結論
I-neは、ヘアケアのBOTANIST(ボタニスト)やYOLU(ヨル)、美容家電のSALONIA(サロニア)、スキンケアのリンクフェードやトゥヴェール、健康食品までを、自社の工場を持たずに企画して売る会社だ。広告とネットで客をつかむ力が強みで、2026年の上期は売上が2割伸びた。
筆者の結論は「かなり割高」だ。稼ぐ力に対して、今の値段が先を行きすぎている。2025年の営業利益は売上の8%弱。2026年は成長のための追加投資で、利益はさらに細る。
もう一つ重いのが統治だ。2022年の商標権の取引をめぐり、社長が相手先に事実上の支配力を持っていたと調査委員会が認定した。東証は2026年6月、プライム市場について再審査の猶予期間に入れた。
それでも事業の中身は悪くない。ヒットを続けて出す力は本物で、中立でも利益は10年で倍以上になる。ただ、広告頼みの売り方に強い堀(他社がまねできない強み)は見えない。資本コストは8.5%と高めに置いた。確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額を4割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を持ち続けたい理由はまだ弱い。儲かってはいるが、10年後も同じ儲けが続くと言える根拠が乏しいからだ。
見るのは三つある。一つ目は堀だ。広告の力で売れている間は儲かる。広告をやめれば客も去るなら、堀とは呼べない。二つ目は資本の使い方だ。買収で成長を買ってきたが、償却が利益を圧迫し、計画の達成率は低い。三つ目は経営者だ。支配株主である社長について、調査委員会は取締役会への事実と異なる説明を指摘した。オーナーとして任せられるかが問われる。
数字では、中立の10年後の利益は今の2倍強になる。それでも倍率は、資本コストの逆数並みの約12倍にとどまる。ROEが資本コストを少し上回る程度で、新しく投じるお金の稼ぎが先で薄れるからだ。
安全域はない。楽観に近い筋書きでも、今の時価総額を少し上回る程度だ。払う値段に余裕がなく、筆者は手を出しにくい会社と考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は三つある。ヘアケア系はBOTANIST、YOLU、ROOTH、新ブランドのUNIPLEXなど。美容家電はSALONIAのドライヤー、ヘアアイロン、EMS美顔器だ。スキンケア他は、リンクフェード、買収したトゥヴェール、健康食品のTeaflex・Befas・Collateinが並ぶ。2025年の売上は約490億円で、ヘアケアが5割強、美容家電が4分の1、スキンケア他が2割強とみる(内訳は開示の伸び率からの筆者の推定)。
この会社は工場を持たない。企画と広告に力を注ぎ、製造は外部に任せる。身軽で、新商品を立ち上げる速さが武器だ。中期計画では「2年で売上10億円規模ならヒット」とし、近年のヒット率は75%としていた。
売り方は、ネット通販とドラッグストア・量販店の棚の両方だ。2026年は米国のコストコでBOTANISTを売り始め、韓国のオリーブヤングでYOLUを売り始めた。中国は撤退した。海外はまだ小さい。
買収も成長の手段だった。2024年10月、スキンケアのトゥヴェールを約100億円で買い、SALONIAの生産管理会社も取り込んだ。スキンケアは2025年に前年の3倍超になり、美容家電は商流が短くなって原価率が下がった。その代わり、のれんと無形資産の償却が増えた。2025年の営業利益は約39億円と、前年から14%減った。
優良さと弱いところ
強みは、売れるものを見つけ、素早く形にする力だ。ネット広告とSNSで反応を見ながら商品を磨く。ヘアケア、美容家電、スキンケア、健康食品と、当たりを出す場所を広げてきた。2026年上期は原価率が3.7ポイント下がり、人件費率もAIの活用で下がった。
弱みは、堀の薄さだ。ブランドは流行に左右される。BOTANISTは中国から撤退し、YOLUは一時前年を割った。美容家電には、ダイソン、パナソニック、リファ(MTG)といった大手がおり、中国勢の安い品も迫る。広告をやめれば客が離れるなら、それは堀とは呼べない。2026年上期は広告・販促費の比率が5ポイント以上上がった。
資本の使い方には、良い面と心配な面がある。買収後に生産管理を取り込み、中間のマージンを削ったのは良い。心配なのは計画の達成率だ。2025年に売上550億円、営業利益率13%を掲げたが、実績は約490億円、約8%だった。
経営者の面も見ておく。社長は株の約57%を持つ支配株主で、取締役会が止める力は弱い。この点は資本コストでなく、悪い側の確率で扱った。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の美容・ヘアケアの市場は、人口が減るので量は伸びない。それでも、機能の高い品への乗り換えと訪日客の消費が、金額を支える。世界の美容・パーソナルケア市場は名目で年5〜7%の成長が見込まれる。日本の会社が取れるのは、その一部にとどまる。
ヘアケアは、花王、ユニリーバ、P&Gの大手が棚を押さえる成熟した市場だ。I-neは植物由来や香りの訴求でその隙間に入り、ドラッグストアと通販で伸ばした。新ブランドは当たりやすいが、当たりが長続きするとは限らない。
美容家電は、ドライヤーやヘアアイロンが中心だ。ダイソンやパナソニックなど先行組が多く、値段が下がりやすい。中高価格帯の比率を保てるかが分かれ目になる。
スキンケアと健康食品は、定期購入で客を囲う通販型の事業だ。伸びは速いが広告費がかさみやすい。競合は小林製薬、ファンケル、DHCなど数が多く、健康食品は規制や事故の報道でブランドが一気に傷む。
10年の置き方は、数量は中立で国内ほぼ横ばい、海外とスキンケアが押し上げる。値段は物価並みに上がるが、美容家電は競争で少し弱く置いた。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は据え置きで、2026年6月から株主優待を年2回のデジタルギフトにした。自社株買いは「株価水準を踏まえて柔軟に判断」とするだけで、実績は見えない。
優待は、100株以上の株主に年1万円分、500株以上は年2万円分を渡す。株主数の開示(約4,500人)と持株の構成から、年の費用は1億円前後とみる。これを10年続くものとして、中立では約10億円を還元に足した(悲観では縮む前提)。費用は利益から引かれ済みで、自己資本の流れには入れていない。
買収は、2024年10月のトゥヴェール(約100億円、銀行借入で調達)とSALONIAの生産管理会社の2件。2022年のリンクフェードの商標権取得(18億円)は、統治問題の火元になった。今後もスキンケアや健康食品で新しいブランドを買う余地はある。
社長が約57%を持つため、TOB(株式公開買い付け)で株主が報われる可能性は小さい。逆に、上場区分を守る必要から、株の分散を迫られる場面はありうる。新株予約権の行使で、株数は数%増える余地がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年上期の売上は2割伸び、全部のカテゴリーが2桁成長した。原価率は3.7ポイント改善した。中間マージンの削減と、粗利の高いスキンケアが効いている。営業利益が細るのは、約30億円の追加投資を3年で回収する計画のためで、稼ぐ力が落ちたわけではない。EBITDAは2025年も増えている。
ヒットを作る型が、横に広がっている。BOTANISTはコストコで米国に出た。YOLUは韓国のオリーブヤングに入った。美容家電の四半期売上は過去最高だ。健康食品は立ち上げから1年で、3ブランド合計の上期売上が約23億円に達した。
のれんの償却が終わる2030年代前半には、利益が一段と出る。会社は2029〜30年度に収益性を大きく戻すとしている。売上1,000億円、営業利益率13%に届けば、純利益は80億円台に乗る。今の時価総額は、その入口の値段だ。
統治の問題も、再発防止の制度が動き始めた。社長の続投は不安だが、事業の実行力は落ちていない。
慎重な見方
まず利益の質が薄い。2025年の営業利益率は8%弱で、中期計画の13%には遠い。2026年は広告費を増やして売上を買っており、投資を止めれば伸びも止まる。広告の単価が上がるほど、この売り方は割に合わなくなる。
次に、ブランドの寿命が短い。BOTANISTは中国から撤退し、YOLUも落ち込んだ時期がある。健康食品の急成長は、紅麹の問題のような事故や規制で止まりうる。美容家電は大手と中国勢の値下げ競争に巻き込まれる。
三つ目は統治だ。社長が実質的に支配する相手との取引を、取締役会への事実と異なる説明で通したと指摘された。内部統制は3年分、有効でないと訂正された。東証は区分の猶予期間に入れ、課徴金の勧告も出た。社長が株の約57%を持つので、外から正す手段が乏しい。
最後に値段だ。2026年の利益が一桁億円の会社を、中立の10年後でも約2倍の利益でしか見られない。倍率は資本コストの逆数が限度で、今の時価総額は期待を織り込みすぎている。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、売上の勢いと原価の改善で、事実に基づく。それでも慎重な見方のほうが強い。利益が出る前に広告費を先に払う構造と、統治の問題が確率に直結するからだ。事業の勢いは中立の利益に入れた。統治・上場区分・ヒットの息切れは、やや悲観と悲観に計4割を置いた。強気は楽観とやや楽観の計26%にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,287 円585 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 274 円49 億円)。 今の値に割り戻すと 1,636 円291 億円、今との差 −30.1%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,949 円1,236 億円 | 534 円95 億円 | +219.8% | +12.3% | 599 円106 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,426 円965 億円 | 393 円70 億円 | +148.7% | +9.5% | 1,047 円186 億円 |
| 中立 | 34% | 3,782 円673 億円 | 292 円52 億円 | +74.1% | +5.7% | 1,385 円246 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,530 円272 億円 | 197 円35 億円 | −26.2% | −3.0% | 449 円80 億円 |
| 悲観 | 14% | 506 円90 億円 | 73 円13 億円 | −75.3% | −13.0% | 81 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,287 円585 億円 | 274 円49 億円 | +52.2% | +4.3% | 3,561 円634 億円 |
今の株価時価総額 2,340 円416 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% ヒットが続き、収益性が会社の目標に届く 利益 86 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 6,949 円1,236 億円
ヘアケアはBOTANISTの米国展開とYOLUの韓国展開が軌道に乗り、個数が今の2割強増える。美容家電は中高価格帯の比率が高まり、SALONIAが国内の定番として定着する。スキンケアと健康食品は、定期購入の客が積み上がり、個数が2倍半に近づく。
買収で積んだ償却は2030年代前半に終わり、利益が一段と出る。広告・販促の比率が下がり、営業利益率は13%台に乗る。会社が2023年に掲げた15%には届かないが、売上は1,000億円を超える。
この筋書きでは、純利益は80億円台、10年の還元は約95億円。それでも倍率は資本コストの逆数並みの約12倍にとどまる。堀が薄く、ROEが資本コストを大きくは超えないからだ。上振れても、今の値段のおよそ2倍半とはならない。
- ヘアケア系(BOTANIST・YOLU・ROOTH など):数量 44.0(販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 960(1個あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 422 億円・営業利益 55 億円。営業利益率13%
- 美容家電(SALONIA のドライヤー・ヘアアイロン・EMS 美顔器):数量 3.4(販売台数(百万台、推定。実質の数量))× 価格 8,167(1台あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 278 億円・営業利益 25 億円。営業利益率9%
- スキンケア他(リンクフェード・トゥヴェール・健康食品):数量 8.0(販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 4,823(1個あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 386 億円・営業利益 73 億円。営業利益率19%
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14 倍、時価総額 1,204 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ヒット商品を出し続け、海外と健康食品が思惑どおりに伸び、広告費も効率的に使える。三つが10年間重なる必要があり、実現すれば強いが、広告頼みで当たり外れのある事業なので確率は低く置いた。
やや楽観 18% 投資が実り、収益性が過去の山を超える 利益 68 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 5,426 円965 億円
2026〜28年の追加投資が計画どおり3年で回収され、売上は900億円台後半に届く。ヘアケアは新ブランドが一つ二つ育ち、個数が1割強増える。美容家電は台数が5割近く伸び、中高価格帯の比率が上がる。スキンケアと健康食品は、個数が2倍強になる。
営業利益率は11%台で、2023年の山(10.5%)を少し超える。根拠は、原価率の改善が定着し、償却が終わり、広告費の効率が保たれる点だ。
純利益は60億円台後半。還元は配当に加えて自社株買いが少し入り、10年で約70億円。倍率はROEが12%弱で、資本コストを少し上回る程度の水準に収まる。
- ヘアケア系(BOTANIST・YOLU・ROOTH など):数量 41.0(販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 946(1個あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 388 億円・営業利益 45 億円。営業利益率11.5%
- 美容家電(SALONIA のドライヤー・ヘアアイロン・EMS 美顔器):数量 3.1(販売台数(百万台、推定。実質の数量))× 価格 7,984(1台あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 244 億円・営業利益 18 億円。営業利益率7.5%
- スキンケア他(リンクフェード・トゥヴェール・健康食品):数量 7.0(販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 4,683(1個あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 328 億円・営業利益 57 億円。営業利益率17.5%
倍率:事業の純利益 68 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.69 倍、時価総額 931 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年上期の勢い(全カテゴリー2桁増)と原価の改善が続けば届く水準。償却の終わりも追い風になる。ただし広告費の上昇と大手との競争が重く、中立より低めに置いた。
中立 34% 中立:売上は伸びるが、収益性は緩やかにしか上がらない 利益 49 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 3,782 円673 億円
2026年の投資期が終わると、利益は2027年に戻り、その後は売上の伸びにほぼ沿って増える。売上は850億円台、営業利益率は9〜10%だ。会社の言う2029〜30年度の大きな回復は、半分ほどしか織り込まない。
ヘアケアは個数が1割弱増える。国内は横ばいで、海外とコストコなどが押し上げる。美容家電は台数が3割近く増えるが、値段は大手との競争で物価の伸びをやや下回る。スキンケアと健康食品は、個数が2倍近くになる。
本社費は物価で増える。償却は終わりに向かうが、統治の再発防止や上場区分の対応に費用がかかる。純利益は49億円、10年の還元は優待を含めて約52億円。倍率は、堀が薄く利益の質も中程度なので、資本コストの逆数すれすれに置く。
- ヘアケア系(BOTANIST・YOLU・ROOTH など):数量 38.0(販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 946(1個あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 359 億円・営業利益 34 億円。営業利益率9.5%
- 美容家電(SALONIA のドライヤー・ヘアアイロン・EMS 美顔器):数量 2.7(販売台数(百万台、推定。実質の数量))× 価格 7,802(1台あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 211 億円・営業利益 13 億円。営業利益率6%
- スキンケア他(リンクフェード・トゥヴェール・健康食品):数量 6.0(販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 4,683(1個あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 281 億円・営業利益 42 億円。営業利益率15%
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.13 倍、時価総額 643 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:投資期のあと、利益率が過去の山の近くまで戻る中心の筋書き。数量はヒットの継続と海外で伸び、値段は物価並み。統治と上場区分の問題は、悪い側の確率で表した。
やや悲観 26% ヒットが息切れし、広告費が利益を食う 利益 25 億円 · PER 10.1 倍 · 株価時価総額 1,530 円272 億円
ヒットの寿命が短くなり、ヘアケアは新ブランドが育たず、個数が横ばいを下回る。美容家電は中国メーカーや大手の値下げで、値段が物価に追いつかない。健康食品は規制の強化で伸びが鈍り、スキンケアも定期購入の解約が増える。
売上は650億円台にとどまり、営業利益率は6%台に下がる。広告費を増やしても売上が増えにくい状態だ。本社費と統治対応の費用は物価で膨らむ。
純利益は24億円前後、ROEは6〜7%と資本コストを下回る。この場合、ためた利益の価値は額面未満で、倍率は資本コストの逆数を超えられない。還元は配当の据え置きと優待で約35億円。
- ヘアケア系(BOTANIST・YOLU・ROOTH など):数量 34.0(販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 882(1個あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 300 億円・営業利益 21 億円。営業利益率7%
- 美容家電(SALONIA のドライヤー・ヘアアイロン・EMS 美顔器):数量 2.1(販売台数(百万台、推定。実質の数量))× 価格 7,009(1台あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 147 億円・営業利益 5 億円。営業利益率3.5%
- スキンケア他(リンクフェード・トゥヴェール・健康食品):数量 4.6(販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 4,369(1個あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 201 億円・営業利益 22 億円。営業利益率11%
倍率:ROE 6.9%で k を下回る。RONIC=k 8.5%+残る割合 1/3×(6.9−8.5)=8.0%、長期の成長率 g 3%から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=11.4 倍。ROE が k 以下なので上限は 1÷k の 11.76 倍。成長が鈍く利益の質も落ちるため、上限を引き上げず 10.05 倍に置いた。
確率:広告単価の上昇、健康食品の規制や事故、美容家電の値下げ競争のうち一つか二つが起きる筋書き。統治問題による取引先や人材の離れも含む。慎重な見方のほうが強いので、中立に近い重さを置いた。
悲観 14% 構造的に負ける:ブランドが傷み、上場区分も失う 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 506 円90 億円
新ブランドが当たらず、広告費だけがかさむ。健康食品に事故や規制の強化があり、定期購入の客が離れる。美容家電は中国勢と大手に押され、値段が下がる。買収したトゥヴェールののれんは減損し、自己資本が削られる。
売上は450億円台まで落ち、営業利益は数億円か赤字に近づく。統治の再発防止が実らず、東証の猶予期間のうちに上場区分の条件を満たせなければ、市場での売買や資金調達が難しくなる。
この場合の価値は稼ぐ力ではなく、売れる資産で測る。純現金と運転資本、手元のブランド資産の売却価値を税引き後で約90億円とみる。配当は減らされ、優待も縮む。10年の還元は約13億円。
- ヘアケア系(BOTANIST・YOLU・ROOTH など):数量 28.0(販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 776(1個あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 217 億円・営業利益 4 億円。営業利益率2%
- 美容家電(SALONIA のドライヤー・ヘアアイロン・EMS 美顔器):数量 1.5(販売台数(百万台、推定。実質の数量))× 価格 6,095(1台あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 91 億円・営業利益 −2 億円。営業損失(営業利益率 -2%)
- スキンケア他(リンクフェード・トゥヴェール・健康食品):数量 3.2(販売個数(百万個、推定。実質の数量))× 価格 3,845(1個あたりの平均売上単価(円、名目))→ 売上 123 億円・営業利益 7 億円。営業利益率6%
倍率:優良さを失い利益が細る筋書きなので、稼ぐ力(純利益 2 億円÷k)でなく売れる資産で測る。純現金と運転資本、ブランド資産の売却価値(税後)約 90 億円を床とし、今の自己資本 184 億円に 0.49 倍を掛けた。谷の値付けからは置いていない。
確率:ヒットが続かず、健康食品や美容家電で品質・規制の事故が重なり、買収した事業ののれんも減損する。統治問題で上場区分の再審査に通らない場合も含む。社長が支配株主で、外から正す手段が乏しい点を重く見た。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ヘアケア系(BOTANIST・YOLU・ROOTH など)
シャンプー・トリートメント・ボディケアなど。ドラッグストア・量販店・通販・海外で売る、利益の土台になる事業。
| 数量販売個数(百万個、推定。実質の数量) | 価格1個あたりの平均売上単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 36.0 | 706 | 254 | 22 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 946 | 359 | 34 |
取り方:2025年のヘアケア系の売上は約254億円(前年比 -7.8% の開示と上期の水準から推定)。店頭・通販・海外の平均売上単価(price の欄)を置き、個数を約3,600万個と推定した。国内は人口減で横ばい、海外とコストコなどの新しい販路で個数が伸びる。利益は開示がなく、全社の営業利益 約39億円を広告費の重さと商品の粗利から按分した推定。
美容家電(SALONIA のドライヤー・ヘアアイロン・EMS 美顔器)
ドライヤー・ヘアアイロン・美顔器。2024年に生産管理会社を取り込み、商流を短くした。
| 数量販売台数(百万台、推定。実質の数量) | 価格1台あたりの平均売上単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.1 | 6,095 | 128 | 6 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 7,802 | 211 | 13 |
取り方:2025年の美容家電の売上は約128億円(前年比 -4.9% の開示から推定)。定番品と中高価格帯の平均売上単価(price の欄)を置き、台数を約210万台と推定した。低価格品が多く、利益率は他の事業より低い推定。
スキンケア他(リンクフェード・トゥヴェール・健康食品)
スキンケア化粧品と健康食品。通販の定期購入が中心で、買収したトゥヴェールが加わって急伸した。
| 数量販売個数(百万個、推定。実質の数量) | 価格1個あたりの平均売上単価(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.1 | 3,495 | 108 | 22 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 4,683 | 281 | 42 |
取り方:2025年のスキンケア他の売上は約108億円(前年比 +221% の開示と、買収先トゥヴェールの年売上約41億円の規模から推定)。単価(price の欄。定期購入の化粧品・健康食品)で、個数を約309万個と推定した。粗利は高いが広告費が重く、営業利益は他事業の按分から約22億円と推定。
リスクと懸念
社長の統治問題と、内部統制の不備
2022年の商標権取引で、社長が相手先を実質的に支配していたと調査委員会が認定した。取締役会への事実と異なる説明も指摘された。過年度の内部統制報告書は3年分が訂正され、財務報告の内部統制は有効でないとされた。社長は続投しており、再発防止が実際に働くかは未知数だ。
東証の猶予期間と、上場区分を失う危険
東証は2026年6月から2027年6月まで、プライム市場について再審査の猶予期間に入れ、違約金を徴求した。期間内に基準を満たせなければ、市場区分や上場そのものに響く恐れがある。社長が株の約57%を持つため、流通する株の比率を上げる対応も要る。具体的な基準と結果は未確定だ。
広告費の上昇と、投資の回収
売上の伸びは広告・販促費を増やして買っている面が大きい。2026年上期はその比率が5ポイント以上上がった。会社は追加投資の約30億円を3年で回収する計画だが、ネット広告の単価が上がれば回収は遅れる。利益率が中期計画の13%に届かない状態が続く恐れがある。
ブランドの寿命と、ヒット依存
BOTANISTは中国から撤退し、YOLUも一時は前年を割った。ヘアケアは新ブランドの当たりで伸ばす構造で、当たりが途切れれば広告費だけが残る。流行が速い分野なので、10年先まで同じ売れ方を保つ保証はない。
健康食品の規制と事故
健康食品のTeaflex、Befas、Collateinは立ち上げから1年で、上期に約23億円を売った。急成長の分野は、品質の事故や広告表現の規制強化で、売上が急に止まる危険がある。同業では健康被害の報道でブランドが傷んだ例がある。
美容家電の値下げ競争
ドライヤーやヘアアイロンは、ダイソン、パナソニックなどの大手と中国メーカーが並ぶ。2026年第1四半期は売上が前年を下回り、第2四半期に持ち直した。中高価格帯の比率を保てなければ、利益率は低いままだ。
買収の償却と減損
トゥヴェールなどの買収で、のれんと無形資産の償却が年10億円規模で利益を圧迫している。買収先の売上が計画を下回れば、減損が出る。償却の期間の長さによっては、利益が戻る時期が筆者の想定より遅れる。
今後の分かれ目
- 東証の猶予期間のうちに、プライム市場の基準を満たすと発表されたら
- 上場区分を失う危険が薄れる。悲観の確率を下げ、中立に寄せる材料になる。
- 特別調査の追加の指摘や、課徴金の確定で、社長の責任が重く問われたら
- 経営交代や支配株主の持株の見直しが論点になる。悲観側の確率を上げる。
- 2026年下期も売上が1割以上伸び、広告費の比率が下がり始めたら
- 投資の回収が計画どおり進んでいる証拠で、楽観とやや楽観の確率を上げてよい。
- 営業利益率が複数の期で10%を超えて定着したら
- 過去の山を超える収益性の根拠になる。中立の利益率を上方に直す。
- 健康食品で品質事故や規制の強化が出たら
- スキンケア他の数量の前提を下げ、やや悲観側に重みを移す。
- 自社株買いや増配が具体的な数字で出たら
- 還元の前提を引き上げる。ただし利益が伴わなければ価値は変わらない。
見ておくもの
- 四半期ごとの広告・販促費率と営業利益率
- BOTANISTの海外(米国コストコ)とYOLUの韓国での売上
- 健康食品3ブランドの月商と定期購入の継続率
- 東証の再審査の結果と流通株式比率
- 再発防止策の運用開始(2026年第4四半期)と取締役会の構成
倍率と資本コストの決め方
数量は実質の個数・台数、価格は物価3%込みの名目(中立で10年1.34倍、美容家電は競争で1.28倍)で積んだ。資本コストは基本7.5%+quality+1.0%の8.5%。倍率は式の正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)から出し、堀が薄い(残る割合1/3)ので中立の上限は12.4倍。ROEが資本コストを上回るため、下限の1÷k(11.76倍)すれすれの11.8倍に置いた。今の株価や同業のPERには寄せていない。今のPERが20倍を超える点は最後に比べただけ。リースは本社・倉庫の賃借が小さく、新リース会計基準(2028年3月期から)で数字の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。優待の年1億円前後は10年分を還元に足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→14 倍・やや楽観 PER 12→13.69 倍・中立 PER 11.8→13.13 倍・やや悲観 PER 10→10.05 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足して 8.5%。統治の問題や上場区分の猶予は k に足さず、悲観側の確率で表した。