結論
細谷火工は、東京の西のはずれ、日の出町に工場を構える創業120年の火工品メーカーだ。発煙筒や信号弾、エアバッグなどに使うインフレータを作り、売上の半分を防衛省に納める。商業施設や火薬庫の賃貸でも稼ぐ。
筆者の結論は割高だ。事業の質は悪くない。営業利益率は14%で、火薬を扱う許認可と保安の壁が新規参入を拒む。それでも売上は21億円、純利益は2億円強にすぎない。今の時価総額は、その純利益の20倍を超える。
防衛費の拡大は追い風だ。ただ短信が書くとおり、装備品は製品ごとに買い増しと買い控えがあり、調達がなくなる品もある。原材料の入手難や加工業者の撤退も起きている。
筆者は、防衛向けの数量が1割強増え、火薬類の燃焼処分と火薬庫の賃貸が伸びると見る。それでも10年後の純利益は3億円前後で、資本コストに届かない稼ぎの会社に、今の値段は高い。
株主の目で見ると、この会社の価値は、防衛向けの数量がどこまで伸びるかと、賃貸の稼ぎがどれだけ続くかの2点で決まる。どちらも確かめられる開示は少なく、筆者は控えめに置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い小さな商売に、高すぎる値段が付いている。
10年後もこの事業は残る。火薬を扱う許認可と土地は簡単にまねできず、自衛隊の発煙筒や信号弾がなくなることはない。賃貸の収入も安定している。堀は狭いが、確かにある。
問題は器の小ささだ。オーナー利益、つまり設備の維持に要る投資を引いて自由に使える現金は、年に2億円前後しかない。防衛費が増えても、その恩恵は大きな装備に向かい、この会社に届くのは一部だ。
経営は資本を慎重に使っている。借入は少なく、無理な投資もしない。ただ、配当以外の還元は乏しく、資本を積み上げる方向にある。
今の時価総額45億円は、純利益の20倍を超える。資本コストを7.25%とすると、成長がほとんど無い会社に払える倍率は13倍ほどだ。筆者は、この差を埋めるだけの成長は見込めないと考える。安全域は無い。
何で稼ぐ会社か
事業は火工品と賃貸の2つだ。
火工品の売上は20億円。火薬の燃える力を、煙や光、ガスの圧力に変える製品を作る。自衛隊が使う発煙筒、照明弾、信号弾が柱だ。防衛省だけで売上の51%を占める。民間向けには、ミネベアミツミに納める部品が売上の14%ある。ほかに登山者向けの小型の発煙筒や海の救命用の信号、鳥を追い払う煙火、パーティー用のクラッカーも作る。クラッカーとパラシュート花火は、この会社の発明品だ。
近年は、使わなくなった火薬や火工品を燃やして処分する仕事が伸びている。官民を問わず、処分の需要が高まっている。火薬の燃焼試験や分析も請け負う。
賃貸の売上は1.8億円だが、利益は1.2億円と火工品の半分を稼ぐ。東京都内の大型の商業店舗や実験棟、火薬庫を貸している。防衛政策で火薬庫の需要が増え、増設と改修を進めている。
従業員は94人の小さな会社で、社長は創業家の細谷穰志氏だ。
受注残は13億円あり、売上の半年分を超える。防衛向けは年度の予算と契約に沿って納めるので、売上の見通しは立てやすい。一方で、民間向けは顧客の生産と季節で振れる。賃貸は契約で決まるので、毎年ほぼ同じ額が入る。3つの稼ぎの性格が違うことが、利益の安定につながっている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、火薬を扱う許認可と保安の体制だ。
火薬の製造や貯蔵には、法律にもとづく許可と、周りに人家の少ない広い土地が要る。新しい会社が参入するのは難しい。120年かけて築いた工場と火薬庫は、それ自体が壁になる。自衛隊の装備は仕様が細かく決まり、一度採用されれば長く使われる。
数字もそれを示す。営業利益率は過去30年で6%を下回ったことがなく、直近は14%だ。賃貸の利益は景気に左右されにくい。
弱点は規模と顧客の偏りだ。売上21億円は、日本化薬などの大手に比べて小さい。防衛省が半分を占め、その調達の方針で売上が決まる。調達がなくなった製品もある。
ROE、つまり自己資本に対する純利益の割合は6%前後で、資本コストの7.5%に届かない。利益率は高くても、事業の器が小さいため、株主に残る稼ぎは小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
火工品の市場は小さく、閉じている。買い手は防衛省、自動車と航空宇宙の部品メーカー、海と山の安全用品の売り場だ。売り手も、許認可を持つ数社に限られる。
最大の買い手である防衛省は、予算を大きく増やしている。日本は2023年度からの5年間で防衛費を43兆円に増やした。弾薬や火工品の備蓄、訓練の量も増える。ただ、予算の多くは長い射程のミサイルや無人機、艦艇に向かう。発煙筒や信号弾の量は、予算の伸びほどには増えない。製品ごとに買い増しと買い控えがある。
伸びている分野は処分だ。古くなった弾薬や火工品を安全に燃やす仕事は、防衛の備蓄の入れ替えとともに増える。燃焼の施設を持つ会社は少ない。火薬庫の賃貸も、防衛関連の物資の保管で需要が増えている。
費用の面では、原材料の入手難が続く。火薬の原料や部材を作る小さな加工業者が撤退し、代わりを探すのに手間がかかる。
筆者は、防衛向けの数量が10年で1割強増え、民間向けと処分は横ばい、賃貸は火薬庫の増設で1割強増えると見る。値段は原価の上昇に合わせて物価並みに上がるとした。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、配当性向は3割前後だ。2026年3月期は創業120周年の記念配当を含めて増やしたが、2027年3月期はそれを外して下げる予想である。自社株買いの実績は乏しい。
財務は堅い。自己資本比率は72%で、現金8億円と借入5億円を差し引いた純現金は3億円ある。投資有価証券は7億円ある。
設備投資は年に1億円前後で、火薬庫の増設と燃焼処分の施設の改修に充てる。大きな買収の話は無い。
株主は6,600人余りの個人が中心で、創業家が経営を担う。時価総額は45億円と小さく、防衛関連の再編の受け皿になる可能性はあるが、具体的な動きは見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防衛の大きな流れは、この会社の背中を押している。防衛費は5年で43兆円に増え、弾薬と火工品の備蓄は積み増される。2026年3月期の防衛省向けの売上は前年の1.2倍の11億円に伸びた。
参入の壁も高い。火薬の製造と貯蔵の許可、周りに人家の少ない広い土地、保安の体制は、新しい会社にはそろえられない。売り手が限られる中で、値段は原価に連動して物価とともに上がる。
新しい稼ぎも育っている。古くなった弾薬や火工品の燃焼処分は、官民の需要が高まり、受注が堅調だ。防衛の備蓄が入れ替わるたびに処分の仕事が出る。火薬庫の賃貸も、防衛関連の物資の保管で需要が増え、会社は増設を進めている。
利益率は14%と高く、借入も少ない。賃貸の利益は景気に左右されない床になる。小さな会社だが、防衛と保管と処分の3つが同時に伸びれば、10年で利益が倍になってもおかしくない。
財務の余力もある。純現金と投資有価証券を合わせて10億円近くあり、火薬庫や処分の施設を借入なしで増やせる。小さな会社なので、数億円の新しい受注でも利益の伸びは大きく見える。
慎重な見方
防衛費の増加は、この会社には思ったほど届かない。予算の多くはミサイルや無人機、艦艇に向かう。短信も、装備品は製品ごとに買い増しと買い控えがあり、調達がなくなる品もあったと書いている。来期の会社予想は売上2%増にとどまる。
買い手が偏りすぎている。防衛省が売上の半分、ミネベアミツミが14%を占める。どちらかの方針が変われば、売上は一気に減る。民間向けの部品は、ミネベアミツミの採用が変われば消える。
供給の側も危うい。原材料の入手難が続き、部材の加工業者が撤退している。小さな会社には、代わりの調達先を育てる力が乏しい。
利益率が高くても、器は小さい。純利益は2億円強で、ROEは6%前後と資本コストに届かない。今の時価総額は純利益の20倍を超え、10年で利益が倍になる前提を織り込んでいる。防衛関連という言葉で値段が付いている面が大きい。
株の売買も薄い。時価総額は45億円と小さく、株主の多くは個人だ。防衛関連の話題で値段が動いても、事業の稼ぎが追いつかなければ、いずれ値段は稼ぎに戻る。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方だ。参入の壁と高い利益率は本物だが、防衛費の増加はこの会社の製品には一部しか届かず、来期の会社予想も横ばいに近い。
確率は中立を厚くし、悲観側をやや厚めに置いた。賃貸の利益が床になるので、悲観の確率は1割にとどめた。処分と火薬庫の賃貸が2期続けて大きく伸びれば、楽観側に動かす。主要な製品の調達停止が開示されれば、悲観側に動かす。どちらの場合も、今の値段との差が埋まるほどの動きにはならないと筆者は見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,020 円41 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 167 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 625 円25 億円、今との差 −45.8%、 期待の年率 +0.3%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,756 円70 億円 | 250 円10 億円 | +74.0% | +5.7% | 161 円6 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,327 円53 億円 | 212 円9 億円 | +33.5% | +2.9% | 308 円12 億円 |
| 中立 | 40% | 1,112 円45 億円 | 175 円7 億円 | +11.6% | +1.1% | 515 円21 億円 |
| やや悲観 | 22% | 671 円27 億円 | 125 円5 億円 | −31.0% | −3.6% | 175 円7 億円 |
| 悲観 | 10% | 220 円9 億円 | 75 円3 億円 | −74.4% | −12.7% | 29 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,020 円41 億円 | 167 円7 億円 | +3.0% | +0.3% | 1,188 円48 億円 |
今の株価時価総額 1,153 円46 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 防衛・処分・火薬庫がそろって伸びる 利益 5 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 1,756 円70 億円
防衛の備蓄の積み増しと訓練の増加で、発煙筒と信号弾の数量は1.35倍になる。原価に連動した値段は物価をやや上回り、利益率は15%に上がる。
古い弾薬の入れ替えで燃焼処分の仕事が増え、民間向けと合わせた数量は1.25倍だ。火薬庫は増設で面積が1.35倍になり、保管の需要を取り込む。
営業利益は6.7億円、純利益は4.8億円と今の2倍になる。配当は増え、10年の還元は10億円だ。
ROEは8%弱と資本コストをわずかに上回る。許認可の壁の内側で、防衛と保管と処分の需要を取り込む姿だ。それでも、今の時価総額を大きく上回る値にはならない。
- 防衛向け火工品:数量 73.6(納入数量(千本))× 価格 28,000(1本あたりの平均単価(円))→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 15.0%
- 民間向け火工品・燃焼処分:数量 544(出荷・処分の数量(千個))× 価格 2,680(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 12.0%
- 賃貸(商業店舗・実験棟・火薬庫):数量 33.8(賃貸面積(千㎡))× 価格 9,912(1㎡あたりの年間賃料(円))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 70.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.61 倍、時価総額 70 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛向けの数量が大きく伸び、燃焼処分と火薬庫の賃貸も拡大し、利益率が過去の山を超える必要がある。3つの条件がそろう確度は高くない。
やや楽観 20% 防衛向けが2割伸び、処分が育つ 利益 4 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,327 円53 億円
防衛向けの数量は1.2倍になる。調達がなくなる品もあるが、残る品の買い増しが上回る。値段は1.36倍、利益率は13.5%だ。
民間向けと処分は1.1倍に増える。火薬庫は増設で面積が1.25倍になる。今ある建物と設備の償却は取得時の値段のままで、物価で増えない。新しい火薬庫の分だけ新しい値段の償却が足される。
営業利益は5.4億円、純利益は3.9億円だ。配当は利益に合わせて増え、10年の還元は8.5億円。自己資本は56億円、ROEは7%弱にとどまる。
小さな会社がニッチを守り、利益を物価以上に伸ばす姿だ。
- 防衛向け火工品:数量 65.4(納入数量(千本))× 価格 27,200(1本あたりの平均単価(円))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 13.5%
- 民間向け火工品・燃焼処分:数量 479(出荷・処分の数量(千個))× 価格 2,640(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 11.0%
- 賃貸(商業店舗・実験棟・火薬庫):数量 31.3(賃貸面積(千㎡))× 価格 9,629(1㎡あたりの年間賃料(円))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 69.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 53 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年3月期の防衛省向け売上は前年の1.2倍に伸び、処分の受注も堅調。火薬庫の増設も進んでいる。開示で確かめられる材料がそろう。
中立 40% 防衛は1割強増え、賃貸が下支え 利益 3 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,112 円45 億円
防衛向けの数量は1.15倍になる。買い増しと買い控えを均すと、伸びは予算ほどではない。値段は原価に連動して物価並みの1.34倍、利益率は12%を保つ。
民間向けは横ばいで、ミネベアミツミ向けの部品は続く。処分の伸びが、山と海の安全用品の伸び悩みを埋める。値段は1.3倍だ。火薬庫の増設で賃貸の面積は1.15倍になり、賃料は物価並みの1.34倍に上がる。
本社費は物価で0.5億円に増える。営業利益は4.5億円、純利益は3.2億円だ。
配当性向は3割を保ち、10年の還元は7億円。自己資本は55億円、ROEは6%に届かない。良いニッチだが、器は大きくならない。
- 防衛向け火工品:数量 62.7(納入数量(千本))× 価格 26,800(1本あたりの平均単価(円))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 12.0%
- 民間向け火工品・燃焼処分:数量 435(出荷・処分の数量(千個))× 価格 2,600(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 10.0%
- 賃貸(商業店舗・実験棟・火薬庫):数量 28.8(賃貸面積(千㎡))× 価格 9,487(1㎡あたりの年間賃料(円))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 68.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 44 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:来期の会社予想は売上2%増と横ばいに近いが、防衛費の拡大と処分・火薬庫の需要は続く。両方を差し引いた最も自然な姿。
やや悲観 22% 調達の打ち切りが続き、利益が細る 利益 2 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 671 円27 億円
防衛省は予算をミサイルや無人機に回し、発煙筒や信号弾の一部の調達をやめる。数量は1割減り、利益率は9%に下がる。
部材の加工業者の撤退で、原材料の調達に手間と費用がかかる。民間向けも1割減り、利益率は7%だ。賃貸は火薬庫の増設が進まず面積は横ばい、賃料も1.25倍と物価に届かない。
営業利益は2.7億円、純利益は2.0億円と今を下回る。配当は細り、10年の還元は5億円。
許認可の壁は残るが、その内側の市場そのものが細る。賃貸の利益だけが、変わらず会社を支える。
自己資本は50億円に積み上がるが、ROEは4%に届かない。資本を配当で返す力も弱まり、株主に残る価値は少しずつ目減りしていく。
- 防衛向け火工品:数量 49.1(納入数量(千本))× 価格 25,600(1本あたりの平均単価(円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 9.0%
- 民間向け火工品・燃焼処分:数量 392(出荷・処分の数量(千個))× 価格 2,500(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 7.0%
- 賃貸(商業店舗・実験棟・火薬庫):数量 25.0(賃貸面積(千㎡))× 価格 8,850(1㎡あたりの年間賃料(円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 65.0%
倍率:ROEは約3.9%でkを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)の約13倍の手前の11倍に置いた。賃貸の利益が残るので床は稼ぐ力で測る。
確率:短信は調達がなくなった製品があったと書き、原材料の入手難と加工業者の撤退も続く。この姿は足元の延長線上にある。
悲観 10% 主要な製品の調達がなくなる 利益 1 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 220 円9 億円
防衛省は主要な発煙筒と信号弾を新しい装備に切り替え、調達をやめる。防衛向けの数量は半分近くに減る。小さな数量では工場の固定費を賄えず、利益率は3%に落ちる。
ミネベアミツミ向けの部品も、採用が他社に移る。民間向けは25%減る。賃貸は商業店舗の契約更新で賃料が伸びず、利益率も下がる。
営業利益は1億円、純利益は0.7億円だ。配当は大きく減り、10年の還元は3億円。
残るのは、都内の賃貸物件と火薬の許認可だ。事業の価値は、ほぼ賃貸の稼ぎだけになる。
株主の価値は、稼ぐ力よりも、手元の現金と有価証券、都内の土地で決まる。ただ創業家が経営を続け、資産を売って株主に返す道は見えにくい。
- 防衛向け火工品:数量 30.0(納入数量(千本))× 価格 24,000(1本あたりの平均単価(円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 3.0%
- 民間向け火工品・燃焼処分:数量 326(出荷・処分の数量(千個))× 価格 2,300(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 3.0%
- 賃貸(商業店舗・実験棟・火薬庫):数量 22.5(賃貸面積(千㎡))× 価格 8,142(1㎡あたりの年間賃料(円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 60.0%
倍率:ROEは約1.5%でkを大きく下回る。稼ぐ力(純利益0.7億円÷k)は約9億円、床の資産も約8.8億円とほぼ同じで、床の資産に合わせて12.6倍に置いた。
確率:防衛省の主要な製品の調達停止と、ミネベアミツミ向けの採用変更が重なる構造的な負け。賃貸の利益が残るので1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
防衛向け火工品
自衛隊が使う発煙筒・照明弾・信号弾などの火工品。防衛省に納める。
| 数量納入数量(千本) | 価格1本あたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 54.5 | 20,000 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 62.7 | 26,800 | 17 | 2 |
取り方:有報の防衛省向け売上10.89億円(売上の51.0%)。数量の開示は無く、平均単価を約2万(円/本)として約5.4万本と推定。利益は火工品事業の利益2.19億円を、原価連動の防衛向けに約12%、民間・処分に約10%と配分した推定。
民間向け火工品・燃焼処分
ミネベアミツミ向けの部品、登山・海難用の発煙筒と信号、鳥追い煙火、クラッカー、火薬類の燃焼処分と試験。
| 数量出荷・処分の数量(千個) | 価格1個あたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 435 | 2,000 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 435 | 2,600 | 11 | 1 |
取り方:火工品事業の売上19.60億円から防衛省向け10.89億円を引いた約8.7億円(ミネベアミツミ2.96億円を含む)。数量の開示は無く、平均単価を約2千(円/個)として約43.5万個と推定。利益は配分した推定。
賃貸(商業店舗・実験棟・火薬庫)
東京都内の大型商業店舗・大型実験棟と、火薬庫の賃貸。
| 数量賃貸面積(千㎡) | 価格1㎡あたりの年間賃料(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 7,080 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 28.8 | 9,487 | 3 | 2 |
取り方:賃貸事業の売上1.77億円・利益1.23億円(短信)。面積の開示は無く、約2.5万㎡を年7,080(円/㎡)で貸すと推定。火薬庫は増設・改修中。
リスクと懸念
防衛省への依存
売上の51%が防衛省だ。予算が大きな装備に向かえば、発煙筒や信号弾の量は増えない。短信は、調達がなくなった製品があったと書いている。
ミネベアミツミ向けの部品
民間の最大の顧客で、売上の14%を占める。採用が他社に移るか、製品が変われば、この売上は消える。
原材料の入手難
火薬の原料や部材の加工業者が撤退し、安定した調達が難しくなっている。小さな会社には、代わりの調達先を育てる余力が乏しい。
火薬を扱う事故
火薬の製造と処分には爆発や火災の危険がつきまとう。大きな事故があれば、操業の停止と許認可の見直しで事業が止まる。
規模の小ささ
売上21億円、従業員94人。人材の確保と技術の継承が課題で、ベテランが抜ければ品質と保安の体制が揺らぐ。
今後の分かれ目
- 防衛省向けの売上が2期続けて1割超伸びたら
- 防衛向けの数量を上げ、やや楽観の確率を厚くする。
- 主要な防衛向け製品の調達停止が開示されたら
- やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- 火薬庫の増設が完了し、賃貸の売上が2割以上増えたら
- 賃貸の面積と単価を上げ、中立の利益を見直す。
- 燃焼処分の売上が開示され、年1割以上伸びていたら
- 処分を独立した成長の柱とみて、楽観側の確率を厚くする。
- 大手の防衛関連の会社による買収の提案があったら
- 提示の値段で価値を見直す。
見ておくもの
- 防衛省向けの売上と比率
- 受注残高
- 燃焼処分の受託の伸び
- 火薬庫の増設の進み具合
- 原材料の調達の状況
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、防衛向け・民間向けの数量と単価、賃貸の面積と賃料から10年後の利益を積んだ。ROEは中立で6%と資本コスト7.25%を下回るため、PERは1÷k(約13.3倍)を上限に利益の質で8〜9割に置いた。楽観だけROEがkをわずかに超えるので、正当化PERと下限の1÷kでほぼ同じ13.3倍。悲観側は賃貸の利益が残るので、稼ぐ力で置いた。今のPERには寄せていない。賃貸不動産の時価は確かめられず、賃料を利益に入れたので価値に別に足していない。新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.3→14.61 倍・やや楽観 PER 12→13.79 倍・中立 PER 11.3→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。