結論
三光合成は、車の内装・外装に使う樹脂部品と、それを作る金型を手がける富山の部品会社だ。売上の約7割が車両用で、海外が3分の2近くを占める。筆者の結論は「ほぼ適正」だ。利益は過去最高圏にあるが、その高さが10年続くとは見ない。
稼ぐ力は上がってきた。営業利益率は4%台から7%台へ上がり、直近の営業利益は71億円と会社予想を大きく超えた。ところが純利益は8億円に落ちた。タイの子会社が受けた仲裁の和解費用を特別損失に積んだためで、本業の力が落ちたわけではない。
気になるのは、利益率がどこまで保てるかだ。過去12年で7%を超えたのは直近の1期だけである。完成車メーカーは毎年のように値下げを求める。中立の筋書きは、利益率を7%弱へ戻して置く。
財務は堅い。純負債は自己資本の2割で、利息の支払いは営業利益で13倍まかなえる。配当は7期連続で増やす。一方、顧客の偏りと海外工場の運営、電動化での部品の入れ替わりは消えない。確率で重みを付けた価値は、今の時価総額を1割弱上回る程度にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、三光合成は「長く持ちたい会社」ではあるが「安く買わないと報われない会社」だ。事業は10年後も残る。樹脂部品は軽量化に欠かせず、金型から一貫して作れる強みもある。
問題は、稼いだ利益が株主の手元に残りにくい点だ。完成車メーカーは値段を決める立場にあり、利益の一部は毎年の値下げで持っていかれる。設備投資も続く。オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、見かけの純利益より小さい。
経営の資本配分は、堅実さが取り柄だ。配当を増やし、借金も重くない。一方、直近はタイの仲裁で特別損失を出し、海外の管理に甘さがあったことを示した。ここに筆者は慎重になる。
安全域は、今の値段に十分あるとは言えない。確率で重みを付けた価値は、今の時価総額を1割弱上回るにとどまり、判断を誤る余地を吸収できる厚みではない。事業の本質は悪くない。値段が見合うかどうかは、利益率が7%台を保てるかで決まる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、車1台ごとに入る樹脂部品の売上だ。バンパー、インストルメントパネル、コンソールボックスなどの内外装部品と、モータ部品やヘッドライト部品などの精密部品を、ホンダなど日系完成車メーカーに納める。成形品は売上の8割強、車両用は約7割を占める。残りは情報通信機器・家電向けの成形品と、金型の売上だ。
製品の設計、金型づくり、成形、塗装、組立、さらに省力化機器の製作までを自社でこなす。会社は自らを「プラスチックエンジニアリングカンパニー」と呼ぶ。金型を自分で作れるので、新車の開発段階から顧客と組んで部品を決められる。
地域の構成は偏りがない。2025年5月期は日本が302億円、アジアが297億円、北米が191億円、欧州が121億円だった。海外の売上は全体の約3分の2を占める。タイとインドネシアにはアジアの主力拠点があり、米国にはインディアナ州の工場がある。連結の従業員は約2,900人、子会社は21社だ。
ここ数年の増益は、値上げの転嫁と生産性の改善が主因だ。国内で効いた生産性改善を海外工場に広げる作業が、いまの経営課題になっている。
優良さと弱いところ
堀は、車の部品メーカーとして標準的で、強くはない。完成車メーカーの認定を受けた部品は、長く取引が続く。ただし値段は顧客が握っており、原価低減の要請が毎年かかる。
強みは三つある。第一に、金型から塗装、組立までの一貫生産で、新車の開発段階から食い込める。第二に、日本、アジア、北米、欧州と拠点が分かれ、一つの地域の不調を他が補いやすい。第三に、財務が堅く、投資と増配を同時に進められる。
資本効率は平均的だ。ROEは過去10年の中央値で8%、直近の和解費用の年は2%まで落ちた。営業利益率は2020年5月期の1.4%から2026年5月期の7.2%へ上がったが、これは過去12年で最高の水準だ。
弱みは、顧客の偏りと海外の運営の難しさだ。2026年3月には、タイの連結子会社が取引先から仲裁を申し立てられた。和解は8月に結ばれたが、海外拠点での契約管理には課題が残る。経営は増配を続けているものの、資本の使い方を示す中期の数値計画は公表されておらず、投資家が判断する材料が少ない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場の大きさは、日本の自動車部品の出荷額が41.0兆円(経済産業省「2024年経済構造実態調査」)という規模だ。世界の新車は年9,000万台前後で、三光合成が部品を納める車は400万台相当と推定する。世界の台数の4%強にあたる。
同じ樹脂の内外装部品で競うのは、ホンダ系の森六(既存の樹脂部品で売上1,400億円強)などだ。森六は買収で規模を広げている。三光合成は売上980億円と、より小さい。顧客の囲い込みは、系列の部品メーカーが強い。
需要は車の生産台数に連動する。国内は人口減で横ばいから微減、海外が補う構図だ。電動化は部品の中身を入れ替える。樹脂部品は軽量化の手段として使われ続けるが、電気自動車では1台あたりの部品点数や仕様が変わる。HVの需要が長引き、会社は米国工場の拡張を、当初のEV向けからHVを含む受注へ軸足を移している。
米国の関税、為替、中国メーカーの台頭が業界の変数だ。物価が毎年3%上がる世界では、人件費と材料費の上昇を値段に移せるかが利益率を決める。三光合成は直近の3年で、これを実現した。
資本政策と M&A
還元の軸は配当で、7期連続で増やしている。配当性向は2割強と低い。自社株買いは確認できなかった。
資本の使い方は、設備投資が中心だ。米国、インド、チェコの能力増強を進めており、投資のキャッシュは営業のキャッシュの半分を超える年もある。M&Aで大きく広げる動きは見えない。
2026年3月に申し立てられたタイ子会社の仲裁は、2026年8月に和解した。2026年5月期の純利益は、この和解の費用を特別損失に積んで8億円に落ちた。金額と支払いの時期は有料の開示のため読めておらず、翌期の現金には負担が残るとみる。
筆頭株主は取引先の双葉電子工業で、持ち株比率は約14.7%だ。信託銀行や資産管理会社が続く。支配株主はいない。双葉電子工業の持ち分は、買収の受け皿にも、安定株主にもなりうる。
10年の還元は、配当性向を2割強から3割へ引き上げる形で置いた。利益が落ちる筋書きでは、還元も減らす。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益率は構造的に上がった。営業利益率は4%台から7%台へ上がり、直近の営業利益は会社予想の61億円を71億円へ上回った。値上げの転嫁と生産性の改善が定着しており、会社の目標である「8%以上」は射程にある。
投資も実を結びつつある。米国インディアナの拡張は、当初のEV向けからHVを含む受注へ軸足を移し、需要の後退を避けた。インド、チェコでも能力を増強している。海外が売上の約3分の2を占める分散は、一つの地域の不調に強い。
財務の余裕は大きい。純負債は自己資本の2割で、利息の支払いは営業利益で13倍まかなえる。タイの和解で最大の火種も消えた。配当は7期連続で増え、配当性向はまだ2割強と低い。還元を厚くする余地は広く、自己資本の積み上がりも抑えられる。これまでの増益は数量の伸びでなく、値上げと生産性の改善が主因で、再現しやすい。会社予想の営業利益は今期79億円、来期85億円と続く。新工場が立ち上がり、ホンダ以外の顧客も取れれば、10年で売上1,600億円、営業利益135億円の筋書きは、増産が計画どおりに進めば届く範囲にある。
慎重な見方
利益率の高さは、景気と為替の恩恵が大きい。営業利益率は過去12年で7%を超えたことがなく、直近の7.2%は例外だ。完成車メーカーは毎年のように値下げを求め、その負担を部品会社が受ける構図は変わらない。物価が3%上がる世界で、その分を丸ごと値段に移せる保証はない。
電動化は、部品の中身を入れ替える。HVの需要が長引いても、10年の間に電気自動車の比率は上がる。そのとき1台あたりの樹脂部品の仕様が変わり、取れる仕事と取れない仕事が分かれる。中国メーカーの台頭で、タイとインドネシアの日系の需要は細る恐れが強い。
海外の管理も心配だ。タイの子会社が仲裁を申し立てられ、純利益は8億円に落ちた。和解の金額と支払いは公になっておらず、翌期以降の現金に負担が残る。顧客もホンダなど日系に偏り、一社の生産計画の変更が業績を直撃する。2019年5月期にも、トヨタの金型開発の鈍化とホンダのメキシコ工場の洪水が重なった。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の見方が優勢だが、利益率の持続では慎重な見方に説得力がある。直近の営業利益率7.2%は過去12年で最高で、会社の「8%以上」が10年続く根拠は薄い。そこで、中立は利益率を6.8%へ戻して置いた。
確率は、悲観に1割、やや悲観に2割強を置き、慎重な側へ寄せた。ただし財務が堅く、樹脂部品の需要が消えない点は強気の見方を支える。結果として、中立の価値は今の時価総額を上回るが、確率で重みを付けた価値は1割弱の上振れにとどまり、「ほぼ適正」とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 2,230 円680 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 434 円132 億円)。 今の値に割り戻すと 1,328 円405 億円、今との差 +61.6%、 期待の年率 +12.5%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,219 円1,286 億円 | 702 円214 億円 | +498.6% | +19.6% | 492 円150 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,274 円998 億円 | 551 円168 億円 | +365.3% | +16.6% | 765 円233 億円 |
| 中立 | 38% | 2,535 円773 億円 | 449 円137 億円 | +263.0% | +13.8% | 1,134 円346 億円 |
| やや悲観 | 22% | 762 円232 億円 | 295 円90 億円 | +28.6% | +2.5% | 233 円71 億円 |
| 悲観 | 10% | 228 円69 億円 | 180 円55 億円 | −50.4% | −6.8% | 41 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,230 円680 億円 | 434 円132 億円 | +224.1% | +12.5% | 2,664 円812 億円 |
今の株価時価総額 822 円251 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 米国・インド・チェコの新工場が当たり、利益率が8%台に乗る 利益 82 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 4,219 円1,286 億円
米国インディアナの拡張、インド、チェコの増強が計画どおり立ち上がり、ホンダ系のほかトヨタ系や欧米勢の受注も取れる。部品を納める車は400万台相当から500万台相当に増える。HV(ハイブリッド車)の需要が長く続き、日系完成車メーカーの北米生産が底堅いことが追い風になる。
電動化で1台あたりの樹脂部品の中身が高度になり、1台あたりの売上は物価を超えて1.45倍になる。金型は新車の開発が続き340件に伸びる。売上は1,600億円、営業利益は135億円、営業利益率は8.4%に達する。会社が掲げる「8%以上」を超える。
タイの仲裁は決着済みで、海外の火種は残らない。財務に余裕ができ、配当性向は3割台半ばまで上がる。自己資本は厚くなりすぎず、ROEは11%を保つ。ここまでうまくいく確率は低いが、車の部品でも、工場の稼働率が上がれば利益は大きく伸びる。
- 車両用成形品(内外装・機能部品):数量 500(部品を納める車両の台数相当(万台・年、推定))× 価格 2.03(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 1,013 億円・営業利益 91 億円。500万台相当(1.25倍)、1台相当あたり1.45倍、営業利益率9.0%
- 金型:数量 340(納める金型の件数(件・年、推定))× 価格 0.84(1件あたりの売上(億円、物価込みの名目))→ 売上 287 億円・営業利益 26 億円。340件、1件あたり1.41倍、営業利益率9.0%
- 情報通信・家電などの成形品:数量 150(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 201(1個あたり売上(円、物価込みの名目))→ 売上 302 億円・営業利益 21 億円。150百万個、1個あたり1.34倍、営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 82 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.13 倍、時価総額 1,241 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:複数の新工場が計画どおり当たり、顧客も広がる必要がある。連続して成功する確度は高くない。
やや楽観 20% 増産が実り、利益率が計画どおり8%近くに届く 利益 65 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,274 円998 億円
新工場が立ち上がり、会社の計画に近い形で10年が進む。部品を納める車は465万台相当に増え、1台あたりの売上は物価に少し上乗せした1.39倍になる。金型は325件で、新車の開発が途切れない。
営業利益率は7.6%で、直近の7.2%よりわずかに高い。値上げの転嫁が続き、生産性の改善が利益に残る。売上は1,465億円、営業利益は111億円になる。
海外の稼ぎのうち、アジアの内外装部品の減収は止まり、北米と欧州が補う。配当は増え続けるが、設備投資も要るため、配当性向は3割強にとどまる。ROEは9%台で、資本コストをわずかに上回る。
- 車両用成形品(内外装・機能部品):数量 465(部品を納める車両の台数相当(万台・年、推定))× 価格 1.95(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 907 億円・営業利益 74 億円。465万台相当、1台相当あたり1.39倍、営業利益率8.2%
- 金型:数量 325(納める金型の件数(件・年、推定))× 価格 0.82(1件あたりの売上(億円、物価込みの名目))→ 売上 267 億円・営業利益 21 億円。325件、1件あたり1.37倍、営業利益率8.0%
- 情報通信・家電などの成形品:数量 145(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 201(1個あたり売上(円、物価込みの名目))→ 売上 291 億円・営業利益 19 億円。145百万個、1個あたり1.34倍、営業利益率6.5%
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.34 倍、時価総額 935 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画に近い形。足元の利益が最高圏にあり、実績の裏づけはあるが、値下げ要請を考えると中立より軽く置く。
中立 38% 車は横ばい、物価並みの値上げで売上は3%台、利益率は7%弱へ戻る 利益 51 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 2,535 円773 億円
日系完成車メーカーの世界生産はほぼ横ばいで、部品を納める車は400万台相当から430万台相当に増える。新工場が貢献する分だけ増えるが、国内とタイは細る。値段は物価並みの1.34倍で、人件費と材料の上昇を転嫁できる範囲に収まる。
金型は310件で、新車の開発に合わせて波を打つ。情報通信機器や家電向けは、国内の需要が細るため個数が15%減る。
売上は1,330億円、営業利益は90億円。営業利益率は6.8%で、直近の7.2%をわずかに下回る。完成車メーカーからの値下げ要請は毎年かかり続け、直近の高い利益率が10年続くとは見ない。会社の目標「8%以上」には届かない。
純利益は51億円。配当と自社株買いの合計は純利益の3割に増え、ROEは7.7%と資本コストに届かない。
- 車両用成形品(内外装・機能部品):数量 430(部品を納める車両の台数相当(万台・年、推定))× 価格 1.88(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 807 億円・営業利益 60 億円。430万台相当、1台相当あたり1.34倍(物価並み)、営業利益率7.4%
- 金型:数量 310(納める金型の件数(件・年、推定))× 価格 0.80(1件あたりの売上(億円、物価込みの名目))→ 売上 249 億円・営業利益 17 億円。310件、1件あたり1.34倍、営業利益率7.0%
- 情報通信・家電などの成形品:数量 136(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 201(1個あたり売上(円、物価込みの名目))→ 売上 273 億円・営業利益 16 億円。136百万個(15%減)、1個あたり1.34倍、営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.52 倍、時価総額 692 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の利益率を一部戻して置く、議論の落としどころ。慎重な見方がやや強いと見て、中立に4割弱を置いた。
やや悲観 22% 値下げ要請と海外の苦戦で、利益率が4%台に下がる 利益 24 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 762 円232 億円
完成車メーカーの値下げ要請が強まり、1台あたりの売上は物価を下回る1.30倍にとどまる。ホンダを含む日系の北米・アジアでの生産が伸びず、部品を納める車は390万台相当に減る。タイとインドネシアの需要が中国メーカーに奪われる形が続く。
金型は新車の開発が減り270件、情報通信・家電向けは国内の空洞化で120百万個に細る。
売上は1,145億円、営業利益は52億円で、営業利益率は4.5%まで下がる。2020年5月期の1.4%ほど落ちないが、固定費の重さで利益が先に減る。
配当は増やさず、配当性向は3割弱にとどめる。ROEは4%台で、資本コストを大きく下回る。
- 車両用成形品(内外装・機能部品):数量 390(部品を納める車両の台数相当(万台・年、推定))× 価格 1.82(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 710 億円・営業利益 36 億円。390万台相当、1台相当あたり1.30倍(値下げ要請)、営業利益率5.0%
- 金型:数量 270(納める金型の件数(件・年、推定))× 価格 0.76(1件あたりの売上(億円、物価込みの名目))→ 売上 206 億円・営業利益 10 億円。270件、1件あたり1.27倍、営業利益率5.0%
- 情報通信・家電などの成形品:数量 120(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 191(1個あたり売上(円、物価込みの名目))→ 売上 229 億円・営業利益 9 億円。120百万個、1個あたり1.27倍、営業利益率4.0%
倍率:k 8%%。ROE 4.2% は資本コスト8% 以下なので、正当化PERの上限は1÷k=11.8倍。稼ぐ力が資本コストを大きく下回り、堀も薄いので、上限の約5.5割の6.5倍に置いた。
確率:値下げ要請と海外の競争の強まりは、この業界で現に起きている。実現しやすい。
悲観 10% 主力顧客の生産が崩れ、海外工場の減損に追い込まれる 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 228 円69 億円
日系完成車メーカーが中国・東南アジアで世界シェアを大きく失い、日本車の世界生産が3割前後減る。三光合成の部品を納める車は400万台相当から280万台相当に減る。電動化で1台あたりの樹脂部品の中身が入れ替わり、取れない仕事が出る。
値段は10年で1.23倍にとどまり、物価に追いつかない。金型の受注は200件に減り、情報通信・家電向けも90百万個に細る。
売上は790億円まで縮み、営業利益は14億円、営業利益率は2%に満たない。タイとインドネシアの工場は稼働が落ち、減損に追い込まれる。自己資本は減損で400億円に減る。
会社は設備を売って借入を返し、小さくなって生き残る。配当は大きく減る。
- 車両用成形品(内外装・機能部品):数量 280(部品を納める車両の台数相当(万台・年、推定))× 価格 1.73(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 483 億円・営業利益 12 億円。280万台相当(3割減)、1台相当あたり1.23倍、営業利益率2.5%
- 金型:数量 200(納める金型の件数(件・年、推定))× 価格 0.72(1件あたりの売上(億円、物価込みの名目))→ 売上 145 億円・営業利益 3 億円。200件、1件あたり1.21倍、営業利益率2.0%
- 情報通信・家電などの成形品:数量 90.0(出荷個数(百万個・年、推定))× 価格 181(1個あたり売上(円、物価込みの名目))→ 売上 163 億円・営業利益 2 億円。90百万個、1個あたり1.21倍、営業利益率1.0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロ(純利益4億円)で、ROEは資本コスト8%を大きく下回る。稼ぐ力ではなく、売れる資産の税後から置く。今の自己資本347億円に0.2倍を掛けた69億円は、売れる資産の税後70億円を超えない。
確率:主力顧客の生産が3割減るほどの構造的な負け。樹脂部品の需要が消えるわけではなく、財務も壊れていないので1割にとどめた。森六と同じく悲観に1割弱を置き、海外比率と顧客の偏りで少し重くした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
車両用成形品(内外装・機能部品)
バンパー、インストルメントパネル、コンソールボックスなどの内外装部品と、モータ部品・ヘッドライト部品などの精密部品。ホンダなど日系完成車メーカー向けが中心。
| 数量部品を納める車両の台数相当(万台・年、推定) | 価格1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 400 | 1.40 | 560 | 44 |
| 10 年後 中立 | 430 | 1.88 | 807 | 60 |
取り方:開示は車両用の割合(売上の約7割)と成形品が8割強という全体の構成だけで、台数は無い。成形品800億円のうち車両用を約7割として560億円とした。世界の新車は年9,000万台前後で、そのうち部品を納める車を400万台相当、1台相当あたり約1.4万円と置いた(筆者の推定)。営業利益は全社の営業利益率7.2%を足場に、成形品と金型の差を見て置いた。
金型
成形品を作る金型の設計・製作。完成車メーカーの新車開発に合わせて、自社の成形品とセットで受注する。
| 数量納める金型の件数(件・年、推定) | 価格1件あたりの売上(億円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 300 | 0.60 | 180 | 14 |
| 10 年後 中立 | 310 | 0.80 | 249 | 17 |
取り方:金型は売上の2割弱とみて180億円とし、年300件、1件あたり0.6億円と置いた(筆者の推定)。新車の開発に合わせて受注が波を打つ。2019年5月期にはトヨタの金型開発の鈍化が業績に響いた。
情報通信・家電などの成形品
OA機器、情報通信機器、家電向けの樹脂成形部品。車両用に比べると利益率が低い。
| 数量出荷個数(百万個・年、推定) | 価格1個あたり売上(円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 160 | 150 | 240 | 16 |
| 10 年後 中立 | 136 | 201 | 273 | 16 |
取り方:成形品800億円から車両用560億円を引いた240億円。1個あたり売上150円、出荷160百万個と置いた(筆者の推定)。
リスクと懸念
利益率の持続
直近の営業利益率7.2%は過去12年で最高だ。完成車メーカーの値下げ要請と人件費・材料費の上昇で、利益率が先に落ちると、増収でも利益は伸びない。中立は6.8%で置き、やや悲観では4%台まで下がる。
タイ子会社の仲裁の余波
2026年3月に申し立てられた仲裁は8月に和解した。和解金額と支払いの時期は有料の開示で読めておらず、翌期の現金と純有利子負債に負担が残る恐れがある。同種の契約問題が他の海外拠点にないかも見ておきたい。
顧客の偏り
ホンダなど日系完成車メーカーへの依存が強く、一社の生産計画の変更が業績に響く。2019年5月期にはトヨタの金型開発の鈍化とホンダのメキシコ工場の洪水が重なった。顧客別の売上比率は開示を確かめられなかった。
電動化と中国メーカーの台頭
電気自動車では1台あたりの部品点数や仕様が変わり、取れる仕事が入れ替わる。タイとインドネシアでは中国メーカーのシェア拡大が日系の需要を削る。HVの追い風が長引いても、10年では構造の変化が避けられない。
米国の関税と為替
売上の約3分の2が海外にあり、米国の関税や為替の変動が円換算の利益を動かす。本稿は円ドル150円で固定して置いたが、現実には振れる。関税分を顧客と分担できるかは交渉で決まる。
増産投資の回収
米国、インド、チェコの能力増強は、当初のEV向けの受注が減速して計画を修正した。稼働率が上がらなければ、固定費だけが残る。投資の回収が遅れれば、増配の余力も細る。
今後の分かれ目
- 営業利益率が7.5%以上を2年続けて保つ
- 中立の利益率の前提(6.8%)が低すぎることになる。やや楽観から楽観の側へ確率を寄せる。
- ホンダ以外の完成車メーカーから米国・インドの量産受注が決まる
- 顧客の偏りが下がり、新工場の稼働率も高まる。強気の筋書きの確率を上げてよい。
- タイの和解金額が大きく、翌期以降の現金支出が重い
- 純有利子負債が増え、増配の余力が細る。還元を減らす前提で、中立とやや悲観の純利益を見直す。
- 日本車の北米・アジアでの生産が前年から1割以上減る
- 部品を納める車の台数が減り、固定費の重さで利益が先に落ちる。やや悲観の確率を上げる。
- 数値の中期計画(売上・利益・投資・還元)が公表される
- 資本の使い方が見えるようになる。配当性向の前提を会社の方針に置き換えて見直す。
- 双葉電子工業が持ち株を動かす、または買収の提案が出る
- 買収の可能性を筋書きに織り込む材料になる。今は確度を示す開示がなく、織り込んでいない。
見ておくもの
- 営業利益率(会社予想の7.5%を上回るか、6%台へ戻るか)
- 米国インディアナ工場の稼働率と、HVを含む受注の積み上がり
- タイの和解金額と、翌期の現金・純有利子負債の動き
- 日本車の北米・アジアでの生産台数と、ホンダ以外の新規顧客
- 配当性向の水準と、中期経営計画の数値の公表
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、資本コスト8%(基本7.5%に循環+0.5%・値決め+0.5%)と事業のROE、長期の成長率4%から決めた。10年中立のROEは7.7%で資本コストに届かず、正当化PERの上限は1÷k=11.8倍で、その約7割の8.5倍に置いた。今の時価総額の倍率(PER 5〜6倍)には寄せていない。数量は部品を納める車の台数相当を推定し、価格は物価3%を含む名目(10年1.34倍)に、値下げ要請の分だけ弱気の筋書きで下げた。中立の営業利益率6.8%は、過去12年の山(7.2%)を下回る。純利益÷営業利益は中立で0.57に置いた。過去10年の中央値0.60、2027年5月期の会社予想0.57と整合する。金利の上昇で10年後に純利益が約1億円減る分を入れた。2026年5月期の純利益はタイの和解費用で一過性に落ちたので、流れの起点は40億円とした。売上の内訳(車両用560億円、金型180億円、その他240億円)と台数は開示がなく、筆者の推定を含む。会計は2028年5月期から新リース会計基準に変わるが、数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。