結論
新日本理化は、天然油脂と石油から化粧品・洗剤・樹脂向けの原料を作る大阪の化学メーカーだ。主力は塩ビ向けの可塑剤で、トイレタリー向けの界面活性剤、エポキシ樹脂の硬化剤などの電子材料も手がける。
2026年3月期は売上321億円、営業利益6億円。営業利益率は1.8%と薄い。会社は2027年3月期に営業利益15億円を見込み、2030年度に17.5億円を目指す。ただ、前の中期計画は目標に届かなかった。
筆者の結論は「割高」だ。時価総額は約84億円で、自己資本197億円の4割強にとどまる。それでも安いとは言えない。自己資本が大きいのに稼ぎが小さく、ROEは3%で資本コストに届かない。そうした会社の資産は、帳簿の額面どおりには評価できない。
堺工場の閉鎖で固定費は下がる見込みで、構造改革は正しい方向だ。ただ、利益率が3%台に戻るかどうかが、10年の価値を決める。
小さな会社の構造改革は時間がかかる。筆者は、数字で確かめられるまで評価を上げない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、新日本理化は「資産は厚いが、稼ぐ力が薄い会社」だ。自己資本197億円に対し、純利益は6億円。ROEは3%で、資本コストを大きく下回る。そうした会社では、ためた利益は額面を下回る価値しか持たない。
オーナー利益は、純利益から設備の更新を引いた額に近い。設備投資は償却を下回っており、更新を先送りして利益を保っている面もある。
経営は構造改革に動いているが、前の計画は達成できなかった。資本の使い方は慎重だが、効率を上げる具体策はまだ見えない。
安全域は、純資産と保有株にある。時価総額は自己資本の4割強で、一見、割安に見える。しかし稼ぎが小さい以上、帳簿の額を価値とは見ない。筆者は、10年の稼ぎでは今の値段が高いと考える。
他人の資本を預かる経営として、無理な買収をしない点は評価できる。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく二つに分かれる。ひとつは天然油脂を原料にする脂肪酸と界面活性剤などのオレオケミカルで、化粧品や洗剤、トイレタリー向けに売る。もうひとつは石油化学系の製品で、塩ビ用の可塑剤(柔らかくするための添加剤)、樹脂の添加剤、エポキシ樹脂の硬化剤がある。
可塑剤は汎用品が多く、床材や電線、壁紙の素材向けだ。機能性の可塑剤と、自動車向け、電子材料向けの製品が高い付加価値を持つ。会社は単一セグメントで、製品別の売上は開示されていない。
工場は大阪の堺と福井などにある。前期に堺工場で酸無水物と可塑剤の生産をやめ、今期に堺工場そのものを2027年6月末に閉める決定をした。工場の閉鎖費として5.26億円の特別損失を見込む。
連結の従業員は394名。設備投資は年4.7億円、減価償却は7.6億円で、投資が償却を下回る守りの運営だ。2026年度からの5年間は「構造改革」の期間と位置づけ、2030年度に売上350億円、営業利益17.5億円を目指している。
取引先は化粧品・日用品・樹脂加工・電子部品の会社で、関西の顧客が多い。
優良さと弱いところ
強みは、油脂と石化の両方を扱える技術と、100年近い取引先との関係にある。電子材料向けの硬化剤や自動車向けの製品など、顧客と共同で開発する品は、乗り換えにくい。
弱みは、利益率の低さだ。営業利益率は過去12年で最高でも3.7%、直近は1.8%。汎用の可塑剤は中国勢や大手との値段の勝負で、原料の油脂と石化品の市況に利益が左右される。前の中期計画は売上340億円、営業利益8億円を掲げたが、届かなかった。
財務は堅い。自己資本比率は49%、純負債は17億円で、借金が重くはない。政策保有の上場株を持ち、日油や大阪ソーダなどの簿価は合計で50億円ほどある。年度中に一部を売った。
経営は構造改革を進めているが、計画の達成率が低い。利益率の改善は、実績で確かめる段階だ。
人材は定着しており、平均勤続年数は16年と長い。技術の継承には強いが、新しい分野への挑戦は遅い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
可塑剤の需要は、塩ビ製品の用途に縛られる。床材・壁紙・電線の分野は、人口減と建築の縮小で国内の数量が緩やかに縮む。中国や東南アジアの汎用品が輸出で入ってくるため、値上げも通りにくい。
成長が見込めるのは、電子材料と自動車向けの機能性の分野だ。半導体や電子部品に使うエポキシ樹脂の硬化剤は、品質の要求が厳しく、参入の壁が高い。ただ、市場の規模は小さく、会社全体を引っ張るほどではない。
界面活性剤は、花王やライオンなど大手のトイレタリー向けが中心で、顧客の価格交渉力が強い。パーム油などの原料は、為替と市況で動く。
国内の化学各社が、汎用品の工場を閉じる再編を進めている。堺工場の閉鎖もその流れだ。固定費は減るが、売上も落ちるため、利益率が上がるかどうかは製品の入れ替え次第になる。物流費と人件費の上昇も重い。
日本の化学会社は、汎用品を縮小して機能品に寄せる流れにある。生き残るのは、顧客と深く結びついた品を持つ会社だ。新日本理化はその途上にいて、結果はまだ出ていない。
エポキシ樹脂向けの硬化剤は、半導体の封止材や電子基板に使われ、品質の要求が高い。
資本政策と M&A
還元は小さい。配当は業績に応じて決め、内部留保も重んじる方針だ。2026年3月期の期末配当は小幅で、配当総額は純利益の3割に届かない。自社株買いの実績は確認できなかった。
政策保有株の縮減は進めている。2026年3月期は投資有価証券の売却で9.4億円の収入を得た。さらに上場株1銘柄の全量売却を決め、8.4億円の売却益を見込む。ただ、売却の総額の方針は開示を確認できず、価値には足していない。
株主優待は確認できなかった。大株主の構成は確かめられなかった。
借入は74億円、現金は55億円。堺工場の閉鎖費は特別損失で出ていくが、財務に大きな傷はない。TOBの可能性は試算で10年以内に25%あるが、価値には足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
構造改革が実を結べば、利益率は倍になる。堺工場の閉鎖で固定費が下がり、汎用品の赤字を切り離せる。会社は2027年3月期に営業利益15億円を予想しており、第一歩は踏み出している。
電子材料と自動車向けの機能品は、顧客との共同開発で参入の壁が高い。半導体や電動車の部材が増えるほど、需要が積み上がる。界面活性剤も、化粧品原料の高付加価値化が追い風になる。
財務は堅く、政策保有株は売却を進めている。売却資金を成長分野の設備や自社株買いに回せば、ROEは上がる。時価総額が自己資本の半分にも満たない会社が、利益率を3%に乗せれば、評価は見直される。
配当も、業績が戻れば増える余地がある。小さな会社だからこそ、一つの製品が当たれば利益が大きく動く。
足元では、2027年3月期の営業利益予想が前期の2倍以上になる。計画の初年度が達成されれば、市場の見方も変わる。
油脂系の原料は価格が安定すれば、利益率の追い風になる。
慎重な見方
利益率の改善は、これまでも約束だけだった。前の中期計画は営業利益8億円を掲げて届かず、2026年3月期の営業利益は30%減った。新しい計画の17.5億円も、同じ道をたどる恐れがある。
汎用の可塑剤は、中国勢と値段で戦う市場で、構造的に採算が悪い。堺工場の閉鎖は売上を減らし、固定費の削減が売上減に見合う保証はない。原料の油脂と石化品の市況が上がれば、値上げが遅れて利益が削られる。
ROEは3%で、自己資本が大きいほど稼ぎとの落差が目立つ。配当も小さく、株主に戻る現金は少ない。保有株の含み益も、売却すれば税を払う。
時価総額が自己資本の4割台なのは、市場が資産を額面どおり評価していない表れだ。帳簿は床にならない。
電子材料は顧客の設備投資の波が大きく、需要が細る年は売上が急に落ちる。
構造改革は費用が先に出て、効果が後から来る。その間に市況が悪化すれば、計画はさらに遅れる。
堺工場の閉鎖後も、生産を移した先の稼働率が上がらなければ、固定費は残る。
どちらに重みを置いたか
利益率の改善策は強気の見方が示すとおり筋が通っているが、実績で確かめられていない点は慎重な見方が勝る。そこで中立を40%、やや悲観を25%と厚めに置いた。
結果として、10年の価値は今の時価総額を3割ほど下回る。帳簿の自己資本と稼ぐ力の落差が、割高の最大の理由だ。
ただ、構造改革が実を結べば上振れもあるため、楽観側も一定の確率を残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 320 円119 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 57 円21 億円)。 今の値に割り戻すと 175 円65 億円、今との差 −20.3%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 656 円245 億円 | 94 円35 億円 | +240.9% | +13.0% | 52 円20 億円 |
| やや楽観 | 20% | 484 円181 億円 | 75 円28 億円 | +154.3% | +9.8% | 112 円42 億円 |
| 中立 | 40% | 352 円131 億円 | 64 円24 億円 | +89.5% | +6.6% | 167 円62 億円 |
| やや悲観 | 25% | 123 円46 億円 | 32 円12 億円 | −29.5% | −3.4% | 39 円14 億円 |
| 悲観 | 8% | 64 円24 億円 | 16 円6 億円 | −63.4% | −9.6% | 6 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 320 円119 億円 | 57 円21 億円 | +71.1% | +5.5% | 376 円140 億円 |
今の株価時価総額 220 円82 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:機能品が育ち、利益率は5%台 利益 21 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 656 円245 億円
堺工場の閉鎖で固定費が下がり、電子材料と自動車向けの機能品が伸びる。数量は実質で8%増え、物価を少し上回る値上げが通る。
営業利益率は中期計画の5%台に乗る。化粧品原料などの高付加価値品も、利益率を押し上げる。
政策保有株の売却資金を設備と自社株買いに回し、配当も増える。自己資本は300億円台に積み上がるが、ROEは資本コストにまだ届かない。
汎用の可塑剤は縮小し、機能品の比率が過半を超える。会社の性格が変わる筋書きだ。
顧客の共同開発が実り、新しい用途の売上が積み上がる。会社の売上の質が変わり、価格を自分で決める力が少し戻る。
- 油脂化学品・石油化学系製品(単一セグメント):数量 138(販売数量(千トン換算。売上÷平均単価の推定))× 価格 3.53(1千トン換算あたりの売上(億円、名目))→ 売上 487 億円・営業利益 27 億円。138千t相当 × 1千tあたり3.53億円(物価を少し上回る)、営業利益率5.5%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 245 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:機能性の製品と電子材料が育ち、中期計画の利益率5%に届く筋書き。実績が目標に届かない会社で1割未満。
やや楽観 20% やや楽観:工場集約が実り、利益率は4%台 利益 16 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 484 円181 億円
堺工場の閉鎖が計画どおり進み、汎用品の赤字が止まる。数量は実質で3%増え、値上げは物価並みに通る。
営業利益率は過去の山を超える4%台に乗る。第1歩の2027年3月期予想(営業利益15億円)に近い水準が定着する。
配当は小幅に増え、保有株の売却も進む。設備の更新費は建築費・機械価格の上昇で膨らみ、償却を超える分は現金が出る。
自己資本は280億円台になる。
電子材料向けの引き合いは堅調で、汎用品の縮小を補う。
人手不足による賃上げは続くが、工場の集約が人件費の上昇を抑える。
特別な追い風は置かず、工場の集約と値上げの定着で達成できる範囲の筋書きだ。
- 油脂化学品・石油化学系製品(単一セグメント):数量 132(販売数量(千トン換算。売上÷平均単価の推定))× 価格 3.36(1千トン換算あたりの売上(億円、名目))→ 売上 444 億円・営業利益 20 億円。132千t相当 × 3.36億円(物価1.34倍)、営業利益率4.4%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 181 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場の集約が実り、利益率が過去の山を超える筋書き。
中立 40% 中立:数量は微減、利益率は3%台前半 利益 12 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 352 円131 億円
数量は実質で2%縮む。汎用の可塑剤の国内需要は細るが、機能品の増加で一部を補う。値上げは物価並み(1.34倍)で通る。
営業利益率は3%台前半。過去12年の山(3.7%)より下で、堺工場の閉鎖による固定費の削減が一部実る。
減価償却は、今ある設備では取得時の値段のまま7.6億円ほど。新しい設備の償却が加わるが、設備投資が償却を下回る状態が続く。更新の投資は物価で膨らむ。
配当は業績に応じて小幅に増える。自己資本は270億円台。
電子材料は景気の波を受けるが、10年の平均では数量を押し上げる程度にとどまる。
堺工場の閉鎖費は先に出て、効果は後から来る。
- 油脂化学品・石油化学系製品(単一セグメント):数量 125(販売数量(千トン換算。売上÷平均単価の推定))× 価格 3.36(1千トン換算あたりの売上(億円、名目))→ 売上 420 億円・営業利益 14 億円。125千t相当 × 3.36億円(物価1.34倍)、営業利益率3.3%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 131 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は微減、利益率は過去の山に近い3%台の普通の筋書き。
やや悲観 25% やや悲観:汎用品が押され、利益率は1%台 利益 6 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 123 円46 億円
汎用の可塑剤が中国勢に押され、数量は実質で1割縮む。値上げは原料高に追いつかず、価格は物価に届かない。
堺工場の閉鎖で固定費は減るが、売上の減少が上回る。営業利益率は1%台に戻る。
配当は据え置きに近く、保有株の売却で穴を埋める。借入が増えれば、利払いが3.5%で積み上がる。
自己資本は230億円ほどにとどまり、ROEは2%台に落ちる。
電子材料の需要も景気の悪化で細り、利益を支える柱が見つからない。
構造改革は費用ばかりが先に出て、効果が見えにくい。
工場の集約で固定費を減らしても、売上の減少を取り戻せない。
- 油脂化学品・石油化学系製品(単一セグメント):数量 115(販売数量(千トン換算。売上÷平均単価の推定))× 価格 3.10(1千トン換算あたりの売上(億円、名目))→ 売上 357 億円・営業利益 6 億円。115千t相当 × 3.10億円(値上げが物価に届かない)、営業利益率1.8%
倍率:ROE 約2.4%で k を大きく下回る。中立の8倍より下げて7.0倍に置いた。
確率:汎用の可塑剤が中国勢に押され、利益率が1%台に戻る筋書き。
悲観 8% 悲観:汎用品の負けで赤字、資産で測る 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 64 円24 億円
汎用品の構造的な負けが決定的になる。中国と東南アジアの輸入品が国内に入り、数量は実質で25%減る。
工場の再編が遅れて固定費が残り、営業赤字に転落する。設備の減損が出て、自己資本は150億円に減る。
配当は縮み、政策保有株の売却と資産の処分で借入を返す。価値は稼ぐ力でなく、売れる資産に頼る。
清算されない限り、少数株主は現金の使い方を決められず、株価は純資産を大きく下回る。
顧客の取引先が海外に移り、国内の売上が細る。
生産を移した先の工場でも、品質のつまずきが起きる。
人員の削減と事業の売却を急ぐが、買い手がつく事業は限られる。
- 油脂化学品・石油化学系製品(単一セグメント):数量 95.0(販売数量(千トン換算。売上÷平均単価の推定))× 価格 2.90(1千トン換算あたりの売上(億円、名目))→ 売上 276 億円・営業利益 −3 億円。95千t相当 × 2.90億円、営業利益率-1%
倍率:稼ぐ力が無いので、床は今の自己資本197億円に掛ける。保有株の税後の売却額と工場・在庫の売却価値を勘案し、工場閉鎖費と借入の返済後で0.16倍。中立の PBR(約0.34倍)より低い。
確率:汎用品の構造的な負けと、工場再編のつまずきが重なる筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
油脂化学品・石油化学系製品(単一セグメント)
脂肪酸・界面活性剤などのオレオケミカルと、可塑剤・樹脂添加剤・エポキシ硬化剤などの石化系製品。開示は単一セグメント。
| 数量販売数量(千トン換算。売上÷平均単価の推定) | 価格1千トン換算あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 128 | 2.51 | 321 | 6 |
| 10 年後 中立 | 125 | 3.36 | 420 | 14 |
取り方:売上321億円を、汎用可塑剤(1トン20万円前後)と界面活性剤・電子材料向け(30万円以上)を均した平均25万円で割り、128千トン相当と置いた推定。数量・製品別の金額は開示されていない。営業利益5.76億円は有価証券報告書の値。
リスクと懸念
利益率の低さと計画未達
営業利益率は直近1.8%。前の中期計画は営業利益8億円を掲げて届かなかった。新計画の17.5億円も不確実だ。
汎用可塑剤の構造的な縮み
塩ビ向けの国内需要は人口減で細り、中国・東南アジアの輸入品が値段を押さえる。数量も価格も上がりにくい。
原料の市況
パーム油などの油脂と石化原料は、為替と市況で動く。値上げが遅れる年は利益が大きく削られる。
工場再編の実行
堺工場は2027年6月末に閉鎖する。閉鎖費5.26億円のほか、生産の移管に失敗すれば顧客を失う。
顧客の価格交渉力
界面活性剤は大手のトイレタリー会社が主な顧客で、値下げ圧力が強い。電子材料は需要の波が大きい。
資本効率の低さ
自己資本197億円に対し純利益は6億円。ROEが資本コストを下回る構造が続けば、株主の取り分は増えない。
今後の分かれ目
- 営業利益率が4%を超えて定着したら
- やや楽観に確率を寄せてよい。ただしROEは資本コストにまだ届かない。
- 2027年3月期の営業利益が15億円に届かなかったら
- 構造改革の遅れが確かになり、やや悲観の確率を上げる。
- 機能品(電子材料・自動車向け)の売上比率が過半を超えたら
- 利益の質が上がり、倍率を上げる余地が出る。
- 保有株の売却資金で自社株買いが始まったら
- 資本効率が改善する。還元が増える材料になる。
- 大手化学会社などによるTOBが発表されたら
- プレミアムが付く可能性がある。自己資本比で安いため、条件次第で価値は大きく動く。
見ておくもの
- 営業利益率(3%台への定着)
- 堺工場の閉鎖と生産移管の進捗
- 機能品の売上比率
- 政策保有株の売却と還元の方針
- 新中期計画(2030年度 営業利益17.5億円)の達成度
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が k 8.75%を大きく下回る筋書きが中心なので、上限 1÷k(11.4倍)の6〜9割に置いた。今の株価(PER 約14倍・PBR 約0.43倍)や同業の倍率は根拠にしていない。やや悲観・悲観の PBR が0.2倍前後と低く出るのは、稼ぐ力がほぼ無い筋書きで、帳簿の自己資本を床にしないためだ。営業利益率は過去12年の山(3.7%)より下の3.3%を中立とした。減価償却は物価で増やさず、新しい設備の償却だけを足している。新リース会計基準の影響は小さく、今の形で揃えた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.43 倍・やや楽観 PER 9→11.43 倍・中立 PER 8→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。