結論
OATアグリオは、農薬、肥料、作物の生理に働きかけるバイオスティミュラント、それに切り花の延命剤を手がける農業資材の会社だ。売上の約7割が海外で、国内の農薬会社としては珍しく海外比率が高い。2025年12月期は売上320億円、営業利益34億円で、2026年は上期だけで通期の営業利益計画の9割を稼いだ。
筆者の結論は「やや割高」である。事業の質は悪くない。研究開発に売上の1割近くを使い、環境配慮型の製品で独自の路線を持つ。それでも、10年後の中立の純利益は32億円ほどで、積み上がる自己資本に対するROEは8〜9%まで下がる。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額の1割ほど下になる。
理由は資本効率にある。配当性向は2〜3割で、利益の大半は会社に残る。残ったお金が資本コストを大きく超えて稼がなければ、利益が伸びても1株の価値は増えにくい。海外の伸びと新製品が、それを上回れるかが分かれ目だ。
今の値段は、足元の好調な上期をかなり先まで引き延ばした姿である。安全域は厚くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10年後も農業資材の需要はなくならず、世界中で畑は耕される。この点は安心できる。問題は、その需要から当社がどれだけ超過の利益を取れるかだ。
オーナー利益は、純利益から設備更新と研究費の一部を引いた額になる。研究開発に売上の1割近くを使う会社の利益は、見かけより小さい。設備投資は小さく済むため、現金は生まれやすい。
堀は、製品数の多さと登録の蓄積だ。ただ、農薬の特許は切れ、バイオスティミュラントは参入者が増える。堀は「普通」と見る。
資本の使い方では、利益の7割が会社に残る点が気になる。残したお金が高い収益を生めばよいが、買収を増やせば失敗の危険もある。
安全域の点では、足元の好調な上期を前提にした値段は、10年の落ち着いた利益に対して余裕が乏しい。事業の質は評価できるが、払う値段にはまだ慎重になるべき水準だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は二つある。農薬が売上の約4割、肥料とバイオスティミュラントが約6割を占める。農薬は、ダニ・害虫用の「ダニサラバ」「ハチハチ」「オンコル」などに加え、食品添加物由来の環境配慮型(サフオイル、アカリタッチ、カリグリーン)が特色だ。肥料は、ハウス栽培向けの肥料と、水と肥料を同時に与える養液土耕の栽培システムを持つ。バイオスティミュラントは「アトニック」に代表される、作物の生理を助けて収量や品質を上げる資材である。
海外が売上の約72%を占める。2025年の地域別では、欧州・中東が約2割、中南米が約2割、北米が約17%、日本は約28%だ。子会社は29社で、オランダの切り花延命剤メーカー、クリザールを2018年に約79億円で買収した。スペインのLIDAはバイオスティミュラントを30か国に販売し、インドにも研究と販売の拠点を持つ。
国内の販売は全国農業協同組合連合会(全農)と商系の代理店が中心で、販売提携先の丸善薬品産業が売上の16.2%を占める。研究開発費は売上の約8%の27億円で、鳴門の研究所を軸に、インドとスペインにも拠点がある。連結の従業員は約600名だ。
優良さと弱いところ
堀は、製品の多さと、販売網の広さにある。一つの剤に利益が偏らず、どの国でも登録を取って売るという地道な仕事が、小さな会社には簡単に真似できない。クリザールは69か国で販売され、切り花の延命という小さいが世界共通の市場で地位を築く。
一方で、価格を決める力は強くない。農薬は特許が切れれば価格競争になり、国内は全農を通じた価格交渉が続く。大手のシンジェンタ、バイエル、コルテバ、BASFの規模には遠い。バイオスティミュラントは新しい市場で、競合が増えていく局面にある。
資本効率には課題が残る。ROEは2022〜2023年に20%前後まで上がったあと、2025年は12〜13%に下がった。自己資本は利益の積み上げで188億円に膨らんでいる。中計は2026年にROE13%以上、自己資本比率50%以上を掲げ、足元ではほぼ達成した。
経営は慎重だ。買収のあとは借入の返済を優先し、純有利子負債は2019年の約130億円台から46億円まで減らした。クリザール買収後の2019年は純利益がほぼゼロまで落ちたが、立て直した実績は評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
農薬は登録制度が参入の壁になる成熟市場だ。日本の農家は減り、国内市場は縮小が続く。世界では、気候変動や食料安全保障で需要は底堅い。ただし、特許が切れた剤はジェネリックに価格を下げられる。世界の大手はシンジェンタ、バイエル、コルテバ、BASFで、日本の中堅は特定の作物や用途で戦う。
当社が力を入れるのはバイオスティミュラントと環境配慮型の農薬だ。高温や乾燥のストレスから作物を守る資材は、気候変動で需要が増える分野で、世界の農薬会社も参入を急ぐ。ただ、効果の見えにくさと各国の規制の整備途上が、市場の成長を左右する。日本では食品由来の農薬への関心が高まっている。
肥料は、ハウス栽培向けの特化型が主力で、スマート農業との組み合わせを進めている。国内の農家が減る中、単価の高い施設園芸に絞る戦略だ。
切り花の延命剤は、花の消費に連動する。欧米の景気や花の流通の変化に左右されるが、需要自体は安定している。競合には米国のフローラライフなどがある。
この業界の循環は、景気より天候と為替、規制の変更で決まる。2025年は円安が海外子会社の円換算の売上を押し上げた。為替が戻れば追い風が消える点は、10年の見通しでは固定する(150円)ため中立では考えない。
資本政策と M&A
還元の方針は、連結の配当性向20〜30%を目安にした安定配当で、自己株式の取得も行う。2025年12月期の配当は中間と期末の年2回で、配当性向は約26%だった。株主優待があり、自社製品やギフト券などを渡すが、費用は年1億円に届かないと推定し、還元の計算には加えない。
資本は研究開発と設備に回す。2024〜2026年の研究開発費は約80億円と、前の3年間の約60億円から増やす。設備投資は年6億円ほどと小さい。
買収は2018年のクリザールが最大で、約79億円を払った。のれんは残っており、不振になれば減損の対象になる。政策保有株は北興化学など少額で、売却はしていない。
大株主は信託口、光通信の組合、伊藤忠ケミカルフロンティア、大塚化学、丸善薬品産業などで、単独の支配株主はいない。筆者は、自己資本が積み上がる一方の資本政策が、ROEを下げている最大の理由だと見ている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
海外が7割を占める構造は、国内の農家減少の影響を受けにくい。海外はすでに230億円の売上があり、販売国は2021年の89か国から96か国へ増えた。バイオスティミュラントは農薬より速く伸びる分野で、気候変動で高温や乾燥のストレスが増えるほど、必要とされる。
2026年は上期の営業利益が前年同期比で3割近く増え、通期計画の9割を稼いだ。中計の最終年に当たる2026年の売上317億円、営業利益38億円という目標は、すでに射程に入っている。環境配慮型の製品も、食品由来の原料で作る点が欧州の規制に合い、有機農業向けの販売が広がる。
クリザールは69か国で販売され、2021年から2025年の売上は年4%ほどで安定して伸びている。切り花の延命は小さな市場だが、景気に強い。研究開発は売上の1割を超え、新製品は農薬8品目、バイオスティミュラント5品目、防除資材10品目を3年で出す計画だ。研究員は147名体制へ増える。
財務も健全だ。純有利子負債は46億円、自己資本比率は50%で、買収のあとの傷は癒えた。配当性向を上げ、自社株買いを増やす余地もある。
慎重な見方
2025年から2026年の好調は、円安と、一部の分野の伸びが重なった結果だ。為替が戻れば海外子会社の円換算の売上は減り、利益率も縮む。足元の営業利益率11%台は、過去の山13%台に届かず、天井は低い。
農薬はジェネリックの価格競争にさらされ、国内の農家は減り続ける。バイオスティミュラントには、大手農薬会社が資金力を背景に参入を進めている。当社が先行しても、効果の証明に時間がかかり、販売国ごとの規制対応に費用がかさむ。
資本効率の悪化も見逃せない。配当性向は2〜3割で、自己資本が毎年積み上がる。利益が10年で4割増えても、自己資本が倍近くになれば、ROEは12%台から8%台へ薄まる。中計のROE13%目標は、足元では達成しても、積み上がりを止めなければ維持が難しい。
クリザールの買収には約79億円を払い、のれんが残る。成熟した切り花市場で伸びが止まれば、減損のリスクがある。研究開発費の重さ(売上の8%台)は、売上が落ちた年に利益を直接圧迫する。上期に利益の大半を稼ぐ季節性も、通期の読みにくさにつながる。
どちらに重みを置いたか
事業の質と海外の伸びでは、前者の指摘に説得力がある。だが価値の計算では、後者が指摘する資本効率の薄まりと、為替・競争の逆風が効く。中立の筋書きでは10年後の時価総額は今の約1.5倍にとどまり、期待の年率は資本コストに届かない。確率は中立を最も厚くし、やや悲観に楽観より少し重みを寄せた。研究開発の当たり外れと価格競争を考えたためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 4,882 円493 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 888 円90 億円)。 今の値に割り戻すと 2,988 円302 億円、今との差 +7.2%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 8,431 円852 億円 | 1,144 円116 億円 | +243.5% | +13.1% | 862 円87 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,811 円688 億円 | 1,024 円104 億円 | +181.1% | +10.9% | 1,724 円174 億円 |
| 中立 | 37% | 5,365 円542 億円 | 915 円93 億円 | +125.3% | +8.5% | 2,324 円235 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,605 円263 億円 | 795 円80 億円 | +22.0% | +2.0% | 748 円76 億円 |
| 悲観 | 10% | 673 円68 億円 | 464 円47 億円 | −59.2% | −8.6% | 114 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,882 円493 億円 | 888 円90 億円 | +107.1% | +7.5% | 5,771 円583 億円 |
今の株価時価総額 2,787 円282 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 海外のバイオスティミュラントと切り花ケアが伸び続ける 利益 48 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 8,431 円852 億円
環境配慮型の農薬と、作物の生理に働きかけるバイオスティミュラントが世界で受け入れられ、海外の販売量は10年で1.45倍になる。スペインのLIDAとインドの拠点が現地の登録品を増やし、クリザールの切り花延命剤は新興国の需要を取り込む。新製品の発売が中計の計画どおり続き、値段は物価を超えて上がる。研究開発の成果で、海外の利益率は12.5%まで上がる。国内は農家の減少を、施設園芸の養液土耕とスマート農業の提案で補い、量は横ばいを保つ。全社の営業利益率は12.4%と、過去の山13.3%の手前まで戻る。自己資本は積み上がるが、新製品の投資と配当に回り、ROEは11%台を保つ。
- 国内(農薬・肥料・バイオスティミュラント):数量 3,300(国内の農薬・肥料市場の実質規模(億円、今の値段・推定。農薬市場の約3,300億円を物差しにした))× 価格 3.7%(当社の取り分(シェア約2.7%)×値段の指数(名目、物価3%が乗る))→ 売上 121 億円・営業利益 17 億円。数量1.00倍×価格1.36倍、利益率14.0%
- 海外(クリザール・LIDA・輸出・海外農薬):数量 2.2(当社の海外販売の実質額(億ドル、今の値段・推定。世界の作物保護と関連資材の市場約750億ドルの約0.2%))× 価格 138.0%(値段の指数(今を1とする。名目で物価3%が乗る))→ 売上 461 億円・営業利益 58 億円。数量1.45倍×価格1.38倍、利益率12.5%
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.17 倍、時価総額 831 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新製品の連続的な成功と海外の販売網の拡大が10年続く姿。会社の研究開発費は売上の1割と重く、成功すれば大きいが、揃う確率は1割に届かない。
やや楽観 22% 中計の路線どおり、海外が国内の減少を上回って伸びる 利益 40 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 6,811 円688 億円
会社が掲げる海外売上比率7割以上の路線が続き、海外の販売量は10年で1.3倍になる。バイオスティミュラント「アトニック」の海外向けと、クリザールの安定した伸びが柱になる。国内は農家の高齢化で農薬の量が細るものの、肥料とバイオスティミュラントの提案で売上を保つ。値上げは物価並みに通り、研究開発費の負担は売上の伸びに吸収される。営業利益率は11%台に乗り、2026年の計画値(11%強)を維持する。配当性向は2〜3割の範囲で、残りは研究と海外の拠点に使う。M&Aは小粒にとどまり、ROEは10%前後になる。
- 国内(農薬・肥料・バイオスティミュラント):数量 3,234(国内の農薬・肥料市場の実質規模(億円、今の値段・推定。農薬市場の約3,300億円を物差しにした))× 価格 3.6%(当社の取り分(シェア約2.7%)×値段の指数(名目、物価3%が乗る))→ 売上 118 億円・営業利益 15 億円。数量0.98倍×価格1.35倍、利益率13.0%
- 海外(クリザール・LIDA・輸出・海外農薬):数量 2.0(当社の海外販売の実質額(億ドル、今の値段・推定。世界の作物保護と関連資材の市場約750億ドルの約0.2%))× 価格 136.0%(値段の指数(今を1とする。名目で物価3%が乗る))→ 売上 408 億円・営業利益 46 億円。数量1.30倍×価格1.36倍、利益率11.3%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.53 倍、時価総額 658 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の増収増益と中計の達成が足場になる。上期の営業利益は前年から3割近く増えており、この姿の確度は中立に次いで高い。
中立 37% 海外が緩やかに伸び、利益率は今の水準で定着する 利益 32 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 5,365 円542 億円
国内は農家の減少で量が緩やかに細り、農薬の価格は物価に届かない伸びにとどまる。海外は販売国が増え、数量は10年で1.18倍になる。バイオスティミュラントは農薬より速く伸びるが、競合が増えて値上げは物価並みにとどまる。クリザールは新興国の需要で堅調だが、成熟した事業で大きくは伸びない。研究開発費は売上の1割弱を保ち、営業利益率は10%強と、直近の水準に近い。自己資本が積み上がる一方、配当性向は3割前後にとどまるため、ROEは8〜9%まで下がる。成長しても資本効率は薄まる、普通の優良中堅になる10年だ。
- 国内(農薬・肥料・バイオスティミュラント):数量 3,201(国内の農薬・肥料市場の実質規模(億円、今の値段・推定。農薬市場の約3,300億円を物差しにした))× 価格 3.6%(当社の取り分(シェア約2.7%)×値段の指数(名目、物価3%が乗る))→ 売上 114 億円・営業利益 14 億円。数量0.97倍×価格1.32倍、利益率12.5%
- 海外(クリザール・LIDA・輸出・海外農薬):数量 1.8(当社の海外販売の実質額(億ドル、今の値段・推定。世界の作物保護と関連資材の市場約750億ドルの約0.2%))× 価格 134.0%(値段の指数(今を1とする。名目で物価3%が乗る))→ 売上 365 億円・営業利益 36 億円。数量1.18倍×価格1.34倍、利益率10.0%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.66 倍、時価総額 506 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の好調は為替と一部の分野の寄与が大きい。海外の伸びは続くが、競争と研究費負担で利益率は10%強で落ち着く。この落としどころを最も重く見た。
やや悲観 22% 競争で値上げが通らず、利益率が一段下がる 利益 22 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 2,605 円263 億円
国内の農薬は価格競争が続き、量も価格も物価に追いつかない。海外ではバイオスティミュラントに大手農薬会社が参入し、販売量の伸びは10年で1.05倍にとどまる。ユーロ圏や新興国の景気の弱さで、クリザールの切り花の需要も鈍る。研究開発費は削りにくく、営業利益率は8%台に下がる。買収したクリザールの利益が伸びず、のれんの償却負担が重く残る。配当は続けるが、自己資本は積み上がるのに利益が伸びないため、ROEは6%台に落ちる。事業の形は保たれるが、投資の見返りが乏しい10年だ。国内の取引先は全農と丸善薬品産業が中心で、売上が急に崩れることはない。だからこそ、利益率の低下がじわじわと続く。配当は維持される見込みだが、自社株買いに回す余裕は小さい。
- 国内(農薬・肥料・バイオスティミュラント):数量 3,069(国内の農薬・肥料市場の実質規模(億円、今の値段・推定。農薬市場の約3,300億円を物差しにした))× 価格 3.4%(当社の取り分(シェア約2.7%)×値段の指数(名目、物価3%が乗る))→ 売上 105 億円・営業利益 11 億円。数量0.93倍×価格1.27倍、利益率10.0%
- 海外(クリザール・LIDA・輸出・海外農薬):数量 1.6(当社の海外販売の実質額(億ドル、今の値段・推定。世界の作物保護と関連資材の市場約750億ドルの約0.2%))× 価格 128.0%(値段の指数(今を1とする。名目で物価3%が乗る))→ 売上 310 億円・営業利益 25 億円。数量1.05倍×価格1.28倍、利益率8.0%
倍率:ROE 6.5% が k 7.5% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PER の上限は 1÷k=12.9 倍。競争で値上げが通らず稼ぐ力が弱まる姿なので、上限の 8.1 割の 10.5 倍に置いた。
確率:農薬は特許切れ後に価格が下がりやすく、バイオスティミュラントにも競合が参入する。為替の追い風が消える場面もある。無視できない重みを置いた。
悲観 10% 主力品の競争力を失い、海外の拠点も不振になる 利益 7 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 673 円68 億円
国内外で環境規制が強まり、主力の農薬が登録の更新で販売を狭められる。新製品の発売は遅れ、研究開発費だけが重く残る。海外では現地の競合に押されてバイオスティミュラントの販売が減り、クリザールの利益も落ちて、のれんの減損が出る。値段は物価の上昇に追いつかず、営業利益率は4%を割り込む。純利益は今の3割以下に減り、配当は大きく減らして続ける。事業はなお黒字で、現金も借入返済に回せるが、優良な中堅という評価は外れる。クリザールとLIDAの海外拠点は縮小や売却が議論され、研究開発も絞らざるをえない。残るのは、国内の販売網と少数の稼ぎ頭の剤という、小さくなった会社の姿である。
- 国内(農薬・肥料・バイオスティミュラント):数量 2,805(国内の農薬・肥料市場の実質規模(億円、今の値段・推定。農薬市場の約3,300億円を物差しにした))× 価格 3.1%(当社の取り分(シェア約2.7%)×値段の指数(名目、物価3%が乗る))→ 売上 87 億円・営業利益 4 億円。数量0.85倍×価格1.15倍、利益率5.0%
- 海外(クリザール・LIDA・輸出・海外農薬):数量 1.2(当社の海外販売の実質額(億ドル、今の値段・推定。世界の作物保護と関連資材の市場約750億ドルの約0.2%))× 価格 115.0%(値段の指数(今を1とする。名目で物価3%が乗る))→ 売上 212 億円・営業利益 9 億円。数量0.80倍×価格1.15倍、利益率4.0%
倍率:ROE 2.4% が k 7.5% を大きく下回り、PER の上限は 1÷k=12.9 倍。稼ぐ力が細り、のれんの減損も出る姿なので、上限の 7.8 割の 10.0 倍に置いた(純利益÷k から出し、市場の倍率は使っていない)。
確率:登録制度の強化や代替技術で主力の剤が競争力を失い、海外の買収事業も不振になる複合の姿。低頻度だが、研究開発が重い会社には起こりうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内(農薬・肥料・バイオスティミュラント)
全農と商系代理店を通じて、国内の農家に農薬・肥料・防除資材・バイオスティミュラントを販売する。
| 数量国内の農薬・肥料市場の実質規模(億円、今の値段・推定。農薬市場の約3,300億円を物差しにした) | 価格当社の取り分(シェア約2.7%)×値段の指数(名目、物価3%が乗る) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,300 | 2.7% | 89 | 12 |
| 10 年後 中立 | 3,201 | 3.6% | 114 | 14 |
取り方:会社の開示した国内売上89億円を、国内市場約3,300億円に対する取り分約2.7%と置いた。実質の市場は農家の減少で緩やかに縮み、価格は物価で上がる。分野別の利益は開示がないので、営業利益34.5億円のうち国内を11.6億円(利益率13%)、海外を24.2億円(10.5%)、本社費等を-1.3億円と推定した。
海外(クリザール・LIDA・輸出・海外農薬)
欧州・中南米・北米・アジアなどへ、切り花延命剤、バイオスティミュラント、農薬を販売する。売上の72%を占める。
| 数量当社の海外販売の実質額(億ドル、今の値段・推定。世界の作物保護と関連資材の市場約750億ドルの約0.2%) | 価格値段の指数(今を1とする。名目で物価3%が乗る) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.5 | 100.0% | 231 | 24 |
| 10 年後 中立 | 1.8 | 134.0% | 365 | 36 |
取り方:会社の開示した海外売上230億円を150円/ドルで割り、約1.54億ドルとした。世界の作物保護市場約750億ドルの約0.2%にあたる。切り花延命剤やバイオスティミュラントは別の市場だが、同じ物差しで置いた。数量は実質の販売量で、物価3%は価格に入れる。
リスクと懸念
資本効率の薄まり
配当性向は2〜3割で、自己資本は毎年積み上がる。利益が伸びても、積み上がり以上に稼げなければROEは下がる。中計のROE13%の目標は、足元では達成しても、長くは維持しにくい。
為替の巻き戻し
売上の約7割が海外で、円安が円換算の売上と利益を押し上げている。10年の見通しでは150円で固定するが、実際の為替が円高に動けば、足元の好調は一部が消える。
買収事業のれんの減損
2018年のクリザール買収で約79億円を払った。切り花市場の伸びが止まれば、のれんの減損が出る。2019年には純利益がほぼゼロまで落ちた前例がある。
研究開発費の負担
研究開発費は売上の約8%で、中計では10%以上を維持する方針だ。新製品が当たらない年は、費用だけが重く残る。売上が落ちた年に、利益率を直接押し下げる。
競争と価格下落
農薬は特許が切れればジェネリックに価格を下げられ、バイオスティミュラントには大手農薬会社が参入している。国内は全農との価格交渉もあり、物価分の値上げが通らない年が続く恐れがある。
規制と登録の変更
農薬・肥料は各国の登録制度に従う。環境規制が強まれば、主力の剤の販売が狭められる。環境配慮型の製品は追い風だが、規制の変更は予測しにくい。
通期の読みにくさ
上期に利益の大半を稼ぐ季節性があり、2026年は上期だけで通期の営業利益計画の約9割を稼いだ。下期の動き次第で通期が決まるため、中間の数字だけでは判断を誤る。
今後の分かれ目
- 次期の中期経営計画で、自己株式の取得や配当性向の引き上げが示されたら
- ROEの薄まりが和らぐので、中立の自己資本の積み上がりを下げて見直す。倍率は上がりうる。
- 海外のバイオスティミュラントの売上が年10%超で3年続いたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし価格が維持できているかを確かめる。
- 円高が進み、海外子会社の円換算の売上が減ったら
- 筋書きは為替を150円で固定しているが、実際の利益率が下がる場合はやや悲観に寄せる。
- クリザールの売上が2年連続で減ったら
- のれんの減損と利益率の低下を想定し、悲観側の確率を上げる。
- 大手農薬会社がバイオスティミュラントで日本でも価格を下げ始めたら
- 国内の利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 大型の買収が発表されたら
- 価格と、のれんの大きさ、既存事業との相性を確かめる。借入が増えれば資本コストも見直す。
見ておくもの
- 海外売上の伸びと、バイオスティミュラント・クリザールの動向
- 営業利益率(2026年計画11%強)と下期の進み方
- 自己資本比率・ROE(2026年の中計目標は50%以上・13%以上)
- 次期中期経営計画の還元方針(配当性向・自己株取得)
- 為替(ドル・ユーロ円)の水準
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g))から決め、今の株価や同業の倍率は使っていない。中立のROEは約8.6%でkの7.75%をわずかに超えるだけなので、下限の1÷k近くの13.0倍に置いた。今の約12倍と近いのは結果であり、寄せたものではない(今の株価が倍になっても半分になっても、この数字は動かない)。国内は市場の実質規模×取り分、海外は市場規模×シェアで数量を置き、物価3%は価格に入れた。利払いの増加(約1億円)は純利益の比率に織り込んだ。優待は年1億円に届かないと推定し、還元には足していない。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→17.17 倍・やや楽観 PER 13.2→16.53 倍・中立 PER 13→15.66 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。