結論
大阪油化工業は、化学品を蒸留して純度を上げる仕事を請け負う会社だ。化学や医薬、電子材料の会社から、研究中の試作品や工場で使った溶剤を預かり、蒸留して返す。蒸留の装置そのものを作って売る仕事もしている。筆者の結論は割高だ。
蒸留の技術は確かだ。少量で種類の多い案件に素早く応えられる会社は国内に多くない。2015〜2018 年には営業利益率が 15〜20% あった。だが規模は小さく、売上は 10 年前の 10 億円から 12 億円に増えただけだ。中期経営計画は版を重ねるたびに目標を先へ送り、一度も達成していない。
2024 年 12 月にはダイセキが会社ごと買う提案をしたが、応募が足りずに不成立に終わった。株の 4 割強を創業家の会社が持ち、手元の現金 9 億円の使い道は会社の判断に委ねられる。会社は 3 年で 10 億円の M&A を掲げており、現金が株主に戻る速さは遅いとみる。
筆者は、技術の確かさに比べて、今の値段はその先の成長まで織り込みすぎていると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い技術を持つ小さな工房のような会社だ。精製という地味だが欠かせない仕事を、少量でも丁寧に引き受ける。顧客の研究の初期から入り込むので、関係は長く続きやすい。借金も無い。
だが筆者は、成長の遅さと資本の使い方を気にしている。売上は 10 年でほとんど増えず、中期経営計画は毎回未達だ。手元の現金は M&A に向けるとされ、株主に戻る道筋ははっきりしない。創業家の会社が 4 割強を持つので、少数株主が資本の使い道に口を出す余地も小さい。
ダイセキの TOB が成立していれば、株主は今より高い値段を手にしていた。その機会が去った今、株主が頼れるのは事業の稼ぐ力だけだ。その力は確かだが、今の値段に安全域、つまり値段と価値の間のゆとりを与えるほど強くはない。
オーナーとして持つには、現金を株主に戻すか、稼ぐ事業に変える筋道がもう一段はっきりする必要がある。
何で稼ぐ会社か
事業は二つある。柱は受託で、2025 年 9 月期の受注は 10.7 億円だった。中身は、研究や試作の段階の化学品を少量ずつ精製する研究開発支援と、工場で使う溶剤や原料を継続して精製する受託加工に分かれる。2024 年 9 月期の実績では、研究開発支援が 2.4 億円、受託加工が 6.4 億円だった。蒸留とは、液体を温めて沸点の違いで成分を分ける方法で、純度を上げたり、使った溶剤を再生したりできる。
二つ目はプラントの事業で、自社で培った蒸留の装置を顧客に売る。2025 年 9 月期の受注は 2.1 億円で、中期経営計画ではこれを 3 億円に育てるとしている。
顧客は化学、医薬、電子材料の会社だ。案件ごとに装置の条件を変え、少量でも引き受けるのが強みになる。そのぶん売上は顧客の研究の都合で揺れ、年ごとにでこぼこが大きい。工場は大阪府にある小さな会社だ。2026 年 5 月には名古屋証券取引所にも上場した。
2025 年 9 月期の売上は 11.8 億円、営業利益は 1.4 億円だった。純利益は TOB の費用で赤字になったが、これは一度きりの費用だ。2026 年 9 月期は売上 13 億円、営業利益 1.5 億円ほどを見込む。
優良さと弱いところ
強みは、少量で種類の多い精製を引き受けられる技術と経験だ。大きな化学会社は自社の大型の設備で大量に作るが、研究段階の少量の試作や、特殊な溶剤の精製には向かない。そこを専門に請け負う会社は国内に多くない。顧客の研究の初期から関わるので、量産に入った後の受託加工にもつながりやすい。
弱みは規模と成長の遅さだ。売上は 10 年で 2 割しか増えず、利益は大口の案件の有無で大きく揺れる。2024 年 9 月期の営業利益は 0.2 億円まで落ちた。中期経営計画は 2018 年版から毎回、売上 15 億円以上を掲げてきたが、届いたことは無い。
資本の面では、借金は無く、自己資本比率は 88% と厚い。だが自己資本の半分ほどが現金で、ROE を押し下げている。
経営は堅実だが、目標を掲げては先送りする癖が抜けない。技術の価値を、利益の成長に変える力がまだ弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
化学品の精製の外注は、ゆっくりと広がっている。化学や医薬の会社は、研究の数を増やしながら設備と人を絞っており、少量の試作や精製を外に出す動きがある。半導体や電池の材料では、不純物を極めて少なくした高純度の品が求められ、精製の腕の見せどころが増えている。使った溶剤を再生して使い回す動きも、環境の規制とともに強まる。
一方で、日本の化学の工場は少しずつ減っている。大手は量の多い汎用品を海外に移し、国内では高機能の品に絞る。精製を外に出す量は増えても、顧客の数そのものは増えにくい。
競合は、溶剤の再生を手がける産業廃棄物の処理会社や、大手の化学会社の子会社だ。2024 年に TOB を提案したダイセキも、その一つにあたる。10 年の中立では、受託の量は 15% 増え、値段は物価並みに上がると見る。
値段の面では、精製の受託は特注の仕事なので、物価の上昇を値段に移しやすい。装置の燃料や電気、人件費の値上がりは、案件ごとの見積もりに乗せられる。ただ、顧客の化学会社も費用を絞る中で、値上げを強く言えば外注をやめて内製に戻る恐れがある。
海外では、中国やインドの受託の会社が安い値段で精製を請け負う。日本の顧客が品質と秘密の守りを重んじる限り、国内の受託には一定の出番が残る。
資本政策と M&A
配当の方針は、配当性向 30% 以上、1 株あたりの下限を設けた安定配当だ。2025 年 9 月期の配当総額は約 0.3 億円で、2026 年 9 月期は 5 割強の増配を予定する。自社株買いの実績はほとんど無い。
中期経営計画では、3 年で設備に 1.5 億円、M&A に 10 億円を使うとしている。手元の現金 9 億円を上回る額で、成功すれば受託の幅が広がるが、高値で買えば株主の価値を損なう。
2024 年 12 月、ダイセキが会社ごと買う TOB を提案し、会社も賛同したが、応募が下限に届かず不成立に終わった。筆頭株主の創業家の会社は 42% を持つ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
精製の外注は伸びる市場だ。化学や医薬の会社は研究の数を増やす一方で、少量の試作のための設備と人を持ちたがらない。半導体や電池の材料では、高い純度の精製の需要が増えている。少量で種類の多い案件を素早くこなせる会社は少なく、大阪油化工業はその代表だ。
2025 年 9 月期は売上が 2 割増え、TOB の費用を除けば利益も回復した。2026 年 9 月期は 5 割強の増配を予定し、会社の自信がうかがえる。プラントの事業も中計で 3 倍に育てる計画だ。
財務は堅い。借金は無く、手元の現金は 9 億円ある。ダイセキが TOB を提案したことは、この会社の技術と顧客の基盤に外から値打ちが認められた証拠でもある。再び買収の提案が来る可能性も消えていない。
利益率の過去の実績も心強い。2015〜2018 年には営業利益率が 15〜20% あり、案件がそろえばそこまで戻る力がある。会社は案件を選び、値段を上げる余地を持っている。現金を M&A に使えば、受託の品ぞろえも広がる。
慎重な見方
中期経営計画は、2018 年版から毎回売上 15 億円以上を掲げ、一度も届いていない。売上は 10 年で 2 割しか増えず、2024 年 9 月期には営業利益が 0.2 億円まで落ちた。小さな会社で、少数の顧客の案件の有無が業績を左右する。
資本の使い方にも不安がある。会社は 3 年で 10 億円の M&A を掲げるが、手元の現金を上回る額で、買った会社が稼げなければ株主の価値は減る。創業家の会社が 42% を持ち、少数株主はその判断に従うしかない。
ダイセキの TOB の値段は、今の株価を 1 割ほど上回っていた。それでも株主の多くは応募しなかった。次に同じ機会が来る保証は無い。
利益率の 15〜20% は過去の話だ。2019 年以降は 10% 前後に下がり、人件費と設備の費用は物価で増え続ける。顧客の化学会社も国内の研究を絞り、精製を海外の安い受託の会社に出す動きがある。小さな会社が大手の内製と海外の安値に挟まれれば、量も値段も守りにくい。
資本の利益率は資本コストに届くかどうかの水準で、ためた現金はその足を引っ張る。株主に戻らない現金に、帳簿の値段を払う理由は無い。
どちらに重みを置いたか
技術の確かさは認めるが、慎重な見方のほうがやや強い。成長の遅さと中計の未達は長く続いており、現金の使い道も株主に戻る形になっていない。確率は中立を最も重くし、楽観側をやや厚めにした。外注の広がりと高純度の需要は本物で、悲観の重みは過度に上げていない。ダイセキの TOB の不成立で、株主が高い値段を手にする機会は一度失われた。次の機会は筋書きの楽観側に含め、中立には入れていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 2,993 円25 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 581 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 1,857 円16 億円、今との差 −34.4%、 期待の年率 +2.4%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 5,540 円47 億円 | 815 円7 億円 | +124.5% | +8.4% | 763 円6 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,136 円35 億円 | 685 円6 億円 | +70.3% | +5.5% | 1,061 円9 億円 |
| 中立 | 38% | 3,024 円26 億円 | 567 円5 億円 | +26.8% | +2.4% | 1,364 円12 億円 |
| やや悲観 | 18% | 1,172 円10 億円 | 484 円4 億円 | −41.5% | −5.2% | 298 円3 億円 |
| 悲観 | 10% | 585 円5 億円 | 295 円3 億円 | −68.9% | −11.0% | 88 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,993 円25 億円 | 581 円5 億円 | +26.2% | +2.4% | 3,574 円30 億円 |
今の株価時価総額 2,831 円24 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 12% 高純度の精製と装置の販売が二本柱になる 利益 3 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 5,540 円47 億円
半導体や電池の材料では、不純物を極限まで取り除く精製の需要が伸びる。化学の大手は少量の試作や新しい溶剤の精製を外に出すようになり、大阪油化工業の受託の量は 10 年で 4 割増える。精製の難しい案件ほど値段は高く、利益率は 18% まで上がる。プラントの事業も、自社で蒸留を内製したい顧客に小型の装置を売る形で育ち、売上は今の 2 倍半になる。M&A で周辺の技術を持つ会社を取り込めば、受託の幅はさらに広がる。資本の利益率は資本コストを上回るが、規模は小さいままだ。株主に戻る額も、増配で今の 2 倍以上に増える。技術が利益に変わる姿だ。
- 受託蒸留・受託加工:数量 2,120(精製の処理量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。2120 × 単価 0.009(今の 1.38 倍)、営業利益率 18.0%
- プラント:数量 14.0(装置の納入件数(件・推定))× 価格 0.35(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。14 × 単価 0.345(今の 1.38 倍)、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 16.94 倍、時価総額 47 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体や電池の材料で高い純度の精製の需要が伸び、プラントの販売も中計どおり 3 倍になる筋書き。過去の中計は一度も達成していないので、1 割強にとどめた。
やや楽観 22% 受託が着実に伸び、利益率が戻る 利益 2 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 4,136 円35 億円
化学や医薬の会社が研究と試作を外に出す流れが続き、受託の量は 10 年で 3 割弱増える。多品種少量の案件に素早く応える体制が評価され、値段は物価をやや上回って上がる。営業利益率は 2015〜2018 年の水準に近い 13% まで戻る。プラントの事業は年に 10 件強の装置を売る規模に育つ。配当は性向 4 割で増え、自己資本の利益率は資本コストをやや上回る。現金は M&A に一部使われるが、大きな失敗は無い。利益の伸びは中計ほど速くないが、配当の伸びで株主の取り分ははっきり増える。M&A の候補を慎重に選ぶ姿勢が、資本の無駄づかいを防ぐ。
- 受託蒸留・受託加工:数量 1,940(精製の処理量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 3 億円。1940 × 単価 0.0088(今の 1.36 倍)、営業利益率 16.0%
- プラント:数量 12.0(装置の納入件数(件・推定))× 価格 0.34(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。12 × 単価 0.34(今の 1.36 倍)、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 15.74 倍、時価総額 35 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025 年 9 月期は売上が 2 割増え、2026 年 9 月期は増配を予定する。受託の需要の伸びは実績で確かめられるので、中立に次ぐ重みを置いた。
中立 38% 受託は少しずつ伸び、利益率は 1 割強 利益 1 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 3,024 円26 億円
受託の量は 10 年で 15% 増える。化学の大手の外注は増えるが、案件の大きさと時期は顧客の研究の都合で揺れ、年ごとの売上はでこぼこが続く。値段は物価並みに上がり、受託の利益率は 14% 前後を保つ。プラントの事業は年 10 件ほどの装置の販売にとどまる。本社と研究の費用も物価で増え、全社の営業利益率は 11% ほどになる。配当は性向 4 割程度で、残りは現金と設備に積み上がる。現金の多くは M&A の候補を探すために手元に残され、株主に戻る速さは遅い。会社はつぶれず、配当も続くが、株主の取り分の伸びは物価をわずかに上回る程度にとどまる。
- 受託蒸留・受託加工:数量 1,740(精製の処理量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。1740 × 単価 0.0087(今の 1.34 倍)、営業利益率 14.0%
- プラント:数量 10.0(装置の納入件数(件・推定))× 価格 0.34(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。10 × 単価 0.335(今の 1.34 倍)、営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 14.37 倍、時価総額 25 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受託の需要は底堅いが、過去の中計の未達が示すように成長は緩やかというのが今の延長だ。最も重く置いた。
やや悲観 18% 大口の案件が抜け、稼ぐ力が細る 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,172 円10 億円
化学の大手が国内の研究や試作を絞り、精製の案件が減る。受託の量は 10 年で今と同じにとどまり、値上げも物価に遅れる。プラントの事業は顧客の設備投資が冷えて、利益が出ない。設備の更新と人件費の値上がりで、営業利益率は 6% ほどに落ちる。中計で掲げた M&A は高値づかみに終わり、現金の一部が失われる。配当は下限の額を守るが、利益の半分を配っても株主の取り分は細っていく。受託の値段を上げられないまま、装置の更新の費用だけが重くのしかかる。研究開発支援の案件も小口に偏り、手間のわりに稼げない。株主の取り分は年ごとに細っていく。
- 受託蒸留・受託加工:数量 1,514(精製の処理量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。1514 × 単価 0.0081(今の 1.25 倍)、営業利益率 10.0%
- プラント:数量 7.0(装置の納入件数(件・推定))× 価格 0.31(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。7 × 単価 0.3125(今の 1.25 倍)、営業利益率 0.0%
倍率:事業の ROE 4.3% と k を大きく下回るので PER の上限は 1÷k の 12.1 倍。利益が細っていく途中の筋書きなので上限の約 65% の 8.0 倍に置き、M&A で一部を使った後の余った現金に戻り方 0.5 を掛けて足した。稼ぐ力(純利益÷k)は約 9 億円で、それを下回る。
確率:受託の売上は少数の顧客の案件に左右され、2024 年 9 月期には営業利益が 0.2 億円まで落ちた。中立の半分弱の重みを置いた。
悲観 10% 顧客が離れ、受託が赤字に沈む 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 585 円5 億円
国内の化学の大手が研究と生産を海外へ移し、日本での精製の外注が細る。中国やインドの受託の会社が安い値段で案件を取り、大阪油化工業の受託の量は 2 割減る。装置は古くなり、更新の投資が利益を食う。プラントの事業も赤字になり、営業損益はとんとんに沈む。創業家の会社が過半近くを持つので、他社による買収で株主が救われる道も細い。手元の現金と工場の土地だけが価値の支えとして残る。蒸留の技術を持つ人も辞めていき、立て直しの道は細る。配当は下限の額を守るのが精一杯で、自己資本は赤字で少しずつ削られていく。残るのは現金と土地だけだ。
- 受託蒸留・受託加工:数量 1,211(精製の処理量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。1211 × 単価 0.0075(今の 1.15 倍)、営業利益率 4.0%
- プラント:数量 5.0(装置の納入件数(件・推定))× 価格 0.29(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。5 × 単価 0.2875(今の 1.15 倍)、営業利益率 -10.0%
倍率:営業損益がとんとんで PER は使えない。稼ぐ力は床にならず、床は現金 8.7 億円から負債 2.1 億円を引き、土地を税後で売った約 1.1 億円を足した約 7.7 億円。創業家の会社が 42% を持ち、現金の使い道を少数株主が決められないので、今の自己資本 16.5 億円に PBR 0.30 倍を掛けて床の 6 割強に置いた。
確率:顧客の数が限られる小さな受託の会社なので、主要な顧客の内製化や撤退が重なれば一気に稼ぐ力を失う。1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
受託蒸留・受託加工
研究や試作の段階の化学品の少量の精製(研究開発支援)と、工場の溶剤や原料の継続的な精製(受託加工)。
| 数量精製の処理量(トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,514 | 0.01 | 10 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,740 | 0.01 | 15 | 2 |
取り方:セグメント別の売上の開示は無いので、全社の売上 11.84 億円から、受注の割合でプラントを約 2.0 億円と置き、残り 9.84 億円を受託とした。処理量の開示も無いので、1 トンあたり約 0.0065 億円と置き、年 1,514 トンと推定した(推定)。利益は受託が大半を稼ぐとみて 1.5 億円と推定した。
プラント
自社で培った蒸留の装置を設計して顧客に売る。
| 数量装置の納入件数(件・推定) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 8.0 | 0.25 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 0.34 | 3 | 0 |
取り方:受注 2.14 億円と中計の基準(2024 年 9 月期 1.12 億円)から売上を約 2.0 億円と推定し、1 件あたり約 0.25 億円と置いて年 8 件とした(推定)。利益率は 5% と推定した。
リスクと懸念
少数の顧客の案件に頼る
受託の売上は、少数の化学・医薬の会社の研究や生産の都合で大きく揺れる。2024 年 9 月期には営業利益が 0.2 億円まで落ちた。主要な顧客が内製に切り替えるか、海外に生産を移せば、受託の量はすぐに減る。
M&A の失敗
中期経営計画は 3 年で 10 億円の M&A を掲げる。手元の現金を上回る額で、小さな会社にとっては大きな賭けだ。高値で買った会社が稼げなければ、株主の価値は目減りする。
計画の未達が続く
中期経営計画は 2018 年版から毎回、売上 15 億円以上を掲げてきたが、一度も届いていない。目標の先送りが続けば、成長の筋書きそのものが信用を失う。
創業家の判断に委ねられる資本
創業家の会社が 42% を持ち、手元の現金の使い道は会社の判断で決まる。2024 年の TOB も不成立に終わり、少数株主が資本の使い道に影響を与える余地は小さい。
設備の老朽化と人の確保
蒸留の装置は古くなれば更新が要り、建築費と機械の値段の上昇で投資は膨らむ。精製の技術を持つ人は少なく、採用と育成が追いつかなければ受託の量を増やせない。
今後の分かれ目
- 受託の売上が 2 年続けて 1 割以上伸びたら
- 外注の広がりを取り込めているとみて、やや楽観の筋書きの重みを上げる。
- M&A で受託の幅を広げる会社を手頃な値段で買ったら
- 現金が稼ぐ力に変わったとみて、楽観側の利益を引き上げる。
- 高値の M&A で減損が出たら
- 資本の使い方に問題があるとみて、やや悲観の筋書きに重みを移す。
- ダイセキや他社が再び買収を提案したら
- 株主が今より高い値段を手にする道が開けたとみて、楽観の筋書きに近いとみる。
- 配当性向を 5 割以上に上げるか自社株買いを始めたら
- 現金が株主に戻るとみて、戻り方を引き上げる。
見ておくもの
- 受託蒸留の受注高と受注残
- プラントの受注
- 中期経営計画の進み具合
- M&A の案件と買収の値段
- 手元の現金と配当の総額
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE と k 7.5% から式で決め、楽観側は正当化 PER の約 9 割弱、中立は 1÷k の約 9 割に置いた。余った現金は現金 8.7 億円から運転の手元を引いた 6.5 億円とし、創業家の会社が 42% を持つので戻り方 0.5 を掛けた。悲観は今の自己資本に PBR を掛け、過去の PBR の底は使っていない。ダイセキの TOB の価格と今の PER・PBR は見て比べただけで、倍率の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→16.94 倍・やや楽観 PER 11.5→15.74 倍・中立 PER 11→14.37 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.75%。TOB の費用による一過性の赤字のほかは黒字で、存続の懸念は無いので上乗せはしない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。