結論
アルマードは、卵の殻の内側の薄い膜「卵殻膜」を使った化粧品と健康食品を、通販で売る会社だ。工場は持たず、作るのは全部外の会社に任せる。筆者の結論は「やや割安」である。今の利益は、新しい客を取るための広告に稼ぎを注ぎ込んだ後の、谷に近い姿だと見るからだ。
2026年3月期は売上が2割増えた一方、営業利益は3割近く減った。男性向けのスキンケアのテレビCMで定期購入の会員を3割以上増やしたが、その広告費が先に出ていった。会員が残って買い続ければ、広告費は後から回収される。過去9年の営業利益率の中央値は13%近くあり、筆者は10年後に9%前後まで戻ると見る。
弱みもはっきりしている。売るのは卵殻膜という1つの素材だけで、その原料も特定の取引先に頼る。テレビ通販は元社長の出演に左右され、まねをした商品も出てくる。広告で客を買う商売は、広告の値段が上がれば一気に利益が細る。同じ通販の北の達人コーポレーションは、利益率が3分の1に落ちた。
それでも、工場を持たない身軽さで、稼いだ利益のほとんどを配当で株主に戻してきた。資本をほとんど使わずに稼ぐ形が保てれば、利益が並みに戻るだけで今の時価総額を上回る価値がある。払う値段に対し、確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額の2割5分ほど上にある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「今の利益」より「広告をやめた時の利益」で測るべきだ。定期購入の通販は、新しい客を取る広告費をその年の費用に計上する。会員が何年も残るなら、その広告費は将来の利益への投資にあたる。会員を3割増やした年に利益が減るのは、その形のせいだ。
筆者が見る実力は、広告を並みに戻した時の営業利益率で9〜10%ほどだ。過去の中央値は13%近いが、広告の単価が上がる流れを考えて下に見た。資本をほとんど使わずに稼げるので、その利益のほとんどを株主に戻せる。稼ぐ力に比べて自己資本が小さいことは、この会社の欠点ではなく長所である。
気になるのは、事業がいくつもの細い糸でつながっている点だ。1つの素材、1つの原料の調達先、委託先の工場、テレビ通販の顔。どの糸が切れても売上は落ちる。素材をまねする会社も出てくる。だから、高い倍率は付けにくい。
それでも、利益が並みに戻るだけで、今の時価総額は低く見える。安全域は、利益の回復を待てるかどうかにかかっている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、卵殻膜を配合した化粧品とサプリメントの定期購入だ。代表的な商品は、化粧品の「Ode」シリーズ、全身の美容をうたうサプリメント「TO-Ⅱ」、飲む美容液の「Ⅲ型ビューティードリンク」などである。卵殻膜は昔から傷の手当てに使われてきた素材で、肌の弾力に関わる成分を含むと会社は説明する。大学との研究で効能を示し、それを広告の柱にしている。
売り方は4つある。いちばん大きいのは自社のネット通販とECモールの直販で、売上の73%を占める。テレビ通販のQVCジャパンが9%、ドラッグストアやバラエティショップへの卸が9%、他社ブランドの商品に卵殻膜の原料や製品を納めるOEMが9%だ。
直販の仕組みは、広告で新しい客を呼び、定期購入の会員に変えて、何年も買い続けてもらうことにある。2026年3月末の定期会員は12.6万人で、1年で3割以上増えた。男性向けスキンケアのテレビCMとECモールが効いた。
会社は工場を持たない。製造は外の会社に任せ、自社の93人は商品の企画・研究・広告・顧客対応に集中する。だから設備投資はほとんど要らず、売上が伸びても資本はあまり増えない。その代わり、販売費と一般管理費が売上の7割近くを占め、その多くが広告費だ。
卵殻膜の原料は大部分を特定の取引先から仕入れる。2026年5月には中東情勢による原料と物流の不確実性を理由に、次の期の業績予想をいったん出さなかった。8月に売上125億円・営業利益8億円の予想を示した。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、資本をほとんど使わずに稼ぐ形にある。工場も在庫の山も持たず、自己資本は20億円に満たない。それでも年に5億円以上の純利益を出し、ROEは3割前後になる。稼いだ現金の7割から9割を配当で戻しても、事業は回る。
堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。卵殻膜という素材を長く研究し、効能の論文と顧客の信頼を積み上げた点は先行者の強みだ。定期会員は一度つかめば何年も買ってくれる。だが素材そのものは誰でも仕入れられ、卵殻膜を配合した商品は他社からも出ている。会社自身が、競合やOEM先が同じ素材の商品を多く出せば競争が厳しくなると書いている。
値段を決める力も限られる。広告で客を買う商売で、売値を上げれば新しい客が取りにくくなる。利益率は広告をどれだけ使うかで大きく動き、過去9年で7%から21%まで振れた。
頼る相手が多いのも弱みだ。原料は特定の取引先、製造は委託先、テレビ通販はQVCと元社長の出演に頼る。どれか1つが崩れれば、売上はすぐに揺らぐ。筆者は、この会社を「小さく強い堀」ではなく「よく回る商売」と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の化粧品と健康食品の通販は、量が増えない成熟した市場だ。人口が減り、肌や健康にお金を使う中高年は増えても、全体の量は横ばいに近い。値段は物価並みに上がるが、それ以上は難しい。
競争の本質は、広告で客を取る値段の勝負にある。ネット広告の単価は上がり続け、SNSやECモールから新しいブランドが次々に出てくる。同じ客を取るのに年々お金がかかる。新日本製薬やファーマフーズのような大手の通販、店頭の大手メーカーの商品、モールの安い商品が同じ客を奪い合う。北の達人コーポレーションは、広告の効きが落ちて営業利益率が3割近くから1割弱まで下がった。
一方で、男性の肌の手入れや、飲んで美容を保つ商品の市場は伸びている。ドラッグストアやバラエティショップの棚に並べば、広告に頼らずに客と出会える。アルマードはここ2年で店頭の売上を倍近くにした。
規制も見ておく必要がある。2024年の紅麹の問題の後、機能性表示食品の規制は厳しくなった。定期購入の解約のしやすさや、広告の表現への監視も強まっている。生成AIで商品の探し方が変われば、検索広告から客を取る今の形も変わりうる。筆者は、この業界の量は10年で横ばい、勝ち残るのは会員が長く残る会社だけだと見る。
資本政策と M&A
株主への還元は厚い。2025年3月期は配当性向92%、2026年3月期も75%で、稼いだ利益のほとんどを配当で戻している。2026年3月期の配当の総額は3.9億円だった。次の期の配当は、成長投資の資金需要を見て決めるとして未定だ。過去には自社株も買った。
資本は小さく保たれている。自己資本は18億円で、借入金とリースが合わせて20億円ある。手元の現金は16億円で、純負債はほぼゼロだ。第1四半期の末には配当の支払いと赤字で自己資本が12億円まで減り、総資産は膨らんだ。広告と在庫に先にお金を使う季節の形だが、借入に頼る度合いは高まっている。
株主の顔ぶれも変わった。2017年に投資ファンドのアント・キャピタルが過半を握り、上場後の2022年に全部を売った。同じ時に化学品の商社のCBCが12%台まで買い増し、長く持つと表明した。親会社はいない。時価総額は70億円ほどで、事業会社や化粧品の大手に買われる可能性はある。卵殻膜の原料と研究を手に入れたい会社にとって、手頃な大きさだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の減益は、成長のための広告の投資にすぎない。定期会員は1年で9.4万人から12.6万人に増え、第1四半期の売上も4割近く伸びた。定期会員は一度つかめば何年も買い続ける。新しい客を取る広告を少し緩めれば、利益はすぐに戻る。過去9年の営業利益率の中央値は13%近く、20%を超えた年もある。
伸びしろも大きい。男性向けのスキンケアはまだ始まったばかりの市場で、テレビCMで客を取れることがはっきりした。ドラッグストアとバラエティショップの棚は2年で売上を倍近くにし、広告に頼らない客の入り口が広がっている。海外では、日本の美容素材への関心が高いアジアがある。
卵殻膜の研究の蓄積は、まねをする会社には簡単に追いつけない。大学と組んだ論文と、20年以上の商品づくりの経験がある。素材を語れる会社だけが、効能を前面に出した広告を打てる。
資本の効率も抜群だ。工場を持たず、自己資本20億円で年5億円以上を稼ぐ。利益のほとんどを配当で戻しても事業は伸びる。会員が20万人を超え、利益率が過去の中央値に戻れば、純利益は今の3倍を超える。その時、今の時価総額は大きく割安だったことになる。
慎重な見方
広告で客を買う商売は、広告の値段に命を握られている。ネット広告の単価は上がり続け、新しいブランドが同じ客を奪い合う。同じ通販の北の達人コーポレーションは、利益率が3分の1になった。アルマードの利益率も、21%から7%へ下がってきた。これは一時の投資ではなく、客を取る値段が構造的に上がった結果かもしれない。
頼る糸も細い。卵殻膜の原料は特定の取引先、製造は委託先に頼る。中東情勢を理由に業績予想を出せなくなったことが、調達のもろさを示している。テレビ通販は元社長の出演に左右され、OEMの受注は1年で4割減った。
素材のまねも防げない。卵殻膜を配合した化粧品は他社からも出ており、大手が本腰を入れれば価格で勝てない。機能性表示食品の規制が厳しくなれば、効能をうたう広告も打ちにくくなる。
財務も見かけより薄い。利益のほとんどを配当で出すため、第1四半期の末の自己資本は12億円まで減った。借入は20億円あり、谷の年が続けば配当を減らすしかない。会員が伸びても利益が伴わなければ、高い配当は続かず、株主が受け取る現金は細る。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。利益の減少は会員を3割増やすための広告の投資と、テレビ通販とOEMの不振で説明でき、会員が残る限り広告費は後から回収される。ただし広告の単価が上がる流れは同じ領域の北の達人コーポレーションが示しており、利益率を過去の中央値まで戻す見方はとらない。確率は中立を中心に、やや悲観をやや楽観より厚くし、悲観も1割強残した。新日本製薬・北の達人と同じ形にそろえた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,776 円164 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 595 円55 億円)。 今の値に割り戻すと 1,204 円111 億円、今との差 +62.7%、 期待の年率 +12.3%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,683 円433 億円 | 1,189 円110 億円 | +693.5% | +23.0% | 411 円38 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,107 円288 億円 | 885 円82 億円 | +439.5% | +18.4% | 719 円66 億円 |
| 中立 | 37% | 2,041 円189 億円 | 673 円62 億円 | +266.8% | +13.9% | 1,004 円93 億円 |
| やや悲観 | 26% | 470 円44 億円 | 346 円32 億円 | +10.3% | +1.0% | 212 円20 億円 |
| 悲観 | 12% | 98 円9 億円 | 108 円10 億円 | −72.1% | −12.0% | 25 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,776 円164 億円 | 595 円55 億円 | +220.4% | +12.3% | 2,371 円219 億円 |
今の株価時価総額 740 円68 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 男性向けと店頭とアジアで会員が倍近くに 利益 22 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 4,683 円433 億円
男性向けのスキンケアが定着し、テレビCMとECモールで若い男性の客を取り込む。ドラッグストアの棚も全国に広がり、広告に頼らない客の入り口になる。アジアの越境ECでも卵殻膜の美容が知られ、定期会員は10年で24万人に増える。
会員が厚くなると、新しい客を取る広告費の比率は下がる。営業利益率は13%と、過去の中央値に戻る。会員1人あたりの売上は、値上げと商品の組み合わせで物価にほぼ並んで増える。
卵殻膜の研究で新しい効能が示され、まねをする会社との差が開く。利益の8割を配当で戻しても、純利益は20億円を超える。化粧品の大手が提携や買収を持ちかけることもありうる。
工場を持たない形は変わらず、売上が倍以上になっても資本はほとんど増えない。
- 卵殻膜ヘルスケア:数量 24.0(定期会員の数(万人))× 価格 10(会員 1 人あたりの全社の売上(万円・年))→ 売上 250 億円・営業利益 33 億円。会員 24 万人・単価 1.30 倍・利益率 13%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 49.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 22.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍。全体の PER 19.27 倍、時価総額 433 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:男性向けと店頭とアジアが同時に伸び、利益率も過去の中央値に戻る筋書き。全部がそろう確度は低い。
やや楽観 18% 会員が育ち、広告の比率が下がる 利益 15 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 3,107 円288 億円
直販の会員は10年で19万人に増え、男性向けと女性向けの両方が育つ。店頭の売上も伸び、テレビ通販とOEMの落ち込みを埋める。会員1人あたりの売上は、値上げで物価並みに増える。
会員が厚くなるにつれ、新しい客を取る広告の比率が下がり、営業利益率は11%まで戻る。過去の中央値には届かないが、広告の単価の上昇を会員の長さで吸収する。
配当性向は8割前後を保ち、自己資本は小さいままだ。ROEは4割近くになる。原料の調達は2社目の取引先を加えて安定する。
テレビ通販は元社長の出演が減っても、ほかの出演者と商品で売上を保つ。卵殻膜をまねした商品は出るが、研究の先行と会員の長さで値引きの競争には巻き込まれない。純利益は今の3倍近くになる。
- 卵殻膜ヘルスケア:数量 19.0(定期会員の数(万人))× 価格 11(会員 1 人あたりの全社の売上(万円・年))→ 売上 201 億円・営業利益 22 億円。会員 19 万人・単価 1.32 倍・利益率 11%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 42.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 19.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍。全体の PER 18.71 倍、時価総額 286 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会員が20万人近くまで伸び、利益率が1割強に戻る筋書き。直近の会員の伸びが続けば届く。
中立 37% 会員は16万人で落ち着き、利益率は9% 利益 10 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 2,041 円189 億円
定期会員は10年で16万人に増えたところで落ち着く。男性向けと店頭の伸びはあるが、ネット広告の単価が上がり続け、新しい客を取る値段は年々高くなる。会員1人あたりの売上は、値上げで物価並みに増える。
営業利益率は9%に落ち着く。広告を緩めた年は利益が戻るが、会員を保つための広告は続けざるをえない。テレビ通販は元社長の出演が減るにつれて細り、OEMは横ばいだ。
純利益は10億円ほどになる。配当性向8割で株主に戻し、自己資本は30億円台にとどまる。ROEは3割前後と高いが、事業の伸びは物価を少し上回る程度だ。素材ひと筋の小さな通販会社のまま、10年後も続いている。
- 卵殻膜ヘルスケア:数量 16.0(定期会員の数(万人))× 価格 10(会員 1 人あたりの全社の売上(万円・年))→ 売上 167 億円・営業利益 15 億円。会員 16 万人・単価 1.30 倍・利益率 9%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 34.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 16.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 17.96 倍、時価総額 186 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会員は16万人で落ち着き、広告の単価の上昇で利益率は9%にとどまる。過去の記録と業界の流れの折り合い。
やや悲観 26% 広告の効きが落ち、会員が頭打ち 利益 4 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 470 円44 億円
広告の効きが落ち、新しい客を取る値段が会員の生涯の売上に見合わなくなる。会社は広告を絞り、定期会員は12万人前後で頭打ちになる。テレビ通販は元社長の出演が無くなって大きく減り、OEMも先細る。
卵殻膜を配合した他社の商品が増え、値引きの競争に巻き込まれる。会員1人あたりの売上は物価に追いつかない。営業利益率は5%まで下がる。
配当は性向7割を保つが、額は今と変わらない。ROEは小さな自己資本のおかげで1割を超えるが、利益そのものは伸びない。時価総額は稼ぐ力に見合う水準まで下がる。
資本が小さいので、利益が細っても配当は続けられる。ただし借入の利払いは金利の上昇で少し重くなり、成長の投資に回すお金は残らない。会社は買い手を探すこともありうるが、伸びない通販に高い値段は付かない。
- 卵殻膜ヘルスケア:数量 12.0(定期会員の数(万人))× 価格 9.78(会員 1 人あたりの全社の売上(万円・年))→ 売上 117 億円・営業利益 6 億円。会員 12 万人・単価 1.22 倍・利益率 5%
倍率:広告の効きが落ちて利益が伸びない筋書き。ROE は自己資本が小さいので 12% あるが、稼ぐ力の伸びは無い。上限 1÷k=11.8 倍を下回る 9.0 倍とし、PBR は中立より大きく低い。
確率:広告の効きが落ち、会員が今の水準で頭打ちになる筋書き。北の達人の例があるので厚めに置く。
悲観 12% 原料と規制とまねで、素材ひと筋が崩れる 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 98 円9 億円
卵殻膜の原料の取引先が供給を絞り、代わりの調達先を探すまで欠品が続く。同じ時期に機能性表示食品の規制が強まり、効能をうたう広告が打てなくなる。化粧品の大手が卵殻膜の商品を安く出し、ドラッグストアの棚も奪われる。
定期会員は8万人まで減り、営業赤字に沈む。配当は止まり、借入の返済に現金が回る。会社は清算されないが、少数株主に戻る現金はほとんど無い。価値は今の自己資本の半分ほどにとどまる。
卵殻膜の研究と商標には、他社が買う値段が少し付く。だが会員が離れた後の通販の仕組みには、ほとんど値段が付かない。借入を返し終えた後に残るのは、在庫と少しの現金とブランドの名前だけだ。過去に配当で戻した現金が、株主の手元に残った唯一の果実になる。
- 卵殻膜ヘルスケア:数量 8.0(定期会員の数(万人))× 価格 8.82(会員 1 人あたりの全社の売上(万円・年))→ 売上 71 億円・営業利益 −1 億円。会員 8 万人・単価 1.10 倍・営業赤字
倍率:赤字なので PBR で測る。今の自己資本 18.2 億に 0.5 倍を掛けた約 9 億。稼ぐ力は無く、床は売れる資産(floor_assets_oku)から置いた。
確率:原料の調達か規制か大手のまねで、素材ひと筋の商売が崩れる筋書き。細い糸の多さを見て1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
卵殻膜ヘルスケア
卵殻膜を配合した化粧品(Ode など)と健康食品(TO-Ⅱ・Ⅲ型ビューティードリンクなど)を、自社の EC・テレビ通販・店頭・OEM で売る。製造はすべて外注。
| 数量定期会員の数(万人) | 価格会員 1 人あたりの全社の売上(万円・年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.6 | 8.03 | 101 | 7 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 10 | 167 | 15 |
取り方:定期会員 126,121 人(2026 年 3 月末、有価証券報告書)を数量とし、全社の売上 101.2 億を会員数で割った 1 人あたり 8.02 万円を単価とした(テレビ通販・店頭・OEM の売上も会員 1 人あたりに含めた推定)。物価 3% は単価に入れた。
リスクと懸念
広告の単価の上昇
新しい客はネット広告とテレビCMで取る。広告の単価が上がり、会員が何年も残らなければ、広告費は回収できない。北の達人コーポレーションは広告の効きが落ちて利益率が3分の1になった。アルマードも直近の減益の主因は広告費だ。
原料と製造の調達先への依存
卵殻膜の原料は大部分を特定の取引先に頼り、製造も外の委託先に任せる。中東情勢による原料と物流の不確実性を理由に、2026年5月には業績予想を出せなかった。供給が止まれば欠品と会員の離反が起きる。
素材のまねと大手の参入
卵殻膜は誰でも仕入れられる素材で、配合した商品は他社からも出ている。化粧品の大手が本腰を入れれば、店頭の棚と価格で太刀打ちしにくい。
テレビ通販とOEMの細り
QVCジャパン向けは売上の9%で、番組は元社長の出演に左右される。2026年3月期は大型番組が予算に届かず2割減った。OEMの受注も4割減った。
規制の強化
機能性表示食品の制度は紅麹の問題の後に厳しくなった。定期購入の解約や広告の表現への規制が強まれば、客の取り方を変えざるをえない。
配当の重さと財務の薄さ
利益の7〜9割を配当で出すため、自己資本は小さい。第1四半期の末は12億円まで減り、借入は20億円ある。谷の年が続けば配当を減らすしかない。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が会社の予想(8億円)に届き、会員も増え続ける
- 広告の投資が回収の局面に入ったと見て、やや楽観の確率を上げる。
- 広告を増やしても会員の伸びが止まる
- 客を取る値段が構造的に上がったと見て、やや悲観に寄せ、中立の利益率を下げる。
- 卵殻膜の原料で2社目の調達先を確保する
- 調達のもろさが減ったと見て、寿命の上乗せを下げることを考える。
- 化粧品の大手が卵殻膜の商品を店頭に大きく出す
- 素材の差が薄れると見て、悲観の確率を上げる。
- 配当を大きく減らして借入を返す
- 株主に戻る現金が細る。事業の谷が深いのか、成長投資なのかを見分ける。
- 事業会社や化粧品の大手が買収を提案する
- 卵殻膜の原料と研究と会員に値段が付く。本質価値とは別の上振れとして扱う。
見ておくもの
- 定期会員の数と1年の増え方
- 販売費と一般管理費の売上に対する比率
- チャネル別の売上(直販・テレビ通販・店頭・OEM)
- 卵殻膜の原料の調達先の数
- 配当性向と自己資本・借入の推移
倍率と資本コストの決め方
数量は定期会員の数、単価は会員 1 人あたりの全社の売上で積み、物価 3% は単価に入れた。k は基本 7.5% に quality +1.0% で 8.5%。ROE は自己資本が小さいので高く、堀は弱いとみて残る割合 1/3 で正当化 PER を出し、その 7.2〜7.5 割に置いた。慎重側は稼ぐ力と売れる資産から置いた。今の PER(13 倍台)・PBR(3.8 倍)は使っていない。中立の利益率は過去の中央値(13% 近く)より下の 9% とした。新リース会計基準の影響は事務所の賃借だけで小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.6→19.27 倍・やや楽観 PER 12.6→18.71 倍・中立 PER 12→17.96 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の調整+1.0%を足した。