結論
アテクトは、食品や医薬品の微生物検査に使う使い捨てのシャーレと培地、液晶用の IC を包むテープの保護資材、金属の粉末成形品の三つを手がける滋賀の化学会社だ。売上は 34 億円、営業利益は 2 億円。筆者の結論は割高である。稼ぎの中心は検査器材で、そこは堅い。だが全体の数量は増えず、借入の重さも残る。
売上の 57% を占める衛生検査器材が営業利益の大半を稼ぐ。半導体資材は売上の 35% で、世界首位級とされるが、液晶向けの需要は先細りだ。粉末成形は赤字が続いている。
半導体向けには、直近の追い風がある。2026 年 4〜6 月の売上は 2 割増えた。ただ、会社は中東情勢による先買いが一部含まれると説明している。この数字を年換算して先を描くことはしない。
売上は過去 11 年で 24 億円から 34 億円にとどまり、数量は横ばいだった。中計は 2030 年度に売上 50 億円、利益率 10% を掲げるが、似た目標は前の計画でも置かれていた。10 年を均した利益率は 8% 台と見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、よい部分と悪い部分がはっきり分かれる会社だ。衛生検査器材は、消耗品で需要が堅く、利益率も 1 割を超える。この部分だけなら、悪くない商売だと筆者は思う。
一方で、会社全体は資本を食う。有形固定資産が売上の 8 割と重く、借入が自己資本を上回る。ROE は資本コストに届かない年が多く、積んだ資産が稼ぎに結びついていない。
半導体資材は、世界首位級でも、市場が小さく縮んでいる。首位であることは、沈む船の船長であることと同じではない。PIM は赤字が止まらず、資本の使い道として疑問が残る。
経営者は中計で売上 50 億円を掲げる。前の計画でも 50 億円は掲げられ、達成できていない。数字への信頼は薄い。
中立の筋書きでも、10 年後の価値を割り戻すと、今の時価総額の 3 分の 1 に届かない。検査器材の堅さは認めるが、値段にはその先の改善まで入っている。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分かれる。最大は衛生検査器材で、売上の 57%(19 億円)を占める。食品工場や医薬品メーカーが、製品に細菌が混じっていないかを調べる検査で使う、使い捨てのシャーレ、培地、試薬だ。簡易に菌を検出できる培地も扱う。営業利益は 2.3 億円で、利益率は 12% に乗る。
半導体資材は売上の 35%(12 億円)。液晶ディスプレイを動かす IC は、TAB や COF と呼ぶ細いフィルム上に載せて実装する。このフィルムは巻き取りの際に傷つきやすく、間に挟む保護用のテープ、つまりスペーサーテープが要る。アテクトはこのテープで世界首位級とされる。最大の販売先は台湾のチップボンドで、売上の 1 割を占める。
PIM は売上の 8%。金属やセラミックの粉末を型に押し込んで焼き固め、自動車のターボ部品やカメラセンサーの部品をつくる。営業赤字は 1.3 億円で、まだ黒字にできていない。
本社と工場は滋賀県東近江市にある。台湾と韓国に子会社を持ち、従業員は小規模だ。筆頭株主の三甲(33%)は、樹脂製品を手がける岐阜の会社である。
優良さと弱いところ
堀は、半導体資材では狭く深く、検査器材では浅い。半導体資材は顧客が少なく、世界首位級の位置にあるが、その市場自体が小さくて縮んでいる。堀はあっても守る土地が細る。検査器材は使い捨て器材で、品質の実績は信頼を生むが、価格の競争は避けられない。
利益の安定性は低い。営業利益率は過去 12 年で 2% から 10% の間を動いた。2024 年 3 月期は純損失を出し、2022 年 3 月期は 10.5% の最高だった。小さな会社のため、1 つの製品や 1 社の顧客が利益を大きく動かす。
資本効率は弱い。ROE は過去 10 年の中央値で 4〜5% で、資本コストには届かない年が多い。有形固定資産が 28 億円と厚く、売上の 8 割に相当する。工場を使い続けるために、更新の投資は欠かせない。
財務は軽くない。借入が自己資本を上回り、営業利益は利払いの 10 倍だ。純負債は営業利益と償却の合計の 5 倍ほどで、金利の上昇が効いてくる。
いい点は、検査器材の需要が景気に左右されにくいことと、PIM の赤字が縮んでいることだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
アテクトの戦う場は三つあり、それぞれ市場の性格が違う。
衛生検査器材は、食品衛生の管理が義務化された流れに支えられる、数量の安定した市場だ。日本の人口は減るが、検査の頻度は上がる。使い捨て器材は消耗品で、価格競争は強い。海外の安価な製品との違いは、品質の保証と国内の迅速な供給にある。同社は海外売上の拡大を中計に入れている。
半導体資材は、液晶ディスプレイの駆動 IC を載せる TAB・COF テープ向けだ。スマートフォンは有機 EL へ移り、液晶は大型のテレビなどに残る。実装の方式が変われば需要が減ると、会社自身がリスクに挙げている。需要は液晶の生産に左右され、山と谷の幅が大きい。2026 年 4〜6 月の売上は 2 割増えたが、先買いを含むと説明されている。山の数字を平常と見ない。
PIM は、自動車のターボ部品の需要が電気自動車化で細る逆風を受ける。センサー向けや産業機械向けに広げているが、規模が小さく、固定費をまかなえていない。
10 年では、検査器材が堅く、半導体資材が細り、PIM が黒字化できるかが分かれ目だと筆者は考える。
資本政策と M&A
還元は、業績に応じた安定配当で、年 1 回の期末払いだ。2026 年 3 月期の総額は 0.4 億円、性向は 3 割ほどだった。借入返済が先で、自社株買いの実績はない。
設備投資は年 0.7 億円と小さく、減価償却より少ない。工場を更新するときは、物価と建築費の上昇で費用が膨らむ。償却は取得した値段のままで、物価で増えないため、見かけの利益は今より良く出るが、更新の現金は利益より重くなる。10 年の償却は年 1.7 億円から 2.3 億円ほどへ増えると見た(推定)。
筆頭株主は三甲(33%)で、その他の関係会社に当たる。親子上場に近い形で、余った現金が出ても戻り方は読みにくいが、今は借入が重く余った現金はない。TOB などの話は確認できない。
中計は 2030 年度に売上 50 億円、営業利益 5 億円、利益率 10% を掲げる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
稼ぎの柱は検査器材で、そこは10年間崩れにくい。食品衛生の検査は景気に左右されず、2026年3月期の利益は前期の7割増になった。簡易検出培地や細胞培養用の培地を加えれば、売上30億円は手の届く目標だ。海外に売る余地も大きく、国内の人口減は問題にならない。
半導体資材は世界首位級で、顧客との長い取引がある。車載ディスプレイなど液晶の新しい用途が広がれば、数量は守れる。直近の売上が2割伸びたのも、需要の底打ちの兆しだ。
赤字のPIMは、センサー向けのセラミックスが育てば黒字にできる。売上5億円で利益が出れば、全社の営業利益はさらに1億円積み上がる。
財務も改善している。営業の現金収入は2.7億円で、借入の返済は進んでいる。設備投資は小さく、配当を払ってなお現金が残る。借入が減れば利払いも軽くなり、純利益の伸びは営業利益より速くなる。利益率が中計の10%に届けば、ROEは8%を超える。厚い工場の資産が、ようやく稼ぎに結びつく局面に入る。
慎重な見方
売上は11年で24億円から34億円にとどまった。物価の上昇を考えれば、数量は横ばいかむしろ縮んでいる。中計の売上50億円は、前の計画でも掲げて届かなかった数字だ。
半導体資材は構造的に縮む。液晶の駆動ICの実装方式が変われば、TAB・COFの需要は細る。会社自身がこれをリスクに挙げている。直近の2割増も、中東情勢による先買いと会社自身が説明している。会社全体の数量が伸びないなかで、大きな目標だけが並ぶ。山の数字を平常と見るのは危ない。
PIMは赤字が続き、電気自動車化で主力のターボ部品が消える。資本をつぎ込んでも、回収の見通しは立たない。
財務も軽くない。借入が自己資本を上回り、純負債は営業利益と償却の合計の5倍ほどある。金利が上がれば、利払いが重くなる。工場の更新費用は物価で膨らみ、利益より現金が先に出ていく。ROEはこの先も資本コストに届かない。検査器材の堅さは認めるが、それだけで全体の弱さは補えない。三甲という大株主がいても、改善の約束は見えない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。検査器材の堅さは本物だが、全体の数量は11年間横ばいで、半導体資材は先細り、借入も重い。直近の売上増には先買いが混じっている。確率は中立を中心に、悲観側へ厚く配った。検査器材が支えるので、最悪の筋書きは厚くしすぎなかった。中立は、検査器材の堅さと半導体資材の縮みの落としどころに置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 454 円20 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 101 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 247 円11 億円、今との差 −61.9%、 期待の年率 −1.6%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 995 円44 億円 | 181 円8 億円 | +81.2% | +6.1% | 71 円3 億円 |
| やや楽観 | 17% | 689 円30 億円 | 147 円7 億円 | +28.9% | +2.6% | 142 円6 億円 |
| 中立 | 34% | 533 円24 億円 | 113 円5 億円 | −0.5% | −0.1% | 220 円10 億円 |
| やや悲観 | 27% | 305 円14 億円 | 79 円4 億円 | −40.7% | −5.1% | 104 円5 億円 |
| 悲観 | 16% | 81 円4 億円 | 34 円2 億円 | −82.2% | −15.9% | 18 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 454 円20 億円 | 101 円4 億円 | −14.5% | −1.6% | 555 円25 億円 |
今の株価時価総額 649 円29 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 衛生検査器材が海外へ広がり、利益率が 1 割を超える 利益 4 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 995 円44 億円
衛生検査器材が海外へ広がり、利益率が 1 割を超える。細胞培養用の培地や簡易検出培地が加わり、衛生検査器材の売上は 35 億円に近づく。国内の食品検査の需要に加え、アジアの食品工場にも販路が広がる。半導体資材はほぼ今の数量を保ち、PIM は黒字になる。
売上は 59 億円、営業利益率は 11.7% と、中計の 10% を超える。借入は返済が進み、自己資本比率は 5 割に近づく。配当は性向 30% 前後で、ROE は 10% を超える。半導体資材は車載ディスプレイなど新しい用途で数量を守り、全体の利益を支える。
- 衛生検査器材:数量 540(国内の使い捨て検査器材(シャーレ・培地)の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00。樹脂・培地原料の転嫁と競争を含む))→ 売上 35 億円・営業利益 5 億円。数量 1.35 倍・価格 1.34 倍・利益率 14.0%
- 半導体資材(スペーサーテープ):数量 21.0(TAB・COF向け保護資材の世界の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.30(価格指数(今=1.00。PETフィルムなど原料の転嫁と顧客の値下げを含む))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・利益率 10.0%
- PIM(粉末射出成形):数量 750(国内の粉末射出成形部品の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00。物価の分と顧客の値下げを含む))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。数量 2.50 倍・価格 1.34 倍・利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.0 倍。全体の PER 10.99 倍、時価総額 44 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:衛生検査器材が計画どおり伸び、PIM も黒字化する必要がある。売上は過去 11 年で 24 億円から 34 億円にとどまっており、同業の 5〜8% より薄い 6% に置いた。
やや楽観 17% 中計に遅れて届く 利益 3 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 689 円30 億円
中計に遅れて届く。衛生検査器材は国内の食品検査需要を取り込んで着実に伸び、海外の売上も少しずつ増える。半導体資材は液晶向けの需要が細るなかで、車載ディスプレイなどの用途で数量を守る。台湾の顧客との取引は続くが、大きくは伸びない。
売上は 50 億円、営業利益は 5 億円、利益率は 10% になる。PIM は赤字を脱し、わずかな黒字になる。設備の更新は進むが、投資は償却の範囲に収まる。借入は減り、ROE は 8% 台に乗る。ただし、中計が掲げる売上や利益の達成は、数年遅れる。検査器材の海外展開が軌道に乗るのに、時間がかかるためだ。
- 衛生検査器材:数量 488(国内の使い捨て検査器材(シャーレ・培地)の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.30(価格指数(今=1.00。樹脂・培地原料の転嫁と競争を含む))→ 売上 31 億円・営業利益 4 億円。数量 1.22 倍・価格 1.30 倍・利益率 12.0%
- 半導体資材(スペーサーテープ):数量 17.8(TAB・COF向け保護資材の世界の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.30(価格指数(今=1.00。PETフィルムなど原料の転嫁と顧客の値下げを含む))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍・価格 1.30 倍・利益率 9.0%
- PIM(粉末射出成形):数量 540(国内の粉末射出成形部品の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.30(価格指数(今=1.00。物価の分と顧客の値下げを含む))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 1.80 倍・価格 1.30 倍・利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 30 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の営業利益 5 億円が数年遅れで届く筋書き。過去に売上 50 億円の目標を掲げて達成できていない実績があるため、同業の 17〜18% と同じ 17% に置いた。
中立 34% 検査器材は堅く、半導体資材は細り、売上は物価並みの伸びにとどまる 利益 2 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 533 円24 億円
検査器材は堅く、半導体資材は細り、売上は物価並みの伸びにとどまる。衛生検査器材は食品衛生の需要に支えられ、数量は 1 割増える。半導体資材は液晶向けが縮み、数量は 3 割減る。PIM は赤字をほぼ解消するが、利益には貢献しない。
売上は 41 億円、営業利益率は 8% 台に乗る。ただし、これは検査器材の比重が高まって利益率が上がるだけで、全体の数量は増えない。設備の更新費用が物価で膨らみ、償却と投資が利益を削る。ROE は 6% 台で、資本コストに届かない。借入は返済が進み、利払いの負担は軽くなる。
- 衛生検査器材:数量 440(国内の使い捨て検査器材(シャーレ・培地)の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.25(価格指数(今=1.00。樹脂・培地原料の転嫁と競争を含む))→ 売上 27 億円・営業利益 3 億円。数量 1.10 倍・価格 1.25 倍・利益率 10.0%
- 半導体資材(スペーサーテープ):数量 14.7(TAB・COF向け保護資材の世界の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.25(価格指数(今=1.00。PETフィルムなど原料の転嫁と顧客の値下げを含む))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。数量 0.70 倍・価格 1.25 倍・利益率 7.5%
- PIM(粉末射出成形):数量 420(国内の粉末射出成形部品の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.25(価格指数(今=1.00。物価の分と顧客の値下げを含む))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量 1.40 倍・価格 1.25 倍・利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 20 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:衛生検査器材の堅さを認めつつ、半導体資材の縮みと PIM の赤字が残る筋書き。売上が 11 年で数量ほぼ横ばいの実績から、同業と同じ 34% を置いた。
やや悲観 27% 検査器材が値下げ競争に巻き込まれ、半導体資材が半分に縮む 利益 1 億円 · PER 7.4 倍 · 株価時価総額 305 円14 億円
検査器材が値下げ競争に巻き込まれ、半導体資材が半分に縮む。衛生検査器材の数量は横ばいで、海外メーカーの安い使い捨て器材が価格を押し下げる。半導体資材は、液晶ディスプレイの駆動用 IC の実装方式が変わって数量が半分になる。
売上は 33 億円と今とほぼ同じで、物価を考えれば実質で縮む。営業利益率は 6.4% まで下がり、借入の利払いが重く残る。PIM の赤字が止まらず、事業の見直しを迫られる。配当は据え置きが精いっぱいだ。借入の借り換えは、金利が上がる局面で行われる。半導体資材の縮みを検査器材の伸びで埋められず、全体の利益は横ばいにとどまる。
- 衛生検査器材:数量 400(国内の使い捨て検査器材(シャーレ・培地)の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.20(価格指数(今=1.00。樹脂・培地原料の転嫁と競争を含む))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍・価格 1.20 倍・利益率 8.5%
- 半導体資材(スペーサーテープ):数量 10.5(TAB・COF向け保護資材の世界の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.15(価格指数(今=1.00。PETフィルムなど原料の転嫁と顧客の値下げを含む))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量 0.50 倍・価格 1.15 倍・利益率 5.0%
- PIM(粉末射出成形):数量 300(国内の粉末射出成形部品の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.20(価格指数(今=1.00。物価の分と顧客の値下げを含む))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.20 倍・利益率 -6.0%
倍率:事業の純利益 1.2 億円・ROE 約 4% は k よりかなり低く、PER の上限は 1÷k=10.3 倍。取り分が削られ借入も重い筋書きのため、上限の約 7 割の 7.4 倍に置いた。
確率:半導体資材が半分に縮み、検査器材の利益率も下がる筋書き。借入が重く金利上昇の影響も受けるため、同業の 27〜28% と同じ 27% に置いた。
悲観 16% 主力が両方とも傷み、借入が重くのしかかる 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 81 円4 億円
主力が両方とも傷み、借入が重くのしかかる。TAB・COF 向けの保護資材はほぼ消え、半導体資材は赤字になる。顧客のチップボンドが調達を見直せば、売上の1割が一度に消える。衛生検査器材は海外メーカーとの価格競争で利益率が 6% まで下がる。
売上は 23 億円に細り、営業利益は 1 億円を割る。借入の返済と更新投資が現金を食い、配当は止まる。財務の余裕が小さく、親会社に近い筆頭株主の三甲との関係の見直しが避けられない。価値は稼ぐ力の小ささそのものになる。自己資本は減損で細り、再編や身売りの話が出てもおかしくない。
- 衛生検査器材:数量 360(国内の使い捨て検査器材(シャーレ・培地)の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.10(価格指数(今=1.00。樹脂・培地原料の転嫁と競争を含む))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90 倍・価格 1.10 倍・利益率 6.0%
- 半導体資材(スペーサーテープ):数量 4.2(TAB・COF向け保護資材の世界の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.00(価格指数(今=1.00。PETフィルムなど原料の転嫁と顧客の値下げを含む))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量 0.20 倍・価格 1.00 倍・利益率 -4.0%
- PIM(粉末射出成形):数量 150(国内の粉末射出成形部品の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.00(価格指数(今=1.00。物価の分と顧客の値下げを含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量 0.50 倍・価格 1.00 倍・利益率 -15.0%
倍率:事業の純利益 0.49 億円・ROE 約 2.7% は k よりはるかに低く、稼ぐ力(純利益÷k)は約 5 億円。EV(時価総額+純負債 19 億円)÷営業利益は約 25 倍と高いが、床は借入を除いた稼ぐ力で置いた。純現金は無く借入が重いため売れる資産の床は立てず、今の自己資本 18.25 億円に 0.2 倍を掛けて稼ぐ力に合わせて置いた。
確率:半導体資材が消え、検査器材も値下げで利益が細る構造的な負けの筋書き。2024 年 3 月期に純損失を出した実績があり、借入も重いため、同業より厚い 16% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
衛生検査器材
食品・医薬品の微生物検査に使うディスポーザブルのシャーレ、培地、試薬。
| 数量国内の使い捨て検査器材(シャーレ・培地)の実質市場(億円)× 取り分 | 価格価格指数(今=1.00。樹脂・培地原料の転嫁と競争を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 1.00 | 19 | 2 |
| 10 年後 中立 | 440 | 1.25 | 27 | 3 |
取り方:開示は衛生検査器材の売上19.3億円・営業利益2.3億円(利益率12%)。数量は、国内の食品・医薬品・研究向けの使い捨て検査器材の市場を約400億円(実質)と推定し、取り分を約4.8%とした(推定。市場規模は開示が無い)。
半導体資材(スペーサーテープ)
液晶ディスプレイ駆動用ICを実装するTAB・COFテープの保護資材。
| 数量TAB・COF向け保護資材の世界の実質市場(億円)× 取り分 | 価格価格指数(今=1.00。PETフィルムなど原料の転嫁と顧客の値下げを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 21.0 | 1.00 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 14.7 | 1.25 | 10 | 1 |
取り方:開示は半導体資材の売上11.7億円・営業利益1.0億円(利益率8.8%)。数量は、TAB・COF向け保護資材の世界市場を約21億円(実質)と推定し、同社の取り分を約55%(外部の紹介で世界首位とされる)とした(推定)。直近四半期は中東情勢による先買いの受注を含むとされ、年換算しない。
PIM(粉末射出成形)
金属・セラミックの粉末を射出成形する自動車用ターボ部品、センサー用セラミックス部品、ベアリング部品。
| 数量国内の粉末射出成形部品の実質市場(億円)× 取り分 | 価格価格指数(今=1.00。物価の分と顧客の値下げを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 1.00 | 3 | −1 |
| 10 年後 中立 | 420 | 1.25 | 5 | 0 |
取り方:開示はPIMの売上2.6億円・営業損失1.3億円。数量は、国内の粉末射出成形部品の市場を約300億円(実質)と推定し、取り分を約0.9%とした(推定)。赤字が続いている。
リスクと懸念
液晶向け需要の先細り
TAB・COF 向けの保護資材は、液晶ディスプレイの駆動 IC の実装方式の変化で細りうる。顧客が少なく、1 社の動向で売上が大きく動く。直近の増収は先買いを含む。
検査器材の価格競争
使い捨て器材は消耗品で、海外の安価な製品との競争がある。品質の保証で差をつけているが、原料の樹脂が上がったとき転嫁が遅れる。
PIM の赤字
営業赤字が年 1 億円を超えて続く。主力の自動車ターボ部品は電気自動車化で細る。黒字化できなければ、事業の見直しが避けられない。
借入の重さ
借入が自己資本を上回り、純負債は営業利益と償却の合計の 5 倍ほどだ。借り換えで金利が 3.5% 前後になると、利払いが利益を圧迫する。
設備の更新費用
有形固定資産が売上の 8 割と重く、設備投資は償却を下回っている。更新時は物価で費用が膨らみ、現金が利益より先に出ていく。
筆頭株主との関係
三甲が 33% を持つ。資本政策や経営の方向で意向が働きうる。少数株主の取り分が守られるかは、開示で確かめるしかない。
今後の分かれ目
- 衛生検査器材の売上が 25 億円を超え、営業利益率が 12% で定着したら
- やや楽観から楽観の筋書きに重みを移す。ただし倍率の上限(1÷k)は変わらず、利益の伸びがそのまま価値になるわけではない。
- 半導体資材の売上が先買いの反動で落ち込んだら
- 山の数字を平常と見ない前提が確かめられ、悲観側の確率を上げる。
- PIM が黒字化し、売上 5 億円に近づいたら
- 全社の営業利益を 1 億円規模で押し上げる。やや楽観の重みを増やす。
- 三甲が持ち株を増やす、または公開買付けを発表したら
- 価値の見方は変わりうるが、確認されるまで筋書きには数えない。
- 借入の借り換えで金利が想定の 3.5% を上回ったら
- 純利益が想定より減り、悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 衛生検査器材の売上と営業利益率
- 半導体資材の受注(先買いの反動)
- PIM の営業損益
- 純負債と利払い
- 三甲の持株比率
倍率と資本コストの決め方
市場規模(実質)に取り分を掛け、価格指数に物価 3% を入れて売上を積んだ。検査器材は消耗品の転嫁で 10 年 1.25〜1.3 倍、半導体資材は顧客の値下げを引いて 1.25 倍とした。半導体資材の数量は、直近四半期の先買いを年換算せず、液晶向けの縮みを前提に置いた。倍率は資本コスト 9.5% と事業の ROE から、PER の上限 1÷k を出し、中立は約 8 割、やや悲観は約 7 割に置いた。今の株価や同業の倍率には寄せていない。悲観は稼ぐ力から置いた。市場規模と事業別の取り分は開示が無く推定。償却は物価で増やさず、更新投資で 1.7 億円から 2.3 億円へ増えるとして利益率に入れた(推定)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→10.99 倍・やや楽観 PER 9.2→10.53 倍・中立 PER 8.5→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.70% → 9.50%。