結論
丸尾カルシウムは兵庫県明石市の炭酸カルシウムの専業メーカーで、2026年に創業100年を迎えた。筆者の結論は「やや割高」だ。PBRは0.3倍と帳簿より大幅に安いが、本業の営業利益率は6年続けて1%前後しかない。利益の大半は日本ペイントなど持ち合い株の配当で、事業そのものが株主の資本を増やしていない。
炭酸カルシウムは石灰石を砕くか、化学反応で細かい粒にした白い粉だ。塩化ビニルなどの樹脂、塗料、ゴム、食品に混ぜて、強さや白さ、量を整える。同社の強みは粒の細かさと表面処理をそろえる技術で、樹脂と塗料の用途で長く使われてきた。
ただ、売上の半分強は他社から仕入れた品の転売で、値段は市場が決める。原料と燃料の高騰を値上げで取り戻しきれず、利益が消えた。土浦工場の新しい焼成炉は2028年に動き、能力を4分の1増やす。これが利益率を戻せるかが10年の分かれ目になる。
筆者は、利益率が2010年代後半の3〜4%に戻りきらず2%前後で止まる筋書きを中立と見る。それでもROEは資本コストに届かず、帳簿の資産は割り引いて数えるしかない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「帳簿は厚いが、事業が資本を稼がない会社」だ。自己資本は時価総額の3倍あるが、その資産が生む利益は少ない。帳簿の額を価値と見るのは清算の発想で、少数株主にはそれを実現する力がない。
事業の本質は汎用品の加工と転売だ。100年の技術はあるが、値段を決める力にはつながっていない。燃料と原料が上がるたびに利益が消える会社に、高い倍率は払えない。
政策保有株は諸刃の剣だ。配当は利益を下支えするが、経営が売って株主に戻さない限り、株主の手には届かない。売却と自社株買いが数字で進めば、評価は大きく変わる。筆者はそれを確率の一部として見るにとどめ、払う値段の根拠にはしない。
安全域は帳簿にではなく、持ち合い株の配当と、焼成炉の更新で利益率が戻る可能性にある。そのどちらも、今の値段に対して厚いとは言えない。
何で稼ぐ会社か
事業は炭酸カルシウムの製造と販売の1つだけだ。2026年3月期の売上126億円のうち、自社で作る品が45%、外部から仕入れて売る品が55%を占める。
自社製の柱は化合炭酸カルシウムだ。石灰石を焼いて生石灰にし、水と二酸化炭素で反応させ直して、粒の大きさと形をそろえる。軽質や膠質と呼ばれ、粒が細かく均一なので、塩化ビニルの補強や塗料のつや消し、シーリング材の粘りの調整に使われる。表面に脂肪酸などを付けて樹脂になじませる処理が技術の要だ。石灰石を砕いて作る重質炭酸カルシウムも、子会社の九州カルシウムなどで作る。
用途は合成樹脂が42%、塗料が20%、輸出が15%、ゴムが6%、食品・飼料が6%だ。客は塩化ビニルの成形品やシーリング材、塗料、自動車の下塗りを作る会社で、日本ペイントホールディングスの株も持つ。10%を超える大口の客はいない。
工場は明石の本社と土山、茨城の土浦、福岡の九州カルシウムにある。土浦では13億円をかけて焼成炉を新しくし、2028年4月の完成で化合炭酸カルシウムの能力が25%増える。従業員は239人だ。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、技術の古さと利益の薄さの差に表れる。粒をそろえ表面を処理する技術は100年の蓄積があり、客の配合に組み込まれると簡単には替えられない。それでも本業の営業利益率は2020年以降、最高でも1.4%にとどまる。
値決めの力が弱いのが根本だ。炭酸カルシウムは重さあたりの値段が安い汎用品で、白石工業や備北粉化工業、海外の品と競う。売上の半分強は仕入れて売る品で、上乗せできる利幅は小さい。燃料の重油・電気と石灰石の値段が上がると、値上げが追いつくまで利益が消える。2023〜2025年がまさにそうだった。
資本効率はROEが過去10年の中央値で2.4%と、株主の資本をほとんど増やしていない。自己資本は100億円あるが、うち43億円は政策保有株で、稼いでいるのはその配当だ。経営はROE8%を目標に掲げ、政策保有株の売却や自社株買いにも触れたが、数値の計画はまだない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
炭酸カルシウムの需要は、国内の樹脂・塗料・ゴムの生産量で決まる。どれも成熟した市場で、10年の数量は横ばいからわずかな減少が中立の見方だ。人口が減り、住宅の着工も細る中で、塩化ビニルのパイプやシーリング材の量は大きく伸びない。
値段は物価並みに上がるが、追いつくのは遅れてだ。原料の石灰石は国内で自給できるものの、焼成の燃料と電気、物流の費用が上がると、汎用の品ほど値上げが遅れる。2026年時点では中東の情勢で燃料が高く、利益の回復は遅れている。
伸びる芽はある。電気自動車の電池まわりのシーリング材や軽い樹脂部品、食品や医薬品向けの高純度品、海外への輸出だ。同社は輸出が売上の15%あり、アジアの樹脂加工の伸びを取りうる。
競争は国内の数社と輸入品の間で続く。化合炭酸カルシウムでは白石工業が大手で、重質は石灰石の鉱山を持つ会社が強い。中国やベトナムからの安い重質品も入る。値段を決める側にいる会社はなく、利益は燃料と原料の値動きと、値上げの速さの差で決まる。
業界の再編は小さく、各社とも老舗の中堅だ。10年の中で、工場の統合や事業の譲渡が起きる余地はある。
資本政策と M&A
資本政策は「安定配当」が基本で、2026年3月期は100周年の記念配当を足して年60(普通配当30)とした。2027年3月期の予想は普通配当だけに戻る。自社株買いは1億円ほど行った。
最大の論点は政策保有株だ。日本ペイントホールディングスを中心に43億円を持ち、時価総額を上回る。配当は利益を支えるが、資本効率を大きく下げている。経営は売却と自社株買いを掲げたが、2026年3月期の売却は2億円弱にとどまった。
設備では土浦の焼成炉に13億円を使う。借入で一部を賄うので、純負債は少し増える。大株主は中国砿業が12%、山陽化学産業が5%で、支配株主はいない。時価総額30億円で、同業や商社による買収・再編の的になる余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿の資産と今の値段の差は大きすぎる。自己資本100億円に対し時価総額は30億円、政策保有株だけで43億円ある。経営はROE8%を目標に掲げ、政策保有株の売却と自社株買いを明言した。これが数字で進めば、株主の取り分は一気に増える。
本業も底を打った。2023〜2025年は燃料と原料の高騰に値上げが追いつかなかったが、2026年3月期は営業利益が回復し始めた。土浦の焼成炉は2028年に動き、古い炉より燃料が少なく、能力は25%増える。固定費が同じなら、量が増えた分だけ利益率は上がる。
粒をそろえる技術と表面処理は、客の配合に組み込まれている。塩化ビニルやシーリング材の配合を変えるのは客にとって手間で、急には替えられない。電気自動車や食品向けの高純度品、アジアへの輸出も伸びる芽だ。
100年の老舗で、潰れる心配はない。下値は厚い資産が支え、上値は資本政策の変化で開ける。経営が目標のROE8%に本気で向かうなら、今の値段は出発点として安すぎる。
慎重な見方
6年も稼いでいない本業に、回復を前提にした値段を付けるのは早い。営業利益率は2020年以降、最高でも1.4%で、2027年3月期の会社予想も0.8%だ。利益の大半は持ち合い株の配当で、事業の力ではない。
売上の半分強は仕入れて売る品だ。上乗せできる利幅は小さく、値段は市場が決める。白石工業や輸入品と競う汎用の品で、燃料や電気が上がるたびに利益が消える。焼成炉を新しくしても、増えた量を売るには値段を下げる必要があるかもしれない。新しい炉の償却も2028年から利益を削る。
政策保有株の売却は言葉だけだ。2026年3月期の売却は2億円弱で、43億円のうちほとんどが残る。日本ペイントは客でもあり、売りにくい。株主に戻らない資産は、帳簿にあっても株主の価値ではない。
国内の樹脂・塗料・ゴムの量は人口とともに細る。10年で見れば、量の土台は縮む側にある。量が減る中で能力を増やす投資は、値段の競争を呼びかねない。帳簿の資産が厚いことは、稼がないことの裏返しでもある。
どちらに重みを置いたか
資本政策が変われば大きく化けるという見方には筋がある。ただ、それは経営の行動しだいで、2026年3月期の売却額はまだ小さい。本業の弱さは構造の問題で、焼成炉だけでは解けない。確率は中立を厚くし、資本政策が進む上振れは楽観とやや楽観で見る形にした。帳簿の安さは価値に数えていない。売却と自社株買いが数字で進み始めれば、この重さは見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,775 円38 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 501 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 1,163 円25 億円、今との差 −19.8%、 期待の年率 +4.6%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,960 円63 億円 | 1,071 円23 億円 | +178.0% | +10.8% | 403 円9 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,555 円54 億円 | 685 円15 億円 | +123.4% | +8.4% | 648 円14 億円 |
| 中立 | 38% | 1,972 円42 億円 | 455 円10 億円 | +67.3% | +5.3% | 922 円20 億円 |
| やや悲観 | 20% | 731 円16 億円 | 340 円7 億円 | −26.2% | −3.0% | 214 円5 億円 |
| 悲観 | 12% | 602 円13 億円 | 138 円3 億円 | −49.0% | −6.5% | 89 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,775 円38 億円 | 501 円11 億円 | +57.0% | +4.6% | 2,276 円49 億円 |
今の株価時価総額 1,450 円31 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 焼成炉と資本政策で、利益率と資本効率が戻る 利益 5 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,960 円63 億円
土浦の焼成炉が2028年に動き、燃料の効率が上がる。電気自動車のシーリング材やアジアへの輸出が伸び、化合炭酸カルシウムの出荷は3割増える。値上げは物価並みに通り、利益率は2010年代後半の上の方に戻る。
経営はROE8%の目標に向けて政策保有株を少しずつ売り、自社株買いと配当に回す。配当収入は減るが、自己資本が軽くなり資本効率は上がる。
それでもROEは資本コストに届かない。汎用品の会社として、利益率は5%前後が天井になる。株主の取り分は、資本政策の変化で今より大きく増える。会社は100年の老舗のまま、資本の使い方だけが変わる10年になる。
- 化合炭酸カルシウム(自社製):数量 97.5(出荷量(千トン・年。推定))× 価格 8.16(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 80 億円・営業利益 5 億円。9.75万トン×8.2万、利益率6%
- 重質炭酸カルシウム(自社製):数量 46.4(出荷量(千トン・年。推定))× 価格 3.35(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。4.6万トン×3.4万、利益率2.5%
- 外部購入品:数量 180(取扱量(千トン・年。推定))× 価格 5.28(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 95 億円・営業利益 1 億円。18万トン×5.3万、利益率0.8%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 64 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:焼成炉が満杯で動き利益率が2010年代後半の上の方に戻り、政策保有株の売却も進む筋書き。6年の低収益から1割にとどめた。
やや楽観 20% 焼成炉の効果で利益率が3%台へ 利益 4 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,555 円54 億円
新しい焼成炉で燃料の効率が上がり、化合炭酸カルシウムの出荷は2割強増える。値上げは物価並みに通り、外部購入品の利幅も少し戻る。全社の営業利益率は3%前後で、2010年代後半の下の方に届く。
政策保有株は少しずつ売られ、自社株買いが続く。配当収入は物価並みに増え、利益を下支えする。ROEは4%台で資本コストの半分にとどまり、帳簿の資産は割り引いて数えられる。
会社は100年の老舗として静かに稼ぎ続け、配当も物価並みに増えていく。資本政策の変化は小さく、株主が報われる速さは利益の伸びと同じだ。焼成炉の投資は、ようやく元が取れる。
- 化合炭酸カルシウム(自社製):数量 91.5(出荷量(千トン・年。推定))× 価格 8.04(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 4 億円。9.15万トン×8.0万、利益率5%
- 重質炭酸カルシウム(自社製):数量 46.4(出荷量(千トン・年。推定))× 価格 3.35(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。4.6万トン×3.4万、利益率2%
- 外部購入品:数量 175(取扱量(千トン・年。推定))× 価格 5.28(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 92 億円・営業利益 1 億円。17.5万トン×5.3万、利益率0.7%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 56 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい焼成炉で化合炭酸カルシウムの量と利幅が戻り、全社の利益率が2010年代後半の下の方に届く筋書き。
中立 38% 焼成炉で少し戻るが、利益率は2%前後 利益 3 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,972 円42 億円
土浦の焼成炉は2028年に動き、化合炭酸カルシウムの出荷は1割強増える。国内の樹脂と塗料の量は横ばいで、増えた分の一部は輸出と値下げで売りさばく。値上げは物価並みに通るが、燃料と電気の上昇に遅れる年がある。
新しい炉の償却が年1億円近く足され、全社の営業利益率は2%前後にとどまる。利益の半分近くは、日本ペイントなど持ち合い株の配当が支える。借入の金利が上がり、利払いは少し増える。
政策保有株の売却は少しずつで、配当と自社株買いは利益の4割ほどにとどまる。ROEは3%台で資本コストに遠く、厚い自己資本は稼がない資産として残る。
- 化合炭酸カルシウム(自社製):数量 84.0(出荷量(千トン・年。推定))× 価格 8.04(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 3 億円。8.4万トン×8.0万(物価並み)、利益率4%(新炉の償却込み)
- 重質炭酸カルシウム(自社製):数量 46.4(出荷量(千トン・年。推定))× 価格 3.35(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。4.6万トン×3.4万、利益率1.5%
- 外部購入品:数量 171(取扱量(千トン・年。推定))× 価格 5.20(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 89 億円・営業利益 1 億円。17.1万トン×5.2万(物価にやや遅れ)、利益率0.6%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.0% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 43 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の数量は横ばい、値上げは物価並みだが遅れて通り、焼成炉の効果は償却の増加と燃料高で一部が消える筋書き。最も起こりやすい。
やや悲観 20% 値上げが追いつかず、本業はほぼ稼がない 利益 2 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 731 円16 億円
燃料と電気、物流の費用が上がり続け、値上げは物価の8割ほどしか通らない。国内の樹脂と塗料の量は1割減り、焼成炉で増えた能力は埋まらない。新しい炉の償却が利益を削る。
全社の営業利益率は1%前後で、2020年以降の水準から抜け出せない。利益のほとんどは持ち合い株の配当で、その一部も売却で減る。配当は細く、自己資本はほとんど増えない。
ROEは2%前後で資本コストに遠い。帳簿の資産は稼がず、少数株主に戻るのは細い配当だけだ。経営が資本政策を変えない限り、株価は持ち合い株の価値を下回ったまま動かない。焼成炉の投資は元が取れない。
- 化合炭酸カルシウム(自社製):数量 75.0(出荷量(千トン・年。推定))× 価格 7.68(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。7.5万トン×7.7万、利益率2%
- 重質炭酸カルシウム(自社製):数量 42.0(出荷量(千トン・年。推定))× 価格 3.13(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。4.2万トン×3.1万、利益率0%
- 外部購入品:数量 155(取扱量(千トン・年。推定))× 価格 5.00(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 0 億円。15.5万トン×5.0万、利益率0.3%
倍率:事業のROE 1.6%がk 8%を大きく下回り、利益が実質で縮む筋書き。稼ぐ力(純利益÷k)より低い9倍。
確率:燃料・電気の上昇に値上げが追いつかない状態が続き、2020年以降の低収益がそのまま続く筋書き。6年の実績に近いので2割。
悲観 12% 輸入品と燃料高で赤字が定着 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 602 円13 億円
中国やベトナムの安い炭酸カルシウムが入り、外部購入品と重質品の利幅が消える。燃料と電気は高止まりし、値上げは物価の半分ほどしか通らない。国内の樹脂と塗料の量は2割減る。
本業は赤字に沈み、新しい焼成炉は回収できずに減損される。持ち合い株の配当だけが利益を支え、全社の純利益はほぼゼロになる。配当は細り、自己資本は減損の分だけ減る。
残るのは政策保有株と工場の土地だ。清算されない限り少数株主はこれを受け取れず、値段は帳簿を大きく下回る。会社は潰れないが、株主にとっては長く報われない10年になる。焼成炉の13億円は、結果として株主の資本を削っただけになる。
- 化合炭酸カルシウム(自社製):数量 64.0(出荷量(千トン・年。推定))× 価格 7.08(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 0 億円。6.4万トン×7.1万、赤字
- 重質炭酸カルシウム(自社製):数量 37.0(出荷量(千トン・年。推定))× 価格 2.88(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。3.7万トン×2.9万、赤字
- 外部購入品:数量 137(取扱量(千トン・年。推定))× 価格 4.72(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 65 億円・営業利益 0 億円。13.7万トン×4.7万、利益ゼロ
倍率:本業は赤字なので今の自己資本に掛けるPBR。床は政策保有株の税後から純負債を引いて半分に割り引いた額と土地の一部で13億ほど、今の自己資本の0.13倍。
確率:安い輸入品と燃料高で本業が赤字に沈み、焼成炉の投資も回収できない筋書き。財務は堅く潰れはしないので1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
化合炭酸カルシウム(自社製)
石灰石を焼いて反応させ直した軽質・膠質の炭酸カルシウム。表面処理品が中心で、樹脂・塗料・シーリング材向け。
| 数量出荷量(千トン・年。推定) | 価格1トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 75.0 | 6.00 | 45 | 1 |
| 10 年後 中立 | 84.0 | 8.04 | 68 | 3 |
取り方:売上126.4億×化合炭酸カルシウムの比率35.6%=45.0億。表面処理品を含む平均単価を1トン約6万とみて年7.5万トンと推定。利益は全社の営業利益0.85億を品目の利幅で推定して分けた。
重質炭酸カルシウム(自社製)
石灰石を砕いて粒をそろえた重質炭酸カルシウム。九州カルシウムなどで作る。
| 数量出荷量(千トン・年。推定) | 価格1トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 46.4 | 2.50 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 46.4 | 3.35 | 16 | 0 |
取り方:売上×重質の自社製比率9.2%=11.6億。平均単価を1トン約2.5万とみて年4.6万トンと推定。
外部購入品
他社から仕入れる重質炭酸カルシウムと無機薬品などの販売。
| 数量取扱量(千トン・年。推定) | 価格1トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 171 | 4.00 | 68 | 0 |
| 10 年後 中立 | 171 | 5.20 | 89 | 1 |
取り方:売上×外部購入品の比率55.2%=69.8億(重質21.2%・その他33.0%)。重質と無機薬品を合わせた平均単価を1トン約4万とみて年17万トンと推定。利幅は薄い。
リスクと懸念
燃料・電気の高騰
化合炭酸カルシウムは石灰石を焼く工程で重油や電気を大量に使う。燃料が上がると、値上げが追いつくまで利益が消える。2023〜2025年の低収益の主因で、中東の情勢しだいで再び起こる。
汎用品と転売の利幅の薄さ
売上の半分強は仕入れて売る品で、値段は市場が決める。白石工業や輸入品と競い、利幅を上げる余地は小さい。全社の利益率を押し下げ続ける。
焼成炉の投資の回収
土浦の焼成炉に13億円を使い、2028年から償却が年1億円近く足される。増えた能力を値段を崩さずに売れなければ、利益率はかえって下がる。
政策保有株の扱い
日本ペイントホールディングスを中心に43億円の株を持ち、配当が利益の柱だ。売却が進まなければ資本効率は低いまま、売れば配当収入が減る。株価の下落は自己資本も揺らす。
国内需要の縮小
塩化ビニルのパイプ、シーリング材、塗料、ゴムの量は人口と住宅着工とともに細る。輸出と新しい用途で埋められなければ、数量の土台は縮む。
輸入品の流入
中国やベトナムの安い重質炭酸カルシウムが入れば、外部購入品と重質品の利幅はさらに薄くなる。為替が円高に振れると輸入品の値段が下がり、圧力が強まる。
今後の分かれ目
- 政策保有株の売却額と期限を数字で示し、自社株買いを広げる
- 稼がない資産が株主に戻り始める。資本効率が上がり、楽観側の重さを上げる。
- 焼成炉の稼働後に営業利益率が3%を超える
- 本業の回復が確かになる。やや楽観の重さを上げる。
- 燃料・電気の高騰が再び起き、営業利益が赤字に沈む
- 本業の弱さが続く証拠になる。やや悲観と悲観の重さを上げる。
- 同業との統合や商社・ファンドによる買収の提案が出る
- 帳簿の資産がまとめて評価される可能性がある。
- 日本ペイントホールディングスとの取引条件が変わる
- 持ち合いの意味が変わり、株の売却が進む可能性がある。
見ておくもの
- 四半期の営業利益率
- 土浦の焼成炉の稼働と化合炭酸カルシウムの出荷
- 政策保有株の売却額
- 自社株買いと配当の方針
- 燃料・電気の値段
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEがkを大きく下回るので1÷kを上限に、中立はその9割に置いた。持ち合い株の配当は利益に残し、株の価値は余り資産に足していない(二重に数えない)。悲観は赤字なので今の自己資本に掛けるPBRで、政策保有株の税後を割り引いた額を床にした。PBR0.3倍という今の値付けは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.52→12.5 倍・やや楽観 PER 11.15→12.5 倍・中立 PER 10.91→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 0.75%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。