結論
森六は、自動車の内外装に使う樹脂部品と、化学品の取引を二本柱とする会社だ。売上の約8割が樹脂部品で、顧客の中心はホンダである。
筆者の結論は「やや割高」だ。2026年4月に買った事業で売上は一気に増えるが、儲けの薄さは変わらない。10年後に稼ぐ利益は、今の時価総額を支えるには足りない。
稼ぎの源は単純だ。車が1台つくられるたびに、内装や外装の部品代が入る。部品は電気自動車でも要るので、エンジン向けの素材より電動化に強い。ただし完成車メーカーは毎年、値下げを求める。数量も値段も、会社の思いどおりにはならない。
注目はレゾナックから買った外装部品の事業だ。売上は約500億円で、既存の樹脂部品の半分近い。顧客がホンダ以外へ広がる点は大きい。一方で、会社の計画では初年度の営業利益は7億円ほどにとどまる。立て直しはこれからだ。
自己資本は660億円と厚い。しかし利益は資本コストに届かない。ためた利益が額面どおりの価値を持たない会社に、帳簿の値を払う理由はない。いちばん気になるのは、買収の成否と、その利益が資本コストを超えるかどうかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に問うのは、「10年後もこの事業は存続し、今より強いか」だ。樹脂部品は電動化でも要るので、存続はほぼ確かだ。だが強くなる根拠は薄い。顧客に選ばれる側の仕事で、値段は相手が決める。
次に資本の使い方を見る。自己資本は660億円あるが、生む利益は少ない。ROEが資本コストを下回る会社では、ためた利益は額面どおりの価値を持たない。経営陣は構造改革に動いているが、資本はまだ割に合っていない。
買収の評価は分かれる。ホンダへの偏りを下げる点は正しい。ただ、会社の計画では買収事業の初年度の営業利益は7億円ほどで、立て直しの腕が問われる。172億円を借入でまかなうので、成功すれば利益が増え、失敗すれば減損が出る。
安全域は薄い。PBRが0.6倍でも安いとは言えない。帳簿の資産が利益を生まない限り、割安ではないからだ。払う値段に余裕はない、というのが筆者の見立てだ。
何で稼ぐ会社か
樹脂加工製品とケミカルの2事業からなる。2026年3月期の売上は1,338億円で、樹脂加工製品が1,084億円、ケミカルが254億円だった。
樹脂加工製品は、自動車の内装と外装の部品を作り、完成車メーカーに納める。運転席前のインストルメントパネル、コンソールボックス、加飾部品が中心だ。材料の選定から金型の設計、成形、塗装、組み立てまで自社で通せる。グループ売上の約半分は北米の工場が占める。会社の開示では主力顧客が7割で、筆者はこれをホンダとみる。ホンダは大株主でもある。
ケミカルは、化学品を調達して売る商社の機能と、自社の製造を併せ持つ。合成樹脂、ゴム薬品、ライフサイエンス向けの原料などを扱う。会計上は売上を手数料などの「純額」で数えるので、見かけは小さい。この基準を使わない参考値では、売上は670億円になる。
2025年4月に旧森六テクノロジーと旧森六ケミカルズが合併し、森六株式会社となった。2026年4月には、レゾナックの自動車成形部材事業を172億円で取得した。バンパー、バックドア、外装の発泡成形品を作り、日本とタイに工場を持つ。タイの会社の49%はいすゞが持つ。会社の計画では、この事業で2027年3月期の売上は1,944億円まで増える。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、顧客の開発に組み込まれていることだ。部品は車種ごとに設計され、一度採用されれば、その車種の生産が終わるまで続く。材料から金型、塗装まで一貫して扱えるので、複雑な内装部品にも対応できる。
一方で、値段を決める力は弱い。完成車メーカーは毎年、原価の引き下げを求める。足元では北米で価格交渉が進み、利益が戻った。ただ、それは赤字に近かった工場の手直しの面が大きく、恒久的な値上げ力とは言い切れない。
顧客の偏りも弱みだ。主力顧客が7割を占める。会社はこれを2035年に5割へ下げる計画で、買収事業はその第一歩になる。
利益の質には課題がある。営業利益率は過去12年の山でも5%台で、直近は3%台だ。メキシコ子会社の売却や中国の減損など、構造改革の損が続いた。自己資本が660億円と厚いのに、ROE(自己資本に対する利益)は10年の中央値で4%に届かない。
財務は今のところ安定している。自己資本比率は5割強で、赤字の期にも配当は守った。ただし今回の買収で、借入が約200億円増える。純有利子負債は一気に重くなる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の元は、日本車メーカーの世界生産だ。部品は車1台ごとに使うので、台数が動けば数量が動く。日本の自動車部品の出荷額は約41兆円ある。森六の樹脂部品は、その0.3%ほどの小さな一角にすぎない。シェアで語る会社ではなく、顧客の中での立ち位置がすべてだ。
電動化の影響は、エンジンまわりの素材より小さい。内装や外装の樹脂部品は、電気自動車でも変わらず要る。軽量化は電費に直結するので、むしろ追い風になる。排ガス触媒向けの素材会社とは、ここが決定的に違う。
本当の脅威は電動化そのものでなく、日本車メーカーの地位の低下だ。中国では日系各社が販売を落とし、森六の中国売上は縮んでいる。中国メーカーが海外へ出れば、現地の部品会社も一緒に来る。ホンダの電動化の遅れや米国の関税も、北米の工場の稼ぎを揺らす。
内装ではトヨタ紡織や豊田合成、外装ではバンパーに強い複数の会社が競合になる。森六は大型の外装部品とモジュール化(複数の部品をまとめて納めること)の技術を、買収で手に入れた。
ケミカルは、国内の化学工業が縮む中で、インドと東南アジアでの取引拡大が頼りだ。中国メーカーの価格攻勢は、数量を削る。
資本政策と M&A
還元の軸は配当で、指標はDOE(自己資本に対する配当の割合)だ。2026年3月期は2.7%で、2028年3月期に3%以上へ引き上げる方針を掲げる。利益が落ちた年も配当は守ってきた。自社株買いも機動的に行い、2025年に実施した。株主優待はない。
資本の使い方は、この数年で大きく変わった。メキシコ子会社の売却と中国の減損で損を片づけ、2026年4月にレゾナックの事業を172億円で買った。資金の多くは借入で、中計の資金計画は借入200億円を見込む。純有利子負債は35億円から、200億円前後へ上がる。
政策保有株(取引先の株)は上場8銘柄で、純資産の約1割だ。会社は縮減を掲げるが、2026年3月期は売却がなかった。計画の売却額は35億円と小さい。
大株主は信託銀行、従業員持株会、個人の森茂氏(6.7%)、ホンダ(5.5%)が並ぶ。支配株主はいない。時価総額は400億円と小さく、PBRも1倍を割る。買われる側になる可能性は否定しないが、確率は小さいとみて筋書きには織り込まない。
最大の論点は、買収の172億円が資本コストを上回る利益を生むかどうかだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
買収で森六は変わる。ホンダ一辺倒だった顧客に、いすゞが加わり、トヨタとの商談も進んでいる。会社の目標では主力顧客の比率は7割から5割になり、景気や1社の方針に振り回されにくくなる。
外装部品の技術は大きな武器だ。バックドアなどの大型の部品を作れる会社は限られ、発泡成形で軽くできれば、電気自動車の電費にも効く。共同購買と拠点の統合が進めば、買収事業の利益率は1%台から4〜5%へ上がる余地がある。
北米では価格交渉が通り、工場の生産性も上がった。メキシコの赤字は消え、中国は台数が減っても黒字を出せる体制を目指している。構造改革の損は終わった、という主張が成り立つ。
ケミカルは安定した現金の源だ。インドとライフサイエンスが伸び、買収事業への原料供給という新しい取引もできる。営業利益は2028年に70億円、2035年に売上2,200億円とROE10%を会社は掲げる。実現すれば今の400億円は安い。
慎重な見方
営業利益率は過去12年で5%台が精いっぱいで、直近は3%台だ。買収で売上が5割増えても、利益率が薄まる。会社の計画でも2027年3月期の営業利益率は3.1%に下がる。レゾナックが手放した事業が、森六の手に渡って急に稼ぐとは考えにくい。
主力顧客のホンダは、電動化の遅れと中国の不振に悩む。ホンダの生産が減れば、森六の数量は同じだけ減る。値段は毎年の値下げ要請で上がらない。物価が3%上がれば、人件費も材料費も同じだけ増え、利益率は削られる。
構造改革は何度も出てきた。メキシコ、中国、そして今回の買収と、損と投資が続く。172億円を借入で払い、利払いは増える。ROEを10%にする目標は、自己資本が660億円ある限り、約66億円の純利益が要る。直近の純利益は24億円だ。
中国の日系シェア低下は止まらない。米国の関税が重なれば、北米も揺らぐ。化学品商社は、中国の安値に数量を削られる。
電動化は森六に無縁ではない。電気自動車では車の設計が変わり、部品の点数や形が入れ替わる。中国の新興メーカーは、部品の調達先も自国で固めがちだ。日系の顧客に頼る会社ほど、この波を受けやすい。
どちらに重みを置いたか
筆者は慎重な見方に寄せる。強気の話は、統合の成功とホンダ以外の顧客開拓が両方そろって成り立つ。どちらも実績がまだない。利益率が低い事業の改善は、計画どおり進まないほうが普通だ。
ただし、樹脂部品は電動化に強く、財務も壊れてはいない。倒産を心配する会社ではないので、悲観の確率は1割弱にとどめた。やや悲観を2割台半ばに置き、中立を4割弱、強気の側は合計で3割とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,410 円490 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,411 円203 億円)。 今の値に割り戻すと 2,540 円365 億円、今との差 −6.7%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,885 円988 億円 | 2,020 円290 億円 | +227.0% | +12.6% | 891 円128 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,225 円750 億円 | 1,707 円245 億円 | +154.6% | +9.8% | 1,386 円199 億円 |
| 中立 | 38% | 3,832 円550 億円 | 1,477 円212 億円 | +94.9% | +6.9% | 2,017 円290 億円 |
| やや悲観 | 24% | 752 円108 億円 | 1,115 円160 億円 | −31.4% | −3.7% | 448 円64 億円 |
| 悲観 | 8% | 502 円72 億円 | 488 円70 億円 | −63.6% | −9.6% | 79 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,410 円490 億円 | 1,411 円203 億円 | +77.1% | +5.9% | 4,821 円692 億円 |
今の株価時価総額 2,723 円391 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% ホンダ以外にも広がり、買収事業が稼ぐ側に回る 利益 79 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 6,885 円988 億円
トヨタとの取引が始まり、ホンダ以外の顧客が売上の5割に届く。買収した外装事業は、バックドアと発泡成形品の採用がいすゞ、ホンダ、トヨタへ広がり、車両数が3割ほど増える。共同購買と拠点の統合が効き、買収事業の利益率は5%台に乗る。
既存の樹脂部品は、北米の価格交渉の成果が定着して利益率が5.5%に上がる。外装の比率が高まり、1台あたりの部品代も増える。
ケミカルはインドと東南アジアで取扱商品が増え、ライフサイエンス向けの原料が伸びる。買収事業への原料供給という新しい取引も立ち上がる。
全社の営業利益は140億円弱で、会社が掲げる長期ビジョン(売上2,200億円、ROE10%)の水準に近づく。ただ自己資本が厚く、ROEは8%どまりだ。
- 樹脂加工製品(既存の内外装部品):数量 285(部品を納める車両の台数相当(万台))× 価格 5.38(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 1,533 億円・営業利益 84 億円。270万台相当が285万台に増え、1台あたり4.0万円が10年で1.34倍。営業利益率5.5%
- 樹脂加工製品(買収した外装事業):数量 85.0(部品を納める車両の台数相当(万台))× 価格 11(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 911 億円・営業利益 50 億円。66万台相当(取得時の推定)がトヨタ向けなどで85万台に増え、1台あたり1.34倍。営業利益率5.5%
- ケミカル(化学品の商社・製造):数量 29.0(取扱数量(万トン相当))× 価格 16(1トンあたりの純額売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 456 億円・営業利益 32 億円。取扱数量が3割増え、純額売上は1トンあたり1.38倍。営業利益率7%
倍率:事業の純利益 79 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.51 倍、時価総額 988 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気には統合の成功と新規顧客の獲得が同時に要る。買収事業の利益率は今1%台で、計画を外してきた改革の履歴もあるため1割にとどめた。
やや楽観 20% 統合が進み、利益率が少しずつ上がる 利益 60 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,225 円750 億円
ホンダの生産は小幅に減るが、森六は外装の比率を高めて1台あたりの部品代を維持する。買収した事業は拠点の統合と共同購買で、利益率が4.5%まで上がる。ホンダ以外の顧客は4割強になる。
既存の樹脂部品は5%の利益率を守る。北米の工場の生産性は上がったままだ。
ケミカルは国内が細る一方、インドと東南アジアが穴を埋め、利益率は6.5%に近づく。
営業利益は100億円を少し超える。2028年3月期の会社目標(70億円)より、そのあとの伸びが大きい。ただROEは6〜7%にとどまり、資本コストには届かない。
10年の途中で景気が崩れても、固定費の重い工場を持たない分、赤字には落ちにくい。借入の返済は、営業の現金で少しずつ進む。
- 樹脂加工製品(既存の内外装部品):数量 275(部品を納める車両の台数相当(万台))× 価格 5.30(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 1,458 億円・営業利益 73 億円。270万台相当が275万台に微増し、1台あたり1.32倍。営業利益率5%
- 樹脂加工製品(買収した外装事業):数量 74.0(部品を納める車両の台数相当(万台))× 価格 10(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 776 億円・営業利益 35 億円。66万台相当が74万台に増え、1台あたり1.31倍。営業利益率4.5%
- ケミカル(化学品の商社・製造):数量 25.5(取扱数量(万トン相当))× 価格 16(1トンあたりの純額売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 395 億円・営業利益 26 億円。取扱数量が1割強増え、純額売上は1トンあたり1.36倍。営業利益率6.5%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 750 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:統合の効果は出るが、新規顧客の獲得は限られる。北米の価格交渉が定着すれば成り立つ筋書きとして2割を置いた。
中立 38% 買収で規模は増すが、利益率は低いまま 利益 44 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,832 円550 億円
世界の日本車の生産は横ばいから微減で、ホンダも似た動きになる。森六の既存の樹脂部品は台数が5%ほど減る。値段は毎年の値下げ要請に押され、10年で1.28倍にとどまる。利益率は4.7%と、足元の5.1%より低い。
買収した事業は、拠点の統合で利益率が1%台から3.5%まで上がる。ただしホンダ以外の顧客の開拓は限られる。
ケミカルは数量がわずかに増え、利益率は6%を守る。
営業利益は80億円前後で、会社の目標(2028年3月期に70億円)にその後の物価上昇を乗せた形になる。自己資本が厚いので、ROEは5%台にとどまる。
- 樹脂加工製品(既存の内外装部品):数量 257(部品を納める車両の台数相当(万台))× 価格 5.14(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 1,321 億円・営業利益 62 億円。270万台相当が257万台に5%減り、1台あたり1.28倍。値下げ要請で物価並みには届かない。営業利益率4.7%
- 樹脂加工製品(買収した外装事業):数量 64.0(部品を納める車両の台数相当(万台))× 価格 10(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 666 億円・営業利益 23 億円。66万台相当が64万台に減り、1台あたり1.30倍。拠点統合で営業利益率3.5%
- ケミカル(化学品の商社・製造):数量 23.4(取扱数量(万トン相当))× 価格 15(1トンあたりの純額売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 358 億円・営業利益 21 億円。取扱数量が5%増え、純額売上は1トンあたり1.34倍。営業利益率6%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 550 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率の低い事業の統合は計画どおりに進まないことが多い。ホンダの動向も不透明で、強気と慎重の議論では慎重がやや強いと見て、中立に4割弱を置いた。
やや悲観 24% ホンダの不振と中国の縮小で数量が細る 利益 18 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 752 円108 億円
ホンダの生産が1割強減り、中国の台数も縮む。森六の既存の樹脂部品は台数が15%減り、値段も10年で1.20倍と物価に届かない。利益率は3.3%に下がる。
買収した事業は統合が遅れ、利益率は2%に届かない。いすゞ向けは安定するが、新規顧客は取れない。
ケミカルは中国メーカーの価格攻勢で数量が1割減る。
営業利益は36億円ほどで、直近の水準と変わらない。物価が1.34倍になる中での横ばいなので、実質は目減りだ。買収の借入の利払いがあり、純利益は半分になる。ROEは2〜3%にとどまる。
配当は方針どおり守るが、増配は止まる。政策保有株の売却で借入を少し返しても、自己資本の厚さに見合う利益は出ない。
- 樹脂加工製品(既存の内外装部品):数量 230(部品を納める車両の台数相当(万台))× 価格 4.82(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 1,108 億円・営業利益 37 億円。270万台相当が230万台に15%減り、1台あたり1.20倍。営業利益率3.3%
- 樹脂加工製品(買収した外装事業):数量 58.0(部品を納める車両の台数相当(万台))× 価格 9.76(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 566 億円・営業利益 10 億円。66万台相当が58万台に減り、1台あたり1.22倍。営業利益率1.8%
- ケミカル(化学品の商社・製造):数量 20.1(取扱数量(万トン相当))× 価格 14(1トンあたりの純額売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 286 億円・営業利益 14 億円。取扱数量が1割減り、純額売上は1トンあたり1.25倍。営業利益率5%
倍率:ROE約2.5%は資本コストに大きく届かない。RONICは約5.5%、g 3%で正当化PERは約8.3倍、上限は1÷k=11.8倍。稼ぐ力が弱く、利益が減る局面なので上限の約5割強に置いた。売れる資産の税後(約75億円、悲観の欄に内訳)より上で、稼ぐ力から置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 6 倍・時価総額 108 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:ホンダの電動化の遅れ、中国の日系シェア低下、米国の関税はすでに数字に出ている。買収の統合が遅れる可能性も重なるため2割台半ばを置いた。
悲観 8% 主力顧客の生産が崩れ、買収も減損に終わる 利益 −8 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 502 円72 億円
日本車の世界シェアが大きく落ち、ホンダの生産が3〜4割減る。中国は撤退に近い縮小で、北米も関税と現地調達の要求で台数が細る。森六は台数が35%減り、値段は10年で1.10倍にとどまる。利益率は1%まで下がる。
買収した事業は黒字化できず、のれんの減損が出る。タイの合弁は残るが、日本の工場は閉鎖に向かう。
ケミカルは中国メーカーに取扱品を奪われ、数量が3割減る。
営業利益は赤字になり、配当は大きく減る。減損で自己資本も傷む。会社は工場と政策保有株を売って借入を返し、事業を縮小して立て直しを図る。
株主への還元は、DOE3%の方針を捨てて大きく減らす。ただし、樹脂部品そのものの需要は消えず、会社は小さくなって生き残る。
- 樹脂加工製品(既存の内外装部品):数量 175(部品を納める車両の台数相当(万台))× 価格 4.42(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 773 億円・営業利益 8 億円。270万台相当が175万台に35%減り、1台あたり1.10倍。営業利益率1%
- 樹脂加工製品(買収した外装事業):数量 50.0(部品を納める車両の台数相当(万台))× 価格 8.40(1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 420 億円・営業利益 0 億円。66万台相当が50万台に減り、1台あたり1.05倍。営業利益は0
- ケミカル(化学品の商社・製造):数量 15.6(取扱数量(万トン相当))× 価格 13(1トンあたりの純額売上(万円、物価込みの名目))→ 売上 205 億円・営業利益 8 億円。取扱数量が3割減り、純額売上は1トンあたり1.15倍。営業利益率4%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロで赤字なので、売れる資産から置く。減損後の自己資本481億円に0.15倍を掛けた額は、売れる資産の税後約75億円を超えない。営業利益が赤字でEV÷営業利益は意味をなさず、借入を引いた売れる資産で測る。
確率:ホンダの生産が3割以上減り、買収事業も立て直せない筋書き。樹脂部品の存続は確かで財務も壊れていないため、1割弱にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
樹脂加工製品(既存の内外装部品)
自動車の内装・外装の樹脂部品。インパネ、コンソール、加飾部品など。ホンダなど完成車メーカー向け。
| 数量部品を納める車両の台数相当(万台) | 価格1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 270 | 4.02 | 1,084 | 55 |
| 10 年後 中立 | 257 | 5.14 | 1,321 | 62 |
取り方:2026/03期の樹脂加工製品の売上1,084億円(開示)。部品を納める車両を270万台相当、1台相当あたり約4万円と筆者が推定した。台数の開示はなく、ホンダが主力で売上の半分が北米であることから置いた。営業利益55億円は開示。
樹脂加工製品(買収した外装事業)
レゾナックから2026年4月に取得した外装成形部材の事業。バンパー、バックドア、外装発泡成形品。日本とタイに工場。
| 数量部品を納める車両の台数相当(万台) | 価格1台相当あたりの売上(万円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 8.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 64.0 | 10 | 666 | 23 |
取り方:2026/04に取得したため2026/03期は連結外で、売上・利益は0。参考として、2027/03期計画の売上1,944億円から既存事業の1,418億円を引くと約526億円。車両66万台相当、1台相当あたり約8万円と筆者が推定した(開示なし)。初年度の営業利益寄与は約7億円。
ケミカル(化学品の商社・製造)
化学品の調達・販売と自社製造。合成樹脂、ゴム薬品、ライフサイエンス原料、電子材料。国内と海外36拠点。
| 数量取扱数量(万トン相当) | 価格1トンあたりの純額売上(万円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22.3 | 11 | 254 | 15 |
| 10 年後 中立 | 23.4 | 15 | 358 | 21 |
取り方:2026/03期のケミカルの売上254億円(開示、純額)、営業利益15億円。基準を使わない参考値の売上は670億円。平均単価を1トン30万円(筆者の推定)とみて、取扱数量を22.3万トン相当、純額売上は1トンあたり11.4万円とした。数量は開示なし。
リスクと懸念
主力顧客ホンダへの偏り
主力顧客が7割を占める。ホンダの生産や調達方針が変われば、数量が同じだけ動く。電動化の遅れと中国の不振が重なれば、台数は大きく減りうる。買収で偏りは下がるが、まだ道半ばだ。
買収事業の統合の失敗
買った事業の営業利益率は今1%台とみられる。拠点の統合や共同購買が計画どおり進まなければ、利益は増えない。172億円の大半は借入で、のれんの減損が出る恐れもある。
中国の縮小とタイ・北米の関税
中国の日系シェアの低下は続く。米国の関税が長引けば、北米の工場の採算と生産配分が変わる。為替の円高は海外の利益を円で目減りさせる。
原価低減の要請と物価
完成車メーカーは毎年値下げを求める。物価が3%で上がれば、人件費も材料費も増えるが、値上げが追いつかなければ利益率が削られる。足元の価格交渉の成果が続くかが分かれ目だ。
借入の増加と利払い
買収で純有利子負債は35億円から200億円前後へ増える。借り換えの金利が上がれば利払いが利益を食う。営業利益に対する負担は軽くない。
化学品の数量減
国内の化学工業が縮み、中国メーカーが安値で入る。ケミカルの数量は減りやすい。インドとライフサイエンスで補えなければ、安定した稼ぎ手の座を失う。
構造改革の損が繰り返す
メキシコの売却、中国の減損と、損が続いてきた。買収後の統合でも費用や減損が出うる。資本の使い方が改まらなければ、ROEは資本コストに届かないままになる。
今後の分かれ目
- トヨタなどホンダ以外の完成車メーカーから、量産の受注が正式に決まる
- 強気の筋書きの確率を上げてよい。顧客の偏りが下がり、買収事業の稼働率も高まる。
- 買収した事業の営業利益率が2年続けて3%を超える
- 統合が計画より早く進んでいる証拠だ。中立から強気の側へ確率を寄せる。
- ホンダの世界生産が前年から1割以上減る
- 慎重な筋書きの確率を上げる。樹脂部品の数量は同じだけ動く。
- 買収事業でのれんの減損が出る、または統合費用が計画を超える
- 買収の失敗を示す。悲観側の確率を上げ、資本の使い方への評価を下げる。
- 政策保有株の大型売却と自社株買いが同時に発表される
- 資本効率を改善する材料として評価する。ただし本業の利益が伸びない限り倍率は上げない。
見ておくもの
- ホンダの世界生産とホンダ以外の顧客の売上比率
- 買収事業の営業利益率と統合費用
- 北米の工場の利益と米国の関税の影響
- 純有利子負債と利払い、DOEの推移
- ケミカルの取扱数量(インド・ライフサイエンス)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、資本コスト8%と事業のROE、長期成長(3〜4%)から出した。10年中立のROEは5%台で資本コストに届かず、正当化PERは約9.8倍、上限は1÷k=11.8倍。今の時価総額の倍率には寄せていない。純利益÷営業利益は中立で0.55に置いた。過去10年の中央値は0.58、2027年3月期の会社予想は0.52で、買収の借入の利払いと、タイ子会社のいすゞの持分(49%)が効く。営業利益率は中立で3%台半ばと、過去12年の山(5.2%)を下回る。数量・単価・利益率の分野別の値は開示がなく、筆者の推定を含む。会計は2028年3月期から新リース会計基準に変わるが、数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。この会社は工場と事務所の賃借が小さく、影響は限られる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.51 倍・やや楽観 PER 9→12.5 倍・中立 PER 8→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。