結論
永大化工は、自動車メーカー向けの純正フロアマットを主力にする樹脂成形の会社だ。売上は 92 億円、営業利益は 4.8 億円で、利益率は 5% 台に乗った。筆者の結論は、やや割安である。時価総額は純資産の 3 割強で、純現金 18 億円は時価総額の 7 割に当たる。
電気自動車になってもマットは車に付く。この点でエンジン部品の会社とは違う。ただ、買い手は自動車メーカーとその用品の販売会社で、毎年の値下げを求められる。樹脂の値上がりは転嫁できても、利益の幅は広がらない。10 年を均した利益率は 5% 前後と見る。
財務は堅く、自己資本比率は 73% だ。ただ ROE は 5% 前後で、資本コストには届かない。割安に見える理由は資産の厚さで、稼ぐ力ではない。中立の営業利益は 5 億円台で、今の水準から大きくは動かない。悲観でも純現金と運転資本が価値を支えるので、下値は限られる。現金が株主に戻るかどうかで、見方が分かれる。悲観でも純現金と運転資本が価値を支えるので、下値は限られる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、安く見えるが、安さの理由がある会社だ。時価総額は自己資本の 3 割強で、純現金だけで 7 割に当たる。事業を除いた現金の評価だけでも、今の値段のほぼ全部になる。
評価できる点は二つある。一つは財務の堅さで、自己資本比率は 73% あり、倒れにくい。もう一つは、電気自動車でも要るマットに軸足があることだ。エンジン専業の会社より、10 年の見通しは明るい。
問題は、値決めの力のなさだ。自動車メーカーの値下げ要請が続くかぎり、利益率は 5% 前後で頭を打つ。ROE も 5% 前後で、資本コストに届かない。事業が稼ぐ力に対して払う倍率は、8 倍台にとどまる。
経営者の資本配分は、改善の途上にある。自己株の取得は増えたが、現金が積み上がる速さに追いつかない。中立の筋書きでは、価値は今の時価総額をやや上回る。安全域は薄いが、悲観でも純現金に支えられる。
何で稼ぐ会社か
事業は二つある。自動車用品が売上の 66%(61 億円)で、自動車メーカーの純正フロアマットと車用の樹脂部品を作る。産業資材が 34%(31 億円)で、塩化ビニルなどの樹脂を押し出して作る産業用の資材だ。
売り先は、ホンダアクセスが売上の 18.5%、スズキが 17.5% で、この 2 社で 36% を占める。2024 年 12 月には、スズキと単一素材のマットを共同開発し、廃棄時の二酸化炭素を 7 割減らしたと発表した。ベトナムには 1995 年から合弁の工場がある。従業員は連結で 465 名だ。生産は国内の工場とベトナムの合弁が担い、樹脂を押し出して成形する工程が土台にある。
2026 年 3 月期の売上は 92.2 億円(前の期比 4.1% 増)、営業利益は 4.77 億円(64% 増)、純利益は 3.34 億円だった。2023 年 3 月期には営業赤字(約 3 億円)に落ちており、利益の波は大きい。2027 年 3 月期の会社予想は、売上 95 億円、営業利益 5 億円、純利益 3.5 億円で、今の水準が続くと見ている。
優良さと弱いところ
堀は浅い。筆者は、この会社を堀の持ち主とは見ていない。国内の純正マットで高いシェアを持つと会社は説明するが、買い手が値段を決める。一度採用されると車種の期間は取引が安定するが、新型車の採用ごとに競争がある。
利益の安定性は低い。営業利益率は直近の 5.2% が過去 12 年の最高で、2023 年 3 月期には赤字を出した。主要顧客の構成も動く。ホンダアクセスは前の期の 23% から 18.5% に下がった。
資本効率は弱い。ROE は 5% 前後にとどまり、自己資本 74 億円が稼ぎに結びついていない。
経営は株主還元に前向きだ。配当性向は 26%、DOE は 1.2% で、2026 年 3 月期に自己株を 1.27 億円取得した。大株主は和田正行氏(12.6%)と永大化工共栄会(11.3%)で、親会社はない。強みは財務の堅さで、自己資本比率は 73%、現金が借入を大きく上回る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
永大化工の戦う場は、自動車の純正用品と、樹脂押出成形の産業資材だ。純正マットの需要の根っこは、国内の新車の生産台数にある。台数は実質で横ばいに近く、電気自動車化が進んでも、車に付くマットの数は変わらない。
電気自動車化の影響は小さい。マットは動力に関係なく要る。ただ、電気自動車の販売が日系の外で伸びると、日系メーカー向けの出荷は増えにくい。
値下げ要請は、この業界の宿命だ。自動車メーカーと用品の販売会社は、毎年の原価低減を求める。塩化ビニル樹脂の値上がりは、改定の交渉を経て遅れて価格に乗る。急騰の局面では、その間の利益が削られる。
競争は、国内の他のマットメーカーとの間で起きる。永大化工は規模で劣るが、自動車メーカーとの共同開発の実績で採用を守る。軽量化や環境対応の素材を提案できるかが、採用の分かれ目になる。産業資材は用途が広く、価格競争が厳しい。海外の安い品も入る。塩化ビニル樹脂の価格と、建材や産業用途の需要が利益を左右する。市場が分散していて、特定の用途に頼らない代わりに、値決めの力は弱い。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向 26%、DOE 1.2% の水準で、自己株の取得も加える。2026 年 3 月期の自己株取得は 1.27 億円で、前の期の 0.31 億円から増えた。営業キャッシュフローは 9.4 億円で、設備投資の 1.5 億円を大きく上回る。減価償却費は 2.9 億円で、設備投資の 2 倍近い。設備が古くなっているので、いずれ更新の投資が要る。
現金は 28.5 億円、借入は約 8 億円で、純現金は 18 億円だ。時価総額は 25 億円ほどなので、純現金だけで 7 割に当たる。この現金が配当や自社株買いで戻るのか、更新の投資や運転資金に消えるのかが、価値の分かれ目になる。
会社は DOE の下限を 1%、目標を 2% に置く方針を示している。中期経営計画の数字は出所によって食い違い、本分析では使わない。TOB などの話は確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電気自動車でも要る部品が中心で、10 年は安泰だ。マットは動力が何であれ車に付く。スズキと共同開発した単一素材のマットは、環境負荷を下げる流れに合い、他の自動車メーカーにも広がる余地がある。
利益率は上がる余地がある。2026 年 3 月期の営業利益は 64% 増え、利益率は 5% 台に乗った。産業資材も用途が広がっている。
財務には余裕がある。自己資本比率は 73%、純現金は時価総額の 7 割に当たる。PBR は 0.34 倍と純資産の 3 割強でしか評価されていない。2027 年 3 月期の第 1 四半期は売上が 32% 増え、受注の勢いもある。DOE の下限を 1%、目標を 2% に置く方針があり、自己株の取得も増えた。資本効率の改善を迫る力が働く。自動車の純正用品という堅い取引先を持ち、ベトナムの合弁工場でコストを抑えた生産もできる。電気自動車でも要る部品に軸足がある点を、市場はまだ評価していない。
慎重な見方
薄利の構造は変わらない。営業利益率は過去 12 年の大半が 5% 未満で、2023 年 3 月期には営業赤字もあった。2027 年 3 月期の会社予想は営業利益 5 億円と、今の水準で横ばいだ。第 1 四半期は売上が 32% 増えたが、営業利益は 9% 減っている。
値決めの力がない。自動車メーカーは毎年、値下げを求める。樹脂の値上がりを転嫁できても、人件費と電力の上昇が利益を削る。
顧客の偏りもある。ホンダアクセスとスズキで売上の 36% を占め、ホンダアクセスの比率は下がっている。調達先を絞られれば取引は一気に細る。電気自動車の販売が日系の外で伸びれば、日系の用品の出荷は増えにくい。減価償却費が設備投資の 2 倍近いので、更新の投資が将来の現金を食う。さらに、第 1 四半期の売上増は、期末の駆け込みや価格改定の影響とも考えられ、通期で続くかは分からない。純現金が厚くても、戻らなければ株主の価値にならない。現金の積み上がりを、更新投資に回すのか、買収に使うのか、方針は示されていない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が一定の重みを持つ。マットが電気自動車でも要る点は強みだが、薄利と値下げ要請の構造は実績で確かめられている。確率は中立を中心に置き、悲観側は純現金と運転資本に支えられるので厚くしすぎなかった。強気の見方が指す、純現金と財務の堅さは確かに本物だ。ただ、それは下値を支えるだけで、中立の価値を押し上げる力は小さい。中立は、財務の堅さと値下げ要請の重さの落としどころとして、利益率 5% 台に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,695 円45 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,426 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 2,488 円31 億円、今との差 +18.7%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 9.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,406 円79 億円 | 2,439 円30 億円 | +322.2% | +15.5% | 619 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,959 円61 億円 | 2,032 円25 億円 | +233.7% | +12.8% | 1,398 円17 億円 |
| 中立 | 36% | 4,076 円50 億円 | 1,626 円20 億円 | +172.2% | +10.5% | 2,053 円25 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,407 円30 億円 | 976 円12 億円 | +61.5% | +4.9% | 846 円10 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,545 円19 億円 | 163 円2 億円 | −18.5% | −2.0% | 205 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,695 円45 億円 | 1,426 円18 億円 | +144.4% | +9.3% | 5,121 円63 億円 |
今の株価時価総額 2,095 円26 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 純正マットの取り分が保たれ、産業資材も育つ 利益 7 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 6,406 円79 億円
純正マットの取り分が保たれ、産業資材も育つ。マットは電気自動車でも要るので、車の台数とともに増える。ホンダ向けとスズキ向けの両方で採用が続き、スズキと共同開発した単一素材のマットが他社にも広がる。環境負荷を下げる流れが、純正品の採用の決め手になる。
産業資材は用途が増え、売上は 5 割ほど伸びる。樹脂の値上がりは転嫁でき、値下げ要請は工場の合理化で吸収する。営業利益率は 7% 台に乗る。余った現金は配当と自社株買いで戻り、性向は 3 割を超える。更新の投資も進み、設備の老朽化は解消する。ROE は 8% 近くまで上がるが、資本コストにはなお届かない。
- 自動車用品(フロアマット・車用の樹脂部品):数量 115(純正マットの出荷セット数(万セット・推定)× 1 セットあたりの売上)× 価格 0.81(価格指数(今=1.00。樹脂の値上がりの転嫁と顧客の値下げ要請を含む))→ 売上 94 億円・営業利益 7 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍・利益率 7.0%
- 産業資材(塩化ビニルなどの押出成形品):数量 2,600(対象市場の実質規模(億円・推定)× 取り分)× 価格 0.02(価格指数(今=1.00。物価の分と樹脂の転嫁を含む))→ 売上 55 億円・営業利益 2 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍・利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 79 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:純正マットの取り分が保たれ、産業資材が育って利益率が 7% 台に乗る筋書き。過去 12 年に 5% 超は直近の 1 期だけなので、重なる条件が多く、7% に置いた。
やや楽観 20% 中計の目標に近づき、利益率が 6% 台に定着する 利益 5 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 4,959 円61 億円
直近の高い利益率が定着する。マットは電気自動車でも要る部品で、車の台数並みに増える。値下げ要請は続くが、樹脂の値上がりを転嫁する交渉が通り、利益率は 6% 台に乗る。
産業資材は用途の広がりで増え、赤字を出さない。国内の生産は人員を増やさず自動化で補い、固定費の重さを抑える。営業利益は 7 億円ほどになる。ROE は 5% 台で、資本コストには届かない。厚い自己資本が稼ぎに結びつかない構図は、10 年たっても残る。配当は性向 3 割に近づき、自社株の取得も続くが、現金の戻りは緩やかだ。樹脂の転嫁が遅れた年は、利益が一時的に削られる。
- 自動車用品(フロアマット・車用の樹脂部品):数量 108(純正マットの出荷セット数(万セット・推定)× 1 セットあたりの売上)× 価格 0.78(価格指数(今=1.00。樹脂の値上がりの転嫁と顧客の値下げ要請を含む))→ 売上 84 億円・営業利益 5 億円。数量 1.08 倍・価格 1.28 倍・利益率 6.5%
- 産業資材(塩化ビニルなどの押出成形品):数量 2,200(対象市場の実質規模(億円・推定)× 取り分)× 価格 0.02(価格指数(今=1.00。物価の分と樹脂の転嫁を含む))→ 売上 44 億円・営業利益 2 億円。数量 1.10 倍・価格 1.28 倍・利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 61 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:純正マットの利益率が 6% 台に定着し、産業資材も黒字を伸ばす筋書き。直近の 5.2% を超えて定着するかは確かめられていないので、同業の 18〜20% と同じ 20% に置いた。
中立 36% 台数は横ばいで、値下げ要請を樹脂の転嫁で相殺する 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 4,076 円50 億円
台数は横ばいで、値下げ要請を樹脂の転嫁で相殺する。マットは電気自動車でも要る。ただ、ホンダとスズキの国内生産は伸びず、数量は 10 年で 1 割増える程度にとどまる。
自動車メーカーが毎年求める値下げは、樹脂価格の転嫁と工場の合理化でほぼ打ち消し、価格は物価ほどには上がらない。売上は 110 億円ほど、営業利益は 5.4 億円で、利益率は 5% 前後だ。産業資材は薄利のまま緩やかに増える。ROE は 5% 前後で、資本コストを下回る。減価償却費は設備投資より大きく、設備が古くなっていく分を、将来の更新投資として見ておく必要がある。
- 自動車用品(フロアマット・車用の樹脂部品):数量 100(純正マットの出荷セット数(万セット・推定)× 1 セットあたりの売上)× 価格 0.74(価格指数(今=1.00。樹脂の値上がりの転嫁と顧客の値下げ要請を含む))→ 売上 74 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・価格 1.22 倍・利益率 6.0%
- 産業資材(塩化ビニルなどの押出成形品):数量 1,900(対象市場の実質規模(億円・推定)× 取り分)× 価格 0.02(価格指数(今=1.00。物価の分と樹脂の転嫁を含む))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。数量 0.95 倍・価格 1.25 倍・利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 49 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:部品の台数は横ばいに近く、値下げ要請と転嫁がほぼ相殺して利益率が 5〜6% にとどまる筋書き。同業の 33〜36% と同じ 36% を置いた。
やや悲観 25% 台数が減り、値下げ要請が転嫁を上回る 利益 2 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 2,407 円30 億円
国内の自動車生産が縮み、値下げ要請が樹脂の転嫁を上回る。マットは電気自動車でも要るが、台数が減れば出荷も減る。純正品の取り分を他社に奪われる年も出る。ホンダアクセスの比率は下がり続け、新型車の採用で競り負ける車種が増える。
産業資材は価格競争で利益が薄くなる。売上は名目で 100 億円に届かず、営業利益率は 3% 台に落ちる。赤字の年も混じるが、純現金があるので配当は下限の水準を保つ。更新の投資が重なり、現金の戻りは細る。会社が掲げる配当の目標は、10 年の後半になっても届かない。名目の利益は今を下回り、実質では大きく縮む。設備の更新が先送りされ、品質や納期の問題が採用に響く年も出る。
- 自動車用品(フロアマット・車用の樹脂部品):数量 95.0(純正マットの出荷セット数(万セット・推定)× 1 セットあたりの売上)× 価格 0.70(価格指数(今=1.00。樹脂の値上がりの転嫁と顧客の値下げ要請を含む))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。数量 0.95 倍・価格 1.15 倍・利益率 4.5%
- 産業資材(塩化ビニルなどの押出成形品):数量 1,700(対象市場の実質規模(億円・推定)× 取り分)× 価格 0.02(価格指数(今=1.00。物価の分と樹脂の転嫁を含む))→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85 倍・価格 1.15 倍・利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 2.4 億円・ROE 約 3% は k よりかなり低く、PER の上限は 1÷k=11.1 倍。取り分が削られる筋書きのため、上限の約 7 割の 7.5 倍に置いた。
確率:国内の自動車生産が縮み、値下げ要請が樹脂の転嫁を上回る筋書き。利益率が 2022 年度の赤字に近い水準まで落ちる年が出うるので、同業の 25〜27% と同じ 25% に置いた。
悲観 12% 主要顧客の調達見直しで、純正の取り分が崩れる 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,545 円19 億円
構造的に負ける。電気自動車化と調達の見直しが重なり、ホンダ向けとスズキ向けの取引が細り、他社や自動車メーカーの内製に置き換わる。値下げ要請は転嫁を大きく上回り、売上は名目で 70 億円台に細る。
営業利益は赤字に近づき、工場の減損と人員の整理が出る。価値は純現金と投資株、運転資本の回収価値に支えられる姿になる。配当は下限まで落ち、自己株の取得は止まる。ホンダアクセスやスズキの比率が一段と下がり、調達先の絞り込みで、国内の工場は稼働が大きく落ちる。経営の再編や非公開化の話が出ても不思議はない。株主構成の動きによっては、純現金の使い道も変わる。人員の整理で固定費を減らしても、売上の落ち込みには追いつかない。
- 自動車用品(フロアマット・車用の樹脂部品):数量 80.0(純正マットの出荷セット数(万セット・推定)× 1 セットあたりの売上)× 価格 0.64(価格指数(今=1.00。樹脂の値上がりの転嫁と顧客の値下げ要請を含む))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。数量 0.80 倍・価格 1.05 倍・利益率 1.0%
- 産業資材(塩化ビニルなどの押出成形品):数量 1,400(対象市場の実質規模(億円・推定)× 取り分)× 価格 0.02(価格指数(今=1.00。物価の分と樹脂の転嫁を含む))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70 倍・価格 1.05 倍・利益率 -1.0%
倍率:事業の純利益 0.2 億円・ROE 約 0.3% は k よりはるかに低く、稼ぐ力(純利益÷k)は約 2 億円。純現金・投資株・運転資本の回収価値(約 18.5 億円)のほうが大きいため、今の自己資本 74 億円に 0.25 倍を掛けて置いた。
確率:主要顧客が調達先を絞り、純正マットの取り分が崩れる構造的な負けの筋書き。純現金と土地があり倒れにくいので、同業の 10〜15% の下のほうの 12% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車用品(フロアマット・車用の樹脂部品)
自動車メーカーの純正フロアマットと、車用の樹脂成形品。ホンダアクセスやスズキ向けが中心だ。
| 数量純正マットの出荷セット数(万セット・推定)× 1 セットあたりの売上 | 価格価格指数(今=1.00。樹脂の値上がりの転嫁と顧客の値下げ要請を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.61 | 61 | 4 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.74 | 74 | 4 |
取り方:自動車用品の売上は 60.76 億円。出荷数は開示が無く、純正マットとその周辺品を約 100 万セット、1 セットあたり約 0.61 万円と推定した(推定)。利益は、全社の営業利益 4.77 億円から産業資材の約 0.9 億円を引いた約 3.9 億円(利益率 6.4%)と推定。
産業資材(塩化ビニルなどの押出成形品)
塩化ビニルなどの樹脂を押し出して作る産業用の資材。自動車以外の建材・産業用途が中心だ。
| 数量対象市場の実質規模(億円・推定)× 取り分 | 価格価格指数(今=1.00。物価の分と樹脂の転嫁を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 0.02 | 31 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,900 | 0.02 | 37 | 1 |
取り方:産業資材の売上は 31.44 億円。対象の押出成形品の市場を約 2,000 億円(実質・推定)と置き、取り分を約 1.57% とした。利益は薄いと見て、利益率 2.9% の約 0.9 億円と推定した(推定)。
リスクと懸念
値下げ要請と樹脂価格
自動車メーカーは毎年の原価低減を求める。塩化ビニル樹脂の値上がりは遅れて転嫁され、その間の利益が削られる。利益率は 5% 前後で頭を打つ。
主要顧客への依存
ホンダアクセスが 18.5%、スズキが 17.5%を占める。調達先の絞り込みや内製への切り替えで、取引が細りうる。
国内の自動車生産の縮小
マットは電気自動車でも要るが、出荷は国内の新車の台数に連動する。台数が減れば、固定費の重さが利益を削る。
設備の老朽化
減価償却費は 2.9 億円で、設備投資の 1.5 億円の 2 倍近い。更新を先送りしてきた分、将来に大きな投資が要る。
現金の使い道
純現金は時価総額の 7 割に当たる。更新投資や運転資金に消えるか、買収などに使われれば、株主への戻りは減る。
利益の波
2023 年 3 月期には営業赤字(約 3 億円)に落ちた。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、売上が 32% 増えても営業利益は 9% 減った。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が会社予想の 5 億円を超え、利益率が 6% を保ったら
- やや楽観から楽観の筋書きに重みを移す。ただし倍率の上限(1÷k)は変わらない。
- DOE の目標 2% に向けて増配や自社株買いが続いたら
- 余った現金の戻り方の根拠が強まり、価値を引き上げる。
- ホンダアクセスやスズキの比率が下がり続けたら
- 悲観側の確率を上げる。取引が細る筋書きに近づく。
- 更新投資が計画され、設備投資が減価償却費を超え始めたら
- 余った現金の額を減らして見直す。
- 他社が買収に動き、TOB が発表されたら
- 買収価格で価値が決まる局面になる。本分析の値は事業の本質価値なので、乖離を確かめる。
見ておくもの
- 営業利益率が 5% を超えて定着するか
- ホンダアクセス・スズキの売上比率
- 配当・自己株の取得の方針(DOE 2% に向かうか)
- 設備投資と減価償却費の差
- 塩化ビニル樹脂の価格と転嫁の遅れ
倍率と資本コストの決め方
自動車用品は出荷のセット数と 1 セットの売上、産業資材は対象市場の実質規模と取り分で売上を積み、物価 3% は価格の側に入れた。ただし顧客の値下げ要請を差し引き、中立の価格は 10 年 1.2 倍前後にした。倍率は資本コスト 9.0% と事業の ROE から、PER の上限 1÷k を出し、中立は約 7.5 割、やや悲観は約 7 割に置いた。今の株価や同業の倍率には寄せていない。悲観は倍率でなく、純現金・投資株・運転資本の回収価値で置いた。減価償却費は物価で膨らませず、設備が古い分は現金の戻り方で織り込んだ。自動車用品の出荷数と利益は開示が無く推定。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.11 倍・やや楽観 PER 9→11.11 倍・中立 PER 8.5→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。