結論
三和油化工業は、工場から出る廃溶剤や廃酸を引き取り、再生品として売り直す会社だ。ごみを処理して代金をもらい、再生した製品を売ってもう一度稼ぐ。この二度取りの形が事業の骨格である。
筆者の結論は、今の時価総額は10年の本質価値を大きく上回る、つまり割高というものだ。理由は二つある。資本コストが7.75%と高めで、ROEがそれを下回ること。そして北九州に約80億円の新工場を建てるため、借金が増えて利益の伸びを削ることだ。
足元は好調だ。2026年3月期の売上は203億円と26%伸び、営業利益は15億円とほぼ倍になった。ただ、この増収は合弁の新工場と、貴金属を回収する子会社の買収が効いた面が大きい。投資が先に出て、利益が後から付いてくる局面にある。
廃棄物の再資源化は、許可が要る商売で、同業の新規参入が難しい。この点は評価できる。ただし、再生品の値段は原油や貴金属の相場に連動し、利益は大きく揺れる。筆者は、安定した稼ぎを前提に高い倍率を払える会社とは見ていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社の最も気になる点は、利益を現金に変えられているかだ。純利益の大半は設備投資と借入の返済に消え、株主の手元に残るお金は小さい。成長のための投資が、資本コストを超える稼ぎを生むかどうかで価値が決まる。
事業は許可制で守られているが、再生品の相場に左右されるため、利益の質は高くない。2025年3月期に利益が半分以下に落ちたことを忘れてはならない。好調な年の利益を永続するものと見ると、倍率を払いすぎる。
安全域は薄い。今の時価総額は、中立の筋書きでも10年後の価値を上回る。新工場が計画どおり動き、相場が味方をする楽観の筋書きでようやく釣り合う水準である。投資の効果が見えるまでは、割高だと考える。
経営への評価は、事故のないことと、投資の規律にかかる。許可制の事業で信用を失う事故は、利益の何年分にも相当する損失になる。筆者は、安全の実績が続くかを数字の何よりも重く見る。
何で稼ぐ会社か
事業は五つに分かれる。リユースは、製造業の工場から出た使用済みの溶剤や酸を引き取り、精製して再生品として売る。2026年3月期の売上は72億円で前期の1.8倍に増えた。リサイクルは、産業廃棄物をセメントや鉄鋼の副原料に変える事業で、売上は59億円だ。
化学品は高純度溶剤や溶剤の小分け販売、受託製造で、売上は32億円。自動車は潤滑油や洗浄剤などの副資材で23億円。エンジニアリングは設備工事で、売上は16億円と6割伸びた。
稼ぎ方には特徴がある。廃棄物を引き取る時に処理料をもらい、再生品を売る時にもう一度稼ぐ。引き取る量が増えれば処理料が入り、再生品の相場が上がれば販売益が増える。逆に相場が下がると、再生品の販売益が縮む。
拡大も進んでいる。2024年にエア・ウォーター・マテリアルと合弁会社を作り、北九州市に新工場を建設中だ。投資予定額は80億円で、2027年3月に完了する。2025年10月には、貴金属やレアメタルを回収する大阪のエー・アンド・エイチ・ジャパンを子会社にした。連結の従業員は約460人である。
優良さと弱いところ
強みは、許可と技術にある。産業廃棄物の収集・処理は都道府県の許可が必要で、新たに工場を建てても近隣の同意や設備の審査に時間がかかる。溶剤の精製は品質の安定が難しく、顧客の工場と長く取引できる。顧客の側から見れば、廃液を安全に任せられる相手を変える理由は少ない。
ただし、堀として強いとは言えない。リユースの再生品は、石油化学品や貴金属の相場に値段が引っ張られる。リサイクルは受入料が競争で決まり、大手の環境企業が同じ領域に参入すれば、価格は下がる。筆者は堀を普通とみる。
資本効率は平凡だ。過去5年のROEの中央値は約9%で、2025年3月期には4.8%まで落ちた。営業利益率は5%から11%の間で揺れており、安定していない。2017年には茨城の事業所で従業員が亡くなる事故があり、可燃物を扱う事業の安全管理は、経営の質を測る最も重要な項目になる。
財務は、まだ堅い。自己資本比率は51%だが、新工場の投資で借金が増え、純有利子負債は58億円まで増えた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
製造業の工場から出る廃溶剤や廃酸の量は、国内の生産が横ばいから微減のため、増えない。一方、廃棄物を捨てるのでなく資源として使う流れは強まっている。半導体や電子部品の工場は、高純度の溶剤を再生して使う動きが広がり、品質の高い再資源化が求められる。
再生品の値段は、新品の溶剤や原料の相場に連動する。原油が上がれば再生品も上がり、下がれば追いかけて下がる。貴金属の回収は、金やパラジウムなどの相場がそのまま利益になる。こうした相場の変動は、会社が自分で選べない。
廃棄物の処理は許可制で、設備を作るのに数年かかる。このため供給は絞られ、既存の事業者は処理料を守りやすい。しかし需要側の工場が国内から海外に移れば、引き取る量は減る。
コストは物価と人件費で増える。運搬と労働力の確保が難しく、2024年問題と呼ばれる運転手の不足で運賃が上がった。脱炭素の規制で炭素税が入れば、処理の費用も増える。環境面の規制が厳しくなる流れは、許可を持つ会社には追い風だが、コストの面では重しになる。
競争の姿は、地域ごとに違う。西日本では大手の環境企業が総合的に受け皿を広げ、関東では中堅の再生業者が溶剤に特化して張り合う。三和油化工業は溶剤と酸に強みを持つ専門業者で、総合力では大手に劣るが、品質で選ばれる顧客を持つ。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は年1回で、2026年3月期の総額は約2億円。純利益に対する性向は約2割にとどまる。自社株買いの実績はなく、株主優待もない。
資金の使い道は投資が優先されている。2026年3月期の設備投資は約40億円で、北九州の新工場が約28億円を占める。今後は家下工場に約11億円を投じる。新工場の総額80億円のうち、既払いは約28億円で、残りは借入で賄う可能性が高い。
M&Aは小さく、2025年にエー・アンド・エイチ・ジャパンを現金約2億円で子会社にした。貴金属回収の技術を取り込む狙いだ。ほかの食品や電子の会社にも買われる側になりうるが、確率の話であり、筋書きの前提にはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
廃溶剤の再資源化は、半導体や電子部品の工場が増えるほど需要が拡大する。北九州の新工場は、西日本の半導体関連の集積地に近く、処理量を大きく増やせる。リユースの売上は2026年3月期に82%伸びたが、これは入口に過ぎない。
貴金属の回収は、相場の上昇が追い風だ。エー・アンド・エイチ・ジャパンの技術が加われば、レアメタルを含む廃棄物の処理料が増える。許可を持つ会社だけが、この高付加価値の廃棄物を引き取れる。
合弁相手のエア・ウォーター・マテリアルは大手で、販売網と技術を提供する。単独では難しかった大型投資を実行できたことは、会社の信用が高まった証拠だ。
脱炭素の規制が強まれば、廃棄物を捨てず資源にする流れは加速する。物価が年3%で続く世界では、処理料と再生品の値段は共に上がり、設備を持つ会社の価値は増す。
さらに、国内で再生利用の制度が整うほど、許可を持つ会社に仕事が集まる。大手は大型案件を取り、中堅は専門品目で囲い込む。専門性の高い溶剤の再生は、規模が小さくても利益率が出やすい分野だ。
慎重な見方
2025年3月期の営業利益は8億円と前期のほぼ半分で、利益率は5%まで落ちた。再生品の相場と処理量の変動が、そのまま利益に出る体質である。2026年3月期の好調は、新規の寄与と相場に支えられており、永続の保証はない。
新工場の80億円は、純資産の6割に当たる大きな賭けだ。稼働が遅れる、顧客の廃棄物量が想定を下回る、相場が下がるといった事態が重なれば、償却と利払いが利益を削る。借入の金利は上がっており、純有利子負債は58億円まで増えた。
事業の安全リスクも大きい。可燃性の溶剤を扱い、過去に爆発・火災事故や死亡事故もあった。重大な事故が起これば、操業停止と許可の取り消しにつながりうる。
競争も無視できない。大手環境企業が参入すれば処理料は下がる。需要側の工場が海外に移れば、国内の廃棄物量は減る。ROEが資本コストを下回る会社に、高い倍率は払えない。
加えて、貴金属や溶剤の再生は、顧客の生産が落ちれば廃棄物自体が減る。景気の影響を受けないと見るのは誤りで、半導体や電子部品の不況では、廃液の量も再生品の需要も同時に減る。固定費の重い設備では、稼働率の低下が利益を直撃する。
どちらに重みを置いたか
許可制と技術という堀は本物だが、利益は相場と投資の成否に大きく左右される。慎重な見方が説得力を持つ。強気の見方は、新工場の稼働と貴金属の相場が揃った時にだけ成り立つ。
そのため、確率は中立にいちばん厚く置き、悲観側にも楽観側と同じ程度の重みを持たせた。ROEが資本コストに届かない会社の倍率は、式の上限である1÷kを使った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,107 円177 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 687 円30 億円)。 今の値に割り戻すと 2,420 円105 億円、今との差 −29.0%、 期待の年率 +3.5%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,435 円321 億円 | 1,088 円47 億円 | +149.9% | +9.6% | 852 円37 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,550 円240 億円 | 879 円38 億円 | +88.5% | +6.5% | 1,286 円56 億円 |
| 中立 | 40% | 4,453 円192 億円 | 717 円31 億円 | +51.6% | +4.3% | 2,068 円89 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,747 円75 億円 | 463 円20 億円 | −35.2% | −4.2% | 442 円19 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,231 円53 億円 | 231 円10 億円 | −57.1% | −8.1% | 146 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,107 円177 億円 | 687 円30 億円 | +40.6% | +3.5% | 4,795 円207 億円 |
今の株価時価総額 3,410 円147 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 新工場が満稼働・貴金属も追い風 利益 23 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 7,435 円321 億円
北九州の新工場が満稼働し、半導体向けの高純度溶剤を中心にリユースの処理量が大きく伸びる。貴金属の回収も相場に乗り、リユースの利益率は12%に上がる。リサイクルと化学品は物価並みに値上げが通る。営業利益は約36億円で、現在の約2.2倍になる。リユースの顧客は半導体と電子部品が中心になり、長期の引き取り契約が増える。本社費は物価で1.34倍に増えるが、増えた売上で吸収する。借入の返済が進み、配当は性向28%に上がる。相場が好調な間に借入を返し、財務の余裕を取り戻す。許可を持つ会社に仕事が集まる構図が強まり、顧客との長期契約で収益が安定する。新工場の償却は先に出るが、稼働率の上昇で吸収できる。
- リユース:数量 6.9(再資源化・販売量(万t相当・推定))× 価格 27(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 184 億円・営業利益 22 億円。数量1.90倍・価格1.34倍・営業利益率12.0%
- リサイクル:数量 13.9(受入・出荷量(万t相当・推定))× 価格 6.76(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 94 億円・営業利益 10 億円。数量1.15倍・価格1.38倍・営業利益率10.5%
- 化学品:数量 2.3(販売量(万t相当・推定))× 価格 22(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 51 億円・営業利益 4 億円。数量1.15倍・価格1.38倍・営業利益率7.5%
- 自動車:数量 1.5(販売量(万t相当・推定))× 価格 21(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。数量1.00倍・価格1.36倍・営業利益率5.0%
- エンジニアリング:数量 84.0(年間の工事件数(件・推定))× 価格 0.36(1件あたり売上(億円。名目))→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。数量1.40倍・価格1.38倍・営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 13.97 倍、時価総額 321 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場の満稼働と相場の上昇が重なる必要があり、条件は厳しい。
やや楽観 20% 新工場が計画どおり立ち上がる 利益 18 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 5,550 円240 億円
新工場は計画どおり立ち上がり、リユースの数量は1.7倍になる。再生品の相場は中位で、利益率は11%。リサイクルは安定する。営業利益は約29億円。化学品は高純度品の比率が上がり、受託製造が伸びる。本社費は物価で増える。純有利子負債は新工場の投資で一時100億円を超えるが、利益で返済が進む。配当性向は26%。相場に助けられる場面もあるが、利益の質は中位にとどまる。投資の回収は計画どおりだが、大手の参入で処理料の上昇は限られる。償却と金利の負担は残り、配当と返済を並行して進める。本社費は物価で増え、人件費と運賃の上昇が利益率を押し下げる。
- リユース:数量 6.2(再資源化・販売量(万t相当・推定))× 価格 26(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 162 億円・営業利益 18 億円。数量1.70倍・価格1.32倍・営業利益率11.0%
- リサイクル:数量 12.7(受入・出荷量(万t相当・推定))× 価格 6.66(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 84 億円・営業利益 8 億円。数量1.05倍・価格1.36倍・営業利益率10.0%
- 化学品:数量 2.1(販売量(万t相当・推定))× 価格 22(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 46 億円・営業利益 3 億円。数量1.05倍・価格1.36倍・営業利益率7.0%
- 自動車:数量 1.4(販売量(万t相当・推定))× 価格 21(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。数量0.95倍・価格1.35倍・営業利益率4.8%
- エンジニアリング:数量 75.0(年間の工事件数(件・推定))× 価格 0.35(1件あたり売上(億円。名目))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。数量1.25倍・価格1.36倍・営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 13 倍、時価総額 237 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:合弁相手の販売網と実績が効く筋書き。
中立 40% 新工場は動くが、相場と借入が重い 利益 14 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,453 円192 億円
新工場が動き、リユースの数量は1.5倍になる。再生品は相場の影響で物価の伸びに届かず、価格は1.30倍。リサイクルと化学品は物価並みで、自動車は縮む。償却費は新工場の分が加わるが、既存の設備は取得価格のまま。営業利益は約23億円。純有利子負債は新工場の投資で一時100億円近くになり、利払いが重い。配当は性向25%を維持するが、自社株買いはない。事業は拡大するが、利益の伸びは借入の利払いと償却で鈍る。名目の売上は1.5倍近くに増えても、純利益は1.3倍程度にとどまる。許可の堀は保たれるが、利益の伸びは物価並みに近い。ROEは6%台で、資本コストに届かない。
- リユース:数量 5.4(再資源化・販売量(万t相当・推定))× 価格 26(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 141 億円・営業利益 14 億円。数量1.50倍・価格1.30倍・営業利益率10.0%
- リサイクル:数量 12.1(受入・出荷量(万t相当・推定))× 価格 6.57(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 79 億円・営業利益 8 億円。数量1.00倍・価格1.34倍・営業利益率9.5%
- 化学品:数量 2.0(販売量(万t相当・推定))× 価格 22(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 43 億円・営業利益 3 億円。数量1.00倍・価格1.34倍・営業利益率6.5%
- 自動車:数量 1.4(販売量(万t相当・推定))× 価格 21(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。数量0.90倍・価格1.34倍・営業利益率4.5%
- エンジニアリング:数量 66.0(年間の工事件数(件・推定))× 価格 0.35(1件あたり売上(億円。名目))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。数量1.10倍・価格1.34倍・営業利益率7.5%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 186 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場が立ち上がる一方、再生品の相場は中位。最も実現しやすい。
やや悲観 20% 相場安と稼働遅れで利益率が低下 利益 7 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,747 円75 億円
稼働が遅れ、再生品の相場も弱い。リユースの利益率は8%に下がる。リサイクルは価格競争で8%まで落ち、自動車と化学品もじり貧になる。営業利益は約13億円。借入の金利が3.5%に上がり、利払いが利益を削る。配当は性向22%に下がる。投資の回収が遅れ、新工場の償却が重くのしかかる。名目の売上は増えても、利益はほとんど増えない。相場の弱さと稼働の遅れが重なり、投資の回収が長引く。顧客の海外移転で処理量も伸びない。本社費は物価で増え続け、運賃と人件費の上昇を価格に乗せきれない。純有利子負債は高止まりし、利払いが重い。
- リユース:数量 4.3(再資源化・販売量(万t相当・推定))× 価格 25(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 109 億円・営業利益 9 億円。数量1.20倍・価格1.25倍・営業利益率8.0%
- リサイクル:数量 10.9(受入・出荷量(万t相当・推定))× 価格 6.27(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 68 億円・営業利益 5 億円。数量0.90倍・価格1.28倍・営業利益率8.0%
- 化学品:数量 1.8(販売量(万t相当・推定))× 価格 21(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。数量0.90倍・価格1.28倍・営業利益率5.0%
- 自動車:数量 1.2(販売量(万t相当・推定))× 価格 20(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。数量0.80倍・価格1.28倍・営業利益率3.5%
- エンジニアリング:数量 54.0(年間の工事件数(件・推定))× 価格 0.33(1件あたり売上(億円。名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。数量0.90倍・価格1.28倍・営業利益率5.0%
倍率:悲観側は稼ぐ力で置く。純利益÷k7.75%=約86億円に対しPER9.0倍。ROEはkを下回り、PERの上限1÷k(約11.8倍)の範囲。
確率:2025年3月期に利益が半分以下に落ちた実績があり、再び起こりうる。
悲観 10% 構造的な負け:大手の参入と顧客の海外移転 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,231 円53 億円
大手が参入して処理料が下がり、顧客の工場の海外移転で数量が減る。新工場の稼働が低迷し、減損が出る。事故や許可の問題が追い打ちをかける。営業利益は約6億円で、利益率は4%台に落ちる。配当は性向15%まで下げ、借入の返済を優先する。減損で自己資本が縮む。設備の稼働が低迷し、一部の拠点を整理する。借入の返済が最優先になり、成長投資は止まる。増強した設備の稼働が上がらず、償却と利払いが営業利益を食う。大手との価格競争で処理料も下がる。再生品の相場も弱く、貴金属の回収も採算が合わない。減損と整理の費用が出て、純有利子負債は返済に回る分だけ減る。
- リユース:数量 3.3(再資源化・販売量(万t相当・推定))× 価格 22(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 72 億円・営業利益 4 億円。数量0.90倍・価格1.10倍・営業利益率6.0%
- リサイクル:数量 9.7(受入・出荷量(万t相当・推定))× 価格 5.64(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 54 億円・営業利益 3 億円。数量0.80倍・価格1.15倍・営業利益率6.0%
- 化学品:数量 1.6(販売量(万t相当・推定))× 価格 18(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。数量0.80倍・価格1.15倍・営業利益率4.0%
- 自動車:数量 1.1(販売量(万t相当・推定))× 価格 18(1万t相当あたり売上(億円。名目))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。数量0.70倍・価格1.15倍・営業利益率3.0%
- エンジニアリング:数量 42.0(年間の工事件数(件・推定))× 価格 0.30(1件あたり売上(億円。名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。数量0.70倍・価格1.15倍・営業利益率4.0%
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)よりも、今の自己資本133億円の4割(約53億円)の方が大きい。廃棄物処理設備は転用が利かず、簿価の半値以下で評価される。ためた利益には掛けない。
確率:大手の参入と事故・許可の問題が重なる。許可制が守る分、さらに悪い筋書きは置かない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リユース
使用済み溶剤・酸・金属を再資源化して再生品として販売(貴金属回収のA&Hを含む)。
| 数量再資源化・販売量(万t相当・推定) | 価格1万t相当あたり売上(億円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.6 | 20 | 72 | 8 |
| 10 年後 中立 | 5.4 | 26 | 141 | 14 |
取り方:売上72.4億円(開示)を平均単価で割った推定の量。貴金属回収の売上が単価を押し上げているので、単価は粗い。セグメント利益は開示がなく、全社15.4億円から推定した。
リサイクル
産業廃棄物をセメント・鉄鋼原料などの副資材として二次利用。
| 数量受入・出荷量(万t相当・推定) | 価格1万t相当あたり売上(億円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.1 | 4.90 | 59 | 6 |
| 10 年後 中立 | 12.1 | 6.57 | 79 | 8 |
取り方:売上59.1億円(開示)を平均単価で割った推定。セグメント利益は推定。
化学品
高純度溶剤・溶剤小分け販売・化学品受託製造。
| 数量販売量(万t相当・推定) | 価格1万t相当あたり売上(億円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 16 | 32 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 22 | 43 | 3 |
取り方:売上32.1億円(開示)を平均単価で割った推定。セグメント利益は推定。
自動車
潤滑油・加工油・洗浄剤・自動車副資材の製造販売。
| 数量販売量(万t相当・推定) | 価格1万t相当あたり売上(億円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 16 | 24 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 21 | 28 | 1 |
取り方:売上23.5億円(開示)を平均単価で割った推定。セグメント利益は推定。
エンジニアリング
環境・化学設備の設計・施工。
| 数量年間の工事件数(件・推定) | 価格1件あたり売上(億円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 0.26 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 0.35 | 23 | 2 |
取り方:売上15.6億円(開示、前期比+63.7%)を平均案件規模で割った推定の件数。セグメント利益は推定。
リスクと懸念
再生品の相場
再生溶剤や貴金属の値段は原油や金属相場に連動する。相場が下がれば販売益が縮み、2025年3月期のように営業利益が半分以下に落ちる。会社は相場を選べない。
新工場の投資
北九州の新工場は総額80億円で、純資産の6割に当たる。稼働の遅れや想定を下回る処理量があれば、償却と利払いが利益を削る。2027年3月まで資金流出が続く。
重大事故
可燃性の溶剤を扱い、過去に爆発・火災と死亡事故がある。再発すれば操業停止や許可への影響が出る。
大手の参入と顧客の海外移転
大手の環境企業が同じ領域に参入すれば処理料は下がる。顧客の工場が海外に移れば、国内の廃棄物量が減る。
借入の金利
純有利子負債は58億円で、新工場でさらに増える。金利が3.5%まで上がると、利払いは数億円規模の負担になる。
規模の小ささ
連結従業員は約460人で、人材の確保と技術の継承が課題になる。
今後の分かれ目
- 北九州の新工場が2027年3月に予定どおり稼働し、リユースの利益率が10%を超える
- 中立の筋書きに確率を寄せてよい。償却費の増加を吸収できているかも合わせて確認する。
- 再生品の相場が下がり、営業利益率が6%を割る
- やや悲観の確率を上げる。借入の返済余力を点検する。
- 貴金属の回収が拡大し、A&Hの利益が全社の1割を超える
- 楽観寄りに確率を移す。相場連動の要素が増えるため倍率は上げない。
- 重大事故や許可の問題が起きる
- 悲観の確率を上げる。
- 純有利子負債が100億円を超える
- 利払いを純利益に入れ直す。
見ておくもの
- 北九州工場の稼働率とリユースの売上
- 再生溶剤・貴金属の相場
- 純有利子負債と営業利益率
- 配当性向と投資計画
倍率と資本コストの決め方
倍率はROEがk7.75%を下回るため上限1÷k(約11.8倍)の範囲で置き、中立は9.5倍。今の株価・過去のPERは使っていない。数量は売上からの推定で粗いが、10年の増減率と価格の考え方は国内の成熟需要と相場連動の再生品に沿う。償却は既存設備を取得価格のまま、新工場の分だけ新価格で足した。新リース会計基準で数字の形が変わる点は、今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→13.97 倍・やや楽観 PER 11→13 倍・中立 PER 9.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。