結論
ハリマ化成グループは、松から取れるロジンやトール油を化学品に仕立てる会社だ。紙の強度を上げる薬品、塗料やインキの樹脂、はんだ材料、半導体のレジスト用樹脂を作る。売上は1,038億円、営業利益は33億円である。
筆者の結論はやや割高。事業は堅いが、稼ぐ力が資本コストに届かない。営業利益率は3.2%、自己資本利益率(ROE)は6%で、会社が掲げた2026年度の目標(営業利益70億円、ROE10%)には遠い。
足を引っ張るのは、米欧で展開するローター事業だ。売上は359億円と最大だが、営業利益は0.4億円しかない。2011年に米国企業から買った事業で、借金の利息が重い。純有利子負債は316億円、時価総額の1.2倍である。
稼ぎの柱は製紙用薬品で、営業利益25億円と全体の稼ぎの大半を占める。米国での顧客増が追い風だ。半導体レジスト用樹脂の新工場は2028年に動き出し、電子材料の利益率を上げる芽になる。
10年後の中立の筋書きは、営業利益が64億円、ROEが6%。借金の利息が重く、株主の取り分は大きく増えない。鍵は、ローターの利益率が1〜2%から抜け出せるかどうかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「悪くはないが、持ちたいほどではない」会社だ。10年後も、紙も塗料も半導体もなくならない。ただ、その需要がそのまま株主の利益になる構造ではない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、ほとんどない。営業キャッシュフローから設備投資を引くと、前の期は借入を増やして資金を回した。新工場の投資が続く間は、配当と返済に回る現金は細い。
資本の配分は、この会社の最大の論点だ。ローターを買った2011年の投資は、10年以上たっても資本コストを稼ぎきれていない。営業利益率が1〜2%の事業に、売上の3分の1を占める資産と借金が張り付いている。売るか、立て直すかの決断が要る。
安全域は、今の値段にあまり見えない。PBRは0.7倍と低いが、ROEが資本コストを下回る会社の純資産は、額面どおりの価値を持たない。借金が重い分、悪いほうに倒れたときの株主の取り分は急に薄くなる。
自分がオーナーなら、利益率の低い事業を売って借金を返し、強い製紙用薬品とレジスト用樹脂に絞ることを求める。そうなれば、見え方は一変する。
何で稼ぐ会社か
事業は4つの柱で、売上の内訳は次のとおりだ(2026年3月期)。ローター359億円(35%)、製紙用薬品287億円(28%)、樹脂・化成品214億円(21%)、電子材料137億円(13%)、その他39億円。
製紙用薬品は、紙に強さや水のはじきを与える薬品で、紙力増強剤、サイズ剤、塗工剤を作る。国内に加え、米国と中国に拠点がある。営業利益は25億円(利益率8.8%)で、会社でいちばん稼ぐ。原料のロジンも自社で作るため、他社より原料の自由度が高い。
樹脂・化成品は、塗料用樹脂、印刷インキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤、香料原料のミルセンなどだ。営業利益は15億円で、前の期の4億円から大きく戻った。電子材料は、はんだ付け材料、熱交換器用ろう付け材料、半導体レジスト用樹脂である。営業利益は4億円と薄いが、レジストの需要は強い。
ローターは、2011年に米国モメンティブ社のロジン関連事業を買って生まれた。粘接着剤用樹脂、印刷インキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤を、米欧など世界10か国の工場で作る。売上は最大でも、営業利益は前の期の6億円から0.4億円に落ちた。
原料は、ロジン、粗トール油(松材パルプを作るときの副産物)、石油化学品だ。連結従業員は1,691人。海外売上は米州が26%、欧州が14%を占める。
優良さと弱いところ
優良とは言いがたい。堀(他社がまねできない強み)は、製紙用薬品と一部の特殊樹脂にある程度で、全社では弱い。
強みはロジンを自前で作る点だ。1958年に国内で初めてトール油の精留プラントを動かした実績があり、原料から薬品まで一貫して作れる。製紙会社への薬品は、紙の品質に直結するため、実績のある取引先は替えにくい。電子材料のレジスト用樹脂も、顧客の工程に組み込まれる。
弱みは、数字に出ている。営業利益率は過去12年、-0.2%から5.9%の間にあり、直近は3.2%だ。ROEが10%を超えた年は一度もなく、資本コストを超えた年も見当たらない。2024年3月期は営業赤字になった。
ローターは、世界の粘接着剤や印刷インキ向けに、原料価格を価格に転嫁しきれない。印刷インキ用樹脂は、出版や新聞の縮小で数量が細る。製造コストの上昇で、前の期の営業利益は94%減った。
財務も軽くない。純有利子負債は自己資本の0.8倍で、営業利益は支払利息の3倍しかない。この会社の価値は、事業の強さより、借金の重さと利益率の低さで決まる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ハリマ化成は、4つの別の市場で戦う。それぞれの需要の向きが違う。
製紙用薬品は、紙・板紙の生産量に連動する。国内の紙の出荷は、印刷・情報用紙と新聞用紙のデジタル化で減り続けており、数量は10年で微減と見る。一方、ダンボール原紙などの包装用紙向けは底堅い。米国では顧客が増えており、ここが伸びの源泉である。競争は国内の同業との価格競争と、中国の紙力増強剤の値下がりが厳しい。
ロジン(松やに)の世界市場は、調査会社の推計で年4〜5%程度の成長とされるが、定義によって幅が大きい。粘接着剤、塗料、インキ、ゴムの用途が主で、成熟した市場だ。原料のガムロジンは中国産が多く、価格が荒く動く。トール油ロジンは製紙の副産物で、供給は紙の生産量に縛られる。
印刷インキ用樹脂は、出版・新聞の縮小で細る。会社の説明でも、平版インキ市場の縮小が減収の理由に挙がっている。合成ゴム用乳化剤も、合成ゴム全体の生産が減り、数量が落ちた。反対に、塗料用樹脂や路面標示塗料用樹脂は伸びている。
電子材料のうち、半導体レジスト用樹脂は市況が良い。加古川に新工場を建て、2028年6月の量産開始で能力は約2倍になる。はんだ材料は、自動車の電動化と欧米の自動車生産に左右される。
全体として、数量は伸びない市場に、値上げと新製品で利益を足していく業界だ。
資本政策と M&A
資本の使い方は、成長投資に偏っている。設備投資は前の期に47億円で、減価償却30億円を大きく上回る。今期も47億円の計画だ。主な投資先は、加古川のレジスト樹脂の新工場と研究棟である。
還元は控えめだ。年間配当は据え置きが続き、今期の予想も同額で、配当性向は43%程度。配当金は年10億円ほどで、純利益の4割台にとどまる。純有利子負債が316億円あり、借金を減らす局面と見る。
2026年2月、スウェーデンのトールロジン会社サンパインの株式(24.6%)を、ほかの株主に売ると発表した。持分法で利益を取り込んでいた会社で、ローターの原料の一部を供給していた。売却益は今期の純利益に載る見込みだが、持分法の利益(年5億円)は今後なくなる。
政策保有株式(取引先の株)は、上場15銘柄で計18億円と小さい。前の期に4銘柄を売った。資産としては軽く、価値には足さない。
大株主は、長谷川興産が約12%、信託銀行の口座が7%台で、上位の合計は55%。親会社はない。データ上、10年以内にTOB(株式公開買付け)を受ける確率は26%とされる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ローターの立て直しが効き、電子材料が化ける。ローターの営業利益率は2025年3月期に1.8%、2026年3月期に0.1%と沈んだ。だが、原料高の価格転嫁、経費削減、低採算事業の見直しが進めば、5%台まで戻る余地がある。売上359億円の5%は18億円で、全社の営業利益を5割押し上げる。
電子材料は、半導体レジスト用樹脂の新工場が2028年に動く。能力は約2倍で、半導体の需要が伸びれば、売上は10年で1.8倍に増える。利益率も、はんだ事業の人員増が一巡して、8%前後まで上がる。
製紙用薬品は、米国で顧客を増やし続ける。サイズ剤の値上げが浸透し、利益率は10%台に乗る。会社が2030年度に掲げる営業利益85億円と利益率7%は、実力の範囲になる。
借金も減る。配当性向を保ったまま営業キャッシュフローが厚くなり、純有利子負債が減って、利息負担が軽くなる。ROEは10%を超え、資本コストを初めて上回る。市場はこの会社を「立て直しが終わった会社」として評価し直す。
慎重な見方
ローターは、構造的に利益が出ない事業だ。印刷インキ用樹脂は、出版・新聞の縮小で数量が細り、中国などの安い競合に価格で負ける。粘接着剤用樹脂は、原料高を転嫁しきれない。営業利益率が1%を割り、のれんや設備の減損が出れば、純利益は赤字になりかねない。
製紙用薬品の伸びは、頼りない。国内の紙の生産は減り続け、中国では競争の激化で紙力増強剤の価格が下がった。米国の顧客増も、一度は取れた顧客を維持できるかの勝負で、価格で競り負ければ戻る。
財務の脆さも効く。純有利子負債は316億円で、営業利益は支払利息の3倍しかない。借り換えの金利が上がれば、年8億円ほど利息が増え、営業利益の増加分を食う。新工場の投資も続くので、配当や返済に回る現金は少ない。
会社の中期計画は、2026年度の営業利益70億円に対し、実績は33億円だった。見直しの発表もない。この経営の実行力を、そのまま信じるのは危うい。
ローターを買った2011年から15年がたつが、資本コストを稼げた年は見当たらない。立て直しが何度も語られ、そのたびに数字が追いつかなかった。同じ顔ぶれの事業に、同じ処方を続けて結果が変わると考えるのは、楽観に寄りすぎている。
どちらに重みを置いたか
製紙用薬品とレジスト樹脂の力は本物で、強気の見方に分がある部分もある。だが、売上の3分の1を占めるローターが利益を出さず、借金が株主の取り分を削る構造は、10年のうちに簡単には変わらない。中立の筋書きは、電子材料と米国の製紙薬品が伸び、ローターは営業利益率2.5%にとどまる形とした。確率は中立を最も厚くし、強気と弱気は同程度に置いた。悲観は、ローターの赤字と借金の重みが同時に来る形で、株主の取り分が大きく削れる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,495 円363 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 476 円116 億円)。 今の値に割り戻すと 923 円224 億円、今との差 −11.6%、 期待の年率 +6.6%(資本コスト 9.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,518 円855 億円 | 905 円220 億円 | +323.6% | +15.5% | 354 円86 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,330 円566 億円 | 654 円159 億円 | +185.8% | +11.1% | 656 円160 億円 |
| 中立 | 38% | 1,534 円373 億円 | 477 円116 億円 | +92.6% | +6.8% | 764 円186 億円 |
| やや悲観 | 22% | 425 円103 億円 | 304 円74 億円 | −30.1% | −3.5% | 161 円39 億円 |
| 悲観 | 10% | 247 円60 億円 | 115 円28 億円 | −65.3% | −10.1% | 36 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,495 円363 億円 | 476 円116 億円 | +88.8% | +6.6% | 1,971 円479 億円 |
今の株価時価総額 1,044 円254 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 8% ローターが立ち直り、電子材料が化ける 利益 74 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 3,518 円855 億円
ローターの価格転嫁と経費削減が効き、営業利益率は5.5%まで戻る。電子材料はレジスト用樹脂の新工場が動き、売上が10年で1.8倍になり、利益率は8%に上がる。製紙用薬品は米国の顧客増と値上げで、利益率が10.5%に乗る。
営業利益率は全体で6.9%と、過去12年の最高(2011年の7.0%)に近づく。借金を減らしながら配当性向を45%に保ち、10年の還元は220億円。ROEは11%で、資本コストを上回る。会社が2030年度に掲げる営業利益85億円を大きく超える。営業利益は117億円、純利益は74億円と、今の3倍強になる。ROEは11%で、資本コストを初めて超える。市場も、この会社を立て直しの終わった会社として見直す。そこまで揃うことは少ない。
- 樹脂・化成品:数量 125(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 2.45(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 306 億円・営業利益 28 億円。数量換算12.5万トン、単価は今の1.36倍、営業利益率9%
- 製紙用薬品:数量 357(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 1.22(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 437 億円・営業利益 46 億円。数量換算35.7万トン、単価は今の1.36倍、営業利益率10.5%
- 電子材料:数量 82.3(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 4.08(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 336 億円・営業利益 27 億円。数量換算8.2万トン、単価は今の1.36倍、営業利益率8%
- ローター:数量 258(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 2.18(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 562 億円・営業利益 31 億円。数量換算25.8万トン、単価は今の1.36倍、営業利益率5.5%
- その他:数量 39.4(売上(億円・実質))× 価格 1.34(価格指数(今1.00、物価で10年1.34))→ 売上 53 億円・営業利益 0 億円。その他は物価並み、利益ゼロ
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.5 倍。全体の PER 11.51 倍、時価総額 855 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ローターの立て直しと半導体の追い風が、同時に揃う必要がある。ローターは2年続けて利益が薄く、会社の中計も大きく未達の状況で、この条件が揃う確率は低い。
やや楽観 22% 電子材料が伸び、ローターは小幅に改善 利益 52 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 2,330 円566 億円
電子材料は、新工場で売上が10年で1.6倍に増え、利益率は6.5%まで上がる。製紙用薬品は米国で伸び、利益率は9.5%に乗る。ローターは原料転嫁が進み、営業利益率が4%まで戻る。
営業利益率は5.6%で、過去12年の高い年(5.9%)に近い。配当性向は42%とし、10年の還元は159億円。ROEは8%台で、資本コストにわずかに届かない。借金は減るが、金利負担はなお重い。営業利益は87億円、純利益は52億円。会社が2030年度に掲げる営業利益85億円に届く形だ。ただしROEは8%台で、資本コストにはなお届かない。
- 樹脂・化成品:数量 119(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 2.43(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 289 億円・営業利益 23 億円。数量換算11.9万トン、単価は今の1.35倍、営業利益率8%
- 製紙用薬品:数量 338(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 1.22(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 411 億円・営業利益 39 億円。数量換算33.8万トン、単価は今の1.35倍、営業利益率9.5%
- 電子材料:数量 73.1(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 4.05(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 296 億円・営業利益 19 億円。数量換算7.3万トン、単価は今の1.35倍、営業利益率6.5%
- ローター:数量 243(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 2.16(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 524 億円・営業利益 21 億円。数量換算24.3万トン、単価は今の1.35倍、営業利益率4%
- その他:数量 39.4(売上(億円・実質))× 価格 1.34(価格指数(今1.00、物価で10年1.34))→ 売上 53 億円・営業利益 0 億円。その他は物価並み、利益ゼロ
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 566 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が2030年度に掲げる営業利益85億円に届く筋書き。電子材料の新工場が動き、ローターは小幅に改善する。中計が未達続きでも、この水準は実力の範囲で、確率は低くない。
中立 38% 電子と米国の製紙薬品で伸びるが、ローターは薄利のまま 利益 35 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 1,534 円373 億円
樹脂・化成品は出版需要の縮小で数量が3%減るが、塗料用樹脂と香料原料の増収で利益率は7%を保つ。製紙用薬品は国内の減少を米国が補い、数量2%増、利益率8.8%。電子材料は新工場で数量が45%増え、利益率は5%になる。ローターは数量が横ばいで、利益率は2.5%に改善する。
営業利益率は4.3%で、直近の3.2%から1ポイント上がる。金利負担が重く、純利益は35億円。配当性向を40%とし、10年の還元は116億円。ROEは6%で、資本コストを超えない。営業利益は64億円、純利益は35億円。今の2倍近くだが、そのうち物価の分が3分の1ほどを占める。ROEは6%で資本コストに届かず、市場の見方は今とあまり変わらない。
- 樹脂・化成品:数量 115(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 2.41(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 278 億円・営業利益 20 億円。数量換算11.5万トン、単価は今の1.34倍、営業利益率7%
- 製紙用薬品:数量 325(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 1.21(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 393 億円・営業利益 35 億円。数量換算32.5万トン、単価は今の1.34倍、営業利益率8.8%
- 電子材料:数量 66.3(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 4.02(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 267 億円・営業利益 13 億円。数量換算6.6万トン、単価は今の1.34倍、営業利益率5%
- ローター:数量 225(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 2.14(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 482 億円・営業利益 12 億円。数量換算22.5万トン、単価は今の1.34倍、営業利益率2.5%
- その他:数量 39.4(売上(億円・実質))× 価格 1.34(価格指数(今1.00、物価で10年1.34))→ 売上 53 億円・営業利益 0 億円。その他は物価並み、利益ゼロ
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 373 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電子材料と米国の製紙薬品が伸び、ローターは営業利益率2.5%にとどまる筋書き。会社の中計の水準(営業利益率6.4%)には届かず、過去の実績に近い。最も確率の高い筋書きとして置く。
やや悲観 22% ローターが赤字に近づき、金利が重い 利益 14 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 425 円103 億円
樹脂・化成品と製紙用薬品は、数量が3〜8%減り、単価も物価に追いつかない。電子材料は新工場が動くが、稼働が上がらず利益率は3.2%にとどまる。ローターは印刷インキ用樹脂の縮小が続き、営業利益率が0.8%まで落ちる。
営業利益率は2.7%で、2020年代の谷(2.1〜3.2%)の水準。純利益は14億円で、金利負担が利益の大半を食う。配当性向を40%に抑え、10年の還元は74億円。ROEは3%を割る。会社は存続し、配当も続けるが、成長の物語は描けない。営業利益は35億円と、物価の分を除けば今とほぼ同じ。純利益は14億円まで落ちる。ローターが赤字に近づき、金利負担も重く、ROEは3%を割る。
- 樹脂・化成品:数量 109(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 2.34(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 256 億円・営業利益 14 億円。数量換算10.9万トン、単価は今の1.30倍、営業利益率5.5%
- 製紙用薬品:数量 310(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 1.17(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 362 億円・営業利益 27 億円。数量換算31.0万トン、単価は今の1.30倍、営業利益率7.5%
- 電子材料:数量 54.8(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 3.84(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 211 億円・営業利益 7 億円。数量換算5.5万トン、単価は今の1.28倍、営業利益率3.2%
- ローター:数量 207(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 2.05(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 423 億円・営業利益 3 億円。数量換算20.7万トン、単価は今の1.28倍、営業利益率0.8%
- その他:数量 39.4(売上(億円・実質))× 価格 1.30(価格指数(今1.00、物価で10年1.34))→ 売上 51 億円・営業利益 0 億円。その他は物価並み、利益ゼロ
倍率:事業のROEは3%を割り、資本コスト9.25%を大きく下回る。PERの上限は1÷k=10.8倍。稼ぐ力が弱いので、上限の約70%の7.6倍に置いた。事業の売却価値で見た床(約60億円、悲観の内訳と同じ見方)より上にある。
確率:紙の需要減とインキの縮小が進み、原料高を転嫁しきれない筋書き。ローターの利益率が1%を割り、全社の営業利益がほぼ増えない。直近の2年を見れば、十分ありうる。
悲観 10% ローターが減損に至り、借金の重みが残る 利益 −5 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 247 円60 億円
紙・出版の縮小で樹脂・化成品と製紙用薬品の数量が1〜2割減り、中国との価格競争で単価も物価を下回る。電子材料は伸びず、利益率が1.5%にとどまる。ローターは営業赤字に転じ、のれんと設備の減損を迫られる。
営業利益率は0.8%、純利益は赤字。金利負担は重く、配当は下げて維持するが、10年の還元は28億円。事業は残るが、借金の返済と減損の処理で、株主の取り分は大きく削られる。資産の売却と事業の絞り込みを経て、小さな会社として生き残る。営業利益は9億円、純利益は赤字になる。ローターの減損が出て、のれんと設備を切り下げる。時価総額は、事業の稼ぐ力ではなく、売れる事業と借金の差で決まる。
- 樹脂・化成品:数量 101(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 2.16(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 219 億円・営業利益 9 億円。数量換算10.1万トン、単価は今の1.20倍、営業利益率4%
- 製紙用薬品:数量 287(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 1.10(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 315 億円・営業利益 17 億円。数量換算28.7万トン、単価は今の1.22倍、営業利益率5.5%
- 電子材料:数量 45.7(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 3.60(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 165 億円・営業利益 3 億円。数量換算4.6万トン、単価は今の1.20倍、営業利益率1.5%
- ローター:数量 180(出荷量(千トン・年、推定))× 価格 1.92(1千トンあたり平均売上(億円・名目))→ 売上 345 億円・営業利益 −4 億円。数量換算18.0万トン、単価は今の1.20倍、営業利益率-1%
- その他:数量 39.4(売上(億円・実質))× 価格 1.20(価格指数(今1.00、物価で10年1.34))→ 売上 47 億円・営業利益 0 億円。その他は物価並み、利益ゼロ
倍率:稼ぐ力が消え、借金の重みが残る。事業を売って借金を返した後の株主の取り分で見る(内訳は floor_assets_why)。EV÷営業利益は44倍と高く見えるが、営業利益が谷で小さいためで、事業の売却価値(営業利益の6〜7倍で約190億円)に借金を当てて引くと、株主の取り分は60億円ほどになる。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.147 倍・時価総額 60 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:紙とインキの縮小、原料高、金利上昇が同時に来る複合の筋書き。ローターで減損が出る。日本のパインケミカル会社で、海外の不採算事業を抱えた会社が受ける最も厳しい形。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
樹脂・化成品
塗料用樹脂、印刷インキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤、トール油製品、香料原料のミルセン。売上の21%。
| 数量出荷量(千トン・年、推定) | 価格1千トンあたり平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 119 | 1.80 | 214 | 15 |
| 10 年後 中立 | 115 | 2.41 | 278 | 20 |
取り方:売上214.2億円、営業利益14.9億円(利益率6.9%)は決算短信。開示は金額だけなので、平均単価を1トン18万円(樹脂と化成品の混合)と仮置きして約11.9万トンとした。数量は実質、物価の分は単価に入れる。
製紙用薬品
紙力増強剤、サイズ剤、塗工剤・バリアコート剤。国内、米国、中国で展開。売上の28%。
| 数量出荷量(千トン・年、推定) | 価格1千トンあたり平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 319 | 0.90 | 287 | 25 |
| 10 年後 中立 | 325 | 1.21 | 393 | 35 |
取り方:売上287.2億円、営業利益25.4億円(利益率8.8%)は決算短信。薬品は水で薄めた形での出荷も多いため、平均単価を1トン9万円と仮置きして約31.9万トンとした。数量は実質。
電子材料
はんだ付け材料、熱交換器用ろう付け材料、半導体レジスト用樹脂。売上の13%。
| 数量出荷量(千トン・年、推定) | 価格1千トンあたり平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45.7 | 3.00 | 137 | 4 |
| 10 年後 中立 | 66.3 | 4.02 | 267 | 13 |
取り方:売上137.2億円、営業利益3.7億円(利益率2.7%)は決算短信。金属材料と樹脂の混合として平均単価を1トン30万円と仮置きし、約4.6万トンとした。数量は実質。加古川の新工場で樹脂の能力が約2倍になる。
ローター
米欧(旧モメンティブ社のロジン関連事業)の粘接着剤用樹脂、印刷インキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤、路面標示塗料用樹脂。世界10か国で生産。売上の35%。
| 数量出荷量(千トン・年、推定) | 価格1千トンあたり平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 225 | 1.60 | 359 | 0 |
| 10 年後 中立 | 225 | 2.14 | 482 | 12 |
取り方:売上359.3億円、営業利益0.4億円(前の期は6.2億円)は決算短信。平均単価を1トン16万円と仮置きして約22.5万トンとした。数量は実質。持分法益4.5億円(サンパイン)は営業利益の外で、売却でなくなる。
その他
不動産管理など。売上の4%。
| 数量売上(億円・実質) | 価格価格指数(今1.00、物価で10年1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 39.4 | 1.00 | 39 | 0 |
| 10 年後 中立 | 39.4 | 1.34 | 53 | 0 |
取り方:売上39.4億円、営業利益はほぼゼロ(-0.1億円)。開示がなく利益がほぼゼロの小さな区分で、数量・単価に分けられないため、物価の分だけ増やす。全社費(-11.5億円)は adjust_oku に入れた。
リスクと懸念
ローターの不振の長期化
売上の35%を占めるローターの営業利益は、前の期に6億円から0.4億円に落ちた。印刷インキ用樹脂の数量減と製造コストの上昇が重なる。原料高の転嫁が進まなければ、減損や赤字に至る。
借金と金利
純有利子負債は316億円。営業利益は支払利息の約3倍しかない。借り換えの金利が上がれば、10年で利息が年8億円ほど増える。新工場の投資が続く間は、返済に回る現金が細い。
原料価格の振れ
ガムロジンは中国産に依存し、トール油は製紙の副産物で供給が紙の生産に縛られる。原料高を製品価格に載せるまでにずれがある。仕入先の分散を進めているが、地政学リスクで価格が荒れる。
紙・インキの需要減
国内の印刷・情報用紙、新聞用紙は減り続ける。製紙用薬品と印刷インキ用樹脂の数量に効く。包装用紙や米国の伸びで補えるかが分かれ目になる。
新工場の投資回収
加古川の半導体レジスト用樹脂工場は、2028年6月の量産開始で能力が約2倍になる。半導体の需要が想定より弱ければ、稼働が上がらず、減価償却と金利だけが残る。
中計の未達と経営の実行力
2026年度の営業利益70億円の目標に対し、実績は33億円。ROE10%の目標に対し6%。目標の見直しも示されておらず、利益率改善の実行力が問われる。
今後の分かれ目
- ローターの営業利益率が3%を超えて定着したら
- ローターの利益率の前提を引き上げ、やや楽観・楽観の確率を上げる。原料の転嫁か事業の絞り込みか、理由を確かめる。
- ローターの減損や事業売却が発表されたら
- 売却額と、借金の返済に回る額を確かめる。借金が減り利益率が上がるなら、悲観の確率を下げる。
- 半導体レジスト用樹脂の新工場が計画どおり2028年に量産に入ったら
- 電子材料の数量と利益率の前提を引き上げる。稼働が遅れたら逆に下げる。
- 製紙用薬品の米国売上が伸び続け、営業利益率が10%に近づいたら
- 製紙用薬品の利益率を上方修正し、全体の営業利益の前提を上げる。
- 純有利子負債が250億円を下回り、配当性向が引き上げられたら
- 借金の重みが軽くなったと読み、k の借金の項を下げることを検討する。
- 長期金利の上昇で借り換えの利息が想定より増えたら
- 純利益の前提を下げ、倍率に効く資本コストの前提も見直す。
見ておくもの
- ローターの営業利益率と、減損・事業売却の有無
- 電子材料の売上と利益率、加古川新工場の量産開始(2028年6月予定)
- 製紙用薬品の米国売上、国内の紙の生産量
- 純有利子負債の推移と、配当性向・還元方針
倍率と資本コストの決め方
今の株価やPBR0.7倍には寄せていない。売上は数量(実質)×単価(名目、物価の10年1.34倍が基本)で積んだ。単価は開示がないので、セグメントごとに1トンあたりの平均売上を仮置きして数量を逆算した推定で、数量の変化率が意味を持つ。中立の数量は、樹脂・化成品が出版需要の縮小で3%減、製紙用薬品が米国で2%増、電子材料がレジスト用樹脂の新工場で45%増、ローターが横ばいと置いた。営業利益率は全社で4.3%と、過去12年の中央値(約3%)を上回るが、山(5.9%)は下回る。上回る理由は、電子材料の新工場と製紙用薬品の米国の伸びだ。全社費は10年で物価並みに増える前提で、ここだけ削減の実績がないため抑えなかった。純利益は営業利益に営業外収益1.5億円を足し、金利負担16億円(現状の10.6億円に、借り換えの上昇分を足し、返済による減少を引いた)を引き、税30%を掛けた。持分法益はサンパイン売却でなくなるので入れていない。倍率は資本コスト9.25%で、事業のROEが6%とそれ以下なので、PERの上限1÷k=10.8倍の約74%に置いた。余った現金はなく、政策保有株は小さいため価値に足していない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。