結論
ポバール興業は、名古屋に本社を置く樹脂の加工の会社だ。工場で物を運ぶベルトの表面にウレタンなどの樹脂を貼り、滑りや摩耗を防ぐ。ディスプレイのガラスを磨く研磨材や、専用の機械も作る。売上は36億円の小さな会社である。
筆者の結論は、やや割高だ。営業利益率は10%前後と、この規模の加工屋としては悪くない。それでも純利益は年3億円台で、自己資本60億円に対するROEは5%に届かない。資本コストの8%に遠い。
強みは、顧客の工場ごとに合わせる加工の細かさだ。ベルトは消耗品で、工場が動く限り張り替えの注文が来る。研磨材はディスプレイ向けに伸びている。10年連続の増配も見えている。
一方で、顧客は国内の自動車と鉄鋼、電子部品の工場に偏る。国内の工場が海外へ移れば、注文は細る。2025年3月期には原料高と減損で純利益が1億円を割った。
純現金と株はあるが、時価総額を説明しきるほど厚くはない。今の値段は、事業の稼ぎに比べて少し高いと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い小さな事業だが、値段に見合う安全域は薄い会社だ。
事業そのものは悪くない。ベルトは消耗品で、工場が動く限り注文が来る。顧客ごとに合わせる加工は、大手が入りにくいすき間だ。利益率は10%前後あり、無借金である。
株主のものになる利益は、年3億円台とみる。新しい工場の投資が終わり、設備の更新は償却とほぼ同じで済む。資本コストを7.5%とすると、その値打ちは40億円前後だ。今の時価総額とほぼ並ぶ。
気になるのは2点だ。1つは顧客が国内の工場に偏ること。10年後に国内の自動車と鉄鋼の工場がどれだけ残るかは、誰にもわからない。もう1つは資本の厚さだ。利益を配当で3割しか戻さず、ROEは資本コストに届かない。
持ち続けたい事業かと問われれば、規模の小ささと顧客の偏りで答えに迷う。今の値段は、事業の良さをほぼ織り込んでいる。
何で稼ぐ会社か
ポバール興業は1960年代に名古屋で生まれた。社名のポバールは、樹脂のポリビニルアルコールに由来する。樹脂を物に貼り付ける接着の技術を磨き、工場の部材に広げてきた。
事業は2つに分かれる。稼ぎ頭の総合接着樹脂加工は、2026年3月期の売上が30億円、セグメント利益は4億円だった。中身は3つある。最大はベルト関連で16億円。工場で部品や鋼板を運ぶベルトに、ウレタンやゴムの層を貼る。滑り止めや傷防止、静電気の防止など、運ぶ物に合わせて表面を変える。研磨関連は7.5億円で、液晶や有機ELのガラスを磨く研磨材だ。前期から2割伸びた。樹脂加工は6億円で、樹脂の部品を作る。
特殊設計機械は売上6.5億円、利益0.6億円だ。顧客の工場に合わせた専用の機械を設計して納める。2026年4月に子会社の日新製作所を吸収合併した。
売上の8割強は国内で、アジアが1.5割だ。顧客は自動車、鉄鋼、電子部品のメーカーである。2023年と2024年に合わせて10億円を投じて工場を新しくした。中期経営計画は2027年3月期に売上38億円、営業利益3.9億円を掲げる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、顧客の工場に合わせる加工の細かさだ。
搬送ベルトの表面は、運ぶ物によって求められる性質が違う。鋼板なら傷を付けない柔らかさ、電子部品なら静電気を逃がす性質、食品なら衛生だ。ポバール興業は樹脂の配合と貼り方を顧客ごとに変える。一度採用されれば、張り替えのたびに同じ注文が来る。小さな市場で、大手が入りにくい。
利益率がそれを示す。営業利益率は過去12年で最悪でも3%、多くの年は8〜13%だ。無借金で、自己資本比率は83%に達する。
ただ堀は狭い。顧客は国内の工場に偏り、その工場の数は長い目で減る。研磨材は少数の大口顧客に頼り、注文の波が大きい。原料のウレタンや樹脂が上がれば、値上げが追いつくまで利益が削られる。
資本の使い方も課題だ。利益率は高いのに、自己資本が厚すぎてROEは5%前後にとどまる。資本コストに届かない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ポバール興業の市場は、国内の工場の稼働そのものだ。
搬送ベルトは、自動車や鉄鋼、電子部品、食品の工場で使う消耗品である。工場が動けば表面が擦り減り、張り替えが要る。新しい工場の建設より、今ある工場の稼働に連動する。だから景気の波は受けるが、注文がゼロになることはない。
長い目で見ると、国内の工場は減る方向にある。自動車の生産は海外へ移り、国内の鉄鋼は高炉を減らす計画だ。人口の減少で、国内の製造業の数量は横ばいがせいぜいである。一方で人手不足から、工場の自動化と搬送の機械化は進む。ベルトの使われる場面はむしろ増える。
研磨材は別の動きをする。液晶と有機ELのガラスを磨く工程は、主にアジアの工場にある。ディスプレイの生産は中国と韓国に集まり、注文の波は大きい。
原料のウレタンや樹脂は石油から作る。2026年は中東の情勢で原料が上がり、会社も2027年3月期の減益を見込む。
競合は、ベルトの大手メーカーの加工部門と、全国の小さな加工屋である。ポバール興業は表面の樹脂加工に特化した中堅だ。筆者の見立てでは、樹脂加工の点数は10年で5%ほど増え、単価は物価にわずかに届かない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026年3月期の配当は総額1.1億円で、配当性向は29%だった。2027年3月期も増配を予定し、10年連続の増配になる。自社株買いの実績は乏しい。
大きな投資は工場だ。2023年と2024年に合わせて10億円を投じて新しくした。今後の設備投資は年1〜2億円で、償却とほぼ同じ水準に戻る。
純現金は9億円、投資有価証券は7億円ある。自己資本比率は83%と厚い。利益率の高さに比べてROEが低いのは、この資本の厚さのためだ。
株主では、2018年に筆頭株主の神田氏の資産管理会社が安定株主として株を買い増した。創業家の色が濃く、外からの買収や再編の動きは見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の利益率は、規模に比べて驚くほど高い。営業利益率は過去12年の最悪の年でも3%あり、多くの年は8〜13%だ。顧客の工場に合わせて樹脂を配合し、貼り方を変える。一度採用されれば、張り替えのたびに同じ注文が来る。これは小さな会社が持つ、本物の堀だ。
研磨材は伸びている。2026年3月期はディスプレイ向けに2割増えた。工場の自動化が進めば、搬送ベルトの使われる場面も増える。人手不足は、むしろ追い風だ。
経営も堅実だ。中期経営計画の利益目標を前倒しで超え、10年連続の増配を続ける。新しい工場の投資は終わり、これからは現金が積み上がる。無借金で、純現金と株で16億円を持つ。
資本の厚さが気になるなら、それは改善の余地でもある。配当性向を上げるか自社株買いをすれば、ROEはすぐに上がる。利益率の高い事業が、資本の使い方ひとつで生まれ変わる。
日新製作所の合併で、機械と加工を一体で提案できる体制も整った。ベルトと搬送の機械をまとめて納めれば、顧客の工場により深く入り込める。
慎重な見方
顧客は国内の工場だ。自動車の生産は海外へ移り、国内の鉄鋼は高炉を減らす。ベルトが消耗品でも、工場そのものが減れば注文は減る。売上の8割強が国内という構成は、10年先を考えると重い。
研磨材の伸びも危うい。ディスプレイの生産は中国と韓国に集まり、顧客の数は少ない。大口の顧客が1社抜ければ、売上は大きく落ちる。注文の波も大きい。
原料高への弱さも見えている。2025年3月期には原料高と減損で、純利益は0.8億円まで落ちた。2027年3月期も原料高で減益を見込む。値上げは遅れて通る。
資本の使い方は消極的だ。配当性向は3割で、自己資本は積み上がるだけだ。創業家が株を固め、外からの圧力も働かない。利益率が高くても、ROEが資本コストに届かなければ、株主の価値は増えない。今の値段は、その弱さを十分には映していない。
規模の小ささも見逃せない。売上36億円の会社では、技術者が数人辞めるだけで加工の質が揺らぐ。人を採る競争では、大手に勝ちにくい。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の見方に一理ある。顧客ごとの加工は本物の強みで、利益率がそれを示す。ただ顧客が国内の工場に偏る弱さと、資本の厚さによる低いROEは、慎重な見方の指摘どおりだ。確率は中立を厚くし、上下にほぼ対称に置いた。今の値段は、良い事業をほぼ織り込んでいる。研磨材の伸びと資本政策の変化が数字で見えれば、楽観側へ寄せる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,880 円50 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 476 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 1,244 円33 億円、今との差 −9.9%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,945 円78 億円 | 645 円17 億円 | +160.0% | +10.0% | 359 円9 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,444 円64 億円 | 569 円15 億円 | +118.2% | +8.1% | 663 円17 億円 |
| 中立 | 38% | 2,004 円53 億円 | 493 円13 億円 | +80.8% | +6.1% | 949 円25 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,243 円33 億円 | 380 円10 億円 | +17.5% | +1.6% | 324 円9 億円 |
| 悲観 | 10% | 380 円10 億円 | 228 円6 億円 | −56.0% | −7.9% | 61 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,880 円50 億円 | 476 円13 億円 | +70.6% | +5.5% | 2,356 円62 億円 |
今の株価時価総額 1,381 円36 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 研磨材と海外が伸び、利益率が山に戻る 利益 6 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,945 円78 億円
ディスプレイと半導体のガラスを磨く研磨材が、アジアの工場で採用を広げる。自動車と鉄鋼の工場でも、搬送ベルトの張り替えの需要は堅い。樹脂加工の点数は1.25倍、単価は物価をわずかに上回る1.36倍だ。利益率は14%と、過去の山を上回る。
特殊設計機械は日新製作所の合併で設計の人手がまとまり、受注が1.3倍に増える。
全社費は物価で増えるが、営業利益は7.7億円、純利益は5.6億円になる。配当は増配が続き、10年の還元は17億円だ。それでもROEは6%台で、資本コストにわずかに届かない。純現金は20億円を超えて積み上がる。
- 総合接着樹脂加工(ベルト・研磨材・樹脂部品):数量 37.0(加工品の出荷点数(万点))× 価格 1.36(1点あたりの平均単価(万円))→ 売上 50 億円・営業利益 7 億円。点数1.25倍・単価1.36倍・利益率14%
- 特殊設計機械:数量 52.0(納入台数(台))× 価格 0.22(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。台数1.3倍・単価1.34倍・利益率10%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 78 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ディスプレイ向けの研磨材の伸び、アジアでのベルトの拡販、機械の受注増がそろう必要がある。2020年3月期の利益率13%の実績はあるが、続いたことはない。
やや楽観 22% 中計の水準を保ち、緩やかに伸びる 利益 5 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,444 円64 億円
搬送ベルトは自動車と鉄鋼の工場の更新需要で底堅い。研磨材は液晶と有機ELのガラス向けに伸びる。樹脂加工の点数は1.15倍、単価は物価並みの1.34倍だ。利益率は13%と、今の水準を保つ。
特殊設計機械は台数が1.15倍になり、利益率は9%だ。
営業利益は6.3億円、純利益は4.6億円になる。配当は性向3割台を保って増え、10年の還元は15億円。自己資本は85億円に積み上がり、ROEは5%台にとどまる。現金はゆっくり積み上がるが、自社株買いの方針は出ないままだ。研磨材の顧客は増えるが、1社への偏りは残る。
- 総合接着樹脂加工(ベルト・研磨材・樹脂部品):数量 34.0(加工品の出荷点数(万点))× 価格 1.34(1点あたりの平均単価(万円))→ 売上 46 億円・営業利益 6 億円。点数1.15倍・単価1.34倍・利益率13%
- 特殊設計機械:数量 46.0(納入台数(台))× 価格 0.21(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。台数1.15倍・単価1.32倍・利益率9%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 64 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年3月期は営業利益率11.7%で中計を前倒しで上回った。10年連続の増配も続く。原料高と人件費の上昇で、山の利益率は続かない形にした。
中立 38% 国内の工場とともに、ゆっくり進む 利益 4 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,004 円53 億円
国内の自動車と鉄鋼の生産は大きく伸びない。ただベルトは消耗品で、工場が動く限り張り替えの注文が来る。研磨材の伸びが加わり、樹脂加工の点数は1.05倍になる。原料のウレタンや樹脂は上がり、値上げは遅れて通る。単価は1.32倍、利益率は12%とみる。
特殊設計機械は台数が横ばいで、利益率は8%だ。2023年と2024年に建てた新しい工場の償却は取得時の値段のまま続き、建物の更新の分だけ少しずつ増える。
営業利益は5億円、純利益は3.7億円になる。配当は増配の流れを保ち、10年の還元は13億円。自己資本は81億円に膨らみ、ROEは4%台にとどまる。
- 総合接着樹脂加工(ベルト・研磨材・樹脂部品):数量 31.1(加工品の出荷点数(万点))× 価格 1.32(1点あたりの平均単価(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 5 億円。点数1.05倍・単価1.32倍・利益率12%
- 特殊設計機械:数量 40.0(納入台数(台))× 価格 0.21(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。台数横ばい・単価1.30倍・利益率8%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の自動車と鉄鋼の生産は横ばいからやや減り、研磨材の伸びがそれを少し上回る。過去10年の利益率の中ほどに戻る姿が最も自然とみた。
やや悲観 20% 国内の工場が細り、値上げが遅れる 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,243 円33 億円
自動車の生産が海外へ移り、国内の鉄鋼も設備を減らす。搬送ベルトの張り替えの注文は細り、研磨材も顧客の工場の統合で減る。樹脂加工の点数は0.9倍、単価は1.25倍にとどまる。利益率は9%に下がる。
特殊設計機械は受注が減り、利益率は4%だ。
営業利益は2.8億円、純利益は2億円になる。配当は増配が止まり、10年の還元は10億円。自己資本は76億円あるが、その多くは工場と土地だ。
稼ぐ力で測る価値は27億円ほどで、余った現金の一部を足しても30億円に届かない。新しい工場の償却だけが重く残る。現金と株は残るが、使い道を決めるのは創業家と経営だ。
- 総合接着樹脂加工(ベルト・研磨材・樹脂部品):数量 26.6(加工品の出荷点数(万点))× 価格 1.25(1点あたりの平均単価(万円))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。点数0.9倍・単価1.25倍・利益率9%
- 特殊設計機械:数量 32.0(納入台数(台))× 価格 0.20(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。台数0.8倍・単価1.22倍・利益率4%
倍率:ROE約2.6%でkを大きく下回る。稼ぐ力(純利益約2億円÷k)は約27億円、余った現金の0.75倍に戻り方0.75を掛けた約2.8億円を足して約28億円。その手前の今の自己資本60.3億円の0.445倍に置いた。
確率:国内の自動車と鉄鋼の生産は長い目で減る方向にある。2025年3月期には原料高と減損で純利益が0.8億円まで落ちた。研磨材も顧客の数が少なく、注文の波が大きい。
悲観 10% 国内の工場の空洞化で注文が消える 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 380 円10 億円
国内の自動車と鉄鋼の工場が次々に海外へ移る。搬送ベルトの注文は細り、研磨材の主な顧客もディスプレイから撤退する。樹脂加工の点数は0.7倍、単価は1.12倍しか上がらない。利益率は4%に落ちる。
特殊設計機械は赤字になる。営業利益はほぼゼロで、純利益は株の配当で辛うじて黒字だ。配当は減り、10年の還元は6億円にとどまる。
残る価値は、手元の現金と株、名古屋の工場の土地だ。ただ売るかどうかは創業家と経営が決める。少数株主の取り分は小さい。会社は名古屋の小さな加工屋として続くが、株主に報いる力は失われる。
- 総合接着樹脂加工(ベルト・研磨材・樹脂部品):数量 20.7(加工品の出荷点数(万点))× 価格 1.12(1点あたりの平均単価(万円))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。点数0.7倍・単価1.12倍・利益率4%
- 特殊設計機械:数量 24.0(納入台数(台))× 価格 0.18(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。台数0.6倍・単価1.10倍・利益率−2%
倍率:稼ぐ力(純利益約0.5億円÷k)は約6億円。純現金と投資有価証券・土地の税後に戻り方0.5を掛けた床(約10億円)の方が大きく、今の自己資本60.3億円の0.166倍に置いた。
確率:国内の自動車と鉄鋼の生産の縮小、研磨材の主要な顧客の撤退、海外の安い加工品が重なる構造的な負け。ベルトの張り替えは工場がある限り続き、無借金なので1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
総合接着樹脂加工(ベルト・研磨材・樹脂部品)
工場の搬送ベルトの表面にウレタンなどの樹脂を貼る加工と、ディスプレイのガラスを磨く研磨材、樹脂の加工部品。自動車・鉄鋼・電子部品の工場に売る。
| 数量加工品の出荷点数(万点) | 価格1点あたりの平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 29.6 | 1.00 | 30 | 4 |
| 10 年後 中立 | 31.1 | 1.32 | 41 | 5 |
取り方:2026年3月期の総合接着樹脂加工の売上29.58億円・セグメント利益3.98億円(決算短信)。点数の開示は無く、ベルト・研磨材・部品を混ぜた1点あたり約1万円と置いて約30万点とした推定。
特殊設計機械
顧客の工場に合わせて設計する専用の機械。2026年4月に子会社の日新製作所を吸収合併した。
| 数量納入台数(台) | 価格1台あたりの平均単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 0.16 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 0.21 | 8 | 1 |
取り方:2026年3月期の特殊設計機械の売上6.47億円・セグメント利益0.60億円(決算短信)。台数の開示は無く、1台あたり約1,600万円と置いて約40台とした推定。
リスクと懸念
国内の工場の縮小
売上の8割強は国内で、顧客は自動車・鉄鋼・電子部品の工場だ。生産が海外へ移り、国内の工場が減れば、ベルトの張り替えの注文も細る。
研磨材の顧客の偏り
研磨材はディスプレイのガラス向けで、顧客の数は少ない。ディスプレイの生産は中国と韓国に集まり、大口の顧客が抜ければ売上は大きく落ちる。
原料高と値上げの遅れ
原料のウレタンや樹脂は石油から作る。2025年3月期は原料高と減損で純利益が0.8億円まで落ち、2027年3月期も原料高で減益を見込む。
規模の小ささ
売上36億円の会社で、人材の確保や設備の更新の負担が重い。特殊設計機械は受注の波が大きく、合併した日新製作所の統合がうまくいくかも課題だ。
資本の厚さと低いROE
自己資本比率83%で、配当性向は3割台にとどまる。利益率は高いのにROEは5%前後で、資本コストに届かない。創業家が株を固め、外からの改善の圧力は弱い。
今後の分かれ目
- 研磨材の売上が2期続けて1割超伸びたら
- 樹脂加工の点数を上げ、やや楽観の確率を厚くする。
- 営業利益率が2期続けて12%を超えたら
- 山の利益率が続くとみて、楽観側の確率を厚くする。
- 自社株買いや配当性向の引き上げの方針が示されたら
- 余った現金の戻り方を1.0に上げ、ROEの改善を見込む。
- 国内の大口の顧客が工場を閉じたら
- やや悲観の確率を厚くし、点数を下げる。
- 原料高で営業利益率が7%を割ったら
- 値上げの遅れが長引くとみて、中立の利益率を下げる。
見ておくもの
- 研磨関連製品の売上
- 総合接着樹脂加工のセグメント利益率
- 国内の自動車と鉄鋼の生産
- 原料の値段と値上げ
- 配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、樹脂加工と機械の数量と単価、利益率から10年後の利益を積んだ。ROEはどの筋書きでも資本コスト7.5%に届かないので、PERは1÷k(12.5倍)を上限に利益の質で8〜9割に置いた。悲観側は稼ぐ力と、純現金・株・土地の税後に戻り方0.5を掛けた床で置いた。今のPBR0.6倍には寄せていない。2026年3月期の純利益は上振れなので、ならした3.2億円を起点にした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.3→13.33 倍・やや楽観 PER 10.7→13.33 倍・中立 PER 10→13.33 倍・やや悲観 PBR 0.42→0.445 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。