結論
児玉化学工業は、2025 年 4 月にダイヤメットと柳河精機を傘下に収め、樹脂成形に粉末冶金と鋳鍛造を加えた自動車部品の会社になった。売上は 148 億円から 827 億円へ 5 倍強に増えた。営業利益は 27 億円、売上の約 9 割が自動車向けで、ホンダのグループが約 4 割を占める。
筆者の結論は、今の値段はやや割高ということだ。2026 年 3 月期の純利益は 235 億円だが、その 226 億円は買収に伴う会計上の利益(負ののれん発生益)で、現金は入っていない。これを除くと純利益は 9 億円ほどだ。
時価総額は 94 億円。純資産の 3 分の 1 だが、その純資産は一過性の利益でふくらんでいる。純有利子負債は 42 億円で、経常損益が 2 期連続で赤字になると借入の約束(財務制限条項)に触れる。
売上の中心は内燃機関向けのアルミ鋳造と鉄の鍛造だ。電動化で減る分を、電気自動車向けの部品が埋められるか。そこが 10 年の勝負である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は買わない。純資産に対して株価が安いのは事実だが、純資産の中身が信用できない。負ののれんは会計上の利益で、現金は入っていない。被買収側の柳河精機は、深い赤字を出している。
事業は、買い手が価格を決める部品の組み立て屋の性格が強い。営業利益率は 3% 前後で、投下資本に対する稼ぎは資本コストを下回る。電動化で売上の大半が減る可能性もある。
評価できる点もある。再編で規模を獲得し、国内の赤字拠点を整理し、電動化向けの部品に舵を切っている。配当を 28 年ぶりに復活させた。ただ、スポンサーが売り下がる中で、経営が少数株主のために動くのかは見極めが難しい。
筆者は、中立の価値は今の値段をやや上回るが、悪い筋書きの重みを織り込むと 1 割強の割高になると見る。安全域はない。借入の返済が進み、営業利益率が 4% を超える実績が出るまでは、見送るのが妥当である。
何で稼ぐ会社か
事業は三つ。鋳鍛造事業(柳河精機)は売上 486 億円で、アルミダイカスト(アルミを型に流し込む成形)と鉄の鍛造を行う。エンジンや変速機の部品が中心で、電気自動車向けのモーターケースなども手がける。営業利益は 16 億円。
粉末冶金事業(ダイヤメット)は売上 175 億円。金属の粉を固めて焼く焼結で、含油軸受や機械部品、モーター・電源用の軟磁性コアを作る。営業利益は 5 億円と薄い。
樹脂成形事業は児玉化学工業の本体で、売上 166 億円。自動車のインパネ、フロントグリル、住宅関連、家電部品、食品容器を作り、営業利益は 12 億円。
顧客は、本田技研工業が 15.7%、タイホンダが 15.0%。2026 年に買収したことで、以前の最大顧客だった林テレンプは 3% に薄まった。海外はタイ、インドに拠点を持つ。インドの粉末冶金の新工場は、量産の立ち上げを控える。
連結従業員は 2,730 人で、買収で 10 倍以上に増えた。設備投資は年 63 億円で、鋳鍛造への投資が過半を占める。研究開発費は 2.6 億円と小さい。
優良さと弱いところ
優良さは、買収で手に入れた規模にある。樹脂と金属の複数の加工技術を一社でそろえ、機能部品を一括で納める力は、買い手の自動車メーカーに評価される。ただ、それが利益に出ているかというと、営業利益率は 3.2% にすぎない。
堀は薄い。価格を決めるのはホンダなど買い手で、毎年の値下げ要請がある。会社自身が示す自動車サプライヤーの営業利益率は、二次請け以下で 1% 前後だ。柳河精機は単体で売上 122 億円に対し、当期純損失が 46 億円と赤字が深い。
資本の使い方は、スポンサー主導の再編という性格が強い。エンデバー・ユナイテッドのファンドが 5 割前後を持ち、自らが作った持株会社を、上場会社に売る形で買収が行われた。買収の条件は有利に見えるが、買い手の児玉化学工業にとって最適だったかは分からない。買い手と売り手が同じ系列である点は、少数株主として割り引く必要がある。
経営の目標は、2029 年 3 月期に営業利益 32 億円、利益率 3.9%。実績の上限は 4.5% で、野心的とはいえない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車部品は、電動化と値下げ要請に挟まれた業界だ。世界の電気自動車は新車の約 25% まで増えたが、日本は 3% に満たず、ホンダを含む国内メーカーはハイブリッドを軸にする。ただ、10 年で見れば、エンジンと変速機の部品は減る。部品の点数が減るため、1 台あたりの搭載額も下がる。
会社の鋳鍛造は、内燃機関向けが大半だ。エンジン部品のアルミダイカストと鍛造品は、電気自動車に要らなくなる。一方で、電気自動車の e アクスル(モーターと減速機を一体にした駆動装置)のケースは、アルミ鋳造の新しい需要になる。受注済みの案件があり、量産の立ち上がりが課題だ。
粉末冶金は、エンジンの焼結部品が減る一方、モーターの軟磁性コアとデータセンターの電源用コアが伸びる。国内の焼結市場は縮小傾向で、インドの新工場に期待がかかる。
競合は、アルミ鋳造の大手や、焼結の大手(住友電工系、日立系)、樹脂成形の中堅だ。ホンダなどは部品の調達先を絞り込み、値下げ要請も強まる。規模が大きくなった分、会社も大手との直接競争にさらされる。
資本政策と M&A
資本政策の主役はスポンサーのエンデバー・ユナイテッドだ。ファンドは 2026 年 3 月末で 52% を持ち、7 月には 48.5% まで下げた。売り下がりが続けば、市場に株が出て株価の重しになる。逆に、TOB で買い増す・完全子会社にするという可能性もゼロではないが、公表されたものはない。
配当は 2026 年 3 月期に 28 年ぶりに復活した。新中期計画の 3 年は、この水準を守るとし、総還元性向は 10% 以上を目安にする。3 年間の資金の使い道は、維持更新投資 139 億円、戦略投資 57 億円、株主還元 5 億円と、有利子負債の返済 1 億円だ。つまり、株主への戻りは薄い。
借入はシンジケートローンが 141 億円で、財務制限条項が付く。現預金は 109 億円ある。M&A は一巡し、次は買収後の統合(PMI)の完遂が主題になる。必要に応じた追加の買収も視野に入れる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
買収で売上は 5 倍に増え、営業利益は 4 倍の 27 億円になった。一過性を除く 2026 年 3 月期の純利益は 9 億円だが、2029 年 3 月期には 17 億円と、利益は 3 年で倍近くになる計画だ。EBITDA は 69 億円で、時価総額と純有利子負債の合計に近い。
鋳鍛造は xEV 向けの受注が入り、e アクスルのケースなどで量産が始まる。国内の赤字拠点を整理し、アルミ溶湯の内製化で原価を下げる。粉末冶金はデータセンターの電源向けとインドの新工場で成長する。樹脂は埼玉工場への集約で稼働率が上がる。
配当は復活し、ファンドの売り下がりは、市場に流通株を増やして株価の需給を改善する。純資産に対する株価は 3 分の 1 にすぎず、キャッシュフローで見ても割安で、利益が会社の計画どおりに出れば、PER は 6 倍台に下がる。ホンダ向けは売上の 3 割強で、ハイブリッドの拡大はエンジン部品の追い風になる。
慎重な見方
安く見えるのは、純資産が一過性の利益でふくらんでいるからだ。負ののれん 226 億円は現金ではなく、資産価値が下がれば減損で消える。柳河精機は単体で純損失が 46 億円ある。国内の赤字拠点の改善は始まったばかりだ。会社の計画はこれまで何度も、買収後の統合の遅れで下振れしてきた。
営業利益率は 3% 台で、買い手のホンダが価格を決める。2027 年 3 月期の営業利益は 22 億円と、今期より減る見通しだ。EBITDA は 65 億円でも、維持更新の投資が 46 億円あり、株主に残る現金は小さい。
借入には財務制限条項が付き、経常損失が 2 期続けば抵触する。ファンドは売り下がりの途中で、株価の重しになる。電動化で鋳鍛造の主力が減り、xEV の立ち上がりが遅れれば、収益は計画を割る。買い手と売り手が同系列の取引で、少数株主の利益が守られたかも不透明だ。ファンドの運用期間の終わりが近づけば、売り圧力も強まる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は計画の達成を根拠にするが、計画の利益率は過去の最高に近い。慎重な見方の指摘(純資産の中身、薄い利益率、財務制限条項、ファンドの売り下がり)は実績で裏づけられる。確率は中立を 4 割弱に置き、やや悲観を厚くした。PBR 0.3 倍の割安さは、一過性の利益を除けば説明がつく。強気の条件は、鋳鍛造の改革の成功と xEV の立ち上げの二つが同時に起きることだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,223 円190 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 160 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 621 円96 億円、今との差 +10.3%、 期待の年率 +9.4%(資本コスト 9.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,288 円356 億円 | 322 円50 億円 | +363.5% | +16.6% | 183 円28 億円 |
| やや楽観 | 16% | 1,880 円292 億円 | 257 円40 億円 | +279.6% | +14.3% | 342 円53 億円 |
| 中立 | 38% | 1,550 円241 億円 | 193 円30 億円 | +209.5% | +12.0% | 662 円103 億円 |
| やや悲観 | 25% | 540 円84 億円 | 77 円12 億円 | +9.6% | +0.9% | 154 円24 億円 |
| 悲観 | 14% | 277 円43 億円 | 26 円4 億円 | −46.3% | −6.0% | 42 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,223 円190 億円 | 160 円25 億円 | +145.7% | +9.4% | 1,383 円215 億円 |
今の株価時価総額 563 円87 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:xEV 向け部品が立ち上がり、内燃機関の落ち込みも緩やか 利益 32 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,288 円356 億円
ホンダがハイブリッドを維持し続け、内燃機関向けの鋳鍛造は台数が 8 割に残る。柳河精機は国内の赤字拠点を整理し、アルミ溶湯の内製化とキャストホイール塗装の内製化で利益率を上げる。
xEV 向けの部品は e アクスルのケースが量産に入り、10 年で売上は 5 倍以上になる。粉末冶金は、データセンター向けの電源用コアが伸び、インドの新工場も立ち上がる。
営業利益は 63 億円、利益率は 5%。会社が掲げる「5 年後の営業利益率 5%」を達成する姿だ。純利益は 32 億円、ROE は 7% 台。財務制限条項への不安も遠のく。
- 樹脂成形:数量 20.3(成形品の出荷量(千トン、樹脂換算・推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 218 億円・営業利益 16 億円。内外装は横ばい
- 鋳鍛造(内燃機関系):数量 44.6(鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定))× 価格 10(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 464 億円・営業利益 19 億円。台数 8 割(ハイブリッドで残る)
- 鋳鍛造(xEV 系):数量 27.8(鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 298 億円・営業利益 22 億円。xEV 系が 5.5 倍
- 粉末冶金:数量 12.9(焼結品の出荷量(千トン、推定))× 価格 20(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 259 億円・営業利益 13 億円。電源向けの軟磁性が伸びる
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 356 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホンダがハイブリッドを主力に据え続け、xEV 向けの受注も次々と量産に入る上振れ。柳河精機の収益構造改革が成功する条件が重なるため、薄く置いた。
やや楽観 16% やや楽観:xEV が立ち上がり、内燃機関系は 3 割弱の減少にとどまる 利益 25 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,880 円292 億円
内燃機関向けの鋳鍛造は台数が 3 割弱減る。ホンダ向けの値下げ要請で価格は 1.25 倍止まり。xEV 向けは 4.7 倍に増え、売上は 250 億円に届く。柳河精機の国内拠点の改善も、計画の 8 割ほどは進む。為替は 150 円で変わらないため、円換算の押し上げ・押し下げはない。
樹脂成形は埼玉工場への集約で稼働率が上がり、利益率が 7% に乗る。粉末冶金は電源向けの軟磁性が伸びるが、国内の焼結品の縮みで全体は横ばい。
営業利益は 50 億円、利益率は 4.5%。純利益は 25 億円。有利子負債は返済が進み、金利上昇の負担も軽くなる。
- 樹脂成形:数量 20.1(成形品の出荷量(千トン、樹脂換算・推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 212 億円・営業利益 15 億円。ほぼ横ばい
- 鋳鍛造(内燃機関系):数量 40.2(鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定))× 価格 10(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 402 億円・営業利益 14 億円。台数 72%
- 鋳鍛造(xEV 系):数量 23.7(鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定))× 価格 11(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 250 億円・営業利益 18 億円。4.7 倍
- 粉末冶金:数量 11.7(焼結品の出荷量(千トン、推定))× 価格 20(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 232 億円・営業利益 10 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 278 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注済みの xEV 案件が計画どおり量産に入るが、値下げ要請で価格は物価に届かない。
中立 38% 中立:内燃機関系は 3 分の 1 減り、xEV 系が穴を半分近く埋める 利益 19 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,550 円241 億円
内燃機関向けの鋳鍛造は台数が 10 年で 35% 減る。ハイブリッドはエンジンを積むので、すぐに要らなくなるわけではないが、完全な電気自動車では置き換わる。価格は完成車メーカーの値下げ要請(毎年のコスト削減の求め)で物価の 6 割ほどしか上がらない。
xEV 向けは e アクスルのケースなどで台数が 3.5 倍になる。粉末冶金は、国内の縮みをインドとデータセンター向けが補う。樹脂成形は内外装の需要が堅く、台数は 95%。
営業利益は 37 億円、利益率は 3.9%。会社が掲げる 2029 年 3 月期の 32 億円を、物価の分だけ超えていく形だ。純利益は 18.5 億円、ROE は 4% 台。減価償却は、設備投資が償却に見合う間は物価で増えず、新しい設備の分だけ増える。
- 樹脂成形:数量 19.7(成形品の出荷量(千トン、樹脂換算・推定))× 価格 10(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 205 億円・営業利益 13 億円。台数 95%。価格は 1.30 倍(値下げ要請)
- 鋳鍛造(内燃機関系):数量 36.3(鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定))× 価格 9.60(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 349 億円・営業利益 11 億円。台数 65%。価格は 1.20 倍
- 鋳鍛造(xEV 系):数量 17.7(鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定))× 価格 10(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 184 億円・営業利益 12 億円。xEV 系が 3.5 倍
- 粉末冶金:数量 11.1(焼結品の出荷量(千トン、推定))× 価格 20(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 216 億円・営業利益 9 億円。台数 95%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 206 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの中心的な見通し(EV 比率が 4 割台)に沿う。会社が中期計画で掲げる xEV 化への移行が、緩やかに進む。同領域の標準(中立 3〜4 割)にそろえた。
やや悲観 25% やや悲観:電動化が速く、内燃機関系が半減する 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 540 円84 億円
ホンダが電気自動車へ舵を切り、内燃機関向けの鋳鍛造は台数が半分に減る。固定費の重い鋳造は、台数が落ちると利益率が一気に下がり、ゼロ近くになる。完成車メーカーは減った台数の部品ほど値下げを強く求める。柳河精機の国内拠点は再編が追いつかない。
xEV 向けは 2.5 倍にとどまる。受注済みの案件の量産立ち上げが遅れ、価格競争も強い。粉末冶金は国内の焼結品が 2 割減り、インドとデータセンターの伸びでは補えない。
営業利益は 11 億円ほどに縮み、利払いで純利益は 3 億円ほど。財務制限条項(経常損失 2 期連続の回避)が重くのしかかり、投資と還元が止まる。
- 樹脂成形:数量 18.6(成形品の出荷量(千トン、樹脂換算・推定))× 価格 9.60(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 179 億円・営業利益 9 億円。台数 9 割
- 鋳鍛造(内燃機関系):数量 27.9(鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定))× 価格 8.80(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 246 億円・営業利益 0 億円。台数半分、利益ゼロ
- 鋳鍛造(xEV 系):数量 12.6(鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定))× 価格 9.60(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 121 億円・営業利益 5 億円。2.5 倍止まり
- 粉末冶金:数量 9.4(焼結品の出荷量(千トン、推定))× 価格 17(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 162 億円・営業利益 4 億円。台数 8 割
倍率:稼ぐ力は PER 6.5 倍でも約 20 億円にとどまり、売れる資産の約 55 億円を下回る。売れる資産を今の自己資本 284 億円の 0.20 倍(約 57 億円)に置いた。
確率:ホンダが電動化を再び加速し、内燃機関向けの鋳鍛造が10年で半減する。xEV の立ち上げが遅れ、柳河精機の改革が止まる。財務制限条項の影響もある。
悲観 14% 悲観:内燃機関系が崩れ、財務制限条項に触れて再建局面に入る 利益 −12 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 277 円43 億円
電気自動車の普及と、ホンダの値下げ要請で、内燃機関向けの鋳鍛造は台数が 3 割まで落ち込む。国内の拠点は稼働が下がって赤字が続き、柳河精機は再建を迫られる。
xEV 向けは新しい受注が取れず、粉末冶金も国内の焼結品が 4 割減る。営業赤字が 2 期続くと、シンジケートローンの財務制限条項に触れ、金融機関との交渉が始まる。
工場の再編と減損が続き、自己資本は半分以下に減る。配当は止まり、残るのは運転資本と売れる工場・設備で、借入を返したあとの価値は今の時価総額の半分以下になる。スポンサーは持株を市場で売り続け、株価の需給も悪化する。少数株主の持分は、増資で薄まる可能性もある。
- 樹脂成形:数量 16.6(成形品の出荷量(千トン、樹脂換算・推定))× 価格 8.80(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 146 億円・営業利益 3 億円。台数 8 割、稼働率低下
- 鋳鍛造(内燃機関系):数量 16.7(鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定))× 価格 8.00(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 134 億円・営業利益 −7 億円。台数 3 割、赤字
- 鋳鍛造(xEV 系):数量 6.1(鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定))× 価格 8.00(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 0 億円。受注が取れない
- 粉末冶金:数量 7.0(焼結品の出荷量(千トン、推定))× 価格 15(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 105 億円・営業利益 −1 億円。台数 6 割
倍率:赤字の筋書きなので、稼ぐ力でなく売れる資産で測る。今の自己資本 284 億円の 0.15 倍(約 43 億円)に置いた。減損で自己資本を 120 億円まで減らしている。
確率:構造的な負け筋。ホンダ向けの値下げ要請と電動化が重なり、柳河精機の赤字が続く。借入の約定が重く、スポンサーの売り下がりも続く。純現金がなく、同領域の標準(15%)にほぼ並べた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
樹脂成形
自動車の内外装(インパネ、フロントグリル)、住宅関連、家電部品、食品容器。児玉化学工業の本体の事業。
| 数量成形品の出荷量(千トン、樹脂換算・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.7 | 8.00 | 166 | 12 |
| 10 年後 中立 | 19.7 | 10 | 205 | 13 |
取り方:樹脂成形セグメントの売上 165.8 億円(うち自動車向け約 115 億円、非自動車約 51 億円)。出荷量は樹脂 1 キロあたり約 0.08 万円相当の売上として推定。営業利益 11.6 億円は開示。
鋳鍛造(内燃機関系)
柳河精機が作るアルミダイカストと鉄鍛造のうち、エンジン・トランスミッションなど内燃機関向け。ホンダ向けが厚い。
| 数量鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.8 | 8.00 | 446 | 13 |
| 10 年後 中立 | 36.3 | 9.60 | 349 | 11 |
取り方:鋳鍛造セグメントの売上 486.4 億円のうち、内燃機関向けを約 446 億円と推定(xEV 向けの割合は開示がなく、受注済み案件が小さいことから約 8% とみた)。営業利益 15.8 億円を内燃機関系と xEV 系に分けた推定。
鋳鍛造(xEV 系)
e アクスルのモーター・減速機ケース、電子部品ケース、デファレンシャルなど、電動車向けのアルミ・鉄部品。受注済みの案件の量産立ち上げ中。
| 数量鋳鍛造品の出荷量(千トン、推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.1 | 8.00 | 40 | 3 |
| 10 年後 中立 | 17.7 | 10 | 184 | 12 |
取り方:鋳鍛造セグメントの約 40 億円を xEV 向けと推定(中期計画で受注済みの xEV 案件の量産立ち上げが課題とされている)。営業利益は推定。
粉末冶金
ダイヤメットが作る焼結含油軸受、焼結機械部品、軟磁性材のコア(リアクトル、モーター、電源用)。国内は縮小、インドは成長。
| 数量焼結品の出荷量(千トン、推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.7 | 15 | 176 | 5 |
| 10 年後 中立 | 11.1 | 20 | 216 | 9 |
取り方:粉末冶金セグメントの売上 175.0 億円、営業利益 4.9 億円は開示。出荷量は 1 キロあたり約 0.15 万円相当の売上として推定。
リスクと懸念
電動化で内燃機関系が減る
鋳鍛造のうちエンジン・変速機の部品は、電気自動車に要らなくなる。売上の大半が内燃機関向けで、10 年で台数が半分近くになる筋書きでは、固定費の重い鋳造が赤字になる。xEV 向けの受注の立ち上げが遅れれば、補えない。
財務制限条項
シンジケートローン 141 億円に、連結純資産の維持と経常損失の 2 期連続回避が付く。柳河精機の赤字が続けば、抵触の可能性がある。抵触すれば借入条件の見直しや、増資・資産売却を迫られる。
スポンサーの売り下がり
エンデバー・ユナイテッドのファンドは 52% から 48.5% まで持株を下げた。ファンドの運用期間が決まっているため、売りは続く可能性が高く、株価の重しになる。一方で、買い増しや完全子会社化の可能性も残る。
ホンダへの依存と値下げ要請
ホンダとタイホンダで売上の 3 割強、グループで約 4 割を占める。毎年の値下げ要請があり、価格は物価に届かない。ホンダが調達先を絞れば、売上が一度に動く。
買収後の統合と一過性の利益
純資産の約 8 割は負ののれんでふくらんでいる。買収した資産の価値が下がれば減損で自己資本が減る。買い手と売り手が同系列の取引で、少数株主の利益が守られたか不透明な面もある。
AI エージェントの影響
主な事業は樹脂成形と金属の部品製造で、人月や画面操作を売る仕事ではない。AI エージェントによる直接の置き換えは小さい。工場の省人化は、人手不足への追い風になる。
今後の分かれ目
- 柳河精機の国内赤字拠点の改善が 3 年で終わり、鋳鍛造の営業利益率が 3% を超える
- 全社の営業利益は 32 億円の計画に届き、純利益は 17 億円になる。楽観側に確率を寄せる。
- ホンダが電気自動車の比率を大きく上げる
- 内燃機関向けの鋳鍛造の台数が 10 年で半分になる道筋に近づき、やや悲観に確率を移す。
- 財務制限条項に抵触し、借入条件の見直しや増資に至る
- 悲観の筋書きに近づく。少数株主の持分は希薄化する。
- エンデバーが TOB で完全子会社化を提案する
- 株式の価値は TOB 価格で決まる。公表前の動きは見通せない。
- xEV 向けの売上が 3 年で 100 億円に届く
- e アクスルのケースなどで内燃機関系の減りを補える見通しが立ち、中立から楽観へ。
見ておくもの
- 鋳鍛造セグメントの営業利益率(柳河精機の赤字拠点の改善)
- xEV 向け売上の立ち上がり(e アクスルのケースなど)
- シンジケートローンの残高と財務制限条項の余裕
- エンデバー・ユナイテッドの持株比率の推移
- ホンダ向けの売上比率と値下げ要請の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースで置き、今の株価・過去や同業の PER・PBR は使っていない。中立は ROE 4.7% が k 9% に届かないため PER の上限は 1÷k = 10.5 倍で、その 7.6 割の 8.0 倍。純利益 235 億円の大半は一過性なので、起点は一過性を除く 9 億円。悲観は売れる資産を今の自己資本に掛けた。k は基本 7.5% に quality +2.0%。PBR 0.3 倍という割安さには寄せていない。純現金はなく、余った現金は分けていない。新リース会計基準は工場が自社保有中心で影響は小さく、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→11.11 倍・やや楽観 PER 8.5→11.11 倍・中立 PER 8→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.0% を足した 9.5%。電動化の縮みは k の寿命で一度だけ見て、悲観の確率はさらに上げていない。スポンサーの売り下がりは筋書きで表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.25%。