結論
長谷川香料は、飲料や菓子、乳製品の「香り」を特注で調合する香料会社だ。国内では高砂香料に次ぐ2位で、売上の約半分は海外が占める。筆者の結論は、事業は良質だが今の値段は先の稼ぎを織り込みすぎており、やや割高というものだ。
良さの中身は、一度採用されると替えにくい特注調合と、国内では突出して高い利益率にある。アジアは利益率が27%に達し、全社の稼ぎ頭になっている。
問題は、稼ぎに比べて資本が重いことだ。純現金が300億円を超え、政策保有株も約107億円ある。ROEが5〜7%にとどまるのはこのためだ。会社も配当の目安を株主資本の3%以上に改めたが、3年で約368億円の工場投資を進めるので、利益は計画上ほぼ横ばいが続く。
10年の中立は、海外が伸びても償却増と競争で利益率が今と変わらない姿だ。強気の筋書きなら今の値段を超えるが、確率で重みをつけた本質価値は今の時価総額を約2割下回る。米国のABELEI社の統合と、中国の競争が分かれ目になる。
会社の計画は、売上を毎年3〜4%伸ばす一方、営業利益は横ばいを見込む。筆者が気にしているのは、投資が実を結ぶまでの時間の長さだ。
バリュー投資の観点から
この会社を、バリュー投資の観点でオーナーとして持つとどうか。まず事業の質は良い。特注の調合で切り替えが難しく、利益率は国内でも高い。需要は景気に鈍い。
次に、堀の広がりを疑う。世界では1%台の小さな存在で、規模の大きい3社に比べて価格交渉力は弱い。国内の堀は深いが、国内は人口が減る。堀が広がるのは、アジアと米国で顧客を増やせたときだけだ。
資本の使い方は悩ましい。稼いだ利益の多くを純現金と政策保有株に寝かせてきた。ROEが5%台にとどまる理由だ。今回、配当の目安を引き上げ、設備投資も増やすことで、この寝かせた資本を働かせ始めた。方向は正しい。ただし、工場投資で営業利益が3年横ばいになる計画は、投資の回収が早くないことを示している。
安全域は薄い。資本コストを6.8%とすると、中立の10年後の姿は、今の時価総額とほぼ同じ水準になる。割安と言えるほどの余裕は見えない。強気の筋書きが実現して初めて、持ち続ける価値が上がる。
結局、筆者が見たいのは、寝かせた資本が働き始める具体的な証拠だ。政策保有株の売却と自社株買いが動けば、評価は変わる。
何で稼ぐ会社か
長谷川香料は、飲料や菓子、乳製品に加える「香り」を調合してつくる会社だ。売るのは食品メーカーの味づくりの一部で、顧客ごとに配合が違う特注品が中心になる。年に作る品目は約1万2千に上る。
売上の約9割は食品向けで、残りが香水・化粧品・洗剤向けのフレグランスだ。食品向けの先は飲料が約3割、乳業が約3割弱、菓子、調味料、即席麺が続く。飲料向けが多いので、夏に売上が偏る。
地域では日本が約5割、アジアが約2割強、米国が約2割だ。利益を稼ぐのはアジアで、日本の約1.3倍の利益を出している。米国は2024年に買収したABELEI社の統合費用で、2025年9月期は赤字になった。
香料は小さな業界だ。国内の市場は約2,700億円で、長谷川は高砂香料に次ぐ2位にいる。世界ではジボダン、IFF、ディーエスエム・フィルメニッヒの3社で6割を超え、長谷川は10位前後、シェアは約1%台にすぎない。
長谷川は研究開発に強い会社だ。果実や乳などの天然素材から香りを取り出す技術を持ち、天然香料や天然色素も手がける。自社の研究所で顧客の依頼に合わせて香りを設計できる点が、取引の継続を支えている。
優良さと弱いところ
強みは、顧客ごとに調合する特注品が中心で、一度採用されると他社に替えにくいことだ。香りは味の決め手になるのに、食品の原価に占める割合は小さい。値下げ圧力は受けても、乗り換えられる危うさは低い。
利益の質は国内で突出している。売上総利益率は4割を超え、営業利益率は1割を超える。高砂香料の連結営業利益率は6〜7%台であり、同じ国内2強でも、稼ぐ力に差がある。
弱みは規模だ。世界の上位3社は研究費も原料の仕入れも桁が違う。大手食品・飲料メーカーが世界で調達を一本化すれば、小さな香料会社は外される。長谷川がアジアと米国に出ていくのは、この壁を超えるためでもある。
資本の面では、バランスシートが分厚い。自己資本比率は8割を超え、純現金は300億円台ある。ただ稼ぐ力に比べると資本が重く、ROEは5〜7%にとどまる。保有する上場株は約107億円ある。持ち続ける理由を毎年検証するというが、減らす勢いはまだ見えない。
経営の姿勢は堅実で、増収を追うより利益率を守ってきた。国内の利益率が高いのは、価格で無理をせず、特注の付加価値で稼いできた結果だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
香料は、景気に左右されにくい安定した業界だ。世界の市場は約343億ドル(約5兆円)。この3年の成長は年3.5%で、アジアが4.4%、北米が2.9%だった。日本は約2,700億円で、年3.6%の伸びだが、人口が減る中での伸びは、値上げが大半だ。
10年の筆者の見立ては次のとおり。国内の数量は横ばいで、価格が物価並みに上がる。アジアは中間層が増えて、数量が実質で年2〜3%伸びる。北米は成熟しており、数量はほぼ伸びない。長谷川の伸びは、市場の伸びに加えて、取引先を増やしてシェアを広げられるかにかかる。
競争の形は、世界の3社が総合力で広く取り、中堅が地域や用途で勝負するというものだ。日本では、高砂香料と長谷川が国内のほぼ半分を握る。中国では現地の香料会社が力をつけ、日本の食品メーカーの現地生産に付いて行くだけでは伸びが限られる。
追い風もある。健康志向で糖を減らした飲料に、香りでコクや甘さを足す需要は強い。海外で日本の飲料・菓子が広がれば、香りの需要も付いてくる。一方で、天然香料の原料(果実・乳・植物)の価格と天候は、利益率を左右する。
日本の香料業界は、食品・飲料メーカーとの長期の取引関係で成り立つ。新規参入は難しく、国内の勢力図は動きにくい。
資本政策と M&A
資本政策の転機は2026年9月期だ。配当の目安を「配当性向40%」から、「株主資本に対して3%以上」に切り替えた。利益が横ばいでも配当が減らない仕組みで、筆者は株主にとって前向きな変更と見る。
背景には投資がある。2026年9月期から3年で、約368億円の設備投資を予定している。深谷工場の建て替え、中国の第3工場、マレーシアの新工場が中心だ。工場が動き出すと、減価償却が増える。会社の計画でも、営業利益は94〜96億円でほぼ横ばいが続く。
買収は2017年の米国FIH社、2024年のABELEI社と続いた。ABELEIは約70億円で、顧客が重ならず、米国の中西部と東部に販路を広げる狙いだ。統合の出来が、米国の利益を決める。
自社株買いは2025年9月期に約22億円を実施した。ただし今後は、条件を満たしたときだけという位置づけだ。創業家など支配株主の存在は確認できていない。大量保有の届け出には海外の運用会社が名を連ねる。
株主還元の面では、増配と投資を両立させる余力がある。純現金と政策保有株の合計は時価総額の3割に達し、これをどう働かせるかが10年の評価を左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
世界の香料市場は3%台半ばで伸びる安定市場で、長谷川はその中で国内2位、収益性は国内トップだ。特注の調合で顧客を囲い込めるため、値上げの力も保てる。
成長の舞台は海外にある。アジアは今でも利益の最大の稼ぎ手で、中国の平湖、マレーシアに新工場が立ち上がり、食品・飲料メーカーの現地での拡大を取り込める。米国では2024年に買収したABELEI社が、既存のセイボリー系と顧客が重ならず、中西部から東部への販路が開ける。統合費用が一巡すれば、赤字だった米国が黒字に転じる。
加えて、会社が配当の目安を株主資本の3%以上に切り替え、設備投資を増やしても株主還元を落とさない姿勢を示した。純現金も300億円台ある。工場の償却が一巡すれば、売上の伸びがそのまま利益の伸びになる。国内でも、糖を減らした飲料や健康向け食品で、香りの出番はむしろ増える。
この会社は財務に傷がなく、自己資本比率は8割を超える。景気の悪い年でも赤字になった期はなく、利益のぶれが小さい。10年という長い時間で見るほど、安定した需要と高い利益率が複利で効いてくる。
慎重な見方
国内の売上は人口減で数量が伸びず、日本セグメントの利益は2025年9月期に2割以上減った。原価と人件費の上昇を、値上げで取り戻せていない証拠だ。
中国は、現地の香料会社が力をつけ、日系食品メーカーの現地生産の一部も現地の香料に切り替わっていく。アジアの利益率は27%と突出して高いが、突出しているからこそ、競争で削られやすい。
米国は買収でシェアを買ったが、収益はまだゼロ近辺だ。ABELEIの顧客が一部の大口に偏っていれば、統合後に離れる恐れがある。買収額は約70億円で、のれんの減損の余地も残る。
加えて、3年で約368億円の投資は、会社自身の計画でも営業利益が横ばいのままだ。工場を増やしても利益が増えない期間が続けば、資本の使い方への不満が強まる。世界の上位3社との規模の差は埋まらず、大手食品メーカーの調達一本化が進めば、小さな香料会社は真っ先に外される。
配当の目安を上げても、利益が増えなければ還元の原資は純現金から出ることになる。ROEが5〜7%の会社に、高い値段を払う理由は見当たらない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、アジアの収益力と米国の黒字化という具体的な筋がある点で説得力がある。ただし、その筋が実現するのは工場投資の償却が一巡する数年先で、10年の中立では償却増と競争で利益率は今と同じ1割強にとどまる。
慎重な見方の指摘のうち、中国の競争と米国の統合の不発は重い。ただ、特注調合で切り替えにくい構造は簡単には崩れない。確率は中立に約4割を置き、悲観側に約3割、楽観側に約3割を置いた。わずかに悲観側を厚くしたのは、米国の統合の不確かさと、投資の回収が遅いためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 3,746 円1,521 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,295 円526 億円)。 今の値に割り戻すと 2,817 円1,143 億円、今との差 −17.9%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 6,461 円2,623 億円 | 1,633 円663 億円 | +136.0% | +9.0% | 728 円296 億円 |
| やや楽観 | 19% | 5,093 円2,067 億円 | 1,456 円591 億円 | +90.9% | +6.7% | 1,244 円505 億円 |
| 中立 | 38% | 3,913 円1,588 億円 | 1,286 円522 億円 | +51.6% | +4.2% | 1,975 円802 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,288 円929 億円 | 1,182 円480 億円 | +1.2% | +0.1% | 763 円310 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,726 円701 億円 | 1,025 円416 億円 | −19.8% | −2.2% | 330 円134 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,746 円1,521 億円 | 1,295 円526 億円 | +47.0% | +3.9% | 5,042 円2,047 億円 |
今の株価時価総額 3,430 円1,392 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 米国と中国で相乗効果が出て、利益率が過去最高圏に 利益 163 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 6,461 円2,623 億円
米国では、ABELEI社との統合が早く進み、セイボリーと飲料の両方で東部の大口を取る。米国の利益率は11%台に乗る。アジアでは、平湖とマレーシアの新工場が立ち上がり、中国の現地生産と東南アジアの飲料・菓子の需要を取り込む。アジアの利益率は25%を保つ。
国内は、糖を減らした飲料や健康向け食品の新製品が続き、数量が10%増える。値上げも通る。売上は10年で約1.8倍の約1,350億円、営業利益は約220億円に達する。
償却が一巡し、利益の伸びが売上の伸びに追いつく。会社が掲げる「海外売上比率の上昇」が最も良い形で実現する10年だ。
この筋書きでは、長谷川は小さな買収を積み、統合の実績を重ねる会社として評価される。
- 日本:数量 29,172(香料の販売量(トン、推定。国内市場約2,700億円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 207(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 604 億円・営業利益 69 億円。営業利益率11.5%
- アジア(中国・東南アジア・台湾):数量 23,773(香料の販売量(トン、推定。アジア市場約1.6兆円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 166(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 394 億円・営業利益 98 億円。営業利益率25%
- 米国:数量 25,416(香料の販売量(トン、推定。北米市場約1.3兆円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 138(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 351 億円・営業利益 40 億円。営業利益率11.5%
倍率:事業の純利益 163 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.05% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.09 倍、時価総額 2,623 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米国の統合と中国の新工場が同時にうまくいき、国内の利益率も戻る必要がある。連続した好転が前提なので高くしない。
やや楽観 19% アジアと米国が伸び、国内は堅調 利益 137 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 5,093 円2,067 億円
アジアと米国が伸びる、会社の計画に近い筋書き。アジアの数量は10年で5割近く増え、米国は統合費用が消えて黒字が定着する。
国内は人口減の中でも、機能性や健康系の飲料の新製品で、数量が5%増える。物価並みの値上げは通る。
売上は約1,230億円、営業利益は約180億円になる。投資の償却が重く、営業利益率は14%台で上限が決まる。
配当は株主資本の3%以上の目安を守り、自己資本の積み上がりは緩やかになる。会社が示した海外比率の上昇も、この筋書きで着実に進む。
米国の黒字化は、会社が掲げる「ABELEI社とのシナジー」が数字に出たことを意味し、海外の利益が全社の過半を占めるようになる。
- 日本:数量 27,846(香料の販売量(トン、推定。国内市場約2,700億円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 204(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 568 億円・営業利益 60 億円。営業利益率10.5%
- アジア(中国・東南アジア・台湾):数量 21,990(香料の販売量(トン、推定。アジア市場約1.6兆円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 163(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 359 億円・営業利益 84 億円。営業利益率23.5%
- 米国:数量 21,921(香料の販売量(トン、推定。北米市場約1.3兆円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 136(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 298 億円・営業利益 28 億円。営業利益率9.5%
倍率:事業の純利益 137 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.05% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.09 倍、時価総額 2,067 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:アジアの伸びが続き、米国が黒字化する、会社の計画に近い順調な筋書き。海外の実績(アジア増益、地域売上の伸び)があるので、約2割を置く。
中立 38% 中立:海外が伸びるが、償却増で利益率は横ばい 利益 112 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 3,913 円1,588 億円
海外は伸びるが、利益率は大きく変わらない。アジアは数量が3割強増える一方で、新工場の償却と中国の競争で利益率は27%から22%に下がる。米国は統合が一巡し、利益率6.5%まで黒字が戻る。
国内は数量が横ばいで、値上げは物価並みに通る。原価と人件費の上昇を価格で吸収できず、日本セグメントの利益率は9.5%で足踏みする。
売上は10年で約1,100億円と、会社の計画(3〜4%成長)の延長線上に収まる。営業利益は約140億円。配当は株主資本の3%以上の目安で続き、自己資本は約1,650億円に積み上がる。
筆者がいちばん現実的と見るのは、この姿だ。悪くはないが、投資のわりに利益が増えない。
- 日本:数量 26,785(香料の販売量(トン、推定。国内市場約2,700億円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 201(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 538 億円・営業利益 51 億円。営業利益率9.5%
- アジア(中国・東南アジア・台湾):数量 19,761(香料の販売量(トン、推定。アジア市場約1.6兆円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 161(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 318 億円・営業利益 70 億円。営業利益率22%
- 米国:数量 18,268(香料の販売量(トン、推定。北米市場約1.3兆円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 134(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 245 億円・営業利益 16 億円。営業利益率6.5%
倍率:事業の純利益 112 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.05% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.18 倍、時価総額 1,588 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外は伸びるが、償却増と競争で利益率は今と同じ水準。国内2位の地位と特注調合の粘りから、最も起きやすい筋書きとして約4割。
やや悲観 22% 中国の競争と米国の不発で、利益が伸び悩む 利益 77 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,288 円929 億円
中国で現地の香料会社が力をつけ、日系食品メーカーの現地調達の一部が置き換わる。アジアの数量の伸びは1割台にとどまり、利益率は18%まで下がる。
米国は、ABELEIの顧客の一部が離れ、利益率が3%にとどまる。国内は原価と人件費の上昇を転嫁できず、利益率が8%に下がる。
売上は約980億円、営業利益は約95億円。工場の償却だけが残り、利益は今の水準から伸びない10年になる。
配当の目安は守るが、利益に対する比率が上がり、自己資本は積み上がらない。優良さは薄れるが、事業そのものは残る。
純現金は設備投資と配当で減り、財務の余裕は今ほど厚くなくなる。
- 日本:数量 25,459(香料の販売量(トン、推定。国内市場約2,700億円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 195(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 496 億円・営業利益 40 億円。営業利益率8%
- アジア(中国・東南アジア・台湾):数量 17,087(香料の販売量(トン、推定。アジア市場約1.6兆円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 154(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 262 億円・営業利益 47 億円。営業利益率18%
- 米国:数量 16,679(香料の販売量(トン、推定。北米市場約1.3兆円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 130(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 217 億円・営業利益 7 億円。営業利益率3%
倍率:事業の ROE 5.1% は k 7.05% 以下なので、PER は 1÷k=14.2 倍が上限(ためた利益は元の額に届かない)。中国で競争力が落ち、米国も不発なので、やや悲観は上限の8.5割の 12.06 倍に置いた。
確率:中国で現地勢に価格を削られ、米国の統合が不発に終わる。過去の国内利益率の低下、米国の赤字の実績があり、現実味が高い。
悲観 12% 大手と現地勢に挟まれ、買収も失敗して優良さを失う 利益 33 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,726 円701 億円
世界の上位3社が総合力で大手食品・飲料メーカーの調達を一本化し、国内でも長谷川の取引先が減る。中国の現地勢が価格を引き下げ、アジアの数量は減り、利益率は11%に落ちる。
米国は統合に失敗し、ABELEIの減損が出て、事業は赤字が続く。国内の利益率も5%に落ちる。
売上は約780億円まで減り、営業利益は約40億円になる。もう優良とは言えない。配当は株主資本の目安を守れず、純現金と政策保有株を取り崩して続けるのがやっとになる。
特注調合の切り替えにくさという強みが、調達の一本化の前では効かなくなる。稼ぐ力が細る分、価値は純現金と売れる資産にほぼ支えられる。
- 日本:数量 23,338(香料の販売量(トン、推定。国内市場約2,700億円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 180(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 420 億円・営業利益 21 億円。営業利益率5%
- アジア(中国・東南アジア・台湾):数量 14,115(香料の販売量(トン、推定。アジア市場約1.6兆円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 138(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 195 億円・営業利益 21 億円。営業利益率11%
- 米国:数量 14,296(香料の販売量(トン、推定。北米市場約1.3兆円×当社シェアに相当。実質の数量))× 価格 115(1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立))→ 売上 164 億円・営業利益 −3 億円。営業損失(-2%)
倍率:優良さを失い利益が細る筋書きなので、稼ぐ力(純利益約33億円÷k≒490億円)でなく、売れる資産で測る。純現金と政策保有株、工場・不動産・棚卸資産の売却価値(税後)を床とし、今の自己資本1,229億円に0.57倍を掛けた。
確率:大手3社と現地勢に挟まれ、顧客の調達一本化も進み、買収の減損も出る構造的な負け。香料は切り替えにくい事業なので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
日本の取引先(飲料・乳業・菓子・調味料・即席麺のメーカーと、化粧品・日用品メーカー)向けの香料。輸出の一部も含む。
| 数量香料の販売量(トン、推定。国内市場約2,700億円×当社シェアに相当。実質の数量) | 価格1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 26,520 | 150 | 398 | 38 |
| 10 年後 中立 | 26,785 | 201 | 538 | 51 |
取り方:開示は金額だけなので、販売量は推定。国内の日本セグメントの外部売上398億円を、特注品中心の平均単価を1トン150万円と置いて割り、約2,650トンとした(国内市場約2,700億円の約15%に相当する)。数量は人口減で実質ほぼ横ばい、価格は物価並みに上がる。
アジア(中国・東南アジア・台湾)
中国(上海・蘇州・平湖)、タイ、インドネシア、マレーシア、台湾の拠点で売る食品・飲料向けの香料。利益率が高い稼ぎ頭。
| 数量香料の販売量(トン、推定。アジア市場約1.6兆円×当社シェアに相当。実質の数量) | 価格1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 14,858 | 120 | 178 | 49 |
| 10 年後 中立 | 19,761 | 161 | 318 | 70 |
取り方:開示は金額だけなので、販売量は推定。アジアの外部売上178億円を、1トン120万円(飲料・調味料向けが多く国内より低い)と置いて割り、約1,490トンとした(アジア市場の約1.1%)。中間層の拡大で市場は実質で伸びる。
米国
西海岸のセイボリー(塩味系)香料と、2024年に買収した中西部のABELEI社の食品・飲料向け香料。
| 数量香料の販売量(トン、推定。北米市場約1.3兆円×当社シェアに相当。実質の数量) | 価格1トンあたりの平均単価(万円、名目。物価3%で10年1.34倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 15,885 | 100 | 159 | −3 |
| 10 年後 中立 | 18,268 | 134 | 245 | 16 |
取り方:開示は金額だけなので、販売量は推定。米国の外部売上159億円を、セイボリー系が多く1トン100万円と置いて割り、約1,590トンとした(北米市場の約1.2%)。市場の実質の伸びは小さく、伸びはABELEI社の相乗効果によるシェア拡大が中心。
リスクと懸念
大手3社との規模の差
世界の上位3社(ジボダン、IFF、ディーエスエム・フィルメニッヒ)で6割を超える。研究費と原料調達で規模が違い、大手食品・飲料メーカーが世界で調達を一本化すれば、長谷川は取引先から外される恐れがある。
中国での現地勢の台頭
アジアは利益の稼ぎ頭で、利益率は27%に達する。中国の現地香料会社が力をつければ、価格競争でこの高い利益率が削られる。新設する平湖の第3工場の稼働も、競争が厳しい時期に当たる。
米国の統合と減損
ABELEI社は約70億円で買い、米国セグメントは2025年9月期に赤字だった。顧客が一部に偏っていれば、統合後の離脱で期待した相乗効果が出ず、のれんの減損につながる恐れがある。
投資の回収の遅れ
2026年9月期から3年で約368億円の設備投資を行うが、計画の営業利益は94〜96億円で横ばいだ。償却が増えるのに売上の伸びが追いつかなければ、利益率は下がり、資本の使い方への評価が落ちる。
国内の原価・人件費の上昇
日本セグメントの利益は2025年9月期に2割以上減った。原料の天然素材の値上がりと人件費の上昇を、特注品の価格に転嫁できなければ、利益率は1割を割る。
天候と原料の調達
果実・乳・植物などの天然原料は、天候で価格と調達が大きく動く。飲料向けが多く、夏に売上が偏るため、需要の波と原料の波が重なると利益が振れる。
今後の分かれ目
- アジアの営業利益率が20%を割り込み、数期続いたら
- 中国の競争が強まったと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 米国セグメントが営業黒字に転じ、利益率が5%を超えたら
- ABELEI社の統合が成功したと見て、やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 日本セグメントの利益率が9%台に戻らず、1割を下回り続けたら
- 値上げが原価に追いついていないと見て、中立の前提を下方修正する。
- 自社株買いの再開や政策保有株の売却が始まったら
- 寝かせた資本が働き始めたと見て、ROEの前提を上方修正する。
- 2027年9月期に営業利益が計画の95億円台を超えたら
- 新工場の償却増を吸収する力があると見て、中立から上の確率を上げる。
- 大手食品・飲料メーカーが、長谷川から世界大手に調達を切り替えたら
- 取引先を失う動きの始まりと見て、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- アジア・米国・日本の各セグメントの営業利益率
- 平湖とマレーシアの新工場の稼働時期と償却の増え方
- ABELEI社の統合後の売上と顧客の動き
- 配当の目安(株主資本の3%以上)と自社株買い・政策保有株の売却
- 天然原料の価格と、飲料向けの季節の売上
倍率と資本コストの決め方
数量は市場規模(実質)×シェアで、価格は今の値段を1.00とした物価の指数(10年で1.34倍が中立)で積んだ。利益率は国内9.5%、アジア22%、米国6.5%(今の実績の国内9.5%・アジア27%、米国は統合費用で赤字)。大型投資の償却増を織り込み、営業利益率は中立で約12%にとどめた。中立のROEは資本コスト(7.05%)をわずかに下回るため、PERは上限(1÷k≒14.2倍)の95%に置き、現在の株価や同業の倍率からは決めていない。今のPER約20倍は最後に比べただけ。新リース会計は、工場が自社保有中心で影響は小さいとみて、家賃を営業費用に入れた形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.48→16.09 倍・やや楽観 PER 14.19→15.09 倍・中立 PER 13.48→14.18 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に、quality −0.45%(景気に鈍い需要と、顧客ごとの特注調合で切り替えにくいこと。規模が小さい点は一部戻した)を足して7.05%にした。強い堀とは言えないので、下げはここで止めた。米国の統合や中国の競争は、k に足さず筋書きと確率で表した。