結論
丸東産業は、福岡県の久留米市に本社を置く食品包装フィルムの会社だ。売上188億円の8割が、食品や医薬品の袋に使うフィルムである。開けやすい袋や、乾燥剤の要らない袋のような小さな工夫で、地場の食品メーカーとの取引を積み重ねてきた。
筆者の結論は、今の値段はほぼ妥当というものだ。売上は大きいが、営業利益率は過去12年で2%から6%しかない。自己資本99億円に対して、ならした純利益は4億円前後にとどまる。資本コストに遠い稼ぎに、帳簿どおりの値段は付かない。
明るい材料もある。2027年2月期の上期は値上げが通り、営業利益が4倍になった。工場用地を9.5億円で売り、手元の現金も厚くなる。
ただ包装フィルムは大手の印刷会社がひしめく市場で、食品の量は人口とともに細る。上期の改善がどこまで残るかが、価値を分ける。筆者は半分ほど残ると見ている。
手元の現金と政策保有株、残る土地は悲観の床を支えるが、配当性向は1割と低く、株主の手には戻りにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の厚さに目を奪われてはいけない会社だ。
自己資本は99億円あるが、その多くは工場と売掛金、在庫である。事業を続ける限り、現金にはならない。株主の価値は、毎年いくら稼ぐかで決まる。
ならした純利益は4億円前後で、設備の更新を引くと株主のものになる利益はさらに小さい。資本コストを8%とすると、その値打ちは40億円台だ。今の値段とほぼ同じである。
上期の値上げが本物なら、話は変わる。営業利益が年8億円に乗れば、価値は今の値段を上回る。ただ過去にも原料高の後に利益が戻り、また削られることを繰り返してきた。1期の改善で判断を変えるのは早い。
10年後も食品の袋は要り、この会社は九州で必要とされ続けるだろう。それでも持ち続けたい事業かと問われれば、堀の浅さと資本の効率の低さで答えに迷う。安全域は、土地の売却で厚くなる現金にわずかにある程度だ。
何で稼ぐ会社か
丸東産業は1948年に久留米で生まれた包材の会社だ。食品メーカーに袋とフィルムを売り、福岡に工場を構える。2025年9月には印刷の子会社だった丸東印刷を吸収合併した。
売上の中身は4つに分かれる。稼ぎ頭は複合フィルムで、2026年2月期は135億円だった。樹脂の膜を何枚も貼り合わせ、湿気や酸素を通さない袋を作る。印刷も自社で手がける。単体フィルムは12億円で、医薬品や食品の包装に使う。容器は14億円、機械などのその他は27億円である。
得意なのは、袋に小さな機能を足すことだ。手で真っすぐ切れる「直進くん」は発売から20年、液体を高速で詰める「マルトップML」は35年になる。乾燥剤の要らない「吸湿くん」や、電子レンジで温められる「楽チンさん」もある。
事業は包装資材の一本で、セグメントは分けていない。海外は香港と中国に子会社を持ち、東アジアのスーパー向けのトレーなどを扱う。自己資本は99億円、従業員は数百人の中堅である。
売り先は九州を中心とした食品メーカーで、菓子や調味料、冷凍食品の袋が多い。小口で品種の多い注文を、印刷から製袋まで一貫で受ける形が強みだ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは浅い。
食品の袋は、包む中身ごとに素材の組み合わせと印刷を変える注文生産だ。丸東産業は九州の食品メーカーと長く付き合い、小口の注文にも応えてきた。顧客の近くで素早く試作できることは、確かな強みである。開けやすさや乾燥剤の要らない袋のような工夫も、値段だけの勝負を避ける助けになる。
ただ、その工夫は特許で長く守れる類のものではない。包装フィルムには大日本印刷やTOPPANのような大手と、大倉工業やZACROSのような専業の加工会社がいる。食品メーカーは相見積もりを取り、値段の主導権は買い手にある。
数字が弱さを示す。営業利益率は過去12年で1.9%から5.9%の間にある。ROEは中央値で7.6%と、資本コストの8%に届かない。原料の樹脂が上がるたびに利益が先に削られ、値上げは遅れて通る。
2027年2月期の上期は営業利益率が7.7%に跳ねた。値上げと採算重視の受注の成果だが、これが長く続くかはまだ数字で確かめられていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品の包装フィルムは、国内では量が伸びない市場だ。
袋に詰める食品の量は、人口とともに細る。一方で、単身の世帯と高齢者が増え、小分けの袋や電子レンジで温める包材は増えている。量は減っても、1袋あたりの機能は増える。この組み合わせで、市場の金額は物価並みに保たれる。
原料は石油から作るポリエチレンやナイロンなどの樹脂だ。2026年は中東の情勢でナフサが高騰し、フィルムやインキ、接着剤の値段が一斉に上がった。包材の会社は値上げを求め、食品メーカーも受け入れざるを得なかった。丸東産業の上期の改善は、この流れに乗った面が大きい。
長い目で見た変化は、プラスチックを減らす規制だ。欧州では包材の再生利用の義務が強まり、日本でも単一素材の袋や紙の包材への切り替えが進む。新しい素材に対応する設備には投資が要り、大手が有利になる。
競合の顔ぶれは厚い。大日本印刷とTOPPANは全国の大手食品メーカーを押さえ、大倉工業やZACROSは素材の技術で先を行く。丸東産業は九州の地場の顧客と小口の注文で生き残る立場だ。
筆者の見立てでは、フィルムの数量は10年で5%ほど減り、単価は物価にわずかに届かない。
資本政策と M&A
還元は配当だけだ。2026年2月期の配当は総額0.6億円で、配当性向は10%だった。普段の利益に対しても2割に満たない。自社株買いの実績はない。
その結果、自己資本は10年で44億円から99億円に増えた。借入は返し続け、純現金は2億円ほどまで戻った。12月には工場用地を9.5億円で売り、税後で6億円強の利益と現金が入る。純現金は9億円前後に膨らむ。
政策保有株は10億円あり、2026年2月期には3.5億円分を売って利益にした。持ち合いを減らす動きは前向きだが、売る方針を数字で示してはいない。
時価総額は37億円と、自己資本の4割にも届かない。現金と土地を考えると買収の受け皿として魅力はあるが、具体的な動きは見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
上期の数字が答えを出している。2027年2月期の上期は、営業利益が前年の4倍の7.9億円になった。値上げが通り、採算の悪い受注を断り、香港の子会社も持ち直した。食品メーカーが値上げを受け入れたのは、原料高が誰の目にも明らかだったからだ。一度上がった値段は、簡単には戻らない。
福岡の工場では自動の製函と梱包のラインが動き出し、人手を減らしている。人件費が上がる時代に、省人化の投資は利益を守る。
機能包材は地味だが強い。開けやすい袋や乾燥剤の要らない袋は、食品メーカーの商品の売りになる。こうした工夫を重ねる会社は、値段だけで乗り換えられにくい。
それでも時価総額は37億円しかない。工場用地を売れば9億円前後の純現金が残り、政策保有株も10億円ある。利益が年8億円に定着すれば、今の値段は明らかに安い。
人口が減っても、小分けの袋や電子レンジ用の包材は増える。1袋あたりの機能が増えれば、単価は物価以上に上がる余地がある。
慎重な見方
包装フィルムは、値段を買い手が決める商売だ。大日本印刷とTOPPANは全国の食品メーカーを押さえ、大倉工業やZACROSは素材で先を行く。丸東産業は九州の地場の顧客に頼る中堅で、規模でも技術でも主導権を持たない。
上期の改善は、原料高に合わせた値上げの一時的な上振れだ。過去にも同じことがあった。2017年から2021年に利益率は5%台に乗ったが、2023年から2025年には2%前後まで沈んだ。ナフサが落ち着けば、食品メーカーは値下げを求めてくる。会社自身も通期の予想を据え置いている。
国内の食品の量は人口とともに細る。プラスチックを減らす規制で、紙や単一素材の包材への切り替えも迫られる。その設備投資は、利益の小さい会社には重い。
資本の使い方も弱い。配当性向は1割で、現金と土地をため込むだけだ。ROEが資本コストに届かない会社が利益をため込んでも、株主の価値は増えない。土地を売っても、その現金が株主に戻る保証はない。
どちらに重みを置いたか
事業の見方では慎重な側に分がある。包装フィルムは買い手が強く、上期の改善は過去と同じく原料高の後の一時的な上振れの面が大きい。ただ値上げの一部が残る道は十分にある。確率は中立を厚くし、上下にほぼ対称に置いた。上期の利益率が通期と翌期でも続けば、楽観側へ寄せる。逆に利益率が3%を割れば、慎重な見方が正しかったことになる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 4,836 円77 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 536 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 2,605 円41 億円、今との差 +11.3%、 期待の年率 +8.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,367 円133 億円 | 756 円12 億円 | +289.9% | +14.6% | 912 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,804 円108 億円 | 630 円10 億円 | +217.7% | +12.3% | 1,487 円24 億円 |
| 中立 | 38% | 5,298 円84 億円 | 567 円9 億円 | +150.6% | +9.6% | 2,229 円35 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,715 円43 億円 | 441 円7 億円 | +34.9% | +3.0% | 631 円10 億円 |
| 悲観 | 12% | 687 円11 億円 | 252 円4 億円 | −59.9% | −8.7% | 113 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,836 円77 億円 | 536 円9 億円 | +129.6% | +8.7% | 5,372 円85 億円 |
今の株価時価総額 2,340 円37 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 機能包材が定着し、値上げが根づく 利益 10 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 8,367 円133 億円
原料高のたびに値上げが通る習慣が、食品メーカーとの間に根づく。開けやすい「直進くん」や、乾燥剤の要らない「吸湿くん」のような機能包材の比率が上がる。フィルムの数量は1.05倍、単価は物価をわずかに上回る1.36倍だ。
利益率は5.5%まで上がる。過去12年の山の5.9%に近い水準である。香港と中国の子会社も業況が戻り、容器と機械も利益を出す。
営業利益は13億円、純利益は10億円台になる。配当も利益に合わせて増え、10年の還元は12億円だ。それでもROEは6%で、資本コストの8%には届かない。土地の売却代金は配当に一部回る。
- 包装フィルム(複合・単体):数量 9,450(フィルムの出荷量(トン))× 価格 221(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 209 億円・営業利益 11 億円。数量1.05倍・単価1.36倍・利益率5.5%
- 容器・包装機械など:数量 436(容器・機械の出荷(百万個相当))× 価格 13(1個相当あたりの平均単価(円))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。数量1.05倍・単価1.34倍・利益率2.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)2 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 133 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが定着し、機能包材の比率が上がり、海外の子会社も伸びる、という3つが揃う必要がある。2027年2月期の上期は利益率7.7%と強かったが、1期の数字で10年は決められない。
やや楽観 20% 上期の改善が半分ほど続く 利益 9 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 6,804 円108 億円
上期の改善の半分ほどが定着する。食品メーカーは値上げを受け入れたが、次の更新では値下げを求める。フィルムの数量は横ばい、単価は物価並みの1.34倍だ。
利益率は4.8%と、過去の良い年の水準になる。福岡の工場の自動の製函ラインが人手を減らし、人件費の上昇を吸収する。
営業利益は10億円台、純利益は8.5億円になる。配当は少しずつ増え、10年の還元は10億円。自己資本は160億円台に積み上がり、ROEは5%台にとどまる。現金は積み上がるが、使い道は工場の更新と省人化の設備に限られる。香港の子会社は小さな黒字を保つ。
- 包装フィルム(複合・単体):数量 9,000(フィルムの出荷量(トン))× 価格 218(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 196 億円・営業利益 9 億円。数量横ばい・単価1.34倍・利益率4.8%
- 容器・包装機械など:数量 415(容器・機械の出荷(百万個相当))× 価格 13(1個相当あたりの平均単価(円))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。数量横ばい・単価1.32倍・利益率2.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)2 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 108 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年2月期の上期は値上げと採算重視の受注で営業利益が4倍になった。この改善の一部は残るとみる。ただ食品メーカーの値下げ圧力は強く、全部は続かない。
中立 38% 量は細り、値上げで利益を守る 利益 7 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,298 円84 億円
国内の人口が減り、袋に詰める食品の量は少しずつ細る。フィルムの数量は0.95倍だ。原料の樹脂が上がるたびに値上げをお願いし、半年ほど遅れて通る。単価は物価にわずかに届かない1.32倍とみる。
利益率は4%で、過去12年の中ほどだ。今の工場の償却は取得時の値段のままで、建て替える分だけ新しい値段の償却が足される。更新の投資が償却を上回る分は、現金が細る。
営業利益は8億円、純利益は6.5億円になる。2027年2月期の土地の売却益6億円強は、一度だけ自己資本に入る。配当は年1億円弱から緩やかに増え、10年の還元は9億円。自己資本は150億円に膨らみ、ROEは4%台だ。
- 包装フィルム(複合・単体):数量 8,550(フィルムの出荷量(トン))× 価格 215(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 184 億円・営業利益 7 億円。数量0.95倍・単価1.32倍・利益率4.0%
- 容器・包装機械など:数量 394(容器・機械の出荷(百万個相当))× 価格 13(1個相当あたりの平均単価(円))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。数量0.95倍・単価1.30倍・利益率1.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)2 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 84 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の食品の量は人口とともに細り、値上げは遅れて通る。過去12年の利益率の中ほどに戻る姿が最も自然とみた。
やや悲観 20% 大手との価格競争で利益が細る 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 2,715 円43 億円
大手の印刷会社が食品の包材で値下げを仕掛ける。食品メーカーは相見積もりを取り、丸東産業の値上げは通りにくくなる。フィルムの数量は0.88倍、単価は1.25倍にとどまる。
利益率は2.5%と、2023年から2025年の谷の水準に戻る。容器と機械は利益を生まない。
営業利益は4億円、純利益は3億円強だ。配当は据え置かれ、10年の還元は7億円。自己資本は130億円台に積み上がるが、稼ぎは資本コストに遠い。
稼ぐ力で測る価値は40億円ほどだが、量が細り続ける事業にその全部は付かない。現金は残るが、株主に戻るのは一部だ。
- 包装フィルム(複合・単体):数量 7,920(フィルムの出荷量(トン))× 価格 203(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 161 億円・営業利益 4 億円。数量0.88倍・単価1.25倍・利益率2.5%
- 容器・包装機械など:数量 353(容器・機械の出荷(百万個相当))× 価格 12(1個相当あたりの平均単価(円))→ 売上 43 億円・営業利益 0 億円。数量0.85倍・単価1.22倍・利益率0%
倍率:ROE約2.4%でkを大きく下回る。稼ぐ力(純利益約3.2億円÷k)は約40億円だが、量が細り続ける筋書きなので、その手前の今の自己資本99.4億円の0.38倍に置いた。
確率:包装フィルムは大手の印刷会社と専業の加工会社がひしめき、食品メーカーは相見積もりを取る。2023年から2025年に利益率が2%前後に沈んだ実績がある。
悲観 12% 食品の量が減り、包材の主役を降りる 利益 1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 687 円11 億円
国内の食品の量が細るうえ、プラスチックを減らす規制で紙や単一素材の包材への切り替えが進む。新しい素材の設備に投じる余力は小さく、大手に注文を奪われる。フィルムの数量は0.75倍、単価は1.12倍しか上がらない。
利益率は0.5%に落ち、容器と機械は赤字だ。営業利益はほぼゼロで、純利益は政策保有株の配当で辛うじて黒字を保つ。配当は減り、10年の還元は4億円にとどまる。
残る価値は、手元の現金と政策保有株、工場の土地だ。売るかどうかは経営が決め、少数株主の取り分は小さい。会社は九州の地場の包材屋として小さく続く。
- 包装フィルム(複合・単体):数量 6,750(フィルムの出荷量(トン))× 価格 182(1トンあたりの平均単価(万円))→ 売上 123 億円・営業利益 1 億円。数量0.75倍・単価1.12倍・利益率0.5%
- 容器・包装機械など:数量 291(容器・機械の出荷(百万個相当))× 価格 11(1個相当あたりの平均単価(円))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。数量0.7倍・単価1.10倍・利益率−1%
倍率:稼ぐ力(純利益約0.5億円÷k)は約7億円。純現金と政策保有株・土地の税後に戻り方0.5を掛けた床(約11億円)の方が大きく、今の自己資本99.4億円の0.11倍に置いた。
確率:国内の食品の量の減少と、大手による価格競争と、紙や単一素材への切り替えが重なる構造的な負け。食品の袋は無くならないので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
包装フィルム(複合・単体)
食品や医薬品の袋に使う、樹脂を貼り合わせた複合フィルムと単層のフィルム。印刷して袋や巻き取りの形で食品メーカーに売る。
| 数量フィルムの出荷量(トン) | 価格1トンあたりの平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 9,000 | 163 | 146 | 4 |
| 10 年後 中立 | 8,550 | 215 | 184 | 7 |
取り方:2026年2月期の複合フィルム134.51億円と単体フィルム11.75億円の合計(決算短信の製品別売上)。数量の開示は無く、印刷・加工込みの平均単価を1トン約160万円と置いて約9,000トンとした推定。利益は単一セグメントのため、全社の営業利益4.2億円のうち9割をフィルムに配った推定。
容器・包装機械など
食品トレーや容器、袋詰めの包装機械の仕入販売。海外のスーパー向けトレーも含む。
| 数量容器・機械の出荷(百万個相当) | 価格1個相当あたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 415 | 10 | 42 | 0 |
| 10 年後 中立 | 394 | 13 | 51 | 1 |
取り方:2026年2月期の容器14.31億円とその他(機械など)27.16億円の合計。品目がばらばらで数量の開示は無く、1個相当10円と置いた推定の換算。利益は全社の1割を配った推定。
リスクと懸念
原料高と値上げの遅れ
フィルムの原料は石油から作る樹脂で、インキや接着剤も同じだ。原料が上がるたびに利益が先に削られ、値上げは半年ほど遅れて通る。ナフサが落ち着けば、今度は値下げを求められる。
大手との価格競争
大日本印刷やTOPPANなど大手の印刷会社と、大倉工業やZACROSなど専業の加工会社がひしめく。食品メーカーは相見積もりを取り、値段の主導権は買い手にある。
国内の食品の量の減少
袋に詰める食品の量は、人口とともに細る。小分けの袋や機能包材で1袋あたりの値段は上がるが、量の減少を全部は埋められない。
プラスチックを減らす規制
単一素材の袋や紙の包材への切り替えが進めば、新しい設備への投資が要る。規模の小さい会社ほど負担が重く、大手に注文を奪われる恐れがある。
資本の使い方
配当性向は1割前後で、現金と土地、政策保有株をため込んできた。ROEが資本コストに届かないまま自己資本が膨らめば、株主の価値は増えない。
今後の分かれ目
- 通期と翌期の営業利益率が5%を超えて続いたら
- 値上げの定着とみて、やや楽観の確率を厚くする。
- ナフサが下がり、食品メーカーから値下げを求められて利益率が3%を割ったら
- やや悲観の確率を厚くする。
- 土地の売却代金を配当や自社株買いに回す方針が示されたら
- 余った現金の戻り方を上げ、価値を上げる。
- 大手の食品メーカーとの大口の取引を失ったら
- フィルムの数量を下げ、悲観側の確率を厚くする。
- 単一素材や紙の包材の設備に大きな投資を決めたら
- 投資の回収の見通しを確かめ、利益率と還元の置き方を見直す。
見ておくもの
- 通期の営業利益率と値上げの浸透
- ナフサと樹脂の値段
- 複合フィルムの売上
- 香港・中国の子会社の業況
- 土地の売却代金の使い道
- 配当性向
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、フィルムと容器・機械の数量と単価、利益率から10年後の利益を積んだ。ROEはどの筋書きでも資本コスト8%に届かないので、PERは1÷k(12.5倍)を上限に利益の質で7.5〜9割に置いた。悲観側は稼ぐ力と純現金・政策保有株・土地の税後に戻り方0.5を掛けた床で置いた。今のPBR0.37倍には寄せていない。上期の利益率7.7%は1期の数字なので中立には使わず、過去12年の中ほどの4%に置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.5 倍・やや楽観 PER 10.3→12.5 倍・中立 PER 9.5→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。