結論
日本ピグメントホールディングスは、プラスチックに色を付ける材料を作る化学メーカーである。筆者の結論は「資産が厚く事業は薄利。今の値段は適正圏」だ。
売上の約6割は樹脂コンパウンドで、樹脂メーカーから預かった原料に色や機能を足して返す、いわば下請けの仕事だ。顧客は自動車や家電の部材メーカーで、値段の主導権は買い手にある。
2024年に住友化学系の住化カラーを取り込み、売上は4割近く増えた。統合の効果で直近は営業利益が15億円に回復したが、売上に対する利益率は3%台にすぎない。
財務は健全だ。現金は59億円で、有利子負債を引いた純現金は8億円ある。ただし、自己資本利益率は5%台で資本コストに届かない。
筆者は、10年後の価値も今の値段の近くに収れんすると見る。資産が下を支えるが、稼ぐ力が弱く、割安とまでは言えない。
判断の分かれ目は、国内の工場再編が利益率に実るか、持ち合い株を含む資本の使い方が変わるかにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「資産を買い、事業は期待しない」案件に近い。稼ぎが資本コストに届かない会社は、成長させても価値が増えない。
評価できる点は、財務の堅さと統合の動きだ。無理な借入をせず、純現金を保ち、重複する拠点を整理している。統合の成果が利益率に出るなら、5%に届く余地はある。
気になる点は、資本の使い方である。純資産の2割弱を、配当しか生まない持ち合い株が占める。この資産が稼ぎに結びつかない限り、自己資本利益率は上がらない。
配当性向が低いのも、少数株主には厳しい。大株主の動きに押されて、還元が強まる可能性はあるが、不確実だ。
10年後の値打ちは、利益率が3%台のまま物価で数字だけが増える世界で測る。今の値段はそれを大きくは外していない。上振れは、工場再編が進み、利益率が5%に乗った時である。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、プラスチック用の着色材料である。樹脂コンパウンド、樹脂用の着色剤、加工カラーの三つがある。売上の約6割を占める樹脂コンパウンドは、顧客の樹脂メーカーが持ち込む原料を、色や機能を付けて仕上げるOEM生産が主体だ。
最終用途は自動車、家電、情報機器、OA機器が中心。国内の車両向け製品が主力で、樹脂用着色剤は食品・飲料や繊維の需要も取り込む。加工カラーは建材や自動車皮革用の水性着色が柱だ。
報告セグメントは日本、東南アジア、中国の三つ。日本が売上の6割強で、営業利益の大半を稼ぐ。東南アジアは売上が日本の半分近いが、利益はわずかだ。中国は小さく、拠点を集約して赤字を脱した。
2024年に住友化学から住化カラーを取得し、社名をPLASiSTに改めた。国内の生産拠点は子会社を含めて6か所、海外は5か国6か所。連結の従業員は1,072人だ。
新しい中期経営計画は2030年度に売上550億円、営業利益30億円を掲げる。国内工場の再編と最適地生産が柱である。
住化カラーの取得では、買収価格が純資産を大きく下回ったため、前の期に68億円の負ののれん発生益が出た。これは一度きりの利益で、本業の稼ぎ力ではない。
優良さと弱いところ
筆者の評価は「統合は進んだが、堀は浅い」だ。樹脂コンパウンドは顧客のOEMで、値段を自分で決められない。原料の樹脂が上がれば転嫁を交渉し、数か月遅れる。
強みは二つある。一つは自動車向けの着色の技術と品質管理で、車両部材は認定を取るまでに時間がかかる。二つ目は、日本ピグメントとPLASiSTを合わせた規模だ。重複する工場や拠点を絞れば、費用が下がる余地がある。
弱みは薄さである。過去10年の営業利益率は赤字から5%の間で、最良期でも5%台。自己資本利益率の中央値は5%台で、資本コストを下回り続けてきた。
東南アジアは主要顧客の日系企業の苦戦が響き、利益が2割以上減った。顧客の海外移転で国内需要も細り、依存先の盛衰がそのまま業績に出る。
資本の厚さは強みだが、それを稼ぎに変える力は弱い。純資産は時価総額の2倍あるのに、資産が生む利益は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
プラスチック着色の市場は、自動車、家電、情報機器の生産に連動する。国内の自動車と家電は、海外生産へのシフトで部材の需要が細っている。EVへの切り替えの揺り戻しもあり、先行きは読みにくい。
一方、軽量化や高機能の部材は採用が広がる。着色や機能付与の技術が求められる場面は増えるが、その利益は顧客の樹脂メーカーに偏りやすい。
東南アジアでは、日系企業の苦戦が続く。自動車と家電を中心に生産が伸びず、価格競争も強い。中国では、日系企業の不振の一方で、中国企業への拡販が進み始めた。
原料の樹脂と顔料は石油化学に連動し、価格が上がる局面では転嫁が遅れる。人件費の上昇も重く、国内工場は労務費の増加を価格改定で吸収する必要がある。
競争は、大日精化や東洋インキ系、海外の着色材メーカーと、中小の国内メーカーが入り乱れる。決め手は顧客との距離、品質、価格改定を通す力である。筆者は、国内の数量は緩やかに細り、東南アジアが小さく伸びると見る。
車両向けの電動化は、着色や機能の付け方を変える。軽量化や高機能の部材が増えれば、単価の高い品が伸びる余地はあるが、その恩恵を最初に受けるのは大手の樹脂メーカーだ。
資本政策と M&A
配当は年1回の期末払いで、直近の総額は1.9億円。配当性向は16%程度と低く、来期は減額の予想だ。自社株買いはない。
政策保有株は上場25銘柄で約46億円と大きく、純資産の2割弱を占める。大東建託、コニシ、十六フィナンシャルグループなどを持ち、含み益は大きい。ただし配当収入は小さく、会社が売却の方針を数字で示した実績はない。
関連会社は韓国、中国、台湾の3社で、持分法で取り込む。個人投資家のドイセン氏が7%台の株を持つ大量保有報告が出ており、株主の目は厳しくなりつつある。
TOBや再編の話は出ていない。M&Aは2024年の住化カラー取得が大きく、統合の成果が試されている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
統合の効果が出始めた。PLASiSTを取り込んだ直近の期は、営業利益が前期の1.8億円から15億円へ跳ね上がり、経常利益は3.5倍になった。重複する工場を絞り、最適地で生産する計画が進めば、利益率はさらに上がる。
中期経営計画は、2030年度に営業利益30億円を掲げる。今期の会社予想は営業利益17億円で、その途中経過としては順調だ。国内の車両向けは価格改定が通り始め、樹脂用着色剤も食品・飲料向けが堅調だった。
資産は厚い。時価総額に対して自己資本は2倍以上あり、含み益のある政策保有株が約46億円ある。純現金も黒字で、財務の不安はない。
大株主に海外の投資家が入り、資本効率の改善を求める圧力も強まる。配当や自社株買いの強化、持ち合い株の売却が進めば、評価は大きく変わる。
さらに、国内の車両向けは価格改定が通り始め、労務費の上昇を吸収する力が戻りつつある。東南アジアも稼働率が上がれば、固定費の重さが軽くなり、利益が一気に伸びる。
慎重な見方
売上の6割は下請けの樹脂コンパウンドで、値段の主導権は顧客が握る。原料高の転嫁は遅れ、労務費の上昇も重い。直近の営業利益率は3.6%と、過去の最良期の5%台にも届いていない。
東南アジアは売上が日本の半分近いのに、営業利益は1.6億円しかない。主要顧客の日系企業が苦戦し、自動車と家電の生産が伸びない。中国も小さく、赤字を脱したにすぎない。
国内の自動車と家電は海外生産へ移り、部材の需要が細る。EVへの移行の揺り戻しもあり、車両向けの先行きは読めない。
自己資本利益率は5%台で、資本コストを下回り続けてきた。政策保有株が資本を寝かせ、配当は利益の16%にとどまる。会社の計画する2030年度のROE7.4%も、資本コストには届かない。
住化カラーの取得では一度きりの負ののれん発生益が出ただけで、本業の力が上がったわけではない。統合の効果も、費用が先に出て、利益は遅れる。国内の6拠点と海外6拠点を抱え、固定費の重さは簡単には軽くならない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は統合と資産に根拠があり、弱気の言い分は薄い利益率と顧客の偏りに根拠がある。筆者は、統合の効果で利益率がやや改善することは認めつつ、資本コストを上回る水準までは届かないと置いた。そのため中立を最大に置き、やや悲観にも厚く確率を寄せた。悲観は資産が下を支えるため、1割強にとどめた。強気が当たれば価値は今の2倍を超え、弱気が当たっても売れる資産が下を支える。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 10,501 円165 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,021 円32 億円)。 今の値に割り戻すと 5,749 円90 億円、今との差 −7.9%、 期待の年率 +7.2%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 17,982 円282 億円 | 3,505 円55 億円 | +244.3% | +13.2% | 1,289 円20 億円 |
| やや楽観 | 18% | 13,859 円217 億円 | 2,867 円45 億円 | +168.0% | +10.4% | 3,011 円47 億円 |
| 中立 | 38% | 13,296 円209 億円 | 2,294 円36 億円 | +149.8% | +9.6% | 5,924 円93 億円 |
| やや悲観 | 26% | 5,593 円88 億円 | 1,274 円20 億円 | +10.1% | +1.0% | 1,786 円28 億円 |
| 悲観 | 12% | 3,505 円55 億円 | 765 円12 億円 | −31.6% | −3.7% | 512 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 10,501 円165 億円 | 2,021 円32 億円 | +100.7% | +7.2% | 12,522 円197 億円 |
今の株価時価総額 6,240 円98 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:工場再編が実り、利益率が5%台に乗る 利益 25 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 17,982 円282 億円
国内の工場再編が早く進み、重複費用が消える。日本の営業利益率は5.8%に上がり、数量も下げ止まって横ばいを保つ。
東南アジアは日系顧客の回復と現地企業への拡販で数量が1.5倍に伸び、利益率は4%に乗る。中国も拠点の集約が効き、5%に上がる。
営業利益は35億円に達し、中期計画の30億円を上回る。自己資本利益率は7%台に上がり、配当は純利益の3割に近づく。
ただし、資本コストには届かず、事業の質が大きく変わるわけではない。
この筋書きでは、政策保有株の一部を売却して自社株買いに回し、資本効率が少し改善する。
- 日本(樹脂コンパウンド・着色剤・加工カラー):数量 5.8(出荷量(万トン、推定))× 価格 630(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 367 億円・営業利益 21 億円。営業利益率5.8%
- 東南アジア:数量 4.9(出荷量(万トン、推定))× 価格 532(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 259 億円・営業利益 10 億円。営業利益率4.0%
- 中国:数量 1.3(出荷量(万トン、推定))× 価格 560(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 71 億円・営業利益 4 億円。営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 282 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:統合と再編が計画どおり進み、東南アジアも回復して、中期計画の営業利益率5.5%に近づく筋書き。過去10年の最良期の水準で、確率は低く置いた。
やや楽観 18% やや楽観:統合の成果が出て、利益率が4.6%に定着 利益 19 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 13,859 円217 億円
工場の再編が計画の7割ほど進む。日本の数量は4%減にとどまり、営業利益率は5.3%に上がる。
東南アジアは数量が1.35倍に伸び、利益率は2.8%に。中国は横ばいで4%。
営業利益は27億円で、会社の中期計画には届かない。自己資本利益率は5〜6%。配当は純利益の3割近くに引き上げる。会社は利益の改善を受けて、段階的に還元を強める。
持ち合い株の売却は一部にとどまり、資本効率の大きな改善はない。
国内の車両向けは価格改定が通り、樹脂用着色剤も食品・飲料向けが堅調を保つ。加工カラーの建材向けは住宅着工の減少で伸びないが、皮革用の水性着色が補う。
- 日本(樹脂コンパウンド・着色剤・加工カラー):数量 5.6(出荷量(万トン、推定))× 価格 616(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 345 億円・営業利益 18 億円。営業利益率5.3%
- 東南アジア:数量 4.4(出荷量(万トン、推定))× 価格 521(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 229 億円・営業利益 6 億円。営業利益率2.8%
- 中国:数量 0.9(出荷量(万トン、推定))× 価格 548(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 50 億円・営業利益 2 億円。営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 216 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の2030年度目標(営業利益30億円)の6〜7割に届く形。統合効果は出るが、顧客の海外移転が足を引っ張る。確率は2割弱。
中立 38% 中立:国内は細り、東南アジアが小さく伸びて利益率は4%台前半 利益 17 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 13,296 円209 億円
国内の数量は10年で8%減る。自動車と家電の海外移転が続き、車両向けも電動化で構成が変わる。価格改定は物価並みに通り、日本の営業利益率は5%に上がる。
東南アジアは数量が1.25倍に伸びる。稼働率が上がり、利益率は3%に改善する。中国は横ばいで3.5%。
全社の営業利益は24億円で、利益率は4%台前半。原料と人件費の上昇を価格改定で吸収する形だ。工場の償却は取得時の値段のままで増えないが、再編と更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。
配当は純利益の2〜3割に引き上げ、残りは再投資と財務の余力に回る。
- 日本(樹脂コンパウンド・着色剤・加工カラー):数量 5.4(出荷量(万トン、推定))× 価格 603(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 323 億円・営業利益 16 億円。営業利益率5.0%
- 東南アジア:数量 4.1(出荷量(万トン、推定))× 価格 509(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 207 億円・営業利益 6 億円。営業利益率3.0%
- 中国:数量 0.9(出荷量(万トン、推定))× 価格 536(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 49 億円・営業利益 2 億円。営業利益率3.5%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 193 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の見通し(国内の数量は緩やかに減る、価格は物価並み)に沿った中心。営業利益率は過去の最良期(5%台)に届かない水準に置いた。
やや悲観 26% やや悲観:国内が2割減り、利益率が2%台に戻る 利益 7 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 5,593 円88 億円
国内の数量が10年で2割減る。自動車と家電の海外移転が加速し、車両向けの電動化の揺り戻しも収まらない。価格改定も物価に届かず、日本の営業利益率は3%に下がる。
東南アジアは日系顧客の苦戦が続き、利益率は0.5%にとどまる。中国は小さく、1%。
営業利益は9億円で、今より4割減る。統合の重複費用が残り、再編の効果は出ない。
車両向けの需要が電動化の遅れで下振れし、樹脂メーカーからの受託単価も下がる。
配当は純利益の3割を保つが、金額は伸びない。大株主の要求で一部の持ち合い株を売るが、売却益は資本の改善に回らず、利益の質は上がらない。
- 日本(樹脂コンパウンド・着色剤・加工カラー):数量 4.7(出荷量(万トン、推定))× 価格 585(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 273 億円・営業利益 8 億円。営業利益率3.0%
- 東南アジア:数量 3.4(出荷量(万トン、推定))× 価格 494(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 169 億円・営業利益 1 億円。営業利益率0.5%
- 中国:数量 0.8(出荷量(万トン、推定))× 価格 520(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。営業利益率1.0%
倍率:稼ぐ力は純利益7億円弱に正当化PERの8割(約4.7倍)を掛けても約32億円で、売れる資産の税後を下回る。床は売れる資産で測り、今の自己資本224億円に対するPBR0.29倍(時価総額65億円)に置いた。自己資本利益率は約2%で資本コストに届かない。
確率:統合の成果が出ず、顧客の海外移転が加速する筋書き。過去10年で赤字の期が3回あり、現実味がある。2割台半ばを置いた。
悲観 12% 悲観:顧客離れと価格崩れで本業が赤字に沈む 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 3,505 円55 億円
国内の数量が10年で35%減る。顧客の海外移転が加速し、価格競争も激しい。日本の営業利益率は0.5%まで落ちる。
東南アジアは主要顧客の撤退で稼働が下がり、赤字に沈む。中国も縮む。
営業利益は赤字となり、工場の減損が出る。再編の費用も重い。ただし無借金に近く、倒産の心配はない。海外拠点の撤退と人員整理の費用がかさみ、現金が燃える。
資本の厚さがあっても、株主に戻る形にはならず、持ち合い株の含み益も株価の下落で薄れる。
時価総額は、稼ぐ力ではなく、政策保有株と運転資本、土地を中心にした売れる資産で測る。
- 日本(樹脂コンパウンド・着色剤・加工カラー):数量 3.8(出荷量(万トン、推定))× 価格 540(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 205 億円・営業利益 1 億円。営業利益率0.5%
- 東南アジア:数量 2.8(出荷量(万トン、推定))× 価格 456(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 126 億円・営業利益 −3 億円。営業利益率-2.0%
- 中国:数量 0.7(出荷量(万トン、推定))× 価格 480(1kgあたり平均単価(円、推定。名目))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-1.0%
倍率:営業赤字で稼ぐ力は測れない。床は売れる資産の税後で測り、今の自己資本224億円に対するPBR0.25倍(時価総額55億円)に置いた。
確率:自動車・家電の国内生産の急減と、東南アジアの顧客離れ、原料高の転嫁失敗が重なる筋書き。売れる資産が下を支えるため、1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(樹脂コンパウンド・着色剤・加工カラー)
日本ピグメントとPLASiSTの国内事業。樹脂コンパウンドが売上の大半。売上の約62%。
| 数量出荷量(万トン、推定) | 価格1kgあたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.8 | 450 | 262 | 12 |
| 10 年後 中立 | 5.4 | 603 | 323 | 16 |
取り方:日本セグメントの売上262億円を、1kgあたり四百五十円前後の品が年5.8万トン売れると置いた(推定。コンパウンドが大半で、着色剤は単価が高い)。数量は国内の自動車・家電の生産縮小と工場再編で、中立は10年で0.92倍。価格は物価並み(10年1.34倍)。営業利益は開示の12.0億円。
東南アジア
タイ、インドネシア、マレーシアなどの拠点。日系の自動車・家電向けが中心。売上の約29%。
| 数量出荷量(万トン、推定) | 価格1kgあたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.3 | 380 | 124 | 2 |
| 10 年後 中立 | 4.1 | 509 | 207 | 6 |
取り方:東南アジアセグメントの売上124億円を、1kgあたり三百八十円前後の品が年3.3万トン売れると置いた(推定)。数量は日系顧客の苦戦と現地需要の拡大が打ち消し合い、中立は10年で1.25倍。価格は物価並み。営業利益は開示の1.6億円。
中国
中国の拠点。日系企業向けから中国企業への拡販へ移行中。売上の約9%。
| 数量出荷量(万トン、推定) | 価格1kgあたり平均単価(円、推定。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.9 | 400 | 36 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 536 | 49 | 2 |
取り方:中国セグメントの売上36億円を、1kgあたり四百円前後の品が年0.9万トン売れると置いた(推定)。数量は中国企業への拡販で、中立は10年で横ばい。価格は物価並み。営業利益は開示の1.4億円。
リスクと懸念
顧客の海外移転と国内需要の縮小
自動車と家電の生産が海外へ移ると、国内向けの樹脂コンパウンドは細る。主要顧客の方針一つで数量が動く構造だ。
原料高の転嫁の遅れ
樹脂と顔料は石油化学に連動する。値上げは交渉に数か月かかり、その間の利益が削られる。労務費の上昇も重なる。
東南アジアの低収益
売上は日本の半分近いのに、営業利益は1億円台。日系企業の苦戦が続くと、赤字に戻る恐れがある。
統合効果の不確実さ
PLASiSTとの統合による工場再編は、費用が先に出て、効果が遅れる。再編が進まなければ、利益率は3%台のままだ。
持ち合い株と資本の寝かせ
上場25銘柄で約46億円を持つが、配当収入は小さい。株価が下がれば自己資本も減り、資本効率の改善は進まない。
今後の分かれ目
- 国内工場の再編が進み、重複費用が減る
- 営業利益率が5%に近づき、中期計画の営業利益30億円が現実味を帯びる。楽観に確率が寄る。
- 持ち合い株の売却と大型の自社株買いが示される
- 資本効率が改善し、少数株主への還元が増える。評価が見直される。
- 自動車の国内生産が急減し、車両向けが落ち込む
- 売上が2割減り、営業利益は赤字近くに落ちる。悲観の筋書きに近づく。
- 東南アジアの日系顧客が回復し、稼働率が上がる
- 固定費が薄まり、東南アジアの利益率が3%台に乗る。
- 大株主が経営に提案を行い、事業の売却が議題になる
- 事業の再編や売却で、隠れた価値が表に出る可能性がある。
見ておくもの
- PLASiSTとの統合による工場再編の進み方
- 営業利益率の推移(3%台から5%へ)
- 東南アジアの日系顧客の生産動向
- 持ち合い株の売却と還元方針
- 大株主の持株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。10年後の自己資本利益率は5%前後で資本コスト9.0%に届かず、正当化PERの8割に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。自己資本は今の時価総額の2倍を超えるが、稼ぎが資本コストに届かない会社の帳簿は価値の根拠にしていない。持ち合い株は配当を利益に残しているため、価値を二重に足していない。新リース会計基準の影響は小さく、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.1→11.11 倍・やや楽観 PER 7.6→11.11 倍・中立 PER 7→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。