量))× 価格 220(1個あたりの平均出荷単価(円、名目))→ 売上 176 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
- 総合環境衛生(工場の衛生管理サービス):数量 1,700(従事者数(人、推定。実質の数量))× 価格 2,200(1人あたり売上(万円、名目))→ 売上 374 億円・営業利益 9 億円。営業利益率2.5%
倍率:優良さを失い利益が細る筋書きなので、稼ぐ力(純利益 22 億円÷k=約 290 億円)でなく売れる資産で測る。純現金と、土地・工場・在庫・投資有価証券の売却価値(税後)の合計 約 480 億円を床とし、今の自己資本 749 億円に 0.641 倍を掛けた。
確率:虫ケアの国内首位が崩れ、日用品も赤字に沈む構造的な負け。首位の堀は厚く、純現金もあるので、1 割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
虫ケア用品(国内・海外)
アースノーマット、アースジェット、ブラックキャップなどの蚊・ハエ・ゴキブリ用品と虫よけ。全社利益の大半を生む柱で、国内の金額シェアは約6割。
| 数量出荷個数(億個、推定。実質の数量) | 価格1個あたりの平均出荷単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.1 | 300 | 627 | 52 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 402 | 965 | 82 |
取り方:虫ケア部門の売上 676.5 億円から、家庭用品事業の内部売上(約 7%)を引いた約 627 億円を外部売上とした。国内の市場は約 1,300 億円で、小売ベースのシェア 59.2%、海外はタイ・マレーシアと約 50 か国への輸出。平均の出荷単価を price 欄の値(円、名目)と置き、個数は逆算した推定。営業利益 52 億円は、家庭用品事業 65.0 億円を虫ケア 8%台・日用品 1〜2%・園芸ペット 1% 台に割って推定(開示なし)。
日用品(入浴剤・洗口液・消臭芳香剤ほか)
入浴剤(バスクリン・きき湯・温泡・BARTH)、洗口液モンダミン、消臭芳香剤、除湿剤、冷却用品。品目が多く、利益率が低い。
| 数量出荷個数(億個、推定。実質の数量) | 価格1個あたりの平均出荷単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.3 | 150 | 645 | 11 |
| 10 年後 中立 | 4.1 | 201 | 824 | 25 |
取り方:日用品部門 696.1 億円(入浴剤 264.9・洗口液 92.3・その他 338.9)から内部売上分を引いた約 645 億円。平均単価は入浴剤・洗口液は中価格帯、除湿剤や消臭剤は低価格帯であることを踏まえ price 欄の値(円、名目)と置いた推定。入浴剤市場は 561 億円で横ばい〜微増、シェア低下を止められるかが焦点。
園芸・ペット用品ほか
園芸用殺虫剤・除草剤・培養土(プロトリーフを 2025 年に連結)とペット用品(猫砂・ケア用品)。まだ小さい。
| 数量出荷個数(億個、推定。実質の数量) | 価格1個あたりの平均出荷単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.9 | 200 | 180 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 268 | 268 | 7 |
取り方:園芸 80.0 億円とペット・その他 113.9 億円の合計から内部売上分を引き約 180 億円。単価は培養土の大袋と猫砂、ケア用品の平均で price 欄の値(円、名目)と置いた推定。営業利益は開示がなく、1% 台と推定。
総合環境衛生(工場の衛生管理サービス)
子会社のアース環境サービスが、食品・医薬品工場の防虫・防鼠・異物混入対策・衛生監査を年間契約で請け負う。
| 数量従事者数(人、推定。実質の数量) | 価格1人あたり売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,700 | 1,995 | 339 | 15 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 2,673 | 535 | 26 |
取り方:売上 341.5 億円から内部売上 2.3 億円を引いた約 339 億円。連結従業員 4,963 人のうち、サービス事業の従事者を約 1,700 人と推定し、1 人あたり売上 1,995 万円を逆算した。契約件数と契約金額は年 7% 増えているが、現場の人手が供給の上限になる。セグメント利益 15.3 億円(利益率 4.5%)は開示値。
リスクと懸念
天候で利益が大きく振れる
虫ケアの出荷は夏の気温と梅雨の長さで毎年ぶれる。冷夏や春先の天候不順が重なれば、上期の利益が薄くなり、通期の営業利益が数十億円単位で減る。2018年12月期は営業利益が10億円まで落ちた。同業のフマキラーも2026年3月期に天候で減益となった。
日用品でシェアを失い続ける
入浴剤は花王が最大手で、洗口液も大手との競争が厳しい。品目を3割削り、モンダミンを刷新しても、広告をかけなければシェアを守れず、かければ利益が出ない。バスクリンの合併で立て直せなければ、日用品は長く赤字すれすれが続く。
原材料高と中東情勢
殺虫成分や容器、噴射剤、物流のコストは、中東情勢などで上がる。2026年は原材料・資材高で約10億円の利益が押し下げられる見込みだ。秋からの価格改定で吸収する計画だが、値上げは棚の確保や返品の交渉とセットで、簡単ではない。
待機資金の使い方
中計は買収の待機資金に100億円を置き、借入で自己資本の0.3〜0.4倍まで財務を使う方針だ。過去には品目と事業を広げて利益率が上がらなかった。大きな買収が低採算のまま終わると、純現金の強みが消え、資本コストを下回る投資が積み上がる。
衛生管理サービスの人手と人件費
総合環境衛生事業は現場の人手が売上の上限になる。人件費は物価以上に上がりやすく、年間契約の価格に転嫁しきれないと、利益率は4〜5%に張り付いたままになる。シンガポールの買収も、現地での人材確保と統合が成否を分ける。
海外展開の採算
海外売上は2026年に250億円を目標とするが、中国は戦略の転換中で、ASEANは現地勢との価格競争がある。輸出は為替と中東情勢の影響を受ける。売上が伸びても、現地法人の固定費と広告費がかさみ、全社の利益に結びつかない恐れがある。
今後の分かれ目
- 冷夏や春先の天候不順で、国内の虫ケアの出荷が前年を大きく下回ったら
- 天候の振れが利益を左右する構造が改めて出たことになる。2025年の増益が天候頼みだった見方が強まり、やや悲観・悲観の確率を上げてよい。
- 日用品(入浴剤・洗口液)の営業利益率が、バスクリン合併後に3%を超えて続いたら
- 品目削減と広告の集中が効いた証拠として、やや楽観・楽観の確率を上げてよい。1〜2%のままなら、慎重な見方が当たっている。
- 海外売上が250億円の目標を超え、タイで虫ケアの首位が確実になったら
- 海外が第2の柱になる道筋が見える。虫ケアの数量の伸びを上方に直し、楽観側の確率を上げてよい。
- 待機資金100億円を使った大型の買収が、利益率の低い事業に向かったら
- 過去の拡大路線の再来として、悲観側の確率を上げる。買収先の利益率が全社の水準を上回るなら、評価は変わる。
- 大塚グループが持分を増やす、または再編・TOBの動きが出たら
- 値が付く可能性は高まるが、本質価値は変わらない。買収価格と10年後の価値の差だけを見て判断する。
- 次の中期経営計画(2027年〜)で、営業利益率の目標が6%を超える水準に引き上げられたら
- 会社自身が構造改善に自信を持った印と読める。実績が伴うかを2年見てから、確率を動かす。
見ておくもの
- 虫ケアの国内出荷と、夏の気温・梅雨の長さの関係
- 日用品の営業利益率(バスクリン合併後の動き)
- 海外売上と、タイ・マレーシアでの虫ケアのシェア
- 総合環境衛生事業の年間契約件数と営業利益率
- 待機資金の使い道(買収の発表)と純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コストをわずかに上回るだけという事業の経済性から、正当化 PER の式と 1÷k の下限で決めた。今の PER(約 21 倍)と PBR(約 1.4 倍)は、最後に比べただけで、倍率の根拠にしていない。数量は実質(個数・人数)、価格は物価 3% 込みの名目(虫ケアの国内は中立で 10 年 1.34 倍、悲観で物価の半分ほど)で積んだ。セグメント利益の内訳は開示がなく推定で、家庭用品事業 65.0 億円の割り振りが最大の不確実性。賃借は営業拠点が中心で小さく、新リース会計(2028 年 3 月期ごろ)の影響は小さいが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.4→16.62 倍・やや楽観 PER 13.9→15.58 倍・中立 PER 13.4→14.69 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0。個別のリスク(資本配分・大塚グループの存在・買収の実行)は k に足さず、筋書きと確率で表した。同じ領域の花王(−0.5)より循環が大きく、資生堂・コーセー(+0.5)より事業が安定しているので、その中間に置いた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.20%。