結論
カーリットは、爆薬と化学品を祖業とする素材メーカーだ。稼ぎの中心は、ロケットや防衛装備に使う過塩素酸アンモニウム(以下 AP)、産業用爆薬と保安炎筒、電子部品向けの材料、電池の受託試験である。ほかに金属加工と飲料の受託製造がある。筆者の結論は「やや割高」。事業は堅いが、今の値段は成長の先まで払っている。
いちばんの強みは、APを国内で作れるのが当社だけという点だ。宇宙と防衛の需要が増え、会社は生産能力を 2〜3 倍にしている。ただ、AP が全社の売上に占める割合はまだ小さい。利益を動かすのは数年先になる。
弱みは、稼ぐ力に対して資本が厚すぎることだ。自己資本利益率(ROE)は 7% 台で、株主が求める 8% に届かない。しかも今後 3 年で 210 億円を投じ、うち 90 億円は借入で賄う。純現金に近かった会社が、借金のある会社に変わる。
今期は営業利益が 32 億円と、いったん足踏みする見込みだ。10 年後の中立の営業利益は今の 1.45 倍ほどで、大半は物価の分である。配当を足しても年率 4% 台で、資本コストを下回る。確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額を 3 割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「事業は悪くないが、値段が合わない」会社だ。AP の独占と受託試験の技術は、10 年後も残る。経営も、利益率を 3% 台から 9% 台へ引き上げた実績がある。
しかし、株主が知りたいのは「入れたお金がどれだけ稼ぐか」だ。この会社の ROE は 7% 台で、求める 8% に届かない。そこへ今後 3 年で 210 億円を新しい設備に入れる。その稼ぎが資本コストを超えるかどうかは、AP と固体推進薬の量産が軌道に乗るかで決まる。まだ証明されていない。
利益の質も気になる。足元の増益は、価格の適正化とコスト削減の効果が大きい。これは一度きりに近く、毎年続く成長ではない。利益の安定した金属加工や爆薬は成熟市場で、物価の分しか伸びない。
安全域は薄い。中立の 10 年後に配当を足しても、年率の収益は 4% 台だ。悲観の筋書きでは、借金を抱えたまま利益が大きく減る。評価を変える材料は二つある。AP の全面稼働後の利益と、固体推進薬の受注だ。この二つが見えるまで、筆者は成長を前払いする気になれない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは大きく四つに分かれる。いちばん大きいのが化学品で、売上の約 6 割を占める。中身は多彩だ。一つ目は化薬で、産業用の爆薬、自動車に積む緊急保安炎筒、高速道路の信号炎管を作る。需要は国内に限られ、増減は小さい。
二つ目は化成品だ。ロケットの固体推進薬に使う AP のほか、紙パルプの漂白に使う塩素酸ナトリウム、電気分解に使う電極がある。AP と電極は伸びているが、塩素酸ナトリウムは紙の需要減で細っている。
三つ目は電子と評価の分野だ。コンデンサ用の電解液と導電性高分子は、AI サーバーの需要で動き出した。電池や危険物の受託試験は、国内で最大級の設備を持つ。小口径のシリコンウェーハも作るが、在庫調整で苦戦している。
残りの四割は化学品の外にある。金属加工は、焼却炉や製鉄所に使う耐熱の金物と、建設機械向けの金属部品だ。ボトリングは、飲料メーカーから頼まれてペットボトルと缶に中身を詰める。エンジニアリングは塗装、設備工事、構造設計である。
利益の質は事業ごとにまるで違う。AP と受託試験は利益率が高く、ウェーハと飲料の受託は薄い。全社の利益率が 1 割弱なのは、高い所と低い所の平均だからだ。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり他社がまねできない強みは、「危険物を安全に作り、評価できる」という許可と経験にある。AP は国内唯一の工業生産で、専用の電極を自社で作り、水力発電所の電力を使う。火薬類の製造は許可が要るので、新規の参入はまず起きない。受託試験も、大規模な危険性評価ができる設備は国内で珍しい。
ただし、堀が効くのは一部にすぎない。金属加工と飲料の受託は、顧客が値段を決める。塩素酸ナトリウムとセラミックは、市場そのものが縮んでいる。
資本の使い方は評価が分かれる。2022 年 3 月期に 7% 台へ上がった営業利益率は、価格の適正化とコスト削減で 2026 年 3 月期に 9.5% まで来た。ここは経営の実績だ。一方、前の中計の「利益率 3 ポイント上げ」は届かず、ROE は 7% 台にとどまる。
財務は今は堅い。自己資本比率は 69% ほどあった。ただ増産投資で 66% 台に下がり、純現金はなくなった。火薬を扱う会社なので、事故は許可と信用に直結する。筆者は、これを数字に出ない弱点と見ている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社の市場は、一つの業界ではなく四つの別々の需要の寄せ集めだ。景気より、国の予算や顧客の設備の動きで利益が決まる。
宇宙・防衛は構造が変わった局面にある。H3 ロケットや民間ロケットが増え、防衛費も伸びる中で、固体推進薬の原料である AP の需要は先に見通せる。ただし AP は海外に売れず、市場は国内に限られる。固体推進薬そのものでは、すでに手がける会社があり、当社は原料の供給者から完成品の側へ踏み込む。顧客と競う場面が出るかもしれない。
電子材料は、AI サーバーとスマートフォン向けのコンデンサ材料が立ち上がる。小口径ウェーハは国内の担い手が減ってニッチになったが、車載とパワー半導体の在庫調整が長引いている。電池の受託試験は、海外の車載電池の開発が一巡する一方、国内の開発需要はなお強い。
基盤の化薬や化成品は成熟している。産業用爆薬は石灰石の砕石需要が減り、塩素酸ナトリウムは紙パルプの需要減で細る。金属加工は炉の定期修繕に支えられる安定市場で、数量は伸びない。
業種全体の見方では、汎用品は中国の追い上げで名目の伸びが年 2〜3% にとどまり、特殊品は年 5〜7% が見込まれる。この会社の基盤は前者、電子と評価は後者に近い。
資本政策と M&A
還元の方針は総還元性向 30% で、配当は業績に連動させ、自社株買いは財務を見て決める。実績は方針より厚い。2026 年 3 月期は配当 8.6 億円と自社株買い 16.2 億円で、純利益の 8 割台を返した。今期も上限 10 億円の自社株買いを 8 月から行った。
これからは様相が変わる。中計 3 年の設備投資は 210 億円で、うち 90 億円を借入で賄う。2026 年 3 月期の営業キャッシュフローは 16.6 億円と薄く、投資は 57.1 億円に達した。純現金だった会社が純借金に回り、借り換えの金利は 3.5% 前後になる。
政策保有株、つまり取引先の持ち合い株は、純資産比 15% 未満が目標だ。中計の資金計画には、20 億円の縮減が入っている。大株主ではみずほ銀行と共同保有者で 11% ほどで、丸紅などの持ち合いの売りが続く。
M&A は大型のものがなく、2024 年にウェーハ事業の三社を合併した程度だ。10 年以内に買収を受ける確率は外部の推計で 23% ほど。AP は防衛にかかわる技術なので、外資への売却は考えにくい。
株主優待は、保有株数と保有期間に応じた少額のギフト券を配る。費用の開示は見つからなかったが、額が小さく、年 1 億円には届かない規模とみる。価値には響かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AP は、これから数年で売上が 2 倍以上になる。国内唯一の供給者で、能力を 2〜3 倍にする第 2 期・第 3 期の工事が 2026 年度中に終わり、2027 年度から全面稼働に入る。需要の源は、H3 ロケットと国が進める防衛装備の増産で、先が見えている。海外に売れない代わりに、国内の需要を独り占めできる。
さらに会社は、原料の供給から固体推進薬そのものの製造へ踏み出す。赤城工場に 80 億円超の設備を入れ、完成品の利益も取りにいく。想定利益率は 1 割から 3 割で、全社の平均を大きく上回る。
成長の第二の柱は、受託試験と電子材料だ。電池の評価は国内の開発需要がなお強く、利益率は 3〜5 割を見込む。AI サーバー向けの電解液や導電性高分子も立ち上がる。ウェーハも、在庫調整が終われば稼働率が戻り、赤字が消える。
会社は 2035 年度に営業利益 60 億円を掲げる。前の中計では、営業利益 30 億円の目標を最終年度より前に達成した。物価分の値上げが通る環境で重点領域が育てば、10 年後の利益は今の 2 倍に届く。ROE は 8% を超え、資本コストを上回る。
慎重な見方
設備投資が先に出て、稼ぎが追いつかない。210 億円という額は、今の自己資本の半分を超える。しかも 90 億円は借入だ。能力を 2〜3 倍にしても、需要が追いつかなければ設備は遊ぶ。国内唯一でも買い手は限られ、値段の交渉は買い手が握る。
固体推進薬の量産は、これから始める段階だ。ロケットや防衛向けの推進薬には先に手がける会社があり、当社は原料の供給者から競争相手になる。顧客との関係を傷めるおそれもある。
足元の数字も冴えない。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、営業利益が 4 割減った。労務費、原材料費、償却の増加が利益を削り、ボトリングは改修で 1 ラインが止まった。
成長を担うはずの電子と評価は、まだ利益が小さい。ウェーハは固定資産の減損を出し、受託試験は償却で減益になった。基盤の化薬、化成品、金属加工は成熟していて、物価の分しか伸びない。
利益率は過去最高の 9.5% にある。値上げと費用削減で、取れる分は取った。事故が 1 件起きれば許可と信用に響く。純現金が消え、金利が上がる中で借金を増やす会社に、高い倍率を付ける理由は薄い。
どちらに重みを置いたか
AP と受託試験の堀は本物で、成長の方向も正しい。ただ、強気の見方は計画どおりに育つことを前提にしている。慎重な見方は、資本の稼ぎがまだ証明されていない点を突く。後者のほうが強いと判断した。今の ROE が資本コストに届かず、これから借金で投資を積むからだ。確率は中立に 38% を置き、慎重側へわずかに寄せた。独占の事業と国の需要は崩れにくいので、悲観は 11% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,201 円489 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 571 円127 億円)。 今の値に割り戻すと 1,465 円326 億円、今との差 −14.1%、 期待の年率 +5.0%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,725 円828 億円 | 821 円183 億円 | +166.4% | +10.3% | 318 円71 億円 |
| やや楽観 | 21% | 2,931 円652 億円 | 693 円154 億円 | +112.4% | +7.8% | 761 円169 億円 |
| 中立 | 38% | 2,511 円558 億円 | 621 円138 億円 | +83.6% | +6.3% | 1,190 円265 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,450 円323 億円 | 477 円106 億円 | +13.0% | +1.2% | 443 円99 億円 |
| 悲観 | 11% | 331 円74 億円 | 203 円45 億円 | −68.7% | −11.0% | 59 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,201 円489 億円 | 571 円127 億円 | +62.4% | +5.0% | 2,771 円616 億円 |
今の株価時価総額 1,706 円379 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% AP の増産と固体推進薬、電子と評価が重なって当たる 利益 56 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 3,725 円828 億円
三つの成長候補がそろって当たる姿だ。AP の増産は予定どおり 2027 年度に全面稼働し、防衛向けの固体推進薬の量産が加わる。数量は実質で今の 2.4 倍に増え、利益率は 25% に乗る。国の調達の値段も、物価を上回る分が通る。
電池と危険物の受託試験は国内の開発需要を取り込み、電解液と導電性高分子は AI サーバー向けで伸びる。ウェーハも稼働率が戻って赤字が消える。基盤の化薬と金属加工は、物価並みを守る。
営業利益は今の約 2 倍の 68 億円で、会社の 2035 年度の目標を上回る。ROE は 8% 台に上がる。それでも倍率は、成熟した会社の水準にとどまる。
- 宇宙・防衛向け推進薬:数量 358(国内の宇宙・防衛向け固体推進薬の関連需要(原料と完成品、実質・億円。推定))× 価格 1.40(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 87 億円・営業利益 22 億円。売上 87 億円・営業利益率 25.0%
- 化薬・化成品・セラミック(基盤):数量 800(国内の産業用爆薬・保安炎筒・塩素酸ナトリウム・電極・セラミックの関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 145 億円・営業利益 15 億円。売上 145 億円・営業利益率 10.0%
- 電子材料・受託評価・シリコンウェーハ:数量 778(電解液・導電性高分子・受託試験・小口径ウェーハの関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 141 億円・営業利益 15 億円。売上 141 億円・営業利益率 10.5%
- 金属加工:数量 1,232(国内の耐熱炉内金物・金属スプリング・プレス品の関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 102 億円・営業利益 10 億円。売上 102 億円・営業利益率 10.0%
- ボトリング:数量 1,055(国内の飲料の受託製造市場(実質・億円。推定))× 価格 1.30(価格指数(今 1.00、10 年で 1.30 を中立。加工料は荷主に押されて物価満額は難しい))→ 売上 62 億円・営業利益 4 億円。売上 62 億円・営業利益率 7.0%
- エンジニアリングサービス:数量 700(国内の塗装・設備工事・構造設計の外部向け市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 38 億円・営業利益 6 億円。売上 38 億円・営業利益率 17.0%
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.5 倍、時価総額 815 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AP の増産、固体推進薬の量産、電子と評価の回復がそろう必要がある。10 年なら起こりうるが、三つが同時に当たる確率は高くない。
やや楽観 21% AP が計画どおり育ち、電子と評価が小さく伸びる 利益 47 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 2,931 円652 億円
AP が計画どおり育ち、電子と評価が小さく伸びる姿だ。AP の数量は実質で今の 2.2 倍になり、利益率は 2 割台に上がる。固体推進薬は量産に入るが、利益への寄与は後半に偏る。
受託試験とコンデンサ材料は市場並みに伸び、ウェーハは赤字を抜けて小さな黒字になる。基盤は塩素酸ナトリウムの縮みを爆薬と電極の値上げで補い、横ばいを保つ。
営業利益は今の約 1.7 倍の 58 億円で、会社の 2035 年度の目標に近い。利益率は 10% を超えるが、これは AP の割合が増えた結果である。配当と自社株買いで利益の 4 割を返す。
- 宇宙・防衛向け推進薬:数量 323(国内の宇宙・防衛向け固体推進薬の関連需要(原料と完成品、実質・億円。推定))× 価格 1.37(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 77 億円・営業利益 16 億円。売上 77 億円・営業利益率 21.0%
- 化薬・化成品・セラミック(基盤):数量 778(国内の産業用爆薬・保安炎筒・塩素酸ナトリウム・電極・セラミックの関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 141 億円・営業利益 13 億円。売上 141 億円・営業利益率 9.5%
- 電子材料・受託評価・シリコンウェーハ:数量 741(電解液・導電性高分子・受託試験・小口径ウェーハの関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 134 億円・営業利益 12 億円。売上 134 億円・営業利益率 9.0%
- 金属加工:数量 1,200(国内の耐熱炉内金物・金属スプリング・プレス品の関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 99 億円・営業利益 10 億円。売上 99 億円・営業利益率 9.8%
- ボトリング:数量 1,033(国内の飲料の受託製造市場(実質・億円。推定))× 価格 1.30(価格指数(今 1.00、10 年で 1.30 を中立。加工料は荷主に押されて物価満額は難しい))→ 売上 61 億円・営業利益 4 億円。売上 61 億円・営業利益率 6.7%
- エンジニアリングサービス:数量 700(国内の塗装・設備工事・構造設計の外部向け市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 38 億円・営業利益 6 億円。売上 38 億円・営業利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.45 倍、時価総額 631 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AP は国内唯一で需要の方向がはっきりしており、会社も前の中計で目標を達成した実績がある。上に振れる材料は具体的に見える。
中立 38% 中立:物価の分に AP の伸びが乗る 利益 40 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,511 円558 億円
物価の分に、AP の伸びが乗る姿だ。AP は能力が 2027 年度に全面稼働し、数量は実質で今の約 2 倍になる。利益率は 18% と、会社の想定 1〜3 割の中ほどにとどまる。固体推進薬は小さな量産にとどまる。
基盤は、塩素酸ナトリウムとセラミックの縮みで数量が 5% ほど減るが、値段は物価並みに上がる。電子と評価は数量が 1.2 倍弱で、ウェーハは黒字に戻る。金属加工は炉の修繕需要で横ばい、飲料の受託は加工料が物価に届かない。
営業利益は今の 1.45 倍の 50 億円、利益率は過去最高の 9.5% で足踏みする。ROE は 6.5% と資本コストに届かず、配当と自社株買いで利益の 4 割を返しても、自己資本はふくらむ。優良だが、成長を高く評価できる会社にはならない。
- 宇宙・防衛向け推進薬:数量 289(国内の宇宙・防衛向け固体推進薬の関連需要(原料と完成品、実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 67 億円・営業利益 12 億円。売上 67 億円・営業利益率 18.0%
- 化薬・化成品・セラミック(基盤):数量 763(国内の産業用爆薬・保安炎筒・塩素酸ナトリウム・電極・セラミックの関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 138 億円・営業利益 12 億円。売上 138 億円・営業利益率 9.0%
- 電子材料・受託評価・シリコンウェーハ:数量 704(電解液・導電性高分子・受託試験・小口径ウェーハの関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 127 億円・営業利益 10 億円。売上 127 億円・営業利益率 8.0%
- 金属加工:数量 1,168(国内の耐熱炉内金物・金属スプリング・プレス品の関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 97 億円・営業利益 9 億円。売上 96 億円・営業利益率 9.5%
- ボトリング:数量 1,033(国内の飲料の受託製造市場(実質・億円。推定))× 価格 1.30(価格指数(今 1.00、10 年で 1.30 を中立。加工料は荷主に押されて物価満額は難しい))→ 売上 61 億円・営業利益 4 億円。売上 61 億円・営業利益率 6.5%
- エンジニアリングサービス:数量 700(国内の塗装・設備工事・構造設計の外部向け市場(実質・億円。推定))× 価格 1.34(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 38 億円・営業利益 6 億円。売上 38 億円・営業利益率 15.0%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 533 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AP は物価を超えて伸びるが、他は成熟事業で物価止まり。利益率は過去最高にとどまる。落としどころとして最も厚く置いた。
やや悲観 23% AP の立ち上がりが遅れ、借入だけが残る 利益 27 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,450 円323 億円
AP の立ち上がりが遅れ、電子と評価が伸びない姿だ。AP は需要の増加が予算の制約で緩やかになり、数量は今の 1.5 倍にとどまる。調達価格は国に押され、物価の 1.28 倍しか上がらない。固体推進薬は量産の遅れで利益が出ない。
電子材料は中国の追い上げで値段が下がり、ウェーハも低稼働が続く。基盤は物価に届かない値上げで、利益率が 8% 台に下がる。ボトリングは工事で売上が減り、競争で加工料も上がらない。
営業利益は今と同じ 35 億円前後で、物価を考えると実質は 2 割強減る。増産の借入が重く、純利益の割合も下がる。ROE は 4% 台。優良会社の評価は付かず、倍率は縮む。
- 宇宙・防衛向け推進薬:数量 219(国内の宇宙・防衛向け固体推進薬の関連需要(原料と完成品、実質・億円。推定))× 価格 1.28(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 49 億円・営業利益 7 億円。売上 49 億円・営業利益率 14.0%
- 化薬・化成品・セラミック(基盤):数量 719(国内の産業用爆薬・保安炎筒・塩素酸ナトリウム・電極・セラミックの関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.28(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 124 億円・営業利益 11 億円。売上 124 億円・営業利益率 8.5%
- 電子材料・受託評価・シリコンウェーハ:数量 607(電解液・導電性高分子・受託試験・小口径ウェーハの関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.22(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 100 億円・営業利益 6 億円。売上 100 億円・営業利益率 6.0%
- 金属加工:数量 1,103(国内の耐熱炉内金物・金属スプリング・プレス品の関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.30(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 88 億円・営業利益 8 億円。売上 88 億円・営業利益率 9.0%
- ボトリング:数量 967(国内の飲料の受託製造市場(実質・億円。推定))× 価格 1.27(価格指数(今 1.00、10 年で 1.30 を中立。加工料は荷主に押されて物価満額は難しい))→ 売上 56 億円・営業利益 3 億円。売上 56 億円・営業利益率 5.8%
- エンジニアリングサービス:数量 650(国内の塗装・設備工事・構造設計の外部向け市場(実質・億円。推定))× 価格 1.30(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 34 億円・営業利益 4 億円。売上 34 億円・営業利益率 13.0%
倍率:ROE 4.7% で k に届かない。PER の上限は 12.5 倍。AP の遅れと電子の停滞で利益の質が落ちるので、上限の 8 割の 10 倍に置いた。
確率:第 1 四半期の営業利益は 4 割減で、借入を増やして投資する局面。AP の立ち上がりの遅れや電子の停滞は現実味がある。
悲観 11% 構造的な負け:事故と発注の分散で増産が実らない 利益 9 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 331 円74 億円
構造的な負けの姿だ。火薬類の事故か許可の問題で、増産が長く止まる。国の発注は他社に分かれ、AP の数量は今から伸びない。調達価格は抑えられ、固体推進薬の量産は実らない。
電子材料は価格競争で利益が消え、ウェーハは赤字が続いて撤退に近づく。ボトリングは主要な荷主を失い、金属加工は炉の需要が縮む。基盤の塩素酸ナトリウムとセラミックは衰えたまま。営業利益は 14 億円と、今の 4 割に落ちる。
210 億円の設備は十分に回らず、借入が重くのしかかる。ROE は 2% を割り、倍率も低くなる。それでも会社が傾くほどではなく、事業の一部を売って立て直す余地は残る。
- 宇宙・防衛向け推進薬:数量 127(国内の宇宙・防衛向け固体推進薬の関連需要(原料と完成品、実質・億円。推定))× 価格 1.20(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。売上 26 億円・営業利益率 8.0%
- 化薬・化成品・セラミック(基盤):数量 607(国内の産業用爆薬・保安炎筒・塩素酸ナトリウム・電極・セラミックの関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.18(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 97 億円・営業利益 6 億円。売上 97 億円・営業利益率 6.0%
- 電子材料・受託評価・シリコンウェーハ:数量 459(電解液・導電性高分子・受託試験・小口径ウェーハの関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.12(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 69 億円・営業利益 1 億円。売上 69 億円・営業利益率 2.0%
- 金属加工:数量 908(国内の耐熱炉内金物・金属スプリング・プレス品の関連市場(実質・億円。推定))× 価格 1.22(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 68 億円・営業利益 4 億円。売上 68 億円・営業利益率 6.0%
- ボトリング:数量 835(国内の飲料の受託製造市場(実質・億円。推定))× 価格 1.18(価格指数(今 1.00、10 年で 1.30 を中立。加工料は荷主に押されて物価満額は難しい))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。売上 45 億円・営業利益率 3.5%
- エンジニアリングサービス:数量 500(国内の塗装・設備工事・構造設計の外部向け市場(実質・億円。推定))× 価格 1.20(価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。売上 24 億円・営業利益率 9.0%
倍率:ROE 2% を割る構造的な負け。PER の上限 12.5 倍に対し、事故と発注の分散で稼ぎの持続に疑いがあるため、純利益に 8 倍を置いた。稼ぐ力(純利益÷k)の範囲内に収め、増産設備や持ち合い株を売れば借入は返せるので会社が傾く姿ではない。
確率:事故、国の発注の分散、量産の失敗が重なる姿。独占と国の需要が守りになるので 11% にとどめ、悲観が 5% 未満の水準にはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
宇宙・防衛向け推進薬
過塩素酸アンモニウム(ロケット・防衛用固体推進薬の主原料)と、これから量産に入る固体推進薬。国内で工業生産するのは当社だけ。
| 数量国内の宇宙・防衛向け固体推進薬の関連需要(原料と完成品、実質・億円。推定) | 価格価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 1.00 | 26 | 6 |
| 10 年後 中立 | 289 | 1.34 | 67 | 12 |
取り方:開示は売上の伸びの指数だけ(2024 年度を 100 として 2027 年度 220・2035 年度 440、想定営業利益率 10〜30%)。中計の売上増加分(約 20 億円)が指数の +120% にあたるとみて、足元の売上を約 26 億円、利益率を 2 割強と置いた。市場の約 150 億円と当社の取り分約 17% は、売上から逆算した推定で幅が大きい(取り分の増減は数量側に含める)。物価の分は価格指数に入れた。
化薬・化成品・セラミック(基盤)
産業用爆薬・自動車用の緊急保安炎筒・高速道路の信号炎管、塩素酸ナトリウム、電解用の電極、過塩素酸、セラミック砥粒。国内の成熟した需要が中心。
| 数量国内の産業用爆薬・保安炎筒・塩素酸ナトリウム・電極・セラミックの関連市場(実質・億円。推定) | 価格価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 1.00 | 108 | 10 |
| 10 年後 中立 | 763 | 1.34 | 138 | 12 |
取り方:化学品セグメントの売上(9 か月累計 161 億円の通期換算で約 215 億円)から、宇宙・防衛向けと電子等を除いた残りを基盤と置き約 108 億円とした(開示は分野別の増減だけ)。市場を約 800 億円、当社の取り分を 1 割台前半と推定した。塩素酸ナトリウムとセラミックは微減の前提。
電子材料・受託評価・シリコンウェーハ
コンデンサ用の電解液・導電性高分子、電池や危険物の受託試験、小口径シリコンウェーハ。中計で注力・育成と位置づけた成長候補。
| 数量電解液・導電性高分子・受託試験・小口径ウェーハの関連市場(実質・億円。推定) | 価格価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 1.00 | 81 | 5 |
| 10 年後 中立 | 704 | 1.34 | 127 | 10 |
取り方:化学品の残りを電子材料約 30 億円、受託評価約 25 億円、ウェーハ約 26 億円の合計約 81 億円と置いた(分野別の金額は開示が無く推定)。市場は約 600 億円、取り分は 1 割台前半。受託評価が償却増で伸び悩み、ウェーハが稼働率を落としたため、利益率は 6% 台と低い。
金属加工
焼却炉・化学プラント・製鉄所向けの耐熱炉内金物(アンカー)、集じん機のリテーナ、建設機械向けの座金・スプリング・プレス品。
| 数量国内の耐熱炉内金物・金属スプリング・プレス品の関連市場(実質・億円。推定) | 価格価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,200 | 1.00 | 74 | 7 |
| 10 年後 中立 | 1,168 | 1.34 | 97 | 9 |
取り方:9 か月の売上 55.8 億円を通期に直して約 74 億円。需要は炉の定期修繕に伴う交換で、市場を約 1,200 億円、取り分を 6% 台とみた(市場の金額は開示が無く推定)。利益率は 1 割ほどで、価格の適正化と生産性の向上が効いた。
ボトリング
ペットボトル・缶飲料の受託製造(子会社ジェーシーボトリング)。無菌充填・ホットパック・缶の三種のライン。
| 数量国内の飲料の受託製造市場(実質・億円。推定) | 価格価格指数(今 1.00、10 年で 1.30 を中立。加工料は荷主に押されて物価満額は難しい) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 1.00 | 46 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,033 | 1.30 | 61 | 4 |
取り方:売上は 2024 年度の構成比 11.7% と今期の動きから約 45.5 億円と推定。市場を約 1,000 億円、取り分を 4% 台半ばとみた。2027 年 1 月稼働予定の無菌充填ラインに約 40 億円を入れる。受託の加工料は荷主の力が強く、物価満額の値上げは通りにくいとして価格の指数を 1.30 に置いた。
エンジニアリングサービス
塗料の販売と建設機械向けの塗装請負、設備・建築工事、上下水道や耐震補強の構造設計。
| 数量国内の塗装・設備工事・構造設計の外部向け市場(実質・億円。推定) | 価格価格指数(今 1.00、10 年で物価並みなら 1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 1.00 | 28 | 5 |
| 10 年後 中立 | 700 | 1.34 | 38 | 6 |
取り方:9 か月の売上 40.7 億円のうち大部分はグループ内の工事(化学品の増産設備)で連結では消去される。外部向けの売上は約 28 億円と推定し、市場を約 700 億円、取り分を 4% とみた。内部工事は投資計画が終われば減るので、外部だけで置いた。
リスクと懸念
増産投資が借入で膨らむ
中計 3 年の設備投資は 210 億円で、うち 90 億円を借入で賄う。2026 年 3 月期は営業キャッシュフロー 16.6 億円に対し投資が 57.1 億円だった。借り換えの金利は 3.5% 前後とみており、利息が利益を削る。稼ぎの立ち上がりが遅れれば、財務の余裕が早く減る。
AP の需要が国の予算と調達価格に頼る
AP は国内唯一の供給でも、海外に売れず、買い手は宇宙・防衛の関連メーカーに限られる。需要は国の予算で決まり、調達の値段は買い手が握る。増産した能力に需要が追いつかないと、設備の稼働率が上がらず、利益率が想定の 1〜3 割に届かない。
固体推進薬の量産が未証明
会社は原料の供給から固体推進薬そのものの製造へ進む。赤城工場に 80 億円超を投じるが、完成品は先に手がける会社があり、品質の認定と受注はこれからだ。顧客である推進薬メーカーと競うことになれば、原料の販売にも影響しうる。
火薬類の事故と許可
爆薬・保安炎筒・AP はいずれも火薬類の許可の上に成り立つ。一度の事故で操業が止まれば、防衛・宇宙の供給責任だけでなく、増産計画と地域の理解にも響く。事故は確率が低くても起きたときの損失が大きく、数字に出にくい。
ウェーハと電子材料の不振
小口径シリコンウェーハは車載とパワー半導体の在庫調整で稼働率が低く、固定資産の減損を計上した。受託試験も償却増で減益だった。成長候補とされる分野が利益を生まない期間が長引くと、全社の利益は基盤事業の物価分だけに頼る。
基盤事業の縮みと利益率の天井
塩素酸ナトリウムは紙パルプの需要減、産業用爆薬は砕石需要の減で細る。営業利益率は過去最高の 9.5% にあり、価格の適正化とコスト削減はほぼ取り切った。今期の第 1 四半期は営業利益が 4 割減り、費用の増加が価格に追いつかない局面がある。
ボトリングの荷主依存
飲料の受託は、少数の荷主の発注で稼働が決まる。2027 年 1 月稼働予定の無菌充填ラインに約 40 億円を入れるが、加工料の交渉力は荷主が上で、物価の分を転嫁しにくい。改修工事で 1 ラインが止まれば売上と利益が落ちる。
今後の分かれ目
- AP の第 2 期・第 3 期工事が計画どおり終わり、2027 年度から全面稼働に入ったら
- AP の数量と利益率の前提を上げ、楽観・やや楽観の確率を引き上げる。
- 固体推進薬で防衛向けの量産受注が確定したら
- 重点領域の利益率を 2 割台前半に置き直し、10 年の営業利益を 1 割ほど上方に直す。
- AP の需要が国の予算の頭打ちで伸びなくなったら
- AP の数量を今の 1.5 倍以下に下げ、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。
- 火薬類の事故で主力工場が長く止まったら
- 増産の遅れと許可の見直しを見込み、悲観の確率を引き上げる。
- シリコンウェーハと受託試験が黒字を安定させたら
- 電子・評価の利益率を 1 割に置き直し、中立の営業利益を上げる。
- 持ち合い株の売却と借入の圧縮で、自己資本利益率が 8% を超えて定着したら
- 倍率の上限が上がり、中立の本質価値を引き上げる。
見ておくもの
- AP の増産設備(第 2 期・第 3 期)の完成と全面稼働の時期、および防衛向け固体推進薬の受注
- 化学品セグメントの営業利益率(特に AP、受託評価、ウェーハ)
- 純有利子負債と営業キャッシュフロー(設備投資 210 億円の資金繰り)
- ボトリングの新ラインの稼働(2027 年 1 月)と荷主の発注
- 政策保有株の縮減額と自社株買いの実績
- 防衛費・宇宙関連予算の推移
倍率と資本コストの決め方
10 年の売上と利益は 6 事業の数量×価格で積み、AP の伸びは中計の指数と能力増強から置いた。資本コストは基本 7.5% に quality +0.5% で 8.0%。倍率は ROE が k に届かないため上限 1÷k の 8〜9.5 割とし、今の PER が 13 倍前後であることに寄せていない。結果の「やや割高」は、利益が物価と AP で伸びても倍率が先で縮むため。余った現金は無く、持ち合い株は配当が利益に入るので上乗せしていない。悲観は稼ぐ力(純利益÷k で約 115 億円)を超えない 74 億円とし、持ち合い株や設備の売却額は規模を確かめられず入れていない(床としては厳しめ)。リース負債は小さく新リース会計基準の影響は限定的とみて、数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.2→14.5 倍・やや楽観 PER 11.9→13.45 倍・中立 PER 11.25→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5%(業種の循環 +0.25、借金 +0.25)を足して 8.0%。AP の独占は堀ではなく需要の見通しとして筋書きに入れた。事故やガバナンスは k に足さず、悲観の筋書きで見た。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。