結論
メックは、電子基板の銅の表面を加工する薬品の会社である。筆者の結論は、割高。事業の質は高いが、今の値段は山の利益がそのまま続く前提で払っている。
稼ぎの源は、半導体を載せるパッケージ基板向けの密着向上剤「CZ」だ。銅の表面をごく細かく荒らし、樹脂を強く貼り付ける薬品で、売上の3分の2を占める。生成AI向けの基板が大型化し、層が増えるほど、使う量も増える。2025年12月期の営業利益率は27%。会社予想では2026年12月期に3割を超える。
10年先の中立は、薬品の市場が実質で年5%台に伸び、メックがシェアを保ち、価格が物価並みに上がる姿である。それでも利益率は3割から26%へ戻ると置く。基板メーカーは強く値下げを求め、無粗化の新方式やアトテックの対抗品も控えている。営業利益は今の2倍強にとどまる。
強気に振れる条件は具体的だ。AI基板の需要が倍以上に伸び、CZがガラスコアなど次の基板にも使われれば、利益は3倍近くになる。ただ、今の値段はその上振れに近い姿を、すでに先取りしている。確率を重ねた本質価値は、今の時価総額の6割ほどになる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、メックは良い事業を持つ小さな会社である。薬品は顧客の工場に入り込み、消耗品として売れ続ける。資本のわりに稼ぎも大きい。借金がなく、安心して持てる財務だ。
一方で、10年先の姿を言い切れる事業ではない。パッケージ基板の工程は、技術が数年で入れ替わる。CZが次の基板でも必須であり続けるかは、誰にも約束できない。世界シェアの高さも、顧客の認定に支えられた脆いものだと筆者は考える。このため、堀は普通とみて、高い倍率は与えない。
経営は、研究に売上の1割を使い、設備を自前で増やし、還元も上げた。方向は正しい。ただ、利益率が過去最高の時に株主へ厚く戻す余裕が、どこまであるかは、これからの数年で試される。
安全域で最も気になるのは、今の利益が山にあることだ。山の利益に標準の倍率で払えば、割高をつかむ。中立を、利益率が3割から少し戻る姿に置くと、今の値段には余裕がない。
何で稼ぐ会社か
メックの商品は、基板の製造工程で使う薬品である。銅の回路の表面を薬液で溶かし、顕微鏡でしか見えない細かな凹凸をつくる。そこへ樹脂を重ねると、凹凸にがっちり食い込んで剥がれない。この密着向上の工程が、稼ぎの中心だ。
看板はCZシリーズである。2025年12月期の売上は135億円で、薬品全体の約67%を占める。用途は、半導体を載せるパッケージ基板と、高密度のプリント基板だ。ほかに、フレキシブル基板(4K・8Kテレビ向けのCOF)に使うEXEシリーズ、多層基板用のV-BONDなどがある。
顧客は世界の基板・電子部品メーカー300社以上。売上の65%が海外で、蘇州・珠海の中国、台湾、タイ、欧州に拠点を持つ。基板の工場に薬品が入れば、液を使い続けるので、売上は消耗品として積み上がる。
次の柱は、粗さをつくらずに化学の力で密着させるAPシリーズだ。信号の損失を抑えられるので、高速の通信基板に向く。ただ、採用に向けた評価の段階で、まだ売上を支える存在ではない。2026年12月に稼働予定の北九州工場は、CZとAPの量産を担う。
優良さと弱いところ
優良さの核は、パッケージ基板の工程に深く入り込んでいる点である。基板メーカーは薬品を替えると、歩留まりが変わる。認定に時間をかけるため、一度採用された薬品は長く使われる。営業利益率は2019年12月期の15%から、2025年12月期の27%まで上がった。借金はなく、純現金が90億円近くある。
ただし堀は、最強とは言い切れない。世界のライバルは、アトテックやマクダーミッド・アルファなど、資金も営業網も大きい会社だ。アトテックは、粗さをつくらない密着剤をABF基板向けに出している。同じ方向のAPで、メックはまだ追う側にいる。
数字で見る市場の姿はこうだ。基板・パッケージ基板向けの密着剤とエッチング剤の世界市場を、筆者は約4.5億ドルと推定する。メックの薬品売上は約1.35億ドルで、シェアは3割前後になる。CZの高いシェアは会社自身が認めるが、数字は公表されていない。
弱みは3つある。売上が200億円ほどと小さいこと、CZ一本に利益が偏ること、顧客のAI投資の循環に連動することだ。利益率が山にあるのは、AI基板で高付加価値品が増えた効果が大きい。この効果が10年続くかは分からない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の源は、半導体の数と、パッケージ基板の大きさである。生成AI向けのチップは大きく、基板の層も多い。1枚あたりに使う薬品が増える。ChipletやCoWoSといった先端パッケージが広がるほど、追い風は強まる。業界の前提では、電子材料の市場は10年で年6〜8%の拡大が見込まれる。
今は循環の山にかかる所だ。2026年12月期の上期は、売上が34%増、営業利益が69%増だった。会社予想も、期初の営業利益65億円から、5月に76億円へ増額されている。ただ、半導体投資は2〜4年周期で山と谷をつくる。メックの利益率も、過去には15%まで下がった。
競争は少数だ。パッケージ基板向けの密着剤は、メック、アトテック、マクダーミッド・アルファなどが分け合う。薬品の組み立ては顧客ごとに合わせるため、価格だけの勝負にはなりにくい。ただ、認定は一度崩れると一気に動く。
技術の転換点が最大の変数だ。粗さをつくらないAPが標準になれば、CZの出番は減る。メックが両方を持てば守れるが、新しい工程では、各社の認定が白紙から始まる。ガラスコア基板への移行も同じ構図だ。中国では、基板メーカーが現地の薬品会社を育てる動きがあり、中位品から侵食される恐れがある。
資本政策と M&A
資本の使い方は、堅実で、少しずつ株主寄りになっている。中期経営計画では、3年の営業キャッシュフロー約185億円のうち、設備に約80億円、研究に約52億円を使い、残りを株主へ回す。配当は、連結配当性向35%以上かつ株主資本配当率4%以上へ、2026年に引き上げた。
2025年12月期には自社株買いも約13億円行った。配当と合わせて約22億円を戻した。純現金は90億円ほどで、時価総額の7%強にとどまる。現金を貯め込む会社ではない。
設備投資の中心は、約47億円の北九州工場である。CZとAPの両方を作る拠点で、2026年12月に動き出す。立ち上げ費用が先に出るため、2027年12月期の利益を少し押し下げる。筆者は、大型買収に走らず自前で増強する姿勢を、資本配分として評価する。
買収される側になる可能性もある。小さく、無借金で、持ち合いも薄い会社は、同業の大手に狙われやすい。ただ、これは確率を置く材料にとどめ、本質価値には織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI向けのパッケージ基板は、まだ序盤である。チップは年々大きくなり、基板の層は増え、薬品の使用量は世代ごとに増える。CZは先端パッケージ向けの超微細粗化で高いシェアを持つ。2026年12月期の上期は、売上が34%増、営業利益が69%増だった。会社の中期経営計画の目標は、2027年12月期の営業利益率26〜30%だが、足もとはすでにその上端に達している。
北九州工場が動けば、生産能力は大きく増え、CZの量産とAPの立ち上げを同時に進められる。APが採用されれば、無粗化の高速基板、インターポーザー、1.6Tの通信基板へと用途が広がる。CZとAPの両方を持つ会社は、世界でも少ない。
財務は無借金で、純現金もある。還元の方針は引き上げられ、ROEは15%を超えた。10年後には、今の3倍近い利益を稼ぐ姿も、十分ありうる。
しかも会社の目標は、慎重に置かれる傾向がある。2027年12月期の営業利益率26〜30%は、2026年の予想がすでに超えそうだ。目標を上へ直す流れは、まだ止まっていないとみる。
慎重な見方
利益率27%は、メックの歴史で最高である。2019年12月期は15%、2023年12月期は18%だった。AIの投資が一巡すれば、基板の需要は急に冷え、利益率は元の2割前後へ戻る。会社の予想も、今が山であることを前提にしている。
競争の面では、アトテックが粗さをつくらない密着剤をすでに出している。顧客の基板メーカーは、薬品を複数社から買い、値下げを求める。ガラスコア基板への移行は、認定を一から取り直す機会になり、メックのシェアを揺らす。
中国では、基板メーカーが現地の薬品会社を育てている。中位品から置き換わり、メックの海外売上の65%に響く。売上は200億円ほどと小さく、CZ1本に頼る構造は、事業の分散が薄い。今の値段は、山の利益が続くと見込みすぎている。
還元の面でも余裕は小さい。2025年12月期の配当性向は25%と低く、2026年に35%へ上げる方針に変えたばかりだ。利益が崩れれば、この方針の維持が先に問われる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが、やや強い。利益率が過去最高で、今の値段が山の利益を前提にしているからだ。強気の言う、AI基板の需要拡大とCZの優位は、起きる可能性が高い。ただ、10年続くとは限らない。
このため確率は、中立に3割強を置き、悲観側に合計で3割台半ばを寄せた。楽観は1割にとどめる。上振れの幅は大きいが、確率を重ねても、本質価値は今の時価総額を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 7,650 円1,407 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,633 円300 億円)。 今の値に割り戻すと 4,751 円874 億円、今との差 −20.2%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 16,517 円3,037 億円 | 2,599 円478 億円 | +221.3% | +12.4% | 1,912 円352 億円 |
| やや楽観 | 22% | 11,772 円2,165 億円 | 2,110 円388 億円 | +133.3% | +8.8% | 3,054 円562 億円 |
| 中立 | 33% | 8,498 円1,563 億円 | 1,664 円306 億円 | +70.8% | +5.5% | 3,354 円617 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,136 円393 億円 | 1,251 円230 億円 | −43.1% | −5.5% | 745 円137 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,028 円189 億円 | 653 円120 億円 | −71.7% | −11.9% | 219 円40 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,650 円1,407 億円 | 1,633 円300 億円 | +56.0% | +4.5% | 9,283 円1,707 億円 |
今の株価時価総額 5,950 円1,094 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% AI基板が倍増し、CZが次の基板にも入って利益が3倍に 利益 164 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 16,517 円3,037 億円
生成AI向けのパッケージ基板が10年で大きく広がり、基板の大型化と多層化が続く。薬品の世界市場は実質で年8%ほど伸びる。メックはCZをガラスコアなど次の基板にも通し、APも採用されて、シェアを3割から3割4分へ上げる。
価格は、先端品の比率が上がり、物価を少し上回る。営業利益率は3割を保つ。北九州工場もフルに稼働する。
この姿では、営業利益が2027年12月期の会社目標を大きく超え、今の3倍を超える。ただ、基板メーカーの値下げ圧力とアトテックの対抗品を、同時にかわし続ける必要がある。
還元は利益の4〜5割で、純現金は積み上がる。株主資本の伸びは速く、ROEは18%台まで上がる。メックは稼ぎのよい消耗品の会社として、世界の基板大手の標準に近い存在になる。
- 薬品(密着向上剤・エッチング剤):数量 3.4(基板・パッケージ基板向けの密着剤・エッチング剤の世界市場(実質、億ドル)× メックのシェア)× 価格 142.0%(売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み))→ 売上 717 億円・営業利益 215 億円。市場×シェア2.49倍・価格1.42倍、営業利益率30%
- 装置・その他:数量 1.2(売上規模の指数(実質、今を1.0))× 価格 11(今の売上(億円)に物価分を掛けた名目の値)→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。装置・その他。利益は小さい
倍率:事業の純利益 164 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍。全体の PER 18.52 倍、時価総額 3,037 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI需要の倍増、CZの次世代基板での採用、値上げの定着が重なる必要がある。慎重な見方のほうが強いので、1割にとどめた。
やや楽観 22% AI基板の需要が続き、CZのシェアを保って上振れ 利益 123 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 11,772 円2,165 億円
AIサーバー向けの基板が伸び続け、薬品の市場は実質で年7%ほど伸びる。メックはCZの高いシェアを保ち、全体のシェアは3割から3割2分へ少し上がる。北九州工場が動き、CZとAPの量産体制が整う。
価格は物価を少し上回る。営業利益率は28%と、今の山からやや下がる。それでも営業利益は、今の2.7倍になる。
中国と台湾の基板メーカーの投資が続き、メックの海外売上の比率は、さらに上がる。APは一部の高速基板で採用され、新しい売上の柱になりはじめる。
還元は利益の4〜5割で、純現金は積み上がる。ROEは15%台に高まる。AI投資の勢いが続く限り、メックは稼ぎのよい消耗品の会社として評価され続ける。ただ、利益率の山は少しずつ下がる。
- 薬品(密着向上剤・エッチング剤):数量 2.8(基板・パッケージ基板向けの密着剤・エッチング剤の世界市場(実質、億ドル)× メックのシェア)× 価格 137.0%(売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み))→ 売上 577 億円・営業利益 162 億円。市場×シェア2.08倍・価格1.37倍、営業利益率28%
- 装置・その他:数量 1.1(売上規模の指数(実質、今を1.0))× 価格 10(今の売上(億円)に物価分を掛けた名目の値)→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。装置・その他。利益は小さい
倍率:事業の純利益 123 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍。全体の PER 17.6 倍、時価総額 2,165 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI基板の需要が続き、CZが先端品で使われ続ける素直な上振れ。足もとの勢いを踏まえ、2割強を置いた。
中立 33% 薬品は実質年5%台で伸び、シェアは保ち、利益率は山から戻る 利益 95 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 8,498 円1,563 億円
薬品の世界市場は、実質で年5%台で伸びる。メックはシェアの3割を保ち、数量は今の1.8倍になる。価格は物価並みの1.34倍で、売上は今の2.4倍になる。
営業利益率は、今の山から26%へ戻る。基板メーカーの値下げ圧力が強まり、先端品の比率の上昇による押し上げも一巡する。それでも、認定を受けた消耗品の強みは残る。26%は、化学の中では飛び抜けて高い水準だ。
APは一部で採用され、CZの置き換えを防ぐ役目にとどまる。北九州工場は、需要の増加に合わせて稼働し、利益を大きくは動かさない。還元は利益の4割ほどで、純現金はゆっくり積み上がる。
- 薬品(密着向上剤・エッチング剤):数量 2.4(基板・パッケージ基板向けの密着剤・エッチング剤の世界市場(実質、億ドル)× メックのシェア)× 価格 134.0%(売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み))→ 売上 488 億円・営業利益 127 億円。市場×シェア1.8倍・価格1.34倍、営業利益率26%
- 装置・その他:数量 1.0(売上規模の指数(実質、今を1.0))× 価格 10(今の売上(億円)に物価分を掛けた名目の値)→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。装置・その他。利益は小さい
倍率:事業の純利益 95 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍。全体の PER 16.44 倍、時価総額 1,562 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場が実質で伸び、メックがシェアを保つが、利益率は山から戻る。2つの見方の落としどころ。
やや悲観 22% AI投資が一巡し、値下げと無粗化品で利益が今の水準に戻る 利益 40 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,136 円393 億円
AIの基板投資が一巡し、需要の伸びは実質で年3%台に落ちる。アトテックなどの無粗化の密着剤が先端基板に広がり、メックのシェアは3割から2割7分へ下がる。中国では、基板メーカーが現地の薬品を使いはじめる。
価格は物価に追いつかず、10年で1.2倍にとどまる。営業利益率は18%まで下がる。2023年12月期と同じ水準だ。
営業利益は今とほぼ同じ水準に戻る。ただ、新しい投資の稼ぎは、資本コストを少し上回る程度に薄れる。北九州工場の稼働は重荷になり、増配の余地も小さくなる。筆者は、これを利益率が山にある優良株の、ごく普通の下り坂とみる。
- 薬品(密着向上剤・エッチング剤):数量 1.7(基板・パッケージ基板向けの密着剤・エッチング剤の世界市場(実質、億ドル)× メックのシェア)× 価格 120.0%(売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み))→ 売上 306 億円・営業利益 55 億円。市場×シェア1.26倍・価格1.2倍、営業利益率18%
- 装置・その他:数量 0.9(売上規模の指数(実質、今を1.0))× 価格 9.00(今の売上(億円)に物価分を掛けた名目の値)→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。装置・その他。利益は小さい
倍率:事業のROEが資本コスト7.75%を下回る筋書き。ためた利益は帳簿の額に届かない価値とみて、稼ぐ力(純利益÷k=12.1倍)より低い9.0倍に置いた。余った現金はないので、純現金は事業の運転資金として扱う。
確率:投資の一巡と値下げ、無粗化品の浸透で利益率が大きく戻る筋書き。利益率が過去最高の山にあり、会社自身の予想も山を前提にするので、やや厚く置いた。
悲観 13% 新しい工程で認定を失い、CZが置き換わって構造的に負ける 利益 5 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,028 円189 億円
ガラスコア基板や無粗化の新方式で、CZが採用されない。先端の基板は、アトテックなど世界の大手薬品会社に取られる。中位の基板は、中国の地元の薬品に切り替わる。
市場の実質の伸びは年1%にとどまり、メックのシェアは3割から1割7分へ下がる。価格は物価に追いつかず、10年で横ばいになる。営業利益率は8%まで下がる。
営業利益は今の1割ほどになる。北九州工場は稼働率が上がらず、固定費だけが残る。優良な消耗品の会社ではなくなり、価値は、純現金と、売れる資産の税後で測るほかない。
還元は縮むが、配当は守るため、現金や資産の売却で払う(純現金の取り崩し)。それでも財務は傷まない。ただ、成長の物語は終わり、安値で放置される。
- 薬品(密着向上剤・エッチング剤):数量 0.8(基板・パッケージ基板向けの密着剤・エッチング剤の世界市場(実質、億ドル)× メックのシェア)× 価格 100.0%(売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み))→ 売上 126 億円・営業利益 10 億円。市場×シェア0.62倍・価格1.0倍、営業利益率8%
- 装置・その他:数量 0.7(売上規模の指数(実質、今を1.0))× 価格 7.50(今の売上(億円)に物価分を掛けた名目の値)→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。装置・その他。利益は小さい
倍率:優位を失い、利益が小さい筋書き。稼ぐ力でなく売れる資産で測る。純現金約88億円と、設備・在庫・売掛金などの売却価値(税後)を床とし、今の自己資本305億円に0.62倍を掛けた。
確率:AP・無粗化品への置き換えとガラスコア基板での認定喪失、中国勢の台頭が重なる、構造的な負け。単一の工程に偏る小さな会社で、起きれば深いので、1割を超える確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
薬品(密着向上剤・エッチング剤)
基板・パッケージ基板の銅の表面処理に使う薬品。CZ・V-BOND・EXEなど。全社の売上の約96%と、ほぼ全部の利益を稼ぐ。
| 数量基板・パッケージ基板向けの密着剤・エッチング剤の世界市場(実質、億ドル)× メックのシェア | 価格売上の値段の指数(今を1.00とする名目。物価3%込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.4 | 100.0% | 203 | 59 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 134.0% | 488 | 127 |
取り方:薬品の売上約202億円(全社209億円のうちCZは135億円)を、世界市場の推定約4.5億ドルのうちメックのシェア約30%(推定)で置いた。数量は市場×シェアの実質、価格は今を1.00とする名目の指数で、物価3%は価格に入れる。薬品の利益は開示を確認できず、全社の営業利益57.5億円から装置・その他と本社費を引いて約58.5億円と置いた。 数量は市場の実質成長(物価を除く)× シェアで、物価は価格の指数に別に入れている。
装置・その他
薬品に付随する機器・商品など。利益はごくわずか。
| 数量売上規模の指数(実質、今を1.0) | 価格今の売上(億円)に物価分を掛けた名目の値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 7.50 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 10 | 10 | 1 |
取り方:全社の売上209.5億円から薬品202.5億円を引いた約7億円強を、規模指数1.0と置いた。利益は開示を確認できず約0.3億円と推定。調整は本社費の推定で−1.3億円。全体を営業利益57.5億円に合わせた。
リスクと懸念
利益率が過去最高の山にある
営業利益率は27%と過去最高で、会社予想では3割を超える。2019年12月期は15%、2023年12月期は18%だった。AI投資の一巡か値下げで、利益率が大きく戻る恐れがある。10年の中立でも26%へ下がる前提を置いた。
無粗化の新方式にCZが置き換わる
アトテックなどが、粗さをつくらない密着剤を先端基板向けに出している。この方式が標準になれば、CZの出番は減る。メックのAPが間に合うかが、10年の分かれ目になる。
ガラスコア基板などへの移行で認定を失う
基板の素材や工程が変わると、薬品の認定は一から取り直しになる。早く入れなければ、これまで強みだった認定の壁が、他社の乗り換えの入口に変わる。
中国の地元薬品会社の台頭
中国の基板メーカーは、現地の薬品会社を育てている。中位品から順に置き換えられる恐れがある。蘇州・珠海の売上は合わせて3割を超え、影響は小さくない。
CZ1本への集中と規模の小ささ
売上は200億円ほどで、利益はCZに偏る。基板メーカーは複数社から買って値下げを求める。大手の海外勢に比べ、メックは値決めの主導権を握りにくい。
北九州工場の立ち上げ
約47億円を投じる工場が2026年12月に動く。需要が冷える中で稼働すると、固定費が重い。立ち上げ費用で2027年12月期の利益が押し下げられる見込みもある。
今後の分かれ目
- CZの売上が、2四半期続けて前年を2割以上上回る
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。AI基板の需要が、想定より長く続くサイン。
- APが、主要な基板メーカーの量産ラインで採用されたと確認される
- 楽観側の確率を上げ、悲観側を下げる。CZを置き換える脅威が、自社の商品に変わる。
- 営業利益率が、3四半期続けて24%を下回る
- 山の利益が終わりつつあるサインとみて、やや悲観側の確率を上げる。
- 主要顧客がアトテックなど他社の無粗化品へ切り替えたと伝えられる
- 悲観側の確率を上げる。CZの高いシェアが崩れ始めたと判断する。
- 自社株買いなど、還元の追加が示される
- 純現金の使い道が改善するので、資本配分への評価を上げる。ただ、本質価値の計算は動かさない。
- 同業の大手や基板関連メーカーが買収を提案する
- 買収価格がどの筋書きの価値を上回るかを個別に見る。本質価値の計算には織り込まない。
見ておくもの
- CZ・EXEの四半期の売上と、営業利益率
- APの採用状況と、北九州工場の稼働・立ち上げ費用
- 台湾・蘇州の売上と、基板メーカーの投資計画
- 中期経営計画の次の目標と、総還元性向
- アトテックなど他社の無粗化品の採用動向
倍率と資本コストの決め方
数量は市場の実質規模×シェア、価格は物価3%込みの名目(中立で10年1.34倍)で積み、利益率は事業の構造(競争・値下げ圧力・技術の転換)から置いた。倍率はその時点の純利益に、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(k7.75%、g4%、RONIC=k+残る割合1/2×(ROE−k))を当て、中立は上限の85%に置いた。同領域のJCU・上村工業と比べ、CZ1本への集中を理由にquality(寿命)を+0.5とし、kを少し高く置いた。悲観は純現金と売れる資産の税後で測った。今の株価は最後に比べただけで、今の倍率に寄せていない。製造業でリース負債は小さく、新リース会計基準での形の変化は無視できる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.8→18.52 倍・やや楽観 PER 13.8→17.6 倍・中立 PER 12.6→16.44 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.75% を足して8.25%。シェアの脆さ・技術の転換・利益率が山にある点は、k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。