結論
フマキラーは、蚊取りやエアゾールなどの殺虫剤を作る、広島県の会社だ。売上の3分の2は海外で、東南アジアでは主要な国で首位か2位に立つ。筆者の結論は 「やや割高」 である。
前期(2026年3月期)の売上は774億円と過去最高だった。だが営業利益は22億円と2割近く減り、営業利益率は2.8%にとどまった。東南アジアが広告と販促に費用を投じ、国内は春先の天候不順と値上げによる数量減で苦しんだためだ。
稼ぎの形は偏っている。セグメントごとの利益は、東南アジアが15億円、欧州が5億円の黒字で、日本は5億円の赤字だ。日本の赤字は3期続いている。海外が国内の穴を埋めている会社だ。
財務は並みである。自己資本比率は39%、借入から現金を引いた純負債は98億円で、時価総額の半分に当たる。借金は、利益の薄さを考えると軽くない。株主は、エステーが1割、創業家系の財団と会社と個人で1割半を持ち、持ち合いの色が濃い。
10年の見立ては、東南アジアの数量が1.4倍に伸び、国内の赤字が収まって、営業利益率が4%台に乗る形を中心に置いた。
バリュー投資の観点から
まず、事業が10年後も分かるかを考える。蚊取りとエアゾールは、10年後も同じ形で売れる。理解しやすい事業だ。
次に、堀はあるか。海外では工場と売り場の厚みがあるが、国内は価格競争が続く。全体で見れば、強いとは言えない。
資本の使い方はどうか。海外の工場と広告に投資する方向は妥当だが、前期はそれが利益を押し下げ、営業利益率は2.8%まで下がった。投資が稼ぎに変わる証拠は、まだ確かめられていない。
安全域はどうか。純負債が時価総額の半分あり、利益が薄いため、価格が少し下がっても安心とは言えない。安全域は、価値を保守的に置いて確保したい。
経営は創業家と提携先の株主に支えられ、安定している。一方で、少数株主の声が届きにくい構造でもあり、資本の効率を上げる圧力は弱い。この点も値段の評価を慎重にする理由だ。
何で稼ぐ会社か
事業は地域で四つに分かれる。日本、東南アジア、欧州、その他(メキシコ)だ。
日本は殺虫剤、アルコール除菌剤、除草剤、業務用の殺虫剤を売る。蚊取りの「ベープ」とゴキブリ駆除が看板だ。業界では珍しく、金型の設計やエアゾールの充填まで自社で行う。売上は270億円で、前期は数量が落ちて減収だった。小売との取引には返品の慣行があり、返品率は6%前後と高い。
東南アジアは、インドネシア、マレーシア、ベトナム、ミャンマーなどで蚊取り線香とエアゾールを売る。現地の工場が8か所あり、売上は337億円と全社の4割強だ。会社の推定では、主要4か国のシェアは3〜5割台で、3か国が首位となっている。
欧州はイタリアが中心で、売上は137億円。1973年からの「ベープ」の知名度があるが、シェアは2位で19%弱だ。売上は夏に偏る。
メキシコは輸入販売の拠点で、売上は30億円と小さい。業界首位の大手が強い国で、伸びているが規模はまだない。
利益の源は、海外の販売量と現地での値付けだ。国内は市場が大きく動かないため、売り場の取り合いになる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、東南アジアと国内の一部にある。
東南アジアの強みは、現地の工場と、売り場に届く小売網だ。蚊取り線香のような商品は、安く、どこでも買えることが決め手になる。工場8か所と店頭への配荷の厚みは、新しく入る会社が短期でまねできない。ブランドの知名度も長い年月で築かれた。ただ、世界大手のSCジョンソンの「バイゴン」が強い国も多く、首位が固定されたわけではない。
国内の強みは弱い。殺虫剤の国内市場は約1,430億円で、人口が減るなかで横ばいに近い。競合はアース製薬、大日本除虫菊、SCジョンソンなどで、売り場は取り合いだ。前期は競争の激しさから販促費が増え、日本セグメントは赤字だった。値決めの力は、国内では弱い。
欧州は、知名度の割にシェアが2割に届かず、規模の利益が出にくい。
総じて、堀は海外の物流と工場に偏って存在し、全社の収益力を引き上げるほど広くはない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の家庭用殺虫剤の市場は小売ベースで年1,430億円ほどある。ここ10年で1,100億円台から1,400億円台に増えたが、増えた背景には、値上げと、気候の変化による蚊の季節の長期化がある。今後は人口の減少が数量を押し下げ、伸びは物価の分が中心になる。
海外は事情が違う。東南アジアは蚊が媒介する病気への備えが日常の需要で、人口と所得が増え続けている。蚊取り線香、エアゾール、リキッドの数量は、家計の所得とともに伸びる。ただし円で見た売上は、現地通貨と円の動きに左右される。前期は円安が売上を約22億円押し上げた。
悲観の方向では、現地の大手や世界大手の価格攻勢、原材料の高騰、薬剤の規制強化がある。前期末以降の中東情勢でLPGガスや樹脂の価格が上がり、会社は最大18億円の影響を見ている。値上げが通るかどうかで、利益が変わる業界だ。
リーマン級の谷でも、殺虫剤の需要は大きくは落ちない。必需品に近く、2009年前後の落ち込みも浅かった。ただ、天候と為替で一年ごとの利益は大きく振れる。会社の業績が、数量よりも値上げと販促費の出入りで動く業界だ。
資本政策と M&A
資本政策は、堅実だが、使い道が定まらない。
借金は軽くない。自己資本比率は39%、純負債は98億円で、時価総額の半分だ。営業利益は支払利息の11倍あり、返済に困る水準ではないが、薄い利益を借入が押している。前期は設備投資の21億円が営業キャッシュフローの8億円を大きく上回り、差を借入で埋めた。海外の工場や設備にお金を回しながら、配当を保っている。
還元は配当が中心で、方針は安定的・継続的な配当だ。連結の配当性向は前期が33%、今期予想が24%で、利益が減っても配当を保つ形をとる。自社株買いの実績は見当たらない。
株主優待もある。3月末の株主に、100株以上の株主に少額の、500株以上の株主にその3倍の額の自社製品を贈る。株主数の開示は確認できず、費用は年0.5億円前後と置いた。10年で5億円ほどになるので、還元の額に足した。
持ち合いが濃い。エステーが10%、創業家系の財団・会社・個人で15%ほど、銀行や住友化学などを合わせると、安定株主が4割近くになるとみられる。上場株式は約60億円あるが、配当収入として利益に残るので、価値には別に足していない。
自己資本は10年で400億円ほどに増える見込みで、ROEは7%台にとどまる。資本コストの8.5%に届かず、利益を会社に残すほど価値は薄まる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東南アジアは、10年にわたり伸び続ける市場だ。蚊が媒介する病気への備えは、所得が上がっても需要が減らない必需品で、人口は増え、1人あたりの購入量も増える。フマキラーは、現地に工場を8か所構え、主要国で首位か2位の位置にある。蚊取り線香の売上シェアだけなら、ある国で75%を握る。工場と売り場の厚みは、新しく入る会社が短期でまねできない。
前期の利益が減ったのは、将来のために広告と販促を厚くしたからで、能力の低下ではない。広告の効果が出れば、販管費率は下がり、営業利益率は5〜6%に戻る。過去にも2021年3月期に7.3%を出した実績がある。
国内の赤字は、売り場の競争と返品の多さが原因だが、原材料高の一巡と値上げの浸透で、赤字は縮んでいる。日本セグメントの赤字は、ピークの7億円から5億円へ減った。これが収まれば、全社の利益は2割上積みされる。欧州も、リキッドの拡売で数量が伸びている。
財務の面でも、営業利益は支払利息の11倍あり、借入は返せる範囲にある。前期に膨らんだ設備投資は、工場の増強が一巡すれば軽くなる。1割の持ち合い株を持つエステーとの関係は、安定した株主基盤を意味する。10年後、営業利益が90億円規模に育つ筋書きは、無理のない延長線上にある。
慎重な見方
前期の姿が、そのまま会社の実力だ。売上は過去最高でも、営業利益率は2.8%。2023年3月期以降の4期は、3%前後に張りついている。売上は増えても利益が増えない構造になっている。
東南アジアの利益は、24.3期の23億円、25.3期の24億円から前期は15億円に落ちた。広告と販促に費用を投じても、利益に結びつくかは未確認だ。シェアが高い国ほど競争は激しく、世界大手のSCジョンソンや現地の大手が、価格と販促で追ってくる。円安で膨らんだ売上と利益は、円高で逆回りする。
国内は3期連続の赤字で、市場は人口減で伸びない。返品が多く、売り場の取り合いで販促費が増える構造は変わらない。原材料の高騰は一巡したが、中東情勢でLPGガスや樹脂が再び上がり、会社は最大18億円の影響を見ている。値上げは、売り場の交渉力が弱い国内では通りにくい。
財務は軽くない。純負債は時価総額の半分に当たる98億円で、10年で金利が上がれば、利払いが重くなる。上場株式の配当は、利益を支えるが、必要な時に売れる資産ではない。株主は、持ち合いの色が濃く、少数株主の発言力は小さい。計画の未達もあり、前期の営業利益は期初の計画に4分の1届かなかった。
どちらに重みを置いたか
東南アジアの伸びは本物だと筆者は見る。蚊が媒介する病気への備えという必需品の需要が、人口と所得の増加で積み上がり、現地の工場と売り場の厚みがそれを支える。ただ、その価値は利益率の薄さと重い借入、国内の赤字に削られ、ROEは10年たっても資本コストに届かない。そこで海外の数量が1.4倍に伸び、国内の赤字が収まる形を中心に置き、営業利益率は4%台にとどめた。強気の筋書きの根拠である広告投資の回収は、まだ確かめられていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,073 円342 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 428 円70 億円)。 今の値に割り戻すと 1,251 円206 億円、今との差 +9.5%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,505 円742 億円 | 631 円104 億円 | +349.7% | +16.2% | 411 円68 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,100 円511 億円 | 546 円90 億円 | +219.3% | +12.3% | 729 円120 億円 |
| 中立 | 37% | 2,185 円360 億円 | 461 円76 億円 | +131.7% | +8.8% | 979 円161 億円 |
| やや悲観 | 23% | 894 円147 億円 | 328 円54 億円 | +7.0% | +0.7% | 281 円46 億円 |
| 悲観 | 12% | 651 円107 億円 | 182 円30 億円 | −27.1% | −3.1% | 100 円16 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,073 円342 億円 | 428 円70 億円 | +118.9% | +8.2% | 2,500 円412 億円 |
今の株価時価総額 1,142 円188 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 東南アジアが1.65倍に育ち、国内は黒字に戻る 利益 52 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 4,505 円742 億円
10年後、東南アジアの出荷数は1.65倍に増え、値段は物価と円換算の効果で1.38倍に上がる。蚊取りと除虫のブランドが、現地の所得の伸びとともに売り場を広げた形だ。欧州は、リキッド器具の拡売でシェアが2割台に乗る。国内も、販促費が落ち着いて黒字に戻る。
売上は1,490億円ほどに増え、営業利益は90億円、営業利益率は6%になる。前期の2.8%の倍以上だが、過去の山の7.3%には届かない水準だ。
配当は利益の3割を保ち、株主優待の費用を足しても、自己資本は500億円近くに増える。ROEは10%を超え、資本コストを上回る。借入も減り、利益の質も上がる。
- 日本(殺虫剤・家庭用品・園芸用品・防疫剤):数量 104(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 352(1 個あたり売上(円・名目・推定))→ 売上 366 億円・営業利益 11 億円。数量は横ばい、価格は1.36倍まで通る。販促費が落ち着き、利益率は3%まで戻る
- 東南アジア:数量 463(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 166(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 767 億円・営業利益 52 億円。数量1.65倍・価格1.38倍。広告の効果でシェアが上がり、利益率は6.8%まで戻る
- 欧州(イタリア):数量 66.1(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 414(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 274 億円・営業利益 15 億円。数量1.45倍・価格1.38倍。リキッドの拡売でシェア2割台へ
- その他(メキシコ):数量 30.4(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 260(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 79 億円・営業利益 6 億円。数量2倍・価格1.30倍。メキシコが育つ
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.22 倍、時価総額 742 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:広告投資が効き、シェアと値上げが同時に進むには、為替と政情の追い風も要る。1割弱に置く。
やや楽観 20% 海外が着実に伸び、国内の赤字が消える 利益 39 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 3,100 円511 億円
10年後、東南アジアは1.5倍、欧州は1.4倍に伸び、国内は数量が3%減にとどまる。広告投資は利益に結びつき、東南アジアの利益率は6%近くに戻る。日本セグメントの赤字は消え、小さな黒字になる。
売上は1,360億円、営業利益は68億円、営業利益率は5%になる。会社が今期に見る3%台前半から、2ポイント近く上がる。海外の広告投資が実を結び、日本セグメントの赤字が消えることが条件だ。
配当は利益の3割強を保ち、自己資本は440億円ほどに増える。ROEは9%弱で、資本コストと並ぶ。借入も軽くなる筋書きだ。
- 日本(殺虫剤・家庭用品・園芸用品・防疫剤):数量 101(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 345(1 個あたり売上(円・名目・推定))→ 売上 348 億円・営業利益 6 億円。数量0.97倍・価格1.33倍。赤字が消え、利益率は1.8%
- 東南アジア:数量 427(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 162(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 691 億円・営業利益 40 億円。数量1.52倍・価格1.35倍。利益率は5.8%
- 欧州(イタリア):数量 62.9(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 405(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 255 億円・営業利益 12 億円。数量1.38倍・価格1.35倍
- その他(メキシコ):数量 27.4(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 250(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 69 億円・営業利益 4 億円。数量1.8倍・価格1.25倍
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.1 倍、時価総額 511 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の成長が続き、国内の赤字が消える。実現の余地は十分あるので2割に置く。
中立 37% 海外の数量が1.4倍に伸び、国内は赤字を脱する 利益 29 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,185 円360 億円
10年後、東南アジアの出荷数は1.4倍に増え、欧州は1.3倍、メキシコは1.6倍になる。国内は人口が減り、数量は7%落ちる。値段は、海外が物価と為替の差し引きで1.3倍強、国内は1.3倍に上がる。
売上は1,245億円になる。伸びの大半は物価の分だ。営業利益は51億円、営業利益率は4.1%。前期の2.8%を上回るが、2021年3月期の7.3%の6割に届かない。理由は、国内の赤字が収まり、海外の広告投資が売上に見合う利益に変わるからだ。会社の今期の計画(3.5%)の延長でもある。
本社費や共通費も物価で増える点を織り込んだ。利払いは、借入の借り換えで10年に2億円増え、純利益は29億円にとどまる。
配当は利益の3割強、優待費は年0.5億円で、自己資本は400億円ほどに増える。ROEは7%台で、資本コスト8%に届かない。普通の薄利の日用品メーカーとして10年を終える筋書きだ。
- 日本(殺虫剤・家庭用品・園芸用品・防疫剤):数量 96.7(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 337(1 個あたり売上(円・名目・推定))→ 売上 326 億円・営業利益 3 億円。数量0.93倍(人口減)・価格1.30倍(売り場の交渉力が弱く、物価並みには上げきれない)。3期続いた赤字が消え、利益率はわずかな黒字の0.8%
- 東南アジア:数量 393(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 158(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 623 億円・営業利益 31 億円。数量1.4倍(年3.4%増。所得と人口の伸び)・価格1.32倍(現地の物価上昇と円との差し引き)。利益率は5.0%:24.3期の8.5%と前期の4.3%の間
- 欧州(イタリア):数量 59.3(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 402(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 238 億円・営業利益 10 億円。数量1.3倍・価格1.34倍。利益率4.0%は前期の3.9%並み
- その他(メキシコ):数量 24.3(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 240(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 58 億円・営業利益 3 億円。数量1.6倍・価格1.20倍:ペソ安が続き、円換算では物価の上昇ほどには上がらない
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 360 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外は伸び、国内は粘る。前期の利益率が計画に届かなかった点を考え、最も起こりやすい形として4割弱に置く。
やや悲観 23% 海外の伸びが鈍り、国内の赤字が残る 利益 13 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 894 円147 億円
10年後、東南アジアの数量は1.2倍に伸びるが、現地大手との価格競争で値段は1.22倍にとどまり、広告費が重くのしかかる。国内は数量が15%落ち、赤字が残る。
売上は1,010億円。営業利益は25億円、営業利益率は2.5%で、前期より低い。為替も円高に振れ、海外の円換算の売上を押し下げる。
配当は利益の4割で保つため、自己資本は340億円ほどにとどまる。ROEは4%弱で、資本コストを大きく下回る。稼ぐ力は、純利益÷資本コストで155億円ほどと、売れる資産の床と並ぶ。国内の赤字が構造として残り、海外も値上げと広告費の綱引きになるため、利益が薄いまま10年を過ごす形だ。
- 日本(殺虫剤・家庭用品・園芸用品・防疫剤):数量 88.4(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 316(1 個あたり売上(円・名目・推定))→ 売上 279 億円・営業利益 −3 億円。数量0.85倍・価格1.22倍。赤字が残る
- 東南アジア:数量 337(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 146(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 493 億円・営業利益 18 億円。数量1.2倍・価格1.22倍。広告費が利益に結びつかない
- 欧州(イタリア):数量 51.1(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 375(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 192 億円・営業利益 5 億円。数量1.12倍・価格1.25倍
- その他(メキシコ):数量 19.8(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 220(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。数量1.3倍・価格1.10倍
倍率:ROE 約4% が k を大きく下回り、稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 155 億円ほど。売れる資産の税後の約 153 億円と並ぶので、今の自己資本に 0.55 倍を掛けた。事業が黒字を保つ分、清算前提より割り引かない。
確率:広告費が利益に結びつかず、国内の赤字も残る。前期までの流れの延長であり、2割あまりに置く。
悲観 12% 新興国の失速と円高で、全社が薄利に沈む 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 651 円107 億円
10年後、ミャンマーなど新興国の政情不安と円高、世界大手の価格攻勢が重なる。東南アジアの数量は5%減り、値段は1.05倍にとどまる。国内は数量が25%落ち、赤字が3倍近くに膨らむ。
売上は725億円と今より下がる。営業利益は2億円で、営業利益率は0.3%、純利益は赤字になる。減損を15億円見込み、配当は利益の半分まで下げる。
自己資本は280億円にとどまる。稼ぐ力はほぼなく、価値は、売れる資産から借金を引いた約150億円の7割を床とした。工場や売り場の資産は、清算されない限り少数株主は取り出せない。
- 日本(殺虫剤・家庭用品・園芸用品・防疫剤):数量 78.0(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 290(1 個あたり売上(円・名目・推定))→ 売上 226 億円・営業利益 −9 億円。数量0.75倍・価格1.12倍。販促費が重く、赤字が拡大
- 東南アジア:数量 267(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 126(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 336 億円・営業利益 7 億円。数量0.95倍・価格1.05倍。新興国の政情や円高で、売上が円換算で伸びない
- 欧州(イタリア):数量 41.0(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 330(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 135 億円・営業利益 1 億円。数量0.9倍・価格1.10倍
- その他(メキシコ):数量 13.7(出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定)× 価格 200(1 個あたり売上(円換算・名目・推定))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。数量0.9倍・価格1.0倍
倍率:赤字に沈み、稼ぐ力ではなく売れる資産で測る。EV(時価総額 + 純負債)は約 205 億円で営業利益 2 億円の百倍になるが、利益の倍率ではなく資産で見る局面。ただし清算されない限り少数株主は引き出せないので、売れる資産の約 7 割を価値として数えた。PBR は今の自己資本に掛けた値。
確率:新興国の政情悪化や円高、大手の価格攻勢が重なる。可能性は低いが影響が大きいので1割あまりに置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(殺虫剤・家庭用品・園芸用品・防疫剤)
蚊取り、エアゾール、ゴキブリ駆除、除草剤、アルコール除菌剤、業務用の殺虫剤。単体と国内子会社 4 社。3 期連続でセグメントは赤字。
| 数量出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定 | 価格1 個あたり売上(円・名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 104 | 259 | 270 | −5 |
| 10 年後 中立 | 96.7 | 337 | 326 | 3 |
取り方:説明資料の日本セグメント売上 269.51億円を、1個あたりの売上(右の価格欄。エアゾール、マット、除菌剤、除草剤の卸売価格の混合)で割った推定で、出荷数 1.04億個とした。数量の開示はない。セグメント利益は説明資料の -5.29億円。
東南アジア
インドネシア、マレーシア、ベトナム、ミャンマーなどで蚊取り線香、エアゾール、リキッドを売り、現地の工場 8 か所で作る。
| 数量出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定 | 価格1 個あたり売上(円換算・名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 281 | 120 | 337 | 15 |
| 10 年後 中立 | 393 | 158 | 623 | 31 |
取り方:東南アジアの売上 336.90億円を、1個あたりの売上(右の価格欄。線香、エアゾール、リキッドの混合で、現地の価格帯は日本より低い)で割った推定で、出荷数 2.81億個とした。数量の開示はない。セグメント利益は説明資料の14.52億円。
欧州(イタリア)
殺鼠剤、リキッド、マット、エアゾール、忌避剤。1973 年の進出以来の VAPE ブランド。2022 年に現地法人を買収。
| 数量出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定 | 価格1 個あたり売上(円換算・名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45.6 | 300 | 137 | 5 |
| 10 年後 中立 | 59.3 | 402 | 238 | 10 |
取り方:欧州の売上 136.72億円を、1個あたりの売上(右の価格欄。リキッド器具、殺鼠剤、マットの混合)で割った推定で、出荷数 0.46億個とした。セグメント利益は5.29億円。
その他(メキシコ)
インドネシアなどから輸入して売る販売拠点。業界首位の大手が強い国で、小さく伸びている。
| 数量出荷数(百万個)。開示がないため売上から置いた推定 | 価格1 個あたり売上(円換算・名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15.2 | 200 | 31 | 1 |
| 10 年後 中立 | 24.3 | 240 | 58 | 3 |
取り方:メキシコなどの売上 30.52億円を、1個あたりの売上(右の価格欄)で割った推定で、出荷数 0.15億個とした。セグメント利益は1.28億円。
リスクと懸念
東南アジアの政情と為替
売上の4割強が東南アジアで、ミャンマーなど政情の不安定な国を含む。現地通貨が円に対して下がれば、円換算の売上と利益は目減りする。前期は円安が売上を22億円押し上げており、逆回りすれば同じ額が消える。
原材料と物流の高騰
中東情勢でLPGガス、樹脂、キャップの調達価格が上がり、会社は最大18億円の影響を見ている。値上げが売り場で通らなければ、利益がそのまま削られる。
国内の赤字の長期化
日本セグメントは3期連続の赤字で、前期は5億円の赤字だった。競争による販促費の増加と返品の多さが構造的に残れば、全社の利益を2割ほど押し下げ続ける。
天候への依存
殺虫剤の売上は、春先の天候不順で立ち上がりが遅れる。前期は国内の数量減につながった。夏の気温や降雨の年ごとの振れが、利益に直結する。
借入と投資の負担
純負債は98億円で、前期は設備投資が営業キャッシュフローの2倍以上あった。借入の借り換えで金利が上がれば、利払いが重くなる。
薬剤の規制と持ち合い
殺虫成分への規制が強まれば、製品の入れ替えと費用が要る。また、エステーと創業家系で3割近い株式を持ち、少数株主の意見が通りにくい構造もある。
今後の分かれ目
- 東南アジアの営業利益率が24年3月期の8%台に戻る
- 全社の営業利益が3割ほど増え、強気の筋書きに近づく。
- 日本セグメントが2期続けて黒字になる
- 赤字の構造が解消されたことを意味し、全社の利益の下値が上がる。
- LPGと樹脂の高騰が長引き、値上げが通らない
- 粗利率が下がり、営業利益率は2%台に沈む。慎重な筋書きに近づく。
- 円高が進む
- 海外の円換算の売上と利益が減り、前期の追い風が逆回りする。
- エステーや大下家が株式を売却、または買収提案が出る
- 持ち合いが崩れ、資本の形が変わる。価値は買い手の評価に左右される。
- 自社株買いや配当性向の引き上げが示される
- 薄い利益率でも資本の使い道が株主に向き、資本効率の評価が上がる。
見ておくもの
- 東南アジアの売上と営業利益率(四半期)
- 日本セグメントの損益と返品率
- 原材料(LPG・樹脂)の価格と値上げの浸透
- 円と現地通貨の為替、純負債と利払い
- 大株主(エステー・大下家)の持株の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価に寄せず、10年後の ROE と資本コスト 8%(基本 7.5% + 循環・値決め・借金・寿命の各 +0.25%)から式で出した正当化 PER の約 7〜8 割に置いた。今の株価と PER は見ていない。前期の営業利益率 2.8% は販促と円安費用で押された値なので出発点にせず、過去の中央値と山の間(4%台)で中立を組んだ。数量は出荷数(推定)で人口減の国内と成長する海外を分け、価格は物価の 1.34 倍を基本に、国内は 1.30、海外は為替との差し引きで 1.32 とした。本社費・調整は物価で増やしたうえで固定的に扱った。利払いは 10 年で 2 億円増やして純利益に入れた。上場株式は配当が利益に残るので価値に足さず、悲観の床だけで数えた。優待は年 0.5 億円(推定)を還元に足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→14.22 倍・やや楽観 PER 9.5→13.1 倍・中立 PER 8.8→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.0% = 8.5%。東南アジアの政情や為替、国内の赤字は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。