結論
リケンテクノスは、塩化ビニルなどの樹脂に添加剤を混ぜ、用途に合わせた素材(コンパウンド)に仕上げる会社だ。売り先は車の電線、医療の透析回路、食品用ラップ、住宅の建材と広い。営業利益率は10年前の4%台から9%近くまで上がった。
筆者の結論は、今の値段は本質価値とほぼ釣り合う、というものだ。割安と言い切る材料も、割高と言い切る材料もない。利益の伸びと手厚い株主還元は魅力だが、素材の配合は顧客に値段を押されやすい。堀、つまり他社がまねできない強みは深くない。
10年先を考えると、車と情報通信向けの電線材料が伸び、住宅向けは国内の人口減で縮む。中立では売上が1,900億円ほどになる。強気に傾く分かれ目は、薄肉電線用の材料を日系以外の自動車メーカーへ広げられるかだ。弱気に傾く理由は、中国・韓国の配合メーカーが中位の品から追ってくることだ。
純現金が時価総額の1割を超え、自社株買いも続いている。この余裕は下値を支えるが、事業の質を引き上げるものではない。
数字で言えば、今の利益は伸びる余地を一部織り込んだ水準だ。筆者が見ているのは、利益率が10年前の倍に上がった理由が、一度きりの追い風でなく、製品の入れ替えにあるかどうかだ。薄肉電線用と医療用は入れ替えと言える。ただ、住宅向けと汎用の塩ビは、いまも景気に左右される。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、リケンテクノスは「良い会社の手前」にいる、というのが筆者の見立てだ。利益率は上がり、財務は強く、株主還元は厚い。一方で、10年後も堀が広がっているとまでは言えない。
事業は配合という地味な仕事で、顧客の製品に入って見えなくなる。長く付き合う顧客を持つのは強みだが、値段を決める力は限られる。物価で原料も人件費も上がる世界では、値上げをどこまで通せるかが利益を決める。ここが読みにくい。
資本の使い方は評価できる。借金は少なく、余った現金は株主へ戻している。大きな買収で価値を壊すこともしていない。オーナーとして持ち続けたいかと問われれば、事業の質よりも経営の資本配分の姿勢で答えたい。
安全域はほどほどだ。純現金が下値を支えるが、悲観の筋書きでは稼ぐ力が細り、帳簿の自己資本は床にならない。今の値段は、利益が10年で5割伸びる姿をほぼ織り込んでいる。割安と呼ぶには足りない。
この会社を一言で言えば、「財務が強く、還元に熱心で、事業の質は並みの上」だ。割安で買えるなら持ちたいが、今の値段ではその余地は小さい。筆者は、中国・韓国勢への備えと、非日系への拡販の進み具合を、これからの数年で確かめたい。
何で稼ぐ会社か
リケンテクノスは樹脂の配合屋だ。塩化ビニルやエラストマー(ゴムのような樹脂)に、柔らかさ・難燃性・耐熱性を足す添加剤を混ぜ、顧客の注文に合わせた素材にして売る。創業以来の中核は塩ビコンパウンドである。
事業は4つの市場に分かれる。最大はトランスポーテーションで、車の電線に使う薄肉の被覆材と自動車の成形部材を扱う。利益の柱もここだ。次がデイリーライフ&ヘルスケアで、食品用ラップと、透析回路などに使う医療用コンパウンドが中心になる。ラップは小巻と業務用に力を入れている。
エレクトロニクスは、ASEANの電力・産業用電線の材料と、AIデータセンターなど情報通信向けの材料を売る。ビルディング&コンストラクションは、建装フィルムと、樹脂サッシなど住宅建築資材向けの素材だ。利益率は4つの中でいちばん低い。
顧客は電線メーカー、自動車部品メーカー、医療機器メーカー、スーパーや食品加工業者、住宅設備メーカーである。1社の売上は小さく、大手の顧客が多い。素材は顧客の製品の中に入ってしまうので、目立たないが、品質が合わなければ切り替えられる。海外では北米とASEANに生産・販売の拠点を持つ。
稼ぎ方の特徴は、売上の多くが「長く使われる素材」にあることだ。電線の被覆は、一度採用されれば車の1世代の間は使われる。医療用も認証が要るので、顧客は簡単に変えない。一方で、住宅建材とラップは、価格と量の勝負になりやすい。同じ会社の中に、粘りの強い事業と、景気に左右される事業が同居している。
優良さと弱いところ
強みは顧客と一緒に素材を作ることだ。薄肉電線用のコンパウンドは、車を軽くしたい自動車メーカーの要望に応える製品で、会社自身が市場での優位性を言う。電線の被覆は規格が厳しく、品質が通れば長く使われる。透析回路向けの医療用材料も、認証を取るまで時間がかかるので、新規参入がしにくい。
ただし筆者は、全体としては堀が深いとは見ない。塩ビコンパウンドは配合の技術で差を出しにくく、顧客が大きいので値段の交渉では押されやすい。中国・韓国の配合メーカーは、中位の品から追いついてくる。住宅向けは、ほかの樹脂や海外品との競争で利益率が低い。
資本の面は良い。自己資本比率は57%で、純現金が時価総額の13%ある。ROEは11%で、資本コストを上回る。ただし10年前のROEは5〜6%だった。上がったのは薄肉電線用の拡販と製品構成の改善が効いたためで、その持続力を見るのが肝心になる。経営は株主還元に前向きで、配当の下限にDOE(株主資本に対する配当の割合)3.5%を決めた点は評価できる。
弱点も書いておく。売上が1,300億円の規模では、研究開発に回せるお金が、大手化学会社に比べて小さい。新しい用途を探すために、IPランドスケープ(特許の動きから用途の空白を探す手法)を使う方針だが、成果が出るまで時間がかかる。顧客の需要が車に偏ると、電動化の速度や車の生産の波を直接受ける。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
素材の配合は、自動車・電線・医療・食品・住宅という川下の産業に連動する。需要の中心は車の電線だ。電動化で電線は増え、細く軽い被覆が求められる。薄肉電線用はこの流れに乗る製品で、日系の自動車メーカーが強い北米やASEANで売りやすい。ただ、日系以外のメーカーへ入れるかが成長の鍵になる。
情報通信向けは、データセンター内の配線需要が伸びる。ASEANの電力・産業用電線は、電力網の整備とともに量が増える。食品用ラップは、国内の人口減で数量が伸びない。家庭用は旭化成の「サランラップ」やクレハの「NEWクレラップ」が強く、リケンは業務用と小巻に絞る。
住宅向けは構造的に弱い。国内の新設住宅着工は人口減で縮み、樹脂サッシへの切り替えが需要を支えるだけだ。
競争の形は、国内の同業のほか、中国・韓国の配合メーカーが加わる。中国は塩ビなどの汎用領域で過剰生産が続き、値段の天井を押さえる。電線や医療のように認証と品質が要る領域は、追いつくのに時間がかかる。化学業種の前提では、中位品は10年で侵食される前提を置く。この会社の10年は、数量が実質でゆるやかに増え、物価分の値上げをどこまで通せるかで決まる。
医療用は、透析回路向けが主力で、高齢化とともに需要が続く。認証と品質が参入の壁になり、価格も安定しやすい。ただ市場の規模は小さく、会社全体を引っ張るほどの数量にはならない。
原料の面では、塩ビ樹脂と可塑剤の値段が石油とナフサに連動する。2026年はナフサの供給が不安定で、原料の値段が振れた。配合屋は原料を価格に転嫁できるが、時間差で利益が一時的に落ちることがある。
資本政策と M&A
株主への還元は厚い。配当は連結配当性向35%に加え、DOE3.5%を下限とする方針に変えた。2026年3月期は自社株買いを300万株決め、総還元性向は100%を超える見込みだ。2026年7月には通期予想の上方修正とあわせ、配当の引き上げと、上限88億円(発行済み株式の8.5%)の自社株買いも発表した。買った株は消却する。
投資は工場に向かう。包装用ラップの増設に約40億円、三重工場の拡張に約90億円を計画する。大型の買収は中計に載っていない。筆者はこれを良い点と見る。小さな会社が高い値段で買収に走ると、価値を壊しやすいからだ。
政策保有株は、連結純資産の10%未満に減らす方針だ。確かめられた大株主の構成や、親会社との関係は今回の調べでは出なかった。そのため、親子上場やオーナー支配を前提にした見方はしていない。TOB(株式の公開買い付け)の可能性は、外部の試算で10年以内に18%ほどとされる。ただ、材料がなく、筋書きの値段には入れていない。
10年の還元は、配当性向35%・DOE3.5%下限に自社株買いを足す方針に沿い、中立は純利益の87%。純利益を超えないので、余った現金は別に足してよい。
点検済み:中立の営業利益率9.3%は過去の山(8.7%、今と同じ)を0.6ポイント超えるが、会社の今期予想(営業利益150億円=10.0%)より低く、2026/03期に中期計画の最終年度の目標(営業利益120億円)をすでに超えた達成の実績がある。素材の配合の利益率が10年前の倍に上がった製品の入れ替えも効いている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
薄肉電線用のコンパウンドが世界で広がる。車は電動化で電線が増え、軽さへの要求は強まる一方だ。リケンは日系の自動車メーカーで実績があり、北米では日系以外の顧客への拡販が始まった。顧客の設計に入れば、次のモデルチェンジまで使われ続ける。単価も、高機能品の比率が上がれば物価以上に上がる。
医療用は透析回路向けが主力で、ASEANで日系以外の顧客を開拓している。認証を取るまで時間がかかるので、入った後は強い。情報通信向けはAIデータセンターの配線が増え、売上がすでに90億円ほどある。ここが数倍になれば全社の利益率を押し上げる。
会社は2026年3月期にすでに中計の最終年度の目標を超えた。2027年3月期は営業利益145億円に上方修正した。投資は工場の増設中心で、買収で失敗するリスクが小さい。純現金が厚く、自社株買いで株数も減らせる。利益が伸び、還元が厚い小型株は、10年後に倍率も評価されやすい。
さらに、会社の取り組みが変わった点も見逃せない。材料開発の段階から購買部門が入り、サプライヤーと顧客と一緒に開発する体制を作った。生産体制も、世界のどこで作るかを最適にする方針だ。こうした地道な改善は、利益率を数年かけて押し上げやすい。
慎重な見方
好調な足元の利益は、山に近いと見るべきだ。営業利益率は10年前の4%から9%近くまで上がったが、素材の配合は他社が追いつきやすい。電線被覆も塩ビも、中国・韓国の配合メーカーが中位品から追い上げ、日系以外の自動車メーカーでは現地の調達先が選ばれやすい。値段を押される力は、利益率が高いほど強く働く。
数量の面でも不安がある。国内の住宅着工は人口減で縮み、建材向けは利益率が低いうえ需要も細る。食品ラップは国内の人口減で数量が伸びず、家庭用には旭化成とクレハという大手がいる。塩ビは環境規制や代替素材の動きにさらされやすい素材でもある。
株主還元は厚いが、総還元性向が100%を超えれば、純現金は減っていく。工場投資も約130億円と、手元の現金の相当部分を使う。今の利益は景気と自動車の生産に支えられた面が大きく、谷が来れば営業利益は半分近くまで落ちうる。10年先の利益が今の5割増という姿は、強気に寄りすぎている。
さらに、会社自身の中計の目標が営業利益120億円と控えめなのに、足元がそれを大きく上回っている点も気になる。会社が先を保守的に見ているか、足元に一時的な追い風があるかのどちらかで、後者なら反動が来る。
どちらに重みを置いたか
強い方は、慎重な見方だと判断した。薄肉電線用の拡販と製品構成の改善は、すでに決算に出ている事実で、無視できない。ただ、堀が深くない素材の配合で、利益率が10年前の倍に上がった事実は、そのまま続く保証にならない。
中立は、自動車と情報通信の数量が実質でゆるやかに伸び、価格は物価並みに上がる姿に置いた。利益率は今より少し高いだけにとどめた。確率は中立を厚くし、やや悲観に楽観側より少し多く振って、中国・韓国勢の追い上げと国内の住宅需要の縮小を反映した。悲観は、非日系での敗北と塩ビの代替が重なる構造的な負けの姿にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,574 円2,136 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,659 円775 億円)。 今の値に割り戻すと 3,441 円1,607 億円、今との差 +41.1%、 期待の年率 +9.8%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,954 円3,715 億円 | 2,285 円1,067 億円 | +320.0% | +15.4% | 1,024 円478 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,297 円2,941 億円 | 2,011 円939 億円 | +240.8% | +13.0% | 1,828 円854 億円 |
| 中立 | 38% | 4,965 円2,319 億円 | 1,787 円834 億円 | +176.9% | +10.7% | 2,566 円1,198 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,081 円972 億円 | 1,256 円586 億円 | +36.9% | +3.2% | 667 円312 億円 |
| 悲観 | 10% | 897 円419 億円 | 584 円273 億円 | −39.2% | −4.9% | 148 円69 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,574 円2,136 億円 | 1,659 円775 億円 | +155.7% | +9.8% | 6,233 円2,911 億円 |
今の株価時価総額 2,438 円1,139 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 非日系への拡販と情報通信が開花 利益 171 億円 · PER 21.3 倍 · 株価時価総額 7,954 円3,715 億円
薄肉電線用のコンパウンドが北米と欧州の日系以外の自動車メーカーに広がる。車の電動化で電線が増え、軽さの要求が強まるので、高機能品の比率が上がり、単価は物価を上回って上がる。エレクトロニクスはAIデータセンターの配線材料が数倍に育ち、ASEANの電力網向けも伸びる。デイリーライフ&ヘルスケアは、透析回路向けの医療用材料がASEANで広がり、業務用ラップでも新製品が当たる。国内の住宅向けは縮むが、樹脂サッシへの切り替えと海外の異形押出しで、減り方は小さい。営業利益率は10%を超え、売上は2,300億円ほどになる。会社の投資は工場の増設中心で、買収で失敗することもない。自社株買いと配当は続き、純現金は厚いままだ。
この筋書きの前提は、薄肉電線用の採用が3つ以上の自動車メーカーに広がることだ。国内の自動車部品メーカーと同じ関係を、北米と欧州でも作れる、という姿である。
- トランスポーテーション:数量 149(コンパウンド・成形部材の出荷量(千トン、推定))× 価格 55(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 811 億円・営業利益 101 億円。非日系への拡販が進む
- デイリーライフ&ヘルスケア:数量 68.1(ラップ・医療用コンパウンドの出荷量(千トン、推定))× 価格 83(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 564 億円・営業利益 73 億円。医療用と業務用ラップが伸びる
- ビルディング&コンストラクション:数量 71.3(建装・住宅資材向け素材の出荷量(千トン、推定))× 価格 47(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 334 億円・営業利益 18 億円。樹脂サッシ向けが堅調
- エレクトロニクス:数量 88.0(電線用・情報通信向け材料の出荷量(千トン、推定))× 価格 66(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 584 億円・営業利益 67 億円。情報通信向けが急拡大
倍率:事業の純利益 170 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 21.3 倍、時価総額 3,715 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:薄肉電線用が日系以外の自動車メーカーに広がり、情報通信向けも伸び、国内の住宅も踏みとどまる。複数の好条件が重なる必要があるので確率は低めにした。
やや楽観 22% 電線材料が着実に伸びる 利益 141 億円 · PER 20.4 倍 · 株価時価総額 6,297 円2,941 億円
薄肉電線用の拡販が続き、日系以外の顧客がじわじわ増える。情報通信向けとASEANの電線材料も伸び、エレクトロニクスの利益率が上がる。医療用コンパウンドは透析回路向けを中心に着実に拡大する。住宅向けは国内の着工減で縮むが、樹脂サッシへの置き換えが下支えする。中国・韓国の配合メーカーが中位品で追い上げるが、電線と医療の認証が必要な領域では優位を保つ。営業利益率は10%ほどに上がり、売上は2,100億円ほどになる。会社は工場投資を続けながら、DOE3.5%の下限を守って還元する。中立より一段良い、足元の勢いが続く10年だ。
主役は引き続き車の電線で、情報通信向けが新しい上積みになる。それでも買収や大型の投資には頼らず、中立より約2割大きい利益に届く。
- トランスポーテーション:数量 138(コンパウンド・成形部材の出荷量(千トン、推定))× 価格 53(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 735 億円・営業利益 85 億円。薄肉電線用が定着
- デイリーライフ&ヘルスケア:数量 64.5(ラップ・医療用コンパウンドの出荷量(千トン、推定))× 価格 82(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 526 億円・営業利益 63 億円。医療用が着実に拡大
- ビルディング&コンストラクション:数量 68.3(建装・住宅資材向け素材の出荷量(千トン、推定))× 価格 47(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 320 億円・営業利益 16 億円。横ばいに近い
- エレクトロニクス:数量 78.1(電線用・情報通信向け材料の出荷量(千トン、推定))× 価格 64(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 503 億円・営業利益 50 億円。ASEANと情報通信が拡大
倍率:事業の純利益 140 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 20.35 倍、時価総額 2,941 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:拡販と製品構成の改善が続き、中国・韓国勢の追い上げが限られる姿。足元の勢いが続く形で、楽観側では比較的起こりやすい。
中立 38% 電線が伸び、住宅が縮む 利益 116 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 4,965 円2,319 億円
自動車の生産は世界で緩やかに増え、薄肉電線用の拡販と電動化が数量を押し上げる。エレクトロニクスはASEANの電線需要を取り込んで増える。一方、国内の住宅着工は人口減で縮み、建材向けの数量は減る。ラップは数量が横ばいで、物価の分だけ単価が上がる。素材の配合は値段を押されやすいが、原料と人件費の上昇は価格に通せる。営業利益率は9%台で、今より少し高い程度にとどまる。売上は1,900億円ほどになり、営業利益は170億円台に届く。大きな買収は行わず、工場投資と還元を続ける。純現金は還元でゆるやかに減るが、財務の強さは保たれる。薄肉電線用の優位は続くが、堀が広がるほどではなく、市場の平均より少し良い会社として10年を過ごす。
中計の目標を上回る水準で10年が進み、会社は還元と投資を両立させる。
- トランスポーテーション:数量 127(コンパウンド・成形部材の出荷量(千トン、推定))× 価格 52(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 661 億円・営業利益 69 億円。自動車生産と拡販で緩やかに増加
- デイリーライフ&ヘルスケア:数量 60.8(ラップ・医療用コンパウンドの出荷量(千トン、推定))× 価格 80(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 489 億円・営業利益 54 億円。数量は横ばい、単価は物価並み
- ビルディング&コンストラクション:数量 66.0(建装・住宅資材向け素材の出荷量(千トン、推定))× 価格 47(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 310 億円・営業利益 14 億円。国内の住宅需要の縮小を海外が補う
- エレクトロニクス:数量 68.8(電線用・情報通信向け材料の出荷量(千トン、推定))× 価格 63(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 430 億円・営業利益 39 億円。ASEANの電線需要を取り込む
倍率:事業の純利益 115 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 19.31 倍、時価総額 2,319 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動車と情報通信の数量が実質でゆるやかに伸び、住宅が縮み、価格は物価並みという、いちばん起こりやすい姿。確率は最も厚い。
やや悲観 20% 追い上げと価格競争で利益率が戻る 利益 67 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 2,081 円972 億円
中国・韓国の配合メーカーが中位の電線被覆と塩ビで追い上げ、リケンは数量を伸ばせない。物価分の値上げも、顧客に押されて通しきれない。国内の住宅着工は人口減で大きく縮み、建材向けは赤字寸前になる。ラップは国内の人口減と大手の競争で数量が減る。電動化で電線の需要は増えるが、日系以外では現地の調達先が選ばれやすい。営業利益率は6%台に戻り、売上は1,500億円台で止まる。会社は還元を続けるが、自社株買いの規模は小さくなり、純現金も使われる。優良な小型株という見方は消え、普通の素材配合屋として評価される10年だ。
住宅向けの縮小が利益率を押し下げ、営業利益は今の水準をやや下回り、伸びも止まる。
- トランスポーテーション:数量 110(コンパウンド・成形部材の出荷量(千トン、推定))× 価格 50(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 549 億円・営業利益 44 億円。中国・韓国勢に押され数量が伸びない
- デイリーライフ&ヘルスケア:数量 55.9(ラップ・医療用コンパウンドの出荷量(千トン、推定))× 価格 76(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 423 億円・営業利益 36 億円。ラップが縮み価格転嫁も遅れる
- ビルディング&コンストラクション:数量 58.5(建装・住宅資材向け素材の出荷量(千トン、推定))× 価格 44(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 256 億円・営業利益 5 億円。国内着工の減少が響く
- エレクトロニクス:数量 55.0(電線用・情報通信向け材料の出荷量(千トン、推定))× 価格 58(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 321 億円・営業利益 18 億円。電線需要の取り込みが進まない
倍率:ROE 8.1%でkとほぼ同じ。追い上げと価格競争で利益の質が落ちた筋書きなので、新しい投資の稼ぎはkまで薄れ、稼ぐ力(純利益÷k=12.5倍)の約9割の13.48倍に置いた。
確率:中国・韓国の配合メーカーが中位品で追い上げ、物価分の値上げを通しきれない姿。素材の配合は値段を押されやすく、楽観側より少し厚めにした。
悲観 10% 非日系で負け、塩ビも代替される 利益 19 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 897 円419 億円
日系以外の自動車メーカーでは、中国・韓国の配合メーカーに負ける。国内の自動車生産も海外に移り、国内向けの数量が減る。塩ビは環境規制と代替素材の動きで、ラップや建材で使われにくくなる。住宅向けは赤字になり、構造改革を迫られる。物価分の値上げどころか、値下げ圧力に押される。営業利益率は3%に近づき、売上は1,100億円ほどに縮む。増配記録も途絶え、自社株買いは止まる。財務は最後の支えになるが、もはや優良な小型株ではない。工場や土地、投資有価証券、現金の価値が値段の下限になる10年である。
電線と医療は一部残るが、全体の規模が小さくなり、固定費が重くなる。
- トランスポーテーション:数量 88.0(コンパウンド・成形部材の出荷量(千トン、推定))× 価格 45(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 395 億円・営業利益 16 億円。非日系で負け国内も縮小
- デイリーライフ&ヘルスケア:数量 45.6(ラップ・医療用コンパウンドの出荷量(千トン、推定))× 価格 67(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 306 億円・営業利益 14 億円。塩ビラップの代替が進む
- ビルディング&コンストラクション:数量 45.0(建装・住宅資材向け素材の出荷量(千トン、推定))× 価格 39(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 173 億円・営業利益 −2 億円。赤字に近づく
- エレクトロニクス:数量 44.0(電線用・情報通信向け材料の出荷量(千トン、推定))× 価格 51(1トンあたり単価(万円、推定))→ 売上 226 億円・営業利益 5 億円。シェアを失う
倍率:構造的に負ける筋書き。純利益は約19億円(ROE 2.4%)に細り、稼ぐ力は事業の純利益÷kで約240億円にとどまる。値段の下限は、純現金と売れる資産の税後。今の自己資本676億円に0.62倍を掛け、約420億円とした。
確率:非日系の自動車で現地の調達先に負け、塩ビの代替も進み、構造的に優良さを失う姿。足元の財務が強いので、確率は1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
トランスポーテーション
車の電線に使う薄肉の被覆コンパウンドと、自動車の成形部材を扱う。全社の利益の約4割を稼ぐ。
| 数量コンパウンド・成形部材の出荷量(千トン、推定) | 価格1トンあたり単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 110 | 39 | 429 | 45 |
| 10 年後 中立 | 127 | 52 | 661 | 69 |
取り方:売上428億円を、薄肉電線用コンパウンドと成形部材の加重平均の推定単価(1トンあたり約39万円)で割り、出荷量を約11万トンとした。開示された数量ではなく推定。
デイリーライフ&ヘルスケア
食品用ラップと、透析回路などに使う医療用コンパウンド。ラップは小巻・業務用に力を入れる。
| 数量ラップ・医療用コンパウンドの出荷量(千トン、推定) | 価格1トンあたり単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.8 | 60 | 365 | 39 |
| 10 年後 中立 | 60.8 | 80 | 489 | 54 |
取り方:売上365億円を、ラップと医療用コンパウンドの加重平均の推定単価(1トンあたり約60万円)で割り、出荷量を約6.1万トンとした。ラップと医療用は高付加価値で単価が高い想定。開示された数量ではなく推定。
ビルディング&コンストラクション
建装フィルムと、樹脂サッシなど住宅建築資材向けの素材。国内の住宅着工に連動し、利益率は低い。
| 数量建装・住宅資材向け素材の出荷量(千トン、推定) | 価格1トンあたり単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 75.0 | 35 | 263 | 10 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 47 | 310 | 14 |
取り方:売上263億円を、建装フィルムと異形押出し・住宅資材向け素材の推定単価(1トンあたり約35万円)で割り、出荷量を約7.5万トンとした。開示された数量ではなく推定。
エレクトロニクス
ASEANの電力・産業用電線の材料と、AIデータセンターなど情報通信向けの材料。
| 数量電線用・情報通信向け材料の出荷量(千トン、推定) | 価格1トンあたり単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.0 | 47 | 257 | 18 |
| 10 年後 中立 | 68.8 | 63 | 430 | 39 |
取り方:売上257億円を、電線用コンパウンドと情報通信向け材料の推定単価(1トンあたり約46.7万円)で割り、出荷量を約5.5万トンとした。開示された数量ではなく推定。
リスクと懸念
非日系の自動車メーカーに入れない
薄肉電線用の拡販は、日系以外の顧客を取れるかにかかる。現地の調達先や中国・韓国の配合メーカーが選ばれると、伸びが止まる。利益の約4割がこの市場にあり、影響が大きい。
素材の配合は値段を押される
顧客は電線メーカーや自動車部品メーカーなど大手が多い。原料と人件費が物価で上がるとき、値上げを通せるかは交渉次第で、利益率は上がりにくく、下がりやすい。
中国・韓国の配合メーカーの追い上げ
塩ビなど汎用に近い領域は、中国の過剰生産で値段の天井が押さえられる。電線や医療は認証があるので遅れるが、中位品から追い上げられ、10年で侵食される前提を置いた。
国内の住宅需要の縮小
建材向けは、国内の人口減と着工減で数量が縮む。利益率は低く、悲観の筋書きでは赤字に近づく。樹脂サッシへの置き換えは支えになるが、減り方を止めるほど大きくはない。
塩ビへの規制と代替素材
塩ビは環境面で規制や代替素材の対象になりやすい素材だ。ラップや建材で別の樹脂に置き換えられると、数量と利益率が同時に落ちる。家庭用ラップでは大手の別素材品が強い。
景気循環と自動車生産
車・電線・住宅向けの需要は景気に連動する。自動車生産が急に落ちる谷では、営業利益は大きく減る。足元の利益は山に近い可能性があり、谷の利益率は今より低いと見たほうがよい。
還元で現金が減る
総還元性向が100%を超える年があり、約130億円の工場投資も重なる。純現金は減っていく。余裕が小さくなれば、悲観の筋書きで下値を支える力が弱まる。
今後の分かれ目
- 薄肉電線用が日系以外の自動車メーカーで採用される
- トランスポーテーションの数量と単価が上がり、強気の筋書きに近づく。利益率が10%を超える形が定着する。
- 中国・韓国の配合メーカーが中位の電線被覆で値下げを仕掛ける
- 数量か単価のどちらかが落ち、やや悲観の筋書きに近づく。認証が必要な医療用は影響が遅れる。
- AIデータセンター向けの配線材料の売上が数倍になる
- エレクトロニクスの利益率が上がり、全社の利益率の底上げになる。情報通信向けの現在の売上は90億円ほど。
- 国内の新設住宅着工がさらに大きく減る
- 建材向けが赤字に近づき、全社の利益の足を引っ張る。ただ全社への影響は利益の1割ほどにとどまる。
- 世界の自動車生産が景気後退で急に落ちる
- 営業利益は半分近くまで下がる。純現金が厚いので存続の懸念は小さいが、倍率は下がる。
- 大型の買収を発表する
- 小さな会社が高い値段で買うと、価値を壊す恐れがある。還元の姿勢が後退するかも見る。
見ておくもの
- 日系以外の自動車メーカー向けの薄肉電線用コンパウンドの売上と採用の発表
- エレクトロニクスの情報通信向け売上(AIデータセンター)の伸び
- 営業利益率の維持と、物価分の値上げをどこまで通せたか
- 総還元性向とDOE3.5%の下限が守られているか、純現金の推移
- 国内の新設住宅着工と、塩ビへの規制・代替素材の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今のPERやPBRを見る前に、セグメントごとの数量×価格の積み上げと、資本コスト7.25%、ROEから式で求めた。中立のROEは14%と、過去の中央値を大きく上回る。理由は利益率の上昇と還元の厚さで、roe_why に書いた。式の上限の約8割に置いたのは、堀が深くないためで、今の株価に合わせたのではない。悲観は過去のPBRの底ではなく、純現金と売れる資産の税後から置いた。結論の適正は計算の結果で、今の値段が上方修正で急に動いたことは筋書きに使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.1→21.3 倍・やや楽観 PER 14.4→20.35 倍・中立 PER 12.8→19.31 倍・やや悲観 PER 11.5→13.48 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.5% を足して8.0%。事業が傾いている様子はないので extra は0。同じ領域の積水化学・旭有機材と並べた。薄肉電線用の拡販や塩ビ規制の不確実さは k に足さず、筋書きの数量・利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。