結論
マナック・ケミカル・パートナーズは、臭素とヨウ素の化学を軸に、医薬・電子材料の中間体と難燃剤を作る化学メーカーである。筆者の結論は「足元の回復は本物だが、いまの値段はそれを先取りしている」だ。
直近期の営業利益は7.4億円と、前の期の赤字から黒字に戻った。受託合成のファインケミカルが利益を2倍にし、難燃剤も値上げで黒字を取り戻した。2027年3月期の第1四半期は営業利益3.7億円と、前年同期の3.6倍である。
強みは、臭素化とヨウ素化という狭いが難しい技術と、医薬品向けの専用工場を持つことだ。一方で、グループ全体の費用が年11億円と重い。部門の利益が増えても、それを食う構造は変わらない。
財務は堅い。純現金は32億円で、時価総額の4割にあたる。ただし東ソーが約2割を持ち、配当は利益の1割強にとどまる。現金が株主に戻る道筋は細い。
筆者は、受託合成の伸びは評価するが、10年先の稼ぎを物価込みで積んでも、いまの時価総額を上回らないと見る。現金の厚みが下値を支えるが、割安とまでは言えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安全域が現金にある、小さな専門企業」である。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、足元で急回復している。しかし10年の物価込みの積み上げでも、純利益は9〜10億円どまりである。部門の利益が増えても、全社費用が物価で増えるからだ。
資本の使い方は評価できない。現金は積み上がるが、配当は利益の1割強にとどまる。株主に戻らない現金は、株主の価値としては半分ほどにしか数えられない。
事業の本質は、医薬の受託合成が太れるかにある。ここが当たれば、利益率は10%に近づく。外れれば、難燃剤の波に戻る。
安全域は純現金と政策保有株にある。悲観の筋書きでも、時価総額の4割強は残る。ただし、それは割安の根拠ではなく、下げ止まりの根拠に過ぎない。筆者は、事業が10年後に資本コストを稼げる証拠が出るまで、評価を上げない。
何で稼ぐ会社か
事業は3部門に分かれる。直近期の売上は110億円である。
ファインケミカルが売上50億円、部門利益12億円で、利益の中心だ。医薬品や農薬、電子材料の中間体を、顧客の依頼で作る受託合成が主である。直近期は医薬分野の大型案件の立ち上がり、大型のスポット案件、半導体関連の新規開発品が重なり、売上が3割近く伸びた。
難燃剤は売上45億円、部門利益5億円。プラスチックに添える臭素系の難燃剤で、電子機器や建材に使われる。前の期は需要減と値崩れで赤字寸前だったが、直近期は底堅い需要と単価の見直しで持ち直した。
ヘルスサポートは売上14億円、部門利益1億円。人工透析用薬剤の原料を作る安定した事業だ。
全体を束ねる持株会社の費用が、部門の利益の合計と営業利益の差として約11億円ある。研究開発と管理の費用が中心だ。連結の従業員は246人で、福山工場が中核にある。上位の顧客は第一工業製薬と中尾薬品で、それぞれ売上の1割強を占める。持株会社の下に事業会社のマナックを100%で置く形で、2022年4月に上場した。投資有価証券は上場11銘柄で16億円ほどあり、東ソー株などを含む。原料の臭素は市況の影響を受け、調達先を分けて在庫を管理している。
優良さと弱いところ
筆者の評価は「技術に堀はあるが、規模が小さく、利益が揺れる」だ。
臭素化とヨウ素化は、扱いが難しく、設備と安全管理の蓄積が要る。この狭い領域で、医薬品の製造基準に対応した専用工場と倉庫を持つ。顧客は新薬の開発段階から付き合うため、一度採用されると切り替えにくい。ここが堀である。
弱みは三つある。第一に、利益が案件に左右される。前の期は難燃剤の悪化と設備の減損で、純損益が9億円の赤字に沈んだ。第二に、上位2社への売上依存が約2割ある。第三に、部門の利益を食う全社費用が重い。
難燃剤は汎用に近く、中国勢との値段の競争から逃れられない。臭素は市況の変動を受ける原料でもある。
経営は慎重で無借金に近いが、資本の使い方は消極的だ。自己資本利益率は直近でも6.9%で、会社自身の目標8%に届かない。中期計画の見直しが進んでおり、方向を見極める局面にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
成長の中心は医薬の受託合成である。新薬の合成を外部に任せる動きは世界で続いており、市場調査では医薬品中間体の市場が年6〜7%(名目)で伸びる見通しだ。日本の中小の受託先は、海外の大手と中国勢に挟まれるが、難しい反応を小ロットでこなす企業は需要が途切れにくい。
同社の福山工場は、2026年にベンチプラントが稼働を始め、医薬関連の受託合成を広げる方針である。ただし大型案件は立ち上がりと終了の時期で売上が大きく動く。数量は右肩上がりより、段差で増えると見るほうが近い。受託先の選別は厳しく、品質事故が一度起きれば、次の案件が来ない。
難燃剤は、電子機器の難燃規制が続くため需要はあるが、世界の供給が余り、価格は物価ほど上がらない。臭素の原料価格も振れる。数量は横ばい、価格は物価を下回ると置く。
半導体向けの新規開発品は芽が出てきた段階で、規模は小さい。電子材料の高純度化は、中小の化学企業にも機会を生む。ただし顧客の認定に年数がかかる。その間は設備の投資だけが先行する。
筆者は、医薬の受託が10年かけて3割強の数量増になると見る。これが利益を押し上げる唯一の大きな要因だ。
資本政策と M&A
還元は安定配当が方針で、年間の配当総額は約1億円と、利益の1割台にとどまる。自社株買いはなく、2026年8月には自己株式の処分があった。
資本の使い道は、福山工場の事務所棟と設備への投資が中心で、直近期の設備投資は17億円だった。金属管理技術の設備と製造設備の増設も計画にある。償却は今の設備の分が取得原価のまま続き、新しい設備の分が上乗せされる。更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。
東ソーが議決権の約2割を持つ「その他の関係会社」である。親会社ではないが、少数株主が現金の使い道を決めにくい構図は同じだ。持ち合いの株が約18億円あり、東ソー株やひろぎんホールディングス株が含まれる。配当は利益に入っているので、価値には足さない。
M&Aは、2024年3月に子会社が八幸通商の株式を売った程度で、目立たない。TOBの可能性は、東ソーの動きしだいだが、材料は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受託合成が本格的に立ち上がった。ファインケミカルは売上が3割近く増え、部門利益は2倍の12億円になった。医薬の大型案件は、立ち上がれば数年続く。
難燃剤も黒字化した。前の期に減損を済ませ、重い設備を軽くしたうえで単価を見直した。今期の第1四半期は営業利益が3.7億円で、年換算なら14億円を超える。会社が見る通期の売上も増収だ。
全社費用は11億円で固定に近い。部門の利益が伸びれば、営業利益は急に増える。この営業レバレッジが効けば、営業利益率は10%に乗る。
純現金32億円は時価総額の4割あり、事業にはほとんど値段がついていない。福山のベンチプラントが動き、半導体向けの新規品も出てきた。東ソーの出資も、事業の信用になる。
自己資本利益率の目標8%を会社が掲げており、資本政策の見直しが動けば、現金が還元に回る余地も大きい。純現金と政策保有株だけで時価総額の6割に及ぶ点も、下値の堅さにつながる。
慎重な見方
急回復は、案件のタイミングで説明できてしまう。大型案件とスポット案件は、終わればなくなる。前の期は営業利益が3億円の赤字、その前の期も1億円の赤字で、安定した稼ぎとは言えない。
全社費用は11億円で、部門の利益の6割を食う。物価で増えるため、部門が伸びても営業利益の増え方は鈍る。
難燃剤は汎用に近く、中国の供給過剰が価格の天井を抑える。臭素の価格変動も、利益を一気に動かす。2025年3月期には、需要減と収益の悪化で設備の減損まで出した。同じことが再び起きない保証はない。
顧客は上位2社で2割を占める。医薬は特許切れや開発中止で、案件が突然止まる。
現金は厚いが、配当は利益の1割強で、東ソーが約2割を持つ。少数株主が使い道を決められないなら、現金の半分も株主の価値になるか怪しい。自己資本利益率は6.9%で、資本コストを下回ったままである。今期の急な改善も、その前の2期の悪化を取り戻しただけとも読める。会社が掲げる中期計画の見直しが進んでいるのは、前提が崩れた証拠でもある。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分には足元の数字という根拠があり、慎重な言い分には利益の不安定さという根拠がある。筆者は、案件型の受託合成が10年続く保証は薄いと見て、中立に4割弱を置き、やや悲観に2割強を割いた。
楽観は、営業利益率が10%を超える筋書きなので1割にとどめた。悲観は、現金と政策保有株が床になるため1割未満とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,386 円114 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 260 円21 億円)。 今の値に割り戻すと 802 円66 億円、今との差 −19.3%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,575 円212 億円 | 437 円36 億円 | +203.0% | +11.7% | 301 円25 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,767 円146 億円 | 328 円27 億円 | +110.7% | +7.7% | 461 円38 億円 |
| 中立 | 38% | 1,574 円130 億円 | 267 円22 億円 | +85.2% | +6.4% | 700 円58 億円 |
| やや悲観 | 22% | 488 円40 億円 | 182 円15 億円 | −32.6% | −3.9% | 147 円12 億円 |
| 悲観 | 8% | 425 円35 億円 | 36 円3 億円 | −53.6% | −7.4% | 37 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,386 円114 億円 | 260 円21 億円 | +65.6% | +5.2% | 1,646 円136 億円 |
今の株価時価総額 994 円82 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:受託合成が太り、営業利益率が11%に近づく 利益 16 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 2,575 円212 億円
医薬の受託合成が10年で数量を1.6倍にし、福山の増設が稼働して半導体向けの新規品も加わる。ファインケミカルの部門利益率は24%を保つ。
難燃剤は値上げが定着し、利益率は12%まで戻る。全社費用は物価で増えるが、部門の利益が上回る。営業利益率は11%に近づく。
配当は利益の3割に引き上げられ、現金の一部が還元に回る。自己資本利益率は8%台で、資本コストに近づく。
この筋書きには、案件が途切れず、特許切れによる打ち切りにも当たらない運の良さが要る。東ソーとの関係が現金の使い方を縛る構図は残るが、事業の評価は大きく上がる。
- ファインケミカル:数量 4,800(出荷量(トン,推定))× 価格 231(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 111 億円・営業利益 27 億円。営業利益率24.0%
- ヘルスサポート:数量 4,400(出荷量(トン,推定))× 価格 47(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。営業利益率9.0%
- 難燃剤:数量 10,500(出荷量(トン,推定))× 価格 61(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 64 億円・営業利益 8 億円。営業利益率12.0%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.65 倍、時価総額 210 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:医薬の大型案件が続き、全社費用を吸収して営業利益率が10%を超える筋書き。直近の急回復はあるが、前の期まで赤字だったことを踏まえ1割にとどめた。
やや楽観 22% やや楽観:受託合成が伸び、全社費用を吸収する 利益 11 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,767 円146 億円
医薬の受託合成が1.45倍に伸び、価格は物価並みに上がる。ファインケミカルの部門利益率は22%を保つ。大型案件が谷を作らず、小さな案件が穴を埋めていく。
難燃剤は数量が横ばいで、値上げは物価を少し下回る。ヘルスサポートは堅調だ。
全社費用は物価で増えるが、部門の利益の増加がそれを上回り、営業利益率は8%強に届く。
配当は利益の3割近くまで上がる。自己資本利益率は6%台で、資本コストにはまだ届かない。
福山の増設が数年遅れても、案件の山と谷が重なって平均でこの水準に収まる。ただ、前の期のような赤字は出ない前提であり、そこが楽観寄りの点だ。
- ファインケミカル:数量 4,400(出荷量(トン,推定))× 価格 228(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 100 億円・営業利益 22 億円。営業利益率22.0%
- ヘルスサポート:数量 4,100(出荷量(トン,推定))× 価格 47(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。営業利益率8.5%
- 難燃剤:数量 10,000(出荷量(トン,推定))× 価格 60(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 60 億円・営業利益 6 億円。営業利益率10.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 143 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の改善が定着し、会社の見通し(増収・増益)を物価並みの値上げで延ばした形。確率は2割強。
中立 38% 中立:受託合成は伸びるが、全社費用が利益を食う 利益 10 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,574 円130 億円
ファインケミカルの数量は10年で3分の1強増え、価格は物価並みに上がる。部門利益率は22%と、直近の24%から少し戻る。
難燃剤は数量が横ばいで、中国の供給過剰が値上げを抑える。部門利益率は10%と、直近を保つ。
全社費用は物価で増え、年14億円台になる。ここが利益の伸びを抑える。営業利益は13億円と、足元の勢いの割に控えめだ。
設備の償却は今の分が取得原価のまま続き、増設の分が上乗せされる。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、償却を上回る分は現金から出る。
配当は利益の2割台にとどまり、現金は積み上がる。自己資本利益率は5%台で、資本コストを下回り続ける。
- ファインケミカル:数量 4,050(出荷量(トン,推定))× 価格 225(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 91 億円・営業利益 20 億円。営業利益率22.0%
- ヘルスサポート:数量 4,000(出荷量(トン,推定))× 価格 46(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。営業利益率8.0%
- 難燃剤:数量 10,000(出荷量(トン,推定))× 価格 59(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 59 億円・営業利益 6 億円。営業利益率10.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 125 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の見通し(医薬受託は実質で緩やかに拡大、難燃剤は横ばい)に沿った中心。営業利益率は7%台で、過去の山の8%台を超えない。
やや悲観 22% やや悲観:案件が谷を迎え、利益が前期並みに戻る 利益 5 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 488 円40 億円
医薬の大型案件が終わり、受託合成の数量は1.2倍にとどまる。新規案件の獲得が遅れ、稼働が埋まらない。
難燃剤は中国勢との値下げ競争で、価格が物価に追いつかない。臭素の高騰も重なり、部門利益率は8%に落ちる。
全社費用は物価で増え、部門の利益を食う。営業利益は6億円と、直近期の水準に戻る。
配当は金額を保つが、現金は谷で食われる分があるとみる。自己資本利益率は3%に届かない。純現金は取り崩されないが、積み上がる速度は大きく落ちる。
福山の増設は償却だけが残り、投じた額を回収できない。新規の獲得が遅れれば、全社費用の重さが利益を直撃する。
- ファインケミカル:数量 3,600(出荷量(トン,推定))× 価格 221(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 80 億円・営業利益 15 億円。営業利益率19.0%
- ヘルスサポート:数量 3,900(出荷量(トン,推定))× 価格 45(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。営業利益率7.0%
- 難燃剤:数量 9,500(出荷量(トン,推定))× 価格 56(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 53 億円・営業利益 4 億円。営業利益率8.0%
倍率:自己資本利益率は約3%で資本コストに届かず、新しく投じるお金の稼ぎは5.5%。g3.5%で正当化PERは約8倍、その9割弱の7.0倍(構造的に案件型で揺れるため)。余った現金は谷で食う分を引いた13.5億円に戻り方0.5。
確率:前の期に赤字になった実績があり、案件の終了と難燃剤の値崩れが重なる筋書きは現実味がある。2割強。
悲観 8% 悲観:受託が止まり、難燃剤も赤字に戻る 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 425 円35 億円
医薬の主力案件が打ち切りになり、新規の獲得も続かない。受託合成の数量は1割減り、稼働の低い設備は減損される。
難燃剤は中国勢に押され、部門は赤字に沈む。全社費用は削っても10億円台が残る。営業利益は5億円の赤字になる。配当は半分に減らされ、中期計画の目標は取り下げられる。
自己資本は減損で105億円まで減る。ただ、現金と政策保有株があり、倒産の恐れはない。
時価総額は稼ぐ力ではなく、売れる資産で測る。東ソーが動かず、現金は少数株主にほとんど戻らない。難燃剤の撤退や縮小の判断も遅れ、赤字が数年続く恐れがある。
- ファインケミカル:数量 2,700(出荷量(トン,推定))× 価格 210(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 57 億円・営業利益 7 億円。営業利益率12.0%
- ヘルスサポート:数量 3,600(出荷量(トン,推定))× 価格 41(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.0%
- 難燃剤:数量 7,500(出荷量(トン,推定))× 価格 50(平均単価(万円/トン,名目,推定))→ 売上 38 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
倍率:赤字では稼ぐ力は測れない。床は売れる資産の税後で測り、今の自己資本113億円に対するPBR0.31倍(時価総額35億円)に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.33 倍・時価総額 35 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:本業が構造的に負ける筋書きだが、純現金と政策保有株が床となるため、1割未満にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ファインケミカル
医薬・農薬・電子材料の中間体の受託合成。臭素化・ヨウ素化が得意。売上の約46%、部門利益の約66%。
| 数量出荷量(トン,推定) | 価格平均単価(万円/トン,名目,推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 168 | 50 | 12 |
| 10 年後 中立 | 4,050 | 225 | 91 | 20 |
取り方:有報の部門売上50.3億円・部門利益12.1億円をそのまま使い、数量は売上÷単価の推定(単価は非開示。トンあたり170万円=1kgあたり1.7万円前後と置いた)。数量は医薬受託の拡大で10年1.35倍、価格は物価並み1.34倍。世界の医薬中間体市場の名目6〜7%成長を実質に直し、福山の増設分を加えた。
難燃剤
プラスチック用の臭素系難燃剤。売上の約41%。
| 数量出荷量(トン,推定) | 価格平均単価(万円/トン,名目,推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,000 | 46 | 46 | 5 |
| 10 年後 中立 | 10,000 | 59 | 59 | 6 |
取り方:有報の部門売上45.5億円・部門利益5.2億円を使い、数量は推定(1kgあたり四百五十円台と置いた)。数量は電子機器・建材の難燃需要が横ばいで10年1.0倍、価格は中国の供給過剰で物価を下回る1.30倍。
ヘルスサポート
人工透析用薬剤の原料など。売上の約13%。
| 数量出荷量(トン,推定) | 価格平均単価(万円/トン,名目,推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,000 | 35 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4,000 | 46 | 18 | 1 |
取り方:有報の部門売上14.2億円・部門利益1.1億円を使い、数量は推定。高齢化で透析需要は底堅く10年1.0倍、価格は物価をやや下回る1.30倍(単価見直しは進んだが、薬価の事情で上げ幅は限られる)。
リスクと懸念
大型案件の終了と谷
直近の急回復は、医薬の大型案件とスポット案件に支えられている。案件が終わるか延期されれば、売上は数年で2割以上動く。前の期は営業赤字だった。
難燃剤の需要と値崩れ
難燃剤は汎用に近く、中国の増産と臭素の市況に左右される。単価の見直しが元に戻れば、部門利益はすぐ数分の1になる。前の期は設備の減損も出た。
全社費用の重さ
持株会社の費用が年11億円あり、部門の利益の6割を食う。物価で増えるため、部門の利益が横ばいなら営業利益は縮む。
顧客と原料の集中
第一工業製薬と中尾薬品で売上の2割強。医薬は開発中止で案件が止まる。臭素の調達先の事情で、原価が急に動くこともある。
現金が戻らない構造
配当は利益の1割強で、自社株買いはない。東ソーが約2割を持ち、少数株主が使い道を決めにくい。現金が積み上がるほど自己資本利益率は下がる。
新設備の回収
福山の事務所棟と製造設備の増設は、直近期だけで17億円の投資だった。稼働が上がらなければ、償却だけが残る。
今後の分かれ目
- 医薬の大型案件が追加で決まり、福山の増設が稼働する
- ファインケミカルの数量が1.5倍に近づき、営業利益率は10%に乗る。やや楽観から楽観の筋書きに寄る。
- 難燃剤の単価が元に戻り、臭素が急騰する
- 部門利益は赤字に近づき、全社の営業利益は半分に落ちる。やや悲観の筋書きに寄る。
- 配当性向を3割以上に引き上げる、または自社株買いを始める
- 現金の戻り方の評価を上げる余地が出る。事業の価値は変わらず、全体の評価が上がる。
- 東ソーが持株比率を引き上げる、または再編を提案する
- 純現金と事業に上乗せがつく可能性がある。ただ材料はなく、織り込まない。
- 全社費用の削減が公表される
- 部門利益の伸びがそのまま営業利益に出る。中期計画の見直しが焦点になる。
見ておくもの
- 医薬受託の大型案件の受注と立ち上がり
- 難燃剤の単価と臭素の市況
- 全社費用の動き
- 中期計画の見直しと配当方針
- 東ソーの持株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。10年後の自己資本利益率は5〜8%台で資本コスト8.25%に届かず、正当化PERの9割以下に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。余った現金は運転資金などを引いた18億円で、東ソーが約2割を持ち配当が利益の1割強にとどまるため戻り方0.5とした。政策保有株は配当が利益に入っているので足していない。新リース会計基準の影響は小さいとみて、10年後は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.65 倍・やや楽観 PER 9.5→12.12 倍・中立 PER 8.8→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。