結論
ニイタカは、外食・ホテル・食品工場向けの業務用洗剤と固形燃料を作る会社だ。筆者の結論は、10 年の本質価値は今の時価総額を 4 割ほど上回る、割安である。
理由は三つある。第一に、洗剤は毎日使う消耗品で、顧客が一度採用すれば切り替えが少ない。製造から販売、保守までを自前で持つので、店で洗浄機の調子を見て、衛生検査まで請け負う。第二に、財務の厚みだ。自己資本比率は 68% で、純現金が時価総額の半分近くある。第三に、今の利益が谷にあることだ。来期は原材料と人件費の上昇で営業利益が 15% 減る計画で、この逆風は永続しない。
弱みは、業務用洗剤が成熟市場で、量が伸びないことだ。経営もそれを認め、歯科・農業・健康食品へ手を広げている。筆者は新領域の利益をほとんど織り込まず、洗剤の積み上げだけで割安に出るとみている。
現金の戻り方は半分に置いた。資産管理会社と持株会で 3 割超を持つ株主構成で、前の期に配当を下げた。それでも差は +10% を大きく超える。
筆者が最も気にしているのは、割安の理由を探す時の落とし穴だ。純現金が厚いから安いのではない。現金を半分しか数えず、利益率を足元の水準に抑え、倍率を下限近くに置いてもなお、事業の稼ぐ力が値段を上回る。そこに安全域があるとみている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、地味で硬い消耗品の会社である。ビジネスとして悪くない。顧客は毎月洗剤を使い、一度採用した製品を変えにくい。保守まで握ることで、競合が入り込みにくくなる。
一方で、図抜けた堀とまでは言えない。利益率は 8% 前後で、物価に連れて原材料も上がるため、儲けが勝手に膨らむことはない。10 年後も存在し、今と同じ程度に稼いでいる会社だろうと考える。
安全域は二つある。現金が時価総額の半分近くあること、利益が足元で谷にあること。この二つが重なる値段は、事業の質に比べて安い。オーナーの目で見れば、現金を使わずに眠らせる経営は不満だが、借金で背伸びをする会社よりはるかに良い。
筆者は、現金の半分が戻らないと計算しても、なお十分に割安だとみる。利益の質が良く、戻り方の改善が上振れの種になる。
逆に、経営がこの現金で大型の買収を重ねれば、評価は下がる。洗剤の成長に限界を感じて健康食品を買った前例があるからだ。筆者は、次の買収が洗剤の保守網や新領域に近い範囲にとどまるかを見ていく。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、ケミカル事業が売上の 94% を占める。業務用の洗剤、洗浄剤、除菌剤、漂白剤と、鍋物向けの固形燃料だ。顧客は外食チェーン、ホテル・旅館、スーパー、食品工場。業務用洗剤の国内シェアは約 17%、固形燃料は約 7 割と見られる。
商売の形が特徴的だ。全国の地域密着の販売店と組み、洗剤を売るだけでなく、洗浄機の保守、衛生検査、清掃まで請け負う。この保守を担うのが関係会社の JWM で、全国に 164 の拠点がある。洗剤は月ごとに使われる消耗品なので、いったん採用されると毎月の売上が続く、ストックに近い収益になる。
もう一つの柱がヘルスケア事業で、売上の約 6% を占める。乳酸菌発酵食品「OM-X」などの健康食品で、2023 年 3 月に買収したバイオバンクの事業だ。欧米や東南アジアの代理店網で海外の比率が高い。洗剤とは顧客も売り方も違い、今のところ事業としての相乗効果は小さい。
経営は洗剤の成長の限界を見て、歯科医院の除菌洗浄や農業向けの新領域を育て、ケミカルに占める洗剤の割合を 5 割まで下げる方針だ。
数字で見ると、2026 年 5 月期は売上 246 億円、営業利益 21 億円で、利益率は 8.6%。ケミカルが利益の 9 割を稼ぎ、ヘルスケアは売上の 6% で利益の 1 割。大手外食チェーン向けの洗剤の採用が増え、洗剤と固形燃料が増収を支えた。国内には東日本と西日本に生産拠点があり、災害時にも供給を止めにくい体制にしている。
販売は地域の代理店を通すので、全国の外食店に細かく届く。メーカー自身は開発、製造、保守を担い、代理店は営業と配送を担う。この分業が、大手の直販より安い費用で全国をカバーする力になっている。
優良さと弱いところ
優良さの核は、顧客を離さない仕組みと、折れにくい財務にある。
まず仕組みだ。洗剤の性能で大きな差はつけにくいが、この会社は洗剤、機器、保守、衛生検査を束ねて売る。外食チェーンにとって、店ごとに衛生水準を保つ手間を丸ごと任せられる価値は大きい。有効特許は 124 件あり、コロナ禍にはアルコールに頼らないウイルス除去剤を短期間で量産した。販売店網と開発の速さが、大手の参入を遅らせている。
次に財務だ。借金は実質ほぼなく、自己資本比率は 68%。現金は月商の 4 か月分あり、景気後退でも事業を維持できる。
弱い点も多い。原料の化学品は外から買う。値上げは通ってきたが、転嫁には数か月の遅れが出る。花王、ライオン、サラヤ、外資のエコラボなど、競合は大きい。営業利益率は 8% 前後で、強い堀を持つ会社の水準には届かない。経営の資本の使い方にも課題が残る。現金を積む一方、配当は前の期より下げた。筆者は堀を普通と置いた。
数字にも出ている。過去 10 年の営業利益率は 4〜13% の間で動き、直近は 8% 台に戻した。2021 年 5 月期の 13% はコロナ禍の除菌需要が生んだ山で、続くものではない。2023 年 5 月期の 4% は原材料高を転嫁しきれなかった谷だった。つまり、利益率の水準は原材料との綱引きで決まる。堀が薄い会社の典型的な形で、筆者は 8% 前後を中立の置き場にした。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業務用洗剤の市場は、国内で約 1,200 億円と読める成熟市場だ。外食、宿泊、食品工場が主な需要で、量は人口と外食の客数に連動する。人口減で量は年 0〜1% ほど削られるが、衛生の基準は上がり続けるので、1 店あたりの洗剤の使用量は下がりにくい。
追い風は三つある。一つは食中毒やウイルス対策で、衛生管理の基準が年々厳しくなること。二つ目は外食の人手不足で、洗浄を自動化・省力化する製品に需要が移ること。三つ目は訪日客を含む外食と宿泊の需要の底堅さだ。
向かい風は原料と規制だ。洗剤の原料は界面活性剤やアルカリなどの化学品で、為替と原油に連れて動く。化学物質の規制は広がる傾向にあり、代替原料への切り替え費用が出る。会社が来期の営業利益を 15% 減と見ているのは、この原材料高と人件費、物流費、供給の制約が重なるためだ。
競争は花王、ライオン、サラヤといった大手と外資、地場の中小が入り乱れる。商品で差をつけにくく、差が出るのは提案力と保守網である。10 年を通じて業界全体の量は 1〜2 割縮むとみるが、保守を抱える会社のシェアは上がりやすい。ニイタカは中計で国内トップシェアを掲げ、長期は 3 割を狙っている。筆者は中立で、そこまでの上昇を置かない。
価格の面では、洗剤の単価は原材料と人件費の上昇で物価並みに上がる。ただ、大手外食チェーンとの交渉は厳しく、転嫁は遅れて通る。この遅れが、利益率を 2023 年 5 月期の 4% まで押し下げた経緯がある。今回の来期の減益計画も、同じ構図に見える。10 年で見れば、遅れは物価並みの転嫁で取り戻すのが普通だ。
資本政策と M&A
資本政策は、割安の見え方を左右する要因だ。
配当は DOE(自己資本に対する配当)3% を基準とする。前の期は DOE 4% 台だったが、26 年 5 月期は 3% 台に下げ、来期は増配を計画する。自社株買いは「利益が上振れた時に機動的に」とされ、積極的ではない。
その結果、純現金は 2020 年 5 月期の 5 億円から 68 億円まで積み上がった。時価総額の 46% にあたる。余った分は 45 億円と見て、戻り方を 0.5 とした。筆頭株主は資産管理会社のニイタカSC(19.8%)で、社員持株会などと合わせ 3 割超になる。株主が使い道に意見する余地は小さい。
M&A の実績は、2023 年のバイオバンクの買収 1 件だ。健康食品は洗剤と異質で、売上は前の期に 9% 減った。買収で現金を使うほど、質が下がる。投資有価証券は 3 億円まで減り、売却益を特別利益に計上した。この流れは続く。
中期経営計画 NX2028 は、2028 年 5 月期に売上 275 億円、営業利益 18 億円、ROE 8%、DOE 3% を目標にする。営業利益の目標は今期実績の 21 億円より低い。資本の効率を引き上げる意志は、数字には出ていない。ここが筆者の最大の不満だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
洗剤は毎月使う消耗品で、顧客が変えにくい。大手外食チェーンへの採用が進み、前年の第1四半期から経常利益が 4 割増えた。値上げも通ってきた。足元の利益は原材料高で谷にあり、来期の営業利益 15% 減は一過性のコスト増による。実際、今期は営業利益が 10% 増え、特別利益を除いても増益だった。自己資本比率は 68%、純現金は時価総額の半分近くある。中計では ROE 8% と DOE 3% を明示し、長期は売上 400 億円・営業利益 40 億円を掲げた。国内シェア 17% を伸ばせば量が増え、保守網の拡大で利益率も上がる。歯科・農業・海外の新領域が育てば、洗剤の成長の限界を超えられる。現金が自社株買いに回れば、1 株の価値は大きく上がる。保有する土地は簿価 30 億円で、取得原価のままなので、含み益の余地もある。さらに、金利の上昇で現金の利息が増え、営業外の収益が年 1 億円以上増える。事業が横ばいでも、純利益は押し上がる。ヘルスケアの減収も、海外の代理店網が動けば反転する。
慎重な見方
業務用洗剤は成熟市場で、量は人口とともに減る。差別化が難しく、大手が価格で攻めれば利益率は簡単に落ちる。来期の営業利益が 15% 減る計画が示すとおり、原材料と人件費の上昇を転嫁しきれていない。規制対象物質が広がれば、さらに費用がかさむ。ヘルスケアは前の期に 9% 減収で、買収の成果は出ていない。現金は積み上がる一方で、配当は前の期に下げられた。資産管理会社と持株会で 3 割超を押さえる株主構成では、少数株主が使い道に口を出せない。中計の目標も ROE 8% にとどまり、資本コストを超える意識が薄い。純現金が厚いのは、使わずに眠らせているにすぎない。割安に見えるのは、成長しない会社に市場が払う正当な値段だ。さらに、化学品メーカーは原料の価格に利益を左右される。2023 年 5 月期には営業利益が半分に落ち、転嫁の遅れという弱点を示した。同じことが再び起きないとは言えない。新領域の歯科・農業はまだ売上が小さく、洗剤の減速を補うには時間がかかる。成長を掲げる計画の数字が、今期実績より低いことが現実を物語る。
どちらに重みを置いたか
現金の戻り方を半分に置いても、事業の稼ぐ力だけで今の時価総額を上回る。慎重な見方の指摘(成熟市場・転嫁の遅れ・資本政策)は、中立の利益率を足元の水準に抑え、PER を下限近くに置き、悲観に 1 割を割くことで織り込んだ。強気は、今期の営業利益が実際に増えた実績と、保守を束ねた収益の質で上回る。確率は中立に 4 割を置き、悲観寄りは 3 割強にとどめた。現金の戻り方が上がる材料は、確率を楽観側へ動かす条件として残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 6,371 円369 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,316 円76 億円)。 今の値に割り戻すと 4,091 円237 億円、今との差 +56.3%、 期待の年率 +11.4%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 11,361 円658 億円 | 2,105 円122 億円 | +414.6% | +17.8% | 1,077 円62 億円 |
| やや楽観 | 20% | 9,710 円563 億円 | 1,726 円100 億円 | +337.0% | +15.9% | 2,287 円133 億円 |
| 中立 | 40% | 7,003 円406 億円 | 1,277 円74 億円 | +216.4% | +12.2% | 3,312 円192 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,866 円166 億円 | 1,035 円60 億円 | +49.1% | +4.1% | 858 円50 億円 |
| 悲観 | 10% | 880 円51 億円 | 638 円37 億円 | −42.0% | −5.3% | 152 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,371 円369 億円 | 1,316 円76 億円 | +193.7% | +11.4% | 7,687 円445 億円 |
今の株価時価総額 2,617 円152 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:長期目標の売上 400 億円・営業利益 40 億円を超えて走る 利益 34 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 11,361 円658 億円
会社が掲げる長期目標を超えて走る筋書き。大手外食チェーンへの採用が全国に広がり、洗剤の国内シェアは今の 17% から 2 割を超える。出荷量は今より 2 割増え、除菌・衛生管理のサービスと組み合わせた提案で、値上げも通る。単価は物価をやや上回る。固形燃料は海外の販売が伸びて堅調、歯科・農業の新領域も育つ。ヘルスケアは欧米の代理店網に乗って倍近くになる。営業利益率は 10% を超え、原材料高は価格改定で吸収できる。余った現金は自社株買いで戻り始め、還元は純利益の 5 割に高まる。創業の流れを汲む大株主も、資本効率の改善に理解を示す。2030 年代半ばには、洗剤・衛生管理・健康食品を柱にする売上 450 億円規模の会社になる。
- 業務用洗剤・洗浄剤・除菌剤(国内):数量 61.5(出荷量(千トン))× 価格 5.44(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 335 億円・営業利益 34 億円。n
- 固形燃料・農業・歯科・海外(ケミカルのその他):数量 11.0(出荷量(千トン換算))× 価格 6.18(1 千トン換算あたり売上(億円))→ 売上 68 億円・営業利益 5 億円。n
- ヘルスケア(健康食品):数量 180(年間出荷(万個))× 価格 0.20(1 万個あたり売上(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 6 億円。n
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 19.13 倍、時価総額 651 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:長期目標(売上 400 億円・営業利益 40 億円)を超える筋書き。目標は掲げたばかりで達成の実績が乏しく、8% にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:中期計画の線で着実に伸びる 利益 29 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 9,710 円563 億円
中期計画の線で着実に伸びる。洗剤の出荷量は今より 1 割強増え、シェアは 18〜19% に上がる。外食の人手不足を背景に、省力化できる洗浄システムと高付加価値の製品が売れる。値上げは原材料のコスト上昇を取り戻す形で通り、利益率は 9.5% に改善する。固形燃料と新領域は年 9% 台の増収、ヘルスケアは海外が牽引して売上が 3 割増える。営業利益は 39 億円で、長期目標の水準にほぼ届く。余った現金は DOE の枠を超えて自社株買いに少しずつ回り、還元は純利益の 45% になる。ヘルスケアは減損を出さずに黒字を保ち、新領域の歯科・農業は小さいながら黒字になる。物価の上昇で本社費や人件費も増えるが、売上の伸びで吸収する。
- 業務用洗剤・洗浄剤・除菌剤(国内):数量 57.4(出荷量(千トン))× 価格 5.36(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 308 億円・営業利益 29 億円。n
- 固形燃料・農業・歯科・海外(ケミカルのその他):数量 9.5(出荷量(千トン換算))× 価格 6.18(1 千トン換算あたり売上(億円))→ 売上 59 億円・営業利益 4 億円。n
- ヘルスケア(健康食品):数量 160(年間出荷(万個))× 価格 0.20(1 万個あたり売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 5 億円。n
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 18.7 倍、時価総額 551 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画 NX2028 の線で進み、原材料の逆風が来期で一巡する場合。実績で裏づけられる範囲なので厚く置いた。
中立 40% 中立:洗剤は小さく伸び、新領域とヘルスケアが上乗せする 利益 22 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 7,003 円406 億円
洗剤は量がほとんど伸びず、シェアの上昇が人口減と外食の縮みを打ち消す程度にとどまる。出荷量は 10 年で 3% 増、単価は原材料と人件費の上昇を転嫁して物価並みに上がる。利益率は 8.2% で、足元の水準を保つ。固形燃料・歯科・農業・海外のその他は売上が 1.7 倍になるが、利益率は 6% と低い。ヘルスケアは海外の販売網で売上が 1.9 倍になる。営業利益は 30 億円。工場と設備の減価償却は取得原価のままで、更新の投資だけが新しい値段になるため、更新の費用は営業利益の約 1 割ずつ膨らむ。現金には 2% の利息が付き、純利益は 22 億円に届く。還元は純利益の 4 割にとどまり、現金は手つかずで積み上がる。
- 業務用洗剤・洗浄剤・除菌剤(国内):数量 52.8(出荷量(千トン))× 価格 5.36(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 283 億円・営業利益 23 億円。n
- 固形燃料・農業・歯科・海外(ケミカルのその他):数量 7.8(出荷量(千トン換算))× 価格 6.18(1 千トン換算あたり売上(億円))→ 売上 48 億円・営業利益 3 億円。n
- ヘルスケア(健康食品):数量 126(年間出荷(万個))× 価格 0.20(1 万個あたり売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 4 億円。n
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 17.39 倍、時価総額 391 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:外食の人口減が洗剤の量を抑える一方、シェア上昇と新領域が補う、業界の見方にそろえた最も重い筋書き。来期の減益計画を見て、悲観寄りに偏らせない。
やや悲観 22% やや悲観:原材料高と競争で利益率が落ちたまま戻らない 利益 14 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 2,866 円166 億円
原材料と人件費の上昇が長引き、転嫁が追いつかない。大手外食チェーンとの価格交渉が厳しくなり、洗剤の単価の伸びは物価を下回る。出荷量は 5% 減る。営業利益率は 6.5% に落ちる。固形燃料は国内の鍋需要が縮んで横ばい、新領域は育たない。ヘルスケアは海外が伸びず、利益が薄くなる。営業利益は 19 億円。規制対象物質の拡大で、代替原料への切り替え費用が重なる。現金は買収や設備に回って 3/4 に減り、戻る額は半分で数える。還元は純利益の 4 割に下がる。競合が価格で攻めても、保守網に支えられて大きくシェアは落とさない。ただ、伸びも期待できない。ヘルスケアの買収は期待を下回り、のれんの減損を出す。
- 業務用洗剤・洗浄剤・除菌剤(国内):数量 48.7(出荷量(千トン))× 価格 5.20(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 253 億円・営業利益 17 億円。n
- 固形燃料・農業・歯科・海外(ケミカルのその他):数量 6.0(出荷量(千トン換算))× 価格 6.00(1 千トン換算あたり売上(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 1 億円。n
- ヘルスケア(健康食品):数量 80.0(年間出荷(万個))× 価格 0.19(1 万個あたり売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。n
倍率:事業の ROE は k 以下なので PER は 1÷k(13.3 倍)が上限。ためた利益は額面を下回る価値で、利益率が構造的に落ちているので 9.5 倍に置いた(上限の 7 割強)。余った現金は帳簿の 3/4(34 億円)に戻り方 0.5。
確率:来期の営業利益 15% 減の計画が示すとおり、原材料と人件費の逆風が長引く場合。外食の縮みも加わるので 22%。
悲観 10% 悲観:大手の内製と規制で、洗剤の利益が痩せる 利益 6 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 880 円51 億円
構造的に負ける筋書き。大手外食チェーンが仕入れを集約し、洗剤を海外の汎用品や自社ブランドに切り替える。化学物質の規制強化で原料が高騰し、代替の切り替えにも費用がかかる。出荷量は 15% 減り、単価は物価を下回る。営業利益率は 4% まで落ちる。固形燃料は鍋需要の縮みで売上が減り、新領域は撤退する。ヘルスケアは赤字になる。営業利益は 8 億円。現金は事業の立て直しに使われ、戻る額は 1/2 の半分になる。値段は、事業の稼ぐ力と残る現金で決まる。外食産業そのものが縮む世界で、衛生管理の需要は残るが、利益を乗せる余地は狭まる。減価償却は取得原価のままだが、更新の投資が膨らみ、現金は細る。
- 業務用洗剤・洗浄剤・除菌剤(国内):数量 43.6(出荷量(千トン))× 価格 4.90(1 千トンあたり売上(億円))→ 売上 214 億円・営業利益 9 億円。n
- 固形燃料・農業・歯科・海外(ケミカルのその他):数量 5.0(出荷量(千トン換算))× 価格 5.50(1 千トン換算あたり売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 0 億円。n
- ヘルスケア(健康食品):数量 40.0(年間出荷(万個))× 価格 0.15(1 万個あたり売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 −1 億円。n
倍率:悲観は ROE が k を大きく下回る。構造的に利益が痩せ、ためた利益は額面の半分にも届かないので、PER は 1÷k の約半分の 7 倍に置いた。余った現金は帳簿の 1/2(23 億円)に戻り方 0.5。
確率:構造的な負け。大手外食の内製化や、化学物質の規制強化による原料の高騰が重なる筋書きで 10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
業務用洗剤・洗浄剤・除菌剤(国内)
外食・ホテル・食品工場・スーパー向けの洗剤、洗浄剤、除菌剤、衛生管理の用品とサービス。
| 数量出荷量(千トン) | 価格1 千トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 51.3 | 4.00 | 205 | 17 |
| 10 年後 中立 | 52.8 | 5.36 | 283 | 23 |
取り方:推定。開示はケミカル事業の売上 232.7 億円(営業利益 19.1 億円)までで、製品別の量は出ていない。ケミカルのうち洗剤・洗浄剤・除菌剤を約 205 億円と置き、1 千トン 4 億円(1 キロ 0.04 万円)で出荷量に直した。業務用洗剤の国内シェア約 17% から市場は約 1,200 億円と読める。単価は中立で物価並み(10 年 1.34 倍)。
固形燃料・農業・歯科・海外(ケミカルのその他)
鍋物用の業務用固形燃料(国内シェア約 7 割)、農業・歯科など新領域、海外販売。
| 数量出荷量(千トン換算) | 価格1 千トン換算あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 6.0 | 4.61 | 28 | 2 |
| 10 年後 中立 | 7.8 | 6.18 | 48 | 3 |
取り方:推定。ケミカル 232.7 億円から洗剤・洗浄剤・除菌剤の 205 億円を引いた残り 27.7 億円。出荷量は千トン換算の目安で、開示はない。国内の固形燃料は外食の鍋需要で横ばい、歯科・農業は始まったばかり。単価は中立で物価並み。
ヘルスケア(健康食品)
乳酸菌発酵食品「OM-X」などの健康食品。2023 年 3 月に買収したバイオバンクの事業。
| 数量年間出荷(万個) | 価格1 万個あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 90.0 | 0.15 | 14 | 2 |
| 10 年後 中立 | 126 | 0.20 | 25 | 4 |
取り方:推定。2026/05 期のヘルスケア売上 13.5 億円(前期比 −9%)を、1 個 0.15 万円と置いて出荷個数に直した。単価は中立で物価並み。欧米・東南アジアの代理店網で海外の比率が高い。
リスクと懸念
原材料高を転嫁しきれない
洗剤の原料は界面活性剤やアルカリなどの化学品で、為替と原油に連れて動く。価格改定には数か月の遅れが出る。来期の営業利益は 15% 減の計画で、遅れが長引けば利益率は 6% 台に沈む。2023 年 5 月期の 4% まで戻る可能性も、悲観の筋書きでは考える。
大手外食チェーンへの依存と価格交渉
外食チェーンは仕入れを集約する傾向にあり、大口顧客の交渉力が強まる。採用が広がる強みの裏側で、1 社の切り替えが売上に与える影響も大きくなる。値下げ圧力が強まれば、保守網の費用を回収できなくなる。
化学物質の規制拡大
規制対象の物質が広がれば、代替原料への切り替えと再試験の費用が出る。会社は来期の減益要因に一時的なコスト増を挙げており、規模が大きくなれば長期の重荷になる。規制の動きは国ごとに違い、海外展開にも響く。
ヘルスケアの伸び悩み
2023 年に買収した健康食品事業は、前の期に売上が 9% 減り、営業利益も 24% 減った。洗剤との相乗効果は小さく、のれんの減損リスクが残る。買収額に対して売上が伸びなければ、特別損失として出る。
固形燃料と外食の人口減
固形燃料は鍋物の需要に依存し、国内のシェアは約 7 割と高いが、市場自体が縮む。洗剤の量も、人口と外食の客数に連動して細る。新領域が育たなければ、売上の伸びは物価の上昇分にとどまる。
現金の使い道と株主構成
時価総額の半分近い現金を抱える。大株主の資産管理会社と持株会で 3 割超を占め、少数株主が使い道を決めにくい。買収に使えば質が下がり、放置すれば戻らない。配当の方針は DOE 3% で、利益が増えても配当の伸びは限られる。
今後の分かれ目
- 自社株買いや増配を、現金の水準に見合う規模で発表する
- 戻り方が 1 に近づき、時価総額に対する本質価値の差は一段と割安側へ動く。
- 洗剤の単価改定が原材料高に追いつかず、営業利益率が 6% を割る
- やや悲観の筋書きに寄る。中立の確率を下げ、価値は 2 割ほど目減りする。
- 大手外食チェーンが洗剤を内製化、または海外の汎用品に切り替える
- 悲観に近づく。保守網の優位が崩れたことを意味し、利益率の前提を見直す。
- 歯科・農業の新領域が売上 20 億円を超える
- 楽観に近づく。洗剤の成長の限界を越え、倍率の上限が上がる。
- バイオバンクの減損、または売却が出る
- 一時の損失は出るが、現金の使い道が整理され、資本効率はむしろ改善する。
見ておくもの
- 洗剤の出荷量と単価改定の動き(決算短信)
- 原材料価格と営業利益率(四半期)
- 自社株買い・増配の発表と、純現金の水準
- ヘルスケアの売上と海外比率
- 中計 NX2028 の進捗(28 年 5 月期に売上 275 億円・営業利益 18 億円)
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE と k から式で決め、今の株価や同業の倍率には寄せていない。現金は戻り方 0.5 で数え、時価総額の半分近い純現金を割安の根拠にしなかった。営業利益率は過去の中央値(8% 台)に置き、2021 年 5 月期の 13% の山は使っていない。新リース会計の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16→19.13 倍・やや楽観 PER 15→18.7 倍・中立 PER 14→17.39 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0% = 7.5%。理由は quality_why。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。