結論
東リは、ビニル系の床材、カーペット、壁装材、カーテンなど、建物の内装を一式そろえる会社だ。病院、学校、オフィス、商業施設の改修に強い。筆者の結論は、今の値段は物価込みの本質価値とほぼ釣り合っている、というものだ。割安と言い切れないのは、稼ぐ力が資本コストを下回る状態が長く続いてきたからだ。割高と言い切れないのは、株主への還元が厚いからである。
2026年3月期は、営業利益が51億円と、12年で最も大きくなった。値上げと販売数量の増加が効いた。だが2027年3月期は、会社自身が純利益で2割以上の減益を見込む。原料の値上がりと賃上げの重さが理由だ。
東リの価値を左右するのは、値上げを通し続けられるかどうかである。内装材は買い手が建設会社や施工店で、値段の交渉は厳しい。それでも国内の改修需要は底堅く、リサイクル設備や自社紡糸などの原価低減の投資が育ってきた。
株主への姿勢は明確だ。配当性向50%かDOE3.5%を目安にし、総還元性向は3年平均で70%以上を目指す。政策保有株の売却資金は自社株買いに回る。
10年の中立では、営業利益率は4%、純利益は45億円ほどになる。ROEは6〜7%と資本コストをわずかに下回り、倍率は10倍強にとどまる。それでも、厚い還元を足し合わせた本質価値は、今の時価総額とほぼ同じ水準になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、東リは理解しやすい会社だ。建物が存在する限り、床や壁は張り替えられる。事業はなくならない。問題は、そこからどれだけの利益が株主に残るかである。
過去12年のうち大半の期で、ROEは資本コストを下回ってきた。2024年3月期から改善したが、2027年3月期の会社予想は再び下を向いている。筆者は、原料高と賃上げという外の力に、値上げで追いつけるかを見る。追いつけなければ、改善は一過性だったことになる。
経営の資本配分は評価できる。配当性向と総還元性向の目標を明示し、自社株買いも実行している。政策保有株を売って還元に回す方針も、資本を寝かせない姿勢だ。倍率が低い局面で自社株を買うことは、既存の株主に有利に働く。
安全域は、還元の厚さにある。ただし、稼ぐ力そのものに余裕はない。10年後の本質価値は、事業の稼ぎを10倍強の倍率で評価した額に、その間の還元を足したものだ。今の値段はこれとほぼ同じで、安全域は薄い。
何で稼ぐ会社か
東リは、建物の内装材を作って売る会社だ。事業は3つの区分で開示されている。
インテリア事業が中心である。国内で、ビニル系の床材、タイルカーペット、壁装材、窓まわりの商品を作る。他社の内装資材の仕入販売と、内装工事も手掛ける。顧客は建設会社、内装の施工店、商社、そして設計事務所である。病院、学校、オフィス、商業施設、集合住宅が主な現場だ。住宅の新築より、改修や非住宅に強い点が特徴になる。
グローバル事業は、中国と北米の販売子会社と各国の代理店を通じて、東リブランドの商品を海外に売る。2026年3月期は、中国と北米の市場環境が悪く減収だった。建材その他事業は、産業向けの製品や、建材・住宅設備の仕入販売である。
売上の大半はインテリア事業だ。前の区分では、自社で作って売る部分と、卸と工事の部分が、ほぼ同じ規模だった。原料は塩化ビニル樹脂やナイロンなどの石油化学品に連なる。このため、原料の動きが利益率を左右しやすい。化学というくくりだが、実態は建築の内装材だ。
製品は用途で使い分けられる。病院向けには抗菌や滑りにくさを備えた床材、学校向けには耐久性の高い床材、オフィス向けには張り替えやすいタイルカーペットがある。選ぶのは設計者や施主だが、納期と施工の確かさを握るのは施工店だ。
優良さと弱いところ
東リの強みは、商品の幅と現場への食い込みにある。床、壁、窓まわりを一社でそろえ、施工まで引き受ける会社は多くない。設計事務所の指定や施工店との長い取引が、商品を選ぶ現場の支えになっている。
もうひとつの強みは、環境対応の設備だ。使い終わったタイルカーペットを回収し、原料に戻すリサイクルの設備を持つ。2号機は処理能力が従来の約3.5倍になった。自社でナイロン糸を紡ぐ設備も入れた。原価を下げながら環境に配慮した商品を売る形が、少しずつ整ってきた。
だが、稼ぐ力は強くない。営業利益率は過去12年で最も高い年でも5%に届かず、ROEは2022年3月期に1.9%まで落ちた。買い手の建設会社や施工店は値段に厳しく、サンゲツやタジマなどの競合もいる。堀は、ブランドでなく現場との関係にあり、それだけでは値段を主導できない。
財務は堅い。自己資本比率は52%、純有利子負債はほぼゼロだ。足元は営業利益に対して支払利息が軽く、金利の上昇で利益が削られる心配は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の内装材の需要は、新築より改修に支えられている。住宅の新築は人口減で縮むが、病院、学校、オフィス、商業施設の改修は、建物が古くなるほど増える。人手不足で工期が延び、施工費が上がることは、壁紙や床材を扱う会社には逆風になる。
値段を決める要素は原料だ。塩化ビニル樹脂、可塑剤、ナイロンは石油化学品の値動きに連なる。2026年は原材料の高騰が続き、東リも販売価格の改定で応じている。
競合は商品ごとに違う。壁装材ではサンゲツが大手で、床材ではタジマなどが並ぶ。カーペットでは住江織物がある。東リは床・壁・窓を一括で扱える点で差をつけている。
海外は小さい。中国と北米に販売の拠点を持つが、2026年3月期は減収だった。海外の内装材は現地の大手や安い輸入品との競争が激しく、日本で培ったリサイクル商品などの付加価値で勝てるかが課題だ。
長い目で見ると、人口減で国内の新築は縮み続ける。ただ、改修と非住宅の需要は残る。10年を見るなら、数量はほぼ横ばいか、わずかに減る程度とみるのが自然だ。
景気の影響は、新築より小さいが、ゼロではない。企業の設備投資が鈍ると、オフィスや店舗の改装が後ろへずれる。公共の学校や病院の改修は、予算の年度ごとに波がある。
資本政策と M&A
株主への還元は厚い。2026年3月期の配当は前の期より増え、配当性向は44%だった。中期経営計画の期間は、配当性向50%またはDOE3.5%を目安にし、年間配当には下限を設ける。総還元性向は3年平均で70%以上を目指す。2026年2月には、市場外で自己株式を取得した。
政策保有株の売却と自己株式の取得を、組み合わせて進める方針だ。筆者は、売却の資金が自社株買いに回る分を、還元の原資として織り込んだ。保有株が配当を生む間は、その配当を利益に入れているため、価値として別に足すことはしていない。
株主は分散している。日本生命保険が約6%、トクヤマが約5%、従業員の持株会、三菱UFJ銀行、三信が続く。特定の親会社はない。
M&Aの実績は目立たない。kabufuの推計では、10年以内にTOBや買収が起きる確率は2割強だが、筋書きの中心には置かなかった。
設備投資は、リサイクルプラント、ナイロン紡糸、広化東リフロアの新ラインに振り向けてきた。これが原価低減として実を結ぶかが、次の焦点になる。株主優待は確認できていない。
中期経営計画SHINKA Plus ONE 2.0は、2027年度に営業利益50億円以上、ROE8%以上を掲げる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東リは今、利益の底上げ局面にある。営業利益は51億円と、12年で最も大きくなった。値上げが通り、壁装材と床材の販売数量も増えた。大型の設備投資が稼働し、リサイクルプラントと自社紡糸が原価を下げる。広化東リフロアの新ラインにも投資が進んだ。
2027年3月期の減益は、原料高と賃上げという一時的な要因だ。会社は販売価格の改定で対応しており、実際に2026年3月期は価格改定の効果が出た。建設会社も人手不足の中で、品質と納期が確かな東リを選ぶ。
国内の改修需要は底堅い。病院、学校、オフィスの内装は、古い建物ほど張り替えが増える。住宅の新築が縮んでも、改修と非住宅は残る。
株主還元も厚い。配当性向50%、総還元性向70%の目標を掲げ、自社株買いも実行している。政策保有株の売却も進み、資本効率が上がる。ROEは会社の目標の8%、長期では10%に届く。今の時価総額は、この改善をまだ織り込んでいない。
仮に営業利益率が5%に乗れば、営業利益は60億円台に届く。会社の目標の50億円は、すでに手の届く水準にある。海外が黒字を安定して出せば、さらに上積みになる。
慎重な見方
東リの稼ぐ力は弱い。営業利益率は過去12年の最高でも5%に届かず、ROEは2022年3月期に1.9%まで落ちた。2026年3月期の改善は一年の動きにすぎず、会社自身が2027年3月期の純利益を2割以上減ると見ている。
値上げが通る保証はない。買い手は建設会社と施工店で、値段の交渉は厳しい。サンゲツやタジマなどの競合もいて、原料高を価格に移せなければ利益率はすぐに戻る。賃上げの重さも続く。
国内の新築は人口減で縮み続ける。改修が支えるとはいえ、人手不足で工期が延びれば、工事の発注自体が先送りされる。海外は2026年3月期に減収で、投資を回収できる見込みは立っていない。
大型の設備投資は、償却費の重さとして残る。リサイクルプラントや紡糸設備が原価低減に結びつかなければ、固定費の増加だけが残る。
還元の目標は大きいが、稼ぎが落ちれば減配や自社株買いの縮小が避けられない。ROE8%の目標も、実績を積み上げた数字ではない。
どちらに重みを置いたか
強気と慎重の言い分は、ほぼ拮抗する。2026年3月期の改善は事実だが、原料高に対する値上げの持続力は、まだ証明されていない。一方で、還元の厚さと財務の堅さは、悲観の深さを限る。確率は中立に厚く置き、やや悲観を楽観側よりやや多く見た。楽観は、改善が定着し、還元も続く場合に限った。 強気の根拠である原価低減は、数字で確かめられる段階にまだない。慎重な見方の根拠である原料高は、すでに会社予想に出ている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 952 円540 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 402 円228 億円)。 今の値に割り戻すと 742 円421 億円、今との差 +9.5%、 期待の年率 +7.2%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,982 円1,125 億円 | 618 円351 億円 | +284.0% | +14.4% | 182 円103 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,387 円787 億円 | 505 円286 億円 | +179.4% | +10.8% | 378 円215 億円 |
| 中立 | 40% | 1,052 円597 億円 | 427 円242 億円 | +118.6% | +8.1% | 592 円336 億円 |
| やや悲観 | 23% | 368 円209 億円 | 298 円169 億円 | −1.6% | −0.2% | 153 円87 億円 |
| 悲観 | 10% | 300 円170 億円 | 182 円103 億円 | −28.9% | −3.4% | 48 円27 億円 |
| 加重平均 | 100% | 952 円540 億円 | 402 円228 億円 | +99.9% | +7.2% | 1,353 円768 億円 |
今の株価時価総額 677 円384 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 改修と高付加価値で利益率が5%台 利益 72 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 1,982 円1,125 億円
国内の改修と大型の再開発を取り込み、東リは高付加価値の床材とカーペットの比率を上げる。タイルカーペットのリサイクルと自社紡糸が原価を下げ、価格改定も定着する。インテリア事業の営業利益率は6%近くまで上がる。
グローバル事業は北米で育ち、規模は今の1.4倍になる。営業利益は90億円を超えるが、全社の営業利益率は5.5%で、成熟した内装材として無理のない範囲にとどまる。
ROEは会社の長期目標の10%に届く。政策保有株の売却資金が自社株買いに回り、総還元性向は7割近くが続く。
悲観が言う原料高は、価格改定と原価低減で吸収される。賃上げのコストは、人手不足でも品質と納期を守れる東リの取引先が受け入れる。この好循環が10年続く、というのがこの筋書きだ。
- インテリア事業(床材・カーペット・壁装・窓まわり・工事):数量 40.9(出荷量(百万平方メートル相当。床・壁・窓の商品と卸・工事を平方メートルに直した概算))× 価格 3,450(1 平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 1,411 億円・営業利益 82 億円。高付加価値品と原価低減
- グローバル・建材その他:数量 7.7(出荷量(百万平方メートル相当の概算))× 価格 3,763(1 平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 290 億円・営業利益 12 億円。北米で育つ
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.64 倍、時価総額 1,124 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改修需要の取り込み、高付加価値品の比率上昇、原価低減、海外の成長、還元の継続が重なる姿。好条件が重なるので、確率は一桁にとどめた。
やや楽観 20% 値上げが定着し営業利益率が戻る 利益 56 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 1,387 円787 億円
2026年3月期の改善が続く。原料高は価格改定で吸収され、リサイクルプラントなどの原価低減が出る。インテリア事業の営業利益率は5%に乗る。
国内の数量は横ばいを保つ。改修と非住宅の需要が、新築の減少を相殺する。グローバル事業は中国と北米で少しずつ戻り、規模は1.2倍になる。
全社の営業利益率は4.7%で、営業利益は70億円を超える。会社が掲げるROE8%に届く。総還元性向は6割を超える水準が続くが、自社株買いは大型にはならない。
配当性向は5割前後、総還元性向は6割を超える。中期経営計画の営業利益50億円は、ほぼ達成される。長期ビジョンの60億円には届かないが、改善の方向は崩れない。
- インテリア事業(床材・カーペット・壁装・窓まわり・工事):数量 38.9(出荷量(百万平方メートル相当。床・壁・窓の商品と卸・工事を平方メートルに直した概算))× 価格 3,400(1 平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 1,323 億円・営業利益 66 億円。価格改定が定着
- グローバル・建材その他:数量 6.6(出荷量(百万平方メートル相当の概算))× 価格 3,654(1 平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 241 億円・営業利益 7 億円。少しずつ戻る
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.95 倍、時価総額 787 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが通り、原価低減が出て、営業利益率が5%近くまで戻る姿。海外は伸びるが限定的。2026年3月期の改善が続く条件でやや楽観の確率を厚めに置いた。
中立 40% 物価並みに伸び、利益率は4% 利益 45 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,052 円597 億円
売上は物価の分だけ伸びる。国内の数量は、新築の縮小を改修が補い、10年で3%ほど減る。値段は物価並みに上がり、原料高と賃上げの転嫁は進む。
営業利益率は今の4.5%から4%へ、わずかに下がる。2027年3月期の会社予想は3.7%、2028年3月期は3.9%で、中立はこの延長で置いた。12年の山(4.9%)を超えない。リサイクルプラントなどの原価低減は、賃上げと原料高で相殺される。営業利益は58億円、純利益は45億円ほどになる。
グローバル事業は横ばいで、数量は今のままだ。還元は純利益の6割前後で、配当性向の目安50%に自社株買いを加えた形になる。自己資本は680億円ほどまで積み上がり、ROEは6〜7%にとどまる。
- インテリア事業(床材・カーペット・壁装・窓まわり・工事):数量 37.8(出荷量(百万平方メートル相当。床・壁・窓の商品と卸・工事を平方メートルに直した概算))× 価格 3,350(1 平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 1,266 億円・営業利益 53 億円。新築の縮小を改修が補う
- グローバル・建材その他:数量 5.5(出荷量(百万平方メートル相当の概算))× 価格 3,654(1 平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 201 億円・営業利益 5 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 597 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気と慎重の議論の落としどころ。値上げは通るが原料高と賃上げで利益率は伸び切らず、物価並みに成長するという姿。2つの見方が拮抗するので確率を最も厚く置いた。
やや悲観 23% 原料高を転嫁し切れない 利益 26 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 368 円209 億円
原料高が長引き、価格改定が遅れる。建設会社や施工店は値段に厳しく、競合との価格差も縮まらない。インテリア事業の営業利益率は3%を割り込む。
国内の数量は、新築の縮小と改修の先送りで1割減る。海外も振るわず、グローバル事業は縮む。大型の設備投資による償却費の重さが、固定費として残る。
全社の営業利益率は2.6%、純利益は25億円ほどにとどまる。配当は維持するが、自社株買いは縮小し、総還元性向は5割台に落ちる。ROEは4%を下回る。
経営は、設備投資を絞り、政策保有株の売却を進めて還元の原資を確保しようとする。それでも、利益が細る中で総還元性向70%を維持することは難しい。
- インテリア事業(床材・カーペット・壁装・窓まわり・工事):数量 35.0(出荷量(百万平方メートル相当。床・壁・窓の商品と卸・工事を平方メートルに直した概算))× 価格 3,200(1 平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 1,120 億円・営業利益 31 億円。価格改定が遅れ数量減
- グローバル・建材その他:数量 5.0(出荷量(百万平方メートル相当の概算))× 価格 3,409(1 平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 169 億円・営業利益 2 億円。海外も縮む
倍率:ROE 3.9%は k 7.5% 以下で、ためた利益は額面未満の価値。RONICは約6.0%で、g 4% の正当化PERは約8.2倍。価値は稼ぐ力の範囲とし、その約9.5割の7.8倍に置いた。
確率:原料高と賃上げを価格に移し切れず、改修の発注も鈍る姿。2027年3月期の減益予想が再び現実になる条件で、確率を厚めに置いた。
悲観 10% 需要の縮小と値段競争で利益が消える 利益 5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 300 円170 億円
国内の改修の発注が長く落ち込み、新築も縮む。数量は4分の1ほど減り、安い輸入品や競合との値段競争で単価は物価に追いつかない。インテリア事業の営業利益率は1%台に落ちる。
海外は赤字が続き、海外の設備は稼働率が上がらない。リサイクルプラントなどの大型投資も回収できず、償却費だけが残る。
もはや安定した内装材メーカーとは言えない。純利益は数億円に細り、配当は下限に近づく。価値は、稼ぐ力でなく、土地建物や保有株などの売れる資産で測る局面になる。
経営は大幅な事業の見直しを迫られ、工場の統合や海外からの撤退が議題になる。財務の堅さだけが、最後の支えとして残る。
- インテリア事業(床材・カーペット・壁装・窓まわり・工事):数量 29.2(出荷量(百万平方メートル相当。床・壁・窓の商品と卸・工事を平方メートルに直した概算))× 価格 2,750(1 平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 803 億円・営業利益 8 億円。値段競争で利益が消える
- グローバル・建材その他:数量 3.9(出荷量(百万平方メートル相当の概算))× 価格 3,000(1 平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 116 億円・営業利益 −1 億円。海外は赤字
倍率:10年の構造的に負ける筋書き。純利益は数億円に細り、稼ぐ力でなく売れる資産で測る。売れる資産の税後から負債を引いた約170億円を床とし、今の自己資本518億円に0.33倍を掛けた。
確率:内装材の需要が構造的に縮み、値段競争で利益が消え、大型投資が回収できない姿。財務が堅く還元の下限もあるので、確率は慎重な見方に沿った1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
インテリア事業(床材・カーペット・壁装・窓まわり・工事)
ビニル系床材、タイルカーペット、壁装材、窓まわりの商品を作って売り、他社の資材の仕入販売と内装工事も行う。国内の売上のほとんどを占める。
| 数量出荷量(百万平方メートル相当。床・壁・窓の商品と卸・工事を平方メートルに直した概算) | 価格1 平方メートルあたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 38.9 | 2,500 | 973 | 48 |
| 10 年後 中立 | 37.8 | 3,350 | 1,266 | 53 |
取り方:インテリア事業の売上を、内装材を1平方メートルに直した出荷量(約3,900万平方メートル相当)× 平均単価(約2,500円)に分けた。数量と単価は、床・壁・窓の商品と卸・工事を混ぜた概算の推定で、市場の大きさは確かめていない。事業別の営業利益48億円は、3区分の金額が開示されていないため推定(合計は実績の51億円に合わせた)。本社費は事業に配賦済みとし、全社の調整は0。
グローバル・建材その他
中国・北米の販売子会社と代理店を通じた海外向けの輸出と、産業向け製品・建材・住宅設備の仕入販売。売上の1割前後。
| 数量出荷量(百万平方メートル相当の概算) | 価格1 平方メートルあたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.5 | 2,727 | 150 | 3 |
| 10 年後 中立 | 5.5 | 3,654 | 201 | 5 |
取り方:グローバルと建材その他をまとめ、売上150億円を出荷量(約550万平方メートル相当)× 平均単価(約2,700円)に分けた。数量と単価は概算の推定。営業利益3億円も推定(グローバルは減収だった)。本社費は事業に配賦済みで、全社の調整は0。
リスクと懸念
原料高を価格に移せない
塩化ビニル樹脂、可塑剤、ナイロンは石油化学品に連なる。2027年3月期は原材料の高騰と賃上げで、会社自身が純利益の2割以上の減益を見込む。買い手が建設会社や施工店なので、値上げが通らない期間が続くと、営業利益率は2%台まで戻るおそれがある。
国内の新築の縮小
人口減で住宅の新築は縮み続ける。改修と非住宅が支えているが、人手不足で工期が延びたり、建設費が上がったりすると、内装の発注が先送りされる。売上のほとんどが国内なので、建築の需要をそのまま受ける。
大型投資の回収
リサイクルプラント、ナイロン紡糸設備、広化東リフロアの新ラインなど、大型の投資が続いた。原価低減に結びつかなければ、減価償却の重さだけが残る。投資の効果は、営業利益率が5%近くまで上がるかで確かめられる。
競合との値段の競争
壁装材ではサンゲツ、床材ではタジマ、カーペットでは住江織物などが競合する。品質は同じでも値段が違えば、施工店は安い方を選ぶ。東リが値上げを主導できないと、利益率はこの競争で決まる。
海外事業が育たない
グローバル事業は2026年3月期に減収だった。中国は不動産の低迷、北米は景気の影響を受けた。広化東リフロアなど海外の投資を回収できなければ、海外は負担になる。
還元の目標の重さ
総還元性向70%の目標は、利益が減る局面では配当の下限と合わせても重い。業績が悪化すれば、自社株買いの縮小が先に来る。政策保有株の売却が進まない場合も、資金面で還元の余地が減る。
今後の分かれ目
- 原料の上昇が長引き、価格改定が通らない
- 営業利益率は3%を割り込み、やや悲観の筋書きに近づく。自社株買いは縮小し、配当も下限に近づく。
- 2028年3月期に営業利益が50億円を超え、複数期続く
- 値上げの持続力と原価低減が確認でき、中立の置き方を見直す材料になる。
- リサイクルプラントなどの原価低減が目に見えて出る
- 営業利益率が4%台後半で定着し、やや楽観の筋書きに近づく。
- グローバル事業が黒字を安定して出し、規模が拡大する
- 楽観の筋書きで置いた海外の成長が現実味を帯びる。
- 政策保有株の売却が加速し、自社株買いに回る
- 還元の水準が上がり、資本効率の改善を後押しする。
- 国内の改修需要が急に落ち込む
- 数量が想定より縮み、悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 営業利益率の推移(4%台後半が続くか、3%を割るか)
- 原材料の値動きと、販売価格の改定の通り方
- リサイクルプラントなど大型投資の原価低減の出方
- 総還元性向と自社株買い、政策保有株の売却の進み具合
- グローバル事業の黒字化
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業のROEと資本コスト7.5%から式で置いた。ROEは資本コストを下回るので、倍率は1÷kより低く、稼ぐ力の範囲に収めた。今のPERやPBRは参照していない。還元は会社の目標(配当性向50%、総還元性向70%)を踏まえ、中立は純利益の6割とした。利益が減る筋書きでは還元も減らした。同じ領域の会社とも、kと倍率の水準をそろえた。賃借は店舗中心ではなく、新リース会計基準の影響は小さいと見て、10年後の数字は賃借料を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.7→15.64 倍・やや楽観 PER 11.4→13.95 倍・中立 PER 10.8→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.5% を足して8.0%。事業が傾いている様子はなく、extra は0。値上げが通るかや設備投資の回収といった個別の不確実さは k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。