結論
コニシは「ボンド」で知られる接着剤・シーリング材の国内大手だ。稼ぎは三つある。接着剤を作るボンド事業、化学原料を扱う化成品事業、橋や建物の補修をする工事事業である。筆者の結論は「やや割安」。派手さはないが、事業は堅く、利益は物価並みには伸びる。成長の期待を、今の値段は払っていない。
売上の半分強を占めるボンド事業は、家庭用から住宅、自動車、電子部品まで 3,000 を超える品目を持つ。国内の合成接着剤で、生産量の 1 割強を握る。ただ、住宅は人口減で細る市場で、営業利益率も 9% 台と高くない。
化成品は、化学原料の商社にメーカーの機能を足す事業だ。利益率は 3% 台と薄いが、車載向けや半導体向けの商材が伸びている。工事事業は、橋の老朽化で補修が増える追い風を受ける。
筆者がいちばん買うのは財務である。借金がなく、純現金が時価総額の 2 割ある。自社株買いも続け、前期の総還元は純利益を上回った。
一方、利益率が低いので、値上げが通らなくなると利益が先に傷む。住宅の需要減もゆっくり効く。10 年後の中立の時価総額は今の 1.7 倍ほどで、配当を足すと年率で資本コスト 6.75% を上回る。確率で重みづけた本質価値は、今の値段より 2 割ほど高い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くないが、強くはない」事業である。接着剤は、なくなる心配のない地味な製品だ。ブランドが効き、値上げもできた。10 年後も存在しているのは間違いない。
問題は、稼ぎの質だ。営業利益率は 7% 台、ROE は 9% 前後で、資本コストを少し上回る程度である。この水準では、利益をためこんでも価値は大きく増えない。だから筆者は、成長の倍率を払わず、利益が物価並みに伸びる前提で見ている。
経営の資本配分は評価できる。借金なしで設備に 150 億円を投じ、それでも総還元が純利益を上回る年がある。株主を向いた会社だ。一方、設備投資の重さが利益に出てくるかは、まだ見えていない。
安全域は、純現金にある。時価総額の 2 割は、事業が傷んでも残る現金だ。ただ、この現金は運転資金と事業の取得にも回るので、余ったものとしては数えない。
筆者の構えは、「安く買えれば持つ価値のある地味な会社」である。住宅の縮みと利益率の薄さを織り込んでも、10 年で資本コストを上回るリターンは見込める。大きく儲ける銘柄ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は三つある。いちばん大きいのはボンド事業で、売上の 5 割強、営業利益の 3 分の 2 近くを稼ぐ。木工用ボンドのような家庭用、床や壁を貼る住宅用、ビルの目地に詰めるシーリング材、自動車や電子部品に使う産業用まで、品目は 3,000 を超える。建築用シーリング材では、約 4 割のシェアを持つ。
二つ目は化成品事業で、売上の約 3 割を占める。化学原料を仕入れて売る商社の機能が中心だが、自社の研究所で樹脂や塗料向けの中間原料も作り始めた。ハイブリッド車向けの商材や、放熱材など電子機器向けが伸びている。連結子会社の丸安産業とも協業する。利益率は 3% 台にとどまる。
三つ目は工事事業だ。子会社のボンドエンジニアリングを中心に、橋や建物の補修・補強を請け負う。自社の補修材を現場で使える強みがある。建設から 50 年を超える橋は 2030 年に約 55% になる見込みで、補修の需要は確実にある。利益率は 1 割ほどある。
利益の質は三つで違う。ボンドは 9% 台、工事は 1 割、化成品は 3% 台だ。全社の営業利益率が 7% 台にとどまるのは、売上の 3 割が薄利の商社だからである。
2026 年 12 月には、三菱ケミカルから合成樹脂エマルジョン事業(水に樹脂を分散させた、接着剤や塗料の原料)を取得する。ボンドの製品づくりと、化成品の販売力を生かす狙いだ。取得額と売上は公表されていない。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり他社がまねできない強みは、「品ぞろえと現場への根づき」にある。ボンドは家庭用で誰もが知るブランドで、住宅や建築の現場でも長く使われている。施工業者は、一度使って安心した接着剤を、品番ごと変えたがらない。値上げが通ったのも、この性質のおかげだ。
堀は深いが、広くはない。国内の合成接着剤のシェアは、生産量で 1 割強と、長年ほぼ変わっていない。家庭用はセメダインと二分し、住宅用はアイカ工業やオーシカ、電子部品用はセメダインやスリーボンドが競う。シェアで押し切る会社ではない。
資本の使い方は誠実だ。借金はなく、自己資本比率は 6 割を超える。中計 2027 は、3 年で設備に 150 億円、還元に 120 億円を、すべて本業の稼ぎで賄うとしている。前期は自社株買いを重ね、総還元は純利益を上回った。
弱いのは利益率だ。営業利益率は 7% 台で、10 年前の 5% 前後からは上がったが、化学会社としては低い。原料が上がった時に値上げが遅れれば、利益が先に削られる。ROE(自己資本利益率)も 9% 前後で、資本コストを少し上回るだけだ。
もうひとつ気になるのは、新しい設備の償却である。前期は償却費が 8 億円近く増え、売上総利益が増えても営業利益は減った。設備を建てても、稼ぐ力が追いつくまでには時間がかかる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
コニシの市場は、国内の住宅・建築と、自動車・電子部品の二つに分かれる。前者は成熟して縮み、後者は伸びる。接着剤の国内生産は 2024 年で約 75 万トンと、前の年より 1.5% 減った。使い道別の出荷では、建築・現場施工用が減り、自動車用だけが 3 割ふえた。
住宅は構造的な逆風だ。人口と世帯の減少で、新設住宅は長い目で細る。2025 年 4 月の建築基準法の改正前に駆け込みがあり、その反動で今は着工が落ちている。ただ、リフォームと補修の接着剤は減りにくい。住宅の数が減っても、家が古くなるほど手直しは増える。
建築用シーリング材は、ボンドが約 4 割を持つ。会社は中計で 5 割を目標にしたが、直近は販売数量が落ちている。住宅の着工が減る中で、シェアを上げるのは簡単ではない。
伸びる側は自動車と電子だ。部品の貼り合わせに接着剤を使う場面が増え、ボンドの弾性接着剤も好調である。化成品でも、放熱材や半導体向けの商材が伸びる。
工事は、橋の老朽化が追い風だ。建設から 50 年を超える橋は 2030 年に約 55% になる。ただ、公共の予算には限りがあり、人手不足が工事量の天井になる。
この領域全体では、汎用品は中国の追い上げで物価並みの上がり方にとどまり、特殊品は年 5% 前後の実質成長が見込まれる。コニシの主力は住宅用で、汎用寄りの品が多い。市場の追い風を受けるのは、一部にとどまる。
資本政策と M&A
還元は厚い。中計 2027 は、3 年で配当 70 億円と自社株買い 50 億円を見込む。配当性向は 30% を目安にし、自社株買いで上積みする。前期は 2 月に 32 億円を上限とする自社株買いを加え、総還元は純利益を上回った。
投資は慎重だ。3 年で 150 億円の設備投資は過去最大で、栃木工場の新しい製造所や物流倉庫に使う。償却が重くなっており、効果が利益に出るまでの時間が課題である。
M&A は、これまで小ぶりなものが中心だった。今回、三菱ケミカルから合成樹脂エマルジョン事業を取得する。取得額は非公表で、2026 年 12 月に新会社の株を取る。接着剤の原料を手元に持てれば、ボンドの競争力は上がる。ただ、買った事業の利益率と、統合の手間は読み切れない。
買われる側の可能性は、データ上は 10 年以内に 2 割ほどとされる。純現金が厚く、時価総額は 1,000 億円に届かない。買収する側の目には、手ごろな規模だ。
点検済み(2026-10-19):中立の営業利益率 7.9% は今の水準で会社予想(7.7%)と同じこと、純現金 194 億は運転資金と買収代金で余りにしていないことを確かめた。穴なし。
還元の点検(P3 2026-10-19):中計2027は3年で配当70億円+自社株買い50億円(年約40億円=利益の約5割)、配当性向30%目安。前期の32億円の自社株買いは実行ずみ。中立の還元を純利益の合計の60%から52%に下げ、留保は自己資本に残した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ボンドは、値上げが通る会社に変わった。原料高のなかで価格改定を進め、前期は売上総利益を増やした。今期の第 1 四半期は、ボンド事業の営業利益が 7 割近く伸びた。中東の供給不安による駆け込みの分はあるが、価格を上げても顧客が離れないことは確かめられた。
自動車と電子の伸びは本物だ。2024 年の自動車用の接着剤の出荷は 3 割ふえ、ボンドの弾性接着剤も好調である。化成品では、ハイブリッド車向けと半導体関連の商材が伸びる。薄利の商社が、メーカーの機能を持つ会社へ変わりつつある。
三菱ケミカルの樹脂エマルジョン事業が加わると、原料まで手が届く。シーリング材のシェア 5 割という目標が実現すれば、ボンドの営業利益率は 1 割を超える。橋の補修は 2030 年に向けて確実に増え、工事の利益も積み上がる。
財務の余裕も大きい。純現金が時価総額の 2 割あり、自社株買いを続けている。10 年後も営業利益率が今の 7% 台を守るだけで、利益は物価の分だけで 3 割以上ふえる。そこに実質の伸びが乗れば、倍率も上がる。
慎重な見方
住宅用の接着剤は、長く縮む市場にある。新設住宅は人口減で細り、駆け込みの反動で今は着工が落ちている。前期もボンドは販売数量が減り、増収は値上げで稼いだものだ。値上げは何度もできない。ホームセンターの店頭でも住宅の現場でも、安い品への乗り換えは起こる。
利益率は低い。営業利益率は 7% 台で、原料が上がる局面では値上げが遅れ、利益が先に削られる。前期は償却費が 8 億円近く増えて営業減益になった。新しい設備の効果が出る前に、固定費が先に来る。
今期の第 1 四半期の好調も、中東の供給不安による駆け込みと原料高の転嫁によるもので、続かない。会社は通期の計画を据え置いている。
化成品は薄利の商社で、取引先がメーカーと直接結べば、間に入る意味が薄れる。工事は大型案件の遅れで減収になった。補修の需要はあっても、人手が足りず、受けられる量に天井がある。
三菱ケミカルの事業は、取得額も収益も公表されていない。買った事業が赤字なら、薄い利益率はさらに薄まる。ROE が 9% 前後では、買収の失敗を吸収する余力は小さい。
どちらに重みを置いたか
堅い財務と値上げの力は本物で、悪い方に倒れても会社が傷むほどではない。ただ、事業の大半が成熟市場にあり、利益率も低いので、上振れの幅は限られる。確率は、物価並みの伸びを中立に置き、ほぼ対称にした。悲観は、住宅の縮みと値上げの限界、買収の失敗が重なる場合を 1 割置いた。強気の根拠の一部は一時的な駆け込みなので、そこは差し引いて読んだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,883 円1,802 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 820 円512 億円)。 今の値に割り戻すと 2,092 円1,307 億円、今との差 +38.6%、 期待の年率 +9.4%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,621 円2,887 億円 | 995 円622 億円 | +272.2% | +14.0% | 449 円281 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,845 円2,403 億円 | 909 円568 億円 | +215.0% | +12.2% | 1,046 円654 億円 |
| 中立 | 38% | 3,245 円2,027 億円 | 839 円524 億円 | +170.6% | +10.5% | 1,552 円970 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,622 円1,014 億円 | 709 円443 億円 | +54.5% | +4.4% | 513 円320 億円 |
| 悲観 | 10% | 779 円487 億円 | 658 円411 億円 | −4.8% | −0.5% | 144 円90 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,883 円1,802 億円 | 820 円512 億円 | +145.4% | +9.4% | 3,703 円2,314 億円 |
今の株価時価総額 1,509 円943 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 接着剤の産業用途が伸び、シェアが 5 割に届く 利益 159 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 4,621 円2,887 億円
自動車と電子部品向けの接着剤が、実質で年 3% 台の伸びを続ける。建築用シーリング材のシェアは 5 割に届き、ボンド事業の営業利益率は 11% に上がる。三菱ケミカルから取得したエマルジョン事業が原料の内製化を進め、品ぞろえと採算を押し上げる。
化成品は、車載・半導体・放熱材といった付加価値の高い商材が増え、営業利益率が 4.5% まで上がる。メーカー機能を持つ商社への転換が、数字に出る姿だ。工事は橋の補修が太く育ち、シェアも伸びる。
営業利益は今の 2 倍になり、ROE は 11% 台に乗る。倍率も成熟した優良会社の水準まで上がる。三つの事業がそろって計画どおり進んだ姿だが、住宅の縮みは残るので、成長株の倍率にはならない。
- ボンド事業:数量 88.0(出荷量(千トン・推定))× 価格 14(1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 1,203 億円・営業利益 132 億円。売上 1203 億円・営業利益率 11.0%
- 化成品事業:数量 320(取扱量(千トン・推定))× 価格 2.04(1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 653 億円・営業利益 29 億円。売上 653 億円・営業利益率 4.5%
- 工事事業:数量 1,575(年間の施工件数(件・推定))× 価格 26.8%(1 件あたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 422 億円・営業利益 46 億円。売上 422 億円・営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 159 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.17 倍、時価総額 2,887 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動車・電子向けの伸び、シェア 5 割、買収の成功が三つそろう必要があり、起こりうるが多くはない。楽観は 1 割に届かない。
やや楽観 22% 産業用と補修が住宅の縮みを補い、値上げが定着する 利益 138 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 3,845 円2,403 億円
住宅用は縮むが、自動車・電子向けの接着剤と補修材が穴を埋める。ボンドの数量は 10 年で 1 割強ふえ、利益率は 10% を超える。値上げが定着し、原料高を転嫁できるようになった姿だ。
化成品は車載・電子向けの商材が伸び、営業利益率が 4% 台に乗る。工事は橋の補修で受注が増え、シェアも少し上がる。三菱ケミカルから取得した事業は赤字にならず、ボンドの製品づくりに役立つ。
営業利益は今の 1.7 倍、ROE は 10% 台になる。純利益の 6 割を返しても、純現金は減らない。強気ではあるが、住宅の縮みは織り込んだ姿である。
- ボンド事業:数量 84.0(出荷量(千トン・推定))× 価格 13(1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 1,115 億円・営業利益 114 億円。売上 1115 億円・営業利益率 10.2%
- 化成品事業:数量 306(取扱量(千トン・推定))× 価格 2.01(1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 615 億円・営業利益 26 億円。売上 615 億円・営業利益率 4.2%
- 工事事業:数量 1,460(年間の施工件数(件・推定))× 価格 26.8%(1 件あたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 391 億円・営業利益 42 億円。売上 391 億円・営業利益率 10.6%
倍率:事業の純利益 138 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.41 倍、時価総額 2,403 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが通ることは前期に確かめられ、自動車用の接着剤は伸びている。上に振れる材料は具体的で、4 分の 1 弱を置いた。
中立 38% 中立:物価の分だけ着実に伸びる 利益 121 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 3,245 円2,027 億円
住宅用の接着剤は人口とともに細る。しかし自動車・電子向けと補修材が埋め、ボンドの数量は 10 年でわずかに増える。値上げは物価並みに通り、営業利益率は 9% 台半ばと、今より少し良くなる。
化成品は薄利のまま、数量が 1 割ほど増える。工事は橋の補修が続き、利益率は 1 割を保つ。三菱ケミカルから取得した事業は、利益には大きく響かず、ボンドの原料調達を助ける程度にとどまる。
営業利益は今の 1.5 倍で、年 4% ほどの伸びだ。これは物価 3% に、わずかな実質成長が乗った姿である。ROE は 9% 台で今と変わらず、利益の約 5 割を返しながら純現金も保つ。地味だが崩れない会社に落ち着く。
- ボンド事業:数量 80.0(出荷量(千トン・推定))× 価格 13(1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 1,062 億円・営業利益 101 億円。売上 1062 億円・営業利益率 9.5%
- 化成品事業:数量 292(取扱量(千トン・推定))× 価格 2.01(1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 587 億円・営業利益 23 億円。売上 587 億円・営業利益率 3.9%
- 工事事業:数量 1,353(年間の施工件数(件・推定))× 価格 26.8%(1 件あたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 363 億円・営業利益 36 億円。売上 363 億円・営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 121 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.7 倍、時価総額 2,027 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物価並みの値上げと小さな実質成長という、最も素直な筋書き。会社の中計の延長にあたり、4 割弱に置いた。
やや悲観 22% 住宅の縮みと値上げの限界 利益 90 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 1,622 円1,014 億円
住宅の着工が長く細り、ホームセンターの売り場も減る。ボンドの数量は少し落ち、値上げも物価に届かない。営業利益率は 8% に下がる。
化成品は、取引先の直接取引が進んで、物価並みの値上げが通らない。営業利益率は 3% 台前半になる。工事は人手不足で受けられる量が頭打ちとなり、利益率が 8% 台に下がる。
営業利益は今より 1 割ほど増えるだけで、物価の分にも届かない。実質ではやや減益だ。ROE は 7% 台で資本コストに届かず、倍率も縮む。会社は傷まないが、10 年かけて価値がほとんど増えない姿である。
- ボンド事業:数量 72.0(出荷量(千トン・推定))× 価格 13(1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 928 億円・営業利益 74 億円。売上 927 億円・営業利益率 8.0%
- 化成品事業:数量 270(取扱量(千トン・推定))× 価格 1.95(1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 527 億円・営業利益 17 億円。売上 526 億円・営業利益率 3.3%
- 工事事業:数量 1,178(年間の施工件数(件・推定))× 価格 26.8%(1 件あたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 316 億円・営業利益 27 億円。売上 316 億円・営業利益率 8.5%
倍率:ROE 7.4% で資本コスト 6.75% に届かず、PER の上限は 1÷k の 13.3 倍。住宅の縮みと値上げの限界で稼ぐ力が伸びないため、上限の 8 割強にあたる 11 倍に置いた。(還元を方針に合わせて再計算:還元 533→443 億円、自己資本 1211→1301 億円、事業の ROE 7.4%→6.9%、正当化 PER の上限 13.3→13.3 倍。上限に対する置き方の割合は変えず 11.00 倍)
確率:新設住宅の縮みは人口から見て確実で、利益率が薄いので原料高の転嫁の遅れが利益に響きやすい。中立に次ぐ確率を置いた。
悲観 10% 構造的な負け:住宅の縮みと中抜き、買収の失敗 利益 46 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 779 円487 億円
住宅の着工が大きく落ち、ホームセンターでは安い品への切り替えが進む。ボンドの数量は 2 割減り、値上げもほとんど通らない。原料高を転嫁できず、営業利益率は 5% 台まで下がる。
化成品は、取引先が仕入れを直接結ぶようになり、商社としての旨みが消える。営業利益率は 2% になる。工事は大型案件の損失が重なり、利益率が 5% 台に落ちる。三菱ケミカルから取得した事業が赤字を出し、重荷になる。
営業利益は今の 6 割以下に落ち、ROE は 4% 台になる。もう優良な会社とは見られず、自己資本の 0.55 倍で測る。それでも借金はなく、会社が傾くわけではない。ただ、株主には 10 年間、価値が戻ってこない展開である。
- ボンド事業:数量 60.0(出荷量(千トン・推定))× 価格 12(1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 713 億円・営業利益 39 億円。売上 713 億円・営業利益率 5.5%
- 化成品事業:数量 230(取扱量(千トン・推定))× 価格 1.80(1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 414 億円・営業利益 8 億円。売上 414 億円・営業利益率 2.0%
- 工事事業:数量 928(年間の施工件数(件・推定))× 価格 25.0%(1 件あたり売上(億円)。物価 3% を含む名目)→ 売上 232 億円・営業利益 13 億円。売上 232 億円・営業利益率 5.5%
倍率:構造的な負けで ROE は 4%台に下がり、優良ではなくなる姿。稼ぐ力(純利益÷k)より低い水準として、借金のない財務と自己資本の残る分を床に、今の自己資本 885 億円に 0.55 倍を掛けた。
確率:住宅の縮み、値上げの限界、買収の失敗が重なる場合で、優良ではなくなる姿。借金がなく純現金があるので、1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ボンド事業
家庭用・住宅用・産業用の接着剤と建築用シーリング材、補修材。主力ブランド「ボンド」で 3,000 を超える品目を持つ。
| 数量出荷量(千トン・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 75.0 | 9.91 | 743 | 68 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 13 | 1,062 | 101 |
取り方:開示は金額だけ。国内の合成接着剤の生産は 2024 年で約 74.7 万トン、コニシの生産量シェアは 1 割強とされるので、約 7.5 万トンと置いた。売上 743 億円から、平均単価を 1 千トンあたり約 9.9 億円(シーリング材や産業用の高単価品を含む混合)と逆算した。
化成品事業
化学原料・樹脂・塗料向け原料の販売(商社機能)と、自社研究所による中間原料。車載・電子電機向けに放熱材や半導体関連の商材を伸ばす。
| 数量取扱量(千トン・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円)。物価 3% を含む名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 261 | 150.0% | 392 | 14 |
| 10 年後 中立 | 292 | 2.01 | 587 | 23 |
取り方:開示は金額だけ。取り扱う化学原料・樹脂の平均単価を 1kg あたり約 150 円(1 千トンあたり 1.5 億円)と置き、売上 392 億円から取扱量を約 26 万トンと推定した。自社品や高付加価値品の比率が上がれば、単価は上がる。
工事事業
橋・トンネル・建築のコンクリート補修、補強、防水・塗装など。子会社のボンドエンジニアリングが中心。
| 数量年間の施工件数(件・推定) | 価格1 件あたり売上(億円)。物価 3% を含む名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,153 | 20.0% | 231 | 24 |
| 10 年後 中立 | 1,353 | 26.8% | 363 | 36 |
取り方:件数は開示されない。補修・補強・防水の工事は 1 件あたり平均約 2,000 万円(0.2 億円)と置き、売上 231 億円から年間の施工件数を約 1,150 件と推定した。市場は今の値段で約 6,000 億円、シェアは約 3.8% に相当する。物価の分(人件費・資材)は 1 件あたりの値段に入れた。
リスクと懸念
住宅の縮みが想定より早い
売上の半分強を占めるボンドは、住宅と建築の現場に深く根づく。新設住宅は人口減で長く細り、駆け込みの反動で今は着工が落ちている。補修とリフォームで支えきれなければ、数量の減少が利益に直結する。
利益率が低く、原料高に弱い
営業利益率は 7% 台と薄い。原料が上がる局面で値上げが遅れると、利益が先に削られる。前期の増収は値上げによるもので、何度も使える手ではない。今期の第 1 四半期の好調には、駆け込みの分が混じる。
設備の償却が利益を圧迫する
3 年で 150 億円の設備投資は過去最大で、前期は償却費が 8 億円近く増えた。新工場や物流倉庫が稼ぎに結びつくまで、固定費が先に重くなる。効果が出ないまま償却だけが残れば、利益率の改善は止まる。
三菱ケミカルから取得する事業の採算
2026 年 12 月に取得する合成樹脂エマルジョン事業は、取得額も売上も利益も公表されていない。原料の内製化には役立つが、利益率が低い事業なら全社の利益率を押し下げ、統合の手間もかかる。
化成品で中抜きが進む
化成品は売上の約 3 割を占めるが、利益率は 3% 台の商社だ。取引先がメーカーと直接結ぶ流れが強まれば、間に入る意味が薄れる。メーカー機能の強化が間に合うかが問われる。
工事の進み方と人手不足
前期は大型工事の進捗が遅れて減収になった。補修の需要はあるが、有資格者の確保が追いつかないと、受けられる量に天井がかかる。公共の予算の動きにも左右される。
今後の分かれ目
- ボンド事業の営業利益率が、駆け込みの影響を除いても 10% を超えて定着したら
- 中立の利益率の前提を上げ、楽観側の確率を引き上げてよい。
- 新設住宅の着工が反動の後も戻らず、ボンドの販売数量が 2 期続けて落ちたら
- 住宅用の数量前提を下げ、やや悲観・悲観に確率を寄せる。
- 原料価格が上がる局面で、値上げが遅れて営業利益率が 6% 台に落ちたら
- 値決め力の前提を見直し、中立の利益率を 1 ポイントほど下げる。
- 三菱ケミカルから取得した事業が、初年度から黒字で統合が進んだら
- ボンドの原料調達と品ぞろえの強化として、やや楽観の確率を少し上げる。
- 車載・半導体向けの化成品商材が、営業利益率 5% に届いたら
- 化成品の利益率の前提を上げる。メーカー機能への転換が数字に出た合図になる。
- 大きな自社株買いや自己株の消却が行われたら
- 還元の前提を上げる。ただし利益そのものは変わらず、本質価値の変化は小さい。
見ておくもの
- ボンド事業の営業利益率(駆け込みと価格改定の影響を除く)と販売数量
- 建築用シーリング材のシェアと、住宅の新設着工
- 化成品の営業利益率(車載・半導体向けの商材の伸び)
- 工事事業の受注残と、遅れていた大型工事の完成
- 三菱ケミカルから取得した事業の売上と利益
- 償却費の推移と、設備投資の効果
- 総還元性向と自社株買い・自己株の消却
倍率と資本コストの決め方
三つの事業を、出荷量・取扱量(推定)と市場×シェア(工事。物価は価格指数に分離)で積み上げ、利益率から営業利益を出した。資本コストは基本 7.5% に quality 0。倍率は、g 4%・ROE 9% 台から出した正当化 PER の上限の 9 割に置き、今の PER には寄せていない。10 年の中立は今の 1.7 倍の時価総額で、総合は +20% 前後の見込み。これは、物価並みの値上げで利益率を保つ前提と、倍率の上限が 1÷k の 13.3 倍を超える所にあるため。純現金は運転資金と事業取得に回るとみて分けず、現金の利息の増え(約 3 億円)は純利益に含めた。新リース会計基準で数字の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.47→18.17 倍・やや楽観 PER 14.19→17.41 倍・中立 PER 13.33→16.7 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0%(住宅・建築の景気 +0.25、ブランドと現場への根づきによる値決め −0.25)を足して 7.5%。買収の実行や住宅の縮みは k に足さず、筋書きと確率で見た。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 6.75%。