結論
ウルトラファブリックス・ホールディングスは、自動車や家具、航空機の座席に使う、ポリウレタンレザーを作る会社である。売上は206億円で、98.6%が海外、うち北米が約7割。群馬と埼玉に工場を持つ。
筆者の結論は、事業は優れているが、借金と利益率の振れが値段を重くし、値段はやや高い、というものだ。営業利益は16億円、ROEは4.5%で資本コストに届かない。時価総額106億円に対し、純有利子負債が131億円ある。
利益は大きく動く。営業利益率は2023年12月期の17%から、2025年12月期の8%に半減した。千代田工場の稼働に伴う償却と、原料・燃料高が効いた。会社は2028年12月期に営業利益35億円を計画する。
10年後の中立は、営業利益28億円、純利益16億円ほど。航空機が伸び、自動車は横ばいで、ROEは7%前後と資本コストに届かない。優先株があり、普通株の取り分は薄い。
見るべきは、千代田工場の稼働、航空機向けの伸び、借金の返済だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ウルトラファブリックスは、事業の質はよいが、財務が重く、安全域が薄い会社だ。
事業は単純で理解しやすい。素材を作って縫製業者に売る。航空機用は認証が要るので、ある程度の堀がある。10年後も存在する。
問題は財務だ。純有利子負債131億円は、営業利益の8倍で、時価総額を上回る。谷の年に利益が半分になれば、借金の重さが利益を削る。財務制限条項もある。優先株も、普通株に先立って配当と元本を受ける。
資本の使い方は、借金で工場を建て、償却が利益を圧迫している。ためた利益は、額面を下回る価値しか持たない。
オーナーが持ち続けたい会社かと問われれば、借金が減るまでは待ち、が筆者の答えだ。値段は、普通株の取り分で見ると、事業の力に見合っているが、安全域は大きくない。中立からやや高めと見る。
何で稼ぐ会社か
ウルトラファブリックス・ホールディングスは、ポリウレタンレザー(合成皮革)を作る持株会社である。IFRSで開示する。単一事業で、2025年12月期の売上は206億円。用途別では、自動車用が39.6%、家具用が27.3%、航空機用が18.1%、その他が15.0%。
海外比率は98.6%で、約7割が北米。主要顧客はメキシコのSaltillo Laminationで、売上の17.3%(36億円)を占める。完成車メーカーでなく、縫製・加工業者を通じて納める形が多い。
工場は、埼玉県の行田、群馬県の邑楽と千代田にある。千代田工場は2025年7月に稼働した。販売会社は米国、英国、メキシコ。メキシコ(Scuf Mexico、50%)とインド(BMD UFK、45%)には合弁があり、持分法の損失を出している。
連結従業員は334人と少人数。売上高に比べて資産が重く、IFRSの減価償却費(EBITDAと営業利益の差)は約19億円に達する。
2026年10月には、Gabriel Holding A/Sとの戦略的提携を公表している(内容は本文で確認できていない)。
優良さと弱いところ
優良さは、素材の品質と、航空機・自動車の認証を通した実績にある。ただし、借金が重く、利益率の振れが大きい。
強みは三つある。第一に、航空機用に必要な難燃などの認証を通し、単価と利益率が高い。第二に、環境配慮型の素材として、動物由来でない革の代わりに採用が進む。第三に、北米を中心に海外98.6%の販売網がある。
弱みも三つある。第一に、純有利子負債131億円は営業利益の8倍にあたり、金利の上昇に弱い。第二に、営業利益率が4%から18%まで動く。第三に、主要顧客のSaltilloが売上の17%を占め、アジア勢の低価格品が追い上げる。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値は6.3%、直近は4.5%と、資本コストを下回る。千代田工場の償却が当面重い。
筆者は、素材の力は本物だが、財務の余裕が小さいと見る。借入には財務制限条項(連結純資産を前期末の75%以上に保つ、当期損益を2期連続で損失にしない)があり、谷の年の行動が縛られる。堀は普通と置いた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は、自動車、家具、航空機の内装に使う素材で、需要は完成品の生産数に連動する。
足元は回復の途中にある。2026年12月期の中間期は売上が8.2%増、営業利益が3.6%減。第1四半期は営業利益が45%増えたが、第2四半期は伸びなかった。通期の会社予想は売上216億円、営業利益16億円。
構造の変化は三つある。電動車の内装で、動物由来でない素材の採用が増える。航空機の座席の改修が続く。家具や公共施設では、掃除しやすく長持ちする合成素材が選ばれる。
競合は、アジアの合成皮革メーカーと、本革、布などの代替素材。低価格のアジア勢は、特に自動車用で価格を下げる。会社も、アジア圏メーカーとの価格競争を、リスクに挙げている。
関税の影響は、会社は小さいと評価し、取引形態の見直しと価格転嫁で対応するとしている。原料と燃料は、2025年12月期の利益を最も押し下げた。
為替は円安・円高とも筋書きでは固定し、業界の差を見やすくしている。
10年では、航空機用が最も伸び、自動車用は横ばい、家具用は小幅に増える、と筆者は置く。
資本政策と M&A
資本の使い方は、成長投資を借金で賄い、財務の余裕は小さい。千代田工場の建設のため、2024年10月に子会社の第一化成が、3行のシンジケートローン55億円(15年、不動産を担保)を組んだ。
配当は、安定配当を続けたうえで、還元を強化する方針に変えた。2025年12月期は普通株で総額5.6億円、A種優先株(185万株)で1.0億円。優先株は2017年に第三者に発行され、配当は普通株の2.2倍。普通株に先立つ。
自社株買いは、実績がない。政策保有株式は子会社株だけで、持ち合いは無い。
中計は、2028年12月期に売上274億円、営業利益35億円、当期利益23億円、EBITDA53億円。2025年12月期の実績は、修正目標とほぼ同じだった。
筆者は、借金の返済と優先株の整理が先で、普通株への還元は後と見る。10年以内の買収の確率は2割強という統計もあるが、筋書きには入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
素材の力が本物だ。航空機用の認証は参入障壁で、単価も利益率も高い。航空機の座席の改修は長く続き、前期も航空機用が伸びた。
電動車の内装では、動物由来でない素材として採用が増える。北米の自動車、家具、公共施設の需要は、景気の谷でも底堅い。
2025年12月期の減益は、千代田工場の稼働に伴う一時的な償却と固定費による。工場が満ちれば、固定費が薄まる。会社は2025年12月期の実績を、修正目標とほぼ同じ水準で着地させており、計画の信頼性は低くない。2028年12月期に営業利益35億円、当期利益23億円の計画がある。この計画は、航空機用の伸びと千代田工場の稼働が前提だ。
2022〜23年12月期には、営業利益率が16〜17%に達した。素材の力が再び効けば、同じ水準に戻る。純有利子負債は、利益の回復とともに早く減り、利払いも軽くなる。メキシコとインドの合弁も、黒字に転換すれば上振れになる。
素材そのものの競争力も高い。環境配慮と耐久性で、本革や布から切り替える顧客は着実に増えている。
慎重な見方
営業利益率は、2023年12月期の17%から、2025年12月期の8%に半減した。原料・燃料高、外注仕入、人件費、千代田の償却が重なると、利益は簡単に半分になる。2026年12月期の予想も、営業利益16億円と横ばいだ。
純有利子負債は131億円で営業利益の8倍。借入には財務制限条項があり、2期連続の赤字や純資産の減少が引き金になる。金利が上がれば、利払いが利益を削る。
アジア勢の低価格品が、特に自動車用で価格を下げる。主要顧客のSaltilloが売上の17%を占め、条件を厳しくされる恐れがある。
合弁は持分法の損失を出し、まだ黒字になっていない。優先株は普通株に先立ち、配当は2.2倍。普通株の取り分は、見かけの利益よりも薄い。2028年12月期の計画は、2025年12月期の営業利益の2倍以上で、達成の根拠は示されていない。
千代田工場の償却は10年続き、稼働が上がらなければ会計の利益を押し下げ続ける。為替の変動で、利益が円で目減りすることもある。
どちらに重みを置いたか
素材の力と航空機の伸びは強気の言い分が強い。ただし、借金の重さ、利益率の振れ、優先株の存在は、弱気の言い分が重い。確率は、中立を3割台半ばに置き、やや悲観を3割近くに寄せた。借金が大きいため、悲観は財務制限条項に触れる構造的な負けとして1割強に置いた。普通株には、優先株の取り分を引いた0.87を掛けた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 885 円143 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 364 円59 億円)。 今の値に割り戻すと 633 円102 億円、今との差 −2.0%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,209 円357 億円 | 755 円122 億円 | +358.8% | +16.5% | 237 円38 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,547 円250 億円 | 593 円96 億円 | +231.3% | +12.7% | 364 円59 億円 |
| 中立 | 35% | 1,014 円164 億円 | 458 円74 億円 | +128.0% | +8.6% | 515 円83 億円 |
| やや悲観 | 27% | 283 円46 億円 | 135 円22 億円 | −35.3% | −4.3% | 113 円18 億円 |
| 悲観 | 13% | 108 円17 億円 | 43 円7 億円 | −76.6% | −13.5% | 20 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 885 円143 億円 | 364 円59 億円 | +93.3% | +6.8% | 1,249 円202 億円 |
今の株価時価総額 646 円104 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 航空機と家具が伸び、千代田工場が満ちて、会社の計画を超える 利益 31 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 2,209 円357 億円
航空機の座席改修と新造機の需要が長く続き、航空機用の面積が9割増える。家具は北米・欧州の公共施設やホテル向けで伸び、自動車は電動車の内装で革に代わる素材として採用が増える。
千代田工場が満ちて固定費が薄まり、インドとメキシコの合弁が黒字になる。営業利益率は12%に戻り、営業利益は46億円ほど。
借金は返済が進み、利払いが減る。純利益は31億円、自己資本は266億円に積み上がる。ROEは11%を超え、資本コストを上回る。
この筋書きでは、アジア勢の低価格品が自動車用の一部に入っても、航空機と施設向けの高単価品で利益を守る。メキシコとインドの合弁は黒字になり、持分法の損失が消える。優先株は整理され、普通株への還元が増える。
- 自動車用:数量 352(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 3,900(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 137 億円・営業利益 14 億円。電動車の内装採用が増える
- 家具用:数量 302(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 3,350(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 101 億円・営業利益 12 億円。北米・欧州の家具・施設向けが伸びる
- 航空機用:数量 118(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 8,040(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 95 億円・営業利益 17 億円。座席改修と新造機の需要
- その他用途:数量 144(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 4,020(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 58 億円・営業利益 5 億円。用途の広がり
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.35 倍、時価総額 410 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は2028年12月期に営業利益35億円を計画する。これを超えて10年で46億円に乗る筋書き。2022〜23年12月期に営業利益率が16〜17%まで上がった実績があり、そこへ戻る道が全く無いわけではないが、借金と原料高が重く、1割を切る確率にした。
やや楽観 17% 航空機が伸び、利益率が計画に近づく 利益 23 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,547 円250 億円
航空機用の面積が7割増え、家具も2割増える。自動車用は横ばいから1割増で、価格競争は続くが、原料高の転嫁が進む。
千代田工場の稼働が上がり、減価償却を吸収する。営業利益率は10%台に戻り、営業利益は36億円。
借金の返済が進んで利払いは減るが、まだ重い。純利益は23億円、自己資本は236億円。配当は10年で110億円。ROEは約9.7%で、資本コストをわずかに上回る。
原料と燃料の上昇は、一部の値上げと輸送費の顧客負担で吸収できる。合弁の損失は縮むが、黒字にはならない。優先株は残り、配当は普通株に先立つ。
- 自動車用:数量 312(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 3,900(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 122 億円・営業利益 11 億円。採用が増え価格転嫁が進む
- 家具用:数量 269(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 3,350(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 90 億円・営業利益 9 億円。家具・施設向けが堅調
- 航空機用:数量 105(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 8,040(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 85 億円・営業利益 14 億円。航空機向けが伸びる
- その他用途:数量 129(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 4,020(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 52 億円・営業利益 4 億円。小幅に増える
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.48 倍、時価総額 287 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年12月期の会社予想は営業利益25億円、2028年12月期は35億円。足元は2025年12月期の16億円から回復の途中にある。計画の達成度合いを7割と見て、10年で36億円に乗る筋書きを2割弱に置いた。
中立 35% 航空機が伸び、自動車は横ばい。利益率は直近の倍に戻らず、計画の7割 利益 16 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,014 円164 億円
自動車用は軽量化と電動車の内装で採用が続くが、アジア勢の低価格品に押され、面積は横ばい。価格は物価の9割ほどしか上がらない。家具用は1割増え、航空機用は座席の改修で5割増える。
千代田工場の償却を吸収し、営業利益率は9%台前半、営業利益は28億円。
借金の返済が進み、利払いは今の4割減る。純利益は16億円、自己資本は221億円。ROEは7%前後と資本コストに届かない。優先株の配当を引いた後の普通株の取り分で見る。
この筋書きは、10年の間に大きな事件を想定しない。景気の谷や原料の高騰は途中にあるが、平均すれば利益率は直近より少し上で落ち着く。千代田工場の償却は10年かけて減り、会計の利益は少しずつ戻る。
- 自動車用:数量 271(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 3,900(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 106 億円・営業利益 8 億円。面積は横ばい、価格は物価の9割
- 家具用:数量 246(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 3,350(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 83 億円・営業利益 7 億円。施設向けが小幅に増える
- 航空機用:数量 93.0(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 8,040(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 75 億円・営業利益 11 億円。座席改修で伸びる
- その他用途:数量 118(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 4,020(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 48 億円・営業利益 3 億円。小幅に増える
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 188 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去の営業利益率は4.1〜18.4%の間に散らばる。直近は7.9%、2026年12月期の予想は7.4%。10年後の中立は9%台前半と、過去12年の中央値(約10%)の少し下に置いた。会社の2028年の計画(12.8%)は追わない。
やや悲観 27% アジア勢の低価格品と原料高で、利益率が5%台に沈む 利益 7 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 283 円46 億円
自動車用は、アジア勢の低価格品に押されて面積が1割減り、価格も上がりにくい。家具用は横ばいで、航空機用だけが2割増える。
千代田工場の固定費が重く、稼働率が上がらない。営業利益は15億円、営業利益率は5%台。借金の利払いが約6億円と重く、純利益は7億円にとどまる。
財務制限条項(純資産を前期末の75%以上に保つ、2期連続の赤字を避ける)に近づき、配当は減る。設備投資は絞る。
航空機用は伸びても、全体の利益を押し上げるほどの量はない。借金の借り換えの金利は3.5%前後に上がり、利払いが減らない。メキシコとインドの合弁も赤字が続く。
- 自動車用:数量 244(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 3,900(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 95 億円・営業利益 4 億円。価格競争で低採算
- 家具用:数量 213(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 3,350(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 5 億円。家具は横ばい
- 航空機用:数量 74.4(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 8,040(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 60 億円・営業利益 7 億円。航空機だけが伸びる
- その他用途:数量 92.7(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 4,020(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。小幅に減る
倍率:事業の稼ぎ率は資本コスト8.5%を大きく下回り、PERの上限は1÷k=11.1倍。その約68%(7.5倍)に置いた。借金が重く、利払い後の利益が薄いため、上限の7割にも届かない。
確率:2025年12月期の営業利益は42%減の16億円で、原料・燃料高、外注仕入、千代田の償却、人件費が重なった。この形が10年のうちにもう一度起きる筋書きを3割近くに置いた。
悲観 13% 原料高と価格崩れで赤字が続き、財務制限条項に触れる 利益 −7 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 108 円17 億円
アジア勢の低価格品が自動車用と家具用を押し、面積は3割前後減る。航空機用も景気の悪化で1割減り、価格は物価に届かない。千代田工場の固定費が重く、営業利益はほぼゼロ。
借金の利払いで赤字が続き、財務制限条項に触れる。銀行は返済の猶予と引き換えに、資産の売却や増資を求める。
稼ぐ力は消え、残るのは工場などの資産だが、借金153億円を差し引くと、普通株に残る価値はごくわずかになる。優先株の元本も普通株に先立つ。
会社は増資や資産の売却、事業の提携で立て直しを図るが、既存の普通株主の取り分は大きく薄まる。千代田工場は稼働が上がらず、償却の重さだけが残る。
- 自動車用:数量 176(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 3,600(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 63 億円・営業利益 0 億円。価格崩れ
- 家具用:数量 168(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 3,000(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 50 億円・営業利益 1 億円。採算ぎりぎり
- 航空機用:数量 55.8(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 7,200(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。航空機は残る
- その他用途:数量 72.1(出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 3,600(1平方メートルあたりの売上(円、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 −1 億円。赤字
倍率:稼ぐ力は消え、資産を売って借金を返した残りが普通株の取り分になる。今の自己資本176億円のうち、優先株と借金の後に残る分の見込みは約20億円(0.11倍)、再建の見込みで加わる小さな値を含めて今の自己資本の0.17倍。内訳は床の資産の欄に書いた。
確率:借入が153億円と大きく、純有利子負債が営業利益の8倍を超える会社である。需要が縮み、価格が崩れれば、財務制限条項に触れる。再建には増資や資産売却が要り、既存の株主の取り分が大きく薄まる構造的な負けの筋書きを、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車用
自動車のシート、ドアトリム、ステアリングなどの内装に使うポリウレタンレザー。メキシコなど北米の縫製・加工業者を通じて完成車メーカーに納める。
| 数量出荷面積(万平方メートル、推定) | 価格1平方メートルあたりの売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 271 | 3,000 | 81 | 5 |
| 10 年後 中立 | 271 | 3,900 | 106 | 8 |
取り方:開示は自動車用が売上の39.6%(約81億円)で、前期比では減少。面積は開示がなく、1平方メートル約3千円・年271万平方メートルと推定した。営業利益は用途別の開示がなく、全社16.2億円を用途の性格から配分した推定(利益率6.5%)。価格は原料高の転嫁で物価並みに上がるが、アジア勢との競争で自動車用は物価の9割程度とみる。
家具用
ソファ、オフィス椅子、ホテルや公共施設の座席に使うポリウレタンレザー。北米・欧州の家具メーカーに納める。
| 数量出荷面積(万平方メートル、推定) | 価格1平方メートルあたりの売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 224 | 2,500 | 56 | 5 |
| 10 年後 中立 | 246 | 3,350 | 83 | 7 |
取り方:開示は家具用が売上の27.3%(約56億円)。面積は1平方メートル約2.5千円・年224万平方メートルと推定。営業利益は推定配分(利益率8.0%)。
航空機用
航空機のシートや内装に使うポリウレタンレザー。難燃などの認証が要り、単価が高い。前期は伸びた。
| 数量出荷面積(万平方メートル、推定) | 価格1平方メートルあたりの売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 62.0 | 6,000 | 37 | 5 |
| 10 年後 中立 | 93.0 | 8,040 | 75 | 11 |
取り方:開示は航空機用が売上の18.1%(約37億円)で、前期比で伸びた。面積は1平方メートル約6千円・年62万平方メートルと推定。営業利益は推定配分(利益率14%)で、最も高い。
その他用途
ヨット、バス・鉄道、医療・施設、アパレル小物などの用途。
| 数量出荷面積(万平方メートル、推定) | 価格1平方メートルあたりの売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 103 | 3,000 | 31 | 1 |
| 10 年後 中立 | 118 | 4,020 | 48 | 3 |
取り方:開示はその他が売上の15.0%(約31億円)。面積は1平方メートル約3千円・年103万平方メートルと推定。営業利益は推定配分(利益率4%)。
リスクと懸念
借金と財務制限条項
純有利子負債は131億円。借入には、連結純資産を前期末の75%以上に保つ、当期損益を2期連続で損失にしない、という条項がある。谷の年に触れる恐れがある。
利益率の振れ
営業利益率は2023年12月期の17%から、2025年12月期の8%に落ちた。原料・燃料、外注仕入、償却、人件費が重なると、利益は簡単に半分になる。
千代田工場の稼働
2025年7月に稼働した千代田工場の償却と固定費が当面重い。稼働率が上がらなければ、投資の回収が遅れる。
アジア勢との価格競争
自動車用でアジア勢の低価格品が追い上げる。会社もリスクの影響度を「大」とする。
主要顧客と為替
Saltillo Laminationが売上の17.3%を占める。海外比率は98.6%で、為替と移転価格税制の影響も大きい。
優先株と合弁
A種優先株は普通株に先立って配当を受け、配当は2.2倍。メキシコ・インドの合弁は持分法の損失を出している。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて11%を超えたら
- 千代田工場の稼働と航空機の伸びが効いているとして、やや楽観の確率を厚くする。
- 純有利子負債が100億円を割り、利払いが軽くなったら
- 財務の余裕が増えたとして、やや悲観と悲観の確率を下げる。
- 2期続けて当期損益が赤字になり、財務制限条項に触れたら
- 構造的な負けとして、悲観の確率を上げる。
- 優先株の普通株への転換や買い入れの条件が開示されたら
- 取り分の係数を置き直す。
- Gabriel Holding A/Sとの提携が出資や買収を伴うなら
- 内容を確かめ、筋書きの置き方を見直す。
見ておくもの
- 用途別(自動車・家具・航空機)の売上と営業利益
- 営業利益率と千代田工場の稼働
- 純有利子負債と財務制限条項の余裕
- 原料・燃料・外注仕入のコスト
- 合弁(メキシコ・インド)の損益
- 優先株の転換・買い入れの条件
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後のROEと資本コスト8.5%から、利益ベースで置いた。事業のROEは中立で約7.2%と資本コストを下回るため、PERの上限は1÷k=11.1倍で、その8割(8.9倍)にした。今の株価や自己資本に対する倍率には寄せていない。営業利益率は過去12年の中央値(約10%)の少し下の9%台前半。本社費・人件費・原料は物価で増やす。減価償却は今の設備の取得原価のままで、千代田工場の償却が当面重い。更新の投資は建築費・機械の値上がりで膨らむので、会計の利益ほど現金は残らない。借金は借り換えで金利が3.5%前後に上がるが、返済で元本が減るため利払いは今の4割減とした。IFRSのため、リースはすでに貸借対照表に載っている(IFRS16)。優先株の取り分は係数0.87で表した。純現金は無いので、余った現金は立てない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→13.35 倍・やや楽観 PER 9.7→12.48 倍・中立 PER 8.9→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決めた。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。